JP4092023B2 - ポリビニルアセタール樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリビニルアセタール樹脂の製造方法に関し、さらに詳しくは透明性及び溶解性に優れた微小粉末状のポリビニルアセタール樹脂を工業的に有利に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリビニルアセタール樹脂の中でも低重合度のものは、塗料、印刷、接着剤等の用途に幅広く用いられている樹脂であり、ポリビニルアルコールを原料として、これをアセタール化することにより得られる。その製造方法としては、例えば、溶解法、沈殿法等が知られている。このうち、沈殿法は単一工程で水溶液から粉末状製品を得ることができるため、反応後に溶液中からポリビニルアセタール化物を析出させて分離する必要がある溶解法に比べて工程が簡単で生産コストも安く、工業的生産に好適である。
【0003】
しかしながら、沈殿法においては、一般に反応温度が高いと沈殿析出に要する時間は短くなるが、得られるポリビニルアセタールの粒子が粗大化し、場合によっては沈殿した粒子同士が凝集するので、比較的低い温度でポリビニルアルコール溶液中にカルボニル化合物を添加することにより、微小な粉末状の化合物を沈殿させる必要があった。
【0004】
さらに重合度の低いポリビニルアルコールによるアセタール化は、より低い温度にて沈殿させる必要があり、時には反応温度を0℃以下に保たなければ微小な粉末状の樹脂が得られないため、低温に保持するための冷却設備を必要とすることがあった。また、低温にすることによって、ポリビニルアルコール水溶液のゲル化や、沈殿析出直後のアセタール化物の凍結等によりポリビニルアセタール樹脂の物性に悪影響を及ぼすこともあり、重合度100〜500のポリビニルアルコールのアセタール化によって微小な粒子を得ることは困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、低重合度のポリビニルアルコールとカルボニル化合物とを縮合反応させる際に、反応系を0℃以下まで冷却させずに、微小な粉末状のポリビニルアセタール樹脂を製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリビニルアセタール樹脂の製造方法は、酸触媒の存在下、水相中でポリビニルアルコールとカルボニル化合物とを縮合反応させてポリビニルアセタール樹脂を製造する方法であって、反応系を20℃以下に保ってポリビニルアルコール全添加量の80〜99.5重量%にカルボニル化合物を添加して縮合反応を行った後、反応系の温度を降下させ、反応生成物であるポリビニルアセタール化物の沈殿が析出するまでの間に、ポリビニルアルコールの残量0.5〜20重量%を添加し、さらにカルボニル化合物を複数回に分割して添加することを特徴とする。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明でいうポリビニルアセタール樹脂とは、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール樹脂であり、例えば、(パラ)ホルムアルデヒド(ホルマリン)、(パラ)アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒドなどのカルボニル化合物によって、ポリビニルアルコールをアセタール化することにより得られるものである。
【0009】
上記ポリビニルアルコールとしては、重合度100〜500、水酸基の含有割合20〜40モル%のものが好ましい。
【0010】
本発明の製造方法では、まず、ポリビニルアルコールの水溶液に酸触媒を加えた後反応系を20℃以下に保ち、カルボニル化合物を添加して縮合反応を行い、反応生成物であるポリビニルアセタール化物を沈殿によって析出させる。
反応初期において、ポリビニルアルコール全添加量の80〜99.5重量%が添加される。反応生成物であるポリビニルアセタール化物の沈殿を析出させないためには、カルボニル化合物の添加を複数回に分割することが好ましい。
【0011】
次いで、反応系の温度を好ましくは0〜5℃に降下させた後、ポリビニルアルコールの残量0.5〜20重量%を添加し、さらに、カルボニル化合物をポリビニルアセタール化物の沈殿が析出しないように分割して添加する。
所定時間反応後に、反応系の温度をさらに降下させてカルボニル化合物を添加し、ポリビニルアセタール樹脂の沈殿を析出させる。
【0012】
上記縮合反応において、ポリビニルアセタール樹脂の沈殿を析出させずに分割添加されるカルボニル化合物の合計量は、0℃付近においてブチルアルデヒドの場合でポリビニルアルコールに対して約40モル%、アセトアルデヒドの場合でポリビニルアルコールに対して約80モル%が好ましい。
【0013】
上記の製造方法で得られるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は60〜80モル%が好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例及び比較例を説明することにより、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
(実施例1)
重合度230のポリビニルアルコール280g(全添加量の95重量%)を純水2700gに加熱溶解した後40℃まで冷却して酸触媒55gを加え、反応系の温度を17℃まで降下させて、ブチルアルデヒド38.5gを添加した。次いで、反応系の温度を3℃まで降下させてポリビニルアルコール全添加量の5重量%のポリビニルアルコール水溶液を添加し、さらに、反応系の温度を2℃まで降下させて、ブチルアルデヒド38.5gを添加し、しかる後、反応系の温度を1℃まで降下させて、ブチルアルデヒド101.3gを添加し、白色の沈殿物を析出させた。
【0016】
その後、30分後に酸触媒300gを添加し、さらに90分後に反応系の温度を20℃へ昇温して5時間保った後、冷却、水洗し微小な粉末状ポリビニルブチラール化物を得た。得られたポリビニルブチラール化物を分離、水洗後、常法により中和、乾燥し、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
得られたポリビニルブチラール樹脂は、ブチラール化度約70モル%、平均粒径78μmで微小な粉末状であり、低粘度品にもかかわらず、透明性、溶剤溶解性が共に良好であった。
【0017】
(実施例2)
反応系の温度を3℃まで降下させて後のポリビニルアルコール添加量を、全添加量の3重量%としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリビニルブチラール樹脂を得た。得られたポリビニルブチラール樹脂は、ブチラール化度約70モル%、平均粒径88μmで微小な粉末状であり、低粘度品にもかかわらず、透明性、溶剤溶解性が共に良好であった。
【0018】
(実施例3)
反応系の温度を3℃まで降下させて後のポリビニルアルコール添加量を、全添加量の2重量%としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリビニルブチラール樹脂を得た。得られたポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度は、約70モル%、平均粒径93μmで微小な粉末状であり、低粘度品にもかかわらず、透明性、溶剤溶解性が共に良好であった。
【0019】
(実施例4)
重合度230のポリビニルアルコール280gを純水2700gに加熱溶解した後40℃まで冷却して酸触媒55gを加え、次いで、反応系の温度を17℃まで降下させてブチルアルデヒド38.5gを添加し、さらに反応系の温度を4℃まで降下させてポリビニルアルコール全添加量の5重量%のポリビニルアルコール水溶液を添加し、さらに、反応系の温度を3℃まで降下させて、ブチルアルデヒド38.5gを添加し、しかる後、反応系の温度を2℃まで降下させて、ブチルアルデヒド101.3gを添加し、白色の沈殿物を析出させた。
その後、30分後に酸触媒300gを添加し、さらに90分後に反応系の温度を20℃へ昇温し、5時間保った後、冷却、水洗し微小な粉末状ポリビニルブチラール化物を得た。得られたポリビニルブチラール化物を分離、水洗後、常法により中和、乾燥し、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
得られたポリビニルブチラール樹脂は、ブチラール化度約70モル%、平均粒径90μmと微小な粉末状であり、低粘度品にもかかわらず、透明性、溶剤溶解性が共に良好であった。
【0020】
(比較例1)
重合度230のポリビニルアルコール280gを純水2700gに加熱溶解した後40℃まで冷却して酸触媒55gを加え、次いで、反応系の温度を17℃まで降下させてブチルアルデヒド38.5gを添加し、さらに反応系の温度を4℃まで降下させてポリビニルアルコール全添加量の25重量%のポリビニルアルコール水溶液を添加し、さらに、反応系の温度を3℃まで降下させて、ブチルアルデヒド38.5gを添加し、しかる後、反応系の温度を2℃まで降下させて、ブチルアルデヒド101.3gを添加して反応させたが、ポリビニルアルコール水溶液の添加量が多いため粒子が粗大化し、30分後に酸触媒300gを添加し始めたが、粒子同士が凝集して撹拌不能となり、微小な粉末状のブチラール化物が得られなかった。
【0021】
(比較例2)
重合度230のポリビニルアルコール280gを純水2700gに加熱溶解した後40℃まで冷却して酸触媒55gを加え、次いで、反応系の温度を17℃まで降下させてブチルアルデヒド42gを添加し、さらに反応系の温度を1℃まで降下させて、ブチルアルデヒド144.3gを添加し、白色の沈殿物を析出させた。その後30分後に酸触媒300gを加え、90分後に反応系の温度を20℃まで昇温して5時間保った後冷却、水洗したが、微小な粉末状のポリビニルブチラール化物は得られなかった。このポリビニルブチラール化物を、分離、水洗後、常法により中和、乾燥し、ポリビニルブチラール樹脂を得た。
得られたポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルブチラール化度約70モル%、平均粒径140μmと粗大な粒子のため酸触媒の洗浄ができず、微白濁がみられた。また、溶剤溶解性についても、特にメチルエチルケトンに微量の未溶解物が確認された。
【0022】
(比較例3)
重合度230のポリビニルアルコール280gを純水2700gに加熱溶解した後40℃まで冷却して酸触媒55gを加え、次いで、反応系の温度を17℃まで降下させてブチルアルデヒド42gを添加し、さらに反応系の温度を2℃まで降下させ、ブチルアルデヒド144.3gを添加して縮合させたが粒子が粗大化し、30分後に酸触媒300gを加え始めたが、粒子同士が凝集し撹拌不能となり、微小な粉末状のブチラール化物が得られなかった。
【0023】
【発明の効果】
本発明のポリビニルアセタール樹脂の製造方法は、上述の構成であり、低重合度ポリビニルアルコールとカルボニル化合物との縮合反応を0℃以下まで冷却せずに行うことができるので、従来法に比べて工業的に極めて有利である。
また、得られるポリビニルアセタール樹脂は、微小な粉末状であり、低粘度であるため印刷インクとして好適に使用可能である。
Claims (2)
- 酸触媒の存在下、水相中でポリビニルアルコールとカルボニル化合物とを縮合反応させてポリビニルアセタール樹脂を製造する方法であって、反応系を20℃以下に保ってポリビニルアルコール全添加量の80〜99.5重量%にカルボニル化合物を添加して縮合反応を行った後、反応系の温度を降下させ、反応生成物であるポリビニルアセタール化物の沈殿が析出するまでの間に、ポリビニルアルコールの残量0.5〜20重量%を添加し、さらにカルボニル化合物を複数回に分割して添加することを特徴とするポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
- カルボニル化合物の各1回の添加量が、ポリビニルアセタール化物を沈殿させるに至らない量であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
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