JP4085247B2 - 無端ベルト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プーリに巻回されて回転作動する無端ベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、スチールワイヤやナイロン線等による抗張体を埋設した歯付ベルトの場合、プーリ間に巻回されて回転する際の蛇行を防止する目的で、一般には、両側フランジ付のプーリが使用され、両側のフランジに歯付ベルトを当接させることにより、歯付ベルトの左右の振れによる蛇行を防止している。
【0003】
しかしながら、この構造によると、歯付ベルトの左右両端部がプーリのフランジとの当接による摩擦力で摩耗するなど耐久性を低下させる不具合がある。またフランジとの当接の際、接触音を発し、使用に耐えない場合がある。
【0004】
上記フランジ付プーリを用いる場合の不具合を解消する目的で、従来より図4に示すクラウン付歯付プーリ51が用いられることがある。
【0005】
すなわち、歯付プーリ51の外周面にその幅方向中央部を凸状に膨出させた断面円弧状のクラウン部52を形成することによって、このクラウン部52に接触する歯付ベルト61を回転中の振れによる自らの向心力で歯付プーリ51中央部に向かうべく作用させるものである。
【0006】
しかしながら、この図4のクラウン付歯付プーリ51を用いる場合には、歯付プーリ51のクラウン部52と歯付ベルト61との間に、曲線と直線とによる接触状態の関係で、歯付ベルト61の左右両端部が歯付プーリ51に接触しない空隙部cが生じることになる。その結果、歯付ベルト61の中央部のみで張力を負担することになるため、この部分での張力集中が経時使用により進み、やがては両端部に向かって進行することにより、歯付ベルト61が切断に至るといった不具合を生じることがある。
【0007】
また、上記クラウン付歯付プーリ51は一般に高価であるため、できるならばこれを利用したくないという状況がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の点に鑑みて、高価なクラウン付プーリを利用しなくても、ベルト自体が蛇行運動を修正する機能を備えた無端ベルトを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の無端ベルトは、歯付プーリに巻回される歯付ベルトの肉厚内に複数の抗張体をベルトの幅方向に並べて埋設した無端ベルトにおいて、前記複数の抗張体をベルトの幅方向に対称的な円弧状に配列し、前記抗張体の円弧状配列の方向性は歯側に凹であり、ベルトの周回上における抗張体の長さはベルトの幅方向中央部で最も長く、幅方向中央部から幅方向両端部にいくにしたがって徐々に短くなっていることを特徴とするものであり(請求項1)、また歯付プーリに巻回される歯付ベルトの肉厚内に複数の抗張体をベルトの幅方向に並べて埋設した無端ベルトにおいて、前記複数の抗張体をベルトの幅方向に対称的な円弧状に配列し、前記抗張体の円弧状配列の方向性は歯側に凸であり、ベルトの周回上における抗張体の長さはベルトの幅方向中央部で最も短く、幅方向中央部から幅方向両端部にいくにしたがって徐々に長くなっていることを特徴とするものである(請求項2)。
【0010】
上記構成を備えた本発明の無端ベルトにおいては、ベルトの肉厚内に横一列で埋設される複数の抗張体が直線状ではなく、ベルトの幅方向に対称的な円弧状に配列されているために、この抗張体の円弧状配列によって、プーリにクラウン部が設けられていなくても、ベルト自体に、蛇行運動を修正する向心力が発生することになる。
【0011】
抗張体の円弧状配列によってベルトに向心力が発生するメカニズムは、以下のとおりである。
【0012】
すなわち、抗張体の円弧状配列の方向性が歯側に凹である場合には、ベルトの周回上における抗張体の長さがベルトの幅方向中央部で最も長く、幅方向中央部から幅方向両端部にいくにしたがって徐々に短くなる。したがってプーリ上での回転速度がベルトの幅中央部で最も速く、幅方向中央部から幅方向両端部にいくにしたがって徐々に遅くなり、ベルトの幅方向で速度差が発生する。したがってこのような速度差に基づいて、結果的に速度の遅い方の幅方向両端部から速度の速い方の幅方向中央部へとベルトが集束する向心力が発生し、よってこの向心力によりベルトの走行を安定させることが可能となる。
【0013】
一方、抗張体の円弧状配列の方向性が歯側に凸である場合には、向心力が反対に作用するが、ベルトの幅方向両端部で互いに打ち消し合うために、やはりベルトの走行を安定化させることが可能となる。
【0014】
上記構成を備えた本発明の無端ベルトは、ベルト本体に抗張体が埋設されてプーリに巻回される歯付ベルトにおいて、プーリの歯先面に沿って接触するベルト本体内部の抗張体を幅方向に円弧状に配列したものであり、また、ベルト本体に抗張体が埋設されて歯付プーリに巻回される歯付ベルトにおいて、歯付プーリの歯先面に沿って接触するベルト本体の抗張体を円弧状に形成させ配列したものである。
【0015】
ベルトの材質としては、天然ゴムまたは、SBR、IIR、BR、NBR、CR、シリコンゴム、弗素ゴム等の合成ゴムまたは、ポリウレタン、ポリエステル等の弾性を有するプラスチックが用いられる。また、抗張体の材質としては、ナイロン、テトロン、硝子、スチールワイヤ、アラミド繊維、カーボン繊維またはアモルファス金属コード等が用いられる。また、先の材質によるベルト表面を帆布で被覆したものであっても良い。
【0016】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施例に係る無端ベルト1をプーリ21に巻回した状態の要部断面を示しており、このベルト1およびプーリ21はそれぞれ以下のように構成されている。
【0018】
すなわち先ず、プーリ21は、その外周面に多数の歯22を設けた歯付プーリとして構成されている。ベルト1の内周面が接触する各歯22の歯先面23に上記従来技術のようなクラウン部は設けられておらず、各歯22の歯先面23は中心軸線0と平行な断面直線状に形成されている。
【0019】
一方、ベルト1は、その内周面にプーリ21の歯22と係合する多数の歯4を設けた歯付ベルトとして構成されており、すなわち図2に示すように、無端状のベルト本体2の内周面3に歯4が多数一体成形されている。プーリ21の歯22の歯先面23に接触するベルト本体2の内周面3は中心軸線0と平行な断面直線状に形成されており、ベルト本体2は全体として横長の断面長方形状に形成されている。
【0020】
上記ベルト本体2の肉厚内に、抗張体5が埋設されている。
【0021】
この抗張体5は、スチールワイヤやナイロン線等よりなる非伸縮線材を無端状に形成したものであって、この無端状の抗張体5が無端状のベルト本体2の無端方向に沿って埋設されている。
【0022】
また、この抗張体5は、複数(図上10本)が互いに平行に、かつベルト1の幅方向に沿って一列に並んで配置されているが、当該実施例では特に、この複数の抗張体5が、中心軸線0と平行な直線状に並べられるのでなく、ベルト1の幅方向に対称的な断面円弧状に配列されており、更にこの抗張体5の円弧状配列はその方向性が歯4側に凹とされている。
【0023】
ここに、歯側に凹とは、ベルト1の幅方向中央部に配置される抗張体5よりも幅方向両端部に配置される抗張体5の方がベルト1の径方向内方に変位した位置に配置されていることであって、幅方向中央部から幅方向両端部へかけて徐々に抗張体5がベルト1の径方向内方に変位した位置に配置されていることであり、更に云うなら、直線状のベルト本体2の内周面3から抗張体5までの距離が幅方向中央部から幅方向両端部へかけて徐々に短く(近くに)設定されていることである。
【0024】
尚、因みに反対に、歯側に凸とは、ベルト1の幅方向中央部に配置される抗張体5よりも幅方向両端部に配置される抗張体5の方がベルト1の径方向外方に変位した位置に配置されることであって、幅方向中央部から幅方向両端部へかけて徐々に抗張体5がベルト1の径方向外方に変位した位置に配置されていることであり、更に云うなら、直線状のベルト本体2の内周面3から抗張体5までの距離が幅方向中央部から幅方向両端部へかけて徐々に長く(遠くに)設定されていることである。
【0025】
上記構成の無端ベルト1においては、ベルト本体2の肉厚内に横一列で埋設される複数の抗張体5が上記従来技術のように中心軸線0と平行な直線状ではなくベルト1の幅方向に対称的な円弧状に配列され、更にこの円弧状配列が歯側に凹とされているために、この抗張体5の円弧状配列によって上記メカニズムによりプーリ21にクラウン部が設けられていなくても、ベルト1自体に、蛇行運動を修正する向心力が発生する。したがって、高価なクラウン付プーリを利用することなく、ベルト1自体の蛇行修正機能によって、ベルト1の回転作動を円滑化することができる。
【0026】
尚、当該実施例では、抗張体5の円弧状配列を歯側に凹としたが、図3に示すように歯側に凸であっても良いことは、上記したとおりである。
【0027】
【発明の効果】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0028】
すなわち、上記構成を備えた本発明の無端ベルトにおいては、プーリに巻回されるベルトの肉厚内に複数の抗張体をベルトの幅方向に並べて埋設したベルトにおいて、複数の抗張体がベルトの幅方向に対称的な円弧状に配列されているために、この抗張体の円弧状配列によって、プーリにクラウン部が設けられていなくても、ベルト自体に、蛇行運動を修正する向心力を発生させることができる。したがって、高価なクラウン付プーリを利用しなくても、ベルト自体の蛇行修正機能によって、ベルトの回転作動を円滑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る無端ベルトをプーリに巻回した状態の要部断面図
【図2】同無端ベルトの一部裁断した斜視図
【図3】本発明の他の実施例に係る無端ベルトをプーリに巻回した状態の要部断面図
【図4】従来例に係る無端ベルトをプーリに巻回した状態の要部断面図
【符号の説明】
1 ベルト
2 ベルト本体
3 内周面
4,22 歯
5 抗張体
21 プーリ
23 歯先面
0 中心軸線
Claims (2)
- 歯(22)付プーリ(21)に巻回される歯(4)付ベルト(1)の肉厚内に複数の抗張体(5)をベルト(1)の幅方向に並べて埋設した無端ベルト(1)において、
前記複数の抗張体(5)をベルト(1)の幅方向に対称的な円弧状に配列し、前記抗張体(5)の円弧状配列の方向性は歯(4)側に凹であり、ベルト(1)の周回上における抗張体(5)の長さはベルト(1)の幅方向中央部で最も長く、幅方向中央部から幅方向両端部にいくにしたがって徐々に短くなっていることを特徴とする無端ベルト。 - 歯(22)付プーリ(21)に巻回される歯(4)付ベルト(1)の肉厚内に複数の抗張体(5)をベルト(1)の幅方向に並べて埋設した無端ベルト(1)において、
前記複数の抗張体(5)をベルト(1)の幅方向に対称的な円弧状に配列し、前記抗張体(5)の円弧状配列の方向性は歯(4)側に凸であり、ベルト(1)の周回上における抗張体(5)の長さはベルト(1)の幅方向中央部で最も短く、幅方向中央部から幅方向両端部にいくにしたがって徐々に長くなっていることを特徴とする無端ベルト。
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