JP4082235B2 - ノルボルネンホスホン酸エステル、その製造方法、その重合体及び重合方法 - Google Patents
ノルボルネンホスホン酸エステル、その製造方法、その重合体及び重合方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医・農薬等生理活性物質、及び機能性材料等の重要な中間体である新規なノルボルネンホスホン酸環状エステル、該化合物の製造法、及び該化合物の重合法とそれにより得られる重合体に関する。
【0002】
ホスホン酸エステル化合物は、医・農薬等の中間体として使用されるほか、染料、塗料、接着剤等への添加剤として使用される種々のファインケミカル誘導体の重要な中間体である。また、ホスホン酸エステル部分を含有する重合体もしくは共重合体は、リンを含有するためそれ自身難燃性を有する高分子であり、希土類金属の抽出能や透明性に優れた機能性高分子として有用な物質である。
【0003】
【従来の技術】
本発明のホスホン酸環状エステルとノルボルナジエンとの反応生成物であるノルボルネンホスホン酸環状エステルは、ホスホン酸エステル化合物としてはこれまで知られていない全く新規な化合物である。
【0004】
今まで環状骨格にホスホン酸エステル部位が結合した化合物としては、ヘキサクロルメタノインデニルホスホネートが知られており、ヘキサクロルメタノインデニルブロマイドとトリアルキルホスファイトからアルブゾフ反応により合成している(特許文献1参照)。
【0005】
また、オレフィンへの亜リン酸エステルの付加反応としては、例えば、パラジウム触媒下の反応が知られており、種々のアルキル置換基を有するホスホン酸エステル化合物を製造する非常に優れた方法である(非特許文献1参照。)。しかし、上記何れの報告でもノルボルネンホスホン酸環状エステルに関する記載は全くなく、非特許文献1に記載の方法も、ノルボルナジエンの様にオレフィン結合を2つ有する化合物の一方のオレフィン結合にのみ選択的に付加反応を起こさせる適用はなく、それに関する記述もない。
【0006】
一方、5価のリン原子を含むジオレフィン化合物のメタセシス反応に関しては、アリルホスホン酸ジクロチルのメタセシスでは、閉環反応による2−クロチロキシ−1−オキサ−2−ホスファ−4−シクロヘキセン 2−オキシドの生成が進行して、メタセシス重合は観察されていない(非特許文献2参照。)。さらに、ジアリルフェニルホスフィンオキシドのメタセシス反応による1−フェニル−1−ホスファ−3−シクロペンタンの生成が記載されているが、メタセシス重合は観察されていない(非特許文献3参照。)。このように、5価のリン原子を含有するオレフィン性化合物のメタセシス反応によって、5価のリン原子を含有する高分子を得る方法は知られていなかった。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第3784652号明細書(抄録、明細書、特許請求の範囲)
【非特許文献1】
「ジャナール・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエテイ(J. Am. Chem. Soc.)」、(米国)、2000年、第122巻、p.5407−5408(全文)
【非特許文献2】
「テトラへドロン・レター(Tetrahedron Lett.)」、(英国)、1998年、第39巻、p.3939−3942(全文)
【非特許文献3】
「テトラへドロン・レター(Tetrahedron Lett.)」、(英国)、1999年、第40巻、p.7333−7336(全文)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、新規なノルボルネンホスホン酸環状エステル類、副反応や副生成物が殆どなく簡便な操作かつ高収率でノルボルネンホスホン酸環状エステル類を工業的に有利に製造する方法、該ノルボルネンホスホン酸環状エステル類をメタセシスすることによるホスホン酸環状エステル基を含む重合体及び/又は共重合体の工業的に有利な製造方法、及び、該重合体及び/又は該共重合体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ノルボルネンホスホン酸環状エステル及びその重合体の製造法について鋭意検討を重ねた結果、二級ホスホン酸環状エステルとノルボルナジエンを反応させると、選択的に一方のオレフィンが反応して有機合成上有用なノルボルネンホスホン酸環状エステルが生成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、式(1)
【0011】
【化13】
【0012】
[式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、又はアリール基を意味する。また、R1〜R4がアルキル基及び/又はアリール基の場合、それらR1〜R4のいずれか二つは、それぞれの基から水素原子を除いてなる残基で互いに結合し、環状構造を形成していても良い。]で表わされるノルボルネンホスホン酸環状エステル、ならびに式(2)
【0013】
【化14】
【0014】
[式中、R1、R2、R3及びR4は前記と同じ。]で表わされる二級ホスホン酸環状エステルを、パラジウム触媒の存在下、ノルボルナジエンと付加反応させることを特徴とする、式(1)
【0015】
【化15】
【0016】
[式中、R1、R2、R3及びR4は前記に同じ。]で表わされるノルボルネンホスホン酸環状エステルの製造法に関するものである。
【0017】
また本発明は、式(3)
【0018】
【化16】
【0019】
[式中、R1、R2、R3及びR4は前記に同じ。nは正の整数を示す。]で表されるポリ(ノルボルネンホスホン酸環状エステル)、ならびに、式(1)
【0020】
【化17】
【0021】
[式中、R1、R2、R3及びR4は前記に同じ。]で表されるノルボルネンホスホン酸環状エステルを金属錯体触媒で開環メタセシス重合することを特徴とする、式(3)
【0022】
【化18】
【0023】
[式中、R1、R2、R3及びR4は前記に同じ。nは正の整数を示す。]で表されるポリ(ノルボルネンホスホン酸環状エステル)の製造方法に関するものである。
【0024】
更に本発明は、ノルボルネンホスホン酸環状エステルからなる式(5)
【0025】
【化19】
【0026】
[式中、R1、R2、R3及びR4は前記に同じ。]で表される繰り返し単位と、他のノルボルネン誘導体からなる式(6)
【0027】
【化20】
【0028】
[式中Xは一価の置換基を示す]で表される繰り返し単位とを主鎖中に有する共重合体、ならびに、式(1)
【0029】
【化21】
【0030】
[式中、R1、R2、R3及びR4は前記に同じ。]で表されるノルボルネンホスホン酸環状エステルと、式(4)
【0031】
【化22】
【0032】
[式中Xは一価の置換基を示す]で表される他のノルボルネン誘導体を、金属錯体触媒で開環メタセシス共重合することを特徴とする、ノルボルネンホスホン酸環状エステルからなる式(5)
【0033】
【化23】
【0034】
[式中、R1、R2、R3及びR4は前記に同じ。]で表される繰り返し単位と、他のノルボルネン誘導体からなる式(6)
【0035】
【化24】
【0036】
[式中Xは一価の置換基を示す]で表される繰り返し単位とを主鎖中に有する共重合体の製造方法に関するものである。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳細に本発明を説明する。
【0038】
尚、本明細書中「n」はノルマルを「i」はイソを「s」はセカンダリーを「t」はターシャリーを意味する。
【0039】
まず、置換基R1、R2、R3及びR4について説明する。
【0040】
置換基R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、又はアリール基を意味する。
【0041】
アルキル基としては、炭素数1〜12、好ましくは1〜8のアルキル基が挙げられ、これらは直鎖状、分枝状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜14,好ましくは6〜12のアリール基が挙げられ、その具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基などが例示される。
また、R1〜R4がアルキル基及び/又はアリール基の場合には、それらR1〜R4のいずれか二つは、それぞれの基から水素原子を除いてなる残基で互いに結合し、環状構造を形成していても良い。このようにしてR1〜R4のいずれか二つから形成される環構造としては、1,2−シクロヘキシレン基、オルトフェニレン基等が例示される。
【0042】
工業的入手の容易さの面から、置換基R1、R2、R3及びR4は、独立に水素原子又はメチル基から選ぶのが好ましい。
【0043】
本発明の式(1)のノルボルネンホスホン酸環状エステルは、式(2)の二級ホスホン酸環状エステルをパラジウム触媒の存在下ノルボルナジエンと付加反応させることにより製造することができる。
【0044】
原料である式(2)の二級ホスホン酸環状エステルは、「カナデイアン・ジャーナル・オブ・ケミストリー(Can. J. Chem.)」、(カナダ)、1967年、第45巻、p.2501−2512、及び「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J. Org. Chem.)」、(米国)、1996年、第61巻、p.6015−6017等に記載の、三塩化リンあるいはリン酸とジオール又は2価フェノールから容易に合成することができる。本発明の付加反応、重合反応に好適な二級ホスホン酸環状エステルを例示すると、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン 2−オキシド、4,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン 2−オキシド等が挙げられる。
【0045】
ノルボルナジエンの使用量は、式(2)の基質に対して0.5モル当量〜10モル当量の範囲であり、特に、0.8モル当量〜3モル当量の範囲が好ましい。
【0046】
触媒であるパラジウムとしては、種々の構造のものを用いることができるが、好適なものはいわゆる低原子価のパラジウム錯体であり、特に3級ホスフィンや3級ホスファイトを配位子とするゼロ価錯体が好ましい。また、反応の系中でゼロ価錯体に容易に変換される前駆錯体も好適に用いられる。
【0047】
配位子としての3級ホスフィンや3級ホスファイトとしては、例えば、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、フェニルジメチルホスフィン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1‘−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等が挙げられ、これらの配位子の2種以上を混合して含む錯体も好適に用いられる。
【0048】
触媒として、3級ホスフィンや3級ホスファイトを含まないパラジウム錯体、及び/又は、3級ホスフィンや3級ホスファイトを含む錯体と、前記した配位子を組み合わせて用いることも好ましい態様である。
【0049】
前記配位子に組みあわせて用いられる、3級ホスフィンや3級ホスファイトを含まない錯体としては、ビス(ベンジリデンアセトン)パラジウム、酢酸パラジウム等が挙げられ、また3級ホスフィンや3級ホスファイトを既に配位子として含む錯体としては、ジメチルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジメチルビス(ジフェニルメチルホスフィン)パラジウム、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
これらパラジウム触媒の使用量は、いわゆる触媒量で良く、一般的には、式(2)の基質に対して20モル%以下で十分であり、通常5モル%以下である。
【0051】
本反応は特に溶媒を用いなくてもよいが、必要に応じて溶媒中で実施することもできる。
【0052】
反応溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロルベンゼン及びo−ジクロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタン及びn−デカン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム及び四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン及びジオキサン等のエーテル類等が挙げられ、好ましくはベンゼン、トルエン及びジオキサンが挙げられる。
【0053】
更に、これらの溶媒は、単独又は組み合わせて使用することも出来る。
【0054】
付加反応の温度は、通常0℃から使用する溶媒の沸点まで可能であるが、好ましくは0℃〜150℃の範囲がよい。
【0055】
付加反応に要する時間は、基質の反応性にもよるが、通常0.1〜1000時間である。
【0056】
反応終了後は、溶媒の減圧留去、蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等により、目的とするノルボルネンホスホン酸環状エステルを単離する事が出来る。
【0057】
本発明の重合体は式(1)で表されるノルボルネンホスホン酸エステルのメタセシス重合によって合成することが出来、共重合体は式(1)で表されるノルボルネンホスホン酸エステルと式(4)で表されるノルボルネン誘導体とのメタセシス共重合によって合成することが出来る。共重合に用いられるノルボルネン誘導体の置換基Xは一価の置換基であり、水素原子、飽和炭化水素基、エステル基、シアノ基、エーテル基等の中から選ばれる。共重合体合成に好ましく用いられるノルボルネン誘導体を具体的に例示すると、2−ノルボルネン、酢酸5−ノルボルネン−2−イル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル等が挙げられる。
【0058】
本発明のメタセシス重合又は共重合反応は、官能基を有するオレフィン性化合物のメタセシスに用いられる錯体触媒であればいかなるものでも用いることが出来る。特に好適なものはモリブデン、タングステン、ルテニウムを中心金属に含むものであり、具体的には、(2,6−ジイソプロピルフェニルイミド)(ネオフィリデン)モリブデンビス(ヘキサフルオロ−t−ブトキシド)、(2,6−ジイソプロピルフェニルイミド)(ネオフィリデン)タングステン(ヘキサフルオロ−t−ブトキシド)、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(フェニルメチレン)ルテニウム、1,3-ビス-(2,4,6−トリメチルフェニル−2−イミダゾリジニリデン)ジクロロ(フェニルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。
【0059】
これらの錯体触媒の使用量は、いわゆる触媒量で良く、一般的には、式(1)のモノマー、共重合にあっては式(1)及び式(4)のモノマーの総量に対して20モル%以下で十分であり、通常5モル%以下である。
【0060】
本発明のメタセシス重合又は共重合反応は特に溶媒を用いなくてもよいが、必要に応じて溶媒中で実施することもできる。
【0061】
重合反応溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロルベンゼン及びo−ジクロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタン及びn−デカン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム及び四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン及びジオキサン等のエーテル類等が挙げられる。ただし、脂肪族炭化水素類を溶媒に用いると生成高分子が溶解しないことが多いので、精製等の関係では必要に応じて他の溶媒に入れ替える等の処置が必要な場合がある。
【0062】
更に、これらの溶媒は、単独又は組み合わせて使用することも出来る。
【0063】
重合温度は、通常0℃から使用する溶媒の沸点まで可能であるが、好ましくは0℃〜150℃の範囲がよい。
【0064】
重合反応に要する時間は、基質の反応性や触媒の活性にもよるが、通常1分〜100時間である。
【0065】
反応終了後は、溶媒の減圧留去、メタノール等の貧溶媒へ反応液を注ぐことによる再沈殿、クロマトグラフィー等により、目的とする重合体を得ることが出来る。
【0066】
【実施例】
以下、実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
実施例1
冷却管を付けた300mLの二口ナスフラスコを減圧下、ヒートガンで乾燥し、窒素雰囲気下、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン 2−オキシド(10.1g、60.9mmol)と酢酸パラジウム(350mg、1.56mmol)及び1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(972mg、2.82mmol)を入れ、180mLの1,4−ジオキサンに溶解した2,5−ノルボルナジエン(8.83g、95.8mmol)を室温で加えた(不均一溶液)。反応溶液を加熱すると黄色の均一溶液に変化し、100℃で20時間撹拌した。1,4−ジオキサンを減圧留去して得られた黄褐色の固体を、ジクロロメタンを溶離液とする短いシリカゲルカラムでクロマトグラフィーに掛け、得られた黄色溶液を濃縮して黄色粉末15.1g(粗収率85%)を得た。ジクロロメタンとヘキサンで再結晶して9.14g(59%)の2−(5−ノルボルネン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン 2−オキシドが得られた。
【0068】
本化合物は文献未収載の新規化合物であり、その性状、分光学的データは以下のようであった。
【0069】
無色結晶; m.p. 99.3-100.0 °C. 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 6.10 (d, 2H, JHP = 7.0 Hz), 3.18 (d, 1H, JHP = 8.4 Hz), 2.98 (s (br), 1H), 1.87-1.98 (m, 1H), 1.77 (d, 1H, JHP = 8.2 Hz), 1.48 (s, 6H J = 8.8 Hz), 1.27-1.37 (m, 3H), 1.32 (s, 6H J = 7.9 Hz); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 136.9, 136.3 (JCP = 15.5 Hz), 87.6 (JCP = 1.9 Hz), 87.5 (JCP = 1.5 Hz), 46.2, 44.2, 41.8 (JCP = 2.9 Hz), 36.5 (JCP = 129.3 Hz), 27.7, 24.7 (JCP = 3.5 Hz), 24.6 (JCP = 3.8 Hz), 24.1 (JCP = 4.7 Hz), 24.0 (JCP = 5.8 Hz); 31P NMR (CDCl3, 121.5 MHz) δ 47.8; Anal. Calcd for C13H21O3P: C, 60.93; H, 8.26. Found: C, 60.70; H, 8.16.
【0070】
実施例2
実施例1と同様な条件下で、Me2Pd[Ph2P(CH2)4PPh2](二級環状ホスホン酸原料に対して5モル%)触媒を用いて反応を行い、実施例1と同様に後処理したところ、目的物が89%の粗収率で得られた。
【0071】
実施例3
実施例2と同様な条件下で、Me2Pd[dppf][なお、dppfは1,1‘−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを表す。]触媒を用いて反応を行い、実施例1と同様に後処理したところ、目的物が91%の粗収率で得られた。
【0072】
実施例4
ヒートガンで乾燥した50mLのシュレンク管に、窒素雰囲気下、2−(5−ノルボルネン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン 2−オキシド(206mg、804μmol)とジクロロメタン1.56mLを入れ、よく撹拌した。この溶液に、重合開始剤ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(フェニルメチレン)ルテニウム(0.64mg、0.78μmol)を0.21mLのジクロロメタンに溶かした溶液を加え、室温で24時間撹拌した反応溶液は粘性の高い均一溶液となった。0.1mLのエチルビニールエーテルを加えて反応を停止させたのち、200mLのジエチルエーテル中に反応溶液を少量ずつ滴下すると白濁し沈殿を生じた。濾別して白色固体160mg(収率79%)の重合体が得られた。
【0073】
本高分子は文献未収載の新規化合物であり、その分光学的データは以下のようであった。
【0074】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 5.58, 5.41-5.52, 5.26-5.34 and 5.18-5.24 (m (br) 2H), 3.43-3.49 (m, 1H), 2.88-3.13 (m, 1H), 2.69-2.79 (m, 1H), 2.13-2.30 (m, 1H), 1.58-1.95 (m, 3H), 1.43 (s (br), 6H), 1.29 (s (br), 6H);13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 131.9, 131.3, 88.4 , 88.7, 45.6, 44.6, 42.9, 41.9, 34.6, 25.3, 25.1, 24.8, 24.5; 31P NMR (CDCl3, 121.5 MHz) δ 47.4.
【0075】
実施例5
重合開始剤の使用量をモノマーのモル数に対して100分の1に増やし、重合時間を3時間にした他は実施例4と同様に重合反応を行い、同様に後処理した。テトラヒドロフランを加え、その可溶部をGPC分析した結果、ポリスチレンを標準に対して、数平均分子量59000、分散度1.03であることが判明した。
【0076】
実施例6
ヒートガンで乾燥した50mLのシュレンク管に、窒素雰囲気下、2−(5−ノルボルネン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン 2−オキシド(201mg、784μmol)と乾燥したトルエン1.56mLを入れ、よく撹拌した。この溶液に、重合開始剤1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル−2−イミダゾリジニリデン)ジクロロ(フェニルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(0.66mg、0.78μmol)を0.18mLのトルエンに溶かした溶液を加え、室温で反応させた。反応1時間後にはすでにゴム状の無色透明な固体が析出した。0.1mLのエチルビニルエーテルを加えて反応を停止させた。トルエンを留去し、固体を200mLのジクロロメタン中で撹拌した後、吸引濾過によってモノマーと触媒を濾別して単離生成物として無色のゴム状固体190mg(収率95%)の重合体を得た。
【0077】
実施例7
ヒートガンで乾燥した50mLのシュレンク管に、窒素雰囲気下、2−(5−ノルボルネン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン 2−オキシド(157mg、616μmol)と2−ノルボルネン(60.9mg、647μmol)及び乾燥したジクロロメタン5mLを入れ、よく撹拌した。この溶液に、重合開始剤ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(フェニルメチレン)ルテニウム(4.91mg、5.97μmol)を0.46mLのジクロロメタンに溶かした溶液を加え、室温で5時間反応させた。0.1mLのエチルビニルエーテルを加えて反応を停止させた。反応溶液をジエチルエーテル(200mL)に加え、生成物を沈殿させ、吸引濾過によって目的物の淡褐色固体31.6mg(単離収率14%)を得た。本固体ポリマーのポリスチレン基準の数平均分子量は4500,分散度は2.98であった。プロトンNMRの測定結果から、本重合物は、2−(5−ノルボルネン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン 2−オキシドと2−ノルボルネンとのほぼ1:1の共重合物であり、文献未収載の新規化合物である。その分光学データは以下の通りであった。
【0078】
【化25】
【0079】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 5.09-5.58 (m (br),4Ha,e), 3.05-3.41, (m, 0.6Hi), 2.81-3.09 (m, 1.1Hf), 2.56-2.79 (m, 1.1Hh), 2.34-2.52 (m, 1.7Hb), 2.08-2.33(m, 1.1Hg), 1.58-2.06 (m, 6.4Hc,d,g,j), 1.41-1.56 (s (br), 7.4Hk), 1.13-1.40 (s (br), 9.1Hd,k), 1.01-1.19 (m, 0.9Hc); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 135.9, 132.8,.130.5, 126,3, 88.4, 87.7, 45.3,.44.8, 43.6, 42.8, 41.8, 40.9, 38.8, 34,6, 32.6, 29.7, 25.3, 25.1, 24.8, 24.5; 31P NMR (CDCl3, 121.5 MHz) δ 47.5.
参考のため、図1に2−ノルボルネンのみの単独メタセシス重合体、実施例1で得られた2−(5−ノルボルネン-2-イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン 2−オキシドのみの単独メタセシス重合体、及び、本実施例で得られた共メタセシス共重合体のプロトンNMRを示す。
【0080】
実施例8
ヒートガンで乾燥した50mLのシュレンク管に、窒素雰囲気下、2−(5−ノルボルネン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン 2−オキシド(299mg、1.168mmol)と5−ノルボルネン−2−イル−アセタート(177mg、647μmol)及びジクロロメタン3.7mLを入れ、よく撹拌した。この溶液に、重合開始剤ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(フェニルメチレン)ルテニウム(4.36mg、5.29μmol)を1.0mLのジクロロメタンに溶かした溶液を加え、室温で22時間反応させた。0.1mLのエチルビニルエーテルを加えて反応を停止させた。反応溶液を200mLのジエチルエーテルに加えて沈殿させ、濾過、減圧下で乾燥し、201mg(42%)得られた。ポリスチレン基準の数平均分子量は45300,分散度は1.18であった。プロトンNMRの測定結果から、本重合物は、2−(5−ノルボルネン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン 2−オキシドと5−ノルボルネン−2−イル−アセタートとのほぼ1:1の共重合物であり、文献未収載の新規化合物である。その分光学データは以下の通りであった。
【0081】
【化26】
【0082】
淡褐色固体 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 5.28-5.56 (m, 4Ha,h), 5.24-4.96 and 4.68-4.93 (m, 1.4Hd), 2.09-3.38 (m (br), 6.3H), 1.80-2.12 (m, 4.6Hg), 1.54-1.89 (m, 3.1Hf,j,r), 1.15-1.52 (s (br), 13.1Hs,c); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 170.9, 133.6,.131.8, 127.6, 126.3, 88.3, 87.7, 47.4,.45.3, 44.7, 42.9, 42.0, 40.8, 39.8, 38,3, 34.6, 25.3, 25.1, 24.7, 24.4, 24.3, 21.7; 31P NMR (CDCl3, 121.5 MHz) δ 47.3.
参考のため、図2に5−ノルボルネン−2−イル−アセタートのみの単独メタセシス重合体、実施例1で得られた2−(5−ノルボルネン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン 2−オキシドのみの単独メタセシス重合体、及び、本実施例で得られた共メタセシス共重合体のプロトンNMRを示す。
【0083】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、新規なノルボルネンホスホン酸環状エステルを効率的に製造することができ、分離精製も容易である。また、その単独メタセシス重合、他のノルボルネン誘導体とのメタセシス共重合によって、ホスホン酸エステル部位を有する高分子を容易に合成でき、再沈殿等により分離も容易である。従って、本発明の工業的意義は多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プロトンNMR(1HNMR)の比較図
(I):2-ノルボルネンの単独メタセシス重合体
(II):実施例1の重合体
(III):実施例7の共重合体
【図2】 プロトンNMR(1HNMR)の比較図
(IV):5−ノルボルネン−2−イル−アセタートの単独メタセシス重合体
(V):2−(5−ノルボルネン-2-イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン2−オキシドの単独メタセシス重合体
(VI):実施例8の共重合体
Claims (14)
- R1、R2、R3及びR4が独立にメチル基又は水素原子である請求項1記載のノルボルネンホスホン酸環状エステル。
- R1、R2、R3及びR4が独立にメチル基又は水素原子である請求項2記載のノルボルネンホスホン酸環状エステルの製造法。
- R1、R2、R3及びR4が独立にメチル基又は水素原子である請求項5記載のポリ(ノルボルネンホスホン酸環状エステル)。
- R1、R2、R3及びR4が独立にメチル基又は水素原子である請求項6記載のポリ(ノルボルネンホスホン酸環状エステル)の製造方法。
- 式(1)
- Xがアルカノイロキシ基または水素原子である、請求項9に記載の共重合体。
- Xがアルカノイロキシ基または水素原子である、請求項10に記載の共重合体の製造方法。
- R1、R2、R3及びR4が独立にメチル基又は水素原子である請求項9又は11に記載の共重合体。
- R1、R2、R3及びR4が独立にメチル基又は水素原子である請求項10又は12に記載の共重合体の製造方法。
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