JP4077359B2 - マイクロカプセル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は疎水性物質を含むマイクロカプセルに関するものであり、特に求める平均粒径でかつ粒径分布のシャープなマイクロカプセルに関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロカプセルは感圧記録紙や感熱記録紙などの記録材料、農薬、医薬、香料、液晶、接着剤等数多くの分野で用いられており、その製法についても多くの方法が提案されている。代表的なマイクロカプセル化法としては、コアセルベーション法、界面重合法、イン・サイチュ法等が知られている。マイクロカプセルの作成に当たっては、特に平均粒径および粒径分布が重要である。平均粒径は用途により異なるが1〜100μm程度が求められる。また、粒径分布はできる限り均一であることが望まれる。例えば、感圧複写紙用のマイクロカプセルでは平均粒径4〜8μmで粒径分布のシャープなカプセルが求められる。なぜなら、2μm以下のカプセルは破壊が容易でなく機能を発現せず発色性の低下を招き、また、10μm以上のカプセルは耐圧性が悪く擦れ汚れの原因となるからである。これらの要求を解決するために、主に乳化分散剤および乳化分散装置を中心に、例えば、特許文献1〜5など種々の提案がなされているが、性能および生産性の面から必ずしも満足なものとは言えない。
【特許文献1】
特開昭56−147627号公報
【特許文献2】
特開昭58−40142号公報
【特許文献3】
特開昭59−87036号公報
【特許文献4】
特開平2−160579号公報
【特許文献5】
特開平5−49912号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、求められる平均粒径でかつ粒径分布のシャープなマイクロカプセルを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は平均粒径が3.2μm以上で、10μm以上の粒子が1%以下である、マイクロカプセルに関する。
本発明のマイクロカプセルは、たとえば、通液孔(4)を有するスクリーン(1)と、その内側にクリアランス(3)を設けて配置した、羽根刃(5)を有する高速回転可能なローター(2)とを備えたホモジナイザーのローター側より疎水性物質と水性媒体とを供給しつつローター(2)を高速で回転させ、ローターとスクリーンとのクリアランス(3)およびスクリーンの通液孔(4)を通過させることにより、疎水性物質を水性媒体中に乳化分散させ、その乳化分散された疎水性物質をマイクロカプセル化することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法で得られる。
【0005】
本発明に使用する代表的な装置の概要を図1に示す。図1はハウジング(7)の一部を開放し、スクリーンはその断面のみを示している。図1中、(1)はスクリーンであり(2)はローターである。スクリーン(1)とローター(2)の間には所望の幅のクリアランス(3)が設けられており、この幅は適当に調節可能であってもよい。疎水性物質と水性媒体はハウジング(7)に設けられた窓(6)からハウジング内に吸い込まれ(液の流れ方向を(8)で示す)、ローター(2)で激しく撹拌された後クリアランス(3)により、剪断力を与え、更にスクリーンの通液孔(4)を通過させて、疎水性物質を乳化させる。
【0006】
本発明に用いられるスクリーン(1)は例えば図2に示すごとく縦型のスリット状通液孔(4)を有するのが好ましいが、通液孔はこれに限定されるものではなく、パンチング・ホール、メッシュなど様々な形状のものが用いられる。しかしながら、縦型のスリット状通液孔はスクリーンとローター間のクリアランスに吐き出された液に効率的に剪断力を付与し、通液孔で通過液に適切な衝突エネルギーを容易に付与できるので特に好ましいものである。縦型クリアランスの長さ、太さ、形、数、深さなどを適当に変えることによって、マイクロカプセル化すべき系の粘度などに応じてマイクロカプセルの粒径を所望の大きさに調節することができる。
【0007】
スクリーン自体の形状はローターの形状によるが、図2に示すごとく円形または円台状であるのが好ましい。それによって吸液側からの液の供給を効率よくすることができ、またスリット部に均一に圧をかけることができる。
【0008】
スクリーンのスリットの本数は好ましくは2〜100本、より好ましくは3〜50本である。スクリーンのスリット幅は好ましくは0.1〜50mm、より好ましくは1〜10mmである。スクリーンの開口面積比は好ましくは0.1〜5.0、より好ましくは0.5〜2.0である。
【0009】
一般的傾向としては、スクリーンの開口面積比が大きくなるほど、得られるマイクロカプセルの粒径は大きくなる。
【0010】
本発明に用いられるローターは、例えば図3および図4に示すごとく、羽根刃(5)を有する。羽根刃の枚数は限定的ではないが2〜8枚が好ましい。ローターのリード角は0〜0.4πラジアンが好ましい。リード角が0.4πより大きいと吸液が困難になる。またローターの形状は円形または円台状であるのが好ましい。ローターの外周の最大径部の回転速度が好ましくは1〜50m/sec、より好ましくは5〜40m/secである。
【0011】
ローターとスクリーンのクリアランスは好ましくは0.05〜5.0mm より好ましくは0.1〜2.0mmである。クリアランスが5.0mm以上ではローターとスクリーン間の剪断力が著しく低下し、粒径分布が広くなり、また粒径が小さくならない。また0.05mm以下のものは製作上の問題がある。
【0012】
本発明におけるローターおよびスクリーンは同軸上に位置し、より好ましくは垂直状に位置し、ローターの上部より、疎水性液体と親水性液体の混合物を送液し、この混合物がローター、ローターとスクリーンとのクリアランスおよびスクリーンを下部方向に通過することにより乳化分散される。
【0013】
本発明では、ローターとスクリーンが同一タンク内にセットされ、タンク内の混合液を一定時間乳化分散させることにより、乳化分散粒子を得るバッチ式でも、同タンク内に連続的に混合液を供給するバッチ連続式でも、ローターとスクリーンを円筒中に入れた分散機を用い、配管にて混合液を分散機中に導入する連続式のいずれを用いてもよい。
【0014】
また、本発明においては、ローターとスクリーンの組み合わせを同種または異種のものをいくつか同時に用いてもよい。
【0015】
本発明に用いられるマイクロカプセル化法は、特に限定的なものではない。例えば、界面重合法、コアセルベーション法、イン・サイチュ法などが例示される。
【0016】
本発明において、疎水性物質は、マイクロカプセル化しようとする油性成分、例えば溶剤、ワックス、染料、農薬、医薬、殺虫剤、香料、接着剤、油溶性ビタミン、魚油、植物油、鉱物油、触媒、化粧料など、あるいはマイクロカプセルの壁材となる疎水性のポリマー類、例えば(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、アクリロニトリル/塩化ビニリデン共重合物、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂など、壁材形成用のモノマー類、あるいはこれらを溶解または分散する疎水性の溶剤類などである。
【0017】
本発明において水性媒体としては水およびこれに親水性の溶剤、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジオキサン、ブチルセロソルブなど、水溶性塩類、例えば塩化ナトリウム、
など、マイクロカプセルの壁材形成用水溶性樹脂、例えばゼラチン、セルロース誘導体、尿素、ホルムアルデヒド、尿素またはメラミンノホルムアルデヒド初期重合物、でん粉、分散剤、乳化剤、
などを溶解または分散させたものが例示される。
【0018】
分散剤としてはアラビアガム、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、アクリル酸重合物あるいはその共重合物、無水マレイン酸共重合物、ビニルベンゼンスルホン酸重合物あるいはその共重合物、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸重合物あるいはその共重合物、水溶性ナイロンなどの水溶性高分子、カオリンクレー、焼成クレー、セリサイト、タルク、ベントナイト、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などのコロイド状無機微粒子などが例示される。また、界面活性剤としてはアルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤、高級アルコールエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤などが例示される。
【0019】
本発明のマイクロカプセルとしては、熱膨張性マイクロカプセル、感圧複写紙用マイクロカプセル、感熱シート用マイクロカプセル、香料、化粧料用マイクロカプセル、忌避剤、農薬等の徐放性マイクロカプセル、難燃剤用マイクロカプセル等、種々の用途のマイクロカプセルを挙げることができる。
【0020】
本発明では、粒径のそろったマイクロカプセルを提供することができる。本発明では、上記方法で熱膨張性マイクロカプセルを製造すると、従来困難であった粒径が小さくて、しかも熱膨張性が均一なマイクロカプセルが得られる。更に粒径の調整も簡単にできるため、感圧複写紙用に適した4〜6μmの範囲で粒径の整ったマイクロカプセルが得られる。
【0021】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
参考例
アクリロニトリル110部、塩化ビニリデン200部、メタクリル酸メチル10部、イソブタン40部及びジイソプロピルオキシジカーボネート3部から成る疎水性物質をイオン交換水600部、コロイダルシリカ分散液(30%固形分)130部とジエタノールアミンとアジピン酸の縮合物の50%水溶液3部から成る水系のpH3に調整した媒体に加える。次にこの混合液を加圧容器付きの図1の構造を有する分散機(商品名:クレアミックスCLM−2.5S、エム・テクニック社製)でローターとスクリーンの間隔0.3mm、ローターの羽根数4枚、リード角0πラジアン、スクリーンのスリット数24本、スリット幅2mm、ローター回転数1800RPM30秒間分散した。この分散液をオートクレープ中で窒素雰囲気下、3−5kg/cm、60℃で20時間反応した。平均粒径(ヘロス&ロードス:レーザー回析法)2.1μm;130℃オーブン中で1分間加熱したときの体積膨張倍率約50倍の熱膨張性マイクロカプセルを得た。
【0022】
実施例
パラフィン(mp36℃)250部をスクリプセット#520
(スチレン/無水マレイン酸共重合物;モンサント社製)の部分ナトリウム塩の5%水溶液150部及びイオン交換水600部から成る水系に加えた。
【0023】
次に、この混合液を60℃に加温した後、参考例1の分散機を用いてローター回転数1800RPMで30秒間分散し分散液を得た。別に37%ホルマリン65部メラミン25部及びイオン交換水165部から成る混合液を、撹拌下pH9.0に調整し、60℃で約20分間反応し透明なメラミン/ホルムアルデヒド初期重合物を得た。この液を先の分散液に加え、250RPMで撹拌しながら60℃で3時間反応した。続いて残ホルマリン除去のため、系のpHを4.0に調整し、80℃で2時間反応を継続した。平均粒径(ヘロス&ロードス:レーザー回析法)3.8μmのマイクロカプセルか得られた。
【0024】
実施例
ハイゾールSAS−296(アルキル化ジフェニルメタン;日石化学社製)276部にクリスタルバイオレットラクトン(CVL)15部及び
ベンゾイルロイコメチレンブルー(BLMB)9部を加えた後、加熱溶解させた溶液にアクリロニトリル90部、アクリルアミド10部、メチレンビスアクリルアミド0.5部及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1部を加えた溶液をイオン交換水450部、食塩45部、スノーテックス20(コロイダルシリカ;日産化学(株)製)100部、ジエタノールアミンとアジピン酸の縮合物の50%水溶液2部から成る水系に加える。
【0025】
次に、この混合液を参考例1の分散機を用いてローター回転数1800RPMで30秒間分散し分散液を得た。この分散液をオートクレーブ中で窒素雰囲気下、3−5kg/cm、60℃で20時間反応した。平均粒径(ヘロス&ロードス:レーザー回析法)6.0μm、10μm以上の粒子が1%以下のマイクロカプセルを得た。
【0026】
参考例2
レモン香料250部をスクリプセット#550(スチレン/無水マレイン酸共重合物;モンサント社製)の部分ナトリウム塩の5%水溶液150部およびイオン交換水600部から成る水系に加えた。次に、この混合液を参考例1の分散機を用いてローター回転数1800RPM30秒間分散し分散液を得た。別に37%ホルマリン65部、メラミン25部およびイオン交換水165部から成る混合液を、撹拌下pH9.0に調整し、60℃で約20分間反応し透明なメラミン/ホルムアルデヒド初期重合物を得た。この液を先の分散液に加え、250RPMで撹拌しながら60℃で3時間反応した。続いて残ホルマリン除去のため、系のpHを4.0に調整し、80℃で2時間反応を継続した。平均粒径(ヘロス&ロードス/レーザー回析法)1.5μmのマイクロカプセルが得られた。
【0027】
実施例
参考例2のレモン香料に加えてシリコーン・オイル(1000cps)を用い同様にカプセル化したところ、3.2μmのマイクロカプセルが得られた。
【0028】
比較例1
参考例1に分散機に変えてT.K.オートホモミキサーM型(特殊機化工業社製)で回転数10000RPM1分間分散して、カプセル化を行ったところ、参考例1と異なり平均粒径9.5μMと粒径の大きなカプセルが得られた。;このカプセルを130℃オーブン中で1分加熱したときの体積膨張倍率は約50倍であった。
【0029】
比較例2
実施例の分散機に変えてT.K.オートホモミキサーM型(特殊機化工業社製)で回転数10000RPM1分間分散して、カプセル化を行ったところ、参考例1と異なり平均粒径10.1μmと粒径の大きなカプセルが得られた。
【0030】
比較例3
実施例の分散機に変えてT.K.オートホモミキサーM型(特殊機化工業社製)で回転数10000RPM1分間分散して、カプセル化を行ったところ、平均粒径は6.2μmだが、10μm以上が3.2%と粒径分布が広いものとなった。
【0031】
【発明の効果】
本発明のマイクロカプセルは粒径の調節が容易であり、かつ粒径分布均一であるので、熱膨張性マイクロカプセルや感圧複写紙用マイクロカプセルとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明製造方法を実施するに適したホモジナイザーの部分断面図。
【図2】 本発明に用いるホモジナイザー用スクリーンの一態様図。
【図3】 本発明に用いるホモジナイザー用ローターの一態様図。
【図4】 本発明に用いるホモジナイザー用ローターの一態様図。
【符号の説明】
(1)スクリーン、 (2)ローター、 (3)クリアランス
(4)スリット、 (5)羽根刃、 (6)窓 (7)ハウジング
(8)液の流れ方向

Claims (5)

  1. 平均粒径が3.2μm以上で、10μm以上の粒子が1%以下である、マイクロカプセル
  2. 平均粒径が4〜8μmである、請求項1に記載のマイクロカプセル
  3. 縦型スリット状通液孔(4)を有する円錐状または円錐台状のスクリーン(1)と、その内側にクリアランス(3)を設けて設置した、羽根刃(5)を有する円錐状または円錐台状のローター(2)とを備えたホモジナイザーのローター側より疎水性物質と水性媒体とを供給しつつローター(2)を高速で回転させて、ローターとスクリーンとのクリアランス(3)およびスクリーンの通液孔(4)を通過させることにより、疎水性物質を水性媒体中に乳化分散させ、その乳化分散された疎水性物質をカプセル化して得られる、請求項1または2に記載のマイクロカプセル
  4. マイクロカプセルが、熱膨張性マイクロカプセル、感圧複写紙用マイクロカプセル、感熱シート用マイクロカプセル、香料または化粧料用マイクロカプセル、徐放性マイクロカプセル、難燃剤用マイクロカプセルのいずれかであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロカプセル
  5. 前記カプセル化が、界面重合法、コアセルベーション法、イン・サイチュ法のいずれかの方法によるカプセル化である、請求項3または4に記載のマイクロカプセル
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