JP4090104B2 - 基板熱処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用のガラス基板、液晶表示装置用のガラス基板、光ディスク用の基板などの各種の基板を加熱処理するための基板熱処理装置に係り、特に加熱された基板載置プレート上に基板を載置または近接載置した状態で基板を加熱処理する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の基板熱処理装置を図12を参照して説明する。
この基板熱処理装置は、半導体製造工程において、半導体ウエハ(以下、単に「基板」という)上に形成されたレジスト膜の露光処理前の加熱処理(プリベーク処理)、露光処理後の加熱処理(PEB:Post Exprosure Bake )および現像後の加熱処理(ポストベーク処理)などに用いられる。
【0003】
この基板熱処理装置は基板Wを所定の温度に加熱するための基板載置プレート1を備えている。基板載置プレート1の内部にはマイカヒータ等の熱源が埋め込まれている。基板載置プレート1の上面には基板Wの下面を支持する複数個の球状スペーサ2が配置されている。基板載置プレート1には、基板載置プレート1の上面に出没自在に3本の支持ピン3が設けられている。これらの支持ピン3の基端が昇降フレーム4に連結支持されている。昇降フレーム4の一端にはエアーシリンダ5が連結されており、エアーシリンダ5のロッドの伸縮動作に応じて支持ピン3が昇降するようになっている。
【0004】
処理対象である基板Wは図示しない基板搬送ロボットで搬送されてきて、昇降状態にある支持ピン3上に移載される。続いて支持ピン3が下降して基板Wを基板載置プレート1上に載置する。具体的には基板Wは球状スペーサ2に接触支持されるので、基板載置プレート1に対しては近接載置された状態になる。この状態で所定時間の加熱処理が行われた後、支持ピン3が上昇して処理済みの基板Wを持ち上げて待機状態にする。この基板Wを基板搬送ロボットが受け取って搬出する。
【0005】
図13はこのときの基板Wの熱履歴を示している。すなわち、レジスト膜が形成された基板Wが基板載置プレート1上に載置されると、基板Wの温度が室温近傍から所定の設定温度T1、例えば110°Cにまで昇温される。そして、基板Wは所定の加熱処理期間中、設定温度T1に保持され、一定の待機期間を経て外部に取り出される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
最近では、基板W上に形成されるパターンの特性に応じて種々のフォトレジストが使用されている。基板熱処理装置における基板Wの加熱処理の設定温度T1はレジストの種類により異なる。したがって、異なる種類のレジストが塗布された基板Wが連続して供給される場合、基板Wの設定温度T1を供給される基板Wのレジストの種類に応じて即座に変更して基板Wの加熱処理を行うことが望まれる。
【0007】
従来の装置では、基板載置プレート1内のマイカヒータ等の熱源の出力を制御して設定温度T1を調整している。したがって、次の処理対象の基板Wの設定温度T1が直前の処理済の基板Wの設定温度T1よりも低い場合には、基板載置プレート1の熱源の出力を抑制して基板載置プレート1の表面温度を自然放熱に因って低下させなければならない。
【0008】
しかしながら、この種の基板熱処理装置の基板載置プレート1は、周囲がカバーで覆われた気密構造を備えているので、自然放熱による冷却効果は極めて小さい。そのため、基板載置プレート1の表面温度は容易に低下しないので、設定温度T1の異なる基板Wを連続して処理することが困難である。このような理由で、従来では、基板Wの設定温度T1の種類ごとに複数台の基板熱処理装置を設けて加熱処理を行っている。その結果、多数の基板熱処理装置が必要になり、そのスペースと設備費が増大するという弊害が生じている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、基板に対する熱処理の設定温度の変更を迅速に行うことができる基板熱処理装置を提供することを目的としている。
また、本発明の他の目的は、基板を均一に熱処理することができる基板熱処理装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、加熱された基板載置プレート上に基板を載置または近接載置した状態で基板の熱処理を行う基板熱処理装置において、前記基板載置プレート内に設けられ、所定温度で蒸発する作動液を収容するとともに、前記作動液の蒸気を滞留させる蒸気空間を有する流体収容室と、前記基板載置プレートの下方に設けられ、前記流体収容室内の作動液を加熱する加熱手段と、前記基板載置プレートの下方に、前記加熱手段と重ならないように設けられ、前記基板載置プレートの一部分を液または気体により直接に冷却する冷却手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板熱処理装置において、前記基板載置プレートと前記加熱手段との間に、前記基板載置プレートと前記加熱手段との間の熱交換を行うペルチェ素子を介在させたものである。
【0016】
【作用】
請求項1に記載の発明の作用は次のとおりである。
基板の加熱処理時には、加熱手段が基板載置プレートの流体収容室内の作動液を加熱する。加熱された作動液は所定温度で蒸発する。作動液の蒸気は流体収容室内の蒸気空間を滞留して、基板載置プレートに載置または近接載置された基板の下方に相当する流体収容室の天井面に接触する。天井面に接触した蒸気は、そこで冷却されて液化する。この液化のときに蒸気から凝縮熱が放熱されて基板載置プレートの温度が上昇し、基板が加熱される。このとき、流体収容室の天井面のうち、他の部分と比べて温度の低い箇所では、作動液の蒸気の液化の反応が他の部分と比べて活発に起こり、基板載置プレートの温度分布が均一になるように作用し、基板が均一に加熱される。
【0017】
一方、基板載置プレートの設定温度を低い温度に変更する場合、加熱手段による加熱を制限するとともに、基板載置プレートの一部分を液または気体を用いた冷却手段によって直接に冷却する。基板載置プレートの内部は流体収容室が形成された、言わば空洞状態であるので熱容量は比較的に小さい。そのため、基板載置プレートの温度は速やかに低下する。
【0018】
請求項2に記載の発明の作用は次のとおりである。
ペルチェ素子は熱電効果により熱を移動させる動作を行う。熱の移動方向は、ペルチェ素子に供給される電流の方向により設定できる。したがって、基板載置プレートと加熱手段との間に介在するペルチェ素子は、基板載置プレートの温度を上昇させる場合には加熱手段の熱を基板載置プレート側へ移動させるように電流の方向が設定される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
<第1実施例>
図1は本発明に係る基板熱処理装置の概略構成を示した縦断面図である。
図1に示すように、この基板熱処理装置は、筐体10の内部に半導体ウエハなどの基板Wを加熱する基板載置プレート11を備えている。基板載置プレート11の上面には基板Wの下面を支持する3つの球状スペーサ12が平面視で正三角形状に配置されている。基板載置プレート11の下側には基板載置プレート11を加熱・冷却するための加熱・冷却構造13が配設されている。本実施例の要部である基板載置プレート11および加熱・冷却構造13の構成は後に詳しく説明する。
【0024】
基板載置プレート11および加熱・冷却構造13には、これらを上下に貫く3個の貫通孔14が形成されている。平面視で正三角形状に配置されている貫通孔14のそれぞれには支持ピン15が昇降自在に挿入されている。これらの支持ピン15の基端が昇降フレーム16に連結支持されている。昇降フレーム16の一端は筐体10の外に導出されて、エアーシリンダ17のロッドに連結されている。エアーシリンダ17のロッドが伸長すると支持ピン15が基板載置プレート11の上面から突出して基板Wを所定位置にまで持ち上げる一方、エアーシリンダ17のロッドが収縮すると支持ピン15が基板載置プレート11内に没入して基板Wを基板載置プレート11上に載置するように構成されている。
【0025】
筐体10の前面には基板Wを搬入・搬出するための基板給排口18が設けられている。この基板給排口18の内側にシャッタ19が配設されている。シャッタ19の下端は、支点P周りに上下に揺動する連結部材20の一端にピン結合されている。この連結部材20の他端は昇降フレーム16の先端部分にピン結合されている。その結果、エアーシリンダ17のロッドが伸長して支持ピン15が上昇ると、シャッタ19が下降して基板給排口18が開放する一方、エアーシリンダのロッドが収縮して支持ピン15が下降すると、シャッタ19が上昇して基板給排口18を閉じるようになっている。また、筐体10の上面内側に基板載置プレート11の上面を覆う上部カバー21が取付けられている。
【0026】
次に、図2を参照して基板載置プレート11および加熱・冷却構造13の構成を説明する。図2は実施例装置の要部縦断面と制御系の構成を示している。
基板載置プレート11はアルミニウム、銅などの良伝熱性材料から形成されており、その内部には流体収容室22が形成されている。この流体収容室22内に、作動液Lとしての水が所定の減圧状態で封入されている。流体収容室22内の上方は作動液の蒸気を滞留させる蒸気空間Sを形成している。作動液Lとしては、水以外に、アンモニア、フレオン11、フレオン113、ペンタン、アセトン、メタノール、フルテックPP2、エタノール、ヘプタン、フルテックPP9、サーメックス、水銀などが使用でき、適宜、加熱しようとする温度に合わせて採用するとともに、流体収容室22内を減圧または加圧することにより、作動液の沸点を所望の温度に設定すればよい。
【0027】
加熱・冷却構造13は、ペルチェ素子23、伝熱プレート24、ヒータ25、伝熱プレート26、ペルチェ素子27、および冷却部材28をその順に積層して構成されたもので、ペルチェ素子23が基板載置プレート11の下面に接触するように配置されている。周知のようにペルチェ素子23、24は、電流が供給されることにより一面側で吸熱し、他面側で放熱する。これにより熱を移動させることができる。熱の移動方向は、供給する電流の方向を切り換えることにより切り換えることができる。特にペルチェ素子23は、基板載置プレート11の温度を上昇させる場合には、ヒータ25から基板載置プレート11側へ熱を移動させ、また基板載置プレート11の温度を低下させる場合には、基板載置プレート11からヒータ25側へ熱を移動させる。ペルチェ素子27は、基板載置プレート11の温度を低下させる場合に、ヒータ25から冷却部材28側へ熱を移動させる。
【0028】
アルミニウムなどの良伝熱性の材料を形成された伝熱プレート24、26で挟まれたヒータ25は、例えばマイカヒータによって構成されている。冷却部材28は、アルミニウムなどの良伝熱性の材料で形成されており、その内部に冷却水を流通させる流路28aが形成されている。冷却水の流路28aは循環配管29を介して外部、例えば本実施例の基板熱処理装置が設置される半導体製造工程の冷却水供給源30に接続されている。循環配管29にはメインコントローラ32によって制御される開閉弁Vが設けられている。冷却水は常温でも良いが、冷却効果を高める上で常温以下にまで冷却された冷却水が好ましい。
【0029】
次に基板載置プレート11の温度を制御する制御系の構成を説明する。
基板載置プレート11に温度センサ31が設けられており、この温度センサ31の検出信号はメインコントローラ32および第1温度コントローラ(T.C.)33に与えられる。第1温度コントローラ33はペルチェ素子23へ供給する電流を制御する。伝熱プレート24に温度センサ34が設けられており、この温度センサ34の検出信号はメインコントローラ32および第2温度コントローラ(T.C.)35に与えられる。第2温度コントローラ35はヒータ25に与える電流を制御する。また、第3温度コントローラ(T.C.)36は冷却用のペルチェ素子27に与える電流を制御する。第1〜第3温度コントローラ33、35、36には、ペルチェ素子23、ヒータ25、およびペルチェ素子27へ給電するための電源37が接続されている。メインコントローラ32はCPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)、ROM(リード・オンリー・メモリ)、時間計測のためのカウンタ等を有するマイクロコンピュータを備えている。さらに、メインコントローラ32には温度制御条件などを入力するためのキーボードなどからなる入力部38が接続されている。
【0030】
次に上述した構成を備えた基板熱処理装置の動作を説明する。
以下では、(1)基板載置プレートの温度設定動作、(2)基板投入時の高速昇温動作、および(3)設定温度の変更(降温)動作について説明する。
【0031】
(1)基板載置プレートの温度設定動作
図3は基板熱処理装置の温度設定動作のフローチャートである。ここでは、基板載置プレート11の上面温度を110°Cに設定するものとする。
【0032】
図3に示すように、基板Wの搬入前に、ヒータ25を駆動して、ステップS1およびS2の処理を行う。同時にペルチェ素子23を駆動し、ステップS3およびS4の処理を行う。すなわち、ステップS1において、第2温度コントローラ35は電源37からヒータ25に供給される電流量を制御し、ヒータ25を発熱させる。そして、メインコントローラ32は温度センサ34からの出力に基づいて伝熱プレート24の温度を監視し、伝熱プレート24が所定の温度(例えば、90°C)になったか否かを判定する(ステップS2)。伝熱プレート24が所定の温度以下の場合には第2温度コントローラ35によりヒータ25に電流を供給して発熱させ、所定の温度に達した場合には、ヒータ25への電流の供給を遮断する。この処理を繰り返し、伝熱プレート24の温度を90°Cに保持する。
【0033】
また、上記動作と並行して、ステップS3においては、電源37からペルチェ素子23に電流が供給され、ペルチェ素子23の熱移動作用により基板載置プレート11が昇温される。メインコントローラ32は基板載置プレート11の温度センサ31からの検出信号に基づき、基板載置プレート11の温度が所定温度、すなわち110°Cになったか否かを判断する(ステップS4)。ペルチェ素子23は供給される電流の方向を切り換えることにより熱の移動方向を切り換えることができる。そこで、ペルチェ素子23の電流の供給方向を適宜切り換えて、基板載置プレート11の温度が所望の110°Cとなるように調整する。
【0034】
上記の温度設定処理では、ヒータ25とペルチェ素子23とにより基板載置プレート11の温度設定が行われる。ペルチェ素子23による熱移動の制御は短時間でかつ正確に行うことができる。したがって、基板載置プレート11の温度調整をヒータ25のみで行う場合に比べて短時間でかつ正確に行うことができる。
【0035】
また、基板載置プレート11は、その内部に流体収容室22が形成された、いわば空洞状態であるので、通常の金属プレートなどと比較して熱容量が小さい。しかも、基板載置プレート11がその下面から加熱されると、流体収容室22内の作動液Lが加熱されて蒸発し、その蒸気が蒸気空間S内を滞留し、蒸気発生とほぼ同時的にその蒸気が流体収容室22の天井面に到達して基板載置プレート11の上面(基板載置面)を迅速に加熱する。したがって、実施例装置によれば、比較的に少ない熱量で基板載置プレート11を設定温度にまで早く昇温させることができる。さらに、基板載置プレート11の基板載置面で温度の低い部分があれば、それに近い流体収容室22の天井面箇所で作動液Lの蒸気が集中的に活発に凝縮液化する。そのときの凝縮熱の放熱によりその箇所が集中的に加熱されて温度が上昇して、他の箇所との温度差がなくなる。したがって、本実施例装置によれば、基板載置プレート11の基板載置面の全体を均一に加熱することができる。
【0036】
因みに、厚みの薄い金属プレートを基板載置プレートとして用いることによって、熱容量の小さいな基板載置プレートを実現することは可能であるが、このような薄い金属プレートを用いるとプレート表面の温度がばらつきやすくなり、本実施例のように基板載置面の全体を均一な温度にすることが困難である。
【0037】
(2)基板投入時の高速昇温動作
蒸気の温度設定処理において所定の温度、例えば110°Cに設定された基板載置プレート11上に基板Wが投入されると、投入時の基板Wの温度が室温程度と低いために基板載置プレート11の表面温度が急激に低下する。そこで、以下の高速昇温動作を行い、基板載置プレート11の表面温度を所定の温度に迅速に戻す。
【0038】
図4は、基板載置プレート11の温度を110±0.3°Cに制御する場合の高速昇温動作のフローチャートである。また、図5は基板載置プレート11および基板Wの温度変化を示す図である。
【0039】
基板載置プレート11が110°Cに制御されている状態において、例えば室温(約23°C)の基板Wが基板載置プレート11上に投入されると、図5に示すように、基板載置プレート11の温度が急激に低下する。そこで、まず基板載置プレート11の温度が0.5°C以上低下したか否かを温度センサ31の検出信号によってメインコントローラ32が判断する(ステップS10)。
【0040】
0.5°C以上の温度低下を検出すると、メインコントローラ32からの指令により、第1温度コントローラ33が最大許容電流をペルチェ素子23に供給する。これにより基板載置プレート11が急速に昇温される。メインコントローラ32は基板載置プレート11の昇温状態を監視し、基板載置プレート11の温度が110°Cに到達するまで、第1温度コントローラ33からペルチェ素子23へ最大許容電流が供給されるようにする(ステップS11)。
【0041】
基板載置プレート11の温度が110°Cに達すると(ステップS12)、第1温度コントローラ33をPID制御に切り換え、高速昇温動作を抑制する。そして、ペルチェ素子23へ供給する電流の方向を制御しながら昇温および降温を行い、基板載置プレート11の温度を110°C±0.3°Cの範囲に制御する。
【0042】
上記のような高速昇温動作において、基板載置プレート11をペルチェ素子23からの熱で加熱しているので、ペルチェ素子23をフルパワーで駆動して昇温動作を行って基板載置プレート11の温度が設定温度をオーバーした場合でも、素早く降温動作に切り換えることにより、基板載置プレート11の温度を短時間で精度よく設定温度に調整することができる。
【0043】
(3)設定温度の変更(降温)動作
次に処理する基板Wの処理温度が、直前に処理されていた基板Wの設定温度よりも低い場合の動作について説明する。
加熱処理が終了した基板載置プレート11の温度は、直前の基板Wの処理温度、例えば110°Cにほぼ等しい状態にある。同様に、伝熱プレート24の温度は90°C近傍に保持されている。そこで、冷却用のペルチェ素子27を駆動して、ヒータ25および基板載置プレート11の温度を低下させる。
【0044】
メインコントローラ32は、第2温度コントローラ35へ指令を出してヒータ25への給電を停止させるとともに、第1温度コントローラ33および第3温度コントローラ36にそれぞれ指令を出してペルチェ素子23およびペルチェ素子27を次のように駆動させる。ペルチェ素子23へ供給する電流の方向を昇温時とは逆方向に切り換えることにより、基板載置プレート11の熱をヒータ25側へ移動させるようにする。また、ペルチェ素子27には、ヒータ25の余熱を冷却部材28側へ移動させるように電流を供給する。また、メインコントローラ32は開閉弁Vを開放して冷却部材28に冷却水を流通させる。以上のようにメインコントローラ32が各部をコントロールすることにより、基板載置プレート11の熱はペルチェ素子23、ヒータ25、ペルチェ素子27を通り冷却部材28に伝えられる。冷却部材28に伝えられた熱は、冷却部材28内の流路を流通する冷却水によって外部に排出される。これにより基板載置プレート11の温度が急速に低下する。
【0045】
上記の降温動作の間、メインコントローラ32は温度センサ31の検出信号を取り込んで基板載置プレート11の温度を監視している。基板載置プレート11の温度が次に設定すべき温度以下になると、降温動作を停止させた後、上述した基板載置プレート11の温度設定動作に入って、基板載置プレート11を新たな設定温度に調整する。
【0046】
以上のように、ヒータ25の下側に冷却用のペルチェ素子27および冷却部材28を設けることにより、基板載置プレート11の温度を迅速に低下させて、新たな所定の温度に設定することができる。また、上述したように基板載置プレート11の熱容量は小さいので、基板載置プレート11の温度を速やかに低下させることができる。したがって、加熱処理の設定温度が高い基板と低い基板とが連続して供給された場合でも、基板載置プレート11の基板載置面の温度を素早く変化させて加熱処理を行うことができる。
【0047】
<第2実施例>
図6は本発明に係る基板熱処理装置の第2実施例の要部構成を示した図である。図6において、図2中の各符号と同一の符号で示した構成部分は第1実施例のものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0048】
第2実施例に係る基板熱処理装置の特徴は、第1実施例に備えられた水冷式の冷却部材28に代えて、空冷式の冷却部材40を備えたことにある。冷却部材40は、アルミニウムなどの良伝熱性の材料で形成されており、その内部に圧縮空気を流通させる流路40aが形成されている。圧縮空気の流路40aは配管41を介して外部、例えば本実施例の基板熱処理装置が設置される半導体製造工程の給気設備39に接続されている。配管41にはメインコントローラ32で制御される開閉弁Vが設けられている。圧縮空気は常温でも良いが、冷却効果を高める上で常温以下にまで冷却された圧縮空気を用いるのが好ましい。圧縮空気を冷却する手段は特に限定しないが、例えばボルテックスチューブ効果を利用した冷却装置を用いることができる。さらに冷却部材40の下面には放熱フィン40bが形成されて、冷却効果を高めるように構成されている。なお、流路40aに圧力空気を流通させるのに代えて、あるいは流路40aに圧縮空気を流通させるとともに、放熱フィン40bに圧縮空気を吹きつけて冷却効果を高めてもよい。
【0049】
この実施例装置によれば、基板載置プレート11の温度を下げるときに、第1実施例と同様にペルチェ素子23、26が制御されるとともに、メインコントローラ32が開閉弁Vを開放して、冷却部材40に流路40aに圧縮空気を供給して循環させる。基板載置プレート11の熱はペルチェ素子23、ヒータ25、およびペルチェ素子27を通って冷却部材40に伝達され、圧縮空気によって、あるいは放熱フィン40bから直接に、外部へ排出される。
【0050】
<第3実施例>
図7は本発明に係る基板熱処理装置の第3実施例の要部構成を示した図である。図7において、図2および図6中の各符号と同一の符号で示した構成部分は第1実施例および第2実施例のものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0051】
第3実施例に係る基板熱処理装置の特徴は、図6に示した第2実施例装置における伝熱プレート26および冷却用のペルチェ素子27を省いて、空冷式の冷却部材40をヒータ25の下面に直接に取付けたことにある。本実施例によれば、冷却効果は第1および第2実施例のものよりも劣るが、基板載置プレート11の熱容量は比較的に小さいので、冷却用のペルチェ素子27を省いても実用的に支障のない程度に、基板載置プレート11を迅速に冷却することが可能てある。本実施例では、冷却用のペルチェ素子27を省いた分だけ、基板熱処理装置の構成を簡素化することができる。
【0052】
<第4実施例>
図8は本発明に係る基板熱処理装置の第4実施例の要部構成を示した図である。図8において、図2および図6中の各符号と同一の符号で示した構成部分は第1実施例および第2実施例のものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0053】
第4実施例に係る基板熱処理装置の特徴は、図6に示した第2実施例装置におけるペルチェ素子23、伝熱プレート24、26、およびペルチェ素子27を省き、基板載置プレート11の下面に直接に配設されたヒータ25の下面に空冷式の冷却部材40を取付けたことにある。本実施例によれば、基板載置プレート11に設けられた温度センサ34の検出信号に基づいて第2温度コントローラ35が基板載置プレート11の温度を直接に制御する。上述したように基板載置プレート11は作動液Lの蒸気が凝縮するときの熱で加熱されるので、第1〜第3実施例のようなペルチェ素子23を介在させなくても、基板載置プレート11の基板載置面を実用的に問題のない程度に均一に加熱することができる。
【0054】
また、基板載置プレート11の熱容量は比較的に小さいので、冷却用のペルチェ素子27を省いても実用的に支障のない程度に、基板載置プレート11を迅速に冷却することが可能てある。本実施例では、ペルチェ素子23、27を省いた分だけ、基板熱処理装置の構成を簡素化することができる。また、ペルチェ素子23、27を駆動する電力が不要であるので、省電力の基板熱処理装置を実現することができる。
【0055】
本発明は上記の第1〜第4実施例のものに限定されず、次のように変形実施することも可能である。
(1)基板載置プレート11に下方に設けられる加熱・冷却構造を次のように構成してもよい。すなわち、図2に示した第1実施例装置に備えられたペルチェ素子23および伝熱プレート24を省いて、ヒータ25、伝熱プレート26、ペルチェ素子27、および水冷式の冷却部材28(あるいは、空冷式の冷却部材40)によって加熱・冷却構造を構成する。この場合、図8に示した第4実施例と同様に、ヒータ25が基板載置プレート11の下面に直接に取付けられる。
【0056】
(2)基板載置プレート11を図9および図10に示したように構成してもよい。この基板載置プレート11は、縦断面形状が下向きの凸形状に構成されている。流体収容室22の下部の小室内に作動液Lが収納されている。上方に拡大した空間は作動液Lの蒸気が滞留する蒸気空間Sになっている。基板載置プレート11の上方に拡大した部分には、図示しない支持ピンが挿通する3個の貫通孔14が形成されている。この拡大部分の底面は中心側に向かって低くなった傾斜面に構成され、凝縮液化した作動液Lがこの傾斜面を伝って基板載置プレート11の下部の小室内に戻りやすいようになっている。基板載置プレート11の下面には、第1〜第4実施例で説明したような加熱・冷却構造13が取付けられる。流体収容室22内の作動液Lは加熱・冷却構造13によって加熱されると蒸発して、上方の拡大された蒸気空間Sに広がるので、この変形例のように小室内に作動液Lを収納しても、基板載置プレート11の基板載置面を均一に加熱することができる。この変形例によれば、加熱・冷却構造13を小さくすることができるという利点がある。また、基板載置プレート11を、図11に示すように、平面視で四角形に構成することも可能である。
【0057】
(3)上述した各実施例では、基板載置プレート11の表面に球状スペーサ12を設けて、基板Wを基板載置プレート11に近接載置するように構成したが、球状スペーサ12を省いて、基板載置プレート11の表面に基板Wを直接に載置するようにしてもよい。
【0058】
(4)各実施例では基板載置プレート11の降温時にのみ冷却部材28、40に冷却水や圧縮空気を流通させるようにしたが、冷却水や圧縮空気を常時流通させるようにしてもよい。
【0059】
(5)加熱手段は実施例で説明しようなマイカヒータに限らず、棒状のシースヒータや、多段に接続したペルチェ素子などで構成してもよい。
【0060】
(6)冷却手段は、必ずしも加熱手段の下方に設ける必要はなく、基板載置プレート11の側方に配置して、基板載置プレート11を直接に冷却してもよい。例えば、図9に示した例では、作動液Lを収容する円筒状の小室の周囲や、流体収容室22の拡大した傾斜部の底面に冷却手段を配置するようにしてもよい。
【0061】
(7)冷却手段は、基板載置プレート11上に基板が載置されていないときに、基板載置プレート11に冷却空気を噴射して、基板載置プレート11を冷却するように構成してもよい。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、基板載置プレートの設定温度を下げる場合に、基板載置プレートの熱を基板載置プレートの一部分を液または気体により直接に冷却する冷却手段によって外部へ放出しているので、基板載置プレートの設定温度を速やかに下げることができる。したがって、処理温度の高い基板と、処理温度の低い基板とを同一の基板熱処理装置で連続して処理することが可能になり、熱処理におけるスペースと設備コストの低減および処理効率の向上を図ることができる。
また、基板載置プレートは流体収容室内の作動液の蒸気の凝縮熱を利用して加熱されるので、基板載置プレートの温度のバラツキが抑制され、その結果、基板に対して均一な熱処理を行うことができる。
【0063】
請求項2に記載の発明によれば、基板載置プレートと加熱手段との間にペルチェ素子を介在させているので、基板載置プレートと加熱手段との間の熱の移動が円滑になり、基板載置プレートの設定温度の変更を一層迅速、かつ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る基板熱処理装置の第1実施例の全体構成を示した断面図である。
【図2】第1実施例の要部構成を示した図である。
【図3】第1実施例の通常昇温動作を示したフローチャートである。
【図4】第1実施例の高速昇温動作を示したフローチャートである。
【図5】基板載置プレートおよび基板の温度変化を示したグラフである。
【図6】第2実施例の要部構成を示した図である。
【図7】第3実施例の要部構成を示した図である。
【図8】第4実施例の要部構成を示した図である。
【図9】基板載置プレートの変形例の縦断面図である。
【図10】図9に示した基板載置プレートの斜視図である。
【図11】基板載置プレートの別の変形例の斜視図である。
【図12】従来の基板熱処理装置の概略構成を示した図である。
【図13】従来の基板熱処理装置による基板の熱履歴を示したグラフである。
【符号の説明】
11…基板載置プレート
13…加熱・冷却構造
22…流体収容室
23、27…ペルチェ素子
25…ヒータ
28…水冷式の冷却部材
40…空冷式の冷却部材
W…基板
L…作動液
S…蒸気空間
Claims (2)
- 加熱された基板載置プレート上に基板を載置または近接載置した状態で基板の熱処理を行う基板熱処理装置において、
前記基板載置プレート内に設けられ、所定温度で蒸発する作動液を収容するとともに、前記作動液の蒸気を滞留させる蒸気空間を有する流体収容室と、
前記基板載置プレートの下方に設けられ、前記流体収容室内の作動液を加熱する加熱手段と、
前記基板載置プレートの下方に、前記加熱手段と重ならないように設けられ、前記基板載置プレートの一部分を液または気体により直接に冷却する冷却手段と
を備えたことを特徴とする基板熱処理装置。 - 請求項1に記載の基板熱処理装置において、
前記基板載置プレートと前記加熱手段との間に、前記基板載置プレートと前記加熱手段との間の熱交換を行うペルチェ素子を介在させた基板熱処理装置。
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