擁壁に加わる土圧力は土質の性質や擁壁背面の上部に載荷される荷重や盛土の形状により様々であり、従来工法ではそれら様々な条件に対応するために、底板幅や擁壁高さを色々に変化させたものを製造していた。
図14は従来のL型擁壁と土圧との関係を示した断面図である。
図を参照して、図14の(1)は、盛土が無く、地表面37aが水平な場合のL型の擁壁38aと、これに加わる土圧41a及び41bとの関係を示している。L型の擁壁38aは基礎コンクリート39aの上に設置されるため、図に示すように、少なくとも、この基礎コンクリート39aの右側端部までは、すなわち、掘削線35aまでは、擁壁背面の土を掘削する必要がある。そして、このように設置されたL型の擁壁38aと掘削線35aとの間は、裏込材(土砂)40aにより埋め戻される。ここで、L型の擁壁38aの水平方向に延びる底板部の右端の位置で決まる仮想背面36aとL型の擁壁38aとで囲まれる範囲の裏込材40aがL型の擁壁38aの自重として加わり、擁壁38aの自立安定性が増す。この加わった自重は、図において垂直方向の土圧41bで示されている。そして、仮想背面36aに作用する土圧がL型の擁壁38aの壁部分に、水平方向の土圧41aとして加わる。この土圧41aは、支点42aを中心にL型の擁壁38aを前方に転倒させる力、及び、前方に滑らせる力として働く。このように、支点42aを中心とした回転モーメントとして、土圧41aと土圧41bとが擁壁38aを介して反対方向に作用するため、土圧41aに対して擁壁38aが動かないような十分な大きさの土圧41bが得られるように擁壁38aの各部を設計する必要がある。
続いて、図14の(2)を参照して、ここでは、図14の(1)と同様にL型の擁壁38bと、これに加わる土圧41c及び41dとの関係を示しているが、(1)と比べて、地表面37bが少し盛り上がっている。このように、盛土が少し増えるため、支点42bを中心にL型の擁壁38bを前方へ転倒させようと働く力及び前方へ滑らせようとする力として作用する土圧41cは、(1)のL型の擁壁38aに加わる土圧41aよりも大きくなる。したがって、この場合、自立安定性を増すために、土圧41cに対抗する土圧41dを増加させる必要が生じる。ここでは、この土圧41dを増加させるために、L型の擁壁38bの底板幅を広くし、仮想背面36bを後ろにスライドさせることにより、自重として作用する裏込材40bの重量を増加させている。しかし、このようにL型の擁壁38bの底板幅を伸ばしたことにより、基礎コンクリート39bも伸ばさざるを得ず、図14(1)の掘削線35aよりも、掘削線35bの方が背面側に後退することとなり、その結果、掘削量が増大してしまう。
次に、図14の(3)を参照して、L型の擁壁38cと、これに加わる土圧41e及び土圧41fとの関係が示されている。ここでは、図14(2)と比べて、更に、盛土が増え、地表面37cが急勾配の傾斜面を形成しており、支点42cを中心としてL型の擁壁38cを前方に転倒又は滑らせるように作用する土圧41eが、更に大きくなっている。ここでも、図14(2)の場合に示したのと同様に、自立安定性を増加させるために、L型の擁壁38cの底板幅を更に広くし、仮想背面36cを更に後ろへスライドさせることにより、裏込材40cから得られる自重を増加させて、より大きな土圧41fを得ている。そして、この場合も同様に、掘削量が増加することとなり、掘削線35cは更に後退することとなっている。
次に、図15は従来の逆L型擁壁と土圧との関係を示した断面図である。
図を参照して、図15の(1)は、盛土が無く、地表面37dが水平である場合の逆L型の擁壁38dと、これに加わる土圧41g及び41hとの関係を示している。逆L型の擁壁38dの場合、裏込材40eにより加わる土圧41gは、支点42dを中心として逆L型の擁壁38dを前方へ転倒させ、また、滑らせようとする力として働く。図に示した土圧41hは、前方に埋め戻された埋め戻しの砕石40dから得られる土圧であり、逆L型の擁壁38dの自重増加分として、すなわち、土圧41gに対抗する力として自立安定の方向に作用する。また、この逆L型の設置もL型の場合と同様に、掘削線35dは、基礎コンクリート39dの、図中右端部の位置で決まる。
続いて、図15の(2)を参照して、ここでは、図15(1)の地表面37dに比べて地表面37eが少し盛り上がっている。このように、盛土が少しある場合には、裏込材40gの土圧41iが増加する。したがって、支点42eを中心として逆L型の擁壁38eを前方へ転倒させようとする力及び前方へ滑らせようとする力が増加するので、これらに対抗するために、逆L型の擁壁38eの底板に作用する土圧を増加させる必要がある。この図15(2)に示した例では、底板を擁壁38eの前方に伸ばすことにより、埋め戻しの砕石40fのうち自重として働く割合を増加させ、土圧41iに対抗する土圧41jを得ている。この場合、逆L型の擁壁38eを設置する深さは変更していないので、基礎コンクリート39eの背面側と掘削線35eとの関係は変化していない。このように、掘削線35eを後退させることなく、増加した土圧に対抗させる場合には、底板の幅を前方に広げることで対応している。
次に、図15の(3)を参照して、地表面37fの盛り上がりは、図15(2)の地表面37eと同程度であるので、逆L型の擁壁38fの背面に作用する土圧41kは同程度である。しかし、ここでは、底板幅をあまり広げずに、逆L型の擁壁38fを深く埋設することにより、自重として働く埋め戻しの砕石40hの量を増加させ、これにより得られる土圧41lを増加させている。このように、前方に底板を伸ばすことなく、増加した土圧に対抗させる場合には、擁壁を深く埋設することにより対応している。
また、従来では、上記の図14及び図15に示したように、擁壁自体の大きさや、埋設の深さを調節する以外に、転倒や滑りを防止する工法も考えられている。その例を以下の図16に示す。
図16は、アンカー材及び杭部材を備えた従来のL型擁壁用コンクリートブロックの斜視図である。
図を参照して、L型擁壁用コンクリートブロック43aの壁板には、連結棒45aにより固定されたアンカー材44aが備えられている。また、底板には、L型擁壁用コンクリートブロック43a下の基礎中に打ち込むための杭ブロック47aと、この杭ブロック47aを固定するための杭46aとが備えられている。ここに示したL型擁壁用コンクリートブロックについての技術については、特許文献1に記載がある。
図17は、図16のXVII―XVIIラインから見たL型擁壁擁コンクリートブロックの設置断面図である。
図17(1)を参照して、L型擁壁用コンクリートブロック43bは基礎コンクリート39gの上に設置されている。そして、L型擁壁用コンクリートブロック43bの底板を貫くように、杭ブロック47bが杭46bにより基礎コンクリート39gへ打設されている。掘削線35gは、図14のようなL型の擁壁の場合と同様に、基礎コンクリート39gの右端部の位置で決まる。そして、この掘削線35gとL型擁壁用コンクリートブロック43bとの間に裏込材40jが埋め戻されている。また、図17(1)のL型擁壁用コンクリートブロック43bの壁板の背面には、図14のL型の擁壁とは異なり、連結棒45bを介してアンカー材44bが備えられている。このように、L型擁壁用コンクリートブロック43bは、アンカー材44b及び杭ブロック47bにより、水平方向への滑りを防止する抵抗力を得ることができる。
次に、図17(2)を参照して、ここでの地表面37hは、図17(1)の地表面37gと比べて、少し盛土があり、土圧が増加している。ここで、このL型擁壁用コンクリートブロック43cが備えているアンカー材44c及び杭ブロック47c等は、上述のように水平方向の滑りを防止するものであり、転倒防止のためには殆ど作用しない。したがって、図14(2)に示したのと同様の対策が必要となる。すなわち、図17(1)のL型擁壁用コンクリートブロック43bの底板よりも幅が広くなるように設計したL型擁壁用コンクリートブロック43cを用いて、自重として作用する裏込材40kの割合を増加させて、自立安定性の向上を図っている。尚、それ以外については、図14(2)に示した説明と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
続いて、図17(3)を参照して、ここでの地表面37iは、図17(2)の地表面37hと比べて、更に盛土が増大し、急勾配の傾斜面を形成している。ここで、このL型擁壁用コンクリートブロック43dが備えているアンカー材44d及び杭ブロック47d等は、図17(2)の場合と同様に、水平方向の滑りを防止するものであり、転倒防止のためには殆ど作用しない。したがって、図14(3)に示したのと同様の対策が必要となる。すなわち、図17(2)のL型擁壁用コンクリートブロック43cの底板よりも更に幅が広くなるように設計したL型擁壁用コンクリートブロック43dを用いて、自重として作用する裏込材40lの割合を増加させて、自立安定性の向上を図っている。尚、それ以外については、図14(3)に示した説明と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
しかしながら、上記の従来のL型の擁壁では、図14の(1)から(3)に示したように、擁壁背面の土圧が増加するにしたがって、擁壁の底板幅を伸ばす必要が生じていた。そして、擁壁の底板幅を伸ばして対処する場合、擁壁の位置を固定すると、掘削量を増加させるために施工コストが増大し、また、背面側に構造物が存在する場合は、掘削量を増加させることはできず、擁壁を前方に移動させる必要があったが、この場合は、前方の用地確保の問題が生じていた。また、擁壁の種類が増加し、又、大型化するため、プレキャスト擁壁を製造する際にコストが大きくなると共に、運賃コストやストックヤードのスペースの問題、更には、大型の擁壁を扱うための大型クレーン設備の必要性といった問題が生じていた。
また、上記の従来の逆L型の擁壁では、図15の(1)から(3)に示したように、擁壁背面の土圧が増加するにしたがって、擁壁の底板幅を伸ばすか、又は、底板を深く埋設する必要が生じていた。そして、擁壁の底板幅を伸ばす場合は、従来のL型の擁壁と同様の問題が生じ、また、底板に載る土が増えるように埋設部分を深くすると、擁壁を転倒させようとする土圧に抵抗する自重が得られる代わりに、土圧も増加してしまうため、いわゆる「いたちごっこ」の計算になってしまうという問題があった。
また、図16及び図17に示したように、L型擁壁用コンクリートブロック43a〜43dは壁板にアンカー材44a〜44dを備え、また、底板に杭ブロック47a〜47dを備えているが、擁壁を転倒させようとする土圧に抵抗する自重が増加されるわけではないため、擁壁の転倒防止としては殆ど効果が見込めない。すなわち、図14に示したL型の擁壁38a〜38cと同様に、擁壁の転倒を防止するように自重として作用する鉛直下向きの土圧は、仮想背面36d〜36fとL型擁壁用コンクリートブロック43b〜43dとで囲まれる範囲の裏込材40j〜40lから得られるものに限られ、実質的に、L型の擁壁と大差はない。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、擁壁背面にかかる土圧の大小に関わらず、擁壁自体の大きさを変更することなく自立安定する自立型コンクリート擁壁構造体を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、自立型コンクリート擁壁構造体であって、背面側に土圧力が作用する縦壁部と、縦壁部の下端に接続され、水平方向に延びる底板部とからなるコンクリート擁壁と、底板部の背面側の端部から上方に延びる垂直面から少なくとも背面側に延びる棚板部と、棚板部の背面側から上方に延びる縦板部とからなる枠体と、枠体をコンクリート擁壁に固定する固定手段と、縦壁部と枠体とで構成される空間に充填された裏込め材とを備え、コンクリート擁壁は、底板部の背面側の端部から上方に延びる垂直面と縦壁部の背面とが一致するように、逆L型に底板部と縦壁部とが接続されたものである。
このように構成すると、コンクリート擁壁に対して鉛直下方に加わる土圧が、棚板部の垂直投影面積に相当する分だけ増加する。又、棚板部に加わる土圧力が、いわゆる逆L型コンクリート擁壁の転倒防止のために働く。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、固定手段は、枠体をコンクリート擁壁の縦壁部に固定するものである。
このように構成すると、コンクリート擁壁の縦壁部と枠体とが一体化される。
請求項3記載の発明は、自立型コンクリート擁壁構造体であって、背面側に土圧力が作用する縦壁部と、縦壁部の下端に接続され、水平方向に延びる底板部とからなるコンクリート擁壁と、各々が上下に配置されると共に、背面側に延びる棚板部と、棚板部の背面側から上方に延びる縦板部とからなり、少なくとも最下段の棚板部は底板部の背面側の端部から上方に延びる垂直面よりも背面側に延びる複数の枠体と、枠体をコンクリート擁壁に固定する固定手段と、縦壁部と枠体とで構成される空間に充填された裏込め材とを備え、複数の枠体は、下方の枠体の縦板部上端と上方に隣接する枠体の棚板部の下端とが接続されるように積み上げられて、垂直面から背面側の方向へ上る階段状に形成され、コンクリート擁壁は、底板部の背面側の端部から上方に延びる垂直面と縦壁部の背面とが一致するように、逆L型に底板部と縦壁部とが接続されたものである。
このように構成すると、コンクリート擁壁に対して鉛直下方に加わる土圧が、枠体が積み重ねられることにより棚板部の垂直投影面積が増えた分だけ更に増加する。又、棚板部に加わる土圧力が、いわゆる逆L型コンクリート擁壁の転倒防止のために働く。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、固定手段は、複数の枠体をコンクリート擁壁の縦壁部に固定するものである。
このように構成すると、コンクリート擁壁の縦壁部と複数の枠体とが一体化される。
請求項5記載の発明は、請求項2又は4記載の発明の構成において、固定手段は、枠体及び縦壁部の各々に対して着脱可能に取り付けられる共に枠体を前記コンクリート擁壁の縦壁部に固定する連結体を含むものである。
このように構成すると、コンクリート擁壁の縦壁部と連結体と枠体とが分離される。
請求項6記載の発明は、自立型コンクリート擁壁構造体であって、背面側に土圧力が作用する縦壁部と、縦壁部の下端に接続され、水平方向に延びる底板部とからなるコンクリート擁壁と、各々が上下に配置されると共に、背面側に延びる棚板部と、棚板部の背面側から上方に延びる縦板部とからなり、少なくとも最下段の棚板部は底板部の背面側の端部から上方に延びる垂直面よりも背面側に延びる複数の枠体と、枠体をコンクリート擁壁に固定する固定手段と、縦壁部と枠体とで構成される空間に充填された裏込め材とを備え、複数の枠体は、下方の枠体の縦板部上端と上方に隣接する枠体の棚板部の下端とが接続されるように積み上げられて、垂直面から背面側の方向へ上る階段状に形成され、固定手段は、複数の枠体をコンクリート擁壁の縦壁部に固定し、固定手段は、枠体及び縦壁部の各々に対して着脱可能に取り付けられる共に枠体をコンクリート擁壁の縦壁部に固定する連結体を含むものであり、枠体は、網目構造の板状部材を含み、連結体は、各々の一端が縦壁部に取付られ、他端にリングが形成される複数の連結筋と、リングに差し込み可能な複数の差筋とを含み、固定手段は枠体の網目から背面側へ突出したリングのうち、鉛直方向に隣り合う少なくとも2つを共に貫通するように差筋が差込まれて、コンクリート擁壁に枠体を固定するものである。
このように構成すると、コンクリート擁壁に対して鉛直下方に加わる土圧が、枠体が積み重ねられることにより棚板部の垂直投影面積が増えた分だけ更に増加する。又、コンクリート擁壁の縦壁部と複数の枠体とが一体化される。更に、コンクリート擁壁の縦壁部と連結体と枠体とが分離される。更に、連結筋が枠体の網目を貫通し、鉛直方向の上下に並んだ連結筋のリングがまとめて一本の差筋によって固定され、板状部材の脱落が防止される。
請求項7記載の発明は、自立型コンクリート擁壁構造体であって、背面側に土圧力が作用する縦壁部と、縦壁部の下端に接続され、水平方向に延びる底板部とからなるコンクリート擁壁と、底板部の背面側の端部から上方に延びる垂直面から少なくとも背面側に延びる棚板部と、棚板部の背面側から上方に延びる縦板部とからなる枠体と、枠体をコンクリート擁壁に固定する固定手段と、縦壁部と枠体とで構成される空間に充填された裏込め材とを備え、固定手段は、枠体をコンクリート擁壁の縦壁部に固定し、固定手段は、枠体及び縦壁部の各々に対して着脱可能に取り付けられると共に枠体をコンクリート擁壁の縦壁部に固定する連結体を含むものであり、枠体は、網目構造の板状部材を含み、連結体は、各々の一端が縦壁部に取付られ、他端にリングが形成される複数の連結筋と、リングに差し込み可能な複数の差筋とを含み、固定手段は枠体の網目から背面側へ突出したリングのうち、鉛直方向に隣り合う少なくとも2つを共に貫通するように差筋が差込まれて、コンクリート擁壁に枠体を固定するものである。
このように構成すると、コンクリート擁壁に対して鉛直下方に加わる土圧が、棚板部の垂直投影面積に相当する分だけ増加する。又、コンクリート擁壁の縦壁部と枠体とが一体化される。更に、コンクリート擁壁の縦壁部と連結体と枠体とが分離される。更に、連結筋が枠体の網目を貫通し、鉛直方向の上下に並んだ連結筋のリングがまとめて一本の差筋によって固定され、板状部材の脱落が防止される。
以上説明したように、請求項1記載の発明は、コンクリート擁壁を転倒させる方向に働く力に逆らう力が棚板部から得られることにより自立安定性が増す。又、底板部を大きくしたり、深い位置に埋設することなく、転倒防止力を増加させて、土圧の増加に対応させることが可能となる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、枠体の棚板部に鉛直下方に加わる土圧が、固定手段を介して、転倒を防止する力として縦壁部に伝達され、自立安定性が向上する。
請求項3記載の発明は、コンクリート擁壁の背面側に枠体を階段状に積み上げることにより、コンクリート擁壁自体を大きくすることなく、コンクリート擁壁を転倒させる方向に働く力に逆らう力を追加して調整することができる。また、階段状の傾斜を掘削法面の傾斜に合わせるように形成し、コンクリート擁壁を掘削法面に近づけることができるので、擁壁前方に広い空間を確保することが可能となると共に、掘削及び埋め戻しの作業負担が軽減される。又、底板部を大きくしたり、深い位置に埋設することなく、転倒防止力を増加させて、土圧の増加に対応させることが可能となる。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、複数の枠体の各々の棚板部に鉛直下方に加わる土圧が、固定手段を介して、転倒を防止する力として縦壁部に伝達され、自立安定性が向上する。
請求項5記載の発明は、請求項2又は請求項4記載の発明の効果に加えて、連結体を長さが異なるものに取り替えて、縦壁部と枠体との間隔を自由に調節することが可能となる。
請求項6記載の発明は、コンクリート擁壁の背面側に枠体を階段状に積み上げることにより、コンクリート擁壁自体を大きくすることなく、コンクリート擁壁を転倒させる方向に働く力に逆らう力を追加して調整することができる。又、階段状の傾斜を掘削法面の傾斜に合わせるように形成し、コンクリート擁壁を掘削法面に近づけることができるので、擁壁前方に広い空間を確保することが可能となると共に、掘削及び埋め戻しの作業負担が軽減される。更に、複数の枠体の各々の棚板部に鉛直下方に加わる土圧が、固定手段を介して、転倒を防止する力として縦壁部に伝達され、自立安定性が向上する。更に、連結体を長さが異なるものに取り替えて、縦壁部と枠体との間隔を自由に調節することが可能となる。更に、枠体を加工することなく、任意の網目を利用して連結筋のリングを背面側に覗かせることができ、連結筋の端部のリングを上下方向にまとめて一本の差筋により固定することができるので、取り付け作業が容易となる。
請求項7記載の発明は、コンクリート擁壁を転倒させる方向に働く力に逆らう力が棚板部から得られることにより自立安定性が増す。又、枠体の棚板部に鉛直下方に加わる土圧が、固定手段を介して、転倒を防止する力として縦壁部に伝達され、自立安定性が向上する。更に、連結体を長さが異なるものに取り替えて、縦壁部と枠体との間隔を自由に調節することが可能となる。更に、枠体を加工することなく、任意の網目を利用して連結筋のリングを背面側に覗かせることができ、連結筋の端部のリングを上下方向にまとめて一本の差筋により固定することができるので、取り付け作業が容易となる。
図1は、この発明の第1の実施の形態によるL型擁壁の設置状態を示した断面斜視図である。
図を参照して、L型擁壁1aは、掘削線7aまで背面側の土を削った後、縦壁部12a及び底板部13aからなるコンクリート擁壁の底板部13aを、水平に形成された基礎コンクリート6aの上に載せる形で設置される。ここで、このコンクリート擁壁は、底板部13aの背面側と反対側の端部から上方に延びる垂直面と縦壁部12aの前面とが一致するように、L型に形成されている。そして、L型擁壁1aの縦壁部12aから後方へ水平に延びる連結筋のリング状の端部が、L型擁壁1aとは逆向きのL型形状に加工された網目構造を有する板状のエキスパンドメタル2aの網目に通され、上下に揃った2本の連結筋のリングに1本の差筋4aが通されることにより、エキスパンドメタル2aがL型擁壁1aの縦壁部12aに固定される。この逆L型のエキスパンドメタル2aは、縦壁部12aの下端に接続される底板部13aの背面側端部8aから上方に延びる垂直面より背面側に向かって掘削線7aの傾斜に沿うように、階段状に積み上げられている。そして、縦壁部12aと底板部13aとからなるコンクリート擁壁と掘削線7aで示される法面との間に囲まれた空間には、縦壁部12aとエキスパンドメタル2aとの間に裏込砕石5aが充填され、また、エキスパンドメタル2aと掘削線7aで示される法面との間に裏込材(土砂)40mが充填されている。このようにL型擁壁1aは、コンクリート擁壁と、枠体としてのエキスパンドメタル2aと、このエキスパンドメタル2aをコンクリート擁壁に固定する固定手段としての連結筋3a及び差筋4aと、更に、コンクリート擁壁とエキスパンドメタル2aとで構成される空間内にある裏込砕石5aとから自立型のコンクリート擁壁構造体として構成されている。
図2は、図1のエキスパンドメタル、連結筋及び差筋の取付状態を示した拡大斜視図である。
図を参照して、所定の大きさのエキスパンドメタル2b、2cが、互いの端部を重ねるように横に並べられ、これら2枚のエキスパンドメタル2b、2cをまとめて連結筋3bが貫通している。そして、背面側のエキスパンドメタル2cから突出した連結筋3bのリング9に差筋4bが差し込まれている。ここで、差筋4bの上端は、連結筋3bのリング9に引っ掛かるように90度曲げられ、落下防止加工が施されている。また、連結筋3bのL型擁壁1a側の端部は、L型擁壁1aの縦壁部12aの背面側の内部に予め埋め込み加工がされているインサート10に捩じ込まれて固定されている。
図3は、図2のIII−IIIラインから見た平面図であり、図4は、図3のIV−IVラインから見た断面図である。
図3を参照して、連結筋3bは、一端が縦壁部12aのインサート10内に固定され、一方、他端のリング9はエキスパンドメタル2b、2cを順に貫通し、エキスパンドメタル2cから突き出たところで差筋4bが上から差し込まれている。
また、図4を参照して、縦壁部12aのインサート10内部では、連結筋3bがねじ込まれて着脱可能に接続されている様子が示されている。そして、連結筋3b端部のリング9に差し込まれた差筋4bの上端部は、先端が90度に折り曲げられて落下防止加工が施されている。これにより、裏込砕石5aが縦壁部12aとエキスパンドメタル2b、2cとの間に充填された際にエキスパンドメタル2b及び2cが背面側に移動するが、差筋4bがストッパーとなり、エキスパンドメタル2b及び2cの脱落が防止される。
このように、エキスパンドメタルは取り付け容易な構成にて固定されており、連結筋は、縦壁部及びエキスパンドメタルの双方と着脱可能に接続されている。これにより、必要に応じて容易に連結筋を取替え、控え長さを調節することが可能である。
次に、この実施の形態によるL型擁壁の自立安定性向上のメカニズムを図5を用いて説明する。
図5は、この実施の形態によるL型擁壁と土圧との関係を示した断面図である。
図5(1)を参照して、このL型擁壁1bは、エキスパンドメタル及び連結筋が装着されていない。この状態では、L型擁壁1bの底板部13bに対して裏込砕石5bによる土圧17aのみが鉛直下向きに作用している。
次に、図5(2)を参照して、L型擁壁1bには、縦壁部12bに1つのエキスパンドメタル2dが連結筋3c、3dを介して固定されている。図に示すように、裏込砕石5bによる土圧17aに加えて、裏込砕石5cによる土圧17bがエキスパンドメタル2dの棚板部15aに作用している。この土圧17bは、エキスパンドメタルの縦板部14aに接続された連結筋3c、3dを介して、L型擁壁1bの縦壁部12bに伝達され、L型擁壁1bの自重の一部として加えられる。
このように、この実施の形態によるL型擁壁1bは、前方への転倒を防止する方向に作用する鉛直下向きの土圧を、底板部13bの大きさを変更することなく増加させることができるので、同じ土圧に対して、従来よりも小さいサイズの擁壁を用いて自立安定性を向上させることが可能となる。
図6は、この実施の形態による具体的設置例を示した断面図である。
図を参照して、L型擁壁1cの背面側には構造物16aが存在しているため、掘削線7bをこれ以上背面側に掘り進めることは不可能である。図中に破線で示したL型擁壁20a及び基礎コンクリート21aは、比較として示した従来の施工例である。この実施の形態によるL型擁壁1cでは、従来の底板部の面積のみで調整していた鉛直下向きの土圧を、縦壁部12bに固定したエキスパンドメタル2e〜2hにより得られる土圧で調整できる構成となっている。尚、図においては、縦壁部12bにエキスパンドメタル2e〜2hを固定する連結筋は省略している。これにより、L型擁壁1cの底板部13bは小さく、すなわち、コンクリート擁壁自体を小さく設計することができ、更に、エキスパンドメタルは、図6に示すように、垂直投影面積を連結状態として階段状に積み上げることができるので、掘削線7bに沿うように近づけてL型擁壁1cを設置することができる。この結果、従来よりもL型擁壁1cを背面側に後退させて設置することが可能となる。この後退した距離は、図6中にセットバック寸法19aとして示されている。
図7は、この実施の形態によるL型擁壁の、土圧の違いに対する設置例を示す断面図である。
図7(1)を参照して、地表面18aが水平であり、土圧がそれほど大きくない場合、エキスパンドメタルを用いる必要はないので、連結筋及びエキスパンドメタルを取り付けずにL型擁壁1dのみの状態で設置することが可能である。
次に図7(2)を参照して、図7(1)と比較して、地表面18bは少し盛り上がっており、裏込砕石5fによる土圧は大きくなっている。したがって、自重を増加させて自立安定化を図る必要がある。ここで、図の破線で示したL型擁壁20b、基礎コンクリート21b及び仮想背面23bは、底板の幅を拡大させて自重を増加させるという従来の工法による位置関係を示している。しかし、このように底板の幅を拡大させると、掘削線22aの位置まで土を削る必要があり、掘削量が増加してしまう。このように掘削量を増加させないために、この実施の形態では、底板の幅に変更を加えず、L型擁壁1eの底板部の背面側端部から上方に延びる垂直面より背面側へエキスパンドメタル2iを装着することにより対応している。これにより、従来の、底板の幅を拡大させることにより得ていた自重増加相当分を、エキスパンドメタル2iに加わる土圧から得ることができる。すなわち、両者のL型擁壁は同等の自立安定性を有している。このように、この実施の形態では、底板の幅は変更されないので、掘削線7dの位置もそのままでよい。
続いて、図7(3)を参照して、図7(2)と比較すると、更に盛土が増えて、地表面18cは急勾配の傾斜面を形成している。ここで、図の破線で示したL型擁壁20c、基礎コンクリート21c及び23cは、従来の工法による位置関係を示している。
ここでも、図7(2)の場合と同様に、L型擁壁1fの底板の幅を変更せず、L型擁壁20cの仮想背面23cの土圧となるように、更に積み重ねる段数を増加させたエキスパンドメタル2jを装着している。これにより、L型擁壁1fは、L型擁壁20cと同等の自立安定性を得ることができる。したがって、エキスパンドメタル2jを装着した場合、掘削は掘削線7eの位置まででよい。
このように、この実施の形態によると、従来工法では、コンクリート擁壁の底板部の幅の拡大のみで調整していた土圧に相当する分を、L型擁壁1cと一体に形成したエキスパンドメタルを用いて得ることができるため、コンクリート擁壁自体は小さく設計することができる。更に、エキスパンドメタルは階段状に積み上げて配置することができるので、掘削線に沿うように、背面側に効率的に後退させて設置することが可能となる。
また、コンクリート擁壁部分が小型化できることにより、底板幅を狭く、また、底板の埋設深さを浅くすることができるので、用地の少ない現場に適用させることが可能となり、更に、背面土の掘削土量が最小限となるため、背面にある構造物等に与える影響が最小限に抑えられる。
更に、コンクリート擁壁が小型化により軽量になるので、運賃コストが削減され、製造のための大型クレーン設備が不要となる。
更に、エキスパンドメタルの部分にて土圧を調節するので、擁壁の種類を小数に限定することができ、ストックヤードの整理整頓が図れ、これにより生じた空きスペースを利用して、閑散期に見込み生産をすることが可能となる。また、種類が少ないため、出荷管理も容易になる。
図8は、この発明の第2の実施の形態による逆L型擁壁の設置状態を示した断面斜視図である。
図を参照して、逆L型擁壁24aは、掘削線7fまで背面側の土を削った後、縦壁部12c及び底板部13cからなるコンクリート擁壁の底板部13cを、水平に形成された基礎コンクリート6fの上に載せる形で設置される。ここで、このコンクリート擁壁は、底板部13cの背面側端部8bから上方に伸びる垂直面と縦壁部12cの背面とが一致するように、逆L型に形成されている。そして、逆L型擁壁24aの縦壁部12cから後方へ水平に延びる連結筋3eのリング状の端部に、逆L型擁壁24aと同じ向きの逆L型形状に加工されたエキスパンドメタル2kの網目が通され、上下に揃った2本の連結筋のリングに一本の差筋4cが通されて、エキスパンドメタル2kが逆L型擁壁24aに固定される。この逆L型のエキスパンドメタル2kは、逆L型擁壁24aの底板部13cの背面側端部8bから上方に延びる垂直面(縦壁部12cの背面と一致する面)から背面側に向かって掘削線7fの傾斜に沿うように、階段状に積み上げられている。そして、逆L型擁壁24aと掘削線7fで示される法面との間に囲まれた空間には、縦壁部12cとエキスパンドメタル2kとの間に裏込砕石5iが充填され、また、エキスパンドメタル2kと掘削線7fで示される法面との間に裏込材40nが充填されている。ここで、エキスパンドメタル2kの最下段において、下方の連結筋3h及びエキスパンドメタル2kの棚板部bは、これらが設置された後に打設された基礎コンクリート6gにより、基礎コンクリート6fと一体化されている。
図9は、この実施の形態による具体的設置例を示した断面図である。
図を参照して、背面側には構造物16bが存在しているため、掘削線7gをこれ以上背面側に掘り進めることは不可能である。図中に破線で示した逆L型擁壁20d及び基礎コンクリート21dは、比較のための従来の施工例である。これに対して、この実施の形態による逆L型擁壁24bでは、従来、底板の幅と設置深さのみで調整していた鉛直下向きの土圧に相当する分を、背面側に固定したエキスパンドメタル2l、2m、2n及び2oから得ることが可能となっている。これにより、逆L型擁壁24bの底板部13dを小さく、また、浅い位置に設置することができ、更に、エキスパンドメタルは、図9に示すように、階段状に積み上げることができるので、掘削線7gに沿うように逆L型擁壁24bを設置することが可能となる。この結果、従来よりも逆L型擁壁24bを背面側に後退させて設置することが可能となる。この後退した距離は、図9にセットバック寸法19bとして示されている。
図10は、この実施の形態による逆L型擁壁の、土圧の違いに対する設置例を示す断面図である。
図10(1)を参照して、地表面18dが水平であり、土圧がそれほど大きくない場合、エキスパンドメタルを用いる必要はないので、連結筋及びエキスパンドメタルを取り付けずに逆L型擁壁24cのみの状態で設置することが可能である。
次に、図10(2)を参照して、図10(1)と比較して、地表面18eは少し盛り上がっており、裏込砕石5lによる土圧は大きくなっている。したがって、自立安定化を図るためにエキスパンドメタル2pを装着して、自重を増加させる必要がある。図では、エキスパンドメタル2pを2段積みに設定している。
続いて、図10(3)を参照して、図10(2)と比較すると、更に盛土が増えて、地表面18fは急勾配の傾斜面を形成している。これにより、裏込砕石5pによる土圧は更に大きくなるので、逆L型用壁24eの自重を更に得るために、図10(2)より2段増加したエキスパンドメタル2gの設定としている。これにより、逆L型擁壁24eを深く埋設したり、また、底板の面積を広げることなく、増加した土圧に対応させている。
このように、この実施の形態によると、従来工法では、コンクリート擁壁の底板部の幅や、埋設の深さにより調節していた土圧に相当する分を、逆L型擁壁と一体に形成したエキスパンドメタルを用いて得ることができるため、コンクリート擁壁自体は小さく設計でき、また、埋設も深く設定する必要がない。更に、エキスパンドメタルは階段状に積み上げて配置することができるので、掘削線に沿うように、背面側に効率的に設置することが可能となる。
また、コンクリート擁壁部分が小型化できることにより、底板の基礎幅を狭くでき、また、底板の埋設深さを浅くすることができるので、用地の少ない現場に適用させることが可能となり、背面土の掘削土量を最小限にできるため、背面にある構造物等に与える影響を最小限に抑えることが可能となる。
更に、コンクリート擁壁が小型化により軽量になるので、運賃コストが削減され、製造のための大型クレーン設備が不要となる。
更に、エキスパンドメタルの部分にて自重を調節するので、擁壁の種類を小数に限定できることから、ストックヤードの整理整頓が図れ、これにより生じた空きスペースを利用して、閑散期に見込み生産を行うことが可能となる。また、種類が少ないため、出荷管理も容易になる。
図11は、この発明の第3の実施の形態によるT型擁壁の設置を示した断面斜視図である。
図を参照して、T型擁壁26は、掘削線7kまで背面側の土を削った後、縦壁部12e及び底板部13eからなるコンクリート擁壁の底板部13eを、水平に形成された基礎コンクリート6lの上に載せる形で設置される。ここで、このコンクリート擁壁は、縦壁部12eの背面側及び前面側の両方向に底板部13eが延びるようにT型に形成されている。そして、T型擁壁26の縦壁部12eから後方へ水平に伸びる連結筋3fのリング状の端部に、逆L型形状に加工されたエキスパンドメタル2rの網目が通され、上下に揃った2本の連結筋3fのリングに一本の差筋4dが通されて、エキスパンドメタル2rがT型擁壁26に固定される。この逆L型のエキスパンドメタル2rは、T型擁壁26の前面側及び背面側に延びた底板部13eのうち背面側端部8cから上方に延びる垂直面より背面側に向かって掘削線7kの傾斜に沿うように、階段状に積み上げられている。そして、T型擁壁26と掘削線7kで示される法面との間に囲まれた空間には、縦壁部12eとエキスパンドメタル2rとの間に裏込砕石5gが充填され、また、エキスパンドメタル2rと掘削線7kで示される法面との間に裏込材40oが充填されている。
このように、この実施の形態では、上記第1の実施の形態において図1に示したL型擁壁1aの場合と同様に、エキスパンドメタル2rが受ける土圧が自重として加わることにより自立安定性が向上する。
また、このエキスパンドメタル2rは、連結筋3fにより着脱容易に取り付けられているので、階段状に積み上げる段数や控え長さの調整を、現場で容易に行うことが可能となる。
図12は、この発明の第4の実施の形態による枠体の拡大斜視図であり、図13は、図12のXIII−XIIIラインから見た平面図である。
これらの図を参照して、下方に設置されている断面逆L型のコンクリート板28aの縦板部の上端が、上方に隣接するコンクリート板28bの棚板部の下端と接続され、階段状に配置されている。これらコンクリート板28a、28bは、擁壁1gの縦壁部12fに予め埋め込み設置されたインサート10bに一端が挿入された連結筋3gの他端に、平板29及びナット30により固定されている。
このように、この実施の形態によると、第1〜第3の実施の形態に示したような、エキスパンドメタルによる枠体に比べて重量があるため、擁壁を前方に転倒させないように擁壁背面において鉛直下方に作用させる自重へ有利に働く。また、エキスパンドメタルのように網目構造ではないため、裏込砕石がこぼれ出すことも全くなく、効率的に力が伝達される。更に、第1〜第3の実施の形態におけるエキスパンドメタルの場合と同様に、着脱可能な固定手段として連結筋、平板及びナットによりコンクリート板が固定されているので、必要に応じて連結筋を取替え、控え長さを調節することが可能である。
尚、上記の各実施の形態では、エキスパンドメタルやコンクリート板を、連結筋を用いてコンクリート擁壁の縦壁部に固定したが、コンクリート擁壁の底板部に固定してもよい。
また、上記の各実施の形態では、擁壁への自重を得るために、エキスパンドメタル又はコンクリート板と擁壁とで構成される空間に裏込砕石を充填したが、これは、擁壁が転倒しないように抵抗する自重を得ることができるものであれば、充填材料はこれに限らない。
更に、上記の各実施の形態では、裏込砕石による自重を得るために、枠体としてエキスパンドメタル又はコンクリート板を用いたが、裏込砕石等の裏込め材を保持し、自重を得ることができるものであれば、材質等はこれらに限られないことは言うまでもない。
更に、上記の各実施の形態では、エキスパンドメタル又はコンクリート板を逆L字状の構造としたが、裏込砕石等の裏込め材を保持し、自重を得ることができるものであれば、形状はこれらに限られない。
更に、上記の各実施の形態では、エキスパンドメタル又はコンクリート板等の枠体を固定するために連結筋を用いたが、これに限らず、擁壁と枠体とに対して着脱可能に接続できるものであれば他の構成であっても良い。
更に、上記の各実施の形態では、コンクリート擁壁を形成する縦壁部と底板部とが一体形成されているプレキャスト例を示したが、複数の部材を組み合わせたり、現場打設によって形成されたコンクリート擁壁にも同様に適用できる。
更に、上記の各実施の形態では、エキスパンドメタル又はコンクリート板等の枠体を、階段状に複数組み合わせた例を示したが、枠体を単一で用いても良いことは言うまでもない。
更に、複数の枠体を組み合わせる場合の形態は、コンクリート擁壁の底板部の背面側端部から上方に延びる垂直面より背面方向へ突出する構成であれば、階段状でなくても良い。