JP4076045B2 - ポリアミド系抗菌性粉体塗料用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリアミド系抗菌性粉体塗料用組成物に関する。その目的とする所は、変色の少ないポリアミド系抗菌性粉体塗料用組成物を提供することにある。
【0002】
【従来の技術】
金属材料の防錆や各種材料の外観、諸特性改良等のために、表面を塗装することが古くから行われている。有機系塗料としてはエステル、エポキシ、或いはその複合系、ウレタン、アクリル、ポリアミド、フッ素系樹脂等が広く用いられているが、これらは取扱い性のため一般に有機溶剤に溶解または分散した状態で使用されている。しかし、生活環境、作業環境等の点から有機溶剤の使用は好ましくなく、また法的にも規制される方向にある、これを解決するために、脱有機溶剤として、水溶性、水分散系、或いは粉体塗料が開発され、既に実用化されている。
【0003】
他方、これら塗装されたものが不特定多数の人に使用されたり、食品、医療、衛生関係に使用される分野にあっては、抗菌、防かび性が要求される用途が多い。例えばショッピングカート、バスや鉄道車両の手すり、台所用品や風呂場回り等が一例として挙げられる。こういった目的のために抗菌剤や防かび剤を樹脂に添加、配合することは一般に行われている。
【0004】
抗菌、防かび剤としては天然品、有機系化合物、無機系化合物等色々あるが、天然品は沸点の低いものが多く、取扱いが困難である。有機系化合物は樹脂との相溶性は良いが熱安定性の低いものが多く、溶融加工時の分解による性能低下の問題がある。他方、無機系化合物は安定性には優れているが、樹脂への分散不良や水への溶出による耐久性の問題がある。従って、抗菌、防かび剤は配合する樹脂の種類や加工条件、使用条件、目的等に応じて選択することが重要である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ポリアミド系粉体塗料は無機系抗菌剤、特に効果の大きい銀系化合物を使用した場合、変色する問題があり、その使用に制限があった。本発明はポリアミド系粉体塗料において、変色の少ない抗菌性組成物を提供せんとするものであり、特定の抗菌剤を樹脂に配合することによってその目的を達せられることを見出した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ポリアミドを主体とする粉体塗料において、抗菌剤として亜鉛及び/又は銀/亜鉛複合系化合物を配合することを特徴とするポリアミド系抗菌性粉体塗料用組成物である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において「ポリアミド」とは、炭素数6以上のアミノカルボン酸又はラクタムもしくは炭素数6以上のジアミンとジカルボン酸との塩の重合体であるポリアミドをいう。 「炭素数6以上のアミノカルボン酸又はラクタムもしくは炭素数6以上のジアミンとジカルボン酸との塩」としては、例えばω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペラルゴン酸、ωーアミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸;カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウロラクタム等のラクタム;ヘキサメチレンジアミンーアジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩、ウンデカメチレンジアミン−アジピン酸塩、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン−ドデカンジ酸塩等の塩類、等々が例示される。ポリアミドは単一重合体であっても、共重合体であってもよい。また、他樹脂をブレンドしたものでもよい。また、触媒、各種安定剤等を含有していてもよい。この中でポリアミド11及びポリアミド12が好ましい。
【0008】
本発明において「粉体塗料」とは、前記「ポリアミド」樹脂に、場合によって顔料、染料、各種添加剤、例えば熱安定剤、光安定剤、易滑剤、潤滑剤、可塑剤、帯電防止剤、結晶核剤、難燃剤等を、例えば粉体状態で混合、或いは混練後粉体化して塗料用に供するものをいう。流動浸漬塗装法、静電塗装法、溶射塗装法等、塗装方法は問わない。
【0009】
公知の「抗菌剤」としては、天然品(例えばヒノキチオール、キチン、キトサン等)、有機系化合物(例えばイミダゾール系、チアゾール系、ニトリル系、ハロアルキルチオ系、ピリジン系、トリアジン系、ブロム系、四級アンモニウム系等)、無機系化合物(例えばゼオライト系、りん酸ジルコニウム系、りん酸カルシウム系、チタニア系、酸化珪素系、無機イオン交換体等)等が挙げられる。
【0010】
本発明においては、この抗菌剤が亜鉛、及び又は銀/亜鉛複合体化合物である必要がある。これら金属は例えばゼオライトに担持したもの、無機イオン交換体に担持したもの、或いはガラス状無機化合物に担持したもの等が例示される。
【0011】
本発明において、該亜鉛及び又は銀/亜鉛複合系化合物をポリアミド樹脂に配合した組成物の形態は任意である。例えば粉末状態で機械的に混合された組成物、、抗菌剤がポリアミド粉末表面に付着した状態である組成物、抗菌剤がポリアミド粉末表面にコーテイングされた状態である組成物、抗菌剤がポリアミド中に練り込まれた状態である組成物、或いはこれらの形態が複合化された組成物等が例示される。
【0012】
本発明の組成物において、抗菌剤のポリアミドへの配合割合は特に限定されないが、性能と価格のバランスで決められる。一般に0.01%以上、10%以下、好ましくは0.05 %以上5%以下、特に好ましくは0.1%以上、3%以下である。
【0013】
本発明において、該抗菌剤が配合された組成物の製造方法は任意である。例えば抗菌剤とポリアミド粉末とを攪拌混合機で機械的に混合して組成物とする方法、抗菌剤とポリアミド粉末とを混合後、更に衝突エネルギー、せん断エネルギー等によって抗菌剤をポリアミド粒子表面に付着或いは溶着させて組成物とする方法、抗菌剤をポリアミド中に練り込み、それを粉砕して粉体状組成物とする方法等が例示される。勿論これらの方法に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0014】
本発明において、該抗菌剤配合ポリアミド粉末を用いて粉体塗装する方法は限定されず、従来公知の流動浸漬法、静電塗装法、溶射塗装法等採用できる。
【0015】
【作用】
本発明の組成物は、粉体塗料として抗菌性能を有し、かつ塗装工程の加熱工程を経ても変色が少なく、良好な表面特性を与える。本粉体塗料用組成物で塗装されたものの用途としては、公共乗物の手すり、ショッピングカート、食器洗浄機、台所用品、湿気の多い部屋の壁材等に効果を発揮する。
【0016】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれだけに限定されるものでないことは言うまでもない。
尚、実施例と比較例において、塗装及び塗膜の評価は以下の方法で行った。
(1) 塗装
脱錆、脱脂処理した厚さ3.2mmの鉄板にエポキシ系プライマーをスプレーして、乾燥後の塗膜厚さが約10ミクロンになるように塗布した。該鉄板を400Cに設定したオーブン中で約3分40秒加熱し、鉄板の表面温度が280Cになった時点で取り出した。他方抗菌剤を所定割合で配合した粉体塗料を満たした流動床中で約400ミクロン厚さに塗装し、塗膜試験用サンプルとした。
【0017】
(2)塗膜の抗菌性能評価
試験菌(大腸菌、及び黄色葡萄球菌)をNA培地で37Cにて24時間培養した。試料サンプルフィルム(上記塗膜、3cm x 3 cm)上に菌液0.15mlを滴下し、その上にポリエチレンフィルムをかぶせて密着させた。これを35C,90%関係湿度下で保存した。一試料に対し、3個の試験を実施した。またポリエチレンフィルムを対照試料とし、同様に試験した。保存24時間後に生理的食塩水2mlを用いて試料から生残菌を洗い出し、この洗い出し液中の生菌数を寒天平板培養法(35C,2日間培養)により測定した。
【0018】
(3) 塗膜の鉄板への密着性
JIS K5400の8.5.2法に準じて行った。但し隙間間隔は2mmとし、剥がれないで残った桝目の数で表し、25/25は、「一目も剥がれなし」を意味する。
【0019】
(4) 塗膜の色相、白度、光沢度
色相:JIS K5400の7.4.2法に準じて行った。
白度:ASTM E313に従ってWIを測定した。
光沢度:JIS K5400の8.5.2法に準じて行った。但し入射角は60度とした。
【0020】
(5) 塗膜の耐久性
耐水性:塗装した鉄板を23Cに設定した水槽につるし、所定時間処理した。
促進耐候性:JIS K5400の7.6法に準じて行った。
【0021】
【実施例1―2、比較例1、2】
ポリアミド11から成る粉体塗料(エルフ・アトケム社製リルサンファインパウダー)W1482に、銀置換無機イオン交換体(抗菌剤A)、亜鉛系無機ガラス(抗菌剤B),及び亜鉛系無機ガラスに銀置換無機イオン交換体を複合化したもの(抗菌剤C)を夫々所定割合で混ぜ、ヘンシェルミキサーで攪拌混合し、粉体状組成物とした。これを流動浸漬法で鉄板上に塗装した。抗菌剤を配合しなかった塗膜(組成物1)の白度は76.8(比較例1)、抗菌剤Aを0.2%配合したもの(組成物2)の塗膜は54.5(比較例2)で変色が大きかったのに対して、抗菌剤Bを0.2%配合したもの(組成物3)は76.0(実施例1)、抗菌剤Cを0.2%配合したもの(組成物4)の塗膜白度は75.9(実施例2)であり、抗菌剤を配合しなかった組成物1の塗膜と大差ない白度を示した。組成物1及び4の塗膜の密着性はいずれも25/25であり、抗菌剤を配合したことによる密着性の低下は認められなかった。また生菌数は組成物1(抗菌剤無配合)が大腸菌10E6、黄色ぶどう球菌10E5であったのに対して、組成物2(銀系)、組成物3(亜鉛系)、組成物4(銀/亜鉛複合系)共に大腸菌、黄色ぶどう球菌がいずれも10以下であり、優れた抗菌性を示した。
【0022】
【実施例3、比較例3】
ポリアミド11から成る粉体塗料(エルフ・アトケム社製リルサンファインパウダー)グレー3362に、亜鉛系無機ガラスに銀置換無機イオン交換体を複合化したもの(抗菌剤C)を0.3%混ぜ、ヘンシェルミキサーで攪拌混合し、粉体状組成物とした(組成物5)。また比較に抗菌剤を配合しなかったものも準備した(比較例3)。これらを流動浸漬法で鉄板上に塗装し、サンシャインウエザオメーターで1000時間促進耐候性のテストを実施した。色差(デルタE)は共に0.8、光沢度は組成物6からのものが67.4、比較例が64.0であり、抗菌剤を配合することによる変化は殆どなかった。
【0023】
【実施例4、比較例4、5】
ポリアミド11から成る粉体塗料(エルフ・アトケム社製リルサンファインパウダー)W1482に、亜鉛系無機ガラスに銀置換無機イオン交換体を複合化したもの(抗菌剤C)を0.5%混ぜ、ヘンシェルミキサーで攪拌混合した粉体状組成物6を、流動浸漬法で鉄板上に塗装した。塗膜の白度は76.5であり(実施例4)、比較例1と大差なかった。尚、抗菌剤A(銀系)を0.5%配合した塗膜の白度は41.2であり、比較例2よりも更に変色が大きかった(比較例4)。組成物6の塗膜を、抗菌剤を配合しなかった塗膜(組成物1)と共に23Cの水中で1000時間処理した。処理後の生菌数の増減値差(抗菌剤無配合塗膜の菌数に対する抗菌剤配合塗膜の菌数の比の逆数の対数で表す。従って数値の大きい方が効果を維持していることを意味する)は、大腸菌が5、黄色ぶどう球菌が2で、耐久性ある抗菌性を示した。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の組成物は加熱工程を経ても塗膜の変色が少なく、耐久性ある抗菌性塗膜を与える。
Claims (5)
- 抗菌剤を含むポリアミドを主体とする粉体塗料組成物において、
抗菌剤が金属亜鉛を担持した無機ガラスを銀置換無機イオン交換体と複合化したものであることを特徴とする粉体塗料組成物。 - ポリアミドがポリアミド11またはポリアミド12である請求項1に記載の粉体塗料組成物。
- ポリアミドと抗菌剤とを粉末状態で機械的に混合して得られたものである請求項1または2に記載の粉体塗料組成物。
- 抗菌剤がポリアミド粉末表面に付着した状態である請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉体塗料組成物。
- 抗菌剤がポリアミド中に練り込まれた状態である請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉体塗料組成物。
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