JP4078927B2 - 永久型枠用セメントボードの接合構造および接合方法 - Google Patents

永久型枠用セメントボードの接合構造および接合方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、永久型枠用セメントボードの接合構造および接合方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート構造物の表面に埋設され、コンクリート打設用の型枠としても用いられるセメントボードは、公知文献に関しては、不明であるが、実際の工事現場、例えば、既設橋脚の耐震補強用などとして採用される傾向にある。
【0003】
このような用途に用いられるセメントボードは、型枠として兼用されることから永久型枠ボードとも呼ばれ、例えば、セメントを主成分として、高強度ビニロン繊維を補強繊維として、分散混合させたものがあって、このものの製造方法は、プレス成形や押出し成型により製作されていて、いずれの方法で製造された場合も、一般のコンクリートに比べて、
【0004】
圧縮強度が2倍以上、耐ひずみ性で10倍以上の特性を有している。
このようなセメントボードを永久型枠として用いる際には、所定の大きさに形成された平板状のものを、前後,左右方向に隣接配置して、隣接セメントボード間を接合することになるが、このようなボード間の接合に当たって、ボードの厚みが薄い場合には、2枚のボード間に跨るようなジョイントプレートを用い、各セメントボードの接合部の裏面側に、ジョイントプレートを接着固定していた。
しかしながら、このようなセメントボードの接合方法には、以下に説明する技術的な課題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、ジョイントプレートを接着剤により接着固定する接合方法では、液状接着剤を塗布して、適度にこれが乾燥した状態で、貼り合わせることになるが、この時間の管理が難しく、一定した接着強度を確保することが困難であった。
また、ジョイントボードを接合部に貼り合わせる際には、これをしばらく押さえていなければ、完全な接着状態が得られず、実際の作業では,かなりの人手と時間とを要した。
さらに、施工時に接合部が撓むと、ジョイントボードが剥がれることもあったし、セメントボードの接合面同士にも接着剤を塗布する必要があり、接合面に接着剤を塗布すると、これを押し付ける際などに、接着剤が接合面から垂れて、接合部が汚れるという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、手間や時間を余りかけることなく、一定の接合強度が比較的簡単に確保され、接合部の汚れも防止することができる永久型枠用セメントボードの接合構造および接合方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、平板状のセメントボードを上下,左右方向に隣接配置し、隣接する一対の前記セメントボート間の接合部を、接着剤を介して固着する永久型枠用セメントボードの接合構造において、前記接着剤は、エポキシ樹脂主剤と、硬化剤と、珪砂などの無機粒状物との混合物で構成され、前記接合部に外方に向けて拡開する空間部を形成し、前記空間部に前記混合物を充填して、硬化させることにより、隣接するセメントボード間を接着固定する永久型枠用セメントボードの接合構造であって、前記珪砂などの無機粒状物は、前記混合物中に30〜50重量%混合するようにした。
【0008】
このように構成した永久型枠用セメントボードの接合構造によれば、隣接する一対のセメントボート間の接合部に外方に向けて拡開する空間部を形成し、この空間部に、エポキシ樹脂主剤と、硬化剤と、珪砂などの無機粒状物との混合物を充填して、硬化させることにより、隣接するセメントボード間を接着固定するので、液状接着剤の塗布のように、乾燥までの時間管理が不要になり、押さえておく必要もなく、混合物の組成に応じた一定の接着強度が得られる。
【0009】
また、空間部に充填する接着剤は、エポキシ樹脂主剤と、硬化剤と、珪砂などの無機粒状物との混合物なので、無機粒状物の添加により、パテないしは粘土状になっていて、液状接着剤のように垂れることがなく、接合部を汚す恐れがなくなるとともに、空間部への充填が容易に行え、その取り扱いが容易になり,仕上げもきれいになる。
【0010】
この場合、特に、無機粒状物に珪砂を用いると、珪砂は、化学的に非常に安定した物質で、細かい砂状になっていて、これを混入することにより、接着剤の耐久性の向上が図れる。
【0011】
前記空間部は、隣接設置される前記セメントボードの一方の接端面に傾斜角度が30〜45°の切断面を形成して、これを他方のセメントボードの端面と当接することにより形成することができる。前記切断面は、隣接設置される前記セメントボードの双方に形成し、前記空間部が、前記セメントボード間に跨るように形成することができる。前記空間部の拡開角度は、60°とすることができる。
【0012】
また、本発明は、平板状のセメントボードを上下,左右方向に隣接配置し、その背面後に、コンクリートを打設して、前記セメントボードを永久型枠として用いる際のセメントボードの接合方法において、前記接合部に外方に向けて拡開する空間部を形成し、前記空間部に、エポキシ樹脂主剤と、硬化剤と、珪砂などの無機粒状物との混合物を充填して、硬化させることにより、隣接するセメントボード間を接着固定する永久型枠用セメントボードの接合方法であって、前記混合物は、前記コンクリートの打設前に、前記空間部内に一部を充填して止水性を確保し、前記コンクリートを打設した後に、残りの部分を前記空間部に充填するようにした。
このように構成した永久型枠用セメントボードの接合方法によれば、前述した接合構造と同様な作用効果が得られる。
【0013】
前記一部の充填量は、前記空間部の概略半分の高さに相当する量、または、全充填量の概略半分の量とすることができる。前記混合物は、前記空間部の背面側に、粘着性シートを貼着し、前記コンクリートの打設後に、前記空間部に充填することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1から図3は、本発明にかかる永久型枠用セメントボードの接合構造および接合方法の第1実施例を示している。
【0015】
図1は、本実施例のセメントボードの接合構造を示す断面図である。同図に示した接合構造では、所定の長さと幅を有する長方形で、所定の厚みを備えた平板状のセメントボード10,10aを上下,左右方向に隣接配置し、隣接する一対のセメントボート10,10a間の接合部を、接着剤12を介して接着固定する。
【0016】
この場合、接着剤12は、エポキシ樹脂主剤と、硬化剤と、珪砂,ガラス紛などの無機粒状物との混合物から構成されている。このような混合物からなる接着剤12を得るには、エポキシ樹脂主剤と硬化剤とからなるエポキシ系接着剤は、例えば、シーカデュアW(プレキャストコンクリートブロック用の接着剤、日本シーカ株式会社製、商品名)が市販されているので、これに所定量の珪砂などの無機粒状物を添加混合することで、簡単に得られる。
【0017】
接着剤12に添加する珪砂などの無機粒状物は、混合物中に30〜50重量%の割合で加えることができる。この場合、下限値の30%未満では、混合物の粘性低下が不十分となり、後述する空間部14内に充填する際などに垂れる恐れがある。また、上限値の50%を超えると、粘性の低下が大きくなり過ぎて、空間部14内への充填性が低下する。
【0018】
一方、隣接設置された一対のセメントボード10,10aの接合部には、外方に向けて拡開する空間部14が形成されていて、この空間部14内には、上述した混合物で構成された接着剤12が充填され、充填された接着剤12を硬化させることにより、セメントボード10,10aが接着固定されている。
【0019】
なお、本実施例の場合には、空間部14は、セメントボード10,10aの厚み方向の全長に亘って設けられておらず、下端側は、セメントボード10,10a同士の当接により閉止されている。また、この閉止部分の背面側には、粘着性シート16が貼付されている。
【0020】
次に、このような接合構造が得られるセメントボードの接合方法について説明する。接合に用いるセメントボード10,10aは、図2にその平面形状を示すように、概略長方形状に形成されていて、セメントを主成分とし、高強度ビニロン繊維を補強繊維とする繊維強化高靭性ボードから構成されている。
【0021】
このようなセメントボード10,10aは、コンクリート構造物を形成する際の型枠板として兼用使用することができ、この場合には、構築しようとする構造物の外周を囲むようにしてセメントボード10,10aを設置し、その背面側にコンクリートCが打設され、コンクリートCの強度が発現された段階で、構造物の外表面にセメントボード10,10aが一体化される。
【0022】
繊維補強高靭性セメントボードは、例えば、最大厚さが10mm以下で、曲げ強度が30MPa以上で、スパン18cmで最大たわみが25mm以上の靭性を有するものを用いることができる。
【0023】
本実施例の接合方法に用いるセメントボード10,10aは、接合部の端部が図3に示すようになっている。すなわち、一方のセメントボード10aの端面には、図3(A)に示すように、45°の角度で傾斜した切断面18が形成されている。なお、この切断面18は、図示は省略しているが、接合するセメントボード10の四周にそれぞれ形成する。
【0024】
本実施例の場合、切断面18は、傾斜角度が45°になるようにして、セメントボード10aの端面を斜めに切断したものであって、その傾斜面の先端は、セメントボード10aの厚み方向の端縁まで到達しないように形成されている。
【0025】
つまり、切断面18は、セメントボード10aの上端面から下方に向けて45°の傾斜で延設されていて、この傾斜面の先端は、セメントボード10aの下端面に到達しないで、下端面の上方で終了していて、その残予の部分は、垂直部19となっている。
なお、本実施例では、垂直部19を設けているが、この垂直部19は、必ずしも必要とせず、傾斜面の先端をセメントボード10aの厚み方向の端縁まで到達するように形成することもできる。
【0026】
接合対象となる他方のセメントボード10の端面は、図3(B)に示すように、切断面18を形成しないで、上下の主平面と90°で直交する垂直面20になっている。
このように構成された一対のセメントボード10,10aの接合すべき端面同士を当接すると、図1に示すように、一方のセメントボード10aに形成された45°で傾斜する切断面18により、斜辺が45°の直角三角形の断面形状で、上端が開口し、上方に向けて45°の角度で拡開した空間部14が形成される。
【0027】
この場合、空間部14は、垂直面20と垂直部19とが当接することにより、これらが当接した部分で、下端側が閉止された状態になっている。セメントボード10,10a間に、このような空間部14が形成されると、次に、本実施例の場合には、粘着性シート16がセメントボード10,10aの背面側に貼着される。
【0028】
粘着性シート16は、コンクリートCを打設した際の止水処理のために貼付されるものであって、空間部14の下端側の閉止部分を塞ぐようにして、セメントボード10,10a間に跨るようにして配置される。
なお、このような粘着性シート16は、例えば、ゴム状のスパンシール(早川ゴム株式会社製、商品名)を用いることができる。
【0029】
粘着性シート16の貼付が終了すると、セメントボード10,10aの背面側にコンクリートCを打設する。そして、コンクリートCの打設後に、空間部14内に、珪砂などの無機粒状物を添加した混合物製の接着剤12を充填して、接着剤12を硬化させると、セメントボード10,10a間の接着固定が行われて、接合が完了する。
【0030】
さて、以上のように構成した永久型枠用セメントボードの接合構造および接合方法によれば、隣接する一対のセメントボート10,10a間の接合部に外方に向けて拡開する空間部14を形成し、この空間部14に、エポキシ樹脂主剤と、硬化剤と、珪砂などの無機粒状物との混合物(接着剤12)を充填して、硬化させることにより、隣接するセメントボード10,10a間を接着固定するので、液状接着剤の塗布のように、乾燥までの時間管理が不要になり、押さえておく必要もなく、混合物の組成に応じた一定の接着強度が得られる。
【0031】
また、空間部14に充填する接着剤12は、エポキシ樹脂主剤と、硬化剤と、珪砂などの無機粒状物との混合物なので、無機粒状物の添加により、パテないしは粘土状になっていて、液状接着剤のように垂れることがなく、接合部を汚す恐れがなくなるとともに、空間部14への充填が容易に行え、その取り扱いが容易になり,仕上げもきれいになる。
この場合、特に、無機粒状物に珪砂を用いると、珪砂は、化学的に非常に安定した物質で、細かい砂状になっていて、これを混入することにより、接着剤の耐久性の向上が図れる。
【0032】
また、本実施例の接合方法では、混合物(接着剤12)は、空間部14の背面側に、粘着性シート16を貼着し、コンクリートCの打設後に、空間部14に充填する構成を採用している。
【0033】
このような構成によれば、打設コンクリートCのノロや水分の流出が、粘着性シート16により阻止され、ボード10,10aの組立後に、直ちにコンクリートCを打設することができるので、例えば、急速施工の場合や、寒中時のコンクリート打設で、接着剤12の強度発現が遅い時に、特に、有効な方法となる。
【0034】
図4は、本発明にかかる永久型枠用セメントボードの接合構造の第2実施例を示しており、上記実施例と同一もしくは相当する部分には、同一符号を付して、その説明を省略するとともに、以下にその特徴点についてのみ説明する。
【0035】
同図に示した実施例では、接合構造においては、接着剤12を充填する空間部14bの拡開角度が、30°となっていて、この点が第1実施例と異なっている。接合対象となる一方のセメントボード10は、上記第1実施例と同じであるが、他方のセメントボード10bには、傾斜角が60°の切断面18bと、垂直部19bとが形成されている。
このように構成されたセメントボード10,10bの接合すべき端面同士を当接すると、一方のセメントボード10bに形成された60°で傾斜する切断面18bにより、斜辺が30°の直角三角形の断面形状で、上端が開口し、上方に向けて30°の角度で拡開した空間部14bが形成される。
【0036】
そして、粘着性シート16をセメントボード10,10aの背面側に貼着して、その後に、ボード10,10bの背面側にコンクリートCを打設し、しかる後に、空間部14b内に、珪砂などの無機粒状物を添加した混合物製の接着剤12を充填して、接着剤12を硬化させると、セメントボード10,10b間の接着固定が行われて、接合が完了する。
このように構成した永久型枠用セメントボードの接合構造によっても上記実施例と同等の効果が得られる。
【0037】
図5は、本発明にかかる永久型枠用セメントボードの接合構造の第3実施例を示しており、上記実施例と同一もしくは相当する部分には、同一符号を付して、その説明を省略するとともに、以下にその特徴点についてのみ説明する。
【0038】
同図に示した実施例では、接合構造においては、接着剤12を充填する空間部14cの拡開角度が、60°となっており、空間部14cがセメントボード10b,10cに跨るように形成されていて、この点が第1実施例と異なっている。接合対象となる一方のセメントボード10bは、上記第2実施例と同じであるが、他方のセメントボード10cには、ボード10bと同様に、傾斜角が60°の切断面18cと、垂直部19cとが形成されている。
【0039】
このように構成されたセメントボード10b,10cの接合すべき端面同士を当接すると、各セメントボード10b,10cに形成された60°で傾斜する切断面18b,18cが対向して、頂角が60°の正三角形の断面形状で、上端が開口し、上方に向けて60°の角度で拡開した空間部14cが形成される。
【0040】
そして、粘着性シート16をセメントボード10b,10cの背面側に貼着して、その後に、ボード10b,10cの背面側にコンクリートCを打設し、しかる後に、空間部14b内に、珪砂などの無機粒状物を添加した混合物製の接着剤12を充填して、接着剤12を硬化させると、セメントボード10b,10c間の接着固定が行われて、接合が完了する。
【0041】
このように構成した永久型枠用セメントボードの接合構造によっても上記実施例と同等の効果が得られる。なお、上記第1〜第3実施例で示した粘着性シート16は、コンクリートCの打設前に、空間部14内に接着剤12を充填する場合には、必ずしも必要としない。
【0042】
図6から図8は、本発明にかかる永久型枠用セメントボードの接合方法の第2実施例を示している。同図に示した接合方法は、図5に示した接合構造の第3実施例において、粘着性シート16を除去した構成の接合構造を得る場合の接合方法である。
本実施例の接合方法では、図5に示した場合と同様に、接合対象となる双方のセメントボード10b,10cには、傾斜角が60°の切断面18b,18cと、垂直部19b,19cとが形成されている。
【0043】
このように構成されたセメントボード10b,10cの接合すべき端面同士を当接すると、図6に示すように、各セメントボード10b,10cに形成された60°で傾斜する切断面18b,18cが対向して、頂角が60°の正三角形の断面形状で、上端が開口し、上方に向けて60°の角度で拡開した空間部14cが形成される。
この場合、空間部14cは、セメントボード10b,10c間に跨るように形成され、垂直部19b,19c同士が当接することにより、その下端側で閉塞されている。このような空間部14cが形成されると、次に、この空間部14c内に珪砂などの無機粒状物を混合した接着剤12を充填する。
【0044】
この場合の接着剤12の充填量は、この後に打設するコンクリートCの流出や、水の流出を阻止できる量とし、その一部、例えば、空間部14cの略半分の高さに相当する量、ないしは、全充填量の概略半分程度を充填する。
【0045】
次に、図7に示すように、セメントボード10b,10cの背面側にコンクリートCを打設する。コンクリートCの打設が終了すると、図8に示すように、空間部14c内に残りの接着剤12を充填し、接着剤12を硬化させると、セメントボード10b,10c間の接着固定が行われて、接合が完了する。
【0046】
さて、以上のように構成した接合方法によれば、コンクリートCの打設前に、接着剤12の一部を充填し、コンクリートCの打設後に、残りを充填するので、コンクリートノロや水分の流出を防止しつつ、きれいに仕上げることができる。
【0047】
本発明者らは、上記第1実施例〜第3実施例に対応した3種類の供試体A,B,Cを、3個ずつ準備し(図9参照)、これらの引張りおよび曲げ試験を行った。セメントボードには、厚みが8mmのパワロンボード(株式会社クラレ製、商品名)を用いた。
接着剤には、エポキシ樹脂主剤と硬化剤とを混合した市販接着剤シーカデュアW(日本シーカ株式会社製、商品名)に、重量比で50%となるように、7号珪砂を添加混合したものを用いた。
【0048】
接着剤は、シーリング剤の施工に用いる充填用ガンを用いて、空間部に充填した。以下の表1に使用材料の特性を示している。
【表1】
Figure 0004078927
【0049】
引張り試験には、図9に示した供試体と同様なものを作製し、そこから切り出して試験体とした。引張り方法は、接着面を中央とし、幅40mm、全長300mmの試験体を、直接オートグラフのチャックで挟み込んで、試験速度0.3mm/min、チャック間距離200mmで試験を行った。試験結果を以下の表2に示している。
【表2】
Figure 0004078927
【0050】
この引張り試験では、破壊は、全て接着面で界面剥離が発生した。この試験結果から明らかなように、拡開角度が45°の供試体Aと、拡開角度が30°の供試体Bとでは、不充填部の影響などによるバラツキが大きく、引張り強度もかなり低い値になっている。これに対して、拡開角度が60°の供試体Cでは、不充填部が目視観察では、認められず、引張り強度は、母材引張り強度の約半分である7.15N/mm2となっていた。
曲げ試験は、図10に示す方法により行った。この試験では、等曲げ区間を有する二点載荷で、支持間距離を800mmとした。試験結果を以下の表3に示している。
【表3】
Figure 0004078927
【0051】
この曲げ試験では、破壊は、全て接着面での界面剥離であった。特に、この試験結果においては、拡開角度が45°の供試体Aと、拡開角度が30°の供試体Bとは、拡開の角度がない方、つまり、90°側の界面で、母材(セメントボード)を取込むような形態での破壊が発生していた。
【0052】
拡開角度が60°の供試体Cでは、接着面の破壊において、他の供試体よりも、より多くの母材を取込むようにして破壊していて、母材破断に近い形になっていた。
なお、供試体Cでは、60−3だけが、拡開部分と反対側の面に接着剤が間乱していて、その影響で他の供試体60−1,60−2よりも最大強度が大きくなったものと推察される。
また、破断面の状況を写真撮影して観察したところ、供試体の一部に接着剤の見充填部分が観察され、この未充填部分は、拡開角度が小さいほど、充填不足が大きくなる傾向があった。
【0053】
なお、図6〜図8に示した実施例では、空間部14c内に充填する接着剤12を2度に分けて行う場合を例示したが、コンクリートCを打設する前に、空間部14c内に全量を充填しても良い。
【0054】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明にかかる永久型枠用セメントボードの接合構造および接合方法によれば、手間や時間を余りかけることなく、一定の接合強度が比較的簡単に確保され、接合部の汚れも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる永久型枠用セメントボードの接合構造の第1実施例を示す要部断面図である。
【図2】図1に示した接合構造で用いるセメントボードの平面図である。
【図3】本発明にかかる接合方法で用いるセメントボードの端部説明図である。
【図4】本発明にかかる永久型枠用セメントボードの接合構造の第2実施例を示す要部断面図である。
【図5】本発明にかかる永久型枠用セメントボードの接合構造の第3実施例を示す要部断面図である。
【図6】本発明にかかる接合方法の他の実施例を示す初期工程の断面説明図である。
【図7】図6に引き続いて行われる工程の断面説明図である。
【図8】図7に引き続いて行われる工程の断面説明図である。
【図9】本発明の作用効果を確認するために行った試験に用いた供試体の説明図である。
【図10】本発明の作用効果を確認するために行った曲げ試験の試験方法の説明図である。
【符号の説明】
10,10a,10b,10c セメントボード
12 接着剤
14 空間部
16 粘着性シート
18 切断面
20 垂直面

Claims (7)

  1. 平板状のセメントボードを上下,左右方向に隣接配置し、隣接する一対の前記セメントボート間の接合部を、接着剤を介して固着する永久型枠用セメントボードの接合構造において、
    前記接着剤は、エポキシ樹脂主剤と、硬化剤と、珪砂などの無機粒状物との混合物で構成され、
    前記接合部に外方に向けて拡開する空間部を形成し、前記空間部に前記混合物を充填して、硬化させることにより、隣接するセメントボード間を接着固定する永久型枠用セメントボードの接合構造であって、
    前記珪砂などの無機粒状物は、前記混合物中に30〜50重量%混合することを特徴とする永久型枠用セメントボードの接合構造。
  2. 前記空間部は、隣接設置される前記セメントボードの一方の接端面に傾斜角度が30〜45°の切断面を形成して、これを他方のセメントボードの端面と当接することにより形成することを特徴とする請求項1記載の永久型枠用セメントボードの接合構造。
  3. 前記切断面は、隣接設置される前記セメントボードの双方に形成し、前記空間部が、前記セメントボード間に跨るように形成することを特徴とする請求項2記載の永久型枠用セメントボードの接合構造。
  4. 前記空間部の拡開角度は、60°とすることを特徴とする請求項3記載の永久型枠用セメントボードの接合構造。
  5. 平板状のセメントボードを上下,左右方向に隣接配置し、その背面後に、コンクリートを打設して、前記セメントボードを永久型枠として用いる際のセメントボードの接合方法において、前記接合部に外方に向けて拡開する空間部を形成し、前記空間部に、エポキシ樹脂主剤と、硬化剤と、珪砂などの無機粒状物との混合物を充填して、硬化させることにより、隣接するセメントボード間を接着固定する永久型枠用セメントボードの接合方法であって、
    前記混合物は、前記コンクリートの打設前に、前記空間部内に一部を充填して止水性を確保し、前記コンクリートを打設した後に、残りの部分を前記空間部に充填することを特徴とする永久型枠用セメントボードの接合方法。
  6. 前記一部の充填量は、前記空間部の概略半分の高さに相当する量、または、全充填量の概略半分の量とすることを特徴とする請求項5記載の永久型枠用セメントボードの接合方法。
  7. 前記混合物は、前記空間部の背面側に、粘着性シートを貼着し、前記コンクリートの打設後に、前記空間部に充填することを特徴とする請求項5記載の永久型枠用セメントボードの接合方法。
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