JP4083828B2 - 疲労特性に優れたばね用鋼 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等における懸架ばねやエンジン用弁バネ、或いは各種懸架装置のばねとして好適なばね用鋼であって、線材とした際に優れた疲労特性を発揮するばね用鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ばね用鋼に要求される重要な特性のひとつに、繰り返し使用に対する耐疲労性があり、近年のばねの軽量化を背景として疲労特性のより一層の向上が要望されている。
【0003】
ばね用線材の疲労破断の原因としては、線材中に存在する非延性介在物が挙げられ、この非延性介在物は圧延工程や伸線工程でほとんど変形せずに、疲労破断の起点となることが知られている。そこで、特開昭63−140068号公報には、この問題を解決するために、延性を有する介在物となる様に組成を調整することを目的として、鋼材の成分組成と介在物の構成比を特定範囲に規定することにより、疲労特性を改善する技術が開示されている。しかしながら、鋼成分と介在物構成比を上記特定範囲内に制御した場合であっても、結晶質な非延性介在物が存在することにより疲労破壊に至ることがあった。例えば後述する回転曲げ疲労試験(曲げ回数:107 回)を施すと、破断が発生することが指摘されており、必ずしも疲労破壊を防止できる技術は開示されていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に着目してなされたものであって、疲労特性に優れたばね用鋼及びばね用線材の提供を目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明のばね用鋼とは、C:0.3〜1.0%,Si:0.5超〜2.5%,Mn:0.1〜1.5%,Cr:0.1〜1.0%,残部Feおよび不可避的不純物からなるばね用鋼であって、Al,Ca,Mg,Ti,Zrの鋼中固溶量が、Al:0.1ppm以上4.0ppm未満,Ca:0.01ppm以上1.0ppm以下,Mg:0.5 ppm 以上3.0ppm未満,Ti:5.0ppm未満(0ppmを含む),Zr:0.5ppm未満(0ppmを含む)であることを要旨とするものであり、上記ばね用鋼を用いて線材とすれば疲労特性に優れたばね用線材を得ることができる。尚、前記鋼中固溶量は、2次イオン質量分析装置(以下、SIMSという)を用いることにより精度良く分析することが可能である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、鋼中における微量元素の固溶量と疲労特性には、非常に高い相関があることを突き止めた。これまでは、介在物組成に範囲を設けることにより高い延性を有する介在物となる様に配慮されていたが、どうしても疲労破壊の起点となる結晶質な介在物を有することから、疲労破壊を防止できなかった。本発明によれば、特定成分の鋼中固溶量を制御することによって、疲労特性を大幅に改善することが可能である。
【0007】
また従来の技術における微量元素の定量分析は、供試材を酸により溶解して、例えばICP発光分光分析により測定されることが一般的であり、上記微量成分の含有量は、介在物の構成成分と鋼中の固溶成分との合計値であった。本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、従来の方法で分析された成分値では、疲労特性の確実な制御は困難であり、Al,Ca,Mg,Ti,Zrという微量元素の鋼中固溶量を正確に制御してはじめて確実な破断防止が可能となることを見出し、本発明に想到したものである。従って本発明では、各微量元素の鋼中固溶量を以下の様に限定することが重要である。尚、図1〜図5における鋼中のAl,Ca,Mg,Ti,Zrの固溶量は、後述する実施例で測定した分析値を破断本数との関係で整理したグラフである。
【0008】
Al:0.1 ppm 以上4.0 ppm 未満
鋼中に固溶するAl量と破断本数との関係を示す図1の結果から明らかな様に、鋼中のAl固溶量が0.1ppm 未満または4.0ppm 以上の場合には破断本数が多くなった。Al固溶量が0.1ppm 未満の場合には介在物としてCaO−SiO2 系およびMnO−SiO2 系の結晶質介在物が存在し、また4.0ppm 以上の場合にはAl2 O3 含有量が50%以上の非延性な介在物が存在しており、これらの非延性介在物により破断本数が多くなったものと考えられる。
従って、鋼中のAl固溶量は、0.1ppm 以上4.0ppm 未満に規定した。
【0009】
Ca:0.01 ppm 以上1.0 ppm 以下
図2より明らかな様に、鋼中のCa固溶量が0.01ppm 未満であるか、或いは1.0ppm を超える場合には破断本数が多くなった。鋼中Ca固溶量が0.01ppm 未満の場合には、MnO−SiO2 −Al2 O3 系介在物を主体として、介在物組成がばらついており、非延性介在物が多く発生していた。鋼中Ca固溶量が1.0ppm を超える場合には2CaO・SiO2 や2CaO・SiO2 ・Al2 O3 等の結晶質な介在物が存在していた。これらの非延性介在物の存在により破断本数が多くなったものと考えられる。Ca固溶量が0.01〜1.0ppm の範囲内では結晶質な介在物は見られなかった。
【0010】
Mg:0.01 ppm 以上3.0 ppm 未満
図3に示されている通り、鋼中のMg固溶量が0.01ppm 未満3.0ppm 以上の場合には破断本数が多くなった。Mg固溶量が0.01ppm 未満の場合には鋼中のMnO−SiO2 −Al2 O3 系介在物を主体として介在物組成がばらついており、非延性介在物が多く発生していた。またMg固溶量が3.0ppm 以上の場合には、Alが3.5ppm 未満であるとMgO・SiO2 結晶が生成しており、Alが3.5ppm 以上の場合にはMgO・Al2 O3 結晶が観察された。従って鋼中のMg固溶量を0.01ppm 以上3.0ppm 未満とすることが必要である。
【0011】
Ti:5.0 ppm 未満(0 ppm を含む)
図4から明らかな様に、鋼中のTi固溶量が5.0ppm 以上の場合には破断本数が多くなった。鋼中Ti固溶量が5.0ppm 以上ではTi系の結晶質な非金属介在物が多く存在したことから、鋼中Ti固溶量は5.0ppm 未満とすることが必要である。
【0012】
Zr:0.5 ppm 未満(0 ppm を含む)
図5に示されている通り、鋼中のZr固溶量が0.5ppm 以上の場合には破断本数が多くなった。鋼中のZr固溶量が0.5ppm 以上ではZrO2 ・SiO2 やCaO−SiO2 −ZrO2 系介在物が多く存在しており、この様な非延性な結晶系介在物の存在により破断本数が多くなったと考えられる。
【0013】
ところで本発明は、Al,Ca,Mg,Ti,Zrの各元素の鋼中固溶量を制御する方法により限定されるものではなく、例えば鋼中固溶量が多過ぎる元素は、溶銑処理時にスラグ中に捕捉し、一方少な過ぎる場合には添加して補充すればよい。
【0014】
尚、本発明が対象とする炭素鋼は、強度及び靭性の点からCを0.3〜1.0%、Siを0.5超〜2.5%、Mnを0.1〜1.5%、Crを0.1〜1.0%含有し、残部鉄および不可避的不純物からなる炭素鋼であり、夫々の成分限定理由は以下の通りである。
【0015】
Cは、鋼線に十分な強度を与えるのに不可欠な元素であり、少なくとも0.3%以上含有していることが必要である。C含有量を多くするほど線材の強度は向上するが、多過ぎると初析セメンタイトが析出し、疲労破壊を引き起こす。従って、C量の上限は1.0%とした。
【0016】
Siは、フェライトを固溶強化して引張強さを高めると共に、脱酸に有効な元素であるので0.5%を超えて含有させるが、多過ぎるとフェライトの靭性及び延性が低下し、ばね用線材としての疲労特性を満足できなくなるので、2.5%を上限とした。
【0017】
Mnは、加工硬化率を高めて引張強さを高めるのに有効な元素であるので0.1%以上含有させるが、多過ぎると偏析が大きくなり、それを起点とするマイクロクラックが発生して破断の原因となるので、1.5%を上限とした。
【0018】
Crは、引張強さを高めるのに有効な元素であるので、0.1%以上含有させるが、多量に含有させると硬度が高くなり過ぎ疲労破壊を起こし易くなるので、1.0%を上限とした。
【0019】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0020】
【実施例】
実施例1
240トンの溶鋼を取鍋で、表1に示す所定の成分に調整し、ブルーム連鋳機で鋳片として線材にし、オイルテンパーを施した後、疲労特性を調べた。疲労特性は回転曲げ疲労試験により測定し、各ロット当り15本の線材を用いて、試験強度210kgf/mm2 ,負荷応力85.0kgf/mm2 で行い、繰り返し回数107 回までに破断したものを破断本数として数えた。
【0021】
SIMSとしてはCAMECA製のims5fを用い、分析条件は以下の通りである。
[分析条件]
1次イオン条件: O2 −8keV−0.1μA
照射および分析領域:80×80μm−φ14μm
試料室真空度: 6×10-10 Torr
結果は、表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
No.1〜6は本発明例であり、鋼中固溶量が本発明範囲を満足しているので、いずれも破断せず、非常に優れた疲労特性を示した。
一方No.7〜25は、Al,Ca,Mg,Ti,Zrの1種以上の鋼中固溶量が本発明範囲を満足しない比較例であり、破断本数が多いことが分かる。
【0024】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されているので、結晶質で非延性な介在物の量を著しく低減でき、疲労特性に優れたばね用鋼及びばね用線材が提供できることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】破断本数と鋼中Al固溶量の関係を示すグラフである。
【図2】破断本数と鋼中Ca固溶量の関係を示すグラフである。
【図3】破断本数と鋼中Mg固溶量の関係を示すグラフである。
【図4】破断本数と鋼中Ti固溶量の関係を示すグラフである。
【図5】破断本数と鋼中Zr固溶量の関係を示すグラフである。
Claims (2)
- C :0.3〜1.0%(質量%、以下同じ)
Si:0.5超〜2.5%
Mn:0.1〜1.5%
Cr:0.1〜1.0%
残部Feおよび不可避的不純物からなるばね用鋼であって、
Al,Ca,Mg,Ti,Zrの鋼中固溶量が、
Al:0.1ppm(質量ppm、以下同じ)以上4.0ppm未満
Ca:0.01ppm以上1.0ppm 以下
Mg:0.5 ppm 以上3.0ppm 未満
Ti:5.0ppm未満(0ppmを含む)
Zr:0.5ppm未満(0ppmを含む)
であることを特徴とする疲労特性に優れたばね用鋼。 - 前記鋼中固溶量が2次イオン質量分析装置を用いて分析した値である請求項1に記載のばね用鋼。
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