JP4078761B2 - 動力伝達装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転装置の回転軸にトルクを伝達する動力伝達装置であり、特に過負荷トルクの伝達を遮断するための構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術として、例えば特開平10−47244号公報に開示された動力伝達装置が公知である。この動力伝達装置は、例えば冷凍サイクルの圧縮機に具備されて、エンジンの回転動力を圧縮機のシャフトに伝達するものであるが、エンジンから回転動力が伝達されるプーリと圧縮機のシャフトに嵌合するハブとの間にクラッチ機構を持たないため、シャフトがロックした時にトルク伝達を遮断できるトルクリミッタを設けている。
【0003】
このトルクリミッタは、熱可塑性樹脂から成る弾性変形部を備えた介装部材を有し、その介装部材がプーリとハブの何れか一方に結合され、他方に対して常に一体回転可能に圧接されている。この構成により、シャフト側の負荷トルクが変動した時は、弾性変形部が弾性変形してトルク変動を吸収し、更に負荷トルクが過大となった時(シャフトがロックした時等)は、圧接部の相対摺動に伴う摩擦熱によって弾性変形部が溶融することにより、シャフトからプーリへの過負荷トルクの伝達が遮断される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の構成では、部品点数が増大し、且つプーリを支持するベアリングの前方に介装部材を配置するためのスペースを必要とするため、動力伝達装置を具備した圧縮機全体の体格が大きくなるという課題を有している。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、部品点数を低減でき、且つ回転装置の体格を小型化できる動力伝達装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の手段)
請求項1の動力伝達装置によれば、ハブは、回転軸に結合される第1のハブと、この第1のハブに結合されて、外部の駆動源より伝達されたトルクを第1のハブに伝達する第2のハブとを有し、第1のハブと第2のハブとの少なくとも一方側が樹脂または焼結金属で構成されている。また、第1のハブと第2のハブは、両者の結合部が噛み合うことで互いに回転規制されており、第1のハブは、第2のハブの内周側と軸方向に対向するフランジ部を有し、フランジ部の第2のハブの内周側と対向する面に、第2のハブに設けられた凹部に対応する凸部が放射状に設けられており、第1のハブと第2のハブとは、凹部と凸部とを嵌合させて、略軸方向に結合されている。
これにより、樹脂または焼結金属で構成された一方側のハブは、回転装置側の異常により過負荷となった時に、他方側のハブとの結合部が破壊されることにより、回転軸へのトルク伝達を遮断することができる。
【0009】
(請求項の手段)
請求項2の動力伝達装置によれば、外部の駆動源より伝達されたトルクを受けて回転し、且つ回転装置の回転軸に結合されたハブを有し、このハブを介して回転軸にトルク伝達を行うものであって、ハブは、樹脂または焼結金属で構成されている。
この樹脂または焼結金属で構成されたハブは、回転装置側の異常により過負荷となった時に、回転軸との結合部が破壊されることにより、回転軸へのトルク伝達を遮断することができる。
また、ハブは、回転軸の外周にスプライン嵌合して回転規制されており、スプライン部の内側に欠肉部が設けられている
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
図1は動力伝達装置1の断面図である。
動力伝達装置1は、車両エンジンの回転動力を圧縮機のシャフト2に伝達するもので、図1に示すように、エンジンの回転動力が伝達されて回転するプーリ3、このプーリ3にゴム体4を介して連結された外ハブ5、この外ハブ5と結合され、且つ圧縮機のシャフト2に結合される内ハブ6等より構成される。
【0015】
プーリ3は、金属製(例えば鉄鋼)で、ベアリング7を介して圧縮機のハウジング8に回転自在に支持され、図示しないベルトを介して常時エンジンの回転動力が伝達されて回転している。
プーリ3と外ハブ5との間に介在されるゴム体4は、シャフト2側のトルク変動を吸収するダンパ機能を有するもので、円周方向に複数箇所設けられている。外ハブ5は、金属製(例えば鉄鋼)で、中央部に丸孔5a(図2参照)を有する円環形状に設けられ、ゴム体4を介してプーリ3と一体に回転する。この外ハブ5は、図1に示すように、径方向の内周側と外周側との間に段差部を有し、内周側の方が外周側より圧縮機の本体側(図1の右側)へずれて設けられている。また、内周側の表面には、図2に示すように、丸孔5aの周囲にスリット状の凹部5bが放射状に形成されている。
【0016】
内ハブ6は、シャフト2の外周にスプライン嵌合してシャフト2に回転規制され、ボルト9によって固定されている。この内ハブ6は、外ハブ5の内周側と軸方向に対向するフランジ部6aを有し、そのフランジ部6aの裏面(外ハブ5の内周側と対向する面)に、外ハブ5の凹部5bに対応するリブ状の凸部6bが放射状に設けられている(図2参照)。
この内ハブ6と外ハブ5は、図1に示すように、外ハブ5の凹部5bに内ハブ6の凸部6bを嵌合させて結合され、外ハブ5と内ハブ6とが一体となって回転することができる。
なお、内ハブ6を構成する材料は、疲労強度に対し破壊強度が4倍以下となる樹脂(または焼結金属)を採用している。但し、内ハブ6は、通常の作動時に圧縮機の駆動トルク(常時変動する)による繰り返し応力が凸部6bに加わるため、その最大応力が内ハブ6を構成する樹脂の耐久限度以下となるように設計されている。
【0017】
次に、本実施例の作動を説明する。
車両エンジンからベルトを介してプーリ3に伝達された回転動力は、ゴム体4とともにプーリ3と一体に回転する外ハブ5から内ハブ6に伝達され、更に内ハブ6が固定された圧縮機のシャフト2に伝達されてシャフト2が回転する。
ここで、例えばシャフト2がロックしてシャフト2側の負荷トルクが急激に増大すると、内ハブ6に設けられた凸部6bの根元部分に応力が集中する。この応力が樹脂で構成された内ハブ6の耐久限度を越えると、凸部6bが破壊されて内ハブ6の本体と切り離されることにより、内ハブ6と外ハブ5との結合状態が解除される。その結果、内ハブ6と外ハブ5との間でトルク伝達が遮断されるため、シャフト2側の過大なトルク変動が車両エンジンに伝達されることを防止できる。
【0018】
(第1実施例の効果)
本実施例の動力伝達装置1は、外ハブ5に設けた凹部5bに内ハブ6に設けた凸部6bを嵌合させて両者を結合し、シャフト2側の負荷トルクが増大した時は、樹脂で構成された内ハブ6の凸部6bが破壊されることでトルク伝達を遮断することができる。この場合、トルクリミッタとしての機能を外ハブ5と内ハブ6だけで構成でき、新たに別部品を追加する必要がないので、部品点数が増加することなく、構造を簡単にでき、且つ動力伝達装置1を具備した圧縮機全体の体格を小型化できる。
【0019】
(第2実施例)
図3は動力伝達装置1の断面図である。
本実施例の動力伝達装置1は、第1実施例の外ハブ5と内ハブ6とを一体に構成したハブ10を具備し、このハブ10全体を樹脂または焼結金属で構成した一例である。
この構成では、シャフト2がロックした時に、シャフト2の外周にスプライン嵌合するハブ10のスプライン部10aに応力が集中して、そのスプライン部10aが破壊されることにより、シャフト2とハブ10との結合状態が解除されて、両者間のトルク伝達が遮断される。
【0020】
なお、ハブ10のスプライン部10aは、シャフト2がロックした時に確実に破壊される必要がある。そこで、スプライン部10aの破壊を容易にするために、図4(a)に示す通常のスプライン部10aに対し、例えば図4(b)、(c)に示すように、スプライン部10aの歯丈を長くして、歯元の応力集中を高めるように構成しても良い。
あるいは図4(d)に示すように、スプライン部10aの内側に欠肉部10bを設けることで、歯元の応力集中を高めるように構成しても良い。
【0021】
(第3実施例)
図5は動力伝達装置1の断面図である。
本実施例の動力伝達装置1は、第1実施例と同様に、外ハブ5と内ハブ6とを有する構成であるが、その外ハブ5と内ハブ6との結合状態が第1実施例とは異なる。
外ハブ5は、樹脂製であり、その外周部でゴム体4を介してプーリ3に連結されている。
内ハブ6は、金属製(例えば鉄鋼)であり、外ハブ5の内周部にインサート成形され、シャフト2の外周にスプライン嵌合して結合される。
【0022】
但し、外ハブ5の内周部と内ハブ6の外周部には、両者を結合する結合部A(図6参照)が設けられて、互いに回転規制されている。
なお、図6(a)に示す結合部Aは、外ハブ5の内周部と内ハブ6の外周部に各々設けられたスプライン部を噛み合わせて構成され、図6(b)に示す結合部Aは、波形の凹凸部を噛み合わせて構成され、図6(c)に示す結合部Aは、内ハブ6の外周面に設けた偏心溝6cに外ハブ5の樹脂が入り込んで構成されている。
本実施例の構成では、シャフト2がロックした時に、樹脂で構成された外ハブ5の結合部に応力が集中して破壊されることにより、外ハブ5と内ハブ6との結合状態が解除されて、両者間のトルク伝達が遮断される。
【0023】
(第4実施例)
図7は動力伝達装置1の断面図である。
本実施例の動力伝達装置1は、第3実施例と同様に、樹脂製の外ハブ5と金属製の内ハブ6とを有する構成であるが、その外ハブ5と内ハブ6との結合状態が第3実施例とは異なる。
外ハブ5と内ハブ6は、それぞれ別々に成形され(インサート成形ではない)、両者の結合部Aで結合されて互いに回転規制されている。なお、結合部Aは、例えば第3実施例で説明した構成(図6参照)で、且つ軸方向にテーパ形状(図7参照)を有している。
【0024】
本実施例の構成では、シャフト2がロックした時に、樹脂で構成された外ハブ5の結合部に応力が集中して破壊されることにより、外ハブ5と内ハブ6との結合状態が解除されて、両者間のトルク伝達が遮断される。
また、外ハブ5と内ハブ6との結合部Aを軸方向にテーパ形状とすることにより、外ハブ5と内ハブ6とを組み付けた際のがたつきを防止できるメリットがある。
【0025】
(第5実施例)
図8は動力伝達装置1の断面図である。
本実施例の動力伝達装置1は、第2実施例と同様に、外ハブ5と内ハブ6とを一体に構成したハブ10を有しているが、ハブ10とシャフト2との結合状態が第2実施例とは異なる。
本実施例のハブ10とシャフト2は、図8に示すように、両者のテーパ嵌合によって結合され、且つハブ10は樹脂で構成されている。
この場合、シャフト2がロックすると、シャフト2のテーパ面に対してハブ10のテーパ嵌合面が滑るため、摩擦熱が発生してハブ10のテーパ嵌合面が摩耗することにより、シャフト2とハブ10との結合状態が解除されて、両者間のトルク伝達が遮断される。
【0026】
(第6実施例)
図9〜図11はそれぞれ動力伝達装置1の断面図である。
本実施例の動力伝達装置1は、プーリ3を樹脂化することでゴム体4(図1参照)によるダンパ機能を廃止したもので、その代表的な実施例を図9〜図11に示す。
プーリ3を樹脂化すると、金属製(例えば鉄鋼)のプーリ3と比較してプーリ3の慣性モーメントが小さくなるため、ゴム体4によるダンパ機能を設けなくても、圧縮機のトルク変動を小さく抑えることが可能である。
【0027】
図9に示す構成は、例えば第2実施例に示したハブ10とプーリ3とを一体化したもので、シャフト2がロックした時は、第2実施例と同様にハブ10のスプライン部10aが破壊されることで、シャフト2とハブ10との結合状態が解除されて、両者間のトルク伝達が遮断される。
図10に示す構成は、例えば第3実施例に示した外ハブ5とプーリ3とを一体化したもので、シャフト2がロックした時は、第3実施例と同様に外ハブ5の結合部が破壊されることで、外ハブ5と内ハブ6との結合状態が解除されて、両者間のトルク伝達が遮断される(この場合、第4実施例の構成にも適用できる)。
図11に示す構成は、例えば第5実施例に示したハブ10とプーリ3とを一体化したもので、シャフト2がロックした時は、第5実施例と同様にハブ10のテーパ嵌合面が摩耗することにより、シャフト2とハブ10との結合状態が解除されて、両者間のトルク伝達が遮断される。
【図面の簡単な説明】
【図1】動力伝達装置の断面図である(第1実施例)。
【図2】内ハブと外ハブとの斜視図である(第1実施例)。
【図3】動力伝達装置の断面図である(第2実施例)。
【図4】樹脂製ハブに形成されるスプライン部の断面図である。
【図5】動力伝達装置の断面図である(第3実施例)。
【図6】内ハブと外ハブとの結合状態を示す断面図である(第3実施例)。
【図7】動力伝達装置の断面図である(第4実施例)。
【図8】動力伝達装置の断面図である(第5実施例)。
【図9】動力伝達装置の断面図である(第6実施例)。
【図10】動力伝達装置の断面図である(第6実施例)。
【図11】動力伝達装置の断面図である(第6実施例)。
【符号の説明】
1 動力伝達装置
2 シャフト(回転軸)
5 外ハブ(第2のハブ)
6 内ハブ(第1のハブ)
10 ハブ
A 内ハブと外ハブとの結合部

Claims (2)

  1. 外部の駆動源より伝達されたトルクを受けて回転するハブを有し、このハブを介して回転装置の回転軸にトルク伝達を行い、
    前記ハブは、前記回転軸に結合される第1のハブと、この第1のハブに結合されて、外部の駆動源より伝達されたトルクを前記第1のハブに伝達する第2のハブとを有し、前記第1のハブと第2のハブとの少なくとも一方側が樹脂または焼結金属で構成され、その一方側のハブは、前記回転装置側の異常により過負荷となった時に、他方側のハブとの結合部が破壊されることにより、前記回転軸へのトルク伝達を遮断する動力伝達装置であって、
    前記第1のハブと前記第2のハブは、両者の前記結合部が噛み合うことで互いに回転規制されており、
    前記第1のハブは、前記第2のハブの内周側と軸方向に対向するフランジ部を有し、
    前記フランジ部の前記第2のハブの内周側と対向する面に、前記第2のハブに設けられた凹部に対応する凸部が放射状に設けられており、
    前記第1のハブと前記第2のハブとは、前記凹部と前記凸部とを嵌合させて、略軸方向に結合されていることを特徴とする動力伝達装置。
  2. 外部の駆動源より伝達されたトルクを受けて回転し、且つ回転装置の回転軸に結合されたハブを有し、このハブを介して前記回転軸にトルク伝達を行い、
    前記ハブは、樹脂または焼結金属で構成されており、前記回転装置側の異常により過負荷となった時に、前記回転軸との結合部が破壊されることにより、前記回転軸へのトルク伝達を遮断する動力伝達装置であって、
    前記ハブは、前記回転軸の外周にスプライン嵌合して回転規制されており、
    スプライン部の内側に欠肉部が設けられていることを特徴とする動力伝達装置
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