JP2005016615A - フリクションディスク組立体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フリクションディスク組立体12は、外周部に板厚方向に貫通する2個1組の締結孔10cからなる複数の締結部10eが形成されたプレート部10b、及び、板厚方向に貫通するボス孔10gを有しプレート部10bの中心部に形成されたボス部10aからなるクラッチハブ10と、プレート部10bの外周部に締結孔10cにリベット11を挿入して締結された摩擦材9とから構成され、摩擦材を9を第2質量体4とプレッシャプレート8で挟持して、第2質量体4から入力された動力を、ボス孔10gに結合されたメインシャフト13から出力するクラッチ7に用いられるものであり、締結部10eのそれぞれにおける2個の締結孔10cの中心部から延びてボス部10aの境界部分Eに接する4本の接線のうちの交差しない2本の接線を境界線LR,LLとし、プレート部10bにおけるこれらの境界線LR,LLに囲まれた部分に板厚方向に貫通する肉抜き用孔10fを設ける。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、摩擦力により動力を伝達するクラッチに用いられるフリクションディスク組立体に関する。
【0002】
【従来の技術】
クラッチの構成部品であるフリクションディスク組立体は、フライホイール(入力部材)から動力を入力して、このフリクションディスク組立体が有する摩擦材とフライホイール及びフレッシャプレートの摺動面で発生させたトルクをメインシャフト(出力軸)に伝達するものである(例えば、特許文献1参照)。このフリクションディスク組立体を構成するクラッチハブは、摩擦材とメインシャフトの間を結合する部材であり、摩擦材とはリベット等で締結されて結合されており、メインシャフトとはスプライン結合されている。
【0003】
このメインシャフトは変速機を構成しており、変速ギヤ列やこのギヤ列をメインシャフト等に連結するためのシンクロナイザ等が連結されている。そのため、メインシャフトに取付けられているフリクションディスク組立体や、シンクロナイザを構成するシンクロハブ、スリーブ等が変速機のシンクロへの負荷となってしまう。このようなシンクロへの負荷を軽減するために、図4及び図5に示すように、特に外径が大きいため影響度の大きいフリクションディスク組立体において、クラッチハブに肉抜き用孔を形成して、このフリクションディスク組立体の慣性マス及び重量を低減させている。
【0004】
【特許文献1】
特許第2511218号公報(第3−5頁、第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のクラッチハブの形状では依然として慣性マスが大きいため、シフト荷重を低減するために変速機におけるシンクロを大きくする必要や、マルチコーンによる摩擦面の複数化によるシンクロ容量を大きくする必要があり、コストや重量が増加するという課題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、慣性マスを小さくして変速機におけるシンクロへの影響の少ないフリクションディスク組立体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明に係るフリクションディスク組立体は、外周部に板厚方向に貫通する締結孔からなる複数の締結部が形成されたプレート部、及び、板厚方向に貫通するボス孔を有しプレート部の中心部に形成されたボス部からなるクラッチハブと、プレート部の外周部に締結孔に締結部材(例えば、実施形態におけるリベット11)を挿入して締結された摩擦材とから構成され、摩擦材を入力部材(例えば、実施形態における第2質量体4)とプレッシャプレートで挟持して、入力部材から入力された動力をボス孔に結合された出力軸(例えば、実施形態におけるメインシャフト13)から出力するクラッチに用いられるものであり、締結部の締結孔の中心部から延びてボス部の外径(例えば、実施形態における境界部分E)に接する2本の接線を境界線とし、プレート部におけるこれらの境界線に囲まれた部分に板厚方向に貫通する肉抜き用孔を設けて構成される。
【0008】
このような構成によると、肉抜き用孔をプレート部に効率良く形成してクラッチハブの慣性マスを小さくしても、境界線上に肉抜き用孔が形成されていないため、摩擦材に発生したトルクによりクラッチハブかかる力が主に引張り又は圧縮方向の荷重となり、曲げモーメントの発生が少なく応力が均一に発生する。このためこのクラッチハブにおける強度上の問題がなく、シフト荷重を低減することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、本発明に係るフリクションディスク組立体を有するクラッチと、そのクラッチを含む変速機の要部について図1を用いて説明する。変速機1は、フライホイール2を有しており、このフライホイール2は2つの質量体(第1質量体3及び第2質量体4)から構成されている。第1質量体3は、図示しないエンジンのクランク軸5にボルト6で締結されて固定されている。一方、第2質量体4は、クラッチ7が固定されている。このクラッチ7のプレッシャプレート8と第2質量体4との間には、摩擦材9とクラッチハブ10とがリベット11で固定されたフリクションディスク組立体12が配設されている。このフリクションディス組立体12は、ボス部10aのボス孔10gに変速機1のメインシャフト13がスプライン結合して固定されている。そして、プレッシャプレート8は、クラッチカバー14に支持された皿バネ状のクラッチスプリング15により、摩擦材9を介して第2質量体4に付勢されている。このため、このクラッチ7(プレッシャプレート8及び第2質量体4と摩擦材9)の係合操作を行うことにより、クランク軸5とメインシャフト13はフライホイール2及びクラッチ7を介して連結若しくは切断される。
【0010】
フライホイール2はクランク軸5等で発生する振動(脈動)を低減させたり、クラッチ7を係合した瞬間のトルク不足を補うために備えられているものである。また、第1質量体3の外周部には始動ギア17が設けられている。このフライホイール2を構成する第1質量体3及び第2質量体4は、ボールベアリング16を介して互いに相対回転可能に構成されている。そして、第1質量体3と第2質量体4との間には複数のバネ18が配設されて捻りダンパが形成されており、クランク軸5からの回転衝撃力を第1質量体3、第2質量体4及びバネ18で吸収するように構成されている。
【0011】
次に、以上のようなクラッチ7に用いられるフリクションディスク組立体12を構成するクラッチハブ10について図2を用いて説明する。このクラッチハブ10は、摩擦材7とメインシャフト13とを繋ぐ部材であり、ボス孔10gを有して円筒状に形成されたボス部10aと、その円周部から円盤状に延びるプレート部10bとから構成される。このプレート部10bの円周部には、2個の締結孔10cを1組とした締結部10eがボス部10aに対して同心円状に複数形成されており、この締結孔10cにリベット11を挿入して摩擦材9(図1参照)が締結される。ここで、締結孔10cを2個一組としているが、これは、摩擦材7とクラッチハブ10との結合強度を強くするためであり、それぞれ1個の締結孔10cとして構成することも可能である。
【0012】
なお、2個の締結孔10cの間には、それよりも径の小さなウェイト取付孔10dが形成されている。このウェイト取付孔10dには、フリクションプレート組立体12のアンバランス量を規定値内にするためのウェイトが必要に応じて取付けられる。このアンバランス量を規定値内にすることにより、クラッチ7の回転時における振動を防止する。このように構成されたフリクションディスク組立体12において、上述のように、変速機1におけるシフト荷重の低減等のために、クラッチハブ10の慣性マス及び重量を小さくする必要があり、そのために、プレート部10b上には複数の肉抜き用孔10fが形成されている。
【0013】
このプレート部10bの肉抜き用孔10fの形成位置について、図3を用いて説明する。フリクションディスク組立体12は、クラッチハブ10に摩擦材9が取付けられており、上述したように、フライホイール2が回転することにより、この摩擦材9で発生したトルクは、クラッチハブ10のボス部10aによりメインシャフト13に伝達される。そのため、このクラッチハブ10のプレート部10bには、摩擦材9が固定されている締結孔10cにおいて引張り及び圧縮方向の荷重がかけられる。この荷重は、締結孔10cからプレート部10bとボス部10aの境界部分Eに向かって作用する。なお、図2(B)に示すように、ボス部10aとプレート部10bの境界部分Eは曲面となっているため、この境界部分Eは、ボス部10aの外周よりも径の大きな同心円となる。
【0014】
そのため、この荷重が作用する方向を除いた部分に肉抜き用孔10fを形成する。具体的には、図3(A)に示すように、締結部10eにおける2個1組の締結孔10cのそれぞれの中心から境界部分Eを挟むように延びる接線LR,LLを境界線として想定し、全ての締結部10eの締結孔10cから延びるこの2本の接線(境界線)LR,LLに囲まれた領域に肉抜き用孔10fを形成する。なお、図3(B)に示すように、2個1組の締結孔10cからは4本の接線LR,LR′,LL,LL′を引くことができる。このとき、引張り方向の荷重はクラッチハブ10の回転方向後側の締結孔10cRから境界部分Eの回転方向後側の接線LRの方向に作用し、圧縮方向の荷重は、回転方向前側の締結孔10cLから境界部分Eの回転方向前側の接線LLの方向に作用するため、この4本の接線のうち、交差しない2本(LR,LL)を境界線とする。換言すると、2個の締結孔10c(10cR,10cL)を一組とした締結部10eの略中心部から境界部分Eに引いた2本の接線を境界線とする。このため、締結部10eに形成される締結孔10cを1つとした場合は、この締結孔10cから境界部分Eに延びる2本の接線が境界線となる。
【0015】
次に、このように形成したクラッチハブ10の応力等の分析結果について説明する。なお、本発明に係るクラッチハブ10と対比するために、従来のクラッチハブの分析結果についても説明する。従来のクラッチハブとしては、第1従来例を図4に示し、第2従来例を図5に示す。第1従来例のクラッチハブ110は、ボス部110aとプレート部110bとを別体にて形成しリベット110cで固定した形状を有している。このプレート部110bにも複数の肉抜き用孔110fがボス部110aに対して同心円状に形成されている。この第1従来例は、本発明に対してフェーシング外径を同一としたものである。また、第2従来例のクラッチハブ210は、本発明に係るクラッチハブ10と同様に、ボス部210aとプレート部210bが一体に成型された形状をしており、プレート部210b上にボス部210aに対して同心円状に複数の肉抜き用孔210fが形成されている。この第2従来例は、本発明に対し、1サイズフェーシング外径が小さいものである。この第1及び第2実施例とも、摩擦材等の取付け方法は本発明に係るクラッチハブ10と同一である。
【0016】
図6は、本発明に係るクラッチハブ10における応力の分布について示している。なお、図6における応力はこのクラッチハブ10が図中に示す矢印Rの方向に回転したときのものであり、(A)が引張り応力を示し、(B)が圧縮応力を示している。また、図において、色の白い部分ほど大きな応力であることを示している。そして、比較のために、図7に第1従来例の応力の分布を示し、図8に第2従来例の応力の分布を示す。この図7、図8における回転方向や引張り及び圧縮応力の対応等については、図6の場合と同様である。また、本発明に係るクラッチハブ10及び第1及び第2従来例におけるクラッチハブ110,210の慣性マス、重量、引張り及び圧縮応力の比較を図9のグラフに示す。
【0017】
図6から明らかなように、本発明に係るクラッチハブ10の場合、引張り及び圧縮応力のいずれの場合でも、これらの応力が締結孔10cからボス部10aに対して、図3に示す接線LR,LLに沿ってプレート部10b上に均一に分布していることが分かる。これは、境界線上に肉抜き用孔10fを形成していないために、曲げモーメントの発生が少なくなるためである。このため、肉抜き用孔10fをプレート部上に効率よく多数形成して重量及び応力を従来例程度に抑えた上で慣性マスを従来に比べて低く抑えられるため、クラッチハブ10における強度上の問題が無く、変速機におけるシンクロへの影響を小さくすることができる。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係るフリクションディスク組立体によれば、クラッチハブにおいて摩擦材を締結するための締結孔の中心部からボス部を挟むように延びてこのボス部に接する接線を境界線とし、全ての締結孔から延びる境界線で囲まれた空間に肉抜き用孔を形成するように構成することにより、この肉抜き用孔を効率よくプレート部に形成してクラッチハブの慣性マスを小さくすることができる。このとき、クラッチハブに加えられる応力は境界線上に均一に発生するためこのクラッチハブにおける強度上の問題は無く、慣性マスを小さくしたことによりシフト荷重を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に掛るフリクションディスク組立体が用いられるクラッチの要部のメインシャフトの軸を含む断面図である。
【図2】本発明に係るフリクションディスクを構成するクラッチハブを示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は図2(A)のIIB−IIB断面図である。
【図3】クラッチハブの形状を説明する図であり、(A)は肉抜き用孔の形成位置を説明する図であり、(B)は肉抜き用孔を形成する領域を決めるための境界線を説明する図である。
【図4】第1従来例に掛るクラッチハブのを示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は図4(A)のIVB−IVB断面図である。
【図5】第2従来例に掛るクラッチハブのを示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は図5(A)のVB−VB断面図である。
【図6】本発明に係るクラッチハブの応力の分布を示す図であり、(A)は引張り応力を示す分布図であり、(B)は圧縮応力を示す分布図である。
【図7】第1従来例に係るクラッチハブの応力の分布を示す図であり、(A)は引張り応力を示す分布図であり、(B)は圧縮応力を示す分布図である。
【図8】第2従来例に係るクラッチハブの応力の分布を示す図であり、(A)は引張り応力を示す分布図であり、(B)は圧縮応力を示す分布図である。
【図9】本発明に係るクラッチハブと第1及び第2従来例に係るクラッチハブとを比較するグラフであり、(A)は慣性マスを、(B)は重量を、(C)は引張り応力を、(D)は圧縮応力を示す。
【符号の説明】
4 第2質量体(入力部材)
7 クラッチ
8 プレッシャプレート
9 摩擦材
10 クラッチハブ
10a ボス部
10b プレート部
10c 締結孔
10e 締結部
10g ボス孔
10f 肉抜き用孔
11 リベット
12 フリクションディスク組立体
13 メインシャフト(出力軸)
E 境界部分(ボス部の外径)
LR,LL 境界線(接線)
Claims (1)
- 外周部に板厚方向に貫通する締結孔からなる複数の締結部が形成されたプレート部、及び、板厚方向に貫通するボス孔を有し前記プレート部の中心部に形成されたボス部からなるクラッチハブと、前記プレート部の外周部に前記締結孔に締結部材を挿入して締結された摩擦材とから構成され、前記摩擦材を入力部材とプレッシャプレートで挟持して、前記入力部材から入力された動力を、前記ボス孔に結合された出力軸から出力するクラッチに用いられるフリクションディスク組立体において、
前記締結部の前記締結孔の中心部から延びて前記ボス部の外径に接する2本の前記接線を境界線とし、
前記プレート部における前記境界線に囲まれた部分に板厚方向に貫通する肉抜き用孔を設けた事を特徴するフリクションディスク組立体。
Priority Applications (1)
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JP2003181326A JP2005016615A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | フリクションディスク組立体 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003181326A JP2005016615A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | フリクションディスク組立体 |
Publications (1)
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JP2003181326A Pending JP2005016615A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | フリクションディスク組立体 |
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Cited By (4)
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---|---|---|---|---|
WO2010050575A1 (ja) | 2008-10-29 | 2010-05-06 | 富士フイルム株式会社 | 色素、これを用いた光電変換素子、光電気化学電池、および色素の製造方法 |
EP2302650A2 (en) | 2009-09-28 | 2011-03-30 | Fujifilm Corporation | Method of producing photoelectric conversion element, photoelectric conversion element, and photoelectrochemical cell |
EP2306479A2 (en) | 2009-09-28 | 2011-04-06 | Fujifilm Corporation | Method of producing photoelectric conversion element, photoelectric conversion element, and photoelectrochemical cell |
WO2014129575A1 (ja) | 2013-02-22 | 2014-08-28 | 富士フイルム株式会社 | 光電変換素子、光電変換素子の製造方法および色素増感太陽電池 |
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2003
- 2003-06-25 JP JP2003181326A patent/JP2005016615A/ja active Pending
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EP2302650A2 (en) | 2009-09-28 | 2011-03-30 | Fujifilm Corporation | Method of producing photoelectric conversion element, photoelectric conversion element, and photoelectrochemical cell |
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