JP4092797B2 - 半導体装置用接着剤シートおよびそれを用いた部品ならびに半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体集積回路(IC)を搭載し、パッケージ化する際に用いられる半導体装置用接着剤シートおよびそれを用いた部品ならびに半導体装置に関する。さらに詳しくは、ボールグリッドアレイ(BGA)、ランドグリッドアレイ(LGA)方式の表面実装パッケージに用いられる半導体集積回路接続用基板を構成する絶縁層および導体パターンからなる配線基板層と、たとえば金属補強板(スティフナー、ヒートスプレッター)間を接着するのに用いられる半田耐熱性、耐湿性、サーマルサイクル性等の信頼性に優れた半導体装置用接着剤シートおよびそれを用いた部品ならびに半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体集積回路(IC)パッケージとして、デュアルインラインパッケージ(DIP)、スモールアウトラインパッケージ(SOP)、クアッドフラットパッケージ(QFP)等のパッケージ形態が用いられてきた。しかし、ICの多ピン化とパッケージの小型化に伴って、最もピン数の多くできるQFPにおいても限界に近づいている。これは特にプリント基板に実装する際に、外部端子(リード)間の狭ピッチ化による取扱い性の困難化とプリント基板上の半田の印刷精度が得にくいことによる。そこで近年、多ピン化、小型化の手段としてBGA方式、LGA方式、PGA方式等が実用化されてきた。中でも、BGA方式はプラスチック材料の利用による低コスト化、、軽量化、薄型化が図れるだけでなく、表面実装可能なことから高く注目されている。
【0003】
図1にBGA方式の例を示す。BGA方式は、ICを接続した半導体集積回路接続基板の外部接続端子としてICのピン数にほぼ対応する半田ボールを格子状(エリアアレイ)に有することを特徴としている。プリント基板への接続は、半田ボール面をすでに半田が印刷してあるプリント基板の導体パターン上に一致するように乗せて、リフローで半田を溶解する一括リフローにより行われる。パッケージとしての特徴は、従来のQFP等周辺に接続端子を配列したICパッケージに比べて、パッケージ裏面に接続端子を配列する点であり、より多くの接続端子を少ないスペースに広い間隔で配列できるところにある。このため、実装面では、低実装面積化と高実装効率化が図れる。
【0004】
この機能をさらに進めたものに、チップスケールパッケージ(CSP)があり、その類似性からマイクロBGAと称されている。本発明は、これらのBGA構造を有するCSPにも適用できる。
【0005】
一方、BGAパッケージには以下の課題がある。(a)半田ボール面の平面性、(b)耐リフロー性、(c)放熱性、(d)サーマルサイクル性、(e)耐湿性である。
【0006】
これらを改善する方法として、半導体集積回路接続用基板に補強(平面性維持)、放熱、電磁的シールドを目的とする金属板等の材料を積層する方法が一般的に用いられている。特に、ICを接続するための絶縁層および導体パターンからなる配線基板層にTABテープやフレキシブル基板を用いた場合に重要になる。
【0007】
このため、半導体集積回路接続用基板は、図2に例示するように、ICを接続するための絶縁体層11および導体パターン13からなる配線基板層、補強板(スティフナー)、放熱板(ヒートスプレッター)、シールド板等の導体パターンが形成されていない層15、およびこれらを積層するための接着剤層14をそれぞれ少なくとも1層以上有する構造となっている。これらの半導体集積回路接続用基板は、あらかじめ配線基板層または導体が形成されいない層のいずれかに接着剤組成物を半硬化状態で積層した中間製品としての部品を作成しておき、パッケージ組立工程で貼り合わせ、加熱硬化させて作成される。
【0008】
最終的に、接着剤層14は、パッケージ内部に残留する。以上の点から接着剤層14に要求される特性として、(a)耐リフロー性、(b)温度サイクルやリフローの際に、配線基板層と補強板等の異種材料間で発生する応力吸収(低応力性)、(c)易加工性、(d)配線上に積層する場合の耐湿性などが挙げられる。
【0009】
中でも、重要な要求項目は耐リフロー性、耐湿性と耐サーマルサイクル性である。
【0010】
耐リフロー性は、半田浴浸漬、不活性ガスの飽和蒸気による加熱(ベーパーフェイズ法)や赤外線リフローなどパッケージ全体が210〜270℃の高温に加熱される実装工程において、接着剤層が剥離しパッケージの信頼性を低下するというものである。リフロー工程における剥離の発生は、接着剤層を硬化してから実装工程の間までに吸湿された水分が加熱時に爆発的に水蒸気化、膨張することに起因するといわれており、その対策として後硬化したパッケージを完全に乾燥し密封した容器に収納して出荷する方法が用いられている。
【0011】
耐湿性は、パッケージが高温高湿の環境下に長時間さらされた場合、半導体素子のアルミ配線やパッドが腐食し信頼性が低下するというものである。この原因としては接着剤中に含まれている不純物イオン、特に塩素や臭素などのハロゲンイオンによるものであるといわれており、その対策として原料の高純度化など、接着剤中に含まれる不純物イオンを低減する方法が提案されている。
【0012】
耐サーマルサイクル性は、BGAなどピン数の多いパッケージは動作時100℃を越える高温になるため要求される特性であり、線膨張係数の異なる材料間を接続する接着剤には発生応力を緩和する目的で、低弾性率化が要求されている。
【0013】
このようなことから、接着剤の改良も種々検討されている。例えば、耐サーマルサイクル性に優れた接着剤層として、低弾性率の熱可塑性樹脂あるいはシリコーンエラストマー(特公平6−50448号公報)、耐湿性を向上する目的で接着剤層中の含有塩素イオン量を200ppm以下にする方法(特開平7−74213号公報)などが提案されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに乾燥パッケージを容器に封入する方法は製造工程および製品の取扱いが煩雑になるうえ、製品価格がきわめて高価になる欠点がある。また、種々提案された接着剤も耐サーマルサイクル性や耐湿性において改善効果は見られるものの満足できるものではなかった。
【0015】
本発明の目的は、かかるリフロー工程に生じる問題点を解消し、耐リフロー性、サーマルサイクル性および耐湿性に優れた半導体装置用接着剤シートおよびそれを用いた部品ならびに半導体装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は少なくとも1層以上の保護フィルム層と、エポキシ樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)およびハイドロタルサイト系化合物(C)を含有する熱硬化型の接着剤層からなる積層体を有する半導体装置用接着剤シートであって、前記ハイドロタルサイト系化合物(C)の添加量が接着剤層全体の0.05〜5重量%であり、前記接着剤層と接着剤層の10倍重量の純水を121℃/100%RHの条件で20時間抽出処理したときの抽出水pHが4〜9の範囲であることを特徴とする半導体装置用接着剤シートおよびそれを用いた部品ならびに半導体装置である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成を詳述する。
本発明における半導体用接着剤シートとは、スティフナー、ヒートスプレッターや半導体素子を配線基板層(インターポーザー)に接続するものであり、それら被着体の形状および材料は特に限定されない。
【0018】
本発明における接着剤層は、接着剤とその10倍重量の純水を121℃/100%RHの条件で20時間抽出処理したときの抽出水pHが4〜9の範囲であることが重要である。抽出水pHは半導体素子のアルミ配線やパッドが腐食し信頼性が低下する原因となる接着剤中の不純物イオンとアルミ配線等との反応に影響があるため、抽出水pHを制御することが本発明の目的を達成する手段となる。
【0019】
本発明における純水とは水素形強酸性陽イオン交換樹脂と水酸形強塩基性陰イオン交換樹脂を用いた混床式イオン交換法によって得られた精製水を蒸留したものであり、pHは6であることが好ましいが、これに限定するものではない。
【0020】
本発明における接着剤層は、エポキシ樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)およびハイドロタルサイト系化合物(C)を含有する熱硬化型の接着剤層である。
【0021】
本発明の接着剤層に含有されるエポキシ樹脂(A)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものなら特に限定されず、これらの具体例としては、たとえば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0022】
本発明においてエポキシ樹脂(A)の配合量は、接着剤組成物中5〜90重量%、好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは20〜60重量%である。
【0023】
本発明の接着剤層に含有される熱可塑性樹脂(B)は、接着剤層に可撓性を与えるものであれば特に限定されないが、その具体例としては、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン樹脂(ABS)、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン−エチレン樹脂(SEBS)、アクリル、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン等が挙げられる。また、これらの熱可塑性樹脂は耐熱性向上のため、前述のエポキシ樹脂(A)と反応可能な官能基を有することが好ましい。具体的には、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、メチロール基、イソシアネート基、ビニル基、シラノール基等が挙げられる。
【0024】
中でも、接着性、可撓性、熱応力緩和性の点で、ブタジエンを必須共重合成分とする共重合体が好ましく用いられる。特に、金属との接着性、耐薬品性等の観点からアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、スチレン−ブタジエン−エチレン樹脂(SEBS)、スチレン−ブタジエン樹脂(SBS)等は好ましい。さらにブタジエンを必須共重合成分としかつカルボキシル基を有する共重合体は好ましく用いられ、具体例としてはカルボキシル基を有するNBR(NBR−C)およびカルボキシル基を有するSEBS(SEBS−C)が挙げられる。
【0025】
本発明の接着剤層に含有されるハイドロタルサイト系化合物(C)は、下記式(I)または(II)で示される複合金属化合物である。
【0026】
MgxAlyO(OH)2x+3y-nxAz・mH2O ・・・(I)
MgxAlyO(2x+3y)/2 ・・・(II)
(ただし、Aはn価の陰イオンAn-を生成しうる官能基、nは1〜3の整数、x、yおよびzは0<y/x≦1、0≦z/y<1.5の関係にある0または正の数を示す。)
上記式(I)において、官能基Aから生成しうるn価の陰イオンAn-の好ましい具体例としては、F-、Clー、Brー、Iー、OHー、HCO3 ー、CH3COOー、HCOOー、CO3 2-、SO4 2-、(COO-)2、酒石酸イオン、クエン酸イオン、サリチル酸イオンなどが挙げられる。中でも、CO3 2-が特に好ましい。
【0027】
上記式(II)で表されるハイドロタルサイト系化合物(C)は、例えば、上記式(I)で表されるハイドロタルサイト系化合物(C)を400〜900℃で焼成処理することにより製造される。
【0028】
本発明で使用するハイドロタルサイト系化合物(C)の好ましい具体例として、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.5Al2(OH)13CO3、Mg5Al1.5(OH)13CO3・3.5H2O、Mg5Al1.5(OH)13CO3、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、Mg0.65Al0.35O1.175、Mg0.7Al0.3O1.15、Mg0.75Al0.25O1.125、Mg0.8Al0.2O1.1などが挙げられる。
【0029】
本発明においてハイドロタルサイト系化合物(C)の添加量は全体の0.05〜5重量%である。添加量が0.05重量%未満では耐湿性の向上効果が不十分である。
【0030】
本発明において、接着剤層に無機質充填材(D)を添加することにより、耐リフロー性およびサーマルサイクル性を一層向上させることができる。無機質充填材(D)の具体例としては、たとえば結晶シリカ粉末、溶融シリカ粉末、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カルシウム・アルミネート水和物、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、タルク、アルミニウム、金、銀、ニッケル、鉄などが挙げられる。中でも、分散性の点から、水酸化アルミニウム、アルミナ、溶融シリカが好ましく、その平均粒径は0.1〜20μmのものが好ましく用いられる。
【0031】
無機質充填材(D)の配合量は、全体の1〜90重量%、好ましくは5〜70重量%、特に好ましくは8〜50重量%である。
【0032】
本発明において、接着剤層にエポキシ樹脂用の硬化剤(E)を添加することにより、耐リフロー性および耐湿性を一層向上させることができる。硬化剤(E)としては、エポキシ樹脂のグリシジル基と反応し架橋するものであれば特に限定されず、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤および酸無水物系硬化剤などが用いられる。中でも、耐リフロー性および耐湿性の点で芳香族アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤が好ましく用いられる。硬化剤(E)の具体例としては、たとえば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N−アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型樹脂や各種レゾール樹脂などが挙げられる。
【0033】
硬化剤(E)の配合割合は、通常エポキシ樹脂1当量に対してフェノール性水酸基0.5〜10.0当量、好ましくは0.7〜7.0当量となる範囲であることが望ましい。
【0034】
本発明の接着剤層にエポキシ樹脂(A)の単独反応、エポキシ樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)や硬化剤(E)との反応を促進させる硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤は硬化反応を促進するものならば特に限定されず、その具体例としては、たとえば、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールおよび2−ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールおよび1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの3級アミン化合物、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウムおよびトリ(アセチルアセトナト)アルミニウムなどの有機金属化合物、およびトリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィンおよびトリ(ノニルフェニル)ホスフィンなどの有機ホスフィン化合物が挙げられる。
【0035】
なお、これらの硬化促進剤は、用途によって2種類以上を併用してもよく、その添加量は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲が好ましい。
【0036】
本発明の接着剤層の厚みは、パッケージの規格により適宜選択できるが、5〜500μmが好ましく、より好ましくは20〜200μmである。
【0037】
本発明の半導体装置用部品(以下部品という)とは、半導体集積回路接続用基板および半導体装置を作成するために用いられる中間加工段階の材料である。該部品は、絶縁体層および導体パターンからなる配線基板層および/または導体パターンが形成されていない層、保護層を有する接着剤層をそれぞれ少なくとも1層以上有する構成のものである。たとえば、絶縁体層および導体パターンからなる配線基板層としてフレキシブルプリント基板あるいはTABテープを用い、その片面あるいは両面にシリコーン処理したポリエステル保護フィルムを有するBステージの接着剤層を積層した接着剤付き配線基板や導体パターンが形成されていない層として銅、ステンレス、42アロイ等の金属板を用い、その片面あるいは両面に上記と同様に保護フィルムを有するBステージの接着剤層を積層した接着剤付き金属板(接着剤付きスティフナー等)が本発明の部品に該当する。絶縁体層および導体パターンからなる配線基板層および導体パターンが形成されていない層をそれぞれ1層以上有する場合でも、その最外層に保護フィルムを有するBステージの接着剤層を積層した、いわゆる接着剤付き半導体集積回路接続用基板も本発明の部品に包含される。
【0038】
ここでいう保護層とは、通常保護フィルムから構成され、接着剤層を接着する前にその形態および機能を損なうことなく剥離できれば特に限定されず、その具体例としてはポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニルブチオラール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート等のプラスチックフィルム、これらにシリコーンあるいはフッ素化合物等の離型剤のコーティング処理を施したフィルムおよびこれらのフィルムをラミネートした紙、離型性のある樹脂を含浸あるいはコーティング処理した紙等が挙げられる。保護フィルムの厚みは、耐熱性の点から20μm以上、好ましくは25μm以上、さらに好ましくは35μm以上である。
【0039】
保護層の接着剤層に対する剥離力は、好ましくは1〜200N/m、さらに好ましくは3〜100N/mである。1N/mより低い場合は、保護フィルムが脱落しやすく、200N/mを越えると剥離が困難になるので好ましくない。
【0040】
本発明でいう半導体装置とは本発明の半導体集積回路接続用基板を用いたものをいい、例えば、BGAタイプ、LGAタイプパッケージであれば特に形状や構造は限定されない。半導体集積回路接続用基板とICの接続方法は、TAB方式のギャングボンディングおよびシングルポイントボンディング、リードフレームに用いられるワイヤーボンディング、フリップチッップ実装での樹脂封止、異方性導電フィルム接続等のいずれでもよい。また、CSPと称されるパッケージも本発明の半導体装置に含まれる。
【0041】
配線基板層は、半導体素子の電極パッドとパッケージの外部(プリント基板等)を接続するための導体パターンを有する層であり、絶縁体層の片面または両面に導体パターンが形成されているものである。
【0042】
ここでいう絶縁体層は、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、アラミド、ポリカーボネート、ポリアリレート等のプラスチックあるいはエポキシ樹脂含浸ガラスクロス等の複合材料からなる、厚さ10〜125μmの可撓性を有する絶縁性フィルム、アルミナ、ジルコニア、ソーダガラス、石英ガラス等のセラミック基板が好適であり、これから選ばれる複数の層を積層して用いてもよい。また、必要に応じて、絶縁体層に加水分解、コロナ放電、低温プラズマ、物理的粗面化、易接着コーティング処理等の表面処理を施すことができる。
【0043】
導体パターンの形成は、一般にサブトラクティブ法あるいはアディティブ法のいずれかで行われるが、本発明ではいずれを用いてもよい。
【0044】
サブトラクティブ法では、絶縁体層に銅箔等の金属板を絶縁性接着剤で接着するか、あるいは金属板に絶縁体層の前駆体を積層し、加熱処理などにより絶縁体層を形成する方法で作成した材料を、薬剤処理でエッチングすることによりパターン形成する。材料の具体例としては、リジッドあるいはフレキシブルプリント基板用銅貼り材料やTABテープなどが挙げられる。中でも、少なくとも1層以上のポリイミドフィルムを絶縁体層とし、銅箔を導体パターンとするフレキシブルプリント基板用銅貼り材料やTABテープが好ましく用いられる。
【0045】
アディティブ法では、絶縁体層に無電解メッキ、電解メッキ、スパッタリング等により直接導体パターンを形成する。いずれの場合も、形成された導体に腐食防止のため耐食性の高い金属がメッキされていてもよい。また、配線基板層には必要に応じてビアホールが形成され、両面に形成された導体パターンがメッキにより接続されていてもよい。
【0046】
金属板は配線基板の補強および寸法安定化(補強板あるいはスティフナーと称される)、外部とICの電磁的なシールド、ICの放熱(ヒートスプレッター、ヒートシンクと称される)、半導体集積回路接続基板への難燃性の付与、半導体集積回路接続用基板の形状的による識別性の付与等の機能を担持するものである。したがって、形状は層状だけでなく、たとえば放熱用としてはフィン構造を有するものでもよい。上記の機能を有するものであれば絶縁体、導電体のいずれであってもよく、材料も特に限定されない。金属としては、銅、鉄、アルミニウム、金、銀、ニッケル、チタン等、無機材料としてはアルミナ、ジルコニア、ソーダーガラス、石英ガラス、カーボン等、有機材料としてはポリイミド系、ポリアミド系、ポリエステル系、ビニル系、フェノール系、エポキシ系等のポリマー材料が挙げられる。また、これらの組み合わせによる複合材料も使用できる。例えば、ポリイミドフィルム上に薄い金属メッキをした形状のもの、ポリマーにカーボンを練り込んで導電性をもたせたもの、金属板に有機絶縁性ポリマーをコーティングしたもの等が挙げられる。また、必要に応じて、絶縁体層に加水分解、コロナ放電、低温プラズマ、物理的粗面化、易接着コーティング処理等の表面処理を施すことができる。
【0047】
次に、本発明の半導体装置用接着剤シートおよびそれを構成する部品ならびに半導体装置の製造方法の例について説明する。
【0048】
(1)絶縁体層および導体パターンからなる配線基板の作成:ポリイミドフィルム上に接着剤層および保護層を積層した3層構造のTABテープを下記の(a)〜(d)の工程により加工する。(a)スプロケットおよびデバイス孔の穿孔、(b)銅箔との熱ラミネート、(c)パターン形成(レジスト塗布、エッチング、レジスト除去)、(d)スズまたは金メッキ処理を行う。図3に得られたTABテープ(パターンテープ)の形状を例示する。
【0049】
(2)導体パターンが形成されていない層の作成:厚さ0.05〜0.5mmの銅板あるいはステンレス板などの金属板をアセトンにより脱脂する。
【0050】
(3)接着剤層の作成:接着剤組成物を溶剤に溶解した塗料を、離型性を有するポリエステルフィルム上に塗布、乾燥する。接着剤層の膜厚は10〜100μmとなるように塗布することが好ましい。乾燥条件は、100〜200℃、1〜5分である。溶剤は特に限定されないが、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族系、メチルエチルケトン、メチルエチルイソブチルケトン等のケトン系、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、Nメチルピロドリン等の非プロトン系極性溶剤単独あるいは混合物が好適である。塗工、乾燥した接着剤層上にさらに剥離力の弱い離型性を有するポリエステルあるいはポリオレフィン系の保護フィルムをラミネートして接着剤シートを得る。さらに接着剤厚みを増す場合は、該接着剤シートを複数回積層すればよく、場合によってはラミネート後に、例えば40〜100℃で1〜200時間程度エージングして硬化度を調整してもよい。図6に本発明の半導体装置用接着剤シートの構成を例示する。
【0051】
(4)半導体集積回路接続用基板の部品(接着剤付き配線基板)の作成:上記(1)の配線基板層に、上記(3)で作成した接着剤シートの片面の保護フィルムを剥がした後にラミネートする。ラミネート面は導体パターンがある面、またはない面のいずれでもよい。ラミネート温度20〜200℃、圧力0.1〜3MPaが好適である。最後に半導体装置の形状によって、適宜打ち抜き、切断加工が施される。図4に本発明の部品を例示する。
【0052】
(5)半導体集積回路接続用基板の部品(接着剤付きスティフナー)の作成:上記(2)金属板に、上記(3)で作成した接着剤シートの片側の保護フィルムを剥がした後にラミネートする。ラミネート温度20〜200℃、圧力0.1〜3MPaが好適である。また、(B)に上記(3)の塗料を直接塗布して乾燥させ、保護フィルムをラミネートしてもよい。最後に半導体装置の形状によって、適宜打ち抜き、切断加工が施される。図5に本発明の部品の例を示す。
【0053】
(6)半導体集積回路接続用基板の作成:
(a)接着剤付き配線基板を用いる方法
(4)の部品(接着剤付き配線基板)から接着剤層の保護フィルムを剥がし、適当な形状に打ち抜いた金属板に貼り合わせる。金属板は、たとえば外形が角型で中央に配線基板のデバイス孔に合わせて、やはり角型の穴がある形状に打ち抜いたものが例示できる。貼り合わせ条件は温度20〜200℃、圧力0.1〜3MPaが好適である。最後に、熱風オーブン内で該接着剤の加熱硬化のため80〜200℃で15〜180分程度のポストキュアを行なう。
【0054】
(b)接着剤付きスティフナーを用いる方法
(5)の部品(接着剤付きスティフナー)を、金型で打ち抜き、たとえば角型で中央にやはり角型の穴がある形状の接着剤付きスティフナーとする。該接着剤付きスティフナーから保護フィルムを剥がし、上記(1)の配線基板層の導体パターン面または裏面のポリイミドフィルム面に、該接着剤付きスティフナーの中央の穴を、配線基板のデバイス孔に一致させ貼り合わせる。貼り合わせ条件は温度20〜200℃、圧力0.1〜3MPaが好適である。最後に、熱風オーブン内で該接着剤の加熱硬化のため80〜200℃で15〜180分程度のポストキュアを行なう。
【0055】
以上述べた半導体集積回路接続用基板の例を図2に示す。
【0056】
(7)半導体装置の作成:(6)の半導体集積回路接続用基板のインナーリード部を、ICの金バンプに熱圧着(インナーリードボンディング)し、ICを搭載する。次いで、封止樹脂による樹脂封止工程を経て半導体装置を作成する。得られた半導体装置を、他の部品を搭載したプリント回路基板等と半田ボールを介して接続し、電子機器への実装をする。また、あらかじめICを上記(1)の配線基板に接続し、樹脂封止を行った、いわゆるTCP型半導体装置を用いることもできる。図1に本発明の半導体装置の一態様の断面図を示す。
【0057】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0058】
実施例1、比較例1〜3
下記熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂およびその他添加剤を、それぞれ表1に示した組成比となるように配合し、濃度28重量%となるようにDMF(ジメチルホルムアミド)/モノクロルベンゼン/MIBK(メチルイソブチルケトン)混合溶媒に40℃で撹拌、溶解して接着剤溶液を作成した。
A.エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:186)
エポキシ樹脂2)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:480)
B.熱可塑性樹脂
SEBS−C(旭化成(株)製、MX−073)
C.ハイドロタルサイト系化合物
Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O
D.無機質充填材
水酸化アルミニウム
E.硬化剤
4,4’−ジアミノジフェニルスルホン
【0059】
これらの接着剤溶液をバーコータで、厚さ25μmのシリコート処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムIに、約50μmの乾燥厚さとなるように塗布し、100℃、1分および150℃で5分間乾燥し接着剤シートを作成した。一方、ポリエチレンテレフタレートIより剥離力の低いポリエチレンテレフタレートフィルムIIに、接着剤溶液を同様に約50μmとなるように塗布・乾燥した後、先の接着剤シートと接着剤面どうしをラミネートして厚さ100μmの接着剤シートを作成した。このシートについて接着力を測定し、半導体接続基板にこのシートを貼り付け半導体接続用基板の部品を製造し、pH、耐リフロー性、耐湿性およびサーマルサイクル性を測定した。測定方法は以下のとおり行った。結果を表1に示す。
【0060】
[pH測定]
ポストキュアした接着剤シートを1g秤量し、純水10gとともに抽出容器に入れ、121℃/100%RHの条件で20時間抽出処理を行った。その後、pHメーター(井内盛栄堂製pHメーター:CP−1)を用いて25℃の温度下での抽出水のpHを求めた。
【0061】
[耐湿性]
表面にAl蒸着した模擬素子を接着剤シートを用いて搭載した16pin DIPを封止材(東レ:T−10)にて成形、ポストキュアし、121℃/100%RHの耐湿性試験を行って累積故障率50%になる時間を求めた。
【0062】
[耐リフロー性]
導体幅100μm、導体間距離100μmの模擬パターンを形成した30mm角の半導体接続用基板に、50μm厚の接着剤シートを40℃、1MPaの条件でラミネートした後、接着剤シート上に30mm角の0.25mm厚SUS304を150℃、75MPaの条件で圧着した。その後、150℃、2時間の条件で硬化し耐リフロー性評価用サンプルを作成した。
【0063】
30mm□サンプル20個を85℃/85%RHの条件下、12時間吸湿させた後、Max.230℃、10秒のIRリフローにかけ、その剥離状態を超音波短傷機により観察した。
【0064】
【表1】
【0065】
表1の結果から明らかなように、本発明により得られた半導体集積回路接続用基板の部品は、耐湿性、耐リフロー性のいずれにも優れていることが分かる。一方、本発明の半導体集積回路接続用基板の部品を用いていない比較例2は耐湿性、比較例3は耐リフロー性において極端に劣っている。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、耐湿性、耐リフロー性に優れた熱硬化型の半導体装置用接着剤シートおよびそれを用いた部品ならびに半導体装置を工業的に実用化可能に得ることができた。さらに、表面実装用の半導体装置の信頼性を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する半導体装置用接着剤組成物および半導体接着剤シートを用いたBGA型半導体装置の一態様の概略断面図。
【図2】本発明で使用する半導体装置用接着剤組成物を用いた半導体集積回路接続前の半導体集積回路接続用基板の一態様の概略断面図。
【図3】半導体集積回路接続用基板を構成するパターンテープ(TABテープ)の一態様の概略斜視図。
【図4】本発明の半導体集積回路接続用基板の部品(接着剤付き配線基板)の一態様の概略断面図。
【図5】本発明の半導体集積回路接続用基板の部品(接着剤付きスティフナー)の一態様の概略断面図。
【図6】本発明の半導体装置用接着剤シートの一態様の断面図
【符号の説明】
1 半導体集積回路
2 金バンプ
3、11、17 可撓性を有する絶縁性フィルム
4、12、18 配線基板層を構成する接着剤層
5、13、21 半導体集積回路接続用の導体
6、14、23 本発明の接着剤組成物より構成される接着剤層
7、15 導体パターンが形成されていない層(スティフナー)
8、16 ソルダーレジスト
9 半田ボール
10 封止樹脂
19 スプロケット孔
20 デバイス孔
22 半田ボール接続用の導体部
24 本発明の接着剤シートを構成する保護フィルム層
Claims (7)
- 少なくとも1層以上の保護フィルム層と、エポキシ樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)およびハイドロタルサイト系化合物(C)を含有する熱硬化型の接着剤層からなる積層体を有する半導体装置用接着剤シートであって、前記ハイドロタルサイト系化合物(C)の添加量が接着剤層全体の0.05〜5重量%であり、前記接着剤層と接着剤層の10倍重量の純水を121℃/100%RHの条件で20時間抽出処理したときの抽出水pHが4〜9の範囲であることを特徴とする半導体装置用接着剤シート。
- 熱可塑性樹脂(B)がブタジエンを必須共重合成分とする熱可塑性樹脂(B’)を含有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置用接着剤シート。
- 熱可塑性樹脂(B)がブタジエンを必須共重合成分とし、かつカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂(B”)を含有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置用接着剤シート。
- 無機質充填材(D)を含有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置用接着剤シート。
- 保護フィルム層、接着剤層、金属板の順に積層された半導体装置用部品において、前記接着剤層がエポキシ樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)およびハイドロタルサイト系化合物(C)を含有する熱硬化型の接着剤層であって、前記ハイドロタルサイト系化合物(C)の添加量が接着剤層全体の0.05〜5重量%であり、該接着剤層と接着剤層の10倍重量の純水を121℃/100%RHの条件で20時間抽出処理したときの抽出水pHが4〜9の範囲であることを特徴とする半導体装置用部品。
- 保護フィルム、接着剤層、絶縁体層および導体パターンからなる配線基板の順に積層された半導体装置用部品において、前記接着剤層がエポキシ樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)およびハイドロタルサイト系化合物(C)を含有する熱硬化型の接着剤層であって、前記ハイドロタルサイト系化合物(C)の添加量が接着剤層全体の0.05〜5重量%であり、該接着剤層と接着剤層の10倍重量の純水を121℃/100%RHの条件で20時間抽出処理したときの抽出水pHが4〜9の範囲であることを特徴とする半導体装置用部品。
- 少なくとも1層以上の接着剤層を有する半導体装置において、前記接着剤層がエポキシ樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)およびハイドロタルサイト系化合物(C)を含有する熱硬化型の接着剤層であって、前記ハイドロタルサイト系化合物(C)の添加量が接着剤層全体の0.05〜5重量%であり、該接着剤層と接着剤層の10倍重量の純水を121℃/100%RHの条件で20時間抽出処理したときの抽出水pHが4〜9の範囲であることを特徴とする半導体装置。
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