JP4090462B2 - 磁気光学素子及び光学装置 - Google Patents

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Description

本発明は、大きな磁気光学効果を生じさせることができ、磁化された像の可視化やレーザ光による読出し等が可能で各種分野に応用し得る磁気光学素子及び光学装置に関する。
磁性体を磁化し、磁化方向に平行に直線偏光を入射させると、その直線偏光は磁性体を通過することにより光の偏光面が回転されることはファラデー効果として知られている。このようなファラデー効果を有する材料を用いて磁気記録媒体(磁気光学素子)などが作られている。
例えば、特許文献1によればイットリウム及び希土類鉄ガーネットとその誘電体を用いた磁気記録媒体、特許文献2によれば六方晶フェライトを用いた磁気記録媒体、特許文献3によればイットリウム鉄ガーネット粒子を用いた塗布型磁気記録媒体、特許文献4によれば希土類鉄ガーネット微粒子を用いた塗布型磁気記録媒体等が開示されている。これらの磁気記録媒体は、磁性体或は磁性体微粒子を基体上に薄膜状に記録層として形成した構造を有している。このような磁気記録媒体によれば、記録・消去・読出しを良好に行うことができる。
特開昭56−15125号公報 特開昭61−89605号公報 特開昭62−119758号公報 特開平4−132029号公報
ところが、これらの公報類に開示された従来の磁気記録媒体による場合、記録・消去・読出しなるメモリ的な使用に限られてしまい、ディスプレイ等の他の用途への応用・転用には不向きなものである。また、メモリ的な使用に関しても、必ずしも十分大きな磁気光学効果が得られるわけではなく、読出し等のS/Nがよいとは限らない。
そこで、本発明は、極めて大きな磁気光学効果を得ることができ、磁気ヘッドにより記録・消去・読出しが行えるのはもちろん、磁化された像の可視化によるディスプレイ等への応用やレーザ光による読出し等が可能で各種分野に応用し得る磁気光学素子を提供することを目的とする。さらには、本発明は、透過型・反射型を問わずディスプレイ等に応用し得る磁気光学素子及び光学装置を提供することを目的とする。また、本発明は、コントラストの向上や多色表示できるディスプレイ化が可能な磁気光学素子及び光学装置を提供することを目的とする。
請求項1記載の発明の磁気光学素子は、基板表面に0.2〜2μmの範囲のピッチと深さよりなるグレーティング形状で同一方向の周期構造を有し、この周期構造上に一層の20〜200nmの厚さの磁性層を有し、可視光に対して前記周期構造の溝部と格子部からの光の干渉でファラデー効果を増大させることを特徴としディスプレイを構成するものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の磁気光学素子において、周期構造は、2次元的である。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の磁気光学素子において、周期構造をなすピッチの周期が2種類以上である。
請求項4記載の発明は、請求項1,2又は3記載の磁気光学素子と、この磁気光学素子に対面する1枚又は2枚の偏光子と、を備える光学装置である。
本発明によれば、0.2〜2μmの範囲のピッチと深さよりなるグレーティング形状で同一方向の周期構造上に一層の20〜200nmの厚さの磁性層を有するので、画素に白色を表示するときに画素に表示される画像の白さが高められる(明るくなる)。また、基板表面にグレーティング形状で同一方向の周期構造を有し、かつ、この周期構造上に磁性層を有するので、画素に黒色を表示するときに画素に表示される画像の黒さが高められる(暗くなる)。これにより、画像のコントラストを大きくすることができる。
本発明の一実施の形態を図1ないし図5に基づいて説明する。
図1は磁気光学素子1の基本的構成例を模式的に示すもので、基板2の表面には微細なグレーティング形状による周期構造3が形成され、この周期構造3の表面全域に渡って薄い磁性層4が連続して形成されている。ここに、周期構造3は、例えば、図1(a)に示すように凹凸の繰返しによる矩形波状の周期構造3aであってもよいが、この他、例えば図1(b)に示すような三角波状の周期構造3b、図1(c)に示すような正弦波状の周期構造3c、図1(d)に示すような台形波状の周期構造3d等であってもよく、その形状は特に問わない。或は、三角波状の周期構造に関し、その周期構造のみを示す図2(a)のようにノコギリ波状の周期構造3eとしてもよい。この場合、その変形例として、図2(b)〜(d)に示すように周期構造3eをさらにステップ状(階段状)に細分化してなる周期構造3f,3g,3i等としてもよい。これらの図2に例示する周期構造3e〜3iに関しては、実際に作製してその効果を確認したものである。要は、入射光が回折することであり、周期構造3のピッチPが精度よく作製され、かつ、入射光の波長λに対してP≒λなる関係を満足する構造であればよい。可視光はもちろん、レーザ光を考慮した場合、各周期構造3に関してピッチPと溝深さとが0.2〜2μmオーダの周期的なグレーティングであればよい。
次に、周期構造3の方向性について説明する。基板2上に形成する周期構造3は縦又は横方向の1方向のみでも構わないが、例えば、図3に例示するように、縦横両方向に2次元的に形成するようにしてもよい。図3は周期構造3aの場合を示す。この際、周期構造3は縦方向と横方向とで周期が異なってもよく、或は、或る領域のみを対象として部分的に縦方向と横方向とで周期を異ならせてもよい。
また、基板2について説明する。この基板2は透明基板であってもよいが、不透明な基板であってもよい。要は、入射される可視光に対して周期構造3部分で回折が生じればよく、反射型構成であってもよい。ここに、不透明な基板2を用いて反射型とする場合、磁性層4を透明とし、周期構造3の表面(グレーティングの表面)で入射光を反射させてよく、さらには、磁性層4も不透明としてその表面で反射させるようにしてもよい。何れにしても、回折によって磁気光学効果を増大させることができる。この基板2の材料としては、一般に、アルミニウムのような耐熱性金属、石英ガラス、GGG(ガリウムカドリウムガーネット)、サファイア、リチウムタンタレート、結晶化透明ガラス、パイレックスガラス(「パイレックスガラス」は登録商標である、以下同様)、単結晶シリコン、Al23、Al23・MgO、MgO・LiF、Y23・LiF、BeO、ZrO2、Y23、ThO2・CaOなどの透明セラミック材料、無機シリコン等の無機材料を用い得る。
次に、用いる光(入射光)について説明する。用いる入射光は可視光を基本とするが、必ずしも、可視光に限らず、単一波長のレーザ光を用いるようにしてもよい。この場合、レーザ光は、周期構造3の回折効率が最大となる波長のものが選定される。
このような磁気光学素子1に関して、重要なことは、入射光が回折、即ち、干渉することである。このためには、周期構造3における溝部分と格子部分との屈折率が異なることが必要である。この点は、溝部分を空気中とすることで容易に達成される。また、磁性層4を透明とするか不透明とするかは用途等に応じて適宜設定されるが、磁性層4の厚さに関しては周期構造3の形状、材料の屈折率等に応じて各々最適値があるが、一般的には、20〜200nm程度の層厚が好ましい。もっとも、磁性材料によっては、波長に応じて磁気光学効果の異なる波長依存性を有するので、周期構造3の形状との組合せが難しいケースを生じてしまう。この点、平均粒子径が200Å以下のFe,Co,Niのような強磁性体又はこれらの合金の微粒子を含む磁性層4とすれば、波長依存性が少ないので、レ
ーザ光を用いる場合でも周期構造3の形状に依らず設計が容易となる。図4はFeの超微粒子の磁気光学効果の波長依存性を示す特性図である。また、このようなFe,Co,Niのような強磁性体又はこれらの合金の微粒子を含む磁性層4によれば、単独での磁気光学効果が大きいという特長を活かすこともでき、かつ、その平均粒子径を200Å以下とすれば量子サイズ効果による磁気光学効果の増大性も利用できることになり、光透過率も大きく、一層有利となる。ちなみに、Fe,Co,Niのような強磁性体又はこれらの合金の微粒子であってもその平均粒子径が200Åより大きくなると量子サイズ効果は生じない。
もっとも、特定の周期構造3を対象とする場合であれば、磁性層4に用いる磁性材料としては、特に制限されず、一般的な磁性材料であってもよい。例えば、γ‐Fe23,Fe34,FeNx ,Baフェライト,Coフェライト等のフェライト、希土類鉄ガーネット等のガーネット、PtCo,FeTb等であってもよい。
このような基本的構成よりなり大きな磁気光学効果を示す磁気光学素子1によれば、磁気ヘッドを用いて磁化した場合、その磁化部と非磁化部とでは入射光の偏光面の回転角が異なるために、高いコントラストの画像を得ることができる。例えば、22.5°の回転角があると、磁化の方向が+と−とで45°の違いとなる。そこで、反射型構造にすると、2回通過するので、+と−とでは90°の違いとなる。即ち、偏光面は+磁化部と−磁化部とで90°回転方向が異なるので、クロスニコルの配置となり、液晶ディスプレイの場合と同様に高いコントラストを得ることができる。また、レーザ光を用いれば、高密度磁気メモリとしても用いることができる。即ち、現在市場に出回っている光磁気メモリよりも回転角が大きいので、S/Nのよいメモリとなる。この際、レーザ光のビーム径さえ小さくすればS/Nがよくなるので、一層の高密度化も可能となる。
なお、磁気的な記録を消去するには、スピンの向きを全て同一に揃えるように磁石を用いて磁気光学素子1全体を均一に磁化するか、或は、交流磁場を用いてスピンをランダムな方向に向ける消去法を用いればよい。
また、このような周期構造3と磁性層4とを有して光の偏光面を大きく増幅し得る磁気光学素子1に対して、図5に示すように、両側2枚の偏光子5,6を配設した光学装置7とすれば、透過型液晶ディスプレイの場合と同様な透過型ディスプレイとすることができる。磁気光学素子1が反射型構造の場合であれば、1枚の偏光子5だけでもよい。
さらに、前述した周期構造3に関して、そのピッチと深さの周期の異なる周期構造を同一の基板2表面に形成しておけば、複数の波長光の入射光に対して磁気光学効果の増大機能を発揮させることができる。よって、例えばR,G,Bの各色波長に合わせて3種類の周期の周期構造3を形成しておけば、ディスプレイのカラー化も1枚の磁気光学素子1で可能となる。
以下、上述した基本的構成例に基づく具体的な構成例を実施例1〜4として、比較例1〜3とともに説明する。
<実施例1>
1mm厚さの石英基板(基板2)の片面に、Cr23、Crの2層を合計層厚が120nmとなるように形成した後、その表層にポジ型レジスト層を形成した。このレジスト層上にフォトマスクを配置し、紫外線を用いて、周期構造3をなすグレーティング形状のピッチが1.9μmとなるように露光した。ついで、ウェットエッチング法を用いて、レジスト層をエッチングし、さらに、フッ素ガスを用いて石英基板をエッチングすることで、周期構造3のグレーテイングにおける溝深さが0.5μmとなるように加工した。この後、レジスト層を剥離した。このような石英基板の加工表面(周期構造3)上に、ガス中蒸着法を用いて基板を加熱することなく鉄超微粒子膜を磁性層4として成膜した。使用したArガスは50CCM 、乾燥空気は2CCM の流量で流し、全圧力で1.3Paとした。平均膜厚は100nmであった。このような成膜後の断面をTEM(透過型顕微鏡)観察したところ、鉄の平均粒子径は60Åで、各微粒子は非磁性層で隔離されていた。光電子分光法(XPS=X-ray Photoelectron Spectroscopy) で測定した膜の組成によれば、鉄が72%で、後はO,C,Nが含まれていた。平坦部で測定した保磁力は450Oe、面内方向の角型比は0.8で大きな面内異方性を有する磁性層4であった。
このような磁気光学素子1に関して、磁気光学効果の波長依存性を測定した。光のビーム径は約3mmであった。ついで、波長依存性データのピーク波長で、最大15kガウスの印加磁界を用いてヒステリシスを測定したところ、0次回折光の場合で図6に示すような特性が得られた。ヒステリシスは飽和していないが、磁界を0とした場合で14.6°の回転角が得られたものである。
<比較例1>
1mm厚さの石英基板の片面に(加工表面を有しない)、上記の実施例1の場合と全く同様にして鉄超微粒子膜を成膜した。平均膜厚、膜断面のTEM観察、平均粒子径、膜の組成、保持力、角型比は実施例1の場合と同じであったが、上記の場合と同様に測定したヒステリシスでは、磁界を0とした場合で0.09°の回転角しか得られなかったものである。
<比較例2>
実施例1のような石英基板の加工表面上に、真空蒸着法を用いて、基板を加熱せずに鉄膜を成膜した。基板圧は8×10~5Paであった。平均膜厚は100nmであった。このような成膜後の断面をTEM観察したところ、鉄の連続膜が形成されていた。XPSで測定した膜の組成によれば、鉄が99%で、後はO,C,Nが若干含まれていた。平坦部で測定した保磁力は7Oe、面内方向の角型比は0.96で大きな面内異方性を有する膜であった。このような素子に関して、実施例1の場合と同様にヒステリシスを測定したところ、磁界を0とした場合で9°の回転角しか得られなかったものである。
<実施例2>
基本的に、実施例1の場合と同様であるが、周期構造3を2次元的とし、縦方向及び横方向に、ピッチ=1.9μm、溝深さ=0.5μmとなるように加工した。後は、実施例1の場合と全く同様として磁気光学素子1を作製し、そのヒステリシスを測定したところ、磁界を0とした場合で15°の回転角が得られたものである。
<実施例3>
基本的に、実施例1の場合と同様であるが、周期構造3に関して、周期のピッチが1.9μmと1.5μmとの2種類となるようにし、これらの2種類が25回で交代するようにし、かつ、溝深さは0.5μmとなるように加工して周期構造3を形成した。後は、実施例1の場合と全く同様として磁気光学素子1を作製し、その磁気光学効果の波長依存性を測定したところ、475nmと630nmとの2つの周波数の箇所でピークを示す結果が得られたものである。このような2つのピーク波長でヒステリシスを測定したところ、磁界を0とした場合で各々14.5°と13°の回転角が得られたものである。
<実施例4>
実施例1に従い作製された磁気光学素子1の両面を2枚の市販のフィルム偏光子(偏光子5,6)で挾んだ。このようにフィルム偏光子の上から、直径1mm、長さ1mm、表面磁束密度3kガウスの円筒状棒磁石を用いて、磁気光学素子1上に文字を記録した。2枚のフィルム偏光子の偏光軸を相対的に回転し、最も磁化した文字と非磁化部位とのコントラストが大きくなるようにして固定した。この場合のコントラストは1.3であり、画像表示に適することが判った。
<比較例3>
比較例1に従い作製された磁気光学素子を、実施例4の場合と同様に2枚のフィルム偏光子で挾み、円筒状棒磁石で記録した文字を観察したが、コントラストは測定できなかったものである。
本発明の一実施の形態の基本的構成例を示す模式的断面図である。 三角波状の周期構造の変形例を示す模式的断面図である。 2次元的な周期構造を示す構成図である。 Fe超微粒子の磁気光学効果の波長依存性を示す特性図である。 偏光子を組み合わせた光学装置例を示す模式的断面図である。 実施例における鉄超微粒子膜の磁気光学効果を示すシステリシス特性図である。
符号の説明
1 磁気光学素子
2 基板
3 周期構造
4 磁性層
5,6 偏光子
7 光学装置

Claims (4)

  1. 基板表面に0.2〜2μmの範囲のピッチと深さよりなるグレーティング形状で同一方向の周期構造を有し、
    この周期構造上に一層の20〜200nmの厚さの磁性層を有し、
    可視光に対して前記周期構造の溝部と格子部からの光の干渉でファラデー効果を増大させることを特徴とするディスプレイを構成する磁気光学素子。
  2. 周期構造は、2次元的である請求項1記載の磁気光学素子。
  3. 周期構造をなすピッチの周期が2種類以上である請求項1又は2記載の磁気光学素子。
  4. 請求項1,2又は3記載の磁気光学素子と、
    この磁気光学素子に対面する1枚又は2枚の偏光子と、
    を備える光学装置。

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