JP4075520B2 - 画像形成用カラートナー、カラー画像形成方法及びカラー画像形成装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は画像形成用トナーに関し、さらに詳しく述べると、光定着方式を採用した画像形成方法において好適なカラートナーに関する。本発明のカラートナーは、いろいろな画像形成方式、例えばエレクトログラフィー、エレクトロフォトグラフィー、イオノグラフィーなどを利用した各種の画像形成装置、例えば電子写真複写機、電子写真ファクシミリ、電子写真プリンタ、静電印刷機などにおいて現像剤として有利に使用することができる。本発明は、また、このような画像形成用カラートナーを使用したカラー画像形成方法及びカラー画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複写機、プリンタ、印刷機などで広く普及している電子写真方式による画像形成方法は、一般的には、例えば感光体ドラムなどのような光導電性絶縁体の表面に正又は負の均一な静電荷を与えることから出発する。このような一様帯電工程の後、様々な手段によって光導電性絶縁体に光像を照射することによってその絶縁体上の静電荷を部分的に消去して静電潜像を形成する。例えば、レーザ光を照射して、特定部分の表面電荷を消去することにより、画像情報に応じた静電潜像を光導電性絶縁体上に形成することができる。次いで、光導電性絶縁体上の静電荷の残った潜像部分にトナーと呼ばれる現像剤の微粉体を付着させ、潜像を可視化する。最後に、このようにして得られたトナー像を、印刷物となすため、一般的に、記録紙などの記録媒体に静電的に転写し、定着する。
【0003】
一方、イオノグラフィーによる画像形成方法は、静電体皮膜を有する支持体ドラムを静電荷像担持用誘電体部材として用い、イオン(荷電粒子)発生手段によってイオンを発生させ、そのイオンによって誘電体部材表面に静電荷像を形成し、形成された静電荷像をトナーによって現像し、可視化する。最後に、得られたトナー像を、上記した電子写真方式と同様に、転写及び定着の工程に供して印刷物を得る。
【0004】
上記したような画像形成方法において、定着工程は、共通な技法を使用して行われる。転写後のトナー像の定着には、加圧、加熱あるいはこれらを併用した方法によってトナーを溶融させた後に固化定着させる方法、もしくは光エネルギを照射してトナーを溶融させた後に固化定着させる方法などがあるが、加圧や加熱による弊害のない光を利用した光定着法(フラッシュ定着法とも呼ばれる)が注目を集めている。すなわち、光定着法では、トナーの定着に際してトナーを加圧する必要がないことから、定着ローラなどと接触(加圧)させる必要がなく、したがって、定着工程で画像のニジミやチリなどが発生せず、画像解像度(再現性)の劣化が少ないといった利点がある。また、熱源などにより加熱する必要がないことから、電源を投入してから熱源(定着ローラなど)が所望の温度にまでプリヒートされるまで印字を行えないといったことはなく、電源投入直後から印字を行えるクイックスタートが可能である。さらに、高温熱源を必要としないことから、装置内の温度上昇を適切に回避できるといった利点があり、またシステムダウンにより定着器内において記録紙詰まりが生じた場合などであっても、熱源からの熱によって記録紙が発火してしまうこともない。さらに、のり付き紙、プレプリント紙、厚さの異なる紙など、記録紙の材質や厚さに関係なく定着が可能であるといった利点もある。
【0005】
さらに詳しく説明すると、光定着法においてトナーが記録紙に定着する過程は次の通りである。
【0006】
転写工程で、トナー像が感光体ドラム等から記録用紙上に転写される。この時点では、トナーは粉像のまま記録紙に付着して画像を形成しており、例えば指で擦れば画像は崩れる状態である。次いで、記録紙上のトナー粉像に、例えばキセノンフラッシュ等の閃光を照射する。すると、トナーは閃光の光エネルギを吸収、昇温して軟化し、記録紙に密着する。閃光照射後に温度が低下すると、トナー像は固化し、定着トナー像が完成する。
【0007】
ここで重要なのは、記録紙の折り曲げや、擦り等により、定着トナー像が記録紙から剥離し、画質の劣化が引き起こされること、いわゆる定着不良を防止することである。この目的で、トナーの光吸収能力を高め、定着時にトナーの溶融を促進し、トナーが充分に用紙に浸透して、強固に定着されるよう設計する必要が有る。
【0008】
光定着法に一般的に用いられるキセノンフラッシュランプは、紫外から赤外まで広い領域に渡って発光分布を有するので、また、特に発光強度が強いのは800 〜1000nmの近赤外線領域であるので、定着性能が高いトナーの開発のためには、この領域の光エネルギを効率よく吸収する技術の確立が求められている。特に、近年カラー印刷物の需要が高まっているが、カラートナーに用いられる着色剤は可視光領域の吸収はあるものの、近赤外線領域での光吸収効率は低く、光定着方式で良好な定着性が得られるカラートナーの実用化が求められている。
【0009】
一方、黒色トナーにおいては、着色剤である黒色色剤が近赤外線領域をも比較的良く吸収することから、光定着システムを採用した電子写真装置として既に実用化されているものの、近年の省エネ対応への要求の高まりに対応するため、更なる吸収効率の向上が望まれている。
【0010】
これらの要求に対し、赤外線吸収剤をカラートナーに添加することで定着性の向上を図ることが提案され、以下に列挙するように、関連の特許公報も多数、公開されている:特開昭60-63545号公報(以下、番号のみ)、60-63546、60-57858、60-57857、58-102248、58-102247、60-131544、60-133460、61-132959、WO99/13382、2000-147824、7-191492、2000-155439、6-348056、10-39535、2000-35689、11-38666、11-125930、11-125928、11-125929、11-65167等。例えば特開平7-191492号公報、特開平10-39535号公報、特開平11-65167号公報などには、近赤外領域に光吸収能力を有する化合物、例えばアミニウム塩、酸化インジウム系金属酸化物、酸化スズ系金属酸化物、酸化亜鉛系金属酸化物、スズ酸カドミウム、特定のアミド化合物等を赤外線吸収剤としてトナー中に含有させることでフラッシュ光吸収能力を高めることが開示されている。すなわち、これらの公開特許公報においては、赤外領域の光を吸収する材料を赤外線吸収剤としてトナーに添加することで、カラー化と光定着性を両立しようとしている。しかし、提案されている赤外線吸収剤のいずれもが、十分な定着性をもたらすことができないという問題を依然として有している。また、光定着性を満足させるためにはカラートナー中にこれらの赤外線吸収剤を多量に添加する必要があり、
i)トナーの帯電性に悪影響を与える
ii)トナー色相に悪影響を与える
iii)トナーコストの上昇を招くなどの問題があり、必ずしも要求を満足できるとは限らない。
【0011】
また、特開平11-24319号公報、特開平9-328412号公報、特開平11-24317号公報、特開平7-90310号公報、そして特開平6-228604号公報には、上述のような赤外線吸収剤を使用することに代えて微粒子状添加剤を添加し、その微粒子の表面を多層膜化することで、光の吸収波長をコントロールことが提案されている。しかし、これらの公報のなかでは、光定着機の発光波長に合わせて近赤外線領域で微粒子の吸収波長をコントロールし、光定着トナーの定着性を向上させることなどについて、なんらの教示もなされていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような従来の技術の実情に鑑みなされたもので、その目的は、画像定着方式として光定着方式を使用できるとともに、カラートナーの定着性が良好であり、帯電安定化による長寿命化及び環境安定化が可能な画像形成用カラートナーを提供することにある。
【0013】
本発明の目的は、また、画像定着方式として光定着方式を使用でき、良好なカラートナー定着性に加えて、使用する赤外線吸収剤による帯電量変動が少なく、長期にわたって安定した帯電、現像特性を維持でき、かつ赤外線吸収剤による色相への影響が少ない画像形成用カラートナーを提供することにある。
【0014】
本発明の目的は、さらに、画像定着方式として光定着方式を使用できるとともに、カラートナーの定着性が良好であり、帯電安定化による長寿命化及び環境安定化が可能なカラー画像形成方法を提供することにある。
【0015】
本発明の目的は、さらにまた、光定着方式に基づく画像定着装置を使用できるとともに、カラートナーの定着性が良好であり、帯電安定化による長寿命化及び環境安定化が可能なカラー画像形成装置を提供することにある。
【0016】
本発明の上記した目的や、その他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その1つの面において、光定着方式を採用した画像形成方法において用いられるものであって、バインダ樹脂及び着色剤を少なくとも含むカラートナーにおいて、
前記カラートナーが、下記の群:
(1)コア粒子と、該コア粒子の表面に積層された互いに屈折率を異にする少なくとも2層の被覆層とを含む光吸収性複合微粒子、
(2)次式(I)により表されるアズレン化合物:
【0018】
【化7】
【0019】
(上式において、R1〜R12は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を表し、Xは、陰イオンを表し、そしてnは、正の整数である)、
(3)次式(II)により表されるシアニン化合物:
【0020】
【化8】
【0021】
(上式において、R1〜R5は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は脂肪族炭化水素側鎖を有する芳香族炭化水素基を表し、そしてXは、陰イオンである)、
(4)次式(III)により表されるキノリン化合物:
【0022】
【化9】
【0023】
(上式において、RIは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の置換基を表し、RII及びRIIIは、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を表し、Mは、遷移金属原子を表し、Xは、陰イオンを表し、そしてnは、正の整数である)、
(5)次式(IV)により表されるキノリン化合物:
【0024】
【化10】
【0025】
(上式において、Lは、結合基を表し、RII及びRIIIは、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を表し、Mは、遷移金属原子を表し、Xは、陰イオンを表し、そしてnは、正の整数である)、
(6)次式(V)により表されるポリメチン化合物:
【0026】
【化11】
【0027】
(上式において、R1及びR2は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は脂肪族炭化水素側鎖を有する芳香族炭化水素基を表し、そしてXは、陰イオンである)、
(7)次式(VI)により表されるベンゼン金属錯体:
【0028】
【化12】
【0029】
(上式において、Rは、1価の置換基を表し、A及びBは、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、硫黄原子、セレン原子又は−NHを表し、Mは、遷移金属原子を表し、そしてXは、陽イオンを表す)、及び
(8)光熱変換セラミックス、
から選ばれた少なくとも1種類の添加剤を含んでなることを特徴とする画像形成用カラートナーにある。
【0030】
また、本発明は、そのもう1つの面において、画像露光による静電潜像の形成、現像による静電潜像の可視化、可視化された画像の記録媒体への転写及び転写された画像の定着の各工程を含む電子写真方式により前記記録媒体にカラー画像を形成する方法において、
前記静電潜像の現像工程において、本発明によるカラートナーを含む現像剤を使用し、かつ
前記現像剤の使用により可視化された画像を前記記録媒体に転写した後に定着する工程において、1.0〜6.0J/cm2の発光エネルギー密度で光定着を行うことを特徴とするカラー画像形成方法にある。
【0031】
さらに、本発明は、そのもう1つの面において、静電潜像の形成のための画像露光装置、静電潜像を可視化するための現像装置、可視化された画像を記録媒体に転写するための画像転写装置及び転写された画像を記録媒体に定着させるための画像定着装置を含む、電子写真方式により前記記録媒体にカラー画像を形成する装置において、
前記現像装置に、本発明によるカラートナーを含む現像剤が搭載されており、かつ
前記画像定着装置に、発光エネルギー密度が1.0〜6.0J/cm2である光定着機が備えられていることを特徴とするカラー画像形成装置にある。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明によるカラートナーは、基本的に、光定着方式を採用している画像形成方法及び装置のいずれにおいても現像剤として有利に使用することができる。本発明のカラートナーは、典型的には、エレクトログラフィー、エレクトロフォトグラフィー、イオノグラフィーなどを利用した各種の画像形成方法及び装置、例えば電子写真複写機、電子写真ファクシミリ、電子写真プリンタ、静電印刷機などにおいて有利に使用することができる。なお、以下においては、本発明を最も有利に実施できる電子写真プロセスを参照して本発明を説明するが、本発明は、以下に記載のような特定の電子写真プロセスにのみ限定されるものではないということを理解されたい。また、本発明で「カラートナー」といった場合、それには黒色トナーも含まれるということも理解されたい。
【0033】
電子写真プロセスでは、上記したように、例えば感光体ドラムなどのような光導電性絶縁体の表面に静電荷を与え、さらにこれに光像を照射することによって静電潜像を形成する。次いで、光導電性絶縁体上の潜像部分にトナーからなる現像剤を付着させ、潜像を可視化する。その後、得られたトナー像を記録紙などの記録媒体に静電的に転写し、さらにこれを定着する。本発明では、以下において詳細に説明するように、光エネルギを照射してトナーを溶融させた後に固化定着させる方法、すなわち、光定着法(換言すると、フラッシュ定着法)を採用する。
【0034】
本発明は、その1つの面において、かかる電子写真プロセスやその他の画像形成プロセスの現像工程で現像剤として使用されるカラートナーにある。
【0035】
まず、本発明の実施において採用される現像方法は、特に限定されるものではなく、その都度好適な現像方法を選択し、採用することができる。すなわち、本発明では、その都度、本発明のカラートナーに求められる必須の条件を満足させつつ、それぞれの現像方法に最適な現像剤を調製し、使用することができる。本発明において採用可能な現像方法は、したがって、この技術分野において広く使用されている二成分現像方式及び一成分現像方式の両方を包含する。
【0036】
二成分現像方式は、トナー粒子と、マグネタイト、フェライト、鉄粉、ガラスビーズ等あるいはそれらの樹脂被覆物からなるキャリヤ粒子とを接触させ、摩擦帯電を利用してキャリヤにトナーを付着させ、さらにこのトナーを潜像部分に案内して現像を行う方法である。すなわち、この方式の場合、トナーとキャリヤを組み合わせて現像剤を構成する。なお、キャリヤ粒子の粒径は、通常、30〜500μmであり、また、トナー粒子のキャリヤ粒子に対する混合比は、通常、0.5〜10重量%である。この方式で使用する現像方法には、磁気ブラシ現像法などがある。
【0037】
二成分現像方式におけるキャリヤの使用を省略した方法として、一成分現像方式も公知である。この方式は、キャリヤを使用しないので、トナーの濃度の制御、混合、攪拌、などの機構が不要となり、しかも装置の小型化が可能となるなどの利点を有している。一成分現像方式では、一般的に、トナー層を金属製の現像ローラ上に均一な薄膜として形成し、このトナー層を潜像部分に案内して現像を行うことができる。現像ローラ上のトナー粒子への電荷の付与は、摩擦帯電あるいは静電誘導によって行うことができる。例えば、摩擦帯電に基づく一成分現像方式の場合、接触を伴うBMT方式やFEED方式では磁性トナーを使用し、しかし、同じく接触を伴うタッチダウン方式では非磁性トナーを使用する。なお、電子写真プロセス及びそれにおいて採用される現像方法は、多くの電子写真関連の刊行物が存在しているので、詳細はそれらの刊行物を参照されたい。
【0038】
本発明による画像形成用カラートナーは、基本的に、電子写真プロセスにおいて従来より用いられているカラートナーと同様な組成とすることができる。すなわち、本発明のカラートナーは、一般的には少なくともバインダ樹脂及び着色剤を含むようにして構成される。なお、上記したように電子写真プロセスでは各種の現像方法が採用されているが、本発明のカラートナーは、それが使用されるべき電子写真プロセスにおいて採用されている現像方法に依存して、自体磁性を有している磁性トナーであってもよく、あるいは非磁性トナーであってもよい。
【0039】
本発明のカラートナーにおいて、基材として使用されるバインダ樹脂は、特に限定されるものではないが、好ましくは、天然もしくは合成の高分子物質よりなる熱可塑性樹脂である。バインダ樹脂として好適な熱可塑性樹脂は、所望とする効果などに応じていろいろな分子量やその他の特性を有することができる。例えば、バインダ樹脂の分子量(重量平均分子量)は、通常、約1,000〜100,000の範囲であり、好ましくは約5,000〜50,000の範囲である。また、かかるバインダ樹脂は、通常、約90〜140℃の融点及び約55〜70℃のガラス転移点を有している。
【0040】
本発明の実施に好適なバインダ樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジェン樹脂などを挙げることができる。これらのバインダ樹脂は、単独で使用してもよく、あるいは2種類以上の樹脂を混合又は複合して使用してもよい。また、例えばポリエステル樹脂を使用する時に、所望ならば、線状ポリエステル樹脂と、架橋成分を含むポリエステル樹脂を混合して使用してもよい。
【0041】
本発明の実施に特に好適なバインダ樹脂は、低臭気性などの面から、ポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂についてさらに説明すると、かかるポリエステル樹脂において用いられる酸成分は、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、又はこれらの無水物等を包含し、好ましくはテレフタル酸/イソフタル酸である。これらの酸成分は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。なお、フラッシュ定着の臭いが問題にならない範囲で、他の酸成分を上記酸成分に組み合わせて使用できる。他の酸成分として、例えば、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸等が挙げられ、更には、n-ブチルコハク酸、n-ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキルまたはアルケニルコハク酸、またはこれらの酸の無水物、低級アルキルエステル、その他の二価のカルボン酸も挙げられる。また、ポリエステル樹脂に架橋を施すためには、三価以上のカルボン酸成分も同様に他の酸成分として混合使用可能である。三価以上のカルボン酸成分としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5ーベンゼントリカルボン酸、その他のポリカルボン酸、及びこれらの無水物を挙げることができる。
【0042】
また、このようなポリエステル樹脂は、通常、アルコール成分中の80モル%以上がビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物からなるものであり、好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%である。ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の量が80モル%未満であると、相対的に臭いの発生原因となるモノマー使用量が多くなるため、好ましくない。ここで、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、次のような一般式で表される化合物:
【0043】
【化13】
【0044】
(上式において、Alkは、同一もしくは異なっていてもよく、例えばエチレン基又はプロピレン基のようなアルキレン基を表し、そしてx及びyは、それぞれ、1以上の整数である)を挙げることができる。かかる化合物の例としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0045】
上述のような化合物のなかでも、特に好適な化合物は、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等である。
【0046】
本発明でバインダ樹脂として使用するポリエステル樹脂において、必要に応じて、他のアルコール成分を上記のアルコール成分に組み合わせて使用してもよい。他のアルコール成分として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等、その他の二価のアルコールを挙げることができる。
【0047】
また、他のアルコール成分として、三価以上のアルコールも好適である。かかるアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、その他の三価以上のアルコールを挙げることができる。
【0048】
さらに、かかるポリエステル樹脂を合成する反応の際には、その反応を促進せしめるため、通常使用されているエステル化触媒、例えば酸化亜鉛、酸化第一錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジラウレート等を有利に使用することができる。
【0049】
本発明のカラートナーにおいて、バインダ樹脂中に分散せしめられるべき着色剤は、多くの公知な染料及び顔料を包含し、任意に選択して使用することができる。適当な着色剤としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、例えば、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、フェライト、マグネタイトなど(黒色トナー用)、あるいはアニリンブルー、カルコオイルブルー、ウルトラマリーンブルー、デュポンオイルレッド、アントラキノン、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハロゲン化フタロシアニン、アニライド系化合物、ベンズイミダゾロン、ハンザイエロー、ローダミン6Cレーキ、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、マラカイトグリーン、マラカイトグリーンヘキサレート、マラカイトグリーンオクサレート、オイルブラック、アゾオイルブラック、ローズベンガル、モノアゾ系染顔料、ジスアゾ系染顔料、トリスアゾ系染顔料など(カラートナー用)を挙げることができる。これらの着色剤は、単独で使用してもよく、さもなければ、所望とするトナー色を得るために混合して使用してもよい。
【0050】
上記したような着色剤のトナー中の含有量は、所望とする結果に応じて広く変更することができるというものの、好ましくは、最も良好なトナー特性を得るため、すなわち、印字の着色力、トナーの形状安定性、トナーの飛散などを考慮した場合、通常、トナー100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲であり、好ましくは、0.5〜10重量部の範囲である。
【0051】
本発明の電子写真用カラートナーは、上記したように、バインダ樹脂及び着色剤に追加して、上記した化合物群(1)〜(8)から選ばれる少なくとも1種類の特定の化合物を添加剤として併用することが必須である。ここで添加剤として併用する化合物は、基本的に、赤外線吸収機能を有し、したがって、赤外線吸収性化合物と呼ぶこともできる。もちろん、かかる赤外線吸収性化合物は、単独で使用する以外に、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。以下、それぞれの赤外線吸収性化合物について説明する。
【0052】
(1)コア粒子と、該コア粒子の表面に積層された互いに屈折率を異にする少なくとも2層の被覆層とからなる光吸収性複合微粒子
この光吸収性複合微粒子は、波長が750〜1200nmの範囲に光吸収スペクトルピークを有し、したがって、本願発明では特に、「赤外線吸収性化合物」の一形態として扱うことにする。本発明者らは、この複合微粒子の形態をとる赤外線吸収性化合物をカラートナーに添加した場合には、光定着におけるカラートナーの定着性を従来の赤外線吸収剤に比べて大幅に向上できるばかりでなく、カラートナーを、環境変動に強く、長期にわたり安定した帯電、現像特性を奏するように改善できるということを見い出した。
【0053】
本発明の赤外線吸収性複合微粒子において、コア粒子は、いろいろな材料から構成することができる。コア粒子に好適な材料は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、鉄粉、フェライト粉、懸濁樹脂粒子、ガラスビーズなどである。なお、複合微粒子を混練、粉砕するトナーに添加する場合には、鉄粉またはガラスビーズをコア粒子として使用することが望ましい。トナーを混練する際に熱が加わるので、変形しにくい材料がコア粒子として好ましいからである。
【0054】
また、コア粒子は、いろいろな粒径で使用することができる。コア粒子の粒径は、通常、0.01〜5μmの範囲であるのが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜2μmの範囲である。コア粒子の粒径が0.01μmより小さいと、凝集により良好な被膜ができない。反対に、コア粒子の粒径が5μmを上回ると、一般的に使用されている粒径5〜20μmのトナーに添加することができない。
【0055】
赤外線吸収性複合微粒子の表面には、互いに屈折率を異にする少なくとも2層の被覆層が積層される。本発明では、複合微粒子の表面上に金属酸化物膜、金属膜等を複数層で積層することで、近赤外線を効果的に吸収することができる。この近赤外線吸収の原理としては、フレネルの干渉原理を当てはめることができる。すなわち、複数の膜形成を行うことで、フレネルの干渉原理に従い、一定の波長の光を反射することができるためである。本発明に従い被覆層を複数重ねることで、特定の波長の光のみを選択的に吸収することができる。ただし、実際には、計算どおりではなく、一般の微粒子には凹凸があるため、試行錯誤により膜厚をコントロールしながら実際に近赤外線吸収スペクトルの評価を行う必要があるであろう。このようにして、着色がほとんどなく、750〜1200nmの近赤外線領域に吸収ピークを有する複合微粒子を得ることができる。
【0056】
本発明の赤外線吸収性複合微粒子では、いろいろな材料を被覆層の形成に使用することができる。適当な被覆層形成材料は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、各種の無機材料や金属及びその酸化物等、例えば、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛及びそれらの酸化物、あるいはそれらの複合酸化物を包含する。特に、酸化チタンや酸化珪素の組み合わせが、被覆をつくりやすく、耐熱性が高いことから製造安定性が良好で、最も好ましい。
【0057】
コア粒子を取り囲んで積層される被覆層は、通常、2層もしくは3層の多層構造で構成される。これらの被覆層の膜厚は、互いに独立して、任意に設定できるけれども、それぞれの膜厚を考慮して設定するのが好ましい。被覆層の膜厚は、通常、10〜1000nmの範囲でコントロールすることができるが、鉄粉などをコア粒子として使用して、そのコア粒子の磁力などの特性を残すためには、50〜500mnの膜厚であるのが好ましい。
【0058】
本発明の赤外線吸収性複合微粒子は、いろいろな形態でカラートナー中で使用することができる。換言すると、この複合微粒子は、トナー母体に外添でも内添でも効果がある。この複合微粒子の添加量は、広い範囲で変更することができるというものの、通常、トナー100重量部に対し、内添加の場合には、0.1〜40重量部の範囲であり、好ましくは0.5〜10重量部の範囲であり、また、外添の場合には、0.01〜10重量部の範囲であり、好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。内添加の場合、複合微粒子の添加量が0.1重量部を下回っても、あるいは40重量部を上回っても、定着性が低下してしまう。同様に、外添の場合でも、複合微粒子の添加量が0.01重量部を下回っても、あるいは10重量部を上回っても、定着性が低下してしまう。高添加量の場合において定着性の低下が発生する理由は、微粒子は光があたった時の熱源となるだけで、それ自体は定着しないため、最適添加量があることによる。なお、これらの複合微粒子は、単独で使用してもよく、あるいは2種類以上の微粒子を混合して使用してもよい。
【0059】
本発明のカラートナーには、定着向上のため、常用の無機もしくは有機の赤外線吸収剤を追加的に添加してもよく、そのようにすることが好ましい。追加して使用する赤外線吸収剤も、光定着に使用される光源の波長によっては変動があるが、少なくとも750〜1200nmの波長域において光吸収ピークを示す赤外線吸収性化合物であることが好ましい。無機の赤外線吸収剤の例は、以下に列挙するものに限定されないけれども、酸化イッテルビウム、燐酸イッテルビウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物などである。また、有機の赤外線吸収剤の例は、以下に列挙するものに限定されないけれども、アミニウム塩、ジイモニウム塩、スズ酸カドミウム、メロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、フタロシアニン色素、シアニン色素、ポリメチン色素、特定のアミド化合物、チオールニッケル錯体等の有機化合物などである。これらの常用の赤外線吸収剤は、必要に応じて、2種以上を組み合わせて添加してもよい。
【0060】
さらに、このような赤外線吸収性複合微粒子を使用した本発明の実施には、以下において具体的に説明するけれども、記録紙等の記録媒体上のトナー粉像を定着するための画像定着装置として、少なくとも750〜1200nmの波長領域に赤外領域の発光ピークを有するハロゲン露光装置、フラッシュ露光装置等を有利に使用することができる。
【0061】
(2)前式(I)により表されるアズレン化合物
本発明者らは、前式(I)で表されるアズレン化合物(換言すると、アズレン系色素)は、可視光領域の光吸収性が極めて小さく、かつ800nm 近傍の近赤外領域に吸収を持つため、この化合物を含有したカラートナーは、黒色顔料を含まない場合でも、キセノンフラッシュランプを含めた各種のフラッシュランプの、発光強度が大きい近赤外領域の光エネルギを良く吸収でき、したがって、この化合物を含まないカラートナーに比べ近赤外領域での光吸収が向上し、より少ないフラッシュ発光エネルギで良好な定着性能を得ることができ、定着エネルギの削減に効果があることを見い出した。
【0062】
一般的に、アズレン系色素は赤紫色の色調を有するものが多く、カラートナーへの適用を考慮すると、赤系色トナーや青系色トナーの適用が好適である。しかしながら、アズレン系色素の隠蔽力はあまり高いものではないので、添加量等を最適化することで、赤系色及び青系色以外の色調のトナーについても適用可能である。
【0063】
本発明で赤外吸収目的で使用されるアズレン化合物を示す前式(I)において、R1〜R12は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、例えばアルキル基などを表す。適当なアルキル基は、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2−エチルヘキシル基などを挙げることができる。
【0064】
また、式中のXは、陰イオンであり、例えば、過塩素酸(ClO4 -)、フッ化ホウ素酸(BF4 -)、トリクロル酢酸(CCl3COO-)、トリフルオロ酢酸(CF3COO-)、ピクリン酸((NO2)3C6H2O-)、ヘキサフルオロ砒素酸(AsF6 -)、ヘキサフルオロアンチモン酸(SbF6 -)、ベンゼンスルホン酸(C6H5SO3 -)、エタンスルホン酸(C2H5SO3 -)、燐酸(PO4 2-)、硫酸(SO4 2-) 、塩素(Cl-)などである。
さらに、nは、1以上の正の整数である。
【0065】
上記したようなアズレン化合物は、カラートナーに内添して使用することができる。このアズレン化合物の添加量は、広い範囲で変更することができるというものの、通常、トナー100重量部に対し、0.5 〜5.0重量部の範囲であり、好ましくは0.7〜2.0重量部の範囲である。アズレン化合物の添加量が0.5重量部を下回ると、トナーの近赤外領域の光エネルギ吸収性能が低下し、定着不良を招く恐れがある。一方、アズレン化合物の添加量が5.0重量部を上回ると、定着性能は良好であるものの、帯電不良や色相変化などの不具合を招く恐れがある。なお、これらのアズレン化合物は、単独で使用してもよく、あるいは2種類以上の化合物を混合して使用してもよい。
【0066】
本発明のカラートナーには、定着向上のため、常用の無機もしくは有機の赤外線吸収剤を追加的に添加してもよい。無機の赤外線吸収剤や有機の赤外線吸収剤の例は、前記した通りである。
【0067】
また、先にも説明したように、このような赤外線吸収性アズレン化合物を使用した本発明の実施には、記録紙等の記録媒体上のトナー粉像を定着するための画像定着装置として、少なくとも750〜1200nmの波長領域に赤外領域の発光ピークを有するハロゲン露光装置、フラッシュ露光装置等を有利に使用することができる。
【0068】
(3)前式(II)により表されるシアニン化合物
本発明者らは、前式(II)で表されるシアニン化合物(換言すると、シアニン系色素)は、可視光領域の光吸収性が極めて小さく、かつ750nm 以上の近赤外領域に吸収を持つため、この化合物を含有したカラートナーは、黒色顔料を含まない場合でも、キセノンフラッシュランプを含めた各種のフラッシュランプの、発光強度が大きい近赤外領域の光エネルギを良く吸収でき、したがって、この化合物を含まないカラートナーに比べ近赤外領域での光吸収が向上し、より少ないフラッシュ発光エネルギで良好な定着性能を得ることができ、定着エネルギの削減に効果があることを見い出した。また、このシアニン化合物は、環境変動に強く、長期にわたり安定した帯電、現像特性を奏するということも明らかとなった。
【0069】
本発明で赤外吸収目的で使用されるシアニン化合物を示す前式(II)において、R1〜R5は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2−エチルヘキシル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基など、脂環式炭化水素基、例えばシクロヘキシル基など、芳香族炭化水素基、例えばフェニル基、ナフチル基など、脂肪族炭化水素側鎖を有する芳香族炭化水素基、例えばトリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基などを表す。
【0070】
また、式中のXは、陰イオンであり、例えば、過塩素酸(ClO4 -)、フッ化ホウ素酸(BF4 -)、トリクロル酢酸(CCl3COO-)、トリフルオロ酢酸(CF3COO-)、ピクリン酸((NO2)3C6H2O-)、ヘキサフルオロ砒素酸(AsF6 -)、ヘキサフルオロアンチモン酸(SbF6 -)、ベンゼンスルホン酸(C6H5SO3 -)、エタンスルホン酸(C2H5SO3 -)、燐酸(PO4 2-)、硫酸(SO4 2-) 、塩素(Cl-)、トルエンスルホン酸、硝酸などである。
【0071】
上記したようなシアニン化合物は、カラートナーに内添して使用することができる。このシアニン化合物の添加量は、広い範囲で変更することができるというものの、通常、トナー100重量部に対し、0.1 〜20.0重量部の範囲であり、好ましくは0.5〜3重量部の範囲である。シアニン化合物の添加量が0.1重量部を下回ると、トナーの近赤外領域の光エネルギ吸収性能が低下し、定着性能が低下する。一方、シアニン化合物の添加量が20.0重量部を上回ると、定着性能は良好であるものの、帯電量が低下してカブリが発生する。なお、これらのシアニン化合物は、単独で使用してもよく、あるいは2種類以上の化合物を混合して使用してもよい。
【0072】
本発明のカラートナーには、定着向上のため、常用の無機もしくは有機の赤外線吸収剤を追加的に添加してもよい。無機の赤外線吸収剤や有機の赤外線吸収剤の例は、前記した通りである。
【0073】
また、先にも説明したように、このような赤外線吸収性シアニン化合物を使用した本発明の実施には、記録紙等の記録媒体上のトナー粉像を定着するための画像定着装置として、少なくとも750〜1200nmの波長領域に赤外領域の発光ピークを有するハロゲン露光装置、フラッシュ露光装置等を有利に使用することができる。
【0074】
(4)前式(III)により表されるキノリン化合物
本発明者らは、前式(III)で表されるキノリン化合物(換言すると、キノリン系色素)は、可視光領域の光吸収性が極めて小さく、かつ750nm〜800nmから1200nmに吸収を持つため、このキノリン化合物を含有したカラートナーは、黒色顔料を含まない場合でも、キセノンフラッシュランプ等の、発光強度が大きい近赤外領域の光エネルギを良く吸収するということを見い出した。また、これらのキノリン化合物は、着色剤で着色されたトナーの色相を変化させることが少ないので、実用的なフラッシュ定着カラートナーを得ることができるということ、また、黒色トナーにおいても、この化合物を含まないトナーに比べ近赤外領域での光吸収が向上し、より少ないフラッシュ発光エネルギで良好な定着性能を得ることができ、定着エネルギ削減に効果があるということも明らかとなった。
【0075】
本発明で赤外吸収目的で使用されるキノリン化合物を示す前式(III)において、RIは、水素原子、ハロゲン原子、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は沃素原子、あるいは1価の置換基、例えばメチル基、エチル基等の置換もしくは非置換の炭化水素基などを表す。置換基RIは、必要に応じて、ベンゼン環のその他の位置に結合していてもよい。
【0076】
また、式中のRII及びRIIIは、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、例えばアルキル基などを表す。適当なアルキル基としては、1〜18個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2−エチルヘキシル基などを挙げることができる。なお、置換基−N(RII)(RIII)は、必要に応じて、ベンゼン環のその他の位置に結合していてもよく、さらには、任意の結合基、例えば脂肪族又は芳香族の炭化水素基を介してベンゼン環に結合していてもよい。
【0077】
さらに、式中のMは、遷移金属原子、例えば、Cu、Ni、Co、Cr、Zn、Mn、Fe、Pt、Pbなどである。
さらにまた、式中のXは、陰イオンを表す。適当な陰イオンとしては、例えば、過塩素酸(ClO4 -)、フッ化ホウ素酸(BF4 -)、トリクロル酢酸(CCl 3COO-)、トリフルオロ酢酸(CF3COO-)、ピクリン酸((NO2)3C6H2O-)、ヘキサフルオロ砒素酸(AsF6 -)、ヘキサフルオロアンチモン酸(SbF6 -)、ベンゼンスルホン酸(C6H5SO3 -)、エタンスルホン酸(C2H5SO3 -)、塩素(Cl-)など、あるいは2価の燐酸(PO4 2-)、硫酸(SO4 2-)などが挙げられる。
そして、式中のnは、1以上の正の整数である。
【0078】
これらのキノリン化合物は、単独で使用してもよく、あるいは2種類以上の化合物を混合して使用してもよい。
【0079】
上記したようなキノリン化合物は、カラートナーに内添して使用することができる。このキノリン化合物の添加量は、広い範囲で変更することができるというものの、通常、トナー100重量部に対し、0.1 〜20.0重量部の範囲であり、好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。キノリン化合物の添加量が0.1重量部を下回ると、トナーの近赤外領域の光エネルギ吸収性能が低下し、定着不良が発生する。一方、キノリン化合物の添加量が20.0重量部を上回ると、定着性能は良好であるものの、帯電不良や色相変化などの不具合が発生する。なお、これらのキノリン化合物は、単独で使用してもよく、あるいは2種類以上の化合物を混合して使用してもよい。
【0080】
本発明のカラートナーには、定着向上のため、常用の無機もしくは有機の赤外線吸収剤を追加的に添加してもよい。無機の赤外線吸収剤や有機の赤外線吸収剤の例は、前記した通りである。
【0081】
また、先にも説明したように、このような赤外線吸収性キノリン化合物を使用した本発明の実施には、記録紙等の記録媒体上のトナー粉像を定着するための画像定着装置として、少なくとも750〜1200nmの波長領域に赤外領域の発光ピークを有するハロゲン露光装置、フラッシュ露光装置等を有利に使用することができる。
【0082】
(5)前式(IV)により表されるキノリン化合物
本発明者らは、前式(IV)で表されるキノリン化合物(換言すると、キノリン系色素)は、可視光領域の光吸収性が極めて小さく、かつ750nm〜800nmから1200nmに吸収を持つため、このキノリン化合物を含有したカラートナーは、黒色顔料を含まない場合でも、キセノンフラッシュランプ等の、発光強度が大きい近赤外領域の光エネルギを良く吸収するということを見い出した。また、これらのキノリン化合物は、着色剤で着色されたトナーの色相を変化させることが少ないので、実用的なフラッシュ定着カラートナーを得ることができるということ、また、黒色トナーにおいても、この化合物を含まないトナーに比べ近赤外領域での光吸収が向上し、より少ないフラッシュ発光エネルギで良好な定着性能を得ることができ、定着エネルギ削減に効果があるということも明らかとなった。
【0083】
本発明で赤外吸収目的で使用されるキノリン化合物を示す前式(IV)において、Lは、結合基、例えば脂肪族又は芳香族の炭化水素基、例えばメチル基、エチル基、ブチル基、フェニル基、トリル基などを表す。
また、式中のRII及びRIIIは、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、例えばアルキル基などを表す。適当なアルキル基としては、1〜18個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2−エチルヘキシル基などを挙げることができる。
したがって、置換基−LN(RII)(RIII)としては、例えば、-C6H4-NH(C3H7)、-C6H4-N(CH3)2、-C6H4-NH2、-C6H4-NH(CH3)、-C6H4-N(C2H5)2などが好適である。なお、置換基−LN(RII)(RIII)は、必要に応じて、ベンゼン環のその他の位置に結合していてもよい。
【0084】
さらに、式中のMは、遷移金属原子、例えば、Cu、Ni、Co、Cr、Zn、Mn、Fe、Pt、Pbなどである。
さらにまた、式中のXは、陰イオンを表す。適当な陰イオンとしては、例えば、過塩素酸(ClO4 -)、フッ化ホウ素酸(BF4 -)、トリクロル酢酸(CCl 3COO-)、トリフルオロ酢酸(CF3COO-)、ピクリン酸((NO2)3C6H2O-)、ヘキサフルオロ砒素酸(AsF6 -)、ヘキサフルオロアンチモン酸(SbF6 -)、ベンゼンスルホン酸(C6H5SO3 -)、エタンスルホン酸(C2H5SO3 -)、塩素(Cl-)など、あるいは2価の燐酸(PO4 2-)、硫酸(SO4 2-)などが挙げられる。
そして、式中のnは、1以上の正の整数である。
【0085】
これらのキノリン化合物は、単独で使用してもよく、あるいは2種類以上の化合物を混合して使用してもよい。
【0086】
上記したようなキノリン化合物は、カラートナーに内添して使用することができる。このキノリン化合物の添加量は、広い範囲で変更することができるというものの、通常、トナー100重量部に対し、0.1 〜20.0重量部の範囲であり、好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。キノリン化合物の添加量が0.1重量部を下回ると、トナーの近赤外領域の光エネルギ吸収性能が低下し、定着不良が発生する。一方、キノリン化合物の添加量が20.0重量部を上回ると、定着性能は良好であるものの、帯電不良や色相変化などの不具合が発生する。なお、これらのキノリン化合物は、単独で使用してもよく、あるいは2種類以上の化合物を混合して使用してもよい。
【0087】
本発明のカラートナーには、定着向上のため、常用の無機もしくは有機の赤外線吸収剤を追加的に添加してもよい。無機の赤外線吸収剤や有機の赤外線吸収剤の例は、前記した通りである。
【0088】
また、先にも説明したように、このような赤外線吸収性キノリン化合物を使用した本発明の実施には、記録紙等の記録媒体上のトナー粉像を定着するための画像定着装置として、少なくとも750〜1200nmの波長領域に赤外領域の発光ピークを有するハロゲン露光装置、フラッシュ露光装置等を有利に使用することができる。
【0089】
(6)前式(V)により表されるポリメチン化合物
本発明者らは、前式(V)で表されるポリメチン化合物は、可視光領域の光吸収性が極めて小さく、かつ750nm 以上の近赤外領域に吸収を持つため、この化合物を含有したカラートナーは、黒色顔料を含まない場合でも、キセノンフラッシュランプを含めた各種のフラッシュランプの、発光強度が大きい近赤外領域の光エネルギを良く吸収でき、したがって、この化合物を含まないカラートナーに比べ近赤外領域での光吸収が向上し、より少ないフラッシュ発光エネルギで良好な定着性能を得ることができ、定着エネルギの削減に効果があることを見い出した。また、このシアニン化合物は、環境変動に強く、長期にわたり安定した帯電、現像特性を奏するということも明らかとなった。
【0090】
本発明で赤外吸収目的で使用されるポリメチン化合物を示す前式(V)において、R1及びR2は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2−エチルヘキシル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基など、脂環式炭化水素基、例えばシクロヘキシル基など、芳香族炭化水素基、例えばフェニル基、ナフチル基など、脂肪族炭化水素側鎖を有する芳香族炭化水素基、例えばトリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基などを表す。
【0091】
また、式中のXは、陰イオンであり、例えば、過塩素酸(ClO4 -)、フッ化ホウ素酸(BF4 -)、フッ化燐酸(PF6 -)、トリクロル酢酸(CCl3COO-)、トリフルオロ酢酸(CF3COO-)、ピクリン酸((NO2)3C6H2O-)、ヘキサフルオロ砒素酸(AsF6 -)、ヘキサフルオロアンチモン酸(SbF6 -)、ベンゼンスルホン酸(C6H5SO3 -)、エタンスルホン酸(C2H5SO3 -)、燐酸(PO4 2-)、硫酸(SO4 2-)、塩素(Cl-)、トルエンスルホン酸、硝酸などである。
【0092】
上記したようなポリメチン化合物は、カラートナーに内添して使用することができる。このポリメチン化合物の添加量は、広い範囲で変更することができるというものの、通常、トナー100重量部に対し、0.1 〜20.0重量部の範囲であり、好ましくは0.5〜3重量部の範囲である。ポリメチン化合物の添加量が0.1重量部を下回ると、トナーの近赤外領域の光エネルギ吸収性能が低下し、定着性能が低下する。一方、ポリメチン化合物の添加量が20.0重量部を上回ると、定着性能は良好であるものの、帯電量が低下してカブリが発生する。なお、これらのポリメチン化合物は、単独で使用してもよく、あるいは2種類以上の化合物を混合して使用してもよい。
【0093】
本発明のカラートナーには、定着向上のため、常用の無機もしくは有機の赤外線吸収剤を追加的に添加してもよい。無機の赤外線吸収剤や有機の赤外線吸収剤の例は、前記した通りである。
【0094】
また、先にも説明したように、このような赤外線吸収性ポリメチン化合物を使用した本発明の実施には、記録紙等の記録媒体上のトナー粉像を定着するための画像定着装置として、少なくとも750〜1200nmの波長領域に赤外領域の発光ピークを有するハロゲン露光装置、フラッシュ露光装置等を有利に使用することができる。
【0095】
(7)前式(VI)により表されるベンゼン金属錯体
本発明者らは、前式(VI)で表されるベンゼン金属錯体は、可視光領域の光吸収性が極めて小さく、かつ750nm〜800nmから1200nmに吸収を持つため、このベンゼン金属錯体を含有したカラートナーは、黒色顔料を含まない場合でも、キセノンフラッシュランプ等の、発光強度が大きい近赤外領域の光エネルギを良く吸収するということを見い出した。また、これらのベンゼン金属錯体は、着色剤で着色されたトナーの色相を変化させることが少ないので、実用的なフラッシュ定着カラートナーを得ることができるということ、また、黒色トナーにおいても、この金属錯体を含まないトナーに比べ近赤外領域での光吸収が向上し、より少ないフラッシュ発光エネルギで良好な定着性能を得ることができ、定着エネルギ削減に効果があるということも明らかとなった。
【0096】
本発明で赤外吸収目的で使用されるベンゼン金属錯体を示す前式(VI)において、Rは、任意に存在し得る1価の置換基を表し、その結合位置は任意に変更可能である。必要に応じて、1個のベンゼン環に2個もしくはそれ以上の置換基Rが結合していてもよい。適当な置換基Rの例としては、例えば、アルキル基やアリル基などに代表される飽和または不飽和の鎖状炭化水素基、シクロヘキシル基などに代表される脂環式炭化水素基、ベンジル基、フェニル基、アルケニル基、アルキニル基などに代表される芳香族炭化水素基、アレーン系の炭化水素基(脂肪族−芳香族炭化水素基)、複素環化合物からなる基、そしてこれらの基の水素原子がハロゲン化置換、アルキルエーテル化置換、フェニルエーテル化置換、N−アルキルアミノ置換、N−ジアルキルアミノ置換した基などを挙げることができる。
【0097】
また、式中のA及びBは、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、硫黄原子、セレン原子又は−NHを表す。
さらに、Mは、遷移金属原子、例えばCu、Ni、Co、Cr、Zn、Mn、Fe、Pt、Pbなどを表し、とりわけNiが有用である。
さらにまた、Xは、陽イオン、例えば4級アンモニウムイオンなどを表す。
【0098】
上記したようなベンゼン金属錯体は、カラートナーに内添して使用することができる。この金属錯体の添加量は、広い範囲で変更することができるというものの、通常、トナー100重量部に対し、0.1 〜20.0重量部の範囲であり、好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。金属錯体の添加量が0.1重量部を下回ると、トナーの近赤外領域の光エネルギ吸収性能が低下し、定着不良が発生する。一方、金属錯体の添加量が20.0重量部を上回ると、定着性能は良好であるものの、帯電不良や色相変化などの不具合が発生する。なお、これらの金属錯体は、単独で使用してもよく、あるいは2種類以上の化合物を混合して使用してもよい。
【0099】
本発明のカラートナーには、定着向上のため、常用の無機もしくは有機の赤外線吸収剤を追加的に添加してもよい。無機の赤外線吸収剤や有機の赤外線吸収剤の例は、前記した通りである。
【0100】
また、先にも説明したように、このような赤外線吸収性ベンゼン金属錯体を使用した本発明の実施には、記録紙等の記録媒体上のトナー粉像を定着するための画像定着装置として、少なくとも750〜1200nmの波長領域に赤外領域の発光ピークを有するハロゲン露光装置、フラッシュ露光装置等を有利に使用することができる。
【0101】
(8)光熱変換セラミックス
本発明者らは、上述のような各種の赤外線吸収性化合物に加えて、無機化合物の1種である光熱変換セラミックスも、赤外線吸収性化合物として有用であることを見い出した。
【0102】
本発明の実施に当たって、炭化ジルコニウムが光熱変換セラミックスとして有用である。なお、特開平7−230185号公報には、トナー粒子と、例えばシリカ微粒子、炭化ジルコニウム等の流動化剤とからなる電子写真用トナーの製造方法が開示されているが、ここで流動化剤として使用される炭化ジルコニウムは、トナー粒子に外添して粒子表面に均一に付着させ、トナーかぶりや濃度むらの発生を防止するためのものであり、赤外吸収剤としての機能とは無関係である。
【0103】
本発明の実施に当たって、ハイドロタルサイトもまた光熱変換セラミックス(赤外線吸収性化合物)として有用である。ハイドロタルサイトは、マグネシウムとアルミニウムの化合物であり、天然に産出するものもあれば、工業的にも合成可能である。ハイドロタルサイトは、次のような一般式で表すことができる。
Mg6Al2(ОH)16CО3・4H2О
【0104】
これらの光熱変換セラミックスは、可視光領域の光吸収性が極めて小さく、かつ750nm以上に吸収をもつため、この無機化合物を含有したカラートナーは、黒色顔料を含まない場合でも、キセノンフラッシュランプ等の、発光強度が大きい近赤外領域の光エネルギーをよく吸収する。また、黒色トナーにおいても、この無機化合物を含まないトナーに比べ近赤外領域での光吸収が向上し、より少ないフラッシュ発光エネルギーで良好な定着性能を得ることができ、定着エネルギー削減に効果があるということも明らかとなった。
【0105】
上記したような光熱変換セラミックスは、カラートナーに内添して使用することができる。この光熱変換セラミックスの添加量は、広い範囲で変更することができるというものの、通常、トナー100重量部に対し、0.1〜20.0重量部の範囲であり、好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。光熱変換セラミックスの添加量が0.1重量部を下回ると、トナーの近赤外領域の光エネルギ吸収性能が低下し、定着不良が発生する。一方、光熱変換セラミックスの添加量が20.0重量部を上回ると、定着性能は良好であるものの、帯電不良や色相変化などの不具合が発生する。なお、光熱変換セラミックスは、単独で使用してもよく、あるいは2種類以上の化合物を混合して使用してもよい。
【0106】
本発明のカラートナーには、定着向上のため、常用の無機もしくは有機の赤外線吸収剤を追加的に添加してもよい。無機の赤外線吸収剤や有機の赤外線吸収剤の例は、前記した通りである。
【0107】
また、先にも説明したように、このような赤外線吸収性光熱変換セラミックスを使用した本発明の実施には、記録紙等の記録媒体上のトナー粉像を定着するための画像定着装置として、少なくとも750〜1200nmの波長領域に赤外領域の発光ピークを有するハロゲン露光装置、フラッシュ露光装置等を有利に使用することができる。
【0108】
本発明による画像形成用カラートナーは、上記したような必須の成分、すなわち、バインダ樹脂、着色剤及び赤外線吸収性化合物(1)〜(8)ならびに任意の無機及び(又は)有機の赤外線吸収剤の他に、各種の常用の添加剤を任意に含有することができる。
【0109】
本発明のカラートナーは、トナーの帯電性能を制御するために帯電制御剤を含有することができる。本発明で使用する帯電制御剤としては、トナーに帯電を付与させる能力があれば特に制限されないが、カラートナーにおいてはトナーの色相に与える影響が小さいことを考慮すると、無色、淡色のものが好ましい。好適には、4級アンモニウム塩(無色)、ニグロシン染料(黒色)、トリフェニルメタン誘導体(青色)などを正極性帯電制御剤として、また、ナフトール酸亜鉛錯体(無色)、サリチル酸亜鉛錯体(無色)、ホウ素化合物などを負極性帯電制御剤として、それぞれ用いることができる。また、これらの帯電制御剤は、通常、トナー100重量部に対して0.05〜10重量部の範囲で用いられる。
【0110】
本発明のカラートナーは、また、トナーの定着性をより高める目的で、ワックス類を含有することもできる。適当なワックス類として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、脂肪酸エステル類、パラフィンワックス、カルナバワックス、アミド系ワックス、酸変成ポリエチレンなどを挙げることができる。これらのワックス類は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。ワックス類としては、軟化温度が150 ℃以下のものがとりわけ好ましく、特にバインダ樹脂の溶融軟化温度より低い軟化温度を示すものが好ましい。
【0111】
本発明のカラートナーは、さらに、外添剤を含有することができる。例えば、本発明のカラートナーは、流動性の向上などを目的として、白色の無機微粉末を含有することができる。適当な無機微粉末としては、例えば、シリカ微粉末、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化硅素、窒化硅素などが挙げられるが、シリカ微粉末が特に好ましい。かかる無機微粉末のトナーに混合される割合は、通常、トナー100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲であり、好ましくは0.01〜2.0重量部の範囲である。また、かかる無機微粉末に、シリカ、チタン、樹脂微粉(ポリスチレン、PMMA、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、アルミナ等の公知の材料を併用できる。クリーニング活剤として、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の微粒子粉末を添加してもよい。
【0112】
本発明による画像形成用カラートナーは、上記したようなトナー成分を出発物質として使用して、いろいろな手順に従って調製することができる。例えば、本発明のカラートナーは、着色剤などを分散させた樹脂塊を粉砕、分級して作製する機械的粉砕法、着色剤を取り込みながらモノマーを重合させ、微粒子を作製する重合法などの公知の手法を使用して調製することができる。
【0113】
例えば、本発明のカラートナーを機械的粉砕法で調製する場合、バインダ樹脂、着色剤、本発明の赤外線吸収性化合物、ワックス類、帯電制御剤などのトナー成分を混合した後、得られた混合物をニーダー、押し出し機などを用いて溶融混練する。さらに、溶融混錬物を粗粉砕した後、ジェットミル等で微粉砕し、風力分級機により、目的とする粒径のトナー粒子を得る。さらに、外添剤を添加し、最終的なトナーを完成させる。
【0114】
また、カラートナーを重合法で調製する場合、主に懸濁重合法と乳化重合法が適応できる。懸濁重合法で調製する場合、スチレン、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのモノマ、ジビニルベンゼンなどの架橋剤、ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤、着色剤、帯電制御剤、本発明の赤外線吸収性化合物、ワックス類、重合開始剤などを混合してモノマ組成物を調製する。その後、リン酸三カルシウム、ポリビニルアルコール等の懸濁安定剤、界面活性剤が入った水相中に、前記モノマ組成物を投入し、ローターステータ式乳化機、高圧式乳化機、超音波式乳化機などを用いてエマルジョンを作製した後、加熱によりモノマの重合を行う。重合終了後、粒子の洗浄、乾燥を行い、外添剤を添加して最終的なトナー粒子を得る。
【0115】
また、カラートナーを乳化重合法で調製する場合、過硫酸カリウムなどの水溶性重合開始剤を溶解させた水中に、スチレン、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのモノマ、必要に応じてドレシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤を添加し、攪拌を行いながら加熱、重合を行い樹脂粒子を得る。その後、本発明の赤外線吸収性化合物、着色剤、帯電制御剤、ワックス類などの粉末を樹脂粒子が分散した懸濁液中に添加し、懸濁液のpH、攪拌強度、温度などを調整することにより樹脂粒子と、赤外線吸収性化合物の粉末などをヘテロ凝集させる。さらに、系を樹脂のガラス転移温度以上に加熱し、ヘテロ凝集体を融着させトナー粒子を得る。その後、粒子の洗浄、乾燥を行い、外添剤を添加して最終的なトナー粒子を得る。
【0116】
本発明は、また、本発明のカラートナーを使用したカラー画像形成方法にある。本発明のカラー画像形成方法は、前記したように、
画像露光による静電潜像の形成、
現像による静電潜像の可視化、
可視化された画像の記録媒体への転写、及び
転写された画像の定着の各工程を含むものであり、ただし、従来の方法とは異なり、静電潜像の現像工程において、本発明のカラートナーを含む現像剤を使用する。
【0117】
また、本発明方法では、現像剤の使用により可視化された画像を記録媒体に転写した後に定着する工程において、トナー定着方式として、光定着方式を使用する。転写されたトナー画像の光定着には、フラッシュ光、遠赤外線、ハロゲン光などを光源として有利に使用することができる。フラッシュ光は、可視光から近赤外光までに及ぶ広い波長域の光のなかから、使用するフラッシュ定着装置の仕様に応じて適切なものを使用することができる。特に、フラッシュ光としてキセノンランプを用いて、効率よくトナーを定着することができる。また、キセノンのランプ強度を示すフラッシュ光1回の単位面積当りの発光エネルギーは、発光エネルギー密度で表して、1.0〜6.0J/cm2の範囲であるのが好ましい。発光エネルギー密度は、1.0J/cm2より小さすぎると定着しないし、反対に6.0J/cm2より大きすぎるとトナーボイドや用紙焦げの問題が発生する。なお、発光エネルギー密度: S(J/cm2)は、以下の式で表される。
【0118】
S=((1/2)×C×V2)/(u×l)/(n×f)
ランプ本数 :n(本)
点灯周波数: f(Hz)
入力電圧: V(V)
コンデンサ容量: C(μF)
プロセス搬送速度: u(mm/s)
印字幅: l(mm)
【0119】
また、フラッシュ光の発光時間は、フラッシュ光の発光エネルギー密度などに応じて広く変更することができるというものの、通常、500〜3,000μ/sの範囲であることが好ましい。フラッシュ光の発光時間が短かすぎると、フラッシュ定着率を上昇させるのに十分な程度にトナーを溶融させることができない。また、フラッシュ光の発光時間が長すぎると、記録媒体上に定着したトナーの過熱を引き起こすおそれがある。
【0120】
さらに、カラートナーの良好な定着とともに長期安定性を得るため、フラッシュ定着にハロゲン光定着を併用することも推奨される。
【0121】
さらに具体的に説明すると、本発明によるカラー画像形成方法は、上記のような相違点を除いて、基本的には従来の画像形成方法と同様にして実施することができる。好ましい一例を示すと、画像露光による静電潜像の形成は、例えば感光体ドラムなどのような光導電性絶縁体の表面に正又は負の均一な静電荷を与えた後、様々な手段によって光導電性絶縁体に光像を照射することによってその絶縁体上の静電荷を部分的に消去して静電潜像を形成することによって行うことができる。例えば、レーザ光を照射して、特定部分の表面電荷を消去することにより、画像情報に応じた静電潜像を光導電性絶縁体上に形成することができる。
【0122】
次いで、形成された静電潜像を現像により可視化する。これは、光導電性絶縁体上の静電荷の残った潜像部分に本発明のトナーを含む現像剤の微粉体を付着させることによって行うことができる。
【0123】
現像工程の完了後、可視化された画像を記録媒体へ転写する。これは、得られたトナー像を、一般的に、記録紙などの記録媒体に静電的に転写することによって行うことができる。
【0124】
最後に、本発明に従い、上記の転写工程で転写されたトナー像をフラッシュ定着により溶融させ、記録媒体に定着させる。このような一連の処理工程を経て、目的とする複製品(印刷物など)を得ることができる。
【0125】
電子写真法に基づく画像形成方法は、この技術分野において広く知られているので、ここでの詳細な説明は省略する。また、電子写真法に代えてその他の画像形成法、例えばイオノグラフィなどを適用しても、満足し得る効果を得ることができる。
【0126】
本発明はまた、カラー画像形成装置にある。本発明のカラー画像形成装置、典型的には電子写真装置もこの技術分野において広く知られているので、ここでの詳細な説明を省略する。参考までに、本発明において有利に使用することのできる電子写真装置の一例を図1に示す。
【0127】
図1に示す電子写真装置では、本発明のカラートナーにキャリヤを混合して調製した現像剤11が攪拌スクリュー12で攪拌され、摩擦帯電せしめられる。摩擦帯電した現像剤11は所定の循環経路にそって案内され、現像ローラ13に達し、さらに感光ドラム14に搬送される。感光ドラム14は、潜像形成方式によっていろいろであるけれども、光導電材料である感光体、例えば、ポリシラン、フタロシアニン、フタロポリメチンなどの有機感光体、又はセレン、アモルファスシリコン等の無機感光体や、絶縁体から形成することができる。特に、アモルファスシリコン感光体が長寿命の面から好ましい。
【0128】
現像剤11が搬送されてきた感光ドラム14の表面では、そのドラムの回転方向に関して後方に位置する前帯電部15によりドラムの帯電が行われ、さらに、露光装置(図示せず)からの光像により、静電潜像が形成されている。ここで、前帯電部15は、コロトロン、スコロトロンなどのコロナ放電機構やブラシ帯電器などの接触帯電機構から構成することができる。また、露光装置は、レーザー光学系、LED光学系、液晶シャッタ光学系などの各種の光学系を光源に使用して構成することができる。したがって、感光ドラム14に搬送されてきた摩擦帯電した現像剤11がそのドラムの表面の静電潜像に付着し、可視化されたトナー像が得られる。
【0129】
感光ドラム14上のトナー像11はドラムの回転により転写部16に搬送され、ここで記録媒体(紙やフィルムなど)21へ転写される。転写部16は、転写に利用する力、すなわち、静電気力、機械力、粘着力などに依存して、いろいろな構成を採用することができる。例えば、静電気力に基づいたものとしては、コロナ転写装置、ロール転写装置、ベルト転写装置などを挙げることができる。
【0130】
記録媒体21は矢印方向に案内されていて、フラッシュ定着装置18の下方においてトナー像の定着が行われる。記録媒体21上のトナー像はフラッシュ定着装置18によって加熱、溶融せしめられ、さらに記録媒体21の内部にまで浸透して固着される。定着の完了により、定着画像22が得られる。また、図示しないが、フラッシュ定着装置にハロゲン光定着装置を併用するなどの変更も可能である。
【0131】
感光ドラム14上のトナー像11で上記した転写工程に関与しないまま残留したトナーは、除電器(図示せず)を経た後、クリーニング装置(図示の場合、ブレード)17で感光ドラム14の表面から除去される。クリーニング装置は、上記したブレードの他、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナなどから構成することができる。
【0132】
【実施例】
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことは、言うまでもない。
【0133】
調製例1
(1)キャリヤの調製
直径60μmのマグネタイト粒子をキャリヤ芯材とし、その表面にアクリル樹脂(商品名:BR-85、三菱レイヨン社製)を流動床を用いてコーティングし、乾燥した。キャリヤ芯材に対するコーティング量は、2重量%であった。アクリル樹脂によって被覆されたマグネタイトキャリヤが得られた。
【0134】
(2)赤外線吸収性複合微粒子の調製
下記の第1表に要約して示す2種類の微粒子サンプルを次のようにして調製した。
サンプル1の調製:
1層目:チタニアコーティング
シリカビーズ(平均粒径1μm、日本触媒製)1kgをエタノール10リッター中に分散し、ウォータバスにて55℃に保持した。これにチタンエトキシド1kgとアンモニア水(30%濃度)500g及び水1kgを添加し、撹拌しながら2時間反応させた。シリカビーズを被覆したチタニアコーティングを乾燥し、加熱処理を行った。洗浄、濾過、そして100℃で3時間の乾燥の後、加熱処理を650℃で30分間行った。チタニアコートシリカビーズ(微粒子A)が得られた。
2層目:シリカコーティング
得られた微粒子Aの1kgをエタノール10リッター中に分散し、ウォータバスにて55℃に保持した。これにシリコンエトキシド1kgとアンモニア水(30%濃度)500g及び水1kgを添加し、撹拌しながら2時間反応させた。シリカコーティングを乾燥し、加熱処理を行った。洗浄、濾過、そして100℃で3時間の乾燥の後、加熱処理を650℃で30分間行った。シリカ及びチタニアコートシリカビーズ(微粒子B)が得られた。
3層目:チタニアコーティング
得られた微粒子Bの1kgをエタノール10リッター中に分散し、ウォータバスにて55℃に保持した。これにチタンエトキシド1kgとアンモニア水(30%濃度)500g及び水1kgを添加し、撹拌しながら2時間反応させた。チタニアコーティングを乾燥し、加熱処理を行った。洗浄、濾過、そして100℃で3時間の乾燥の後、加熱処理を650℃で30分間行った。シリカ、チタニアの複数コートシリカビーズ(微粒子C)が得られた。
4層目:シリカコーティング
得られた微粒子Cの1kgをエタノール10リッター中に分散し、ウォータバスにて55℃に保持した。これにシリコンエトキシド1kgとアンモニア水(30%濃度)500g及び水1kgを添加し、撹拌しながら2時間反応させた。シリカコーティングを乾燥し、加熱処理を行った。洗浄、濾過、そして100℃で3時間の乾燥の後、加熱処理を650℃で30分間行った。900nmに赤外線吸収最大波長を有するシリカ、チタニアの複数コートシリカビーズ(サンプル1)が得られた。
サンプル2の調製:
前記サンプル1の調製の手法を繰り返した。しかし、本調製例では、コアとなる微粒子として、シリカビーズに代えてカルボニル鉄粉のビーズ(平均粒径1μm、BASF製)を使用した。950nmに赤外線吸収最大波長を有するシリカ、チタニアの複数コートシリカビーズ(サンプル2)が得られた。
【0135】
(3)ポリエステル樹脂の調製
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン1.0モル、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン9.0モル、テレフタル酸4.6モル、イソフタル酸4.6モル、及び5.0gのジブチル錫オキシドをガラス製の4つ口フラスコに入れ、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー、及び窒素導入管を取り付けた。4つ口フラスコ中の反応混合物を、マントルヒーター中、窒素気流下で、220℃にて3時間、240℃にて3時間、さらに同温度で60mmHgの減圧にて2時間反応せしめて反応を終了した。重量平均分子量が5,000、ガラス転移温度が65℃、軟化点が110℃、そして酸価が20であるポリエステル樹脂が得られた。
【0136】
(4)カラートナーの調製
下記の第3表に記載のような異なる組成のフラッシュ定着用赤色カラートナーを調製した。表中、併用したその他の赤外線吸収剤(市販品)は、下記の第2表にまとめて記載してある。
【0137】
トナーSCR-1の調製:
下記の第3表に記載のように、上記の工程で調製したサンプル1を0.1重量部、ポリエステル樹脂を95重量部、顔料:イルガライドRED 3RS(チバガイギ社製)を5重量部、帯電制御剤(CCA100、 中央合成化学製)を1重量部、ワックス:NP105(三井化学)を0.5重量部、それぞれトナー成分として用意した。トナー成分の全量をヘンシェルミキサーに投入し、予備混合を行った後、エクストルーダーにより溶融混練した。次いで、得られた混合物を冷却固化した後、ハンマーミルで粗粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕した。得られた微粉末を気流分級機にて分級を行い、体積平均粒径が8.5μmの赤色着色微粒子を得た。引き続いて、得られたトナー微粒子に、疎水性シリカ微粒子(商品名:H3004、クラリアントジャパン社製)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーで外添処理を行った。トナーSCR-1が得られた。
【0138】
トナーSCR-2〜SCR-12の調製:
材料とその混合割合を下記の第3表に記載のものに変更した相違点を除いて、トナーSCR-1の調製と同様な手法に従ってトナーを調製した。それぞれ体積平均粒径が8.5μmである赤色着色微粒子を得た後、外添処理を行った。トナーSCR-2〜SCR-12が得られた。
【0139】
トナーSCR-13の調製
下記の第3表に記載のように、上記の工程で調製したポリエステル樹脂を95重量部とイルガライドRED 3RS(チバガイギ製)を5重量部、帯電制御剤(CCA100、 中央合成化学製)を1重量部、NP105(三井化学製)を0.5重量部、それぞれトナー成分として用意した。トナー成分の全量をヘンシェルミキサーに投入し、予備混合を行った後、エクストルーダーにより溶融混練した。次いで、得られた混合物を冷却固化した後、ハンマーミルで粗粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕した。得られた微粉末を気流分級機にて分級を行い、体積平均粒径が8.5μmの赤色着色微粒子を得た。引き続いて、得られたトナー微粒子に、疎水性シリカ微粒子(商品名:H3004、クラリアントジャパン社製)の0.5重量部と上記の工程で調製したサンプル1の0.01重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで外添処理を行った。トナーSCR-13が得られた。
【0140】
トナーSCR-14〜SCR16の調製
サンプル1の外添量を下記の第3表に記載のものに変更した相違点を除いて、トナーSCR-13の調製と同様な手法に従ってトナーを調製した。それぞれ体積平均粒径が8.5μmである赤色着色微粒子を得た後、外添処理を行った。トナーSCR-14〜SCR-16が得られた。
【0141】
トナーSCR-17の調製
材料とその混合割合を下記の第3表に記載のものに変更した相違点を除いて、トナーSCR-13の調製と同様な手法に従ってトナーを調製した。体積平均粒径が8.5μmである赤色着色微粒子を得た後、外添処理を行った。トナーSCR-17が得られた。
【0142】
実施例 1 〜16及び比較例 1
上記のようにして調製したトナーSCR-1〜SCR-17を使用してフラッシュ定着方式で印字試験を行った。
【0143】
それぞれのトナーと上記のようにして調製したキャリヤを4.5重量%:95.5重量%の比で混合して現像剤を調製した。この現像剤をフラッシュ定着用に設計され、キセノン光源を定着光源に装備した高速プリンタ装置(品番PS2160、富士通社製)の改造機に搭載した後、記録媒体として普通紙(NIP−1500LT、小林記録紙)を使用して、発光エネルギ(光定着エネルギ)2.2J/cm2及び印刷速度8,000ライン/minで線画の印字を行った。使用したキセノン光源の発光スペクトルは、図2に模式的に示す通り、700〜1500nmの波長範囲に高い発光強度を有するものであり、また、発光時間は1000μ/sであった。得られた印刷物のそれぞれを、下記の項目:
(1)帯電量(高温高湿HH及び低温低湿LL)
(2)帯電量の比率(帯電保持性)
(3)トナーの定着率(%)
(4)定着性の判定
(5)印字濃度
(6)かぶり
に関して、次のような指針に従って評価を行った。
【0144】
帯電量の測定:
トナー像が定着させられた普通紙の表面で、マグネットブローオフ法により帯電量を測定した。使用した測定装置は、ブローオフ帯電量測定機であり、測定条件は、高温高湿HH(32℃、80%RH)とLL低温低湿(15℃、20%RH)の2種類とした。帯電量の絶対値は15〜25μC/gが最適で、25μC/g以下では印字濃度が薄く、15μC/g以下ではかぶりが発生する。
【0145】
帯電保持性の評価:
HH帯電量とLL帯電量の比率を求め、帯電保持性の評価尺度とした。帯電保持性が70%以上であるものを良好(○)とした。
【0146】
トナーの定着率の測定:
トナー像が定着させられた普通紙上の画像印字濃度を光学濃度(ステータスA濃度)として測定した。次いで、普通紙上のトナー像上に粘着テープ(スコッチTMメンディングテープ、住友スリーエム社製)を軽く貼り付けた後、直径100mm及び厚さ20mmの鉄製円柱ブロックをテープ上を密着状態で転がし、引き続いてテープを剥離した。テープ剥離後の普通紙上の画像印字濃度(光学濃度)を再び測定した。テープ剥離の前の光学濃度を100として、テープ剥離後における光学濃度をパーセンテージで算出し、これを「トナーの定着率」(%)とした。なお、光学濃度の測定には、マクベスPCMメータを使用した。
【0147】
定着性の判定:
それぞれのトナーの定着率(%)の大きさから、下記の基準に従って定着性の良否を判定した。
【0148】
印字濃度の測定:
トナー像が定着させられた普通紙上の画像印字濃度を、マクベスPCMメータを使用して光学濃度(ステータスA濃度)として測定した。測定条件は、高温高湿HH(32℃、80%RH)とLL低温低湿(15℃、20%RH)の2種類とした。印字濃度が1.3以上であるものを良好(○)とした。
【0149】
かぶりの測定:
トナー像が定着させられた普通紙上のかぶり(背景部よごれ)の発生状態を目視にて確認した。かぶりの発生が認められないものを良好(○)、わずかなかぶりの発生が認められたものを可(△)、許容し得ない程度のかぶりの発生が認められたものを不可(×)とした。
【0150】
下記の第3表は、上記のような測定及び評価の結果をまとめたものである。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
【表3】
【0154】
【表4】
【0155】
実施例17
本例では、フラッシュ定着用青色カラートナーを調製し、フラッシュ定着方式で印字試験を行った。
【0156】
バインダ樹脂として、テレフタル酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド化合物を必須構成モノマとする酸価30mg/KOH、軟化温度114 ℃のポリエステル樹脂を用い、これに対してフタロシアニン顔料(B2G 、クラリアント社製)を5重量%、カリックスアレン化合物(E-89 、オリエント社製)を3重量%、前記調製例1で調製した微粒子(サンプル1)を2重量%添加し、溶融混練後に微粉砕することにより平均粒径8.5μmのトナー母体を得た。
【0157】
次いで、得られたトナー母体に外添剤として疎水性シリカ(H-2000、クラリアント製)0.35重量部を添加し、青色着色トナーを得た。このトナーを粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度4.5%で混合して現像剤を調製した。この現像剤の帯電量をブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-20μC/g の帯電量を示した。
【0158】
引き続いて、得られた現像剤を高速プリンタ装置(品番PS2160、富士通製)の改造機に搭載し、700 〜1500nmの波長範囲に高い発光強度を有するキセノンフラッシュ光を照射して普通紙(NIP-1500LT 、小林記録紙) に定着させ印刷画像を得た。
【0159】
得られた印刷画像について、以下のように定着性の調査を行った。先ず、1インチ(25.4mm)四方の印刷画像において光学濃度(OD1)を測定し、その後、同じ印刷画像上に粘着テープ(スコッチメンディングテープ、住友3M製)を貼り、しかる後、粘着テープを引き剥がし、剥離後の印刷画像の光学濃度(OD2)を再び測定した。なお、光学濃度の測定にはマクベスPCMメータを使用した。次式より定着率を算出した。
【0160】
定着率(%) = OD2/OD1 × 100
その結果、定着率95%の優れた定着性を有することが明らかとなった。また、この印刷画像においては、かぶりなどの背景部汚れが少ない良好な画質が得られた。
【0161】
実施例18
本例では、フラッシュ定着用赤色カラートナーを調製し、フラッシュ定着方式で印字試験を行った。
【0162】
前記実施例17に記載の手法を繰り返したが、本例では、フタロシアニン顔料に代えて、ナフトールアゾ顔料(KET RED 338、DIC製)を4重量%添加するとともに、補助的な赤外線吸収剤としてリン酸イッテルビウムを1重量%添加した。
【0163】
前記実施例17と同様な手法でトナーの混練混合、粉砕、外添作業を行って赤色着色トナーを調製した後、このトナーを粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度4.5%で混合して現像剤を調製した。この現像剤の帯電量をブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-22μC/g の帯電量を示した。
【0164】
さらに、得られた現像剤を前記実施例17と同様な印刷及び評価試験に供したところ、定着率90%の優れた定着性を有することが明らかとなった。また、印刷画像においては、かぶりなどの背景部汚れが少ない良好な画質が得られた。
【0165】
実施例1 9
本例では、フラッシュ定着用青色カラートナーを調製し、フラッシュ定着方式で印字試験を行った。
【0166】
バインダ樹脂として、テレフタル酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド化合物を必須構成モノマとする酸価30mg/KOH、軟化温度114 ℃のポリエステル樹脂(重量平均分子量:7,000、ガラス転移温度:58℃)を用い、これに対してフタロシアニン顔料(B2G 、クラリアント社製)を5重量%、カリックスアレン化合物(E-89 、オリエント社製)を3重量%、次式により表されるアズレン系色素:
【0167】
【化14】
【0168】
(λmax=760nm)を2重量%添加し、溶融混練後に微粉砕することにより平均粒径8.4μmのトナー母体を得た。
【0169】
次いで、得られたトナー母体に外添剤として疎水性シリカ(H-2000、クラリアント製)0.35重量部を添加し、青色着色トナーを得た。このトナーを粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度4.5%で混合して現像剤を調製した。この現像剤の帯電量をブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-20μC/g の帯電量を示した。
【0170】
引き続いて、得られた現像剤を高速プリンタ装置(品番PS2160、富士通製)の改造機に搭載し、700 〜1500nmの波長範囲に高い発光強度を有するキセノンフラッシュ光を照射して普通紙(NIP-1500LT 、小林記録紙) に定着させ印刷画像を得た。
【0171】
得られた印刷画像について、以下のように定着性の調査を行った。先ず、1インチ(25.4mm)四方の印刷画像において光学濃度(OD1)を測定し、その後、同じ印刷画像上に粘着テープ(スコッチメンディングテープ、住友3M製)を貼り、しかる後、粘着テープを引き剥がし、剥離後の印刷画像の光学濃度(OD2)を再び測定した。なお、光学濃度の測定にはマクベスPCMメータを使用した。次式より定着率を算出した。
【0172】
定着率(%) = OD2/OD1 × 100
その結果、定着率95%の優れた定着性を有することが明らかとなった。また、この印刷画像においては、かぶりなどの背景部汚れが少ない良好な画質が得られた。
【0173】
比較例2
前記実施例19に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、アズレン系色素の添加を省略した。
【0174】
得られた現像剤の帯電量を前記実施例19と同様にブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-20μC/gであり、実施例19のトナーと遜色のないことが判明した。この結果から、実施例19で使用したアズレン系色素がトナーの帯電性に与える影響は小さいということが考察された。
【0175】
引き続いて印刷試験を前記実施例19と同様に行ったところ、得られた印刷画像は指で擦ると画像が剥れてしまう程度の定着性であり、とうてい実用に耐えることができない品質をトナーが有していることが判明した。定着率は、30%以下であった。この結果から、実施例19で使用したアズレン系色素は、トナーのフラッシュ定着性に専ら寄与するということが考察された。
【0176】
調製例2
(1)キャリヤの調製
前記調製例1と同様にしてマグネタイトキャリヤを調製した。
(2)ポリエステル樹脂の調製
前記調製例1と同様にして、重量平均分子量が5,000、ガラス転移温度が65℃、軟化点が110℃、そして酸価が20であるポリエステル樹脂を調製した。
【0177】
(3)カラートナーの調製
下記の第5表に記載のような異なる組成のフラッシュ定着用赤色カラートナーを調製した。表中、赤外線吸収剤として使用した本発明のシアニン化合物は、下記の第4表にまとめて記載してある。なお、このシアニン化合物に併用したその他の赤外線吸収剤(市販品)については、上記の第1表を参照されたい。
【0178】
トナーSCR-1Cの調製:
下記の第5表に記載のように、本発明のシアニン化合物(CY-10-1)を0.05重量部、ポリエステル樹脂を89重量部、顔料:イルガライドRED 3RS(チバガイギ社製)を10重量部、帯電制御剤(CCA100、 中央合成化学製)を1重量部、ワックス:NP105(三井化学)を0.5重量部、それぞれトナー成分として用意した。トナー成分の全量をヘンシェルミキサーに投入し、予備混合を行った後、エクストルーダーにより溶融混練した。次いで、得られた混合物を冷却固化した後、ハンマーミルで粗粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕した。得られた微粉末を気流分級機にて分級を行い、体積平均粒径が8.5μmの赤色着色微粒子を得た。引き続いて、得られたトナー微粒子に、疎水性シリカ微粒子(商品名:H3004、クラリアントジャパン社製)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーで外添処理を行った。トナーSCR-1Cが得られた。
【0179】
トナーSCR-2C〜SCR-10Cの調製:
材料とその混合割合を下記の第5表に記載のものに変更した相違点を除いて、トナーSCR-1Cの調製と同様な手法に従ってトナーを調製した。それぞれ体積平均粒径が8.5μmである赤色着色微粒子を得た後、外添処理を行った。トナーSCR-2C〜SCR-10Cが得られた。
【0180】
実施例20〜27及び比較例3〜4
上記のようにして調製したトナーSCR-1C〜SCR-10Cを使用してフラッシュ定着方式で印字試験を行った。印字試験の手順は、前記実施例1〜16で採用したものに同じである。
【0181】
それぞれのトナーと上記のようにして調製したキャリヤを4.5重量%:95.5重量%の比で混合して現像剤を調製した。この現像剤を高速プリンタ装置(品番PS2160、富士通社製)の改造機に搭載した後、記録媒体として普通紙(NIP−1500LT、小林記録紙)を使用して、発光エネルギ(光定着エネルギ)2.2J/cm2及び印刷速度8,000ライン/minで線画の印字を行った。得られた印刷物のそれぞれを、下記の項目:
(1)帯電量(高温高湿HH及び低温低湿LL)
(2)帯電量の比率(帯電保持性)
(3)トナーの定着率(%)
(4)定着性の判定
(5)印字濃度
(6)かぶり
に関して評価したところ、下記の第5表に記載のような測定及び評価の結果が得られた。
【0182】
【表5】
【0183】
【表6】
【0184】
実施例28
本例では、フラッシュ定着用青色カラートナーを調製し、フラッシュ定着方式で印字試験を行った。
【0185】
バインダ樹脂として、テレフタル酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン酸を必須構成モノマとする酸価30mg/KOH、軟化温度104 ℃のスルホン酸変成ポリエステル樹脂を用い、これに対してフタロシアニン顔料(B2G 、クラリアント社製)を5重量%、カリックスアレン化合物(E-89 、オリエント社製)を3重量%、次式により表されるキノリン誘導体化合物:
【0186】
【化15】
【0187】
を4重量%添加し、溶融混練後に微粉砕し、分級することにより平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0188】
次いで、得られたトナー母体に外添剤として疎水性シリカ(H-2000、クラリアント製)0.35重量部を添加し、青色着色トナーを得た。このトナーを粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度4.5%で混合して現像剤を調製した。この現像剤の帯電量をブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-12μC/g の帯電量を示した。
【0189】
引き続いて、得られた現像剤を高速プリンタ装置(品番PS2160、富士通製)の改造機に搭載し、700 〜1500nmの波長範囲に高い発光強度を有するキセノンフラッシュ光を照射して普通紙(NIP-1500LT 、小林記録紙) に定着させ印刷画像を得た。
【0190】
得られた印刷画像について、以下のように定着性の調査を行った。先ず、1インチ(25.4mm)四方の印刷画像において光学濃度(OD1)を測定し、その後、同じ印刷画像上に粘着テープ(スコッチメンディングテープ、住友3M製)を貼り、しかる後、粘着テープを引き剥がし、剥離後の印刷画像の光学濃度(OD2)を再び測定した。なお、光学濃度の測定にはマクベスPCMメータを使用した。次式より定着率を算出した。
【0191】
定着率(%) = OD2/OD1 × 100
その結果、定着率96%の優れた定着性を有することが明らかとなった。また、この印刷画像においては、かぶりなどの背景部汚れが少ない良好な画質が得られた。
【0192】
比較例5
前記実施例28に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、キノリン誘導体化合物の添加を省略した。
【0193】
得られた現像剤の帯電量を前記実施例28と同様にブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-12μC/gであり、実施例28のトナーと遜色のないことが判明した。この結果から、実施例28で使用したキノリン誘導体化合物がトナーの帯電性に与える影響は小さいということが考察された。
【0194】
引き続いて印刷試験を前記実施例28と同様に行ったところ、得られた印刷画像は指で擦ると画像が剥れてしまう程度の定着性であり、とうてい実用に耐えることができない品質をトナーが有していることが判明した。定着率は、30%以下であった。この結果から、実施例28で使用したキノリン誘導体化合物は、トナーのフラッシュ定着性に専ら寄与するということが考察された。
【0195】
実施例29
本例では、フラッシュ定着用赤色カラートナーを調製し、フラッシュ定着方式で印字試験を行った。
【0196】
バインダ樹脂として、テレフタル酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン酸を必須構成モノマとする酸価30mg/KOH、軟化温度104 ℃のスルホン酸変成ポリエステル樹脂を用い、これに対してキナクリドン顔料(E-02 、クラリアント社製)を5重量%、カリックスアレン化合物(E-89 、オリエント社製)を3重量%、次式により表されるキノリン誘導体化合物:
【0197】
【化16】
【0198】
を5重量%添加し、溶融混練後に微粉砕し、分級することにより平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0199】
次いで、得られたトナー母体に外添剤として疎水性シリカ(H-2000、クラリアント製)0.35重量部を添加し、赤色着色トナーを得た。このトナーを粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度4.5%で混合して現像剤を調製した。この現像剤の帯電量をブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-12μC/g の帯電量を示した。
【0200】
さらに、得られた現像剤を前記実施例28と同様な印刷及び評価試験に供したところ、定着率93%の優れた定着性を有することが明らかとなった。また、印刷画像においては、かぶりなどの背景部汚れが少ない良好な画質が得られた。
【0201】
実施例30
本例では、フラッシュ定着用黄色カラートナーを調製し、フラッシュ定着方式で印字試験を行った。
【0202】
バインダ樹脂として、テレフタル酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン酸を必須構成モノマとする酸価30mg/KOH、軟化温度104 ℃のスルホン酸変成ポリエステル樹脂を用い、これに対してベンジジン顔料(ECY-204 、大日精化製)を5重量%、カリックスアレン化合物(E-89 、オリエント社製)を3重量%、次式により表されるキノリン誘導体化合物:
【0203】
【化17】
【0204】
を4重量%添加し、溶融混練後に微粉砕し、分級することにより平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0205】
次いで、得られたトナー母体に外添剤として疎水性シリカ(H-2000、クラリアント製)0.35重量部を添加し、黄色着色トナーを得た。このトナーを粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度4.5%で混合して現像剤を調製した。この現像剤の帯電量をブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-12μC/g の帯電量を示した。
【0206】
さらに、得られた現像剤を前記実施例28と同様な印刷及び評価試験に供したところ、定着率90%の優れた定着性を有することが明らかとなった。また、印刷画像においては、かぶりなどの背景部汚れが少ない良好な画質が得られた。
【0207】
実施例31
本例では、フラッシュ定着用青色カラートナーを調製し、フラッシュ定着方式で印字試験を行った。
【0208】
バインダ樹脂として、テレフタル酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン酸を必須構成モノマとする酸価30mg/KOH、軟化温度104 ℃のスルホン酸変成ポリエステル樹脂を用い、これに対してフタロシアニン顔料(B2G 、クラリアント社製)を5重量%、カリックスアレン化合物(E-89 、オリエント社製)を3重量%、次式により表されるキノリン誘導体化合物:
【0209】
【化18】
【0210】
を4重量%添加し、溶融混練後に微粉砕し、分級することにより平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0211】
次いで、得られたトナー母体に外添剤として疎水性シリカ(H-2000、クラリアント製)0.35重量部を添加し、青色着色トナーを得た。このトナーを粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度4.5%で混合して現像剤を調製した。この現像剤の帯電量をブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-14μC/g の帯電量を示した。
【0212】
引き続いて、得られた現像剤を高速プリンタ装置(品番PS2160、富士通製)の改造機に搭載し、700 〜1500nmの波長範囲に高い発光強度を有するキセノンフラッシュ光を照射して普通紙(NIP-1500LT 、小林記録紙) に定着させ印刷画像を得た。
【0213】
得られた印刷画像について、以下のように定着性の調査を行った。先ず、1インチ(25.4mm)四方の印刷画像において光学濃度(OD1)を測定し、その後、同じ印刷画像上に粘着テープ(スコッチメンディングテープ、住友3M製)を貼り、しかる後、粘着テープを引き剥がし、剥離後の印刷画像の光学濃度(OD2)を再び測定した。なお、光学濃度の測定にはマクベスPCMメータを使用した。次式より定着率を算出した。
【0214】
定着率(%) = OD2/OD1 × 100
その結果、定着率97%の優れた定着性を有することが明らかとなった。また、この印刷画像においては、かぶりなどの背景部汚れが少ない良好な画質が得られた。
【0215】
比較例6
前記実施例31に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、キノリン誘導体化合物の添加を省略した。
【0216】
得られた現像剤の帯電量を前記実施例31と同様にブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-13μC/gであり、実施例31のトナーと遜色のないことが判明した。この結果から、実施例31で使用したキノリン誘導体化合物がトナーの帯電性に与える影響は小さいということが考察された。
【0217】
引き続いて印刷試験を前記実施例31と同様に行ったところ、得られた印刷画像は指で擦ると画像が剥れてしまう程度の定着性であり、とうてい実用に耐えることができない品質をトナーが有していることが判明した。定着率は、30%以下であった。この結果から、実施例31で使用したキノリン誘導体化合物は、トナーのフラッシュ定着性に専ら寄与するということが考察された。
【0218】
実施例32
本例では、フラッシュ定着用赤色カラートナーを調製し、フラッシュ定着方式で印字試験を行った。
【0219】
バインダ樹脂として、テレフタル酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン酸を必須構成モノマとする酸価30mg/KOH、軟化温度104 ℃のスルホン酸変成ポリエステル樹脂を用い、これに対してキナクリドン顔料(E-02 、クラリアント社製)を5重量%、カリックスアレン化合物(E-89 、オリエント社製)を3重量%、次式により表されるキノリン誘導体化合物:
【0220】
【化19】
【0221】
を5重量%添加し、溶融混練後に微粉砕し、分級することにより平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0222】
次いで、得られたトナー母体に外添剤として疎水性シリカ(H-2000、クラリアント製)0.35重量部を添加し、赤色着色トナーを得た。このトナーを粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度4.5%で混合して現像剤を調製した。この現像剤の帯電量をブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-14μC/g の帯電量を示した。
【0223】
さらに、得られた現像剤を前記実施例31と同様な印刷及び評価試験に供したところ、定着率95%の優れた定着性を有することが明らかとなった。また、印刷画像においては、かぶりなどの背景部汚れが少ない良好な画質が得られた。
【0224】
実施例33
本例では、フラッシュ定着用黄色カラートナーを調製し、フラッシュ定着方式で印字試験を行った。
【0225】
バインダ樹脂として、テレフタル酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン酸を必須構成モノマとする酸価30mg/KOH、軟化温度104 ℃のスルホン酸変成ポリエステル樹脂を用い、これに対してベンジジン顔料(ECY-204 、大日精化製)を5重量%、カリックスアレン化合物(E-89 、オリエント社製)を3重量%、次式により表されるキノリン誘導体化合物:
【0226】
【化20】
【0227】
を4重量%添加し、溶融混練後に微粉砕し、分級することにより平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0228】
次いで、得られたトナー母体に外添剤として疎水性シリカ(H-2000、クラリアント製)0.35重量部を添加し、黄色着色トナーを得た。このトナーを粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度4.5%で混合して現像剤を調製した。この現像剤の帯電量をブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-15μC/g の帯電量を示した。
【0229】
さらに、得られた現像剤を前記実施例31と同様な印刷及び評価試験に供したところ、定着率95%の優れた定着性を有することが明らかとなった。また、印刷画像においては、かぶりなどの背景部汚れが少ない良好な画質が得られた。
【0230】
調製例3
(1)キャリヤの調製
前記調製例1と同様にしてマグネタイトキャリヤを調製した。
(2)ポリエステル樹脂の調製
前記調製例1と同様にして、重量平均分子量が5,000、ガラス転移温度が65℃、軟化点が110℃、そして酸価が20であるポリエステル樹脂を調製した。
【0231】
(3)カラートナーの調製
下記の第7表に記載のような異なる組成のフラッシュ定着用赤色カラートナーを調製した。表中、赤外線吸収剤として使用した本発明のポリメチン化合物は、下記の第6表に記載してある。なお、このポリメチン化合物に併用したその他の赤外線吸収剤(市販品)については、上記の第1表を参照されたい。
【0232】
トナーSCR-1Nの調製:
下記の第7表に記載のように、本発明のポリメチン化合物(NK-3519)を0.05重量部、ポリエステル樹脂を89重量部、顔料:イルガライドRED 3RS(チバガイギ社製)を10重量部、帯電制御剤(CCA100、 中央合成化学製)を1重量部、ワックス:NP105(三井化学)を0.5重量部、それぞれトナー成分として用意した。トナー成分の全量をヘンシェルミキサーに投入し、予備混合を行った後、エクストルーダーにより溶融混練した。次いで、得られた混合物を冷却固化した後、ハンマーミルで粗粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕した。得られた微粉末を気流分級機にて分級を行い、体積平均粒径が8.5μmの赤色着色微粒子を得た。引き続いて、得られたトナー微粒子に、疎水性シリカ微粒子(商品名:H3004、クラリアントジャパン社製)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーで外添処理を行った。トナーSCR-1Nが得られた。
【0233】
トナーSCR-2N〜SCR-11Nの調製:
材料とその混合割合を下記の第7表に記載のものに変更した相違点を除いて、トナーSCR-1Nの調製と同様な手法に従ってトナーを調製した。それぞれ体積平均粒径が8.5μmである赤色着色微粒子を得た後、外添処理を行った。トナーSCR-2N〜SCR-11Nが得られた。
【0234】
実施例34〜41及び比較例7〜9
上記のようにして調製したトナーSCR-1N〜SCR-11Nを使用してフラッシュ定着方式で印字試験を行った。印字試験の手順は、前記実施例1〜16で採用したものに同じである。
【0235】
それぞれのトナーと上記のようにして調製したキャリヤを4.5重量%:95.5重量%の比で混合して現像剤を調製した。この現像剤を高速プリンタ装置(品番PS2160、富士通社製)の改造機に搭載した後、記録媒体として普通紙(NIP-1500LT 、小林記録紙)を使用して、発光エネルギ(光定着エネルギ)2.2J/cm2及び印刷速度8,000ライン/minで線画の印字を行った。得られた印刷物のそれぞれを、下記の項目:
(1)帯電量(高温高湿HH及び低温低湿LL)
(2)帯電量の比率(帯電保持性)
(3)トナーの定着率(%)
(4)定着性の判定
(5)印字濃度
(6)かぶり
に関して評価したところ、下記の第7表に記載のような測定及び評価の結果が得られた。
【0236】
【表7】
【0237】
【表8】
【0238】
実施例42
本例では、フラッシュ定着用青色カラートナーを調製し、フラッシュ定着方式で印字試験を行った。
【0239】
バインダ樹脂として、テレフタル酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン酸を必須構成モノマとする酸価30mg/KOH、軟化温度104 ℃のスルホン酸変成ポリエステル樹脂を用い、これに対してフタロシアニン顔料(B2G 、クラリアント社製)を5重量%、カリックスアレン化合物(E-89 、オリエント社製)を3重量%、次式により表されるベンゼンニッケル錯体化合物:
【0240】
【化21】
【0241】
を4重量%添加し、溶融混練後に微粉砕し、分級することにより平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0242】
次いで、得られたトナー母体に外添剤として疎水性シリカ(H-2000、クラリアント製)0.35重量部を添加し、青色着色トナーを得た。このトナーを粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度4.5%で混合して現像剤を調製した。この現像剤の帯電量をブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-12μC/g の帯電量を示した。
【0243】
引き続いて、得られた現像剤を高速プリンタ装置(品番PS2160、富士通製)の改造機に搭載し、700 〜1500nmの波長範囲に高い発光強度を有するキセノンフラッシュ光を照射して普通紙(NIP-1500LT 、小林記録紙) に定着させ印刷画像を得た。
【0244】
得られた印刷画像について、以下のように定着性の調査を行った。先ず、1インチ(25.4mm)四方の印刷画像において光学濃度(OD1)を測定し、その後、同じ印刷画像上に粘着テープ(スコッチメンディングテープ、住友3M製)を貼り、しかる後、粘着テープを引き剥がし、剥離後の印刷画像の光学濃度(OD2)を再び測定した。なお、光学濃度の測定にはマクベスPCMメータを使用した。次式より定着率を算出した。
【0245】
定着率(%) = OD2/OD1 × 100
その結果、定着率95%の優れた定着性を有することが明らかとなった。また、この印刷画像においては、かぶりなどの背景部汚れが少ない良好な画質が得られた。
【0246】
比較例10
前記実施例42に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、ベンゼンニッケル錯体化合物の添加を省略した。
【0247】
得られた現像剤の帯電量を前記実施例42と同様にブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-12μC/gであり、実施例42のトナーと遜色のないことが判明した。この結果から、実施例42で使用したベンゼンニッケル錯体化合物がトナーの帯電性に与える影響は小さいということが考察された。
【0248】
引き続いて印刷試験を前記実施例42と同様に行ったところ、得られた印刷画像は指で擦ると画像が剥れてしまう程度の定着性であり、とうてい実用に耐えることができない品質をトナーが有していることが判明した。定着率は、30%以下であった。この結果から、実施例42で使用したベンゼンニッケル錯体化合物は、トナーのフラッシュ定着性に専ら寄与するということが考察された。
【0249】
比較例11
前記実施例42に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、ベンゼンニッケル錯体化合物の代わりに、特開平11−125928号公報の実施例2に記載の赤外線吸収剤ビス、1,2’-ジフエニセレン-1,2-ジチオール)ニッケルを1重量部の量で使用した。
【0250】
得られた現像剤の帯電量を前記実施例42と同様にブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-20μC/gであり、実施例42のトナーと比較して顕著な相違のあることが判明した。
【0251】
引き続いて印刷試験を前記実施例42と同様に行ったところ、得られた印刷画像は指で擦ると画像が剥れてしまう程度の定着性であり、とうてい実用に耐えることができない品質をトナーが有していることが判明した。定着率は、30%以下であった。この結果から、実施例42で使用したベンゼンニッケル錯体化合物は、トナーのフラッシュ定着性に関して従来品よりも優れているということが考察された。
【0252】
比較例12
前記実施例42に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、スルホン酸変成ポリエステル樹脂(バインダ樹脂)を分散させる代わりに、特開平11−38666号公報に記載のように溶解させて使用した。
得られた現像剤の帯電量を前記実施例42と同様にブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、実施例42のトナーと比較して約6μC/gほど低いことが判明した。また、印刷試験を前記実施例42と同様に行ったところ、得られた印刷画像においてかぶりの発生が認められた。これらの結果から、実施例42でベンゼンニッケル錯体化合物を使用した場合に、併用するバインダ樹脂は、溶解するよりも分散させたほうが、帯電量が増加し、かぶりの防止に有効であるということが明らかとなった。
【0253】
実施例43
本例では、フラッシュ定着用青色カラートナーを調製し、フラッシュ定着方式で印字試験を行った。
【0254】
バインダ樹脂として、テレフタル酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン酸を必須構成モノマとする酸価30mg/KOH、軟化温度104 ℃のポリエステル樹脂を用い、これに対してフタロシアニン顔料(B2G 、クラリアント社製)を5重量%、カリックスアレン化合物(E-89、オリエント社製)を3重量%、炭化ジルコニウム(ZrC)を4重量%添加し、溶融混練後に微粉砕することにより平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0255】
次いで、得られたトナー母体に外添剤として疎水性シリカ(H-2000、クラリアント製)0.35重量部を添加し、青色着色トナーを得た。このトナーを粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度4.5%で混合して現像剤を調製した。この現像剤の帯電量をブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-12μC/g の帯電量を示した。
【0256】
引き続いて、得られた現像剤を高速プリンタ装置(品番PS2160、富士通製)の改造機に搭載し、700 〜1500nmの波長範囲に高い発光強度を有するキセノンフラッシュ光を照射して普通紙(NIP-1500LT 、小林記録紙) に定着させ印刷画像を得た。
【0257】
得られた印刷画像について、以下のように定着性の調査を行った。先ず、1インチ(25.4mm)四方の印刷画像において光学濃度(OD1)を測定し、その後、同じ印刷画像上に粘着テープ(スコッチメンディングテープ、住友3M製)を貼り、しかる後、粘着テープを引き剥がし、剥離後の印刷画像の光学濃度(OD2)を再び測定した。なお、光学濃度の測定にはマクベスPCMメータを使用した。次式より定着率を算出した。
定着率(%) = OD2/OD1 × 100
その結果、定着率90%の優れた定着性を有することが明らかとなった。また、この印刷画像においては、かぶりなどの背景部汚れが少ない良好な画質が得られた。
【0258】
比較例 13
前記実施例43に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、炭化ジルコニウムの添加を省略した。
【0259】
得られた現像剤の帯電量を前記実施例43と同様にブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-12μC/gであり、実施例43のトナーと遜色のないことが判明した。この結果から、実施例43で使用した炭化ジルコニウムがトナーの帯電性に与える影響は小さいということが考察された。
【0260】
引き続いて印刷試験を前記実施例43と同様に行ったところ、得られた印刷画像は指で擦ると画像が剥れてしまう程度の定着性であり、とうてい実用に耐えることができない品質をトナーが有していることが判明した。定着率は、30%以下であった。この結果から、実施例43で使用した炭化ジルコニウムは、トナーのフラッシュ定着性の向上に寄与するということが明らかとなった。
【0261】
比較例 14
前記実施例43に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、炭化ジルコニウムをポリエステル樹脂に添加してトナー母体を調製することに代えて、炭化ジルコニウムを添加しないで調製したトナー母体に、疎水性シリカとともに炭化ジルコニウムを外添した。外添量は、前記実施例43と同様に4重量%であった。
【0262】
引き続いて印刷試験を前記実施例43と同様に行ったところ、得られた印刷画像は指で擦ると画像が剥がれてしまう程度の定着性であり、とうてい実用に耐えられるものではなかった。
【0263】
実施例44
本例では、フラッシュ定着用青色カラートナーを調製し、フラッシュ定着方式で印字試験を行った。
【0264】
バインダ樹脂として、テレフタル酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン酸を必須構成モノマとする酸価30mg/KOH、軟化温度104 ℃のポリエステル樹脂を用い、これに対してフタロシアニン顔料(B2G 、クラリアント社製)を5重量%、カリックスアレン化合物(E-89、オリエント社製)を3重量%、ハイドロタルサイトを5重量%添加し、溶融混練後に微粉砕することにより平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0265】
次いで、得られたトナー母体に外添剤として疎水性シリカ(H-2000、クラリアント製)0.35重量部を添加し、青色着色トナーを得た。このトナーを粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度4.5%で混合して現像剤を調製した。この現像剤の帯電量をブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-18μC/g の帯電量を示した。
【0266】
引き続いて、得られた現像剤を高速プリンタ装置(品番PS2160、富士通製)の改造機に搭載し、700 〜1500nmの波長範囲に高い発光強度を有するキセノンフラッシュ光を照射して普通紙(NIP-1500LT 、小林記録紙) に定着させ印刷画像を得た。
【0267】
得られた印刷画像について、以下のように定着性の調査を行った。先ず、1インチ(25.4mm)四方の印刷画像において光学濃度(OD1)を測定し、その後、同じ印刷画像上に粘着テープ(スコッチメンディングテープ、住友3M製)を貼り、しかる後、粘着テープを引き剥がし、剥離後の印刷画像の光学濃度(OD2)を再び測定した。なお、光学濃度の測定にはマクベスPCMメータを使用した。次式より定着率を算出した。
定着率(%) = OD2/OD1 × 100
その結果、定着率90%の優れた定着性を有することが明らかとなった。また、この印刷画像においては、かぶりなどの背景部汚れが少ない良好な画質が得られた。
【0268】
比較例 15
前記実施例44に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、ハイドロタルサイトの添加を省略した。
【0269】
得られた現像剤の帯電量を前記実施例44と同様にブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定したところ、-18μC/gであり、実施例44のトナーと遜色のないことが判明した。この結果から、実施例44で使用したハイドロタルサイトがトナーの帯電性に与える影響は小さいということが考察された。
【0270】
引き続いて印刷試験を前記実施例44と同様に行ったところ、得られた印刷画像は指で擦ると画像が剥れてしまう程度の定着性であり、とうてい実用に耐えることができない品質をトナーが有していることが判明した。定着率は、30%以下であった。この結果から、実施例44で使用したハイドロタルサイトは、トナーのフラッシュ定着性の向上に寄与するということが明らかとなった。
【0271】
比較例 16
前記実施例44に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、内添にて定着に効果のあったハイドロタルサイトをポリエステル樹脂に添加しないでトナー母体を調製し、得られたトナー母体に対して、疎水性シリカとともにハイドロタルサイトを外添した。ハイドロタルサイトの外添量は、1.00重量部であった。
【0272】
引き続いて印刷試験を前記実施例44と同様に行ったところ、得られた印刷画像は指で擦ると画像が剥がれてしまう程度の定着性であり、とうてい実用に耐えられるものではなかった。
また、これらの比較例の結果より、ハイドロタルサイトからなる光熱変換セラミックスによる赤外線吸収性化合物が外添剤としてではなく内添剤として用いた場合特に、トナーのフラッシュ定着性能向上に寄与することが明らかとなった。
【0273】
最後に、本発明のさらなる理解のため、本発明の好ましい態様を以下に付記する。
(付記1) 光定着方式を採用した画像形成方法において用いられるものであって、バインダ樹脂及び着色剤を少なくとも含むカラートナーにおいて、
前記カラートナーが、下記の群:
(1)コア粒子と、該コア粒子の表面に積層された互いに屈折率を異にする少なくとも2層の被覆層とを含む光吸収性複合微粒子、
(2)次式(I)により表されるアズレン化合物:
【0274】
【化22】
【0275】
(上式において、R1〜R12は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を表し、Xは、陰イオンを表し、そしてnは、正の整数である)、
(3)次式(II)により表されるシアニン化合物:
【0276】
【化23】
【0277】
(上式において、R1〜R5は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は脂肪族炭化水素側鎖を有する芳香族炭化水素基を表し、そしてXは、陰イオンである)、
(4)次式(III)により表されるキノリン化合物:
【0278】
【化24】
【0279】
(上式において、RIは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の置換基を表し、RII及びRIIIは、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を表し、Mは、遷移金属原子を表し、Xは、陰イオンを表し、そしてnは、正の整数である)、
(5)次式(IV)により表されるキノリン化合物:
【0280】
【化25】
【0281】
(上式において、Lは、結合基を表し、RII及びRIIIは、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を表し、Mは、遷移金属原子を表し、Xは、陰イオンを表し、そしてnは、正の整数である)、
(6)次式(V)により表されるポリメチン化合物:
【0282】
【化26】
【0283】
(上式において、R1及びR2は、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子を表すかもしくは置換もしくは非置換の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は脂肪族炭化水素側鎖を有する芳香族炭化水素基を表し、そしてXは、陰イオンである)、
(7)次式(VI)により表されるベンゼン金属錯体:
【0284】
【化27】
【0285】
(上式において、Rは、1価の置換基を表し、A及びBは、同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ、硫黄原子、セレン原子又は−NHを表し、Mは、遷移金属原子を表し、そしてXは、陽イオンを表す)、及び
(8)光熱変換セラミックス、
から選ばれた少なくとも1種類の添加剤を含んでなることを特徴とする画像形成用カラートナー。
【0286】
(付記2) 前記添加剤が、750〜1200nmの波長領域において光吸収スペクトルを示すことを特徴とする付記1に記載の画像形成用カラートナー。
(付記3) 前記光吸収性複合微粒子において、前記コア粒子が、鉄粉、フェライト粉、懸濁樹脂粒子又はガラスビーズであることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記4) 前記光吸収性複合微粒子において、前記コア粒子の粒径が、0.01〜5μmの範囲にあることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記5) 前記光吸収性複合微粒子において、前記被覆層が、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、マグネシウム、バリウム又は亜鉛の酸化物あるいはそれらの複合酸化物から形成されていることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記6) 前記光吸収性複合微粒子がトナーに外添される時、トナー100重量部に対して0.01〜10重量部の割合で添加されることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記7) 前記光吸収性複合微粒子がトナーに内添加される時、トナー100重量部に対して0.1〜40重量部の割合で添加されることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記8) 前式(I)により表されるアズレン化合物が、トナー100重量部に対して0.5〜5.0重量部の割合で添加されることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記9) 前式(II)により表されるシアニン化合物が、トナー100重量部に対して0.1〜20.0重量部の割合で添加されることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記10) 前式(III)により表されるキノリン化合物が、トナー100重量部に対して0.1〜20.0重量部の割合で添加されることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記11) 前式(IV)により表されるキノリン化合物が、トナー100重量部に対して0.1〜20.0重量部の割合で添加されることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記12) 前式(V)により表されるポリメチン化合物が、トナー100重量部に対して0.1〜20.0重量部の割合で添加されることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記13) 前式(VI)により表されるベンゼン金属錯体が、トナー100重量部に対して0.1〜20.0重量部の割合で添加されることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記14) 前記光熱変換セラミックスが、炭化ジルコニウム及び(又は)ハイドロタルサイトであることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記15) 前記光熱変換セラミックスがトナーに内添加される時、トナー100重量部に対して0.1〜20.0重量部の割合で添加されることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用トナー。
(付記16) 無機及び(又は)有機の赤外線吸収剤をさらに含むことを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記17) 前記バインダ樹脂が、ビスフェノールA誘導体を主成分とするポリエステル樹脂であることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
(付記18) 電子写真用カラートナーであることを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成用カラートナー。
【0287】
(付記19) 画像露光による静電潜像の形成、現像による静電潜像の可視化、可視化された画像の記録媒体への転写及び転写された画像の定着の各工程を含む電子写真方式により前記記録媒体にカラー画像を形成する方法において、
前記静電潜像の現像工程において、付記1〜17のいずれか1項に記載のカラートナーを含む現像剤を使用し、かつ
前記現像剤の使用により可視化された画像を前記記録媒体に転写した後に定着する工程において、1.0〜6.0J/cm2の発光エネルギー密度で光定着を行うことを特徴とするカラー画像形成方法。
【0288】
(付記20) 静電潜像の形成のための画像露光装置、静電潜像を可視化するための現像装置、可視化された画像を記録媒体に転写するための画像転写装置及び転写された画像を記録媒体に定着させるための画像定着装置を含む、電子写真方式により前記記録媒体にカラー画像を形成する装置において、
前記現像装置に、付記1〜17のいずれか1項に記載のカラートナーを含む現像剤が搭載されており、かつ
前記画像定着装置に、発光エネルギー密度が1.0〜6.0J/cm2である光定着機が備えられていることを特徴とするカラー画像形成装置。
【0289】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、画像定着方式として光定着方式を使用できるので、定着工程で画像のニジミやチリなどが発生せず、画像解像度(再現性)の劣化も防止できる。また、熱源などにより加熱する必要がないことから、クイックスタートが可能である。さらに、高温熱源を必要としないことから、装置内の温度上昇を適切に回避でき、またシステムダウンにより定着器内において記録紙詰まりが生じた場合などであっても、熱源からの熱によって記録紙が発火してしまうこともない。さらに、のり付き紙、プレプリント紙、厚さの異なる紙など、記録紙の材質や厚さに関係なく定着が可能である。
【0290】
また、本発明によれば、光定着方式を使用できるので、カラートナーの定着性が良好であり、帯電安定化による長寿命化及び環境安定化が可能な画像形成用カラートナーを提供することができる。
【0291】
さらに、本発明によれば、画像定着方式として光定着方式を使用でき、良好なカラートナー定着性に加えて、使用する赤外線吸収剤による帯電量変動が少なく、長期にわたって安定した帯電、現像特性を維持でき、かつ赤外線吸収剤による色相への影響が少ない画像形成用カラートナーも提供することができる。
【0292】
さらに加えて、本発明によれば、画像定着方式として光定着方式を使用できるとともに、カラートナーの定着性が良好であり、帯電安定化による長寿命化及び環境安定化が可能なカラー画像形成方法を提供することができる。
【0293】
また、本発明によれば、光定着方式に基づく画像定着装置を使用できるとともに、カラートナーの定着性が良好であり、帯電安定化による長寿命化及び環境安定化が可能なカラー画像形成装置も提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】トナー定着方式としてフラッシュ定着方式を採用した画像形成方法を実施するための好ましい電子写真装置の一例を示した略示断面図である。
【図2】キセノンフラッシュ光の発光スペクトル図である。
【符号の説明】
11…現像剤
12…攪拌スクリュー
13…現像ローラ
14…感光ドラム
18…フラッシュ定着装置
21…記録媒体
22…定着画像
Claims (4)
- 電子写真用カラートナーであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成用カラートナー。
- 画像露光による静電潜像の形成、現像による静電潜像の可視化、可視化された画像の記録媒体への転写及び転写された画像の定着の各工程を含む電子写真方式により前記記録媒体にカラー画像を形成する方法において、
前記静電潜像の現像工程において、請求項1又は2に記載のカラートナーを含む現像剤を使用し、かつ
前記現像剤の使用により可視化された画像を前記記録媒体に転写した後に定着する工程において、1.0〜6.0J/cm2の発光エネルギー密度で光定着を行うことを特徴とするカラー画像形成方法。 - 静電潜像の形成のための画像露光装置、静電潜像を可視化するための現像装置、可視化された画像を記録媒体に転写するための画像転写装置及び転写された画像を記録媒体に定着させるための画像定着装置を含む、電子写真方式により前記記録媒体にカラー画像を形成する装置において、
前記現像装置に、請求項1又は2に記載のカラートナーを含む現像剤が搭載されており、かつ
前記画像定着装置に、発光エネルギー密度が1.0〜6.0J/cm2である光定着機が備えられていることを特徴とするカラー画像形成装置。
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