JP4078222B2 - スピニングリールのロータ回転規制装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータ回転規制装置、特に、スピニングリールのリール本体に回転自在に装着され、前方に延びるロータアームと、ロータアームの先端にのみ糸開放姿勢と糸巻取姿勢とに揺動自在に装着され釣り糸をスプールに案内する釣り糸案内部とを含むロータにおいて、釣り糸案内部が糸開放姿勢に配置されているとき、リール本体に対して複数の回転位相で前記ロータの回転位相を規制するスピニングリールのロータ回転規制装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スピニングリールのロータとして、ひとつのロータアームにのみ釣り糸案内部を有する、いわゆるベールレス型のロータが知られている(たとえば、特許文献1及び非特許文献1参照。)。ベールレス型のロータを有するスピニングリールは、軽量化を図りやすいので、特に遠投に使用される投げ釣り用のスピニングリールとして好適である。
【0003】
従来のベールレス型のスピニングリールのロータは、第1及び第2ロータアームを有するロータ本体と、第1ロータアームの先端に糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動自在に装着された釣り糸案内部とを有している。釣り糸案内部は、第1ロータアームの糸開放姿勢(特許文献1の状態)と糸巻取姿勢(非特許文献1の状態)とに揺動自在に装着された支持部材と、固定軸と、ラインローラと、固定軸カバーとを備えている。固定軸は、支持部材の先端に基端が装着されたものである。ラインローラは、固定軸に回転自在に装着され釣り糸を案内可能なものである。固定軸カバーは、先端に向けて先細りに形成されており、固定軸の軸芯と同方向に延びている。
【0004】
このような構成のベールレス型のロータを有するスピニングリールでは、キャスティング時には、釣り糸案内部を操作しやすい所望の回転位相に回した後、釣り糸案内部を持って糸開放姿勢に揺動させる。たとえば、右手で釣り竿を持つときには釣り竿側から見て左側の所望の回転位相に釣り糸案内部を配置し、左手で釣り竿を持つときには右側の所望の回転位相に配置する。そして、釣り竿を持つ手の人差し指の腹で釣り糸をすくい、キャスティングを行う。キャスティングを終わると、釣り竿を持つ手と逆の手の指で釣り糸案内部をつまんで糸巻取姿勢側に戻した後、その手で釣り糸をつまんでラインローラに引っ掛ける。このようにベールレス型のロータを有するスピニングリールでは、釣り竿を持つ手に応じて所望の回転位相が左右に異なることになる。
【0005】
【特許文献1】
意匠登録第568528号公報
【0006】
【非特許文献1】
ダイワ精工株式会社発行、1982年度ダイワ総合カタログ(P.20−21)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような構成のベールレスのロータを有するスピニングリールでは、キャスティング後にキャスティング時の慣性力の作用によりロータが回転してしまうことがある。ロータが回転すると、釣り糸案内部がキャスティング前の所望の回転位相からずれてしまう。このため、キャスティング後に手で釣り糸をつまんで釣り糸案内部に引っ掛けるとき、釣り糸を釣り糸案内部に引っ掛けにくくなる。従って、キャスティング時にロータが回転すると、釣り糸案内部がもとの回転位相に配置されるようにロータを再度回す必要が生じ、釣り糸を釣り糸案内部に引っ掛ける操作が煩雑になる。
【0008】
本発明の課題は、ひとつのロータアームにのみ釣り糸案内部が設けられたスピニングリールのロータにおいて、キャスティング時のロータの回転を可及的に抑えることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明1に係るスピニングリールのロータ回転規制装置は、釣り竿に装着可能なスピニングリールのリール本体に回転自在に装着され、前方に延びる1対のロータアームとロータアームの一方の先端に糸開放姿勢と糸巻取姿勢とに揺動自在に装着され釣り糸をスプールに案内する釣り糸案内部とを含みハンドルの回転により回転するロータにおいて、釣り糸案内部が糸開放姿勢に配置されているとき、リール本体に対して複数の回転位相でロータの回転を規制する装置であって、連動機構と、回転規制部とを備えている。連動機構は、一方のロータアームに設けられ釣り糸案内部の揺動に連動して糸巻取姿勢に対応する第1位置と糸開放姿勢に対応し第1位置よりリール本体に近接した第2位置との間で移動する機構である。回転規制部は、リール本体に設けられ、連動機構が第2位置に配置されたとき連動機構にロータの2つの回転位相で接触してロータの少なくとも一方向回転を規制するものである。回転規制部は、リール本体のロータと対向する面に突出して設けられ、第2位置に配置された前記連動機構に接触する2つの規制突起を有し、2つの規制突起は、ハンドル装着側とハンドル非装着側とに釣り竿を持つ手に応じて配置され、スピニングリールは、ロータの糸繰り出し方向の回転を禁止・解除するローラ型のワンウェイクラッチを有する逆転防止機構を有し、回転規制部は、ロータが糸巻取方向に回転したとき連動機構に接触してロータの糸巻取方向の回転を規制する。
【0010】
このロータ回転規制装置では、釣り糸案内部を糸開放姿勢に揺動させると連動機構が第1位置からリール本体に近接した第2位置に移動する。そしてロータを複数の回転位相のいずれかに回転させると、第2位置に移動した連動機構が回転規制部に接触してロータの少なくとも一方向の回転が規制される。ここでは、第2位置に移動した連動機構が複数の回転位相で回転規制部に接触することによりロータの少なくとも一方向の回転を規制しているので、ロータを複数の回転位相のいずれかに配置すればキャスティング時のロータの回転を可及的に抑えることができる。また、リール本体に2つの規制突起を設けるだけで回転規制部を構成できるので、回転規制部の構成が容易になる。さらに、通常のスピニングリールに設けられているロータの逆転(糸繰り出し方向の回転)を防止する逆転禁止機構を用いて糸繰り出し方向の回転を禁止できるとともに回転規制部により糸巻取方向の回転を規制できるので、ロータを逆転禁止状態にしてロータを糸巻取方向に回して所望の回転位相に合わせることによりロータの両方向の回転を規制することができる。
【0011】
発明に係るスピニングリールのロータ回転規制装置は、発明1に記載の装置において、連動機構は、前端部が釣り糸案内部に係止され途中がロータアームに揺動自在に装着され、釣り糸案内部を糸案内姿勢と糸開放姿勢とに振り分けて付勢するトグルばね機構と、ロータ本体の後面部にロータの回転軸芯と実質的に平行な軸回りに第1位置と第2位置との間で揺動自在に設けられ、基端がトグルばね機構の後端部に係合しかつ第2位置にあるとき先端が回転規制部に接触する揺動レバーである移動部材とを有する。この場合には、第2位置にある揺動レバーを回転規制部に接触させることでロータの回転を簡素な構成で規制できる。
【0012】
発明3に係るスピニングリールのロータ回転規制装置は、発明1に記載の装置において、連動機構は、前端部が釣り糸案内部に係止され途中が一方のロータアームに揺動自在に装着され、釣り糸案内部を糸案内姿勢と糸開放姿勢とに振り分けて付勢するトグルばね機構と、一方のロータアームに前後移動自在に装着され、後方に移動した第2位置で後端部が回転規制部に接触する移動部材とを有する。
【0013】
発明4に係るスピニングリールのロータ回転規制装置は、発明2又は3に記載の装置において、移動部材が前記第2位置にあるとき、ロータが糸繰り出し方向に回転して規制突起を移動部材が乗り越えて、釣り糸案内部が糸巻取姿勢側に揺動しても釣り糸案内部が糸開放姿勢側に付勢されるように、トグルばね機構の死点が設定されている。
【0014】
発明5に係るスピニングリールのロータ回転規制装置は、発明2から4のいずれかに記載の装置において、釣り糸案内部は、ロータアームの先端に揺動自在に装着された支持部材と、支持部材の先端に回転自在に装着された釣り糸案内用のラインローラとを有し、トグルばね機構は、支持部材に係止されている。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1から図3において、本発明の一実施形態によるスピニングリールは、ハンドル1を有し、釣り竿に装着されるリール本体2と、リール本体2の前部に回転自在に装着されたロータ3と、ロータ3の前部に配置された前後移動するスプール4とを主に備えている。また、スピニングリールは、ハンドル1の回転に連動してロータ3を回転駆動するロータ駆動機構5と、ロータ3の回転に連動してスプール4を前後移動させるオシレーティング機構6とを備えている。
【0016】
リール本体2は、内部にロータ駆動機構5とオシレーティング機構6とを収納している。リール本体2は、図1から図4に示すように、両側が開口する筐体部10と、筐体部10の両側をそれぞれ塞ぐ第1及び第2蓋部11,12と、筐体部10に一体形成された竿取付部13と、筐体部10及び両蓋部11,12を後方から覆うカバー部材14とを有している。
【0017】
筐体部10は、たとえば表面に陽極酸化被膜が形成されたマグネシウム合金製の軽量かつ比強度を維持可能な部材であり、ロータ駆動機構5やオシレーティング機構6を収納支持するための収納空間10aを形成し得る両面が開口した枠状の部材である。筐体部10は、奥行き(図3紙面直交方向)がほぼ同じ寸法で形成されたものである。筐体部10の前面には、逆転防止機構のワンウェイクラッチ(後述)やピニオンギア(後述)などが装着される円板状の機構支持部10bが形成されている。後部には、逆転防止機構の切換操作部(後述)が支持される操作支持部10cが形成されている。また、機構支持部10bの後方には、ピニオンギア及び切換操作部を支持するための中間支持部10dが上部から下方に向けて延びている。
【0018】
第1蓋部11は、比強度及び耐食性を高く維持可能なアルミニウム合金製の部材であり、筐体部10の一面を覆うように形成されている。第1蓋部11は、図2に示すように、マスターギア7に近接して配置されている。第1蓋部11は、図1及び図4から明らかなように、筐体部10の一面側の開口のうち、ハンドル1の回転により回転するマスターギア7を覆う第1カバー部11aと、第1カバー部11aから後方(図1に破線で示した部分より後方)の開口が露出する第2切欠き部11bとを有している。このような第2切欠き部11bを設けたのは、第1蓋部11とカバー部材14との重複部分を可及的に少なくして軽量化を図るためである。
【0019】
また、第1蓋部11には、図2及び図4に示すように、マスターギア7が設けられたマスターギア軸8の一端をマスターギア7の背面側で支持する第1ボス部11cが壁面の略中央部分に外方に突出して形成されている。また、第1蓋部11の前部には、ロータ3の内部に入り込む円板部を構成する略半円形の第1フランジ部11dが形成されている。第1フランジ部11dの前部には、機構支持部10bの後面に配置され機構支持部10bの外周面と略面一に構成される略半円弧状の第1機構収納カバー11eが形成されている。第1蓋部11にはマスターギア7が近接して配置されているため、マスターギア軸8に大きな負荷が作用したとき、第1ボス部11cには大きな力が作用しやすい。そこで、第1蓋部11は比強度を高く維持するために金属製にしてある。第1蓋部11の前下部には、カバー部材14を装着するとともに、洗浄時の水抜きやグリースの充填などのメンテナンスを行うための第1ねじ孔11fが形成されている。
【0020】
第2蓋部12は、第1蓋部11と略対称な鏡像関係の形状であり、第2カバー部12a、第2切欠き部12b、第2ボス部12c、第1フランジ部11dと略鏡像関係の形状の第2フランジ部12d、及び機構収納カバー12eが形成されている。また第2ねじ孔12f(図2)も第1ねじ孔11fと対向する位置に形成されている。第1及び第2フランジ部11d,12dは、筐体部10の機構支持部10b後面の外周面とで円形を構成するように形成されている。この円形部分がロータ3の後面に僅かな隙間ではまり込むように構成されている。第2蓋部12はマスターギア7から比較的遠くに配置されているため、第2ボス部12cには大きな力は作用しにくい。したがって、軽量化を図るために、たとえばナイロン66などの合成樹脂製としている。第2ボス部12cは、マスターギア軸8の他端を支持するために第2蓋部12の壁面の第1ボス部11cと対向する略中央部分に外方に突出して形成されている。
【0021】
なお、両蓋部11,12はたとえば丸頭ビスのような固定ねじ19により、筐体部10に固定されている。この蓋部11,12の固定方法は、種々の変形例が考えられ、たとえば、筐体部10を貫通させて一方の蓋部から他方の蓋部にねじ込むように固定してもよい。
【0022】
竿取付部13は、筐体部10から上方に延びるT字形状の部材であり、先端に形成された前後に延びるリール脚13aが釣り竿にリールシート(図示せず)に装着可能である。なお、竿取付部13は軽量化及び肉厚の均一化を図るために上面及び前面に肉盗み部13b,13cがそれぞれ形成されている。
【0023】
カバー部材14は、第1及び第2蓋部11,12を装着した状態の筐体部10を後方から側部及び底部を覆うように湾曲して形成されている。カバー部材14は、第1及び第2蓋部11,12の後端部に形成された第1及び第2切欠き部11b,12bを塞ぐとともに、リール本体2の後端角部を含む側面及び後面の傷付きを防止するために設けられている。カバー部材14は、ABS樹脂等の比較的硬質の合成樹脂製であり、表面に金属めっきを施している。カバー部材14は、前端側部の第1及び第2ねじ孔11f,12fに対向する位置に段付きのねじ装着孔14a,14bが形成されている。このねじ装着孔14a,14bに第1及び第2ねじ孔11f,12fにねじ込まれるねじ部材14cが装着されカバー部材14を両蓋部11,12に固定するとともにメンテナンス時にあけることができるようになっている。カバー部材14は後端下面で筐体部10の下面にねじ込まれる。ねじ部材14dによっても固定されている。
【0024】
このような構成のリール本体2では、第1蓋部11が軽量でかつ比強度が高いアルミニウム合金製であるので、マスターギア7が近接して配置され比較的大きな力が作用しやすい第1蓋部11の比強度を高く維持して軽量化を図ることができる。またマスターギア7から遠くあまり大きな力が作用しにくい第2蓋部12は合成樹脂を採用したので軽量化を図ることができる。さらに、筐体部10がマグネシウム合金製であるので、リール本体2全体として、比強度を維持して軽量化を図ることができる。
【0025】
ロータ駆動機構5は、ハンドル1のハンドル軸1aがねじ込み固定されるマスターギア軸8と、マスターギア軸8に一体形成されたマスターギア7と、マスターギア7と噛み合うピニオンギア9とを備えている。
【0026】
マスターギア軸8は、リール本体2の両蓋部11,12に形成された第1及び第2ボス部11c,12cに装着された軸受15a,15bによりリール本体2に回転自在に装着されている。マスターギア軸8の両端内周部には、雌ねじ部8a,8bがそれぞれ形成されている。雌ねじ部8a,8bは、ハンドル1を糸巻取方向に回転したときねじが締まる方向のねじである。したがって、図2左側の雌ねじ部8aは左ねじであり、右側の雌ねじ部8bは右ねじである。なお、ハンドル1は、図1及び図3に示す左位置と図2に示す右位置とのマスターギア軸8の両端の何れにも装着可能である。しかし、雌ねじ部8a,8bのねじ方向が異なるため、ハンドル軸1aを左右に取り付ける場合、それぞれ専用のものが用意されている。なお、図2には左ハンドル用のハンドル軸1aが図示されている。
【0027】
ピニオンギア9は、中空筒状の部材であり、前部がロータ3を貫通してロータ3を回転不能に装着している。ピニオンギア9の内周部には、スプール軸16が貫通して配置されている。ピニオンギア9の前部にはナット17が装着されており、ナット17によりロータ3がピニオンギア9に固定されている。ピニオンギア9は、その軸方向の中間部と後端部とがそれぞれ軸受18a,18bによりリール本体2の筐体部10に回転自在に支持されている。軸受18aは、機構支持部10bに装着され、軸受18bは、中間支持部10dに装着されている。ピニオンギア9の後端側に形成されたギア部9bには、環状の切欠き部9cが形成されている。この環状の切欠き部9cは、後述する減速機構20をコンパクトに配置するために設けられている。
【0028】
オシレーティング機構6は、図2及び図3に示すようにピニオンギア9に噛み合う減速機構20と、減速機構20に連動して回転する螺軸21と、螺軸21に係合して前後に往復移動するスライダ22と、スライダ22をスプール軸16方向に案内する2本のガイド軸23a,23bを有している。
【0029】
減速機構20は、図5に示すように、ピニオンギア9に噛み合う大径ギア25a及び小径ギア25bを有する段付きギア部25と、小径ギア25bに噛み合う第1中間ギア26a及び第1中間ギア26aと間隔を隔てて配置された第2中間ギア26bとを有する中間軸26と、螺軸21に回転不能に装着され第2中間ギア26bに噛み合う従動ギア27とを備えている。
【0030】
段付きギア部25は、ピニオンギア9と平行な軸回りに回転する。大径ギア25aは、ピニオンギア9に噛み合うねじギアである。小径ギア25b、第1中間ギア26a、第2中間ギア26b及び従動ギア27は、ともにねじギアであり、中間軸26は、段付きギア部25と食い違う軸回りに回転し、従動ギア27が装着された螺軸21は、中間軸26と食い違いかつピニオンギア9と平行な軸回りに回転する。中間軸26の第2中間ギア26bは、ピニオンギア9の切欠き部9cの下方に配置されている。これにより、切欠き部を形成しない場合に比べて螺軸21をピニオンギア9に近接して配置させることができ、リール全体のコンパクト化を図ることができる。このような構成の減速機構20では、ピニオンギア9の回転が大きく減速されて螺軸21に伝達される。
【0031】
螺軸21は、表面に交差する螺旋状の溝21aが形成された部材であり、スプール軸16と平行に配置されている。螺軸21は、筐体部10の前後端にたとえば合成樹脂製の軸受を介して回転自在に装着されている。螺軸21は、筐体部10の後方から装着され、筐体部10の後面にねじ止め固定された固定板54により抜け止めされている。
【0032】
スライダ22は、内部に螺軸21の溝21aに係合する係合部材22aが装着されている。スライダ22は、スプール軸16の後端部に回転不能かつ移動不能に連結されている。スライダ22は、係合部材22aの先端が溝21aに係合することにより、螺軸21の回転に応じてスプール軸方向に往復移動し、スプール軸16をハンドル1の回転に連動して往復移動させる。
【0033】
ガイド軸23a,23bはスライダ22を貫通しており、スライダ22をスプール軸16に沿って案内する。ガイド軸23aは、筐体部10の後端と中間支持部10dとに両端が固定されている。ガイド軸23aは、筐体部10の後方から装着されており、螺軸21を抜け止めする固定板54により後端が抜け止めされている。ガイド軸23bは、筐体部10の前後端に両端が固定されている。ガイド軸23bは筐体部10の前方から装着されている。ガイド軸23bの前部には、第1蓋部11の前部を固定する固定ねじ19が接触可能であり、この固定ねじ19により抜け止めされている。
【0034】
ロータ3は、釣り糸案内部が一方のロータアームにのみ装着された、いわゆるベールレスタイプのものである。
【0035】
ロータ3は、図3及び図6から図8に示すように、ピニオンギア9を介してリール本体2に回転自在に装着されたロータ本体30と、ロータ本体30に揺動自在に装着された釣り糸案内部31とを有している。
【0036】
ロータ本体30は、たとえば表面に陽極酸化被膜が形成されたマグネシウム合金製であり、筒状の支持部32と、支持部32の後端部外周面の対向する位置から支持部32と間隔を隔ててそれぞれ前方に僅かに先拡がりの状態で延びる第1及び第2ロータアーム33,34とを有している。
【0037】
支持部32は、後端から前方に向けてテーパ状に縮径した後に円筒状に形成された概ね筒状の部材である。支持部32の前部には、前壁32aが形成されており、前壁32aの中央部にはピニオンギア9の前部が貫通するボス部32bが形成されている。ボス部32bは、ピニオンギア9の前部に回転不能に装着されている。前壁32aの前部でピニオンギア9の前部にはナット17がねじ込まれており、このナット17によりロータ3がピニオンギア9に固定されている。また、支持部32の前部には、スプール軸16への釣り糸の巻き付きを防止するための筒状の糸噛み防止部材35が装着されている。
【0038】
第1ロータアーム33の先端には、釣り糸案内部31が糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動自在に装着されている。第1ロータアーム33の内部には、釣り糸案内部31が糸開放姿勢にあるとき、ロータ3を2つの回転位相で規制するためのロータ回転規制機構40が装着されている。第1ロータアーム33の径方向外周側は第1カバー部材36により覆われている。
【0039】
第2ロータアーム34は、第1ロータアーム33と同様に前方に延びており、径方向外周側は、第2カバー部材37により覆われている。第2ロータアーム34は、ロータ3の回転バランスをとるために設けられたものである。このため、第2ロータアーム34は、釣り糸案内部31が装着された第1ロータアーム33の重心位置に近づけるために重心位置を前方側に偏倚させている。重心位置を前方側に偏倚させるために、第2ロータアーム34には基端側に開口部34aが形成されているとともに、先端側に重り部材38を装着するための重り収納部34bが形成されている。重り部材38は、たとえばタングステン合金製である。また、第2ロータアーム34は、重心を前方に偏倚させるために、図7及び図8から明らかなように、前方に延びる長さが第1ロータアーム33より長くなっている。
【0040】
ここで、図6に示すように、第1ロータアーム33の釣り糸案内部31の揺動軸芯を通る第1直線L1と第2ロータアーム34の幅方向の中心を通りかつ第1直線L1と実質的に平行な第2直線L2とがロータ本体30の回転軸芯Xを挟んで逆側に略同じ距離だけ離れて配置されるように、両ロータアーム33,34は形成されている。このように両ロータアーム33,34を配置すると、釣り糸案内部31が回転軸芯Xに対して外側に大きく偏倚(図6では第1直線L1に対して外側に偏倚)して配置されていても、回転バランスをさらに良好に維持することができる。
【0041】
糸噛み防止部材35は、支持部32の円筒部分と面一に形成された円筒状の噛み込み防止部35aと、噛み込み防止部35aの後端部に中心に向けて対向して設けられた1対の舌状の装着部35bとを有している。噛み込み防止部35aの先端は他の部分より大径に形成されており、これにより、スプール4内部に侵入した釣り糸がロータ3内に入らないようにしている。また、噛み込み防止部35aの先端内周面には、回転バランス補正用の重り部材39を収納するための重り収納部35cが形成されている。重り部材39も、たとえばタングステン合金製である。なお、重り収納部35cは、図3では、開示の便宜のため第2ロータアーム34に近接した位置に形成されているが、実際には、図6に示すように後述釣り糸案内部31が揺動する方向で両ロータアーム33,34の中間位置に配置されている。このように重り収納部35cを配置することにより、釣り糸案内部31が第1直線L1より回転軸芯Xからさらに離れる方向に偏倚して配置されていても、釣り糸案内部31に対して回転軸芯Xと逆側に配置された重り部材39により回転バランスを補正することができる。
【0042】
糸噛み防止部材35は、装着部35bの前面から装着された2本のねじ部材29,29により前壁32aに固定されている。なお、前壁32aの前面は糸噛み防止部材35を装着した状態で、装着部35bを含めて環状の平坦面となっている。装着部35bを含めた平坦面を前壁32aの前面に形成するために、前壁32aには、舌状の装着部35bが入り込む凹部32cが形成されている。これにより、スプール4側から異物が入り込んで付着しても、スプール4を外せば異物をふき取りなどして除去しやすい構造となっている。
【0043】
釣り糸案内部31は、釣り竿からスプール4に釣り糸をスムーズに案内してスプール4に釣り糸を巻き付けるために設けられている。このため、図6に示すように、釣り糸案内部31は、スプール4の糸巻き胴部4a(後述)の外周面に釣り糸を案内しやすいようにロータの回転軸芯Xから外方(図6左方)に大きく偏倚して配置されている。釣り糸案内部31は、図6〜図9に示すように、第1ロータアーム33の先端に装着された支持部材41と、支持部材41の先端に基端が固定された固定軸42と、固定軸42に回転自在に装着され釣り糸を案内可能なラインローラ43と、固定軸42の先端に設けられた固定軸カバー44と、固定軸カバー44の先端に設けられ釣り糸を係止する釣り糸係止部45とを有している。
【0044】
支持部材41は、先端に糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動自在に装着されている。固定軸42は、支持部材41の先端に基端が回転不能に係止され、取付ボルト42aにより支持部材41に固定される。固定軸42は、図6に示すように、支持部材41の揺動面F(図1)に対して先端がスプール4に向かって傾斜している。固定軸42の外周には、ラインローラ43が1対の軸受46を介して回転自在に装着されている。ラインローラ43は、外周面に釣り糸を案内する環状の案内溝47が形成されており、糸ヨレが生じにくいようになっている。また、ラインローラ43の外周面の両端は、支持部材41及び固定軸カバー44により覆われている。
【0045】
固定軸カバー44は、固定軸42と一体形成された、たとえばステンレス合金製の部材である。固定軸カバー44は固定軸42の先端側に設けられ、頂点44bが固定軸42の先端42aより後方(図9下方)に向けて偏芯し、かつリール本体2側(図9下側)に釣り糸案内面44cが設けられた略円錐形状の部材である。固定軸カバー44の後面側の稜線近傍の図7にハッチングで示す領域がラインローラ43に釣り糸を案内する釣り糸案内面44cとなっている。固定軸カバー44は、ロータ3を前方から見て、図6に示すように、固定軸42と同芯に先端がスプール4に向かって傾斜して延びている。釣り糸案内部31が糸巻取姿勢にあるとき、釣り糸案内面44cは固定軸42の先端側から釣り糸係止部45側に向けて徐々にリール本体2との距離が短くなるように設けられている。固定軸カバー44の前面には、他の部分より凹んだつまみ凹部44aが形成されている。このようなつまみ凹部44aを設けると釣り糸案内部31を糸巻取姿勢から糸開放姿勢に戻す際に便利である。釣り糸係止部45は、頂点44bの手前側で稜線と滑らかにと滑らかに連続して頂点44bから突出し先端が他の部分より太く形成されている。釣り糸係止部45の先端は球状に丸められている。
【0046】
このような構成の釣り糸案内部31は、釣り糸係止部45の先端が他の部分より太いので一度釣り糸が釣り糸係止部45に係止されると外れにくくなる。また、釣り糸係止部45及び固定軸カバー44の頂点44bが後方に傾いているので、釣り糸係止部45に係止された釣り糸が釣り糸案内面44cによりラインローラ43の案内溝47に確実に案内される。
【0047】
ロータ3は、図3に示すように、逆転防止機構50により糸繰り出し方向の回転を禁止・解除可能である。逆転防止機構50は、筐体部10の機構支持部10bに装着されたローラ型のワンウェイクラッチ51を有している。ワンウェイクラッチ51は、逆転禁止状態と逆転可能状態とに切換可能である。逆転防止機構50は、ワンウェイクラッチ51を逆転禁止状態と逆転可能状態とに切り換える切換操作部52をさらに有している。切換操作部52は、筐体部10の操作支持部10c及び中間支持部10dに揺動自在に支持されており、後端が筐体部10から後方に突出している。このため、ロータ3の逆転禁止・解除操作をリール本体2の後部で操作可能である。
【0048】
ロータ回転規制機構40は、図10及び図11に示すように、第1ロータアーム33と第1カバー部材36との間の空間に配置されている。ロータ回転規制機構40は、連動機構61と、連動機構61に接触する回転規制部62とを備えている。連動機構61は、第1ロータアーム33に設けられ釣り糸案内部31の揺動に連動して糸巻取姿勢に対応する第1位置と糸開放姿勢に対応し第1位置よりリール本体2に近接した第2位置との間で移動する。また、回転規制部62は、リール本体2に設けられ、連動機構61が第2位置に配置されたとき連動機構61にロータ3の2箇所の回転位相で接触してロータ3の糸巻取方向の回転を規制する。
【0049】
連動機構61は、第1ロータアーム33と第1カバー部材36とに揺動自在に装着された第1トグルばね機構63と、第1ロータアーム33の後端面に揺動自在に装着された揺動レバー64と、揺動レバー64を保持する第2トグルばね機構75とを有している。
【0050】
第1トグルばね機構63は、釣り糸案内部31が糸巻取姿勢となる第1位置と糸開放姿勢となる第2位置とを取り得るように第1ロータアーム33内に配置され、釣り糸案内部31を糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに保持するための機構である。第1トグルばね機構63は、一端が支持部材41に係止され、他端が第1ロータアーム33に沿って延びる第1ロッド65と、第1ロッド65が進退自在に装着されるとともに第1ロータアーム33に中間部が揺動自在に取り付けられた第1ガイド部材66と、第1ロッド65を進出側に付勢する第1コイルばね67とを有している。
【0051】
第1ロッド65は、その先端部65aが外周側に折り曲げられ、支持部材41に形成された係合穴41aに係止されている。また第1ロッド65の外周面には、ばね係止用の突起部65bが形成されている。
【0052】
第1ガイド部材66は前端が開口する有底角筒状の部材であり、第1ロータアーム33及び第1カバー部材36に形成された装着孔33a,装着穴36aに係合する両外方に突出する揺動軸66a,66bを軸方向の中間部に有している。揺動軸66a,66bは、ロータ3の径方向に沿って配置されており、第1ガイド部材66は、揺動軸66a,66bを中心に第1ロータアーム36に揺動自在に取り付けられている。第1ガイド部材66の後端部(図10右端部)には、揺動レバー64が係合する係止突起66cが後方に突出して形成されている。
【0053】
揺動レバー64は、第1ロータアーム33の後面にねじ込まれた取付ボルト68にブッシュ69を介してロータ3の回転平面と平行な面内で揺動自在に取り付けられている。揺動レバー64は、たとえばステンレス合金などの金属製の板状の部材である。揺動レバー64は、第1トグルばね機構63の第1ガイド部材66の係止突起66cを係止する係止用切欠き64aと、第2トグルばね機構65係止用の孔64bと、ロータ回転軸心側に突出可能な突出部64cと、ブッシュ69にはめ込まれる装着孔64dとを有している。
【0054】
係止用切欠き64aと第1ガイド部材66の係止突起66cとの間には隙間が形成されている。このように隙間が形成されているので、第1ガイド部材66と揺動レバー64との位置が切り換えられた際に両者による衝突音が発生する。これにより、釣り糸案内部31の姿勢が切り換えられたことを操作者に確実に報知することができる。
【0055】
第2トグルばね機構75は、揺動レバー64を第1位置と第2位置とに保持するための機構であり、揺動レバー64を介して第1トグルばね機構63を第1位置と第2位置とに保持している。第2トグルばね機構75は、揺動レバー64に係止された第2ガイド部材71と、第2ガイド部材71に一端が収納され他端がロータ3に揺動自在に取り付けられた第2ロッド72と、第2ガイド部材71を揺動レバー64側に付勢する第2コイルばね73とを有している。なお、第2ガイド部材71及び第2コイルばね73は、ロータ回転平面と平行な面内で移動する。
【0056】
このような揺動レバー64及び第2トグルばね機構75の構成では、第2ガイド部材71及び第2コイルばね73によって、揺動レバー64は図11に二点鎖線で示す第1位置と実線で示す第2位置とをとり得る。第1位置は第1トグルばね機構63の第1位置及び釣り糸案内部31の糸巻取姿勢に対応し、第2位置は第1トグルばね機構63の第2位置及び釣り糸案内部31の糸開放姿勢に対応している。
【0057】
回転規制部62は、第1及び第2蓋部11,12の第1及び第2フランジ部11d,12dの前面に筐体部10を挟んで回転方向に間隔を隔てて配置された2つの規制突起62a,62bを有している。ここで規制突起62aは右手で釣り竿を持ったときに使用される突起であり、規制突起62bが左手で釣り竿を持ったときに使用される突起である。各規制突起62a,62bは、矢印Aで示すロータ3の糸巻取方向の上流側が径方向に向いた規制壁62c,62dとなっている。また下流側の壁面62e,62fは径方向に対して傾斜しており、ロータ3が糸繰り出し方向に回転するときには揺動レバー64が接触しても各規制突起62a,62bを乗り越えることができるようになっている。
【0058】
ロータ回転規制機構40では、規制突起62a,62bの規制壁62c,62dに揺動レバー64の突出部64cが接触すると、ロータ3はそれ以上糸巻取方向に回転できなくなり、ロータ3の糸巻取方向の回転が規制される。この状態で、逆転防止機構50によりロータ3の糸繰り出し方向の回転が禁止されていれば、ロータ3は、規制突起62a,62bのいずれかにより回転位相が位置決めされる。したがって、キャスティング時にロータ3に慣性力が作用してもロータ3が回転しにくくなる。このため、キャスティング前に2つの規制突起62a,62bのいずれかに接触する回転位相にロータ3を位置決めすると、キャスティング後に釣り糸を釣り糸案内部に容易に引っ掛けることができる。
【0059】
なお、第1トグルばね機構63の死点は、各規制突起62a,62bの壁面62e,62fに揺動レバー64が乗り上げて第1ガイド部材66が揺動しても、支持部材41が糸開放姿勢側に付勢されるように設定されている。このような位置に死点を設定すると、ハンドル1を回しても釣り糸案内部は糸開放姿勢から糸巻取姿勢に戻れないが、キャスティング時に釣り糸案内部がさらに糸巻取姿勢に戻りにくくなる。
【0060】
スプール4は、スプール軸16に対して複数の回転位相で装着可能であり、仕掛けの垂らし長さを変更可能になっている。スプール4は、図3に示すように、浅溝形のものであり、外周に釣り糸が巻き付けられる糸巻き胴部4aと、糸巻き胴部4aの後端部に糸巻き胴部4aより大径に形成された筒状のスカート部4bと、糸巻き胴部4aの先端部に糸巻き胴部4aより僅かに大径に形成された前フランジ部4cとを備えている。
【0061】
糸巻き胴部4aは、スプール軸16に対して回転不能であり、ロータ3の支持部32及び糸噛み防止部材35の外周側に配置されている。糸巻き胴部4aは、先端側内周に一体形成された前壁部4dと、前壁部4dの内周側に後方に突出して一体形成されたボス部4eとを有している。前壁部4dには、軽量化を図るために多数の透孔4gが形成されている。
【0062】
スカート部4bには、図1に示すように、軽量化を図るために内径が異なる多数の透孔4fが形成されている。前フランジ部4cには、糸巻き胴部4aの外周面から僅かに前方に拡径するテーパ状の外周面を有している。これによりキャスティング時に釣り糸に作用する放出抵抗が大きく減少する。
【0063】
次にスピニングリールの動作について説明する。
【0064】
なお、動作の説明では右手でキャスティングする場合を説明する。キャスティングの際には、釣り糸案内部31を糸巻取姿勢にして釣り糸を釣り糸案内部31に引っ掛けた状態にして仕掛けの垂らし長さを調整する。また、釣り糸案内部31を釣り糸をつかみやすい所望の回転位相にセットする。
【0065】
具体的には、まず、逆転防止機構50を逆転禁止状態にしてハンドル1を糸巻取方向に回してスプール4をストロークの最先端近くに配置する。この状態で釣り糸案内部31が所望の回転位相より僅かに回転方向上流側に配置されるようにする。この所望の回転位相とは釣り糸案内部31の操作のしやすさや釣り糸のつまみやすさを考慮し、たとえば、右手でキャスティングするときには釣り糸案内部31を釣り竿側から見てスプール4の左側に配置すると釣り糸案内部31を左手で操作しやすい。
【0066】
そして、所望の回転位相の上流側にセットした状態で左手(釣り竿を持つ手の逆の手)の指先で釣り糸案内部31の固定軸カバー44をつまんで釣り糸案内部31を糸開放姿勢に揺動させる。このとき、固定軸カバー44につまみ凹部44aが形成されているので、固定軸カバー44をつまみやすくなり、釣り糸案内部31をつまんで簡単に揺動させることができる。これと同時に、スプール4に巻き付けられた釣り糸を、左手でつまんで釣り竿を右手の人差し指でひっかける。
【0067】
釣り糸案内部31を糸開放姿勢に揺動させると、揺動レバー64が図11に示す第2位置に配置される。そして、ハンドル1を回してロータ3を僅かに糸巻取方向に回転させると、第2位置に配置された揺動レバー64の突出部64cが突起部62aの規制壁64cに接触して釣り糸案内部31が所望の回転位相に配置される。このとき、逆転防止機構50によりロータの糸繰り出し方向の回転が禁止されているので、ロータ3は両方向に回転できなくなり、所望の回転位相で位置決めされる。この状態でキャスティングを行う。
【0068】
ここでは、回転規制機構40と逆転防止機構とによりロータ3が所望の回転位相で位置決めされているので、キャスティング時にロータ3に慣性力が作用してもロータ3が回転しにくくなる。このため、キャスティング後に所望の回転位相からずれにくくなる。
【0069】
キャスティングが終わると、所望の回転位相に位置決めされた釣り糸案内部31を左手で糸開放姿勢から糸巻取姿勢に戻す。これにより、揺動レバー64の突出部64cは規制突起62a,62bより径方向外方の第1位置に配置され、ロータ3は糸巻取方向に回転可能になる。この状態で釣り糸を左手でつまんで釣り糸案内部31の釣り糸係止部45に係止する。釣り糸係止部45に係止された釣り糸は、固定軸カバー44の釣り糸案内面44cを通ってラインローラ43の案内溝47に案内される。この状態でハンドル1を糸巻取方向に僅かに回転させて釣り糸にわずかにテンションをかけて置き竿する。
【0070】
この釣り糸を引っ掛けるときに、釣り糸係止部45の先端を他の部分より太くしたので、釣り糸係止部45に係止された釣り糸が太い先端から外れにくくなり、他の部材により釣り糸の外れ防止を行う必要がなくなる。このため、釣り糸を釣り糸係止部45に引っ掛けやすくなるとともに簡素な構成で釣り糸の脱落を防止できる。また、固定軸カバー44を頂点44bが後方に向けて偏芯した略円錐形状に形成したので、釣り糸案内面44cの先端側を稜線に連続する基端側よりリール本体2側に近づけやすくなり、釣り糸案内面44cに案内された釣り糸はラインローラ43に案内される。このため、釣り糸係止部45に釣り糸を引っ掛けるだけで釣り糸案内面44cを経て釣り糸をラインローラ43に案内しやすくなるとともに案内された釣り糸が案内面44cから脱落しにくくなる。したがって、釣り糸を引っ掛けやすくかつ簡素な構成でラインローラからの釣り糸の脱落を防止できるようになる。
【0071】
仕掛けに獲物がかかってハンドル1を回すとロータ3が糸巻取方向に回転するとともにスプール4が前後移動する。同時に、ハンドル1の回転はマスターギア軸8を介してマスターギア7に伝達され、ピニオンギア9を介してロータ3が回転する。また、ピニオンギア9から減速機構20を介してオシレーティング機構6が動作してスプール4が前後移動する。
【0072】
このとき、第1及び第2ロータアーム33,34が回転軸芯Xを挟んで逆側に配置されているので、釣り糸案内部31が回転軸芯Xに対して外側に偏倚して配置されていても、回転バランスをさらに良好に維持することができる。しかも、第2ロータアーム34や糸噛み防止部材35にもバランス補正用の重り部材38,39が装着されているので、回転バランスがさらに正確に補正されている。このようにロータ3の回転バランスが補正されているので、キャスティング時にロータ3に慣性力が作用してもロータ3が回転しにくくなる。
【0073】
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、移動部材としてロータアームの後面に配置された揺動レバーを例示したが、移動部材は揺動レバーに限定されない。たとえば、移動部材をロータアームに前後移動自在に装着し、後方に移動した第2位置で移動部材の後端部がリール本体に設けられた回転規制部に接触するように構成してもよい
【0074】
(b)前記実施形態では、回転規制部をリール本体と一体形成した規制突起により構成したが、リール本体と別部材の弾性突起を所定の回転位相に対応して設けて移動部材と接触させるようにしてもよい。この場合、移動部材が弾性突起に弾性的に接触することにより、逆転防止機構を用いることなくロータ3の両方向の回転を規制できる。
【0075】
(c)前記実施形態では、右手で釣り竿を持つ場合を例に動作を説明したが、左手で釣り竿を持つ場合には、規制突起62bの回転方向上流側が所望の回転位相となる。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、糸開放姿勢に対応する第2位置に移動した連動機構が複数の回転位相で回転規制部に接触することによりロータの少なくとも一方向の回転を規制しているので、ロータを複数の回転位相のいずれかに配置すればキャスティング時のロータの回転を可及的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を採用したスピニングリールの側面図。
【図2】 そのスピニングリールの背面断面図。
【図3】 そのスピニングリールの側面断面図。
【図4】 リール本体の分解斜視図。
【図5】 減速機構の斜視図。
【図6】 ロータの正面図。
【図7】 ロータの右側面図。
【図8】 ロータの左側面図。
【図9】 固定軸カバーの断面図。
【図10】 ロータ回転規制機構の構成を示す第1ロータアーム断面拡大図。
【図11】 ロータ回転規制機構の構成を示すリール本体前部の断面図。
【符号の説明】
2 リール本体
3 ロータ
31 釣り糸案内部
33 第1ロータアーム
40 ロータ回転規制機構
41 支持部材
43 ラインローラ
50 逆転防止機構
61 連動機構
62 回転規制部
62a,62b 規制突起
63 第1トグルばね機構
64 揺動レバー

Claims (5)

  1. 釣り竿に装着可能なスピニングリールのリール本体に回転自在に装着され、前方に延びる1対のロータアームと一方の前記ロータアームの先端に糸開放姿勢と糸巻取姿勢とに揺動自在に装着され釣り糸をスプールに案内する釣り糸案内部とを含みハンドルの回転により回転するロータにおいて、前記釣り糸案内部が前記糸開放姿勢に配置されているとき、前記リール本体に対して複数の回転位相で前記ロータの回転を規制するスピニングリールのロータ回転規制装置であって、
    一方の前記ロータアームに設けられ前記釣り糸案内部の揺動に連動して前記糸巻取姿勢に対応する第1位置と前記糸開放姿勢に対応し前記第1位置より前記リール本体に近接した第2位置との間で移動する連動機構と、
    前記リール本体に設けられ、前記連動機構が第2位置に配置されたとき前記連動機構に前記ロータの2つの回転位相で接触して前記ロータの少なくとも一方向回転を規制する回転規制部と、を備え、
    前記回転規制部は、前記リール本体の前記ロータと対向する面に突出して設けられ、前記第2位置に配置された前記連動機構に接触する2つの規制突起を有し、
    前記2つの規制突起は、前記ハンドル装着側と前記ハンドル非装着側とに前記釣り竿を持つ手に応じて配置され、
    前記スピニングリールは、前記ロータの糸繰り出し方向の回転を禁止・解除するローラ型のワンウェイクラッチを有する逆転防止機構を有し、
    前記回転規制部は、前記ロータが糸巻取方向に回転したとき前記連動機構に接触して前記ロータの糸巻取方向の回転を規制する、スピニングリールのロータ回転規制装置。
  2. 前記連動機構は、
    前端部が前記釣り糸案内部に係止され途中が一方の前記ロータアームに揺動自在に装着され、前記釣り糸案内部を前記糸案内姿勢と前記糸開放姿勢とに振り分けて付勢するトグルばね機構と、
    前記ロータ本体の後面部に前記ロータの回転軸芯と実質的に平行な軸回りに前記第1位置と前記第2位置との間で揺動自在に設けられ、基端が前記トグルばね機構の後端部に係合しかつ前記第2位置にあるとき先端が前記回転規制部に接触する揺動レバーである移動部材とを有する、請求項1に記載のスピニングリールのロータ回転規制装置。
  3. 前記連動機構は、
    前端部が前記釣り糸案内部に係止され途中が一方の前記ロータアームに揺動自在に装着され、前記釣り糸案内部を前記糸案内姿勢と前記糸開放姿勢とに振り分けて付勢するトグルばね機構と、
    一方の前記ロータアームに前後移動自在に装着され、後方に移動した前記第2位置で後端部が前記回転規制部に接触する移動部材とを有する、請求項1に記載のスピニングリールのロータ回転規制装置。
  4. 前記移動部材が前記第2位置にあるとき、前記規制突起を前記移動部材が乗り越えて、前記釣り糸案内部が前記糸巻取姿勢側に揺動しても前記釣り糸案内部が糸開放姿勢側に付勢されるように、前記トグルばね機構の死点が設定されている、請求項2又は3に記載のスピニングリールのロータ回転規制装置。
  5. 前記釣り糸案内部は、前記ロータアームの先端に揺動自在に装着された支持部材と、前記支持部材の先端に回転自在に装着された釣り糸案内用のラインローラとを有し、
    前記トグルばね機構は、前記支持部材に係止されている、請求項2から4のいずれかに記載のスピニングリールのロータ回転規制装置。
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