JP4091130B2 - 生理活性物質tkr2449類、製造方法及び微生物 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、真菌感染症及び免疫疾患の治療剤として有用な生理活性物質TKR2449類及びそれらの製造方法、並びに、生理活性物質TKR2449を産生する微生物に関する。
背景技術
真菌は、ヒト、動物、植物等に感染して種々の疾病を引き起こすことが知られている。例えば、ヒトの皮膚、口腔等に表在性真菌症を起こし、内臓、脳等に全身性真菌症を起こし、ペット、家畜等の動物に対しても同様の感染症を起こす。更に、果樹、野菜等の植物に対しても、種々の病害を起こす。
このうち、ヒトに感染して、全身性真菌症を起こす原因真菌の主なものとしては、カンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、アスペルギルス(Aspergillus)等が知られ、表在性真菌症では、皮膚、口腔、膣等に感染するカンジダ、手足の皮膚等に感染する白癬菌等が主なものと考えられている。生活環境中にはこれら以外にも多様な真菌が存在し、動植物の汚染を引き起こす原因と考えられている。
近年、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎を始めとするアレルギー性疾患が急激に増大しつつある。ダニ、各種花粉等の環境中の各種物質、食物等に含まれる抗原性物質がアレルゲンとして作用しているアレルギー性疾患が多い。この中で真菌を原因とするアレルギー性疾患も非常に多く、カンジダ、アスペルギルス、アルタナリア(Alternaria)、クラドスポリウム(Cladosporium)、マラセチア(Malassezia)、ペニシリウム(Penicillium)等に由来するアレルゲンが原因として働いている。また、これらのアレルギー性疾患以外にも免疫機能が亢進した多くの免疫異常疾患がある。
このような真菌による感染症、汚染に対する治療、防御の目的に使用可能である抗真菌剤は、現在のところ、非常に少数のものが知られているに過ぎない。このうち、特にヒトを始めとする動物の全身性感染症に対する治療剤としては、アンホテリシンB、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾール等を挙げることができる。しかし、これらのものは、効力、毒性、抗菌スペクトル等の点で問題があり、治療剤としては充分なものではなかった。
また、アレルギー性疾患を始めとする免疫疾患の治療薬としては多くのものが存在するが、多様な免疫疾患を治療するためにはまだ充分とは言えない。特に、異常免疫反応調節活性と抗真菌活性といった複数の優れた機能を併せ持つ薬剤は少ない。
発明の要約
本発明の目的は、上述の現状に鑑み、真菌感染症、免疫疾患の治療剤として有用な新規生理活性物質を提供するところにある。
本発明者らは、新規な生理活性物質の探索を目的として、多数の微生物を自然界より分離し、その産生する生理活性物質を単離して、生物学的性質を調べたところ、オーレオバシディウム(Aureobasidium)属に属する微生物の培養物中に、カンジダ・アルビカンス、クリプトコッカス・ネオホルマンス等の病原性真菌に対して抗菌活性を示す生理活性物質が存在していることを見いだした。その後、本発明者らは、この生理活性物質を単離し、その理化学的性質を調べた結果、特有の理化学的性質を有する文献未記載の新規物質であることを確認し、この生理活性物質を、TKR2449と命名した。更に、TKR2449が免疫系への生理活性を有することを見い出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記一般式(A);
Figure 0004091130
(式中、R1、R2、R3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R4は、炭素数1〜8の直鎖又は分岐したアルキル基又はアルケニル基を表す。)で表される生理活性物質TKR2449類である。
本発明は、オーレオバシディウム(Aureobasidium)属に属する菌株であって、生理活性物質TKR2449を産生する菌株を培養し、その後、上記菌株の培養物から目的物を単離することを特徴とする生理活性物質TKR2449の製造方法でもある。
更に、本発明は、オーレオバシディウム(Aureobasidium)属に属し、生理活性物質TKR2449を産生することを特徴とする微生物でもある。
【図面の簡単な説明】
図1は、生理活性物質TKR2449の紫外線吸収スペクトルを示す図である。縦軸は吸光度を示し、横軸は波長(nm)を示す。
図2は、生理活性物質TKR2449の赤外線吸収スペクトルを示す図である。縦軸は透過率(%)を示し、横軸は波数(cm-1)を示す。
図3は、生理活性物質TKR2449の1H−NMRスペクトルを示す図である。縦軸はシグナルの強度を示し、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。
図4は、生理活性物質TKR2449の13C−NMRスペクトルを示す図である。縦軸はシグナルの強度を示し、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。
図5は、生理活性物質TKR2449のHPLCでの溶出位置を示す図である。縦軸は相対紫外線吸収強度を示し、横軸は保持時間(分)を示す。
発明の詳細な開示
本発明は、上記一般式(A)で表される生理活性物質TKR2449類である。
上記一般式(A)において、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。上記炭素数1〜4のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等を挙げることができる。好ましくは、R1、R2及びR3が水素原子の場合である。
上記一般式(A)において、R4は、炭素数1〜8の直鎖又は分岐したアルキル基又はアルケニル基を表す。上記炭素数1〜8の直鎖又は分岐したアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等を挙げることができ、上記炭素数1〜8の直鎖又は分岐したアルケニル基としては特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基等を挙げることができる。好ましくは、−CH2−CH=C−(CH32である。
上記一般式(A)において、R1、R2及びR3が水素原子であり、R4が−CH2−CH=C−(CH32である化合物は、下記式(I)で表される生理活性物質TKR2449である。
Figure 0004091130
上記生理活性物質TKR2449は、下記(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)の理化学的性質を有する。
(1)FAB−MS法による質量スペクトルが、m/z660[M+H]+のピークを有する
(2)炭素数が36であり、窒素数が1である
(3)メタノール中における紫外線吸収スペクトルの主要な吸収波長が、226nm、277nmであり、それらのE1% 1cmが、それぞれ、73、10である
(4)KBr法による赤外線吸収スペクトルの主要な吸収波数が、3420cm-1、2930cm-1、2850cm-1、1720cm-1、1510cm-1、1380cm-1、1240cm-1、1200cm-1、1140cm-1、1070cm-1、840cm-1、720cm-1である
(5)メタノール、クロロホルムに可溶であり、水、ヘキサンに難溶である。
上記生理活性物質TKR2449は、図3に示す1H−NMRスペクトル、図4に示す13C−NMRスペクトルを有し、逆相分配高速液体クロマトグラフィーにおいて、図5に示す位置に溶出される特性を有する。
上記生理活性物質TKR2449は、オーレオバシディウム(Aureobasidium)属に属し、上記生理活性物質TKR2449を産生する菌株を培養し、その後、上記菌株の培養物から単離することにより製造することができる。
更に、上記生理活性物質TKR2449を出発物質として下記に記載の方法を用いて一般式(A)で表されるTKR2449類を得ることができる。
上記生理活性物質TKR2449を、例えば、ベンゼン−メタノール混合溶媒中、トリメチルシリルジアゾメタン(TMSCHN2)で処理することによりメチルエステル体(R1=R2=R3=CH3)を得ることができる。また、ジメチルホルムアミド(DMF)中、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の縮合剤により各種のアルコール(R−OH)と反応させることにより対応するエステル(R1=R2=R3=R)を得ることができる。
上記一般式(A)のR4は、ヨウ化水素酸(HI)等のハロゲン化水素やナトリウムメトキシド(CH3ONa)等の塩基による処理、又は、ジクロロメタン−アセトン混合溶媒中、ヨウ化ナトリウム(NaI)及び四塩化ケイ素(SiCl4で処理することによって脱離させることができ、脱離後、メチルエステル体(R1=R2=R3=CH3)とした後、水素化ナトリウム(NaH)及び各種のハロゲン化アルキル(R4−X;X=I、Br、Cl)、又は、各種のアルキルトリクロロアセトイミド酸エステル(R4OC(=NH)CCl3)等により、対応するエーテル体(−O−R4)を得ることができる。更に、−COOR1、−COOR2、−COOR3は例えば、メタノール中、NaOH等のアルカリ処理により脱離して遊離のカルボキシル基を得ることができる。
本発明で使用される上記菌株としては、オーレオバシディウム(Aureobasidium)属に属し、上記TKR2449を産生するものであれば特に限定されず、例えば、オーレオバシディウム・エスピー(Aureobasidium sp.)TKR2449株(以下「TKR2449株」という)等を挙げることができる。
上記TKR2449株は、文献未記載の新菌株であって、本発明者らによって初めて分離同定されたものであり、TKR2449を有利に産生する特性を有するものである。以下、上記TKR2449株の菌学的性質を詳細に説明する。
上記TKR2449株は、各種培地におけるコロニー(以下「集落」ともいう)の色調が、表1に示すとおりである。なお、表中の色調は、日本工業規格JIS Z 8102(1985年)による色名を基準とし、培地に接種後、25℃で培養し、4日後、7日後及び14日後に観察した結果によって示したものである。また、集落の直径は、14日後に測定したものである。
Figure 0004091130
上記TKR2449株は、麦芽エキス寒天培地、YpSs寒天培地等で中等度に生育し、そのコロニーの中心部は光沢があり、通常、粘性を呈するか又は糊状を呈するが、培養日数が経過するにつれて皮革状となることもある。コロニーの周辺は仮根のような形状を顕著に示す。コロニーの色調は、培養初期においては白く、その後、次第に局部的にごく薄い黄から象げ色を呈するが、日が経過すると、暗い灰黄緑から暗い緑みの灰色を呈する。更に日が経過すると、コロニーの色調は、褐色から黒褐色へと変化する。この色素は不溶性である。
菌糸は、2〜3mm径であって、よく発達するが、気中菌糸は形成せず、寒天の内部に伸長する。菌糸の先端又は側面から、しばしば3〜4×3〜8mmの出芽型分生子を指先状に生じ、まり状の塊に増殖するものも観察される。若い栄養細胞は、酵母状を呈し、2〜4×5〜14mmの大きさであり、その形状は楕円形又はレモン形を呈し、多極出芽によって増殖を行う。大きさ4〜6×8〜10mmの分節胞子、大きさ4〜8×8〜16mmの厚膜胞子を形成し、子のう胞子は形成しない。
上記TKR2449株の菌学的性質のうち、生理学的性質は、下記に示すとおりである。
生育温度範囲:生育可能温度範囲が、10〜30℃であり、生育最適温度が、25℃付近である。
生育pH範囲:生育可能pH範囲が、pH3〜pH8であり、生育最適pHが、pH4〜pH7である。
上述の菌学的性質を有する菌種を、ダブリュー・ビー・クック(W.B.Cooke)著、ミコパソロジア・エト・ミコロジア・アプリカータ(Mycopathologia et Mycologia Applicata)第17巻、第1〜43頁(1962年);ジェイ・エー・フォン・アルクス(J.A.von Arx)著、ザ・ジェネラ・オブ・ファンジ・スポルレイティング・イン・ピュア・カルチャー(The Genera of Fungi Sporulating in Pure Culture)、ジェイ・クラマー・レーレ(J.Cramer Lehre)、イー・ジェイ・ヘルマニデス−ニジホフ(E.J.Hermanides−Nijhoff)著、スタディズ・イン・ミコロジー(Studies in Mycology)、No.15、第141〜166頁、シービーエス・バーン(CBS.Baarn)(1977年)等の文献に記載されたオーレオバシディウム属の菌種について検索することにより、上記TKR2449株は、オーレオバシディウム属に属する菌株であると同定することができる。
しかしながら、オーレオバシディウム属に属する菌株であって、TKR2449の産生能を有するものについては、これまで報告がなされたことはない。そこで本発明者らはこれを新菌株とし、オーレオバシディウム・エスピー TKR2449株(Aureobasidium sp. TKR2449)と命名し、Aureobasidium sp. TKR2449と表示し、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所〔あて名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305−8566)〕に、受託番号FERM BP−6327(原寄託日;平成9年(1997年)6月4日、国際寄託への移管請求日;平成10年(1998年)4月20日)として寄託した。
本発明においては、上記TKR2449株の他に、TKR2449株の自然的又は人工的変異株、オーレオバシディウム属に属するその他の菌種等であって、TKR2449の産生能を有する微生物を使用することができる。
本発明においては、TKR2449は、上記TKR2449を産生する菌株を、栄養源含有培地に接種し、培養することによって製造することができる。上記栄養源のうち、炭素源としては、例えば、グルコース、フルクトース、サッカロース、澱粉、デキストリン、グリセリン、糖蜜、水飴、油脂類、有機酸等を挙げることができる。これらは単独で使用されてもよく、適宜組み合わせて使用されてもよい。
上記栄養源のうち、窒素源としては、例えば、大豆粉、綿実粉、コーンスチープリカー、カゼイン、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、胚芽、尿素、アミノ酸、アンモニウム塩等の有機窒素化合物、無機窒素化合物等を挙げることができる。上記栄養源のうち、塩類としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、りん酸塩等の無機塩類等を挙げることができる。これらは単独で使用されてもよく、適宜組み合わせて使用されてもよい。
上記栄養源含有培地には、更に必要に応じて、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、コバルト塩等の重金属塩;ビオチン、ビタミンB1等のビタミン類;その他、菌の生育を助け、TKR2449の産生を促進する有機物、無機物等を適宜添加することができる。
上記栄養源含有培地には、上記栄養源の他に、更に必要に応じて、シリコーンオイル、ポリアルキレングリコールエーテル等の消泡剤、界面活性剤等を添加することができる。
上記TKR2449を産生する菌株を、上記栄養源含有培地で培養するに際しては、生理活性物質の産生を微生物の培養によって行う際に一般的に使用される方法を採用することができるが、液体培養法、中でも振とう法又は深部通気攪拌培養法を好適に使用することができる。
上記培養は、温度15〜25℃で行うことが好ましく、培地のpHは、通常pH3〜8であるが、pH5付近であることが好ましい。培養期間は、通常3〜15日で充分な産生量を得ることができる。
上述の培養方法によって、TKR2449は、培養液及び菌体に含有されて培養物中に蓄積される。本発明においては、培養物中に蓄積されたTKR2449は、これら抗真菌性物質の理化学的性質を利用して培養物中から分離した後、必要に応じて更に精製し、取得することができる。
上記分離は、培養物全体を、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、ブタノール、メチルイソブチルケトン等の非親水性有機溶媒で抽出することにより行うことができる。また、培養物を濾過又は遠心分離によって培養液と菌体とに分離した後、培養液、菌体のそれぞれから分離することもできる。
上記分離した培養液からTKR2449を分離するには、上記非親水性有機溶媒で抽出する方法を採用することもでき、また、培養液を吸着性の担体に接触させ、培養液中のTKR2449を担体に吸着させた後、溶媒で溶出する方法を採用することもできる。上記担体としては、例えば、活性炭、粉末セルロース、吸着性樹脂等を挙げることができる。上記溶媒としては、担体の種類、性質等によって適宜1種又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば、含水アセトン、含水アルコール類等の水溶性有機溶媒の含水溶液等を適宜組み合わせたもの等を挙げることができる。
上記分離した菌体からTKR2449を分離するには、アセトン等の親水性有機溶媒で抽出する方法を採用することができる。
本発明においては、このようにして培養物中から分離されたTKR2449の粗抽出物を、必要に応じて、更に精製する工程に付することができる。上記精製は、脂溶性生理活性物質の分離、精製に通常使用される方法によって行うことができ、このような方法としては、例えば、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、吸着性樹脂等の担体を用いるカラムクロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法等を挙げることができる。シリカゲルを担体として用いるカラムクロマトグラフィー法を採用する場合は、溶出溶媒としては、例えば、クロロホルム、酢酸エチル、メタノール、アセトン、水等を挙げることができ、これらは2種以上を併用することができる。
上記高速液体クロマトグラフィー法を採用する場合は、担体としては、例えば、オクタデシル基、オクチル基、フェニル基等が結合した化学結合型シリカゲル;ポリスチレン系ポーラスポリマーゲル等を挙げることができ、移動相としては、例えば、含水メタノール、含水アセトニトリル等の水溶性有機溶媒の含水溶液等を使用することができる。
本発明のTKR2449類は、そのまま、又は、その薬理学的に許容される塩となして医薬に使用することができる。上記塩としては薬理学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸、ふっ化水素酸、臭化水素酸等の鉱酸の塩;ぎ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマール酸、マレイン酸、こはく酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸等の有機酸の塩;ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属等の塩等を挙げることができる。
本発明のTKR2449類又はその薬理学的に許容される塩を医薬として投与する場合、本発明のTKR2449類又はその薬理学的に許容される塩は、そのまま、又は、医薬的に許容される無毒かつ不活性の担体中に、例えば、0.1〜99.5%、好ましくは0.5〜90%含有する医薬組成物として、ヒトを含む動物に投与される。
上記担体としては、例えば、固形、半固形若しくは液状の希釈剤、充填剤又はその他の処方用の助剤等を挙げることができ、これらは、1種以上を用いることができる。
上記医薬組成物は、投与単位形態で投与することが好ましく、経口投与、組織内投与、局所投与(経皮投与等)又は経直腸的に投与することができる。上記医薬組成物は、これらの投与方法に適した剤型で投与されることは当然である。
本発明のTKR2449類又はその薬理学的に許容される塩を医薬として投与する場合、抗真菌剤としての用量は、年齢、体重等の患者の状態、投与経路、病気の性質と程度等を考慮した上で調整することが望ましいが、通常は、ヒトについては、成人に対して本発明の有効成分量として、一日当たり、10〜2000mgの範囲である。上記範囲未満の用量で足りる場合もあるが、逆に上記範囲を超える用量を必要とする場合もある。多量に投与するときは、一日数回に分割して投与することが望ましい。
上記経口投与は、固形、粉末又は液状の用量単位で行うことができ、例えば、末剤、散剤、錠剤、糖衣剤、カプセル剤、ドロップ剤、舌下剤、その他の剤型等により行うことができる。
上記組織内投与は、例えば、溶液や懸濁剤等の皮下、筋肉内又は静脈内注射用の液状用量単位形態を用いることによって行うことができる。これらのものは、本発明のTKR2449類又はその薬理学的に許容される塩の一定量を、例えば、水性や油性の媒体等の注射の目的に適合する非毒性の液状担体に懸濁又は溶解し、ついで上記懸濁液又は溶液を滅菌することにより製造される。
上記局所投与(経皮投与等)は、例えば、液、クリーム、粉末、ペースト、ゲル、軟膏剤等の外用製剤の形態を用いることによって行うことができる。これらのものは、本発明のTKR2449類又はその薬理学的に許容される塩の一定量を、外用製剤の目的に適合する香料、着色料、充填剤、界面活性剤、保湿剤、皮膚軟化剤、ゲル化剤、担体、保存剤、安定剤等のうちの一種以上と組み合わせることにより製造される。
上記経直腸的投与は、本発明のTKR2449類又はその薬理学的に許容される塩の一定量を、例えば、パルミチン酸ミリスチルエステル等の高級エステル類、ポリエチレングリコール、カカオ脂、これらの混合物等の低融点の固体に混入した座剤等を用いて行うことができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
実施例1
TKR2449株(FERM BP−6327)の斜面培養から一白金耳を、100mlの液体培地(ディフコポテトデキストロースブロス2.4%(W/V)を入れた500ml容の三角フラスコに接種し、25℃で3日間振とうし、種培養液を得た。この種培養液1.0mlを上記液体培地125mlを入れた500ml容の三角フラスコ8本に接種し、25℃、12日間振とう培養(振とう220rpm)を行った。このようにして得た培養液を遠心分離し、上澄み液と菌体とに分離した。得られた上澄み液を、水で平衡化したダイヤイオンHP20(三菱化学社製)カラム(0.5L)に吸着させ、水洗後、2Lの80%メタノールにて溶出し、活性画分を得た。この画分を減圧濃縮することにより残渣205mgを得た。
これをメタノール0.8mlに溶解し、高速液体クロマトグラフィーに付し、活性画分を得た。この画分を減圧濃縮することにより、TKR2449の精製物6.8mgを白色粉末として得た。なお、高速液体クロマトグラフィーの条件は下記によった。
装置:LC8A(島津製作所社製)
カラム:YMCpack C18(2.0cm×25cm)(ワイエムシー社製)
移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含む70%(V/V)アセトニトリル/水
理化学的性質
質量分析には、JMS−DX302型質量分析装置(日本電子社製)を用いた。1H−NMRスペクトル(重メタノール中、標準物質:テトラメチルシラン)、及び、13C−NMRスペクトル(重メタノール中、標準物質:重メタノール)の測定には、JNM−A500核磁気共鳴装置(日本電子社製)を用いた。紫外線吸収スペクトル分析(メタノール中)には、UV−250型自記分光光度計(島津製作所社製)を用いた。赤外線吸収スペクトル分析(KBr法)には、270−30型赤外分光光度計(日立製作所社製)を用いた。以下にTKR2449物質の理化学的性質を述べる。
(1)質量分析
高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物は、質量分析によるFAB−MS測定で、m/z660[M+H]+であることが判明した。
(2)炭素数、窒素数
高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物は、1H−NMRスペクトル測定、13C−NMRスペクトル測定及びその解析により、炭素数36であり、窒素数1であることが判った。その1H−NMRスペクトルを図3に、13C−NMRスペクトルを図4に示した。
(3)紫外線吸収スペクトル
高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物のメタノール中における紫外線吸収スペクトル測定結果は、下記のとおりであった。
UV(nm) (E1% 1cm):226(73)、277(10)
また、紫外線吸収スペクトルを図1に示した。
(4)赤外線吸収スペクトル
高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物のKBr法による赤外線吸収スペクトル測定結果は、下記のとおりであった。
IR(KBr)(cm-1):3420、2930、2850、1720、1510、1380、1240、1200、1140、1070、840、720
得られた赤外線吸収スペクトルを図2に示した。
また、得られたTKR2449物質の各種溶媒に対する溶解性は、メタノール、クロロホルムに可溶であるが、水、ヘキサンには難溶であった。
上記分析結果により、高速液体クロマトグラフィーに付し、得られた活性画分を減圧濃縮することにより得られた白色粉末精製物は、TKR2449であることが判明した。
上記TKR2449を、LC−10A型高速液体クロマトグラフィー装置(島津製作所社製)を用いた逆相分配高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析に供した。なお、高速液体クロマトグラフィーの条件は下記によった。
カラム:CAPCELL PAK C18(6mm×150mm)(資生堂社製)
移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含む70%(V/V)アセトニトリル/水
カラム温度:40℃
検出UV波長:220nm
その結果、上記TKR2449は図5に示す位置に溶出されることが明らかになった。
生物学的性質
(1)抗菌活性
得られたTKR2449を使用して各種微生物に対する抗菌スペクトルを調べた。測定は、液体培地希釈法により、菌の増殖をほぼ完全に阻止した濃度を最小生育阻害濃度(μg/ml)として求めた。結果を表2に示した。また、部分的に菌の増殖を阻害する最小濃度を半阻止濃度(μg/ml)として求め、併せて表2の括弧内に示した。表中、YNBGは、イーストナイトロジェンベース(ディフコ社製)0.67%、グルコース1.0%を含有するYNBG培地を表す。
Figure 0004091130
表2の結果から、本発明の生理活性物質TKR2449は、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・ケフィール、クリプトコッカス・ネオホルマンス等の病原性真菌に対して抗菌活性を有することが判明した。
(2)混合リンパ球反応(MLR)阻害活性
C57BL/6マウス及びBALB/cマウスより脾臓を摘出し、培地中でホモゲナイズし細胞懸濁液とした。C57BL/6由来の細胞懸濁液をナイロンウールカラムにかけ、T細胞リッチなものを調製した(レスポンダー細胞)。BALB/c由来の細胞懸濁液をX線照射し、スティムレーター細胞を調製した。レスポンダー細胞とスティムレーター細胞とを1:1の割合で混ぜ、CO2インキュベーター内で、4日間培養後、3H−チミジンを加え、更に1晩培養後、細胞を回収し、3H−チミジン取り込み量を測定した。サンプル(ジメチルスルホキシド溶液を培地で希釈した500、125、31.2、7.8μg/ml溶液)は、レスポンダー細胞とスティムレーター細胞とを混ぜる際に0.5%加え、最終濃度25〜0.039μg/mlとした。サンプル無添加群の3H−チミジン取り込み量と比較して、阻害活性を求めた。TKR2449は、濃度依存的なMLR阻害活性を示し、その50%阻害濃度は、0.15μg/mlであった。即ち、免疫反応を阻害する効果があることが明らかとなった。
また、得られたTKR2449を、それぞれ、ICR系マウスに50mg/kgを腹腔内投与したが、毒性は認められなかった。
実施例2 TKR2449のメチル化物(R1=R2=R3=CH3)の調製
TKR2449(5.0mg、7.6μmol)をメタノール−ベンゼン(2:8、50μl)に溶解し、室温でトリメチルシリルジアゾメタン(10%ヘキサン溶液、50μl、44μmol)を加えて、2.5時間攪拌した。反応液が透明になるまで10%酢酸を加えてトリメチルシリルジアゾメタンを分解させた後、減圧濃縮した。残渣をメタノール400μlに溶解し、高圧液体クロマトグラフィーに付し、TKR2449のメチル化物の画分を減圧濃縮することにより、精製物1.9mgを白色粉末として得た。なお、高速液体クロマトグラフィーの条件は下記によった。
装置:LC8A(島津製作所社製)
カラム:CAPCELL PAK C18(10mm×250mm)(資生堂社製)
移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含む70%(v/v)アセトニトリル/水
FAB−MS:m/z701[M+H]+
産業上の利用可能性
本発明により、真菌感染症及び免疫疾患の治療剤等の臨床医薬として有用である生理活性物質TKR2449類並びにそれらの製造方法を提供することができる。

Claims (4)

  1. 下記一般式(A);
    Figure 0004091130
    (式中、R1、R2、R3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R4は、炭素数1〜8の直鎖又は分岐したアルキル基又はアルケニル基を表す。)で表される生理活性物質TKR2449類。
  2. 1、R2、R3は、水素原子であり、R4は、−CH2−CH=C−(CH32である請求項1記載の生理活性物質TKR2449類。
  3. オーレオバシディウム(Aureobasidium)属に属する菌株であって、生理活性物質TKR2449を産生する菌株を培養し、その後、前記菌株の培養物から目的物を単離することを特徴とする生理活性物質TKR2449の製造方法。
  4. オーレオバシディウム(Aureobasidium)属に属し、生理活性物質TKR2449を産生することを特徴とする微生物。
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