JP4092031B2 - エアバッグ装置用リッドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インストルメントパネル等の車両内装材の内部に収納したエアバッグ装置を覆うように設けられ、膨張するエアバッグの圧力で破断するティアラインが形成されたリッドを製造するためのエアバッグ装置用リッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平8−282420号公報には、自動車のエアバッグ装置を覆うリッドの裏面側にレーザー装置で加工した凹部によってティアラインを形成し、エアバッグが膨張する圧力で前記ティアラインを破断するものが開示されている。
【0003】
また特開平9−39706号公報には、表皮材を金型にインサートした状態で基材を射出成形して表皮材および基材を積層したリッドを構成し、このリッドの表皮材および基材に超音波ウエルダの加工ホーンで加工した凹部によってティアラインを形成するものが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上記前者のものは、レーザー装置の設備コストが嵩むだけでなく、リッドを成形した後でティアラインの加工が必要になるために加工工数および加工コストが増加するという問題があった。しかもレーザービームの強度の制御が不適切であると、凹部がリッドの表面側に貫通して外観品質を低下させ場合があった。
【0005】
また上記後者のものは、リッドの表面の表皮材にもティアラインの凹部が露出するために外観品質が低下するだけでなく、リッドを成形した後でティアラインの加工が必要になるために加工工数および加工コストが増加するという問題があった。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、少ない加工時間およびコストで外観品質に優れたリッドを製造することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車両内装材の内部に収納したエアバッグ装置を覆うように設けられ、膨張するエアバッグの圧力で破断するティアラインが形成されたリッドであって、表面側の樹脂製表皮材の裏面側に樹脂製基材が積層されてなり、且つその表皮材が表面側の表皮層及び裏面側のフォーム層を有するものを製造するための、エアバッグ装置用リッドの製造方法において、前記表皮材の表面側を受け治具で支持した状態で、前記樹脂製表皮材の裏面側に積層された樹脂製基材を熱刃で溶断してティアラインに沿う下孔を形成する第1の工程と、同じく前記表皮材の表面側を受け治具で支持した状態で、棒状の針本体とその針本体の先端に連なり且つ先端を尖らせた先細り部とを有する刺針を、前記下孔に対向する樹脂製表皮材にその裏面側から突き刺して、ティアラインに沿う多数の針孔を形成する第2の工程とを備え、前記第2の工程では、前記刺針を前記表皮材に、前記先細り部の尖った先端が前記表皮層を僅かに貫通するが前記針本体は前記表皮層には達しない深さに突き刺し、その後、該刺針を前記表皮材より引き抜いたときには、前記表皮層を加熱しなくても該表皮層の弾性によって前記針孔が塞がれるようにしたことを特徴とするエアバッグ装置用リッドの製造方法が提案される。
【0008】
上記構成によれば、表皮材の表面側を受け治具で支持した状態で、樹脂製基材を熱刃で溶断してティアラインに沿う下孔を形成するので、エアバッグの膨張時に破断強度の高い樹脂製基材をティアラインに沿って確実に破断させることができる。また同じく前記表皮材の表面側を受け治具で支持した状態で、下孔に対向する樹脂製表皮材にその裏面側から刺針を突き刺してティアラインに沿う多数の針孔を形成するので、エアバッグの膨張時に樹脂製表皮材をティアラインに沿って確実に破断させることができるだけでなく、樹脂製表皮材の表面側から見た場合でも微小な針孔は目立ち難いのでリッドの外観品質が低下することがない。この場合、その刺針が表皮材に、その針の、先端を尖らせた先細り部が表皮材の表皮層を僅かに貫通するが棒状の針本体は表皮層には達しない深さに突き刺されるので,刺針を表皮材より引き抜いたときは、表皮層を加熱しなくても該表皮層の弾性によって針孔を塞ぐことができて、針孔はリッドの表面側からは目視不能になる。しかもレーザー装置でティアラインを加工する場合に比べて、設備費の削減およびサイクルタイムの短縮を図ることができる。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、材料の弾性域内の温度の刺針を樹脂製表皮材に突き刺すことを特徴とするエアバッグ装置用リッドの製造方法が提案される。
【0010】
上記構成によれば、材料の弾性域内の温度の刺針を樹脂製表皮材に突き刺して針孔を形成するので、樹脂製表皮材が溶けて針孔が大きくなる虞がなく、リッドの外観品質が低下することがない。
【0011】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、列状に配置した多数の刺針で多数の針孔を同時に形成することを特徴とするエアバッグ装置用リッドの製造方法が提案される。
【0012】
上記構成によれば、列状に配置した多数の刺針を用いることにより、一工程で多数の針孔を形成して加工工数を大幅に削減することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図7は本発明の一実施例を示すもので、図1は自動車の車室前部の斜視図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3はリッドおよびエアバッグ装置の分解斜視図、図4は基材の加工工程の説明図、図5は基材に下孔を形成する作用の説明図、図6は表皮材の加工工程の説明図、図7は表皮材に針孔を形成する作用の説明図である。
【0015】
図1に示すように、自動車の車室前部には運転席シート1および助手席シート2が設けられており、運転席シート1の前方に配置されたステアリングホイール3の内部に運転席用エアバッグ装置Rdが設けられるとともに、助手席シート2の前方のインストルメントパネル4の内部に助手席用エアバッグ装置Rpが設けられる。助手席用エアバッグ装置Rpを覆うリッド6は合成樹脂製のインストルメントパネル4と一体に形成されている。
【0016】
図2および図3から明らかなように、インストルメントパネル4の裏面からリッド6の外周を囲むように支持壁7…が下方に延びている。助手席用エアバッグ装置Rpは、推薬の燃焼によって高圧ガスを発生するインフレータ8と、このインフレータ8を内部に収納する上面が開口した容器状のロアリテーナ9と、ロアリテーナ9をリッド6の支持壁7…に支持すべくロアリテーナ9および支持壁7…にそれぞれボルト10…,11…で固定されたアッパーリテーナ12と、折り畳み状態でリッド6の支持壁7…の内部に収納され、その開口部が前記ボルト11…でロアリテーナ9の上面開口部に固定されたエアバッグ13とを備える。尚、ロアリテーナ9は、インストルメントパネル4の内部に配置された図示せぬフレームに支持されている。
【0017】
リッド6の裏面には、「H」型のティアライン61 と、相互に平行な2本のヒンジライン62 ,62 とが形成される(図3参照)。図2に拡大して示すように、板状のリッド6は、その表面側から裏面側に表皮層14、フォーム層15および基材16を積層した3層構造を有しており、前記表皮層14およびフォーム層15は併せて表皮材17を構成する。「H」型のティアライン61 は基材16を貫通する溝状の下孔18と、この下孔18に沿って一定間隔で形成されて表皮材17をミシン目状に貫通する多数の針孔19…とから構成される。また2本のヒンジライン62 ,62 は、それぞれ基材16を貫通する2本の溝20,20から構成される。
【0018】
ティアライン61 の下孔18およびヒンジライン62 ,62 の溝20,20はリッド6の裏面側の基材16に形成されているため、リッド6の表面側からは目視不能である。またティアライン61 の針孔19…はリッド6の表皮材17を貫通しているが、その表面側の開口が表皮材17の弾性により閉塞するため、実際には殆ど目立たないようになっている。
【0019】
而して、自動車の衝突時に図示せぬ加速度センサが所定値以上の加速度を検出すると、助手席用エアバッグ装置Rpのインフレータ8が点火して高圧ガスを発生し、その高圧ガスの供給を受けたエアバッグ13が膨張する。エアバッグ13が膨張する圧力がリッド6の裏面に作用すると、下孔18および針孔19…により脆弱になったティアライン61 が破断し、溝20,20により薄肉になったヒンジライン62 ,62 を中心としてリッド6の中央部が車室側に押し開かれ、そこに形成された開口からエアバッグ13が車室内に展開する。
【0020】
次に、図4〜図7に基づいてリッド6のティアライン61 およびヒンジライン62 の製造方法を説明する。
【0021】
図4および図5に示すように、下孔加工装置21は熱刃ホルダー22の上面に5枚の熱刃231 ,232 ,232 ,233 ,233 を取り付けたもので、そのうち「H」型に配置された3枚の熱刃231 ,232 ,232 はティアライン61 の下孔18(図2参照)を形成するためのもので、残りの2枚の熱刃233 ,233 はヒンジライン62 ,62 の溝20,20(図2参照)を形成するためのものである。即ち、熱刃ホルダー22をリッド6の裏面側に接近させ、予め射出成形したリッド6の基材16を加熱した5枚の熱刃231 ,232 ,232 ,233 ,233 で溶断することにより、「H」型の下孔18と2本の溝20,20とが同時に形成される。このとき、リッド6の表面が受け治具27によって支持される。
【0022】
以上のようにしてティアライン61 の下孔18が形成されると、図6および図7に示すように、刺針ホルダー24の上面に多数の刺針25…を「H」型に植設した針孔加工装置26で前記針孔19…を加工する。即ち、刺針ホルダー24をリッド6の裏面側に接近させると、材料の弾性域内の温度の刺針25…が基材16の下孔18を通して表皮材17に突き刺され、その表皮材17を貫通する多数の針孔19…が同時に形成される。このときも、リッド6の表面が受け治具27によって支持される。
【0023】
刺針25は、図7に示されるように棒状の針本体とその針本体の先端に連なり且つ先端を尖らせた先細り部とを有しており、その直径は1mm程度である。そして、その刺針25は表皮材17に、該針25の、先端を尖らせた先細り部が表皮材17の表皮層14を僅かに貫通するが前記針本体は表皮層14に達しない深さに突き刺され、従って、刺針25を表皮材17より引き抜いたときは、前述したように表皮層14の弾性によって(即ち表皮層14を加熱しなくても)、表皮層14に開口する針孔19…が塞がれるため、該針孔19…はリッド6の表面側からは目視不能になる。また刺針25…を加熱することなく常温で表皮材17に突き刺すので、表皮材17が溶けて針孔19…が広がることがなく、従って針孔19…がリッド6の表面側から目立って外観品質が低下することがない。
【0024】
以上のように本実施例によれば、レーザー装置等の高価な加工装置を用いることなく、熱刃231 ,232 ,232 および刺針25…だけでリッド6にティアライン61 を形成することが可能となり、加工コストおよび加工時間の節減に寄与することができる。しかも、ティアライン61 の下孔18はリッド6の裏面側の基材16に形成されており、且つリッド6の表面側の表皮材17には微小な針孔19…だけが形成されるので、リッド6の表面側の外観にティアライン61 の影響が及ぶのを回避して外観品質を高めることができる。
【0025】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0026】
例えば、実施例ではリッド6をインストルメントパネル4と一体に成形しているが、リッド6をインストルメントパネル4と別部材で構成することも可能である。
【0027】
また実施例では車両内装材としてインストルメントパネル4を例示したが、エアバッグ装置を覆うパネルであれば任意の車両内装材に本発明を適用することが可能である。
【0028】
また実施例ではティアライン61 の下孔18を連続した溝によって構成しているが、それを複数の短い溝の集合、あるいは多数の孔の集合によって構成しても良い。
【0029】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、表皮材の表面側を受け治具で支持した状態で、樹脂製基材を熱刃で溶断してティアラインに沿う下孔を形成するので、エアバッグの膨張時に破断強度の高い樹脂製基材をティアラインに沿って確実に破断させることができる。また同じく前記表皮材の表面側を受け治具で支持した状態で、下孔に対向する樹脂製表皮材にその裏面側から刺針を突き刺してティアラインに沿う多数の針孔を形成するので、エアバッグの膨張時に樹脂製表皮材をティアラインに沿って確実に破断させることができるだけでなく、樹脂製表皮材の表面側から見た場合でも微小な針孔は目立ち難くなり、リッドの外観品質が低下することがない。この場合、その刺針が表皮材に、その針の、先端を尖らせた先細り部が表皮材の表皮層を僅かに貫通するが棒状の針本体は表皮層には達しない深さに突き刺されるので,刺針を表皮材より引き抜いたときは、表皮層を加熱しなくても該表皮層の弾性によって針孔を塞ぐことができて、針孔はリッドの表面側からは目視不能になる。しかもレーザー装置でティアラインを加工する場合に比べて、設備費の削減およびサイクルタイムの短縮を図ることができる。
【0030】
また請求項2に記載された発明によれば、材料の弾性域内の温度の刺針を樹脂製表皮材に突き刺して針孔を形成するので、樹脂製表皮材が溶けて針孔が大きくなる虞がなく、リッドの外観品質が低下することがない。
【0031】
また請求項3に記載された発明によれば、列状に配置した多数の刺針を用いることにより、一工程で多数の針孔を形成して加工工数を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 自動車の車室前部の斜視図
【図2】 図1の2−2線拡大断面図
【図3】 リッドおよびエアバッグ装置の分解斜視図
【図4】 基材の加工工程の説明図
【図5】 基材に下孔を形成する作用の説明図
【図6】 表皮材の加工工程の説明図
【図7】 表皮材に針孔を形成する作用の説明図
【符号の説明】
4 インストルメントパネル(車両内装材)
6 リッド
61 ティアライン
13 エアバッグ
16 基材(樹脂製基材)
17 表皮材(樹脂製表皮材)
18 下孔
19 針孔
231 熱刃
232 熱刃
25 刺針
Rp 助手席用エアバッグ装置(エアバッグ装置)
Claims (3)
- 車両内装材(4)の内部に収納したエアバッグ装置(Rp)を覆うように設けられ、膨張するエアバッグ(13)の圧力で破断するティアライン(61 )が形成されたリッド(6)であって、
表面側の樹脂製表皮材(17)の裏面側に樹脂製基材(16)が積層されてなり、且つその表皮材(17)が表面側の表皮層(14)及び裏面側のフォーム層(15)を有するものを製造するための、エアバッグ装置用リッドの製造方法において、
前記表皮材(17)の表面側を受け治具(27)で支持した状態で、前記樹脂製基材(16)を熱刃(231 ,232 )で溶断してティアライン(61 )に沿う下孔(18)を形成する第1の工程と、
同じく前記表皮材(17)の表面側を受け治具(27)で支持した状態で、棒状の針本体とその針本体の先端に連なり且つ先端を尖らせた先細り部とを有する刺針(25)を、前記下孔(18)に対向する樹脂製表皮材(17)にその裏面側から突き刺して、ティアライン(61 )に沿う多数の針孔(19)を形成する第2の工程とを備え、
前記第2の工程では、前記刺針(25)を前記表皮材(17)に、前記先細り部の尖った先端が前記表皮層(14)を僅かに貫通するが前記針本体は前記表皮層(14)には達しない深さに突き刺し、その後、該刺針(25)を前記表皮材(17)より引き抜いたときには、前記表皮層(14)を加熱しなくても該表皮層(14)の弾性によって前記針孔(19)が塞がれるようにしたことを特徴とするエアバッグ装置用リッドの製造方法。 - 材料の弾性域内の温度の刺針(25)を樹脂製表皮材(17)に突き刺すことを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグ装置用リッドの製造方法。
- 列状に配置した多数の刺針(25)で多数の針孔(19)を同時に形成することを特徴とする、請求項2に記載のエアバッグ装置用リッドの製造方法。
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