JP4088715B2 - 高分子電解質膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子電解質膜の製造方法に関し、詳しくは、高分子電解質を含む溶媒溶液を、基材に流延塗付し、溶媒を除去することによる高分子電解質膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境負荷の少ないエネルギー源を模索する試みが種々なされている。なかでも燃料電池、特に固体高分子電解質を用いる固体高分子電解質型燃料電池は、排出物質は水のみである等の利点から、自動車等の動力源としての応用が期待されている。
【0003】
かかる固体高分子電解質型燃料電池用の高分子電解質として、ナフィオン(Nafion、デュポン社登録商標)に代表されるパーフルオロアルキルスルホン酸等の高分子電解質から得られる膜など種々の高分子電解質膜が提案されている。
これらの高分子電解質膜に第一に要求される特性として、高プロトン伝導度を有することが挙げられる。これは、プロトン伝導度の高い膜を用いることにより、燃料電池作動において、高電流密度で電圧降下が小さくなり、高い電池出力を引き出すことができることによるものである。
【0004】
これらの高分子電解質膜の製造技術としては、高分子電解質と有機溶媒等との溶液を基材上に流延塗布し、高温で該溶媒を除去して膜を得るというキャスト法が、標準的な製膜法として採用されている。
このようなキャスト法により得られる高分子電解質膜のプロトン伝導性を向上させる方法として、得られた膜を水中または飽和水蒸気下で加熱する方法が提案されている(特開平9−199144号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法は、一旦得られた膜を、さらに処理するという二段工程を必要とする迂遠な方法であり、より簡便な方法が望まれていた。
本発明者は、より簡便な高分子電解質膜の製造方法を見出すべく、鋭意検討を重ねた結果、キャスト法における溶媒の除去を、加湿雰囲気下という特定条件下で実施することにより、一挙に高いプロトン伝導性を示す高分子電解質膜が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、高分子電解質を含む溶媒溶液を、基材に流延塗付し、溶媒を除去することによる高分子電解質膜の製造方法において、溶媒の除去を加湿雰囲気下で実施することを特徴とする工業的に優れた高分子電解質膜の製造方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を詳細に説明する。
本発明において、高分子電解質としては、イオン交換基、例えば、−SO3H、−COOH、−PO(OH)2、−POH(OH)、−SO2NHSO2−、−Ph(OH)(Phはフェニル基を表す)等の陽イオン交換基、−NH2、−NHR、−NRR'、−NRR'R''+、−NH3 +等(R、R'、R''は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を表す)等の陰イオン交換基を有し、溶媒に可溶な高分子が使用される。これらの基は、その一部または全部が対イオンととの塩を形成していても良い。
【0008】
かかる高分子電解質は、主鎖が芳香環を有する高分子にスルホン酸基および/またはホスホン酸基を導入した高分子電解質である。
【0010】
上記高分子電解質としては、主鎖が酸素原子等のヘテロ原子で中断されているものであってもよく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(アリーレン・エーテル)、ポリイミド、ポリ((4-フェノキシベンゾイル)-1,4-フェニレン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレン等の単独重合体のそれぞれにスルホン酸基が導入されたもの、スルホアリール化ポリベンズイミダゾール、スルホアルキル化ポリベンズイミダゾール、ホスホアルキル化ポリベンズイミダゾール(例えば、特開平9−110982)、ホスホン化ポリ(フェニレンエーテル)(例えば、J. Appl. Polym. Sci., 18, 1969 (1974) )等が挙げられる。
【0012】
本発明に使用される高分子電解質の数平均分子量は、通常1000〜1000000程度、好ましくは10000〜100000程度であり、イオン交換基当量重量は、通常500〜5000g/モル程度である。
【0013】
また本発明に使用される溶媒としては、かかる高分子電解質を溶解し、その後除去しうるものであるならば特に制限はなく、例えばN, N−ジメチルホルムアミド、N, N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジクロロメタン/メタノール、水/低級アルコールなどの混合溶媒等が挙げられる。
上記のような溶媒と高分子電解質は、通常、後者が前者に溶解した状態すなわち後者が前者中に分子レベルで一様に分散した状態、後者がナノメーターからマイクロメーターのレベルで凝集体を形成し、その凝集体が前者中に分散した状態で使用される。
【0014】
本発明において、高分子電解質を含む溶媒溶液は、基材に流延塗付され、次いで溶媒が除去されるが、基材としては、溶媒への耐性があり、製膜後に膜が剥離できるものであれば特に制限はなく、通常ガラス板、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、テフロン板、ステンレス板、ステンレスベルト、シリコンウエハ等が用いられる。これらの基材は、必要に応じて、表面が離型処理、エンボス加工、つや消し加工等がなされてるものも使用し得る。
【0015】
溶媒溶液の塗布量は、特に制限はないが製膜時の厚みが、通常5μm〜200μm、好ましくは8μm〜60μm、より好ましくは15μm〜40μmになるように流延塗布される。実用に耐える膜の強度を得るには、5μmより厚い方が好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには200μmより薄い方が好ましい。膜厚は、溶液濃度あるいは基材上への塗付厚により制御できる。
尚、高分子電解質を含む溶媒溶液としては、必要に応じ、高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤、保水剤等の添加剤を、プロトン伝導能を著しく妨げない範囲内で含有しているものも使用し得る。
【0016】
本発明は、溶媒の除去を加湿雰囲気下で実施することを特徴とするものであるが、溶媒を除去する際の湿度は、大気の相対湿度より高い状態、好ましくは相対湿度90%以上、より好ましくは相対湿度100%で実施される。大気の相対湿度では、プロトン伝導度の向上が望めない。また、溶媒の除去の温度は、溶媒を除去し製膜できれば何度でもよく、通常室温以上溶媒の沸点未満の温度が採用される。
溶媒を除去するに当っては、通常恒温槽が用いられる。かかる槽は恒湿機能も有していることが好ましい。恒湿機能を有していなくても槽中に水を存在させることにより加湿雰囲気を実現できる。
【0017】
次に本発明の燃料電池について説明する。
本発明の燃料電池は、高分子電解質膜の両面に、触媒および集電体としての導電性物質を接合することにより製造することができる。
該触媒としては、水素または酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金の微粒子を用いることが好ましい。白金の微粒子は活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されて用いることが好ましい。
集電体としての導電性物質に関しても公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン不織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
多孔質性のカーボン不織布またはカーボンペーパーに白金微粒子または白金微粒子を担持したカーボンを接合させる方法、およびそれを高分子電解質膜と接合させる方法については、例えば、J. Electrochem. Soc.:Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。
【0018】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
実施例1
高分子電解質として、特開2001−250567号公報の実施例1に記載の方法に準拠して製造したポリエーテルスルホンとスルホン化ポリ(2−フェニルフェニレンエーテル)からなるブロック共重合体1(イオン交換基当量重量:621)を用い、このものをジメチルアセトアミド(以下DMAcと略す)に溶解し、濃度15重量%の溶媒溶液とした。次いで、この溶液をガラス基材上に流延塗付し、80℃、相対湿度100%の雰囲気の下、約5時間かけてDMAcを除去し、高分子電解質膜1を得た。該膜を1N塩酸で2時間処理し、さらに3時間流水にて水洗した後、二枚の白金電極にて挟み、恒温恒湿槽中で交流法にてプロトン伝導度を測定した。該膜1の80℃におけるプロトン伝導度を表1に示した。
【0020】
実施例2
実施例1において、高分子電解質として、特開2001−250567号公報の実施例1に記載の方法に準拠して製造したポリエーテルスルホンとスルホン化ポリ(2−フェニルフェニレンエーテル)からなるブロック共重合体2(イオン交換基当量重量:662)を用いる以外は、実施例1と同様に実施することにより高分子電解質膜2を得、同様な後処理後、同様な方法でプロトン伝導度を測定した。該膜2の80℃におけるプロトン伝導度を表1に示した。
【0021】
比較例1、2
実施例1、2において、DMAcを除去の除去を80℃、相対湿度約10%の雰囲気の下で実施する以外は、実施例1、2と同様に実施することにより、高分子電解質膜1’,2’を得た。実施例1と同様な後処理後、同様な方法でプロトン伝導度を測定した。該膜1’、2’のプロトン伝導度を測定した結果を表1に示した。
【0022】
実施例3
実施例1において、高分子電解質として、特開平10−21943号公報の実施例1に記載の方法に準拠し4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを重縮合して得られた分子共重合体をスルホン化することにより製造した共重合体3(イオン交換基当量重量は909)を用いる以外は、実施例1と同様に実施することにより高分子電解質膜3を得、同様な後処理後、同様な方法でプロトン伝導度を測定した。該膜3の80℃におけるプロトン伝導度を表1に示した。
【0023】
実施例4
実施例1において、高分子電解質として、実施例3で使用したと同じ共重合体3を、溶媒として、DMAcの代わりに塩化メチレン/メタノール混合溶媒(体積比塩化メチレン:メタノール=8:2)を用い、約2時間かけて混合溶媒を除去する以外は、実施例1と同様に実施することにより高分子電解質膜4を得、同様な後処理後、同様な方法でプロトン伝導度を測定した。該膜4の80℃におけるプロトン伝導度を表1に示した。
【0024】
比較例3、4
実施例3,4において、溶媒の除去を、80℃、相対湿度20%以下の雰囲気の下で実施する以外は、実施例3,4と同様に実施することにより、高分子電解質膜3’,4’を得た。実施例1と同様な後処理後、同様な方法でプロトン伝導度を測定した。該膜3’、4’のプロトン伝導度を測定した結果を表1に示した。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、キャスト法における溶媒の除去を、加湿雰囲気下という特定条件下で実施することにより、得られた高分子電解質膜を水中や飽和水蒸気下で加熱するという工程なしでも、一挙に高いプロトン伝導性を示す高分子電解質膜が得られる。
Claims (3)
- 主鎖が芳香環を有する高分子にスルホン酸基および/またはホスホン酸基を導入してなる高分子電解質を含む溶媒溶液を、基材に流延塗付し、溶媒を除去し、該基材から該高分子電解質膜を剥離することによる高分子電解質膜の製造方法において、溶媒の除去を加湿雰囲気下で実施することを特徴とする高分子電解質膜の製造方法。
- 加湿雰囲気が、相対湿度 90 %以上の雰囲気であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 溶媒の除去を、室温以上溶媒の沸点未満の温度で実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
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