JP4080534B2 - 低温保存システムのためのアイスシーディング装置 - Google Patents

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Description

発明の背景
1.発明の分野
本発明は、細胞、収集された組織、ならびに培養された組織等価物のような細胞の生物学的な構造物のような生物学的なサンプル(または生物サンプル)の低温保存(または凍結保存)システムのためのアイスシーディング(ice seeding:氷の種結晶の生成)装置に関するものである。低温保存のプロトコルにおけるアイスシーディングは、組織もしくは組織の等価物が後に解凍された後において、それらの生存率が最大となるよう低温保存できるように制御可能な氷形成を開始する。低温保存技術の利用により、低温保存された収集組織もしくは低温保存された培養組織のいずれもが、使用される前に不定期間保存される場合がある。培養組織は、ヒトの組織の等価物のインヴィトロ(in vitro)モデルであり、それは保存状態から元に戻されたときに生体内で移植もしくは埋め込み(インプラント)に用いることができ、あるいは試験管内で化合物をスクリーニングするために用いることができる。
2.発明の背景の簡単な説明
これまで、組織内の細胞の生存率を維持する目的で、死体の組織および培養組織等価物の低温保存が行われてきたが、それは限られた成功をもたらすのみであった。最近は、細胞の生物学的な材料の保存期間は、「極低温」まで冷却することによって延びている。
システムの温度を低下させることによる液体状態から固体状態への転移は、水分子の整然とした配列を伴う結晶(氷)化、あるいはそのような結晶相の整然とした配列のないガラス化もしくはアモルファス化(ガラス形成)のいずれかとして、起こる。低温生物学者にとっての課題は、細胞を極低温状態とし、そしてその後それらを破壊することなく生理的な状態にもどすことである。
細胞および組織の低温保存に関して2つの基本的な試みがある:冷凍−解凍、およびガラス化である。冷凍−解凍技術においては、細胞外の溶液が冷凍される(すなわち結晶体になる)が、細胞内の氷形成を最小限にするための処置がとられる。ガラス化の過程においては、結晶性の氷が細胞および組織の至るところで形成されることを防止するための処置が取られる。前者の試みは、氷の結晶が細胞内部に形成されたとき、その氷が、解凍されたときの細胞の生存率に悪影響を及ぼすという点に問題がある。しかしながら、細胞は、非毒性レベルで凍結保護剤が存在する条件で制御された速度で冷却された場合には、冷凍−解凍サイクルに耐えて生存することができる。ガラス化という後者の試みは、非常に高濃度の溶質および/またはポリマーを添加して氷形成を抑えることにより細胞内外の氷の潜在的な損傷作用を避けようとする。しかしながら、ガラス化に必要とされるこれらの添加剤の毒性レベル下で細胞が長時間曝されることよって、細胞の損傷が生じる場合がある。
凍結保護剤は、冷凍プロセスに伴うストレスから、生きている細胞を保護する。凍結保護剤が細胞を保護する一つの方法は、水が氷に変わるにつれて、凍っていない溶液の中で次第に濃度が高くなる塩を希釈することによるものである。氷の量は、温度と溶液の最初の組成によって決定される。一方、凍っていない部分の量は、温度のみの関数である。凍結保護剤は他にいくつかの機能を有する。一つの重要な機能は、通常、それが、生物学的なサンプルの冷凍および解凍の間に細胞内の氷形成を減少させるということである。もう一つの機能は、それが膜およびタンパク質を安定化させるということである。細胞外の氷の種結晶が生成され、サンプルが氷の相で覆われたときには、サンプルを低温保存状態にまで冷却する必要がある。冷却段階は、冷凍−解凍プロトコルにおいて最も重要な段階である。氷、すなわち純水の形成に起因して、部分的に凍った細胞外の溶液は、細胞内のコンパートメント(または室)よりも濃度が高くなっている。その結果、細胞は、熱力学的平衡を回復しようとするために、水を失って脱水状態になる。装置が冷却されるにつれ、より多くの細胞外の氷が生じ、かつ溶質の濃度が上昇して細胞を更に脱水させる。細胞は、細胞の脱水速度を制御する3の特性を有する。一つは細胞膜の水透過性である;水透過性が低くなるほど、細胞が脱水するのにより多くの時間がかかる。もう一つは、細胞膜の水透過性の温度依存性である;水透過性は温度が下がるにつれて減少する。最後は細胞のサイズである;より大きな細胞は、より小さな細胞と比べて脱水に長い時間を要する。各々の細胞のタイプが種々の特性を有し得ることを考慮すると、異なる細胞のタイプに対する重要性の順序によって、最適な低温保存状態は変わり得る。
すべての溶液は、結晶形成のためのランダムな結晶核生成サイトが見つかるまで、それらの凝固点よりも低い温度まで過冷却される。冷凍−解凍方法によって低温保存する場合、細胞外の媒体における氷の形成は、過冷却の度合いが低い段階でシーディングによってゆっくりと開始する。氷形成がシーディングによって開始されない場合、氷は溶液がその平衡凝固点よりもはるかに低い温度まで十分に冷却されたときに自然に形成される。なぜならば、このプロセスは本質的にランダムであり、氷の形成はランダムな予測できない温度で生じるためである。従って、同じ冷凍プロトコルでもって繰り返し行われた試験間でも、生存割合は非常に変わりやすい。更に、非常に過冷却された溶液の中で氷が形成されたときに生じる非常に急速な結晶化は、細胞および組織の損傷を引き起こす場合がある。更にいうならば、細胞外の氷形成が過冷却の度合いが高いときに始まった場合、細胞内の氷形成の可能性は著しく増加することが示されている。この現象は、氷結により生じる細胞の脱水の開始の遅れに起因する。脱水の開始の遅れは、細胞内で保持する水の増加に帰し、その結果、細胞で氷がより形成されやすくなることに至る。
低温保存の間の細胞破壊の正確なメカニズムは未だ完全には解明されていないが、冷却速度の関数としての細胞の生存は、全ての種類の細胞に定性的に類似していることが認められ、上下を逆にしたU字型のカーブを示す。細胞の生存率は非常に遅い冷却速度および非常に速い冷却速度で低く、中間の冷却速度で最高の生存率となる。最良の冷却速度およびカーブの幅は、細胞の種類が異なると著しく変化するが、定性的な挙動は共通していることが認められる。より速い冷却速度は、細胞が脱水するのに十分な時間を与えず、その結果、細胞は内部に氷を形成する。速い冷却速度における細胞の破壊は、細胞内の氷形成のためであると考えられる。冷却速度が遅い場合、細胞の破壊は、高度に濃縮された細胞内および細胞外の塩ならびに凍結保護剤の溶液、ならびに細胞と細胞外の氷との間の機械的な相互作用に曝されることの影響によるものであると考えられる。
細胞が細胞内の氷の結晶核生成カーブと交差する前に、可能な限り多く細胞を脱水する必要がある。細胞内に残っている水が結晶核を形成し氷を形成するのは、この温度においてである。このことが生ずる温度は、細胞が濃度1M〜2Mの凍結保護剤の存在下でゆっくりと冷凍されている場合、約−40℃〜−50℃である。この温度で細胞内部において氷になる水の量は、凍った時、特に害になる量ではないが、十分に速く解凍されない場合には氷の再配列が解凍時に細胞を殺す可能性があることに留意することが重要である。(David E.PeggならびにArmand M.Karow,Jr.によって編集されたNATO ASI Series A:Life Science Vol.147 1998のThe biophysics of Organ Cryopreservation,Pg.117-140:Plenum Press社,New York 233 Spring St.,New York,NY 10013参照)
他の低温保存システム、特に細胞を含む生物学的なサンプルを凍らせることに関するシステムは、チャンバースパイク方法のように他の手段で、あるいは電子的もしくは機械的な手段でアイスシーディングをするか、あるいはアイスシーディングを行わないかのいずれかである。
チャンバースパイク方法を使用してアイスシーディングをするには、細胞を入れたバイアルのような生物学的サンプルを含むチャンバーは、急速に、低温保存媒体の凝固点(すなわち、液体−固体平衡温度)よりも十分に低い温度にまで冷却され、それから温度は平衡温度の近くまで急速に上げられる。この方法の欠点は、チャンバーの温度変化が均一なアイスシーディングに問題をもたらすことである。多くの場合、サンプル中における結晶核の過剰生成が生じ、細胞の損傷に繋がる。
電子的な方法は、局部的な冷却を制御可能に実施し得る半導体熱電対を基材とする熱電気的エレメントを用いる。これらの熱電気的エレメントを生物学的なサンプルを入れた容器の表面に接続することは困難であり、かつ容器表面の有効冷却において変動が生じる可能性がある。
冷却用プローブ、棒もしくはピンを容器の側面に接触させて使用することにより局部的な冷却を実施する機械的な手段は、そのプロセスが大きな労働力を要し、かつ熱チャンバーを開けることもしくは冷却プローブをガイドするために複雑なメカニズムの形成を必要とする点において問題がある。
よって、収集された組織および培養された組織等価物を低温保存する方法に関して、組織がその後解凍された後に、細胞生存率を向上させるためのより良い方法を提供することが長らく望まれていた。本発明者らは、冷凍される組織とともに容器の中に含まれる低温保存溶液において氷形成を引き起こす新しい装置と方法を開発した。それは、十分な量でアイスシーディングを首尾一貫して確実に行うことを可能にする。この装置は標準化され、また、装置に付加される追加の備品を用いてより発展させることができる。
発明の要約
本発明の装置および方法は、細胞、組織および組織等価物のような生物学的なサンプルの冷凍保存手段を提供し、冷凍後解凍された後のそれらの生存率を維持する。低温保存は冷凍チャンバーの中で、制御された冷凍速度で実施される。組織および組織等価物に、撹拌しながら凍結保護媒体を注ぐ。試料は凍結保護媒体を含む容器の中に密封され、その媒体の液体−固体平衡温度もしくはそれよりもわずかに低い温度まで冷却される。その温度において、アイスシーディングが実施され、媒体の中に氷の種(シード)が生成される(または撒かれる)ことになる。温度は、液相と固相の間の平衡を保たせながら、十分な時間一定温度に維持される。チャンバーの温度はそれから遅い速度で中間の温度まで低下させられる;それから急速に極低温まで低下させられる。
好ましい態様においては、アイスシーディング(氷結晶核の生成)は、液化もしくは冷却したガス、好ましくはフレオン(またはフロン)を、スプレーレールから凍結保護剤の中に収容されている組織等価物のサンプルを含む隣接したラックへ放出することによって成し遂げられる。放出されたフレオンは、容器の外側表面に接触し、蒸発する。フレオンの蒸発に起因する容器からの熱移動により、容器の中のフレオン接触部位にて凍結保護媒体において局部的な冷却がなされることとなる。その部位における媒体を十分に冷却することは、ある程度の氷形成、氷結晶核生成を、媒体中で引き起こす。冷却のための装置は、取り外し可能なラックに据え付けられたときに、容器に近接した位置で、垂直方向に設置されているノズル付きスプレーレールを有することが好ましい。そのシステムは、流体を所望のスプレーレールに導くために複数のスプレーレールおよびバルブを有してもよい。
このアイスシーディングシステムの利点は、凍結保護媒体および組織もしくは組織等価物を含む複数の密閉された容器の中に氷の結晶核(または種結晶)を首尾一貫して形成することが可能なことである。本発明の低温保存装置および方法は、冷凍されている間にこれらの組織の貯蔵および輸送するための製造プロセスにおいて利用できる。組織は解凍されたときに生存可能である。
低温保存プロセスにおけるこのアイスシーディングシステムの使用は、生きている組織等価物の製造プロセスに適用できることを明らかにした。この発明がなされる以前は、収集した組織および生きている組織等価物は、限られた貯蔵寿命を有し、それらの使用時間は短く、その結果多くのムダが生じていた。そのような組織が使用されるまで、例えば輸送および貯蔵される場合には、それらをより長い時間保存する必要があった。これらの組織を凍結もしくは凍結乾燥しようとする先の試みは限られた成功をもたらしただけであり、生体内での移植もしくはインヴィトロな試験のために、それらの組織は妥協的に使用されていた。これらの組織を生きている状態で使用できることは、本発明の特別な利点である。
【図面の簡単な説明】
図1は、アイスシーディング制御装置の電子的な配線略図を示している。
図2Aおよび2Bは、ラックに隣接するスプレーレールの概要を示している。
図3A、3Bおよび3Cは、ラックの概要と特徴を示している。
図4は、本発明の一の実施態様に基づくアイスシーディングシステムおよび冷凍チャンバーの概略図である。
図5は、本発明の別の実施態様に基づくアイスシーディングシステムおよび冷凍チャンバーの部分的な概略を示す部分図である。
発明の詳細な説明
本発明のアイスシーディングシステムの目的は、低温保存される凍結保護媒体中で細胞、組織もしくは組織等価物のような生物学的なサンプルを含む容器において氷の種結晶の生成を開始することである。アイスシーディングは、用いられる凍結保護剤溶液の平衡凝固点よりもわずかに低い温度範囲内で実施される。凝固点以上の温度で生成しはじめた氷結晶核は、冷却が凝固点よりも低い温度で進行する前に溶ける場合がある。細胞の生存能力を保護するために、アイスシーディングは、組織もしくは細胞の外側にある低温保存媒体において開始される必要がある。本発明は、組織内部で氷の生成を引き起こすことなく、アイスシーディングを実施する:氷の栓は、主として組織の外側と接している凍結保護剤の中に形成される。
アイスシーディング装置は三の主要な要素を含む:制御装置、スプレーレールおよびラックである。アイスシーディング制御装置は、圧縮された供給源から、貯蔵するために冷凍されるべき物を含むチャンバーへの、液化もしくは冷却されたガスの流れを調節する装置である。複数のスイッチ、ポート(口)、バルブ、ラックセレクター、および時間的調節装置を用いることによって、制御装置はシステムの操作を中心的に管理する。
圧縮された供給源からの液化もしくは冷却されたガスの放出(ここでは以下「放出」とも呼ぶ)の調節は、時間設定されるバルブによって達成され、そのバルブを使用して、制御装置からチャンバーへ排出される放出量を制御するためにタイミングを操作できる。放出されたガスが生物学的試料を含む容器に接触することにより、容器の内部において特定の温度でアイスシーディングが開始する。バルブがより長く開かれると、放出の量はより多くなる。独立したバルブが各々のスプレーレール装置に対して作動し、それにより、複数のスプレーレールおよびそれに関連するラックを伴って複数の状態に関して装置が標準化されることを可能にする。
ポートは、圧縮された液化されたガスもしくは冷却されたガスのための少なくとも一つの入口と少なくとも一つの出口とを含む。圧縮された供給源は、制御装置と組み合わされて入口に接続される。ポートから連続的に、ガスがバルブへ送られ、バルブはスプレーレールに放出されるガスの量を調節する。
ラックセレクターは、氷の種結晶が生成されるべき試料(または生物学的な製品)を含む一もしくは複数のラックに作用するバルブおよび組み合わされたスプレーレールを選択することを可能にする。タイマーは、バルブが開いている時間を調節し、その結果、スプレーレールを経由して、種結晶が生成されるべき適切なラックへ放出されるガスの量が調節される。
スプレーレールは、管類もしくは他の輸送手段を介してバルブから液化もしくは冷却されたガスを一の端部で受け入れるマニホルドである。スプレーレールは、一定量の液化もしくは冷却されたガスをラックの各レベルに供給する複数のオリフィスを含む。これらのオリフィスは、マニホルドに沿って連続的にに配置されており、各オリフィスはその中にノズルを含む。また、ノズルは、目詰まりを防止するためにフィルタースクリーンを有してもよい。スプレーレールの基部には、ベースプレートもしくはチャンバーの底(または床)にスプレーレールを配置し、しっかりと固定するために据え付け用脚が設けられている。
ラックは、低温保存される物が低温保存される間の支持体、ならびに低温貯蔵中の物を移送および保存するための手段となるものである。ラックは、トッププレートとボトムプレートとを含み、それらは、それらの間にある複数のプレートに対して垂直方向にしっかりと固定されたレールによって支えられている。ラックのトッププレートから上側に向かってピン(または留具)もしくはペグ(または釘)が延びている。本発明の一つの態様では、プレートの円周について均等に配置された少なくとも四のピンがある。向かい合うピンの一組は、ハンドルを形成するためにロッドで結合される。ボトムプレートには、トッププレートにおけるピンと同じ向きに孔もしくはくぼみが配置されている。孔もしくはくぼみは、低温保存もしくは貯蔵の間、別のラックの頂部にラックを積み重ねるためにピンに合わせるか、あるいはスプレーレールに隣接するラックと一直線に並ぶように、チャンバーの底に沿ってベースプレートから上に向かって延びるピンに合わせる。
本発明の別の態様において、ハンドルが、トッププレートの中線もしくは直径の両側で2つの楕円形のオリフィス(穴)を機械加工することによってトッププレートに形成される。トッププレートは手でつかむ、あるいはラックを持ち上げるか、もしくは操縦するために引っ掛けることができる。
ラックのレールは、スプレーレールのオリフィスとほぼ同じ間隔で、レールの長手方向に沿って均等に配置される水平面を形成するためのギャップを有するように加工される。ギャップは、ペトリ皿もしくは特別な容器のような、低温保存される物の嵩を収容するのに十分な大きさを有する。トッププレートおよびボトムプレートの間で垂直に固定されるレールは互いに平行である。レールは、ギャップがラックの中心に向かって約90°の角度で内側に面するように配置されそれにより2つのレールは、互いに向かい、第三のレールはその間にある。このアレンジメントにおいて、レールのギャップは、その上で部材が配置されかつ支持され得る三つのポイントを与える。部材を正しい位置に維持するためには、保持用バーもしくはロッドが、向かい合うレールから90°のところにある場所で、真中のレールの真向かいに配置される。一つの実施態様において、バーはトッププレートにある孔を通ってボトムプレートに向かって下に通され、そして正しい位置でボトムプレートに固定される。
好ましい態様においては、二つの隣接するレールの間において、各ギャップ間で、トッププレートおよびボトムプレートに対して平行に配列された弧形のプレートもしくは受け皿(ドリップトレイ)が設けられる。ドリップトレイは部材を収容するために、各ギャップの間でしっかりと締結される。ドリップトレイは、後で望ましくないアイスシーディングをもたらすことになる事態、すなわち、フレオンのような液化ガスの過剰分が、一つの部材から下にあるもう一つの部材に滴ること、あるいはスプレーされた部材の下にある部材の頂面上にノズルから過剰にスプレーされることを防止するためのシールドとして作用する。
ラックが整列ピンに従ってチャンバーの中で配置されるとき、低温保存される部材を含むためのギャップは、ほぼ均等に、スプレーレールのノズルとともに一列に並ぶ。従って、ドリップトレイはスプレーレールに近接して整列して並ぶ。ベースプレート位置決めピンを備えたラックとスプレーレールの組み合わせによって、スプレーノズルと低温保存されるべき物の側面との間に、再現可能な距離が確保される。この距離は一定であるが、スプレーによるシーディングは融通性がある。ベースプレートは、冷凍チャンバーの底部に沿って配置される平らな表面を有する。ベースプレートは、所定のピンおよび孔を含み、それらは、あるものを、ベースプレート上の適切な場所の中で、スプレーレール、ラック等のようなパーツに関して適切な位置に配置されることを可能にする。
図1は、制御装置の電子回路の配線略図であって、接地したパワー・エントリー・モジュール51;ヒューズ52;主電源スイッチ53;タイム・ディレイ−リレイ54;スタートボタン55;出力表示ランプ56;単極マルチポジション・ロータリースイッチ57;コネクティング・ターミナル58;及び通常は閉じているソレノイドバルブ59を含んで成る。
制御装置の電力は、接地された交流(AC)電源から供給される。パワー・エントリー・モジュール51は、AC電源と接続されている。電気的過負荷から、パワー・エントリー・モジュール51に隣接して直列に接続されるヒューズ52によって保護される。制御装置への電流を調節する主電源スイッチ53は、デジタル方式で時間をセットし、また、読み出しできるタイル−ディレイ・リレイ54に直列に接続され、タイム−ディレイ・リレイ54はコントローラーの動作する持続時間を制御する。瞬時押しボタンであるスタートスイッチ55は、コントローラーの動作を開始するためにタイム−ディレイ・リレイ54と直列に接続されている。表示ランプ56は、コントローラーが動作していることを表示するためにリレイ54の出力と並列に接続されている。通常は閉じている複数のソレノイドバルブ59と順番に直列に接続されている単極マルチポジション・スイッチ57と、タイム−ディレイ・リレイ54は、直列に接続されている。回路は、ソレノイドバルブ59をタイム−ディレイ・リレイ54及び最後にパワー・エントリー・モジュールと並列に接続することによって完成する。
アイスシーディングシステムによって放出されるフレオンの量は、放出バルブが開いている時間の関数である。バルブが開いている時間が、スプレーレールに放出されるフレオンの量を指示する。この時間が、アイスシーディング制御装置のフロントパネル上のタイム−ディレイ・リレイにセットされる。低温保存処理を開始する前に、十分な時間の間隔でスプレーレールから液化ガスを放出することによって、システムの管系を構成する管から、空気を取り除くべきである。
当業者によって電気システムの1または2以上のコンポーネントを取り替えることによって、制御装置の改良及び性能向上をすることができ、更に、スプレーレールへの液化ガスの流れを調節する同じ制御装置の機能を本質的に達成することができる。
図2A及び図2Bは、ラックとスプレーレールの組み合わせを示す。図2Aは、ノズル21;スプレーレール20;据付脚22;ラック30;容器40を示す。側面図2Bは、ノズル21、スプレーレール20の一部、及び容器40を示す。ノズル21は、スプレーレール20のオリフィス内に据え付けられている。スプレーレール20は、ベースプレートにしっかりと固定されている据付脚22に取り付けられている。ラック30は、据付脚22に隣接し、スプレーレールに隣接するベースプレートの上に位置する。容器40の側面は、中央部がノズル21と並ぶように配置され、ノズルからの放出が容器の側面に向けられることを確実にする。
図3A、3B、及び3Cは、ラック30の概要を示す。ここでは、ラック30;トッププレート31;ボトムプレート32;レール33;ドリップトレイ34;位置決めピン35;位置決め穴36;ハンドル37;及びリテンション・バーのハンドル38が示されている。ラック30の骨格は、各端でトッププレート31とボトムプレート32に安定して据え付けられた3つのレール33から本質的に成る。レール33は、容器を設置するためにレールに沿って等しく間隔をおいたギャップを含んで成る。本発明の1つの態様においては、ドリップトレイ34は、スプレーレールに隣接して位置するラック30の側方に沿って隣接するレール33の間に据えつけられる。トッププレート31は、トッププレートの周辺部に沿って位置する上方に伸びる位置決めピン35を有していて、2つの対向するピンはその間をハンドル37によって接続されている。ボトムプレート32は、ボトムプレートの周辺部に沿って位置する穴を有していて、トッププレート31の位置決めピン35またはベースプレート上のピンと嵌まり合う。リテンション・バーは、トッププレート31の穴を通してボトムプレート32上に位置する取り付け台にバーを挿入することによって、容器がそれを経由して配置される大きなギャップを閉じ、設置又は保管の間に容器がラックから落下することを防止する。
図4は、アイスシーディングシステム及び冷凍チャンバーの概略図である。ここでは、制御装置50;加圧液化又は冷却ガス60の入口;管61;フィードスルー・プラグ62;スプレーレール入口63;スプレーレール20;ノズル21;ラック30;容器40;チャンバー70;及びベースプレート71が示されている。コントローラー50は、加圧液化又は冷却ガス60の入口を含んで成る。ガスの放出は、制御装置50のソレノイド・バルブによって取り次がれ、管61を経由してスプレーレール20に供給される。フィードスルー・プラグ62は、チャンバー70の密閉を保ったままで、チャンバー70への管61の通過を可能にしている。管61は、スプレーレールの据付脚に位置するスプレーレール入口63で、複数のノズル21を含んで成るスプレーレール21と接続される。液化又は冷却ガスは、ノズル21からラック30内に隣接して保持されている容器40に放出される。スプレーレール20及びラック30は、チャンバー70内部のベースプレート71にしっかりと固定される。
図5を参照するに、他のもう一つの態様においては、システム100は、液体供給装置102、制御装置104、バルブを取り付けたマニホルド106、及び冷凍チャンバー112内のラック110上の容器に液体供給装置102から液化ガスを放出するノズルを備えるスプレーレール108を有している。液体供給装置102は、供給装置102の上からガス圧の供給源114、好ましくは150psigで調節された窒素によって加圧されている。供給装置102は、継続的に加圧状態に維持される一方、一般的には少量の液体だけが供給装置102から引き出されるから、複数回の使用のためには容器は一度加圧するだけでよい。より多くの流体が供給装置から取り出される場合には、供給装置はより頻繁に加圧される。
バルブを取り付けたマニホルド106は、冷凍チャンバー112の内部に設置され、コントローラー104から電気信号ライン115を経由するコントロールシグナルに応答して、8つのスプレーレールの1つに液化ガスを導入する8つのバルブ116(図5においてはその1つのみを示す)を好ましくは有している。各バルブは、好ましくは三方バルブであって、管124を経由して液化ガスを受容する1つの入口119、スプレーレール108に液化ガスを供給する1つの出口118、及びチャンバー112の内部雰囲気に液化ガスを排出する第2の出口120を有している。三方バルブを有しているので、システムを締め切った後に、容器に放出するべき残余のガス及び液体の放出は、数秒かかることなくスプレーレールの気圧を低下させる;むしろ、1秒もかからないで、必要な場合には、ガスと液体は、容器から直ちに遮断される。チャンバー112の内部にマニホルド106を設置することによって、ただ1つの液体のライン124がフィードスルー126を通ってチャンバー112の内部から外部へ伸びているようになる;更に、バルブ116とそれらの各スプレーレール108の間の距離がより短いから、液体をより良く制御できる。ノズルの目詰まりを起こす粒子をトラップするためにバルブ116とスプレーレール108の間にフィルター128が設けられる。
容器を保持するために8つのレベルを有する一つのラックとともに用いるスプレーレールを一つだけ示しているが、本発明の装置は複数のスプレーレールを用いてもよく、その場合、複数のバルブ、フィルターおよびスプレーレールが存在する。もう一つの態様では、スプレーレールは鉛直方向の16の異なるレベルで16のノズルを備えたものであってもよく、その場合、2つのラックを一方の頂部にもう一方を置いて重ねることができ、そして位置決めピンにより互いに関して適切に配置される。
液化ガス供給部における窒素圧力の代わりとして、相転移が生じる圧力よりも十分高い圧力で液体を供給するためにギアポンプを用いることが可能である。
大量の生きている組織もしくはその等価物を一度に低温保存させることを可能にする大規模な冷凍を実施する別の装備は、スプレーレールおよびラックを配置するためのより多くのポジションを持った面積の大きいベースプレートを備えた大きなチャンバーを含む。追加の構成要素を既存の制御装置の配列に組み込むことができる。スプレーレールは、別の一連のオリフィスにマニホルドを続けるために、その長さを伸ばしてもよい。ラックは、ラックのボトムプレートがその下に位置するラックのトッププレートのピンを差し込むことができる孔を含む場合、積み重ねることができる。制御装置はまた、冷凍チャンバー自体の中に統合されてもよく、そしてチャンバーの温度が特定の温度に達したときにアイスシーディングが開始するようにセンサーおよび制御手段でもって更に改変されてもよい。チャンバー内で空気を循環させるために他の装置を追加してもよい。
低温保存システムにおいて用いる液化もしくは冷却されたガスの好ましい成分もしくは化合物は、容器中の低温保存溶液の凝固点よりも低い温度で液体から気体への相変化するものである。使用される液化もしくは冷却されたガスは圧力が加えられた状態で存在しなければならない。圧力は、液体もしくは気体が自然に膨張する性質、液化もしくは冷却されたガスと混合された高圧ガスを供給することによって、あるいはポンプを用いることによる機械的な手段によって、圧力を与えてもよい。少量のガスが装置を経由して容器の側面に供給されるとき、液化ガスから蒸気への相変化、すなわち蒸発は、低温保存剤の凝固点よりも低い温度であって、容器の中の凍結保護剤において氷の種結晶が形成されるのに十分低い温度まで、接触点における容器の壁が冷却されることを引き起こす。
低温保存媒体の凝固点は媒体に含まれる成分の性質に応じて変化する。大抵の低温保存媒体は水をベースとしているが、低温保存媒体の凝固点に影響を及ぼすガラス質物形成剤および塩を含む。ガラス質物形成剤は、低温保存媒体の結晶化を防止して冷凍される細胞もしくは組織の低温破裂(結晶形成に起因する冷凍された組織のひび割れ)を防ぎ、その結果、細胞もしくは組織の生存率が維持される。凍結保護媒体は、「細胞浸透ガラス質物形成剤」、もしくは「非細胞浸透ガラス質物形成剤」、あるいは両方を含んでもよい。細胞浸透ガラス質物形成剤は、好ましくはグリセロールであるが、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、およびこの分野で知られている他の浸透ガラス質物形成剤であってもよい。非細胞浸透ガラス質物形成剤は、ヒドロキシエチルスターチのようなヘタスターチ(hetastarch)、コンドロイチン硫酸、ポリビニルピロリドンもしくはポリエチレングリコールのような複合の炭水化物の高分子量体を含む。細胞浸透性ガラス質物形成剤および/または非細胞浸透性ガラス形成剤は、生理学的pHの基剤で希釈される。基剤は、好ましくはDMEMであるが、リン酸緩衝溶液、IDMEM、MEM、M199、RPMI1640、Ham's F-12、Ham's F-10、NCTC109、NCTC135、もしくはこれらを組み合わせたもので置き換えてもよい。好ましい凍結保護剤溶液は、ダルベッコが改変したイーグルの培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)(DMEM)のベースの中に、1.5M〜2.5Mのグリセロールを、好ましくは2Mのグリセロールを含む。これらの溶液は、この分野の当業者により、特別な適用いかんによって、最大限の生存率の維持に影響を及ぼさない公知の凍結保護剤、および冷凍、貯蔵、解凍、およびすすぎ工程により改変され、また最大限に活用される。本発明に従って用いられるガス供給源は、アイスシーディングが開始される低温保存の性質を考慮して選択する必要がある。この分野の当業者は、低温保存される材料およびシーディングの実施に必要とされる低温保存剤の液体−固体平衡温度に影響を及ぼさない、ガスと低温保存剤の適当な組み合わせを決定することができる。
好ましいガス供給源は、フレオン化合物HFC−134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)であり、これはオゾン層破壊塩素を全く含まず、したがって環境保護局(EPA)による段階的除去の対象にはなっていない。フレオン化合物HFC−134aが蒸発する温度は、公称−25〜−30℃であり、氷が確実に形成されるほど十分に低い温度である。氷の形成を引き起こすほど十分に低い温度で蒸発する他の液化ガスは、液体窒素(LN2)、イソペンタン、プロパン、およびフレオン12およびフレオン22のような他のフルオロカーボンである;しかしながら、これらのガスのいくつかは欠点を有している。
よく知られているように、イソペンタン(2−メチルブタンとしても知られている)は、ヒトの神経、呼吸器および肝臓に対して有毒である。それがヒトに対して有毒であるために、それを吸入する近くの人、特に試料の冷凍を実施する人の健康状態を害するおそれがある。また、イソペンタンは可燃性が高く、火災もしくは爆発を引き起こす恐れがある。イソペンタンは、空気よりも密度が高く、冷凍処理が実施されている装置からかなり離れたところまで容易に移動し得る。したがって、イソペンタンが発火(着火)源に達した場合には、それは着火もしくは爆発する。更に、フルオロカーボンは同様の危険性を有する。フレオン12、フレオン22およびジクロロフルオロメタンは、クロロフルオロカーボン(以下CFCsと略す)である。CFCが冷凍のための流体として採用される場合、CFCsが地球を保護するオゾン層にとって有害であるという点において危険が生じる。その結果、米国政府は、その殆どの使用が人命の保護に対して危険であるいくつかのCFCsを段階的に除去することを求める規則を課している。よって、極低温に適しているだけでなく、人体に対して毒性がなく、非可燃性であり、さらに環境に対して安全である液化ガスを用いて、試料を、危険を伴わずに低温保存する方法を提供することが望ましい。
液化ガスに代えて、加圧下にある冷却されたガスをスプレーレールから放出させてもよい。冷却されたガスの温度は、容器の中の凍結保護剤の固体−液体平衡温度よりも十分に低い温度であることが望ましい。ガスは、窒素、酸素、二酸化炭素、もしくは単なる空気であってよい。加圧下で存在しかつ適切に冷却されるという条件を満たす限りにおいて、いかなるガスを用いてもよい。冷却は、圧縮されたガスを膨張させることにより実施してもよい。
好ましい実施態様において、低温保存剤は、ダルベッコが改変したイーグルの培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)(DMEM)であって、細胞浸透ガラス質物形成剤であるグリセロールを2Mの濃度で含むものが好ましい。DMEM/2Mグリセロールの凝固点は約−5.2℃である。したがって、アイスシーディングは−6℃+/−0.5℃の範囲で実施される必要がある。この温度範囲は、使用される凍結保護剤溶液の凝固点である−5.2℃よりもわずかに低いものである。シーディングは、−5.2℃より低い温度で生じる必要がある。なぜならば、この温度よりも高い温度で形成される氷は、この温度よりも低い温度に冷却する処理を実施する前に溶ける場合があるためである。
固相(氷)の形成が開始する温度を制御することは、氷形成後の冷却速度と同様、組織の脱水の度合いを制御するために要求される。グリセロール−水の溶液についての平衡相ダイヤグラムは、全温度にわたって氷の量および残っている溶液の量に関係している。氷は、それが形成されるとき溶質を受け入れないために、氷と平衡状態にある溶液は温度が低下するにつれてより濃縮されることとなる。細胞外の溶液におけるこの溶質濃度の増加は、細胞から水が除去される原因となる浸透勾配を与える。比較的高い零度以下の温度で十分な水が除去されていない場合、細胞の中で氷が凝結し得る。この現象は細胞および/または組織の損傷を伴う。細胞外の流体におけるシーディングを意図的に実施しない場合、開始溶液についての平衡温度である−5.2℃から−40℃程度の低温度の範囲にある温度にて氷が自然に形成される。自発的なシーディングが容器内で認められる最も低い温度は−14℃である。自発的シーディングの温度が低くなるにつれ、かなりの量の水が細胞もしくは組織内に閉じ込められて凍る可能性が高くなり、その結果、細胞もしくは組織の損傷の度合いが高くなる。自発的なシーディングは広い温度範囲にわたって生じ、かつ容器ごとに変化し得るので、類似する組織の間でも細胞の生存率は広範囲で変化し得る。前述の状況については、種結晶の生成を確実にするために、シーディング操作において−15℃よりも低い局部冷却温度で局部領域の冷却を実施する必要がある。
シーディング操作によって生成される氷の量は、少しの氷が形成されている限りにおいては、低温保存プロセスの成功に悪影響を及ぼすものではない。−6.0℃では、残りの溶液と平衡状態にあるときに存在する氷の量は、開始溶液が2.0MのグリセロールDMEM溶液16mLである場合、約0.36gである。この量の氷は、組織の面の上および下に存在する全量である。この程度の量の氷を生成することは、氷の成長もしくは溶融によって確立される平衡のために十分な時間が与えられることを条件として、シーディング操作において許容し得るものである。氷が形成される領域が組織を取り囲んでおらず、かつ容器中の溶液と平衡に達することが可能である場合には、過剰な氷を生成するプロセスを制御することが最善である。この量の氷を生成するために必要とされるHFC−134aのおおよその見積もり量は、HFC−134aの性質から得ることができる。この材料は1atmで液体から気体になるとき約217ジュール/gの熱を吸収し、水へ融解するときの潜熱は333ジュール/gであるので、約0.36gの氷を作るためには、約0.56gのフレオンが必要とされる。放出される液化ガスの体積は、所定量の凍結保護剤の中に氷の種結晶を形成するべく、この分野における当業者により決定され、かつ最適化される。
後に述べる実施例は、本発明の実施をよりはっきりさせるために与えられ、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。この分野における当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、ここで述べられる方法に様々な変更を加え得ることを理解するであろう。
実施例
実施例1:アイスシーディングシステムを用いたリビングスキン等価体(living skin equivalents LSE)の低温保存
リビングスキン等価体(LSE)の構造物を米国特許第5,536,656号に基づいて準備した。この特許はこの引用により本明細書の一部を成す。7〜12日間エアーリフトして培養したLSEsおよび付随する75mmのキャリヤーインサート(商品名:TRANSWELL(登録商標)、Costar,Cambridge)を、100mmのペトリ皿に置いた。100mmのペトリ皿中で、構造物およびトランスウェルを2MのグリセロールDMEM溶液である凍結保護媒体25mLに1時間浸漬させることにより、LSE構造物を凍結保護剤の中に分散させた。分散の間、10%のCO2ガスで満たされたチャンバーの中において70rpmのオービタルシェーカー(Bellco)で構造物を撹拌した。混合はより完全な分散と、低温保存方法のより良い再現性を可能にする。LSEを分散させた後、LSE、キャリヤーインサートおよび細胞外の冷凍媒体(2MのグリセロールおよびDMEM)を含むペトリ皿を低温保存容器の中に置き、そして熱の流入がないように密閉した。低温保存容器は国際公開公報WO96/24018号に記載されており、この公報は引用により本明細書に組み込まれる。
プログラムで制御できる冷凍装置(Planar)を、ここで説明した発明を実施するように準備した。冷凍装置は、開始温度20℃に設定した。管系を構成する管は一つ一つについて、管の中の空気をすべて取り除くためにフレオンで1秒間隔でパージした。容器に詰められたLSEユニットをラックの中に確実に置き、8個のLSEユニットを収容した。位置決めピンを配置することによってガイドされたラックは、スプレーレールに隣接するように配置された。冷凍装置のチャンバーのドアを、チャンバーを外部の環境から遮断するために閉めた。
LSEユニットは−10℃/分の速度で−6℃に冷却され、凍結保護剤ならびに分散した構造物をチャンバーの温度と平衡させるために、チャンバーの温度を−6℃に40分間維持た。40分間維持した後、容器の側方部に近接した個所でフレオンを1秒間直接放出することにより細胞外で氷を生成させ始めた。フレオンは、それが容器の表面から蒸発するとき、フレオンが接触したエリアを、細胞外での氷形成が開始するのに十分な温度まで低下させた。
全てのLSEユニットが氷の結晶によりシーディングされた後、ユニットを−6℃で1時間平衡させておいた。チャンバーの温度は、それから−0.07℃/分の速度で最終的な温度である−20℃まで低下させた。チャンバーは、それから−0.5℃/分の速度で最終的な温度である−70℃に冷却した。LSEユニットを低温保存状態にしてから、それらを−120℃〜−150℃の温度で気相貯蔵タンク(Dewar)に移した。
前述の発明は、理解を明瞭にする目的で図と実施例によっていくらか詳細に記載したが、いくらかの変更と修正を後で述べる請求項の範囲内で実施してもよいことは当業者において明らかである。

Claims (3)

  1. 液化又は冷却ガスで生物サンプルを低温保存するためのアイスシーディング装置であって、
    チャンバー;
    チャンバー内で生物サンプルを含む複数の容器を保持するラック;
    チャンバー内に据付けられ、ラック上の容器に液化又は冷却ガスを供給するためのノズルを有するスプレーレール;
    液化又は冷却ガスの供給源から容器に供給される液化又は冷却ガスの量を制御する制御装置;及び
    チャンバー内に設けられ、コントローラーで調節される三方バルブであって、液化又は冷却ガスを受け入れる入口、液化又は冷却ガスをスプレーレールに供給する第一の出口、および液化または冷却ガスをチャンバー内に排出する第二の出口を有する、三方バルブを含み、
    ラックは、複数の容器を、それぞれ異なる高さで保持するために垂直に設置されており、
    スプレーレールは、容器と同じ高さで向き決めされ、容器に隣接して設置されるノズルを有する、
    アイスシーディング装置。
  2. チャンバー内に複数のスプレーレール、および
    所望のスプレーレールに液化又は冷却ガスを供給する、コントローラーで調節される複数の三方バルブを含む、
    請求項1に記載の装置。
  3. ラックをチャンバーから取り外すことができ、容器を保持するラックをチャンバーに設置するとき、スプレーレールのノズルが容器に近接するように設置される請求項1に記載の装置。
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