JP4076786B2 - 昇華型転写用材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、昇華型染料を用いて記録紙上に画像を形成し、その画像をアイロンなどを用いて布に転写するシステムに用いる記録紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
昇華型染料を用いて記録紙上に画像を形成し、その画像をアイロンなどを用いて布に転写するシステムは、従来から存在し、記録紙上に画像を形成する手段は特に限定されないが、近年広く普及しているインクジェットプリンターを使用することで、デジタルカメラ等で撮影した画像データなどをTシャツの絵柄とするなどの利用が可能となった。
【0003】
昇華型染料を用いたシステムは、水に不溶な染料自体が布に付着するため、転写画像の耐洗濯性が高い特長がある。これに対して、通常の染料を用いたインクジェットプリンターを用い、特殊な記録紙に画像を形成したのち、同様にして布に転写させるシステムも提案されているが、染料自体が布に付着するのではなく、染料を保持した記録紙の塗層が剥離して転写する仕組みとなっているため、転写画像の耐洗濯性が不十分である。
【0004】
このシステム(昇華転写染料使用)用の記録紙として、上質紙をそのまま用いる事も可能だが、布に転写した画像の濃度や画質が不十分であり、本用途に適した記録紙の開発が求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、転写画像の耐洗濯性に優れ、かつ布に転写した画像の濃度や画質が良好な昇華型転写用材料を提供することにある。
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、紙支持体上に、セルロース誘導体およびアルキルナフタレンスルホン酸塩を含有する塗層を設けることで、転写画像の濃度・画質とも満足のいくものが得られることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は次のものを提供するものである。
<1>支持体上に、セルロース誘導体およびアルキルナフタレンスルホン酸塩を含有する塗層を設けたことを特徴とする昇華型転写用材料。
<2>支持体が紙であり、セルロース誘導体がカルボキシメチルセルロースナトリウム塩であることを特徴とする<1>記載の昇華型転写用材料。
<3>透気度が50000秒以上であることを特徴とする<1>又は<2>記載の昇華型転写用材料。
<4>カルボキシメチルセルロースナトリウム塩が、その2%水溶液の25℃における粘度が20mPa・s以下のものであることを特徴とする<2>又は<3>記載の昇華型転写用材料。
<5>塗層を自由落下カーテン方式により設けることを特徴とする、<1>〜<4>の何れか記載の昇華型転写用材料。
<6>支持体上に、25℃、2%水溶液における粘度が20mPa・s以下のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩およびアルキルナフタレンスルホン酸塩を含有する塗層を設ける工程と、該塗層を乾燥する工程と、を有することを特徴とする昇華型転写用材料の製造方法。
<7>塗層を設ける手段が、自由落下カーテン方式によることを特徴とする<6>記載の昇華型転写用材料の製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるセルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(以下「CMCNa」ということがある)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられ、このうちCMCNaが好ましい。CMCNaとしては、塗布液のハンドリング適性のため、低粘度のものが好ましく、25℃、2%水溶液の粘度が20mPa・s以下のものが好ましく、特に
10mPa・s以下のものが好ましい。
【0008】
本発明の昇華型転写用材料において、転写画像の濃度をさらに高くするためには、記録紙の透気度を高める設計とすることが好ましく、透気度5000秒以上、より好ましくは50000秒以上とすることが望ましい。ここで、透気度とは、「J.TAPPI紙パルプ試験方法No.5」に記載の方法により測定された値をいう。
【0009】
また、転写画像濃度や画質を均一にするためには、塗層を均一に塗布ことが必要であり、これには界面活性剤を含有せしめることが有効であるが、界面活性剤の作用により、記録紙の上記の透気度が下がる傾向にある(結果として、転写画像の濃度が低下する)。
しかしながら、界面活性剤として、アルキルナフタレンスルホン酸塩を用いる事で、記録紙の透気度を下げずに均一な塗層を得ることができる。アルキルナフタレンスルホン酸塩の塗層中の含有比率は1〜10質量%が好ましく、1.5〜5質量%がより好ましい。
【0010】
また、セルロース誘導体を含む塗層を設ける手段としては、バー塗布やエアナイフ塗布よりも自由落下カーテン塗布が、同じセルロース誘導体塗布量でも記録紙の透気度を高くでき、好ましい。
【0011】
カーテン塗布する塗布液の粘度は、100〜250mPa・sが好ましく、120〜200mPa・sがより好ましい。塗布液の粘度が低すぎると、記録紙の透気度が低くなる傾向にあり、塗布液の粘度が高すぎると、製造工程上のハンドリング適性悪化(送液圧力等)や泡による面状故障の発生が生じるため、好ましくない。
【0012】
セルロース誘導体の塗布量は多いほど透気度を高くすることができるが、弊害として、記録紙が記録面側にカールしやすくなる。 従って、セルロース誘導体の塗布量は2〜8g/m2が好ましく、3〜6g/m2がより好ましい。
カールを取り除くためには、セルロース誘導体層塗布・乾燥後に、バック面に水などを塗布し、乾燥させることが有効である。 カールをより取り除くためには、バック面に水溶性ポリマーを塗布することが有効である。
【0013】
また、記録面・バック面のSRが高いと、静電気による搬送不良が生じやすくなる。ここでSRとは、JIS−K6911に準拠した方法で測定した値をいう。
従って、バック面のSRは10^8Ω以下であることが好ましい。
記録面のSRを下げる手段としては、セルロース誘導体層への界面活性剤の添加が有効であり、バック面のSRを下げる手段としては、ポリスチレンスルホン酸ソーダを塗布することが有効である。 セルロース誘導体層への界面活性剤の添加は、上述の転写画像の均一性付与にも役立ち、バック面にポリスチレンスルホン酸ソーダを塗布することは、上述のカール矯正にも役立つ。
【0014】
本発明の昇華型転写用材料の支持体としては、水接触角が高いものが記録紙の透気度を高くできるため好ましい。すなわち、蒸留水滴下1秒後の接触角が70°以上が好ましく、90°以上がより好ましい。
また、平滑度が高いほど、転写画像濃度が高くなる傾向にあり、王研式平滑度が20秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましい。ここで、王研式平滑度とは「J.TAPPI紙パルプ試験方法No.5」に記載の方法により測定された値をいう。
【0015】
本発明の昇華型転写用材料は剛度が高いほど、取り扱い性が良いため、好ましい。特に、ロール形態としたときの幅方向の剛度が高いほうが、インクジェットプリンターのカッター適性が良いため好ましい。 幅方向の剛度は30(L3/100)以上が好ましく、40(L3/100)以上がより好ましい。ここで、剛度とはJIS P8143(紙の自重曲げ法によるこわさ試験方法 クラーク法)による値である。
【0016】
記録紙の含水分が低すぎたり、逆に高すぎると、画像の寸度安定性が保てなくなることがある。このため、含水分は5〜9%が好ましく、6〜8%がより好ましい。
【0017】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、透気度と王研式平滑度は、「J.TAPPI紙パルプ試験方法No.5」に記載の方法で、旭精工(株)製デジタル型王研式透気度平滑度試験機EYO.5型により測定された値である。
[実施例1]
CMCNa(第一工業製薬(株)製 セロゲン5A 2%溶液の粘度は6mPa・s以下)の9%水溶液100部に、ブチルナフタレンスルホン酸ソーダの35%水溶液(花王(株)製 ペレックスNBL)を0.65部混合し、塗布液を得た。
塗布液の粘度は200mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
自由落下カーテン方式で、乾燥塗布量が4g/m2となるように、王研式平滑度41秒、透気度23秒、坪量72g/m2、紙厚91μmの上質紙に塗布し、80℃の熱風により乾燥した。 その後、裏面にポリスチレンスルホン酸ソーダの1%水溶液を乾燥塗布量が0.1g/m2となるようにグラビアコーターで塗布し、60℃の熱風により乾燥させ、記録紙を得た。 記録紙の透気度は測定範囲外(99999秒以上)、王研式平滑度は60秒、含水分は7.0%であった。
【0018】
[実施例2]
実施例1のブチルナフタレンスルホン酸ソーダの35%水溶液0.65部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダの25%水溶液0.9部を用いた以外は実施例1と同様にして、記録紙を得た。 記録紙の透気度は6000秒、王研式平滑度は58秒、含水分は7.0%であった。
【0019】
[実施例3]
実施例1の自由落下カーテン方式を、エアナイフ方式に変更した以外は、実施例1と同様にして、記録紙を得た。 記録紙の透気度は20000秒、王研式平滑度は59秒、含水分は7.0%であった。
【0020】
[比較例1]
何も処理しない(セルロース誘導体等を塗布しない) 王研式平滑度41秒、透気度23秒、坪量72g/m2、紙厚91μmの上質紙を記録紙とした。含水分は7.0%に調整した。
【0021】
[比較例2]
実施例1のCMCNa9%水溶液を、ポリビニルアルコール(クラレ(株) PVA105)9%水溶液に変更した以外は実施例1と同様にして、記録紙を得た。 記録紙の透気度は8000秒、王研式平滑度は55秒、含水分は7.0%であった。
【0022】
記録材料の評価
(1)転写画像濃度
昇華性染料を用いたインクジェット用インクカートリッジ(ウペポ&マジ社製DCSD−T inkcartridge)をインクジェットプリンター(カレイダG44)に搭載し、記録紙に用紙設定を「半光沢フォト紙」として印画した。 記録紙は、内径2インチの紙管に記録面外側に巻き付けて使用した。
印画後2時間放置した後、ポリエステルの布に記録面を重ね、記録面の裏側から温度190℃、圧力4.0N/cm2で1分間加熱処理し、布への転写画像を得た。
転写画像の各色ベタ印画部分の濃度をX−ライト濃度計で測定した。
【0023】
(2)転写画像品質
上記(1)で得た画像を観察し、官能評価した。
○:問題なし
△:ややムラがあるが、実用上の問題なし
×:ムラがひどく、問題。
【0024】
(3)記録紙を23℃60%RHの環境下で5時間調湿し、アドバンテスト社製 エレクトロメーター R8340を用いてSRを測定した。
以上の結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
本発明の昇華型転写用材料は、転写画像の耐洗濯性に優れ、かつ布に転写した画像の濃度や画質が良好である。
Claims (7)
- 支持体上に、セルロース誘導体およびアルキルナフタレンスルホン酸塩を含有する塗層を設けたことを特徴とする昇華型転写用材料。
- 支持体が紙であり、セルロース誘導体がカルボキシメチルセルロースナトリウム塩であることを特徴とする請求項1記載の昇華型転写用材料。
- 透気度が50000秒以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の昇華型転写用材料。
- カルボキシメチルセルロースナトリウム塩が、その2%水溶液の25℃における粘度が20mPa・s以下のものであることを特徴とする請求項2又は3記載の昇華型転写用材料。
- 塗層を自由落下カーテン方式により設けることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項記載の昇華型転写用材料。
- 支持体上に、25℃、2%水溶液における粘度が20mPa・s以下のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩およびアルキルナフタレンスルホン酸塩を含有する塗層を設ける工程と、該塗層を乾燥する工程と、を有することを特徴とする昇華型転写用材料の製造方法。
- 塗層を設ける手段が、自由落下カーテン方式によることを特徴とする請求項6記載の昇華型転写用材料の製造方法。
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