JP4075380B2 - 車両用電源装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用電源装置、特に電力ラインにコンデンサを設けた場合の突入電流制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電気自動車やハイブリッド自動車等において、バッテリから負荷であるモータへの電力ラインにノイズ低減用のコンデンサが設けられている。そして、車両のイグニッションをオフにした後は、例えばコンデンサに蓄積された電荷により無トルク状態でモータを駆動してコンデンサを放電させている。
【0003】
ところが、イグニッションをオフにしてコンデンサを放電した後、再びイグニッションをオンにして車両走行する場合、コンデンサが既に放電されているためコンデンサ充電時に高電圧の突入電流が生じ、バッテリに接続されたリレーなどが大きな突入電流により損傷し、場合によっては溶着してしまう問題があった。
【0004】
そこで、例えば図3に示されるように、ハイブリッド(HV)バッテリ10の電力供給切替リレーを3個(SMR1、SMR2、SMR3)設け、そのうちの一つのリレーに直列に抵抗Rを設けることで突入電流を低減する構成が採用されている。すなわち、イグニッションがオンされると、まずSMR2とSMR3をオンする。これにより、SMR3及び抵抗Rを経由して制限電流が流れることとなり、この制限電流でコンデンサを充電することができる。その後、SMR1をオンしSMR3をオフしてモータを駆動することで、高電圧の突入電流から回路を保護することができる。SMR3と抵抗Rはバッテリからの制限電流でコンデンサを予め充電するプリチャージ回路として機能すると云うこともできる。
【0005】
このように制限電流でコンデンサを予め充電する構成は、例えば特開平9−149509号公報にも開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、SMR3と抵抗Rを設けてコンデンサをプリチャージする構成では、回路部品点数が増大しコスト的に不利となる。特に、プリチャージ回路はイグニッションオンの直後のみ機能する回路であり、通常は動作しないことからその使用効率が低い問題がある。
【0007】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、その目的は、プリチャージ回路を不要とし、かつ、高電圧の突入電流を低減することができる車両用電源装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、電源と、前記電源からの電力により駆動される負荷と、前記電力のオンオフを切り替えるスイッチと、前記電源と負荷間の電力ラインに接続されるコンデンサとを備える車両用電源装置であって、車両のイグニッションがオフされてから所定の遅延時間後に前記コンデンサを放電する制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
ここで、前記制御手段は、前記イグニッションのオフから一定時間後に自身の動作を停止するものであり、動作停止の直前に前記コンデンサを放電することが好適である。
【0010】
本装置において、前記負荷はモータであり、前記制御手段は、前記コンデンサからの電力で前記モータをゼロトルク状態で駆動することにより前記コンデンサを放電することができる。
【0011】
また、本装置において、前記制御手段は、異常が検出された場合には直ちに前記コンデンサを放電することが好適である。
【0012】
このように、本発明の車両用電源装置では、従来のようにイグニッションがオフされたときに直ちにコンデンサを放電するのではなく、所定の遅延時間後にコンデンサを放電する。これにより、イグニッションがオフされてから所定の遅延時間内に再びイグニッションがオンされても、コンデンサは既に充電されているため、イグニッションをオンしたときの突入電流を小さくすることができる。
【0013】
なお、イグニッションをオフしたときには制御手段への電力供給も停止されて制御手段の動作が不能となるが、通常イグニッションがオフされてから数分程度は制御手段の動作が可能であるため、この動作可能時間内に遅延時間を設定することができる。イグニッションオフによる制御手段の動作停止の直前までコンデンサの放電を遅らせることで、遅延時間を最大限大きくすることができる。
【0014】
コンデンサの放電は、例えば負荷としてモータが接続されている場合にはコンデンサからの電力でモータをゼロトルク状態で駆動することで達成される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1には、本実施形態に係る車両電源装置の構成が示されている。電源のバッテリ10で負荷である2つのモータ15、17を駆動する構成である。もちろんモータは2個ではなく1個でもよい。モータ15、17にはそれぞれインバータ14、16が接続され、インバータ14、16にバッテリ10からの直流を供給し、インバータ14、16の各スイッチを制御することによりモータ15、17に三相交流を供給して駆動する。インバータ14、16のスイッチングは制御手段としてのECU(電子制御装置)18により制御される。
【0017】
バッテリ10からの電力供給は2個のリレーSMR1、SMR2をオンオフすることにより切り替えられ、バッテリ10からモータ15、17への電力ラインにはノイズ低減用のコンデンサCが設けられている。また、コンデンサCに並列に放電抵抗Rが接続されている。本実施形態においては、コンデンサCのプリチャージ回路が設けられていない点に着目されたい。
【0018】
このような構成において、例えばハイブリッド自動車の場合、ECU18は低速走行時にはインバータ14、16をスイッチング制御してバッテリ10からの電力でモータ15、17を駆動する。一方、通常走行時には、ECU18はバッテリ10からの電力でエンジンをクランキングし、エンジントルクにより車両を走行させる。高負荷時には、エンジントルクに加えモータ15、17を駆動してトルクアシストする。また、車両減速時には、インバータ14、16を制御してモータ15、17をジェネレータとして機能させ、運動エネルギを電気エネルギに変換して電力を回生しバッテリ10を充電する。
【0019】
従来において、イグニッションオフ時にコンデンサCを放電していたため、次にイグニッションをオンするときにはプリチャージ回路でコンデンサCをまず充電し、その後バッテリ10からの電力を供給することにより突入電流を小さく制限していたが、本実施形態においてはコンデンサCの放電タイミングを遅らせることでイグニッションオン時においてコンデンサCが既に充電されている確率を大きくし、これによりイグニッションオン時の突入電流を低減するものである。
【0020】
すなわち、本実施形態において、イグニッションがオフされた場合、ECU18は直ちにインバータ14、16を駆動して無トルク状態でモータ15、17を駆動しコンデンサCを放電するのではなく、イグニッションがオフされてから所定の遅延時間内はコンデンサCの放電制御を行わず、単に放電抵抗Rのみによる自己放電を行う。これにより所定の遅延時間内はコンデンサCには電荷が残存する状態となる。したがって、この遅延時間内に再びイグニッションがオンされた場合には、コンデンサCは既に充電されているため突入電流は小さくて済み、SMR1あるいはSMR2の損傷が防止できる。
【0021】
図2は、本実施形態におけるECU18の処理フローチャートが示されている。まず、イグニッションスイッチ信号に基づきイグニッションがオフされたか否かを判定する(S101)。そして、イグニッションがオフされた場合には、次に電源装置に異常(フェイル)が発生したか否かを判定する(S102)。異常状態としては、例えばユーザが高圧コンポーネントの蓋を開けてインターロックがオンされた場合や、高圧コンポーネントにショートが発生した場合等が考えられる。そして、フェイルが発生した場合には、コンデンサCに電荷が蓄積されている状態は危険なので、ECU18は直ちにコンデンサCの放電制御を実行する(S104)。一方、異常が発生していない場合には、ECU18はイグニッションがオフされてから所定の遅延時間は放電制御を行わず、遅延時間経過後に放電制御を実行してコンデンサCを放電する(S103)。放電制御は、従来と同様にインバータ14、16をスイッチング制御してモータ15、17を無トルク状態で駆動させればよい。無トルク状態とすることで、意図せずモータ15、17により車両が動き出すことを防止できる。
【0022】
なお、所定の遅延時間は任意に設定することが可能であるが、放電を可能な限り遅させることが好ましく、この観点からはイグニッションがオフされてからECU18の動作が停止される直前まで遅らせる、すなわち放電制御のタイミングをECU18が動作停止となる直前に実行することが好ましい。例えば、イグニッションがオフされてからECU18の動作が停止されるまで5分間要するとすると、遅延時間を5分弱に設定する等である。これにより、イグニッションがオフされてから略5分間はコンデンサCは充電状態を維持するため、イグニッションがオフされてから5分以内にイグニッションを再びオンした場合、突入電流は小さくて済むことになる。イグニッションを比較的短時間にオン、オフするような走行、例えば、宅配便等に好適であろう。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0024】
例えば、本実施形態ではモータを無トルクで駆動することでコンデンサCを放電しているが、他の方法でコンデンサCを放電してもよい。
【0025】
また、イグニッションオフからイグニッションオンまでの平均時間を統計的に算出し、この平均時間に基づいて遅延時間を設定することもできる。例えば、3分程度でイグニッションのオンオフを繰り返している場合、遅延時間を3分強に設定する等である。
【0026】
また、前回のイグニッションオフからオンまでの時間を計測し、この時間に応じてデフォルトの遅延時間を増減調整することも可能である。例えば、デフォルトの遅延時間を3分とした場合、前回のイグニッションオフからオンまでの時間が4分であり、したがってイグニッションオン時には既にコンデンサが放電してしまった場合には、この事実に基づいて遅延時間を1分だけ増大させることも可能である。
【0027】
さらに、統計的に算出された平均時間あるいは前回の計測時間がECU18の動作停止時間を超えている場合、ECU18の動作停止時間を増大させることで遅延時間を確保することも可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によればコンデンサの放電時間を遅らせることで次回のイグニッションオン時における突入電流を小さくでき、プリチャージ回路を設けることなく回路を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態の構成図である。
【図2】 実施形態の処理フローチャートである。
【図3】 従来装置の回路構成図である。
【符号の説明】
10 バッテリ、14,16 インバータ、15,17 モータ、18 ECU。
Claims (4)
- 電源と、
前記電源からの電力により駆動される負荷と、
前記電力のオンオフを切り替えるスイッチと、
前記電源と負荷間の電力ラインに接続されるコンデンサと、
を備える車両用電源装置であって、
車両のイグニッションがオフされてから所定の遅延時間後に前記コンデンサを放電する制御手段と、
を有することを特徴とする車両用電源装置。 - 請求項1記載の装置において、
前記制御手段は、前記イグニッションのオフから一定時間後に自身の動作を停止するものであり、動作停止の直前に前記コンデンサを放電することを特徴とする車両用電源装置。 - 請求項1、2のいずれかに記載の装置において、
前記負荷はモータであり、
前記制御手段は、前記コンデンサからの電力で前記モータをゼロトルク状態で駆動することにより前記コンデンサを放電することを特徴とする車両用電源装置。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の装置において、
前記制御手段は、異常が検出された場合には直ちに前記コンデンサを放電することを特徴とする車両用電源装置。
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