JP4073750B2 - 拡散層セパレータ接合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、金属製拡散層と金属製セパレータからなる拡散層セパレータ接合体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池には、例えば固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで両側から挟み込み、さらに各電極の外側に金属製の拡散層を設け、さらに各拡散層の外側に金属製のセパレータを設けて単位燃料電池(単位セル)を構成したものがある。この種の燃料電池は、実際の使用に際しては、前記単位セルを複数積層して燃料電池スタック(以下、単にスタックという)とする場合が多い。
【0003】
ところで、拡散層は機械的強度が弱く、単体では取り扱いにくい。また、単位セルおよびスタックを組み立てる場合に、前記拡散層と前記セパレータとを別体に取り扱うと、取り扱い部品点数が多くなって組み立て性が悪くなり、組み立ての際の管理項目も増えて煩雑である。
そこで、これらの不具合を解消するため、拡散層とセパレータを接合して一体化することが考えられている。例えば、拡散層とセパレータを接着剤で接着して一体化したり、クリップで挟んで一体化するなどが考えられている。
【0004】
さらに、その後の工程においては、固体高分子電解質膜の両側に配置したアノード側セパレータとカソード側セパレータの端部同士をレーザー溶接で接合して単位セルを一体化する場合もある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−255616号公報(段落番号[0009][0010])
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、拡散層とセパレータを接着剤で接着して一体化する場合には、接着剤の塗布工程と接着剤を硬化させる接着剤硬化工程が必要で製造工程が多くなり、しかも、接着剤硬化工程では高温もしくは常温で数時間焼成する必要があり、生産性が悪い。
また、拡散層とセパレータをクリップで挟持して一体化する場合には、拡散層とセパレータの界面に発生する接触抵抗が発電時の抵抗過電圧の多くを占めるようになり、抵抗過電圧を低減するには面圧を上げなければならない。しかしながら、面圧を上げるためには単位セルおよびスタックの構造を剛体化しなければならなくなって、単位セルおよびスタックの大型化および重量化を招く。
【0007】
そこで、この発明は、小型・軽量で、導電性に優れた拡散層セパレータ接合体の製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、燃料あるいは酸化剤を拡散させて燃料電池(例えば、後述する実施の形態における単位セル1)の電極に供給する金属製の拡散層(例えば、後述する実施の形態における拡散層3,4)と、前記拡散層に隣接して設置され前記燃料および前記酸化剤を分離する金属製のセパレータ(例えば、後述する実施の形態におけるセパレータ5,6)とが一体化されてなる拡散層セパレータ接合体(例えば、後述する実施の形態における拡散層セパレータ接合体7)の製造方法において、前記拡散層と前記セパレータとをレーザー溶接により一体化し、前記レーザー溶接は、前記セパレータ側から前記拡散層側に向けてレーザーを照射することを特徴とする拡散層セパレータ接合体の製造方法である。
このように構成することにより、拡散層とセパレータが一体化されて取り扱い易くなる。また、拡散層とセパレータがレーザー溶接により接合されているので、接合部の導電性が極めて高く、拡散層とセパレータ間の抵抗を小さくすることができる。さらに、面圧をかけずに抵抗を小さくすることができるので、拡散層セパレータ接合体を剛構造にする必要がない。
【0009】
また、拡散層のガス拡散性能に悪影響を及ぼすことなく拡散層とセパレータをレーザー溶接で一体化することができる。また、レーザー溶接を採用したことで、拡散層セパレータ接合体の製造時間の短縮と連続生産が可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る拡散層セパレータ接合体の製造方法の一実施の形態を図1から図4の図面を参照して説明する。
図1は、燃料電池スタック(以下、スタックと略す)Sの縦断面図である。スタックSは単位燃料電池(以下、単位セルという)1を多数積層して構成されている。
【0013】
単位セル1は、固体高分子電解質膜の両側にアノード電極とカソード電極とを備えた膜電極接合体2と、膜電極接合体2の両側に配置されたアノード側拡散層3およびカソード側拡散層4と、アノード側拡散層3の外側に配置されたアノード側セパレータ5と、カソード側拡散層4の外側に配置されたカソード側セパレータ6と、から構成されている。
ここで、アノード側拡散層3とアノード側セパレータ5、および、カソード側拡散層4とカソード側セパレータ6はそれぞれ、予めレーザー溶接により接合され一体化されて拡散層セパレータ接合体7とされており、両拡散層セパレータ接合体7,7の間に膜電極接合体2が挟装されて単位セル1が組み立てられている。
【0014】
アノード側拡散層3とカソード側拡散層4は、金属製(例えば、ステンレス、ハステロイ、インコネル、Au、Cu、Ni、Al、Tiなど)の多孔質体からなり、後述する燃料流路8、酸化剤流路9から供給される燃料ガスや酸化剤ガスを拡散して、膜電極接合体2のアノード電極あるいはカソード電極の全面に均一に供給する。
アノード側セパレータ5およびカソード側セパレータ6はいずれも金属製(例えば、ステンレス、ハステロイ、インコネル、Au、Cu、Ni、Al、Tiなど)で、金属板をプレス成形することにより平坦な山部と谷部が交互に連続する断面波形に形成されている。
そして、各セパレータ5,6の谷部外面がそれぞれ対応する拡散層3,4の表面に面接触し、この面接触部分においてレーザー溶接により接合されている。
【0015】
アノード側の拡散層セパレータ接合体7におけるアノード側拡散層3とアノード側セパレータ5の間には燃料流路8が形成され、カソード側の拡散層セパレータ接合体7におけるカソード側拡散層4とカソード側セパレータ6の間には酸化剤流路9が形成されている。そして、燃料流路8に供給された燃料(例えば水素ガス)はアノード側拡散層3を流通し拡散されて膜電極接合体2のアノード電極に供給され、酸化剤流路9に供給された酸化剤(例えば酸素を含む空気)はカソード側拡散層4を流通し拡散されて膜電極接合体2のカソード電極に供給される。そして、アノード電極で触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を透過してカソード電極まで移動し、カソード電極で酸素と電気化学反応を起こして発電する。
また、隣接する一対の単位セル1,1において互いに当接配置されるアノード側セパレータ5とカソード側セパレータ6との間には、冷却液流路10が形成されており、冷却液流路10を流れる冷却液によって単位セル1は冷却される。
【0016】
次に、アノード側拡散層3とアノード側セパレータ5の溶接方法について、図2に示す溶接部の拡大図を参照して説明する。
一方の面にガス拡散性と導電性を上げるためのCT層と接着剤としてのCNV層(いずれも図示を省略)が塗布されたアノード側拡散層3を用意し、このアノード側拡散層3においてCT層およびCNV層が塗布されていない面の上にアノード側セパレータ5を載置する。そして、アノード側拡散層3とアノード側セパレータ5が面接触する部位において、アノード側セパレータ5の上方から図示しないレーザー照射装置によりアノード側セパレータ5にレーザービームを照射し、アノード側セパレータ5を局部的に溶融させる。このレーザーの照射による金属の溶融は、アノード側拡散層3の拡散性を保持するために、アノード側セパレータ5だけに留めるのが好ましい。
【0017】
このようにすると、アノード側セパレータ5を局部的に溶融させて生じた溶融金属5aの一部が、多孔質体からなるアノード側拡散層3に染み込んでいく。その後、レーザーの照射を停止して自然冷却することにより、アノード側セパレータ5に留まった溶融金属とアノード側拡散層3に染み込んだ溶融金属を固化させる。これにより、アノード側拡散層3とアノード側セパレータ5がスポット的に接合される。このスポット溶接部を、アノード側拡散層3とアノード側セパレータ5が面接触する部位に多数分散して設けることにより、アノード側拡散層3とアノード側セパレータ5は一体化される。なお、この実施の形態では生産性を上げるためにスポット溶接としたが、これに限るものではなく、シーム溶接にしてもよい。シーム溶接にすると接触面積を大きくすることができる。
カソード側拡散層4とカソード側セパレータ6の溶接も同様な方法で行う。
【0018】
そして、このようにして製造されたアノード側の拡散層セパレータ接合体7とカソード側の拡散層セパレータ接合体7で膜電極接合体2を挟み込み、ホットプレスなどにより一体化することにより、単位セル1が製造される。
【0019】
このように拡散層3,4とセパレータ5,6をレーザー溶接により一体化して拡散層セパレータ接合体7にすると、取り扱い易くなり、単位セル1あるいはスタックSの組み立て等における作業性が向上する。
また、拡散層3,4とセパレータ5,6がレーザー溶接により接合されているので、接合部の導電性が極めて高く、拡散層3,4とセパレータ5,6間の抵抗を小さくすることができる。その結果、単位セル1およびスタックSの性能が向上する。
さらに、面圧をかけずに抵抗を小さくすることができるので、拡散層セパレータ接合体7を剛構造にする必要がなく、拡散層セパレータ接合体7の小型・軽量化を図ることができる。これにより、単位セル1およびスタックSも剛構造にする必要がなく、単位セル1およびスタックSの小型・軽量化を図ることができる。
【0020】
また、レーザー溶接を採用したことで、拡散層セパレータ接合体の製造時間の短縮と連続生産が可能になる。さらに、拡散層セパレータ接合体7の取り扱い易さも相俟って、単位セル1およびスタックSの生産性が向上する。
また、この実施の形態では、セパレータ5,6側からレーザーを照射し、セパレータ5,6だけを溶融させ、拡散層3,4を溶融させないようにしているので、溶接により拡散層3,4の拡散性が損なわれることがない。したがって、拡散層3,4は良好な拡散性が確保される。
【0021】
なお、この発明における拡散層セパレータ接合体7の製造に使用可能なレーザーとしては、YAGレーザーが微小溶接に好適であり、そのほか、気体(He−Ne、Ar+ 、CO2)レーザー、固体(ルビー、ガラス)レーザー、液体(有機、色素)レーザー、半導体(GaAs)レーザー等を用いることも可能である。
また、レーザー溶接に代えて、電子ビーム溶接やTIG溶接を用いることも可能である。
【0022】
図3は比較例を示し、拡散層側からレーザーを照射して拡散層を局部的に溶融し、この拡散層の溶融金属により拡散層とセパレータを溶接した場合を示している。なお、図3は、アノード側拡散層3の溶融金属3aでアノード側拡散層3とアノード側セパレータ5を溶接した場合における溶接部位の拡大図である。
【0023】
また、上述した実施の形態では、断面波形のセパレータ5,6を用い、拡散層3,4とセパレータ5,6の間に形成された溝を燃料流路8あるいは酸化剤流路9としたが、拡散層3,4の内部に流路隔壁を設けて拡散層3,4の内部に燃料流路あるいは酸化剤流路が形成された拡散層3,4を用いる場合には、図4に示すように、セパレータ5,6は平板状のものを使用することができる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明するように、請求項1に係る拡散層セパレータ接合体の製造方法の発明によれば、拡散層のガス拡散性能に悪影響を及ぼすことなく拡散層とセパレータをレーザー溶接で一体化することができるので、ガス拡散性に優れた拡散層セパレータ接合体を容易に製造することができる。
また、レーザー溶接を採用したことで、拡散層セパレータ接合体の製造時間の短縮と連続生産が可能になり、生産性が向上する。
そして、この製造方法により製造された拡散層セパレータ接合体は、拡散層とセパレータが一体化されて取り扱い易くなり、燃料電池および燃料電池スタックの組み立て等における作業性が向上する。
また、拡散層とセパレータがレーザー溶接により接合されているので、接合部の導電性が極めて高く、拡散層とセパレータ間の抵抗を小さくすることができる。
さらに、面圧をかけずに抵抗を小さくすることができるので、拡散層セパレータ接合体を剛構造にする必要がなく、その結果、拡散層セパレータ接合体の小型・軽量化を図ることができる。
【0026】
また、拡散層とセパレータがレーザー溶接により接合されているので、接合部の導電性が極めて高く、拡散層とセパレータ間の抵抗を小さくすることができ、その結果、燃料電池の性能を向上することができる。さらに、拡散層とセパレータの接合部に面圧をかけずに抵抗を小さくすることができるので、燃料電池を剛構造にする必要がなく、燃料電池の小型・軽量化を図ることができる。さらに、拡散層とセパレータの接合にレーザー溶接を採用したことで、燃料電池の製造時間を短縮することができ、生産性が向上する。
【0027】
さらに、燃料電池スタックの高性能化および小型・軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係る拡散層セパレータ接合体の製造方法により製造された拡散層セパレータ接合体を備えた燃料電池スタックの断面図である。
【図2】 この発明に係る拡散層セパレータ接合体の製造方法を説明するための溶接部の拡大断面図である。
【図3】 拡散層セパレータ接合体の製造方法の比較例を説明するための溶接部の拡大断面図である。
【図4】 この発明に係る拡散層セパレータ接合体の製造方法により製造された別の拡散層セパレータ接合体を備えた単位燃料電池の断面図である。
【符号の説明】
1 単位セル(燃料電池)
3 アノード側拡散層
4 カソード側拡散層
5 アノード側セパレータ
6 カソード側セパレータ
7 拡散層セパレータ接合体
S 燃料電池スタック
Claims (1)
- 燃料あるいは酸化剤を拡散させて燃料電池の電極に供給する金属製の拡散層と、前記拡散層に隣接して設置され前記燃料および前記酸化剤を分離する金属製のセパレータとが一体化されてなる拡散層セパレータ接合体の製造方法において、
前記拡散層と前記セパレータとをレーザー溶接により一体化し、前記レーザー溶接は、前記セパレータ側から前記拡散層側に向けてレーザーを照射することを特徴とする拡散層セパレータ接合体の製造方法。
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