JP4076618B2 - 3−クロルシクロアルケンの製造法 - Google Patents

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    • C07C17/093Preparation of halogenated hydrocarbons by replacement by halogens
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、3−クロルシクロアルケン、特に3−クロルシクロヘキセンの製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
3−クロルシクロヘキセンは、種々の有機合成で中間体として用いられる生成物である。例えば、3−クロルシクロヘキセンは加水分解すると3−ヒドロキシシクロヘキセンを形成することができる。この生成物を次に既知の方法で脱水素してフェノールを形成させることができ、或いは脱水して、ポリエステル又はポリアミドの製造で用いられる単量体を製造するのに用いられる中間体であるシクロヘキサジエンを与えることができる。
【0003】
シクロヘキセンに塩素を反応させて3−クロルシクロヘキセンが得られることは既に報告されており、該反応においては、下記化3に示すtrans−1,2−ジクロルシクロヘキサン、3−クロルシクロヘキセン、4−クロルシクロヘキセンが主に生成することが知られている。
【0004】
【化3】
Figure 0004076618
【0005】
例えば、Poutsmaらは、シクロヘキセンに暗所、25℃で塩素を反応させるとtrans−1,2−ジクロルシクヘキサン、3−クロルシクロヘキセン及び4−クロルシクロヘキセンが1.95:1.00:0.60の比率で生成することを報告している。さらに彼らは光照射下での塩素化が暗所での塩素化と同じ生成物比を与えると報告している(J.Am.Chem.Soc.,87(10) P.2161(1965))。本発明者らがこの文献条件でシクロヘキセンの塩素化を行った試験結果によれば、原料シクロヘキセンの転化率が約70%以下の場合trans−1,2−ジクロルシクロヘキサン、3−クロルシクロヘキセン、4−クロルシクロヘキセンの比率は、シクロヘキセンの転化率にほぼ無関係に文献に示されている比率で一定であった。従って目的とする3−クロルシクロヘキセンの選択率は28%であり、収率は20%を越えることがなく低いものであった。さらにシクロヘキセンの転化率を高めた場合には、3個以上の塩素がシクロヘキサン環に導入されたポリ塩素化物の割合が高くなり、かえって3−クロルシクロヘキセンの収率は低下した。
【0006】
他の3−クロルシクロヘキセンを得る合成法としては、tert−ブチルハイポクロリトを塩素化剤に用い、ベンゾイルパーオキシド等のラジカル発生剤存在下でシクロヘキセンを塩素化する方法が報告されている(例えば、Helvetica Chemica Acta P.130(1957))。該方法は、上記の塩素化に比較すると77%と高収率で3−クロルシクロヘキセンを得ることができるが、tert−ブチルハイポクロリトは、工業的に容易に得ることができず、またその合成は、爆発の危険を伴うことが知られている。
【0007】
工業的に容易に得ることができる塩素を用いてシクロアルケンを塩素化することにより3−クロルシクロアルケンを高収率で得る製造方法は、これまで知られていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、シクロアルケンから塩素を用いた塩素化により高収率かつ高選択的に3−クロルシクロアルケンを製造する方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明者らが鋭意検討した結果、驚くべきことに塩素化における塩素濃度を一定の範囲に保ち、かつ反応温度を原料シクロアルケンの融点以上10℃以下の範囲に保つことにより、高収率かつ高選択的に3−クロルシクロアルケンを製造することができることを見出し、本発明に至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1] 化学式(1)で表されるシクロアルケンを塩素化して化学式(2)の3−クロルシクロアルケンを製造するに際し、0.01g/リットル以上2g/リットル以下の塩素濃度に調整した塩素−不活性ガス混合気体を用い、且つシクロアルケンの融点以上10℃以下の温度で塩素化することを特徴とする3−クロルシクロアルケンの製造法、
【0011】
【化4】
Figure 0004076618
【0012】
(nは1から6の整数を表す。)
【0013】
【化5】
Figure 0004076618
【0014】
(nは1から6の整数を表す。)
[2] 塩素化を光照射下で行うことを特徴とする上記[1]の3−クロルシクロアルケンの製造法、
である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明における上記化学式(1)で示すシクロアルケンは、炭素数5から10のシクロアルケンであり、好ましくは炭素数5から8のシクロアルケンである。特に好ましくはシクロヘキセンである。
本発明で用いる塩素は、不活性ガスにより希釈し、塩素濃度が0.01g/リットル以上2g/リットル以下に調整して用いられる。さらには、0.1g/リットル以上1g/リットル以下の濃度が好ましい。0.01g/リットル未満の濃度では、反応時間に長時間を要し工業的な製法とは成りがたい。また2g/リットルを超える濃度では、目的とする3−シクロアルケンの選択性が低下する。希釈に用いるガスとしては、塩素に不活性なものであれば特に制限はないが、窒素、ヘリウム、アルゴン等を用いることができる。
【0016】
さらに本発明では、塩素化の反応温度を所定の範囲内に保つことが重要である。即ちシクロアルケンの融点以上10℃以下の温度に保つことが必要である。好ましくは、−40℃以上0℃以下である。
本発明は、上記の塩素濃度と同時にこの反応温度範囲に保って塩素化反応を行うことにより、目的とする3−シクロアルケンの選択性を高く保つことができることを見出したことに基づくものである。反応温度が10℃より高いとtrans−ジクロロシクロアルカンが多量に生成し、目的物の収量は低下する。またシクロアルケンの融点未満では、塩素化速度が著しく遅くなり工業的製法としては適当でない。
【0017】
原料のシクロアルケンは、無溶媒で反応させても良いし、塩素に対して不活性の溶媒を用いて希釈しても良い。溶媒としては、例えば四塩化炭素、クロロホルム、テトラクロロエチレン等のハロゲン系溶媒や酢酸、二硫化炭素を用いることができる。
塩素の使用量は、シクロアルケン1モルに対して0.1モルから3モルの間が好ましい。更に好ましくは0.5モルから2モルである。より好ましくは0.2モルから1モルである。0.1モルより少ないと十分な転化率を得ることができず、反応混合物からの3−クロルシクロアルケンの単離に多くのエネルギーを要することとなる。また3モルより多い塩素を用いた場合、目的物に加えて2個以上塩素化された化合物が生成し、目的物の収量が低下する。
【0018】
本発明においては、光照射下に塩素化を行うことにより、3−クロルシクロヘキセンの収量をより増やすことができ好ましい。光源としては、塩素は可視部に吸収を持つことから特に制限はないが白色燈、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプなどを用いることができる。反応器は、内部照射型の反応器が光の効率上好ましいが、外部照射でもその効果を得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0020】
【実施例1】
ジムロート冷却管、ガス道入管、温度計、回転子を備えた200mlジャケットつきガラス反応器にシクロヘキセン82.0g(1mol)を仕込みジャケットに−30℃に制御したエタノールを流し、シクロヘキセンを−30℃に保った。0℃に冷却した塩素ガス0.5g/min(155.6ml/min)と、同じく0℃に冷却した窒素ガス250ml/minを反応器手前で予め混合し、反応器に80分間導入した(塩素濃度1.23g/リットル、塩素導入量40g(0.56mol))。反応液温度は、希釈塩素ガス導入直後から上昇した。ジャケットのエタノール温度をコントロールし、反応液温度を−20℃に制御した。塩素導入後反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、シクロヘキセンの転化率は47%であり、生成物中の3−クロルシクロヘキセンは60%、trans−1,2−ジクロルシクロヘキサン26%、4−クロルシクロヘキセン5%、その他は塩素が2個以上置換したポリ塩化シクロヘキサンであった。従って3−クロルシクロヘキセンの収率は28%であった。
【0021】
【実施例2】
100w高圧水銀灯、ジムロート冷却管、ガス道入管、温度計、回転子を備えた200mlジャケットつきガラス製光反応装置にシクロヘキセン82.0g(1mol)を仕込み、反応器の内部から100w高圧水銀灯を照射し、0℃に冷却した塩素ガス0.3g/min(93.4ml/min)と、同じく0℃に冷却した窒素ガス250ml/minを反応器に導入した(塩素濃度0.87g/L)。これ以外は、実施例1と同様に塩素化反応を行った。シクロヘキセンの転化率は46%であり、生成物中の3−クロルシクロヘキセンは65%、trans−1,2−ジクロルシクロヘキサン17%、4−クロルシクロヘキセン6%、残りは塩素が2個以上置換したポリ塩化シクロヘキサンであった。従って3−クロルシクロヘキセンの収率は30%であった。
【0022】
【比較例1】
反応温度を20℃に制御した以外は実施例1と同様に塩素化反応を行った。その結果、シクロヘキセンの転化率は50%であり、生成物中の3−クロルシクロヘキセンは26%、trans−1,2−ジクロルシクロヘキサン61%、4−クロルシクロヘキセン13%であった。従って3−クロルシクロヘキセンの収率は13%であった。
【0023】
【比較例2】
塩素希釈窒素の流量を10ml/minに変えた他は実施例と同様に塩素化反応を行った。その結果、シクロヘキセンの転化率は55%であり、反応生成物中の3−クロルシクロヘキセンは30%、trans−1,2−シクロヘキサン55%、4−クロルシクロヘキセン10%、残りはポリ塩化シクロヘキサンであった。従って3−クロルシクロヘキセンの収率は16.5%であった。
【0024】
【発明の効果】
本発明の塩化方法、即ち導入塩素濃度と反応温度の二つの塩素化反応条件を同時に所定の範囲に制御することにより、有用な合成中間体である3−クロルシクロアルケンを高収率かつ高選択的に製造することができるものである。

Claims (3)

  1. 化学式(1)で表されるシクロアルケンを塩素化して化学式(2)の3−クロルシクロアルケンを製造するに際し、0.01g/リットル以上2g/リットル以下の塩素濃度に調整した塩素−不活性ガス混合気体を用い、且つシクロアルケンの融点以上10℃以下の温度で塩素化することを特徴とする3−クロルシクロアルケンの製造法。
    Figure 0004076618
    (nは1から6の整数を表す。)
    Figure 0004076618
    (nは1から6の整数を表す。)
  2. 塩素化を光照射下で行うことを特徴とする請求項1に記載の3−クロルシクロアルケンの製造法。
  3. −40℃以上0℃以下の温度で塩素化することを特徴とする請求項1または2に記載の3−クロルアルケンの製造法。
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