JP4082649B2 - 複数のセンサで信号のレベル及び遅延を測定する方法及び装置 - Google Patents

複数のセンサで信号のレベル及び遅延を測定する方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の背景】
本発明は信号処理に関し、詳細には、複数の信号センサでの信号のレベル及び時間遅延の測定に関するものである。
【0002】
多くの信号処理の応用分野では、特定の信号源に対する複数の信号センサの相対感度を求めることが望まれる。例えば、ハンズフリーの移動電話では、デュアル・マイクロフォンをビーム形成方式と組み合わせて使用し、自動車内での周囲の騒音(background noise)及びエコーの効果を低減する。この場合、様々な音源に対するマイクロフォンの相対感度に関する情報を使用して、例えば、特定のユーザの方へ空間ビームを形成し、及び/又は、他のユーザ又は拡声器に対する空間ノッチを形成する。このような方法では、マイクロフォン感度に関する動的情報を高速にかつ正確に得る必要がある。
【0003】
図1は、ハンズフリーの移動電話での様々な信号源に対するデュアル・マイクロフォンの相対感度を測定する従来技術のシステム100を示す。図のように、従来技術のシステム100は、第1マイクロフォン115、第2マイクロフォン125、適応フィルタ135、及び加算装置140を含む。第1マイクロフォン115の出力y(k)は加算装置140の正の入力に結合され、第2マイクロフォン125の出力y(k)は適応フィルタ135の入力に結合される。適応フィルタ135の出力y^(k)は加算装置140の負の入力に結合され、加算装置140の出力e(k)は適応フィルタ135へのフィードバック信号として使用される。
【0004】
図1のように、第1マイクロフォン115は、第1信号源110のより近くに位置決めされ、第2マイクロフォン125は第2信号源120のより近くに位置決めされる。例えば、第1マイクロフォン115は、自動車の運転手のより近くに位置する日除けに取り付けられたハンズフリー・マイクロフォンでよく、第2マイクロフォン125は、自動車内の乗客のより近くに取り付けられた可動ユニット内の内臓マイクロフォンでよい。図1には示していないが、当業者には、デジタル信号が適応フィルタ135及び加算装置140によって処理されるよう、第1マイクロフォン115及び第2マイクロフォン125のそれぞれの出力位置にアナログ前処理回路やアナログ・デジタル変換回路を含むことが可能であることも理解されよう。加算装置140の出力e(k)は、第1マイクロフォン115の出力y(k)と適応フィルタ135の出力y^(k)との間の差を表わし、本明細書では誤差信号と呼ばれる。
【0005】
動作時に、適応フィルタ135のフィルタ係数は、誤差信号e(k)が最小限に抑えられるように最小2乗アルゴリズムを使用して調整される。言い換えれば、適応フィルタ135は、適応フィルタ135の出力y^(k)が第1マイクロフォン115の出力y(k)にできるだけ近くなる(出力y(k)の推定量になる)ように調整される。したがって、適応フィルタ135は、マイクロフォン115、125を物理的に分離することによって得られる信号効果をモデル化するように試みる。例えば、乗客120が通話する際、乗客の声は、第2マイクロフォン125に到達するよりもわずかに遅れて第1マイクロフォン115に到達し、第1マイクロフォン115で受信される対応する通話信号レベルは、第2マイクロフォン125で受信されるレベルと比べていくらか減衰する。したがって、適応フィルタ135は同様な遅延効果及び減衰効果を与えるように調整される。
【0006】
その結果、各ユーザに対するマイクロフォンでの相対時間遅延及び相対信号減衰は、例えば、引用によって本明細書に全体的に組み込まれる、Y.T.Chan、J.M.Riley、及びJ.B.Plant著「A parameter estimation approach to time delay estimation and signal detection」IEEE Transactions on Acoustics,Speech and Signal Processing、第ASSP28巻、1980年2月28日に記載された適応フィルタ135の係数に基づいて算出することができる。しかし、図1のシステムの1つの欠点は、周囲の騒音が存在するときに、このシステムの性能が著しく低下することである。その結果、図1のシステムは、顕著な周囲の騒音(例えば、道路や交通の騒音)がよく起こる大部分の実際の応用分野では有用ではない。したがって、複数のセンサでの相対信号レベル及び相対時間遅延を測定する方法及び装置が必要とされる。
【0007】
【発明の概要】
本発明は、固定フィルタと適応フィルタとを組み合わせて使用し、複数のセンサに関する信号レベル及び時間遅延が正確にかつ確実に推定されるシステムを提供することによって、前述及びその他の要求を満たす。例示的な実施形態では、固定フィルタは、当該の信号源を広帯域の周囲の騒音と区別するために使用される少なくとも1つの比較的狭い通過帯域を含む。このような実施形態では、固定フィルタは基準センサに結合され、適応フィルタは二次センサに結合される。固定フィルタの出力及び適応フィルタの出力から得られた誤差信号を使用して、適切な最小2乗アルゴリズムに従って適応フィルタのフィルタ係数が調整される。固定フィルタの係数及び適応フィルタの係数を使用して、2つのセンサの間の時間遅延及び相対レベルの推定量が算出される。次いで、これらの推定量を使用してセンサ選択及びビーム形成に関する決定を下すことができる。
【0008】
例示的な実施形態では、当該信号が存在しないときにそのことを示す活動検出器を用いて、システムの機能が補正される。活動検出器では、適応フィルタ内の蓄積エネルギーが、固定フィルタの係数から得られた予想される最小値と比較される。蓄積エネルギーが要求値よりも小さく、当該の信号が存在しない(すなわち、周囲の騒音のみが存在する)ことが示されると、時間遅延の推定量及び相対レベルの推定量が適切な値に設定され、当該信号が存在しない期間中でもシステムの適切な動作が確保される。
【0009】
追加の実施形態では、2つよりも多くの信号センサが使用される。このような実施形態では、1つのセンサが基準センサとみなされて固定フィルタに結合され、それに対して追加の各センサが適応フィルタに結合される。追加の各センサについては、固定フィルタの出力及び対応する適応フィルタの出力から得られる誤差信号を使用して、対応する適応フィルタ係数が更新される。したがって、基準センサと追加の各センサとの間の時間遅延及び相対信号レベルの確実な推定量を算出することができ、センサ選択及びビーム形成に対して高度な決定を下すことができる。
【0010】
一般に、本発明は、複数のセンサでの時間遅延及び相対信号レベルを推定するための、計算が簡単でありしかも正確で確実な方法を提供する。本発明の教示は、様々な信号処理分野に適用することができる。更に、本発明は、例えば前述のハンズフリーの移動電話への応用分野だけでなく、テレビ電話など他の音響応用分野に使用することができる。更に、本発明は、当該信号が(例えば、セルラー無線システム内の移動ユニット及び/又は基地局からの)無線周波数伝送であり、センサが無線周波数の検知アンテナ要素である無線通信応用分野に適用することができる。以下に、本発明のこれら及びその他の特徴及び利益について、添付の図面に示す例示的な例を参照して説明する。
【0011】
【発明の実施の形態】
図2は、本発明に従って構成されたレベル遅延測定システム200を示す。図のように、システム200は、第1センサ215、第2センサ225、固定FIRフィルタ230、適応FIRフィルタ235、及び加算装置240を含む。第1センサ215の出力y(k)は固定フィルタ230の入力に結合され、固定フィルタ230の出力y(k)は加算装置240の正の入力に結合される。第2センサ225の出力y(k)は適応フィルタ235の入力に結合され、適応フィルタ235の出力y^(k)は加算装置240の負の入力に結合される。加算装置240から出力された誤差信号e(k)は適応フィルタ235にフィードバックされる。
【0012】
図のように、第1センサ215は、第1信号源210のより近くに位置決めされ、第2センサ225は第2信号源220のより近くに位置決めされる。例えば、第1センサ215は、自動車の運転手のより近くに位置する日除けに取り付けられたハンズフリー・マイクロフォンでよく、第2センサ225は自動車内の乗客のより近くに取り付けられた移動ユニット内の内臓マイクロフォンでよい。別法として、第1及び第2センサ215、225はそれぞれ、第1及び第2の無線周波数信号源のより近くに位置決めされたアンテナ要素でよい。図2には図示していないが、当業者には、固定フィルタ230、適応フィルタ235、及び加算装置240によってデジタル信号が処理されるように、第1及び第2センサ215、225のそれぞれの出力にアナログ前処理回路やアナログ・デジタル変換回路を含むことが可能であると理解されよう。
【0013】
固定フィルタ230は、注目の少なくとも1つの比較的狭い通過帯域を含むように設計される。例えば移動電話では、通過帯域は、人間の通話の大部分のエネルギーが集中する300Hz周波数乃至600Hz周波数に対応する帯域でよい。無線通信応用分野では、通過帯域は、無線周波数伝送に割り付けられた帯域幅に対応する。いずれの場合も、応用分野の要件又は環境面の条件の変化を補正する必要に応じて、固定フィルタ230の係数を調整することができる。例えば、ハンズフリー移動電話の応用分野では、固定フィルタ230は、特定の自動車に関して受信された信号対雑音比を最適化するように設計することができる。更に、例えば測定された信号対雑音比に応じて、フィルタ230の係数を動的に調整することができる。
【0014】
本発明によれば、固定フィルタ230は、各通過帯域内で単位利得及び零位相を生成するように設計される。更に、最大のストップバンド減衰を確保するために、固定フィルタ230の雑音利得も最小限に抑えられる。以下に詳しく説明するように、固定フィルタ230から供給される従来型の情報(すなわち、固定フィルタ230から出力される信号出力の狭帯域性)を使用して、システムが周囲の騒音の影響を受けないようにする。
【0015】
動作時に、適応フィルタ235のフィルタ係数は、誤差信号e(k)が最小限に抑えられ、適応フィルタ235の出力y^(k)が固定フィルタ230の出力y(k)にできるだけ近くなるように、適切な最小2乗アルゴリズムを使用して調整される。後述のように、各信号源210、220に対する第1及び第2センサ215、225での相対時間遅延及び相対信号減衰は、適応フィルタ235の係数と固定フィルタ230に関連する事前情報とに基づいて算出される。図2に明示的に示すように、当業者には、適切なデジタル信号プロセッサをシステム200と一体化して適応フィルタ235の最小2乗更新を行い、かつ時間遅延の推定量及び信号レベルの推定量を算出できることが理解されよう。
【0016】
図2のシステム200の動作を明確にするために、以下に図3及び図4に関する厳密な数学的分析を展開する。この分析は、2つのセンサ及び2つの信号源について明示的に展開されるが、当業者には、この手法が任意の数の信号源及びセンサを含む応用分野に容易に応用できることが理解されよう。また、前述の音響ハンズフリー移動電話の応用分野を適時参照するが、当業者には、前述の無線通信応用分野を含む他の多数の信号処理分野にこの手法を適用できることも理解されよう。
【0017】
図3は、2次元での信号源及びセンサの配置の典型的な例を示す。この図には、第1及び第2センサ215、225が、2つの信号源210、220に隣接して位置決めされている。図のように、(第1の点線の弧315で示す)第1信号源210から放出された信号は、第2の信号センサ225に衝突する前に第1の信号センサ215に衝突する。したがって、第1信号源210のために第2センサ225で受信される信号は、同じ信号源210のために第1センサ215で受信される信号が遅延され減衰されたバージョンである。また、(第2の点線の弧325で示す)信号源220から放出された信号は、第1センサ215に衝突する前に第2センサ225に衝突し、第2信号源220のために第1センサ215で受信される信号は、同じ信号源220のために第2センサ225で受信される信号が遅延され減衰されたバージョンである。第1及び第2信号源210、220に対するセンサ215、225の空間的分離(したがって、対応する時間遅延及びレベル減衰)は、図3ではそれぞれ、第2及び第1の線分320、310で示されている。
【0018】
瞬間時刻kでの(アナログ前処理及びアナログ・デジタル変換の後の)第1及び第2センサ入力が、それぞれx(k)及びx(k)で示される場合、第2センサ入力x(k)は一般に第1センサ入力x(k)の遅延されスケーリングされたバージョンである。言い換えれば、x(k)=1/S×x(k−D ̄)であり、この場合、スケールファクタSは0よりも大きく、遅延D ̄は正の値だけでなく負の値もとることができる。厳密に言えば、D ̄<0である場合(例えば、第2信号源220から放出された信号の場合)、第1の入力x(k)は、第2の入力x(k)の遅延され縮小されたバージョンである。しかし、表記を簡略化するために、一般性を失わずにすべてのD ̄の値について第2の入力x(k)を遅延信号として示す。
【0019】
因果的フィルタリング問題を導入するには、第1センサの後に続く信号経路に固定遅延Δを挿入することができる。これは、大部分の応用分野で自然な手法であるが、本発明が期待されたように働くための必要条件ではない。このことについて以下で詳しく説明する。余分の遅延Δを導入した場合、第1及び第2の中間信号y(k)、y(k)を次式のように定義することができる。
【0020】
【数5】
Figure 0004082649
【0021】
【数6】
Figure 0004082649
【0022】
上式で、qは周知の遅延演算子を示し(すなわち、qy(k)=y(k+1)、q−1y(k)=y(k−1)など)、DはΔ−D ̄として定義される。因果的フィルタリングについては、Δ>D ̄であることに留意されたい。
【0023】
議論の助けとして、図4は、レベル遅延測定システムにおける入力信号x(k)、x(k)及び中間信号y(k)、y(k)を示す。図4のシステム400は、(前述の一定の遅延Δに対応する)遅延ブロック410が第1センサ215と固定フィルタ230との間に位置決めされることを除いて、図2のシステム200と同一である。以下の議論では、固定フィルタ230の係数が第1の係数ベクトルcで記憶され、適応フィルタ235の時変係数が第2の係数ベクトルc^(k)で記憶されると仮定する。
【0024】
一般に、本発明は、測定されたセンサ入力x(k)及びx(k)に基づいて遅延D及びスケールファクタSを推定するための、計算が簡単でありしかも正確な方法を提供する。有利な点として、この方法によれば、例えば前述のハンズフリー移動電話で首尾良く使用できるように周囲の騒音の影響を受けない。推定量、例えばD及びS(この場合、kは、定時刻kまでのセンサ入力がD及びSの計算に使用されることをを示す)を使用してシステム性能を向上させることができる。
【0025】
例えば、移動電話では、推定量D及びSを周知のビーム形成技法と組み合わせて使用し、センサ215、225の感度を第1及び第2信号源210、220に対して電子的に高くかつ低くすることができる。例えば、特定の信号源がアクティブであるとき(例えば、運転手が通話しているとき)、この信号源の方向にビームを形成し、その受信を最適化することができる。別法として、信号源がセンサから遮断すべきである信号を生成するとき(例えば、信号源が厄介なフィードバック又はエコーを生じさせる可能性のある拡声器であるとき)は、空間フィルタリングを使用して、センサの感度をこの信号源に対して低くすることができる。
【0026】
更に、システムは、特定の信号源がアクティブであるときに、特定のセンサで検出された信号のみを選択的に透過させることができる。例えば、一方のセンサが(例えば、物理的に乗客に近接しているために)運転手に対する感度よりも乗客に対する感度の方がずっと高い場合、乗客のみが通話しているときにこのセンサで受信される信号のみを透過することが望ましいことがある。
【0027】
図4に戻るとわかるように、固定フィルタ230から出力される信号y(k)(すなわち、第1の中間信号y(k)のフィルタリングされたバージョン)は、次式によって与えられる。
【0028】
【数7】
Figure 0004082649
【0029】
【数8】
Figure 0004082649
【0030】
【数9】
Figure 0004082649
【0031】
上式で、Lは固定フィルタ230のオーダーであり、{c},l=0,…,Lは固定フィルタ係数である。また、適応フィルタ235から出力される信号y^(k)(すなわち、第2の中間信号y(k)のフィルタリングされたバージョン)は、次式によって与えられる。
【0032】
【数10】
Figure 0004082649
【0033】
【数11】
Figure 0004082649
【0034】
【数12】
Figure 0004082649
【0035】
上式で、ベクトルc^(k)は適応フィルタ235の時変フィルタ係数を含む。ベクトルc^(k)は、以下のように誤差信号e(k)に基づいて更新される。
【0036】
【数13】
Figure 0004082649
【0037】
【数14】
Figure 0004082649
【0038】
上式で、μは間隔0≦μ<2の利得係数(一定又は時変)であり、‖‖は平方ユークリッド・ベクトルのノルムを示す。式(9)及び式(10)によって記述される適応アルゴリズムは、周知の正規化された最小2乗平均(N−LMS;Normalized Least Mean Squares)アルゴリズムである。帰納的最小2乗アルゴリズム(RLS;Recursive Least Squares)や最小2乗平均アルゴリズム(LMS;Least mean Squares)などの代替適応方式を使用することもできる。適応アルゴリズム全般についての詳細は、例えば、それぞれ、引用によって本明細書に合体されるB.Widrow及びS.D.Sterarns著「Adaptive Signal Processing」Prentice Hall、Englewood Cliffs、NJ、1985年やL.Ljung及びT.Soderstrom著「Theory and Practice of Recursive Identification」M.I.T.Press、Cambridge,MA、1983年を参照されたい。有利なことには、上記に定義した各数量は、標準デジタル信号処理構成要素を使用して算出することができる。
【0039】
広帯域源がセンサ215、225に衝突した場合、適応フィルタ235の係数は、固定フィルタ230の係数が遅延されスケーリングされたバージョンに収束する。特に、固定ベクトルcのあらゆる係数が1である場合(すなわち、固定フィルタをほとんど使用しない場合)、時変ベクトルc^(k)は、スケーリングされた遅延の近似値に収束する(すなわち、SqD ̄−Δ=Sq−D)。従来技術のシステムでは、このような結果を使用して時間遅延が推定されている。例えば、引用によって本明細書と合体されるY.T.Chan、J.M.F.Riley、及びJ.B.Plant「Modeling of time delay and its application to estimation of nonstationary delays」IEEE Transactions on Acoustics,Speech,and Signal Processing、第ASSP−29巻、第3号、577ページ乃至581ページ、1981年6月を参照されたい。このようなシステムに関連する1つの欠点は、周囲の騒音が存在するときに全体的なシステム性能が著しく低下し、システムが実世界の大部分の応用分野で非実用的なものになることである。
【0040】
有利なことには、本発明は、信号源信号を周囲の騒音と区別する事前の知識を組み込むことによって、システム性能を著しく向上させられることを教える。全体的な性能を向上させるには、この事前の知識がすべての状況で真であるべきである。例えば、本発明は、注目の信号源信号が1つ又は複数の中心周波数の周りに集中し、それに対して周囲の騒音が比較的平坦で広帯域の周波数内容又はパワー・スペクトル密度を有するときに、このような事前情報が利用できることを教える。このような場合、本発明は、固定FIRフィルタ230を1つ又は複数の通過帯域を有する帯域フィルタとして指定できることを教える。
【0041】
例えば、移動ハンズフリー分野の通話信号の場合、通話信号のエネルギーが100Hz乃至250Hzの間に集中すると仮定するのが合理的である。具体的には、男性通話者の基本周波数は通常、約100Hzであり、女性通話者の基本周波数は通常、約250Hzである。この情報に鑑みて、本発明は、固定フィルタ230のいくつかの可能な設計代替策を教える。例えば、固定フィルタ230は、2つの通過帯域を含み、第1及び第2の通過帯域がそれぞれ、中心周波数100Hz及び250Hzを有するように設計することができる。別法として、固定フィルタ230は、中心周波数が200Hzであり、女性通話者の基本周波数と男性通話者の第1の調波周波数とを含む周波数帯域に広がる、単一の通過帯域を含むように設計することもできる。
【0042】
実際には、前者の手法は、後者の手法よりも高いオーダーのフィルタを使用する必要がある。一般に、設計周波数の数が2倍になると、フィルタのオーダーLも2倍になる。以下の議論では、m個の異なる通過帯域を有する固定フィルタ230について検討する。中心周波数{ω}l=1,…,mでは、フィルタは単位利得及び零位相を実現するように設計される。また、固定フィルタ230は、次式のように定義されるフィルタ雑音利得(NG)を最小限に抑えることによって、ストップ・バンドの最大減衰を実現するように設計される。
【0043】
【数15】
Figure 0004082649
【0044】
上式で、C(z−1)=c+c−1+…+c−Lであり、積分は単位円の周りで進行する。パーセヴァル(Parseval)の関係により、FIRフィルタの雑音利得は次式によって与えられる。
【0045】
【数16】
Figure 0004082649
【0046】
固定フィルタ230を設計するときは、次式のように正弦の和を含む入力信号yin(k)を検討する。
【0047】
【数17】
Figure 0004082649
【0048】
上式で、{ω}、l=1,…,mは固定FIRフィルタの所望の中心周波数であり、ω∈(0,π),ω≠ω,l≠j,{α}は未知の定数α>0、l=1,…,mであり、{φ}は、一様分散確率変数φ∈(−π,π]、l=1,…,mである。次に、次式のように、係数ベクトルcを有し、出力yout(k)、すなわち、任意のd、−∞<d<∞について入力yin(k)の(初期遷移が減衰した後の)厳密なdステップ予測を与える固定FIRフィルタ230を検討する。
【0049】
【数18】
Figure 0004082649
【0050】
【数19】
Figure 0004082649
【0051】
【数20】
Figure 0004082649
【0052】
d=0の場合(すなわち、係数ベクトルcの場合)、固定FIRフィルタ230は、必要に応じて中心周波数{ω}l=1,…,mで単位利得及び零位相を実現する。また、広帯域雑音に対する感度を最小限に抑える場合(すなわち、数式(12)の数量を最小限に抑える場合)、(L>2m−1であるようなフィルタ長Lについては)、以下の結果が成立する。
【0053】
【数21】
Figure 0004082649
【0054】
上式で、Lは{2m×(L+1)}行列である。
【0055】
【数22】
Figure 0004082649
【0056】
上式で、p(d)は2m予測ベクトルである。
【0057】
【数23】
Figure 0004082649
【0058】
図5の第1及び第2のプロット510、520は、それぞれ、上記で説明した手法をd=0、L=32、m=1、ω=200Hz、及びサンプリング速度8000Hzの各値と共に使用して設計された固定フィルタ230の振幅応答及び位相応答を示す。図5に点線で示すように、固定フィルタ230は、必要に応じて中心周波数200Hzで単位利得及び零位相を実現する。
【0059】
前述のように、適応フィルタ235を更新するために使用される適応アルゴリズムは、適応フィルタ235を、固定フィルタ230の遅延されスケーリングされた複製に収束させる。具体的には、d=0(すなわち、係数c)の固定FIRフィルタ230の場合、適応フィルタ235の係数は次式のように収束する。
【0060】
【数24】
Figure 0004082649
【0061】
上式で、S及びDはそれぞれ、センサ215、225の物理的分離によって生じるスケールファクタ及び時間遅延である。したがって、本発明は、式(20)によって与えられるベクトル関係からスケールファクタS及び時間遅延Dの推定量を算出できることを教える。例えば、S^が、適応フィルタ235の係数c^(k)に基づくSの推定量を示す場合、次式のように式(20)から推定量S^を算出することができる。
【0062】
【数25】
Figure 0004082649
【0063】
更に、SはDの事前の知識なしに推定することができる。このことを理解するにはまず、式(21)が、c−Dとc^(k)が共にサイズL+1のベクトルであるベクトル等式であることに留意されたい。次いで、式(17)から、Lc−D=p(−D)が成立する。したがって、左の式(21)の両辺を左から、式(18)で定義された{2m×(L+1)}行列Lに乗じると、以下の結果が与えられる。
【0064】
【数26】
Figure 0004082649
【0065】
上式で、式(22)の両辺は2mベクトルである。次いで、p(D)p(D)=m(式(19)参照)である場合、式(22)は次式のように書き直すことができる。
【0066】
【数27】
Figure 0004082649
【0067】
式(23)と、S>0であることから、定時刻kでのスケールファクタSの推定量S^を次式のように算出することができる。
【0068】
【数28】
Figure 0004082649
【0069】
スケールファクタSの推定量S^を与えられた場合、次式のように最小2乗を使用して時間遅延Dの推定量Dを算出することができる。
【0070】
【数29】
Figure 0004082649
【0071】
等価的に、時間遅延Dの推定量Dを次式のように算出することができる。
【0072】
【数30】
Figure 0004082649
【0073】
有利なことには、推定量Dは実際上反復的に算出することができる。遅延勾配{dp(D)/dD}が式(19)から容易に導かれることに留意されたい。
【0074】
したがって、本発明は、スケールファクタSの推定量及び時間遅延Dの推定量を簡単に算出できることを教える。有利なことには、周知のデジタル信号処理の構成要素を使用して前述の各計算を行うことができる。固定フィルタ230から与えられる一貫した事前情報のために、これらの推定量は周囲の騒音が存在する場合でも有効である。
【0075】
システムは、すべての信号源が非活動状態であるときでも、適切なシステム性能を確保する活動検出器を追加することによって、更に拡張することができる。例えば、信号源210と信号源220がどちらも活動状態ではない場合、センサ215、225で受信される信号x(k)及びx(k)は、互いに相関しない雑音のみを含む。このような場合、適応フィルタ係数c^(k)は空ベクトルに収束し、このことは、スケールファクタ推定量S^が零に収束する傾向があり、それに対して時間遅延推定量Dが任意の値をとれることを意味する。このことを防止するために、活動検出器が注目の信号が存在しないことを検出したときに、推定量S^、Dを明示的に適切な値に設定することができる。
【0076】
例示的な活動検出器は、フィルタ雑音利得の推定量を所定のしきい値(すなわち、予測雑音利得値)と比較する。次式のように式(12)から適切なしきい値を導くことができる。
【0077】
【数31】
Figure 0004082649
【0078】
動作時に、活動検出器は、フィルタ雑音利得の推定量NGを適応フィルタ・タップの2乗の和として算出する(すなわち、NG=c^(k)c^(k))。推定量NGが所定のしきい値よりもずっと小さい場合、遅延推定量Dが零に設定され、スケールファクタ推定量S^が1に設定され、適切なシステム動作が確保される。雑音利得NGの値が遅延Dに依存しないので、単一のしきい値を記憶すれば十分であることに留意されたい。
【0079】
以下の擬似コードを使用して、例示的なシステムを実現することができる。当業者には、このような擬似コードが、標準デジタル信号処理の構成要素を使用して容易に達成されることが理解されよう。
【0080】
<スケールファクタ及び時間遅延推定ルーチン>
(フィルタリング):固定FIRフィルタ及び適応FIRフィルタからの出力を算出する(kは実行時間指数を示す)。
【0081】
Y1=y1(k:−1:k−L);
Y2=y2(k:−1:k−L);
y1hat(k)=Y2’*C;
y1fil(k)=Y1’*CO;
err(k)=y1fil(k)−y1hat(k);
(エネルギー計算及び利得制御):入力中のエネルギーが低い場合、簡単な利得制御方式を使用して利得μを零に設定する。瞬間エネルギーを長時間平均と比較する。
【0082】
emcm(k)=sum(y1hat(k:−1:k−L).^2);
eave(k)=0.999*eave(k−1)+0.001*emom(k);
if(emom(k)>.5*eave(k))
g(k)=mu;
else
g(k)=0;
end
(N−LMS更新):N−LMSアルゴリズムを使用した適応フィルタ係数の更新
C=C+g(k)*Y2*err(k)/((Y2’−Y2)+0.01);(Sの推定量及びD ̄の推定量の更新):1次再帰によってスケーリング推定量を平滑化し、同時に反復勾配法によってD ̄を推定する。デルタはチャネル1の一定時間遅延を示す。
【0083】
LLC=LL*C;
PPD=[cos(warr*(1−Dhat+delta));sin(warr*(1−Dhat+delta))];
DPD=[sin(warr*(1−Dhat+delta));−cos(warr*(1−Dhat+delta))];
Shat=(1−mu)*Shat+mu*sqrt((LLC’*LLC)/m);
Dhat=Dhat+mu*DPU’*(LLC−Shat*PPD);
(活動検出器):推定されたフィルタ・タップの和2乗が、予測されるフィルタ・タップの和2乗よりも20dB低い場合、利得が強制的に1になり、遅延推定量が零になる。
【0084】
eC=C’*C;
if(eC<0.01*eCo)
Shat=1;
Dhat=0;
end
(1次移動平均によってSの推定量及びDの推定量を更に平滑化する):
Sh(k)=rho*Sh(k−1)+(1−rho)*Shat;
Dh(k)=rho*Dh(k−1)+(1−rho)*Dhat;
更に例示的な実施形態の動作を示すために、上記の擬似コードを使用した数値例を与える。この例では、センサがマイクロフォンであると仮定され、信号源が、人間の通話者、又は人間の通話を伝送する拡声器であると仮定される音響状況を検討する。上記で指摘したように、このような状況は、自動車環境で使用されるハンズフリー移動電話で起こる可能性がある。この例は2つのセンサ及び2つの信号源に制限されるが、当業者には、任意の数の信号源及びセンサを使用してこの手法を適用できることが理解されよう。
【0085】
第1信号源210と第1センサ215との間の距離が0.5mであり、第1センサ215を基準センサとみなす場合、第1信号源210に対する第2センサ225での実際の時間遅延は、サンプリング速度が8kHzである場合はD ̄=2.25サンプルである。同じ仮定を使用すると、第2信号源220に対する第2センサ225での実際の時間遅延はD ̄=−8.75サンプルである。これらの仮定は、例えば、乗客(第2信号源220)の近傍の受話器受け(cradle)に配置された(第2センサ225を含む)移動電話と、運転手(第1信号源210)の前方の日除け上に配置された特別の貼付け(extra stick-on)マイクロフォン(第1センサ215)を含む車室に関して合理的である。
【0086】
このような車室には通常、(例えば、ACファン、自動車のエンジン、道路、風などの)かなり大きな周囲の騒音が存在する。この数値例について、様々な方向のマイクロフォンの感度を表1に示す感度として仮定する。
【0087】
【表1】
Figure 0004082649
【0088】
また、第1信号源210の位置にいる男性通話者と第2信号源220の位置にいる女性通話者を用いて、合成2チャネル測定値を得た。最初の1秒間は通話者の活動がなく、次いで男性通話者が7秒間活動状態になり、次いで3秒間活動がなく、次いで女性通話者が10秒間活動状態になるように、ファイル同士を連結した。第2センサ225に対する信号対雑音比は、男性通話者の場合は8dBであり、女性通話者の場合は7dBであった(男性通話者と女性通話者が活動状態である総期間にわたって測定された値)。第1及び第2センサ215、225で検出された通話信号を、図6のそれぞれ、第1及び第2のプロット610、620に示す。
【0089】
追加の周囲の騒音を白ガウス雑音としてモデル化した。第1及び第2センサ215、225で検出された雑音信号を、図6のそれぞれ、第3及び第4のプロット630、620に示す。第1及び第2センサ215、225で測定された組み合わされた通話信号と雑音信号を、図6のそれぞれ、第5及び第6のプロット650、660に示す。
【0090】
シミュレーションでは、L=32、Δ=10、ω=2π200/8000、m=1、μ=0.01、及びrho=0.99の各パラメータを使用した。結果を図7に示す。具体的には、遅延推定量Dを第1のプロット710に示し、スケールファクタ推定量S^を第2のプロット720に示す。どちらのプロット710、720にも、50番目ごとのサンプルが示されている。点線の水平線は遅延の−3サンプル、0サンプル、及び9サンプルと、利得の−10dB、0dB、及び3dBを示す。図のように、システムは、運転手が通話しているときにはスケールファクタの0dB及び時間遅延推定量の−3サンプルを適切に実現し、乗客が通話しているときにはスケールファクタの−10dB及び時間遅延推定量の約9サンプルを適切に実現する。また、活動検出器は、運転手と乗客の両方が通話しない期間中のスケールファクタ及び時間遅延推定量をそれぞれ、0dB及び0サンプルに適切に設定する。
【0091】
因果的なフィルタリング(すなわち、Δ>0)に関して実施形態を説明したが、本発明の教示は、非因果的なフィルタリングに適用することもできる。具体的には、Δ=0の場合、この適応方式は、信号平滑器、後方予測器(D<0)、及び/又は前方予測器(D>0)として働くことのできる適応ブロックを備える。したがって、(例えば、遅延ブロック410を介して)信号フローに一定の遅延を追加する必要がなく、最小固有遅延を有する適応方式を実現することができる。このような特性は、多数のリアルタイムの応用分野で実際にかなり有効である可能性がある。しかし、これらの推定量は、質的には非因果的手法においては精度がいくらか劣るので(及び固定FIRフィルタ230により狭い通過帯域が必要であるので)、システム設計要件に基づくΔの厳密な値を設定することができる。システムが希で極端な状況でも合理的な結果を与えるので、例えば、Δを、「大部分の状況」をカバーするが「すべての可能な状況」まではカバーしないように設定することができる。
【0092】
当業者には、本発明が、本明細書で例示のために説明した特定の例示的な実施形態に限らないことが理解されよう。したがって、本発明の範囲は、上記の説明ではなく、本明細書に添付された請求の範囲によって定義され、請求の範囲の意味に整合するすべての均等物が、本発明に包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来技術の信号レベルと遅延測定システムを示す図である。
【図2】 本発明によって構成された信号レベルと遅延測定システムの例を示す図である。
【図3】 デュアル信号センサで検出された2つの信号の相対信号レベル及び相対時間遅延を示す図である。
【図4】 本発明によって構成された他の信号レベルと遅延測定システムの例を示す図である。
【図5】 図2及び図4の例示的なシステムで使用される信号フィルタの振幅応答及び位相応答の例を示す図である。
【図6】 本発明の例示的な実施形態の動作を示すために使用される通話信号及び雑音信号の例を示す図である。
【図7】 図6の信号に基づいて本発明の例示的な実施形態によって生成される信号レベル推定量及び遅延推定量を示す図である。

Claims (28)

  1. 第1信号センサと、
    第2信号センサと、
    前記第2信号センサの出力に結合される入力を有し、かつ調整可能なフィルタリング特性を有する適応フィルタと、
    加算装置であって、その出力に応じて前記適応フィルタの調整可能なフィルタリング特性を調整する加算装置と、
    プロセッサとを備える信号処理装置であって、
    前記第1信号センサの出力に結合される入力を有し、かつ注目する信号の周波数帯域に対応する通過帯域を有するバンドパスフィルタを備えて、
    前記加算装置が、前記バンドパスフィルタの出力に結合される第1入力と、前記適応フィルタの出力に結合される第2入力とを有し、
    前記適応フィルタのフィルタリング特性を、前記適応フィルタの出力が前記バンドパスフィルタの出力に出来るだけ近くなるように調整する手段を備えて、
    前記プロセッサが、前記バンドパスフィルタのフィルタリング特性と前記適応フィルタの調整可能なフィルタリング特性とに応じて、信号源に関して前記第1信号センサと前記第2信号センサとの間の相対的な時間遅延及び相対的なスケールファクタの推定値を算出することを特徴とする信号処理装置。
  2. 前記バンドパスフィルタ、前記適応フィルタ、前記加算装置、及び前記プロセッサが、デジタル信号プロセッサ(DSP)の集積回路(IC)を使用して実装されることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  3. 前記バンドパスフィルタ、前記適応フィルタ、前記加算装置、及び前記プロセッサが、特定用途向け集積回路(ASIC)を使用して実装されることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  4. 前記信号処理装置が電話機であり、前記第1及び第2信号センサがマイクロフォンであることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  5. 前記信号処理装置が無線トランシーバであり、前記第1及び第2信号センサがアンテナ要素であることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  6. 前記バンドパスフィルタが、一定のフィルタリング特性を有する有限インパルス応答(FIR)フィルタであることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  7. 前記バンドパスフィルタのフィルタリング特性が、通過帯域の中心周波数で単位利得及び零位相遅延を実現する少なくとも1つの通過帯域を含むことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  8. 前記バンドパスフィルタのフィルタリング特性が、前記バンドパスフィルタの雑音利得を最小限に抑えるように設定される係数を含むことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  9. 前記バンドパスフィルタのフィルタリング特性が、前記バンドパスフィルタの信号対雑音比を最適化するように調整される係数を含むことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  10. 前記適応フィルタの調整可能なフィルタリング特性が、正規化された最小2乗平均(NLMS)アルゴリズムを使用して調整されることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  11. 前記適応フィルタの調整可能なフィルタリング特性が、最小2乗平均(LMS)アルゴリズムを使用して調整されることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  12. 前記適応フィルタの調整可能なフィルタリング特性が、帰納的最小2乗(RLS)アルゴリズムを使用して調整されることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  13. 前記第1信号センサと前記第2信号センサとの間の相対的な時間遅延及び相対的なスケールファクタの推定量に応じて、前記第1及び第2信号センサによって生成されるビームパターンを整形するビーム形成器を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  14. 前記ビームパターンが、特定の信号源に向けて送られる空間ビームを含むことを特徴とする請求項13に記載の信号処理装置。
  15. 前記ビームパターンが、特定の信号源に向けて送られる空間ノッチを含むことを特徴とする請求項13に記載の信号処理装置。
  16. 前記プロセッサが、前記第1信号センサと前記第2信号センサとの間の相対的な時間遅延及び相対的なスケールファクタの推定量に応じて、前記第1信号センサと第2信号センサとのうちの特定の一方によって検出された信号を送信のために選択することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  17. 少なくとも1つの追加センサと、調整可能なフィルタリング特性を有する少なくとも1つの追加フィルタとを更に備え、
    前記追加フィルタの調整可能なフィルタリング特性が、前記バンドパスフィルタの出力と前記追加フィルタの出力との間の差に応じて調整され、
    前記プロセッサが、前記バンドパスフィルタのフィルタリング特性と前記追加フィルタの調整可能なフィルタリング特性とに応じて、前記第1信号センサ及び前記追加センサに関する少なくとも1つのパラメータの推定量を算出することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  18. 前記プロセッサが、信号源に対する前記第1信号センサと前記追加センサとの間の相対的な時間遅延及び相対的なスケールファクタの推定量を算出することを特徴とする請求項17に記載の信号処理装置。
  19. 注目の信号源が活動状態であることを検出する活動検出器を更に備え、 前記プロセッサは、前記活動検出器が注目の信号源が活動状態ではないことを示すときに、相対的な時間遅延の推定量及び相対的なスケールファクタの推定量を所定の値に設定することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  20. 前記プロセッサは、前記活動検出器が注目の信号源が活動状態ではないことを示すときに、相対的な時間遅延の推定量を零に設定し、かつ相対的なスケールファクタの推定量を1に設定することを特徴とする請求項19に記載の信号処理装置。
  21. 前記第1信号センサに対応する信号フロー経路に位置決めされた固定遅延ブロックを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  22. 前記バンドパスフィルタ及び適応フィルタのフィルタリング特性が、それぞれL個のフィルタリング係数を含み、 前記バンドパスフィルタのフィルタリング特性がm個の通過帯域を含み、各通過帯域l,l∈(1,m)が中心周波数ωlを有し、
    瞬間時刻kにおける、前記第1信号センサと前記第2信号センサとの間の相対的な時間遅延Dの推定量Dkと、前記第1信号センサと前記第2信号センサとの間の相対的なスケールファクタSの推定量S^kとが、次式のように、前記適応フィルタの調整可能なフィルタリング特性c^(k)、行列L、及び予測ベクトルp(D)に基づいて算出され、
    Figure 0004082649
    Figure 0004082649
    上式で、行列L及び予想ベクトルp(D)が、次式のように算出される、
    Figure 0004082649
    Figure 0004082649
    ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  23. 第1信号センサを使用して第1信号を検出するステップと、
    第2信号センサを使用して第2信号を検出するステップと、
    調整可能なフィルタリング特性を有する適応フィルタを使用して前記第2信号をフィルタリングし、第2フィルタリング済み信号を生成するステップとを備える信号処理方法であって、
    注目する信号の周波数帯域に対応する通過帯域を有するバンドパスフィルタを使用して前記第1信号をフィルタリングし、第1フィルタリング済み信号を生成するステップと、
    前記第1フィルタリング済み信号と第2フィルタリング済み信号との間の差を算出するステップと、
    前記差を最小にするように、前記適応フィルタのフィルタリング特性を調整するステップと、
    前記バンドパスフィルタのフィルタリング特性及び前記適応フィルタのフィルタリング特性に応じて、信号源に関する前記第1信号センサと前記第2信号センサとの間の相対的な時間遅延及び相対的なスケールファクタとの推定値を算出するステップとを有することを特徴とする信号処理方法。
  24. 前記バンドパスフィルタのフィルタリング特性が、通過帯域の中心周波数で単位利得及び零位相遅延を実現する少なくとも1つの通過帯域を含むことを特徴とする請求項23に記載の信号処理方法。
  25. 正規化された最小2乗平均(NLMS)アルゴリズムを使用して前記適応フィルタのフィルタリング特性が調整されることを特徴とする請求項23に記載の信号処理方法。
  26. 前記推定ステップの結果として得られた相対時間遅延及び相対スケールファクタに応じて、前記第1及び第2信号センサによって生成されるビームパターンを整形するステップを更に含むことを特徴とする請求項23に記載の信号処理方法。
  27. 前記推定ステップの結果として得られた相対的な時間遅延及び相対的なスケールファクタに応じて、前記第1信号センサと第2信号センサとのうちの特定の一方によって検出された信号を選択して送信するステップを更に含むことを特徴とする請求項23に記載の信号処理方法。
  28. 注目の信号源が活動状態であるかどうかを検出するステップと、前記検出ステップで前記注目の信号源が活動状態ではないことを示すときに、相対的な時間遅延の推定量及び相対的なスケールファクタの推定量を所定の値に設定するステップとを更に含むことを特徴とする請求項23に記載の信号処理方法。
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