JP5266099B2 - 土留め用引抜き抵抗体の設計方法 - Google Patents

土留め用引抜き抵抗体の設計方法 Download PDF

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Description

本発明は、土留め壁に用いられる土留め用引抜き抵抗体の設計方法に関する。
高く盛った大容量の盛土を利用して土留め構造体を構築し、これを造成地や道路などに利用することによって、安価な工事コストで短期間に施工することができ、大規模な工事であっても容易に各種の構造物を構築することができる。前記土留め構造体は、盛土の崩壊を土留め壁によって防止し、盛土の安定性を保っている。しかし土留め構造体は、前面地盤からの高さが高くなり、また土留め構造体の背後地盤面に自動車荷重などの活荷重および上部構造物などによる死荷重が作用すると、盛土は圧下されて沈下し、盛土を支持する土留め壁には大きな土圧力が作用し、遂には土留め壁が崩壊してしまう。
図13は、土留め構造体300を模式的に示す横断面図である。図13中、符号Hは盛土Mの高さを示し、Bは盛土Mの幅を示し、W,W,……(以下、単に「W」と記す場合がある)は、盛土Mに作用する上載荷重を示し、F,F,……は盛土Mの天端の位置を示す。図12の紙面に垂直な縦断方向に関して両側に設けられた土留め壁C1,C2間の盛土Mは、施工直後においては基準地盤面GL上で、高さH、横断方向に幅Bを有し、その天端はFの位置にある。この盛土Mに上載荷重Wが作用すると、盛土Mは圧下されてh1だけ歪みを発生して沈下する。その結果、盛土Mの高さHはH−h1に変化し、盛土Mの天端の位置はFに変化する。
図14は、盛土Mに上載荷重Wがさらに加わった状態を模式的に示す断面図であり、図15は、図14の盛土Mに上載荷重Wがさらに加わった状態を模式的に示す断面図である。盛土Mにさらに上載荷重Wが加わると、盛土Mは沈下によって垂直方向に沈下し、盛土Mの高さHは、H−h2に減少する。同時に盛土Mは、水平方向に2b2だけ歪み、盛土Mの幅BはB+2b2に増加する。このとき天端の位置はFとなる。そして、盛土Mに上載荷重Wがさらに加わると、盛土Mは沈下によってさらに垂直下方に低下し、盛土Mの高さHは、H−h3に減少し、盛土Mの幅BはB+2b3に増加する。この状態になると、土留め壁C1,C2には大きな水平力が作用することになるため、土留め壁C1,C2は崩壊し、遂には土留め構造体が破壊してしまう。
ところで、盛土Mが荷重により容易に変形する原因は、土にせん断力が乏しいためである。このような盛土Mの崩壊を抑止するために土留め用引抜き抵抗体(以下、「引抜き抵抗体」と略記する)は、盛土Mの水平方向に層状に埋設されて用いられる。図16は、盛土Mに引抜き抵抗体が埋設された状態を模式的に示す断面図である。図16中の参照符号S1,S2,S3,S4は、引抜き抵抗体を示す。
図16に示すように、盛土Mに引抜き抵抗体S1〜S4を高さ方向に間隔をあけて層状に埋設すると、盛土Mと引抜き抵抗体S1〜S4との間に生じる摩擦力等の働きによって、各引抜き抵抗体間の盛土Mに、あたかも粘着力を持ったかのような結合力が生まれ、上載荷重によって生じる水平方向の歪みに相当する土圧力の水平成分である引抜き力が各引抜き抵抗体S1〜S4に作用しても、各引抜き抵抗体S1〜S4には前記引抜き力とは逆方向でかつ大きさの等しい引抜き抵抗力が生じ、土圧による土留め構造体の崩壊が阻止される。
この原理を用いて、土留め構造体の構築に際し、盛土M中に水平・鉛直とも設計によって決定された間隔で引抜き抵抗体を埋設し、土に結合力を生じさせて、垂直に自立した盛土が構築される。
典型的な従来技術の設計方法が適用された引抜き抵抗体としては、たとえば特許文献1を挙げることができる。特許文献1に記載される発明では、引抜き抵抗体として、高分子材料から成るジオテキスタイルが用いられている。
また引抜き抵抗体の他の従来技術としては、テールアルメ工法で用いられる平帯鋼(ストリップ)、鉄筋網などを上げることができる。
ここで、引抜き抵抗体の引抜き抵抗力は、たとえば平帯鋼またはジオテキスタイルでは、土とこれら引抜き抵抗体との間に生じる摩擦抵抗力であり、鉄筋鋼では、縦横の鉄筋のうち、土と横鉄筋との間に生じる摩擦抵抗力である。従来技術において、盛土Mの補強に必要な引抜き抵抗体の引抜き抵抗力は、いずれも盛土Mと引抜き抵抗体との間に生じる摩擦抵抗力を「設計引抜き強度」として計算されている。従来技術では、この計算結果に基づいて引抜き抵抗体が土留め構造体の土圧による引抜き力によって破断されないか、あるいは引抜き抵抗体が抜けないかなどを予測し、所望の設計強度に適合した引抜き抵抗体を選択し使用している。
したがって、従来技術では、引抜き抵抗体の引抜き力は、盛土と引抜き抵抗体との間に生じる摩擦抵抗力の1要素のみによって決定されており、これに基づいて土留め構造体に必要な引抜き抵抗体の長さが決定されている。
また従来技術では、引抜き抵抗体の引抜き抵抗力Tr(kN/m)を以下の式によって求めている。
Tf=(1+K0)/2σv×tanφ×π×B×n
K0:静止土圧係数(1−sinφ=0.5)
σv:供試体敷設位置における盛土材の鉛直応力
φ:土の内部摩擦角(φ=30.0°)
B:引抜き抵抗体の外面幅短辺
n:引抜き抵抗体の本数
特開平2000−352055号公報
従来技術では、土留め用引抜き抵抗体の引抜き力を、盛土と引抜き抵抗体との間に生じる摩擦抵抗力の1要素のみによって決定しているので、たとえば複数の環状片が互いに結束された鎖状部材を引抜き抵抗体として用いる場合、引抜き抵抗力として作用する鎖状部材の各環状片の内方空間に介入した中詰土砂とその両側の土砂との間のせん断抵抗力は、引抜き抵抗力に加算されていない。その結果、従来技術の引抜き抵抗体の設計方法では、土留め構造体に必要な引抜き抵抗体が過大設計になってしまい、土留め構造体の施工コストが上がってしまうという問題がある。
したがって、本発明の目的は、引抜き抵抗体の過大設計を改善して、低コストで安定した土留め構造物を構築することができる土留め用引抜き抵抗体の設計方法を提供することである。
本発明は、複数の環状片が互いに結束され、軸直角方向から見たときに十字形をなして配置される鎖状部材を有し、この鎖状部材の一端部が土留め壁に連結され、かつ前記鎖状部材が前記土留め壁の背後の土砂に一直線状に埋設された状態で、前記土留め壁から作用する引抜き力Tよりも高い引抜き抵抗力Trを有する土留め用引抜き抵抗体の設計方法において、
前記引抜き抵抗力Trは、前記鎖状部材の各環状片の表面とその周囲の土砂との間の摩擦によるせん断抵抗力T1と、
前記鎖状部材の各環状片の内方空間に介入した土砂とその両側の土砂との間の摩擦によるせん断抵抗力T2と
前記鎖状部材に連結される支圧抵抗部材の支圧抵抗力Rと、
互いに結束する各環状片の短辺方向の幅Eに、ダイレイタンシー効果を考慮した補正係数αを乗じた値(α・E)を直径とする仮想円筒面を外囲する外周すべり面における引抜き抵抗力Prとによって決定されることを特徴とする土留め用引抜き抵抗体の設計方法である。
本発明によれば、土留め用引抜き抵抗体の引抜き抵抗力は、(a)鎖状部材の各環状片の表面とその周囲の土砂との間の摩擦によるせん断抵抗力T1と、(b)鎖状部材の各環状片の内方空間に介入した土砂とその両側の土砂との間の摩擦によるせん断抵抗力T2とを含む引抜き抵抗力Tr(=T1+T2)によって決定されるので、前記従来技術に比べて引抜き抵抗体の引抜き抵抗力をより正確に求めることができる。
したがって、引抜き抵抗体の長さを最適な値とすることができるので、引抜き抵抗体の過大設計を可及的に少なくして、低コストで土留め構造体を構築することができる。
た、土留め用引抜き抵抗体の引抜き抵抗力は、(c)鎖状部材に連結される支圧抵抗部材の支圧抵抗力Rをさらに含む引抜き抵抗力Tr(=T1+T2+R)を含んで、決定されるので、支圧抵抗部材を備えた引抜き抵抗体の引抜き抵抗力をより正確に求めることができ、これによって引抜き抵抗体の過大設計をさらに可及的に少なくして、低コストで土留め構造体を構築することができる。
た、土留め用引抜き抵抗体の引抜き抵抗力Trは、互いに結束する各環状片の短辺方向の幅Eに、ダイレイタンシー効果を考慮した補正係数αを乗じた値(α・E)を直径とする仮想円筒面を外囲する外周すべり面における引抜き抵抗力Prをさらに含んで決定されるので、引抜き抵抗力Trをさらに正確に求めることができる。したがって、引抜き抵抗体の長さを最適な値とすることができるので、引抜き抵抗体の過大設計をさらに可及的に少なくして、低コストで土留め構造体を構築することができる。
本発明の一実施形態の土留め用引抜き抵抗体の設計方法が適用される土留構造体1を示す横断面図である。 引抜き抵抗体4の一部を示す部分拡大図である。 引抜き抵抗体4を示す横断面図である。 環状片50の周辺に働く摩擦力を示す図である。 各環状片50の内方空間に介入した中詰土砂とその両側の土砂との間のせん断抵抗力を説明する図である。 図5の切断面線A−Aからみた図である。 各環状片50の前面に作用する受動土圧Kp・σvを説明する図である。 係合部材81の破壊モードを示す図である。 固定部材82の引抜き抵抗力を説明するための図である。 各環状片50の交互の周期的な形状変化による引抜き抵抗力Prを説明するための模式図である。 鎖状部材の形状を正面図で示すものである。 引抜き抵抗体4の引抜き抵抗力Trを模式的に示す図である。 土留め構造体300を模式的に示す横断面図である。 盛土に上載荷重Wがさらに加わった状態を模式的に示す横断面図である。 図13の盛土に上載荷重Wがさらに加わった状態を模式的に示す横断面図である。 盛土に土留め用引抜き抵抗体が埋設された状態を模式的に示す横断面図である。
図1は、本発明の一実施形態の土留め用引抜き抵抗体の設計方法が適用される土留構造体1を示す横断面図である。以下においては、図1の紙面に垂直な方向を水平方向Xとし、図1の上下方向を鉛直方向Yとし、図1の左右方向を前後方向Zとして説明する。
土留構造体1は、略水平な施工基面11上および均し底面12上に構築される。施工基面11および均し底面12は、土留構造体1を構築すべき予め定める構築位置の横断面形状および縦断面形状に基づいて決定される。施工基面11および均し底面12は、所定の縦断勾配を有し、施工基面11は、前方現地盤面13よりも低く、また均し底面12は、前方現地盤面13よりも低く、かつ施工基面11よりも高い位置に形成される。
施工基面11の図1の左方寄りの前縁には、前方に向かうにつれて上方に傾斜する掘削法面14が連なり、この掘削法面14の上端は、前記前方現地盤面13に連なる。施工基面11の図1の右方寄りの後縁には、後方に向かうにつれて上方に傾斜する掘削法面15が連なり、この掘削法面15の上端は、均し底面12に連なる。均し底面12の後縁には、後方に向かうにつれて上方に傾斜する掘削法面16が連なる。
施工基面11上には、基礎捨石部21が形成される。この基礎捨石部21は、たとえば砕石などによって実現される捨石材料から成る。基礎捨石部21上には、基礎コンクリート部22が形成される。基礎捨石部21および基礎コンクリート部22は、土留壁本体2を下方から支持する。
基礎コンクリート部22上には、保持部材23が設置される。保持部材23は、基礎コンクリート部22上で最下段のパネル本体5を垂直に保持する。したがって、パネル本体5は、基礎コンクリート部22に設けられる保持部材23によって、最下段のパネル本体5の転倒が防止された状態で、基礎コンクリート部22上に設置される。
水平方向Xに隣接する各パネル本体5の相互に対向する各側部の背面には、帯状の防砂フィルタ18が前記各側部間にわたって上下に延びて設けられる。この防砂フィルタ18は、水平方向Xに隣接する各パネル本体5間の隙間から、背後土9として搬入される砂などの裏込め材が前方へ流出することを防止する。
土留壁本体2の背後(図1の右方)には、背後土9が収容される。この背後土9は、たとえば裏込め材が搬入され、この搬入された裏込め材が上方から転圧されることによって形成される。裏込め材は、砂質土の含有率が高い土砂が好ましい。
土留構造体1は、土留壁本体2、パネル連結手段3および引抜き抵抗体4を含んで構成される。土留壁本体2は、偏平な直方体状のコンクリート製の複数のパネル本体5を、図1の紙面に垂直な予め定める計画線(図示せず)に沿って積重して構築される。パネル連結手段3は、各パネル本体5の水平方向Xに隣接する各幅方向両端部を相互に連結するとともに、各パネル本体5の幅方向両端部と上方または下方に配置されるパネル本体5の幅方向中央部とを連結する。引抜き抵抗体4は、各パネル本体5に一端部が連結された状態で、土留壁本体2の背後に収容される背後土9中に埋設される複数の抵抗体本体10を有する。
抵抗体本体10は、パネル本体5に一端部が連結され、背後土9中で、後方に向かって延びる。最下段のパネル本体5の下部の前方には、前面土17が収容される。この前面土17は、土砂が搬入され、この搬入された土砂が上方から転圧されることによって形成される。
図2は、引抜き抵抗体4の一部を示す部分拡大図であり、図3は、引抜き抵抗体4を示す横断面図である。
パネル本体5は、鉛直方向Yに延びる複数の縦鉄筋41と、水平方向Xに延びる複数の横鉄筋42と、縦鉄筋41および横鉄筋42を覆うコンクリート層43とを含む。パネル本体5には、図示しないアンカーボルト、係止部材30および埋込み補助部31が設けられる。
係止部材30は、パネル本体5に埋め込まれ、パネル本体5の厚み方向に垂直な方向である水平方向Xに延びる。この係止部材30は、長尺の棒状の金属から成り、たとえば直径が10mm、長さが1900mmの異形鉄筋によって実現される。係止部材30は、各横鉄筋42の軸線を含む仮想一平面上に配置される。
埋込み補助部31は、パネル本体5の背面から一部が突出した状態で設けられる。埋込み補助部材31は係止部材30に係止される。埋込み補助部31は、複数の環状片が相互に鎖状に連結されたチェーンから成る。この埋込み補助部31の一端の環状片には、係止部材30が挿通する。こうして埋込み補助部31が係止部材30に係止される。埋込み補助部31は、少なくとも1つの環状片が前記パネル本体5の背面から突出して変位自在に垂下して設けられる。
引抜き抵抗体4は、抵抗体本体10、係合部材81、固定部材82および杭83を含んで構成される。引抜き抵抗体4は、抵抗体本体10、係合部材81、固定部材82および杭83が協働して、土留壁本体2の転倒および滑動を防止する。
抵抗体本体10は、前記埋込み補助部31と、鎖状部材86と、連結具87とを含んで構成される。鎖状部材86は、前記埋込み補助部31と同様のチェーンから成る。埋込み補助部31の他端の環状片と鎖状部材86の一端の環状片とは、連結具87によって連結される。連結具87は、たとえばシャックルによって実現される。
連結具87によって埋込み補助部31に鎖状部材86が連結されることによって、各パネル本体5に各複数の抵抗体本体10が連結され、各パネル本体5の背後に各複数の抵抗体本体10が敷設される。これらの抵抗体本体10は、敷設された状態では、各パネル本体5から後方へ水平に緊張した状態で延ばされ、相互に平行である。
水平方向Xに間隔をあけて並ぶ複数の抵抗体本体10の各鎖状部材86には、直交する方向に各鎖状部材86間にわたって係合部材81が挿通する。係合部材81は、丸鋼から成る長尺状の部材である。この係合部材81は、各抵抗体本体10に複数本挿通して設けられている。
抵抗体本体10の他端部には、固定部材82が連結される。固定部材82は、山形鋼から成る部材であり、水平方向Xに平行に設けられる。この固定部材82よりも前方に、固定部材82の前方への変位を阻止するために、杭83が、背後土9に打ち込まれて設けられる。
このように土留壁本体2には、転倒および滑動などに対する安定性を確保するために、引抜き抵抗体4が設けられる。この引抜き抵抗体4は、土留壁本体2の背後に収容される背後土9中に埋設される複数の抵抗体本体10を有する。鎖状の抵抗体本体10は、各パネル本体5に一端部が連結されている。この鎖状の抵抗体本体10は、鋼板などに比べて、背後土9に対する摩擦抵抗が大きいので、鎖状の抵抗体本体10が、土留壁本体2から大きな引抜き力を受けても、背後土9から引抜かれてしまうことが防がれる。したがって土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重が作用する土留壁本体2を引抜き抵抗体4によって確実に支持することができる。
次に前述した引抜き抵抗体4が有する引抜き抵抗力について説明する。以下の説明において、図4においてBで示す長さを環状片の「幅」とし、図4においてDで示す長さを環状片の「径」とする。
図4は、環状片50の周辺に働く摩擦力を示す図である。背後土9中に敷設された引抜き抵抗体4には、背後土9の単位体積重量γに、背後土9の天端から引抜き抵抗体4までの背後土9の深さhを乗じた値の荷重が作用する。このとき環状片50は、前記荷重に対する垂直応力σvが作用する。環状片50に前記垂直応力σvが作用すると、環状片50の形状から、環状片50には、引抜き力Tとは逆向きの応力K0σvが発生すると考えられる。ここで、K0は静止土圧係数を示す。この逆向きの応力K0σvを「引抜き抵抗力T1」と称することとし、これを引抜き抵抗体4の引抜き抵抗力Trを構成する1要素と考える。
引抜き抵抗力T1は以下の式(1)によって求めることができる。
T1=A0・{(σv+K0・σv)/2}・{tanφ/2}・n …(1)
A0:環状片の表面積
σv:垂直応力
K0:静止土圧係数(1−sinφ=0.5)
φ:土の内部摩擦角(φ=30.0°)
n:環状片の個数
式中{(σv+K0・σv)/2}は、環状片50の前面に作用する応力を、近似的に垂直応力σvと水平方向応力K0・σvとの平均とし、これを等価応力としている。
図5は、鎖状部材の各環状片の内方空間に介入した土砂とその両側の土砂との間のせん断抵抗力を説明する図であり、図6は、図5の切断面線A−Aからみた図である。図5および図6に示すように、背後土9中に埋設された引抜き抵抗体4の各環状片50の内方空間には、背後土9が介入する。この背後土を「介入土100」と称する。土留構造体1に土圧による引抜き力Tが作用すると、介入土100と、介入土100以外の他の背後土9との間には、引抜き力Tとは逆向きのせん断力が生ずる。このせん断力を「引抜き抵抗力T2」と称することとし、これを引抜き抵抗体4の引抜き抵抗力Trを構成する1要素と考える。
引抜き抵抗力T2は以下の式(2)によって求めることができる。
T2=2・Ai・σv・tanφ・n …(2)
Ai:環状片の内方空間の面積
σv:垂直応力
φ:内部摩擦角
n:環状片の個数
図7は、鎖状部材の各環状片の前面に作用する受動土圧Kp・σvを説明する図である。
図6および図7に示すように、背後土9中に引抜き抵抗体4が敷設された各環状片50の前方側表面には、受動土圧Kp・σvが作用する。受動土圧Kp・σvは、引抜き力Tとは逆向きに作用する力であるので、この受動土圧Kp・σvを「引抜き抵抗力T3」と称することとし、これを引抜き抵抗体4の引抜き抵抗力Trを構成する1要素と考える。
引抜き抵抗力T3は以下の式(3)によって求めることができる。
T3=Kp・σv・(B−D)・D・N …(3)
Kp:受動土圧係数(1+sinφ/1−sinφ)
σv:垂直応力
B:環状片1個当たりの幅
D:環状片の径
n:環状片の個数
以上から、引抜き抵抗体4の引抜き抵抗力Trは以下の式(4)によって求めることができる。
Tr=T1+T2+(μ・T3) …(4)
μ:環状片の前面にかかる支圧抵抗係数
ここで支圧抵抗係数μは、およそ1.7〜2.5の値をとるが、設計計算では安全を考慮して、μ=1.0として計算することが好ましい。
式(4)において、図2および図3に示す係合部材81の引抜き抵抗力、および固定部材82の引抜き抵抗力は考慮されていない。そこで、係合部材81および固定部材82の引抜き抵抗力を求め、これらを引抜き抵抗体4の引抜き抵抗力に加える。
図8は、係合部材81の破壊モードを示す図である。係合部材81の支圧抵抗力R1(kN/m)は以下の式(5)に示すTerzaghi-Buismanの帯状基礎に対する支持力公式によって求めることができる。
R1=M・d´・(C・Nc´・γ/2・d´・Nγ´+σv・Nq´)…(5)
M:1m当たりの係合部材の数
d:係合部材の外径
C:土の粘着力
Nc´,Nq´,Nγ´:Terzaghiの支持力係数
γ:土の単位体積重量(t/m
σv:垂直応力
ただし、背後土9が非粘性土であり、かつ係合部材81の径dが小さい場合、支圧抵抗力R1は以下の式(6)によるものとする。
R1=M・σv・d・Nq´ …(6)
図9は、固定部材82の引抜き抵抗力を説明するための図である。図9に示すように、固定部材82の前方面には、受動土圧Kp・σvが作用する。受動土圧は、引抜き力Tとは逆向きに作用する力であるので、この固定部材82に作用する受動土圧Kp・σvを固定部材82の引抜き抵抗力R2と考える。
固定部材82の引抜き抵抗力R2は、以下の式(7)によって求めることができる。
R2=σv・Kp・Aa …(7)
σv:垂直応力
Kp:受動土圧係数((1+sinφ)/(1−sinφ)=3.0)
Aa:固定部材の前方面の面積(1m当たり)
以上の式から求められた係止部材81の引抜き抵抗力R1に固定部材82の引抜き抵抗力R2を加算して、支圧抵抗力Rとする。したがって、係止部材81および固定部材82を有する引抜き抵抗体の引抜き抵抗力Trは、以下の式(8)によって求めることができる。
Tr=T1+T2+(μ・T3)+R1+R2 …(8)
以上のように、本発明では引抜き抵抗体の引抜き抵抗力Trを、少なくとも鎖状部材86の各環状片50の表面とその周囲の土砂との間のせん断抵抗力T1と、鎖状部材86の各環状片50の内方空間に介入した中詰土砂とその両側の土砂との間のせん断抵抗力T2との2要素、より好ましくは、鎖状部材86に連結され、引抜き抵抗力Tと同一方向に支圧抵抗力を発生する係止部材81および固定部材82の支圧抵抗力Rの3要素によって求め、これに基づいて土留め壁に必要な引抜き抵抗体4の長さを決定する。
したがって、前記従来技術に比べて引抜き抵抗体4の引抜き抵抗力Trをより正確に求めることができる。よって、引抜き抵抗体4の長さを好適な値とすることができるので、引抜き抵抗体4の過大設計を可及的に少なくして、低コストで土留め構造体を構築することができる。
また、前記3要素に加えて、以下に説明する鎖状部材86の各環状片50の交互の周期的な形状変化による引抜き抵抗力を加えて、引抜き抵抗力Trを決定しても良い。
図10は、鎖状部材86の各環状片50の交互の周期的な形状変化による引抜き抵抗力Prを説明するための模式図であり、図11は、鎖状部材の形状を正面図で示すものであり、図12は、引抜き抵抗体4の引抜き抵抗力Trを模式的に示す図である。
前述したように、引抜き抵抗体4は、背後土9中に後方(図4において右方向)へ水平に緊張した状態で延ばされて敷設されている。この状態において、抵抗体本体10を構成する複数の環状片50a,50b,50c,50d,…は、縦に配置される環状片50a,50c,…と、横に配置される環状片50b,50d,…とが繰り返されて交差して配置されており、図4に示すように、各縦に配置される環状片50a,50c…と各横に配置される環状片50b,50d,…との間の領域には、背後土9が埋まっている。以下、この背後土を「介在土200」と称する。
この状態において、土留め構造体1に土圧による引抜き力Tが作用すると、介在土200の円筒状の仮想外周面201とその外側の背後土9との界には、引抜き力Tとは逆向きの摩擦力の合力による抵抗力が生ずる。この抵抗力を「引抜き抵抗力Pr」と称することとし、これを引抜き抵抗体4の引抜き抵抗力を構成する1要素と考える。
図11中符号Eは、鎖状部材を軸直角方向から見たときの十字形の各環状片の外径を示し、α・Eは仮想外径である。このとき、鎖状部材を包む土は、α・Eを直径とした円筒状の外周すべり面の土の摩擦抵抗力が働く。この円筒状補強材鎖状部材の引抜き抵抗力Prの設計式を開示する。
鎖状部材の引抜き抵抗力Pr(kN)は、以下の式(9)によって求められる。
Pr=α・{(1+K0/2)}・σv・tanφ・π・E・L …(9)
α:ダイレイタンシー効果を考慮した補正係数(現行の計算では、α=1)
K0:静止土圧係数(=1−sinφ´=0.5)
σv:鉛直応力(kN/m
φ´:盛土材の内部摩擦角
E:鎖状部材の外面幅短辺
φ6mm=0.021,φ8mm=0.0305m,φ11mm=0.0435m
L:有効鎖状部材長
環状片の摩擦抵抗力を円筒引抜き計算式のα補正係数(現行計算ではα=1)をα=2に倍増できれば、支圧横鉄筋および端末固定L形鋼が不要となり、さらに工事費用が削減できる。
式(8)に引抜き抵抗力Prを加算することによって、引抜き抵抗体4の引抜き抵抗力Trをさらに正確に求めることができる。したがって、引抜き抵抗体4の長さを最適な値とすることができるので、引抜き抵抗体4の過大設計をさらに可及的に少なくして、低コストで土留め構造体を構築することができる。
1 土留め構造体
4 引抜き抵抗体
9 背後土
10 抵抗体本体
30 係止部材
31 埋込み補助部
50a,50b,50c,… 環状片
81 係合部材
82 固定部材
83 杭
86 鎖状部材
87 連結具
100 介入土
200 介在土
300 土留め構造体

Claims (1)

  1. 複数の環状片が互いに結束され、軸直角方向から見たときに十字形をなして配置される鎖状部材を有し、この鎖状部材の一端部が土留め壁に連結され、かつ前記鎖状部材が前記土留め壁の背後の土砂に一直線状に埋設された状態で、前記土留め壁から作用する引抜き力Tよりも高い引抜き抵抗力Trを有する土留め用引抜き抵抗体の設計方法において、
    前記引抜き抵抗力Trは、前記鎖状部材の各環状片の表面とその周囲の土砂との間の摩擦によるせん断抵抗力T1と、
    前記鎖状部材の各環状片の内方空間に介入した土砂とその両側の土砂との間の摩擦によるせん断抵抗力T2と
    前記鎖状部材に連結される支圧抵抗部材の支圧抵抗力Rと、
    互いに結束する各環状片の短辺方向の幅Eに、ダイレイタンシー効果を考慮した補正係数αを乗じた値(α・E)を直径とする仮想円筒面を外囲する外周すべり面における引抜き抵抗力Prとによって決定されることを特徴とする土留め用引抜き抵抗体の設計方法。
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