JP4073729B2 - 容量素子を用いた力センサおよび加速度センサならびにその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、容量素子を用いた力センサおよび加速度センサならびにその製造方法に関し、特に、小型民生用電子機器に利用される量産型の力センサおよび加速度センサならびにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話、デジタルカメラ、電子ゲーム機器、PDA機器など、マイクロプロセッサを内蔵した小型民生用の電子機器の普及はめざましく、最近では、これらの電子機器あるいはその入力装置に内蔵させるための力センサや加速度センサの需要も高まってきている。力センサを備えた電子機器では、オペレータの指による操作を外力として検出することができ、検出した外力の方向や大きさに基づいて、オペレータが与えた指示や操作量を認識することができる。また、加速度センサを備えた電子機器では、本体に加えられた衝撃や振動などの加速度成分をデジタルデータとしてマイクロプロセッサに取り込むことができるため、電子機器周囲の物理的環境を把握した適切な処理が可能になる。たとえば、デジタルカメラでは、シャッターボタンを押した瞬間に作用した加速度を検出することにより、手振れに対する補正を行うことができ、電子ゲーム機器用の入力装置などでは、オペレータの操作指示を加速度の形で入力することも可能になる。
【0003】
このような小型民生用電子機器に内蔵するための力センサや加速度センサとしては、小型で量産に適したものが望ましく、現在、半導体デバイスの製造プロセスを利用して量産が可能な半導体基板を用いたタイプのものが多く利用されている。この種のセンサでは、可撓性をもった半導体基板に外力の作用により撓みを生じさせ、この撓みの状態に基づいて、作用した外力を電気的に検出する手法が採られている。基板の撓みの検出には、容量素子、ピエゾ抵抗素子、圧電素子など、種々の検出素子が利用されているが、比較的低コストのセンサには、容量素子が利用されることが多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
容量素子を用いた力センサや加速度センサは、半導体基板などに形成された一対の電極間距離の変化を、当該一対の電極から構成される容量素子の静電容量値の変化として検出する原理に基づくものである。このため、半導体基板の所定箇所に複数の電極を形成する必要があり、製造プロセスにおいて、この電極を形成するための工程が不可欠である。しかしながら、量産効果を向上させるためには、製造プロセスの一層の単純化が必要になる。
【0005】
そこで本発明は、より単純な構造をもった容量素子を用いた力センサおよび加速度センサを提供することを目的とし、また、そのようなセンサの量産に適した製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、導電性をもった上層部と、絶縁性をもった中層部と、導電性をもった下層部と、の少なくとも3層構造を有するセンサ本体と、検出値を電気信号として取り出すための検出回路と、により力センサを構成するようにし、
上層部の上面の中心位置に原点Oをとり、上層部の上面において互いに直交する方向にそれぞれX軸およびY軸をとり、上層部の上面に対して垂直な方向にZ軸をとることにより、XYZ三次元直交座標系を定義したときに、
上層部が、原点Oの近傍に配置された島状部と、島状部からX軸正方向に伸びる第1の橋梁部と、島状部からY軸正方向に伸びる第2の橋梁部と、島状部からX軸負方向に伸びる第3の橋梁部と、島状部からY軸負方向に伸びる第4の橋梁部と、の5つの部分を有する十字形部材と、XY座標における第1象限に位置する第1の固定部材と、XY座標における第2象限に位置する第2の固定部材と、XY座標における第3象限に位置する第3の固定部材と、XY座標における第4象限に位置する第4の固定部材と、によって構成されるようにし、十字形部材、第1の固定部材、第2の固定部材、第3の固定部材、第4の固定部材が、物理的に互いに非接触となるように配置されるようにし、
下層部が、第1の固定部材の内側部分の一部の領域に対向する第1の羽根部と、第2の固定部材の内側部分の一部の領域に対向する第2の羽根部と、第3の固定部材の内側部分の一部の領域に対向する第3の羽根部と、第4の固定部材の内側部分の一部の領域に対向する第4の羽根部と、中央付近において第1の羽根部、第2の羽根部、第3の羽根部、第4の羽根部を互いに接続する羽根接合部と、を有する作用体と、この作用体に対して所定間隔をおきながら、その周囲を取り囲む台座と、によって構成されるようにし、
中層部が、島状部の下面と、羽根接合部の上面と、を接続する中央接続部と、台座の上面と、第1の固定部材、第2の固定部材、第3の固定部材、第4の固定部材、第1の橋梁部、第2の橋梁部、第3の橋梁部、第4の橋梁部、のそれぞれ外側部分の下面と、を接続する周囲接続部と、によって構成されるようにし、
第1の橋梁部、第2の橋梁部、第3の橋梁部、第4の橋梁部は、作用体に外力が作用した場合に撓みを生じる性質を有しており、この撓みにより作用体が台座に対して変位を生じるように構成されており、
検出回路が、第1の固定部材と第1の羽根部とによって構成される第1の容量素子、第2の固定部材と第2の羽根部とによって構成される第2の容量素子、第3の固定部材と第3の羽根部とによって構成される第3の容量素子、第4の固定部材と第4の羽根部とによって構成される第4の容量素子、の各静電容量値に基づいて、作用体に作用した外力を示す電気信号を出力するようにしたものである。
【0007】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る容量素子を用いた力センサにおいて、
上層部を構成する十字形部材、第1の固定部材、第2の固定部材、第3の固定部材、第4の固定部材が、上層部を厚み方向に貫通する所定幅のスリットによって、互いに分離されているようにしたものである。
【0008】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係る容量素子を用いた力センサにおいて、
島状部の厚み方向に形成された貫通孔を通して、作用体に接触する配線部が設けられ、
検出回路がこの配線部と各固定部材との間の静電容量値に基づいて検出値を出力するようにしたものである。
【0009】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1〜第3の態様に係る容量素子を用いた力センサにおいて、
所定の許容範囲を越える外力が作用した場合に、作用体のいずれかの羽根部の上面がいずれかの固定部材の下面に接触して変位が制御されるように、中層部の厚みを設定するようにしたものである。
【0010】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1〜第4の態様に係る容量素子を用いた力センサにおいて、
検出回路が、第1の容量素子の静電容量値と第4の容量素子の静電容量値との和と、第2の容量素子の静電容量値と第3の容量素子の静電容量値との和と、の差に基づいて、作用体に作用した外力のX軸方向成分を示す検出値を出力し、第1の容量素子の静電容量値と第2の容量素子の静電容量値との和と、第3の容量素子の静電容量値と第4の容量素子の静電容量値との和と、の差に基づいて、作用体に作用した外力のY軸方向成分を示す検出値を出力するようにしたものである。
【0011】
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第1〜第4の態様に係る容量素子を用いた力センサにおいて、
XY座標における第1象限が正方向、第3象限が負方向となり、XY両座標軸に対して45°をなすV軸を定義し、XY座標における第2象限が正方向、第4象限が負方向となり、XY両座標軸に対して45°をなすW軸を定義したときに、
検出回路が、第1の容量素子の静電容量値と第3の容量素子の静電容量値との差に基づいて、作用体に作用した外力のV軸方向成分を示す検出値を出力し、第2の容量素子の静電容量値と第4の容量素子の静電容量値との差に基づいて、作用体に作用した外力のW軸方向成分を示す検出値を出力するようにしたものである。
【0012】
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第5または第6の態様に係る容量素子を用いた力センサにおいて、
検出回路が、更に、第1の容量素子の静電容量値、第2の容量素子の静電容量値、第3の容量素子の静電容量値、第4の容量素子の静電容量値の総和に基づいて、作用体に作用した外力のZ軸方向成分を示す検出値を出力するようにしたものである。
【0013】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第1〜第7の態様に係る容量素子を用いた力センサにおいて、
上層部および下層部を構成する材料と中層部を構成する材料とを、互いにエッチング特性の異なる材料によって構成したものである。
【0014】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第1〜第8の態様に係る容量素子を用いた力センサにおいて、
上層部および下層部を、不純物をドープしたシリコン層によって構成し、中層部を酸化シリコン層によって構成したものである。
【0015】
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第9の態様に係る容量素子を用いた力センサにおいて、
センサ本体を、不純物をドープしたシリコン層/酸化シリコン層/不純物をドープしたシリコン層なる3層構造を有するSOI基板によって構成したものである。
【0016】
(11) 本発明の第11の態様は、上述の第1〜第10の態様に係る容量素子を用いた力センサを用い、作用体に作用した加速度に起因する力を検出することにより検出回路から加速度の検出信号を出力させるようにし、加速度センサとして利用できるようにしたものである。
【0017】
(12) 本発明の第12の態様は、上述の第11の態様に係る加速度センサにおいて、
台座の底面に制御基板を接続し、この台座の底面に対して作用体の底面が所定寸法だけ上方に位置し、作用体の底面と制御基板の上面との間に所定間隔が確保されるように、作用体の厚みを設定するようにし、
作用した加速度の所定方向成分の大きさが所定の許容値を越えたときに、作用体の底面が制御基板の上面に接触して変位が制御されるようにしたものである。
【0018】
(13) 本発明の第13の態様は、上述の第1〜第12の態様に係る容量素子を用いた力センサもしくは加速度センサの製造方法において、
上から順に、導電性をもった第1の層、絶縁性をもった第2の層、導電性をもった第3の層の3層を積層してなる材料基板を用意する準備段階と、
第1の層に対しては浸食性を有し、第2の層に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、第1の層の所定領域に対して、第2の層の上面が露出するまで厚み方向へのエッチングを行い、第1の層にスリットを形成することにより、第1の層を、十字形部材、第1の固定部材、第2の固定部材、第3の固定部材、第4の固定部材に分離するとともに、これら各固定部材の内側部分の所定領域にエッチング用貫通孔を形成する上層部形成段階と、
第3の層に対しては浸食性を有し、第2の層に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、第3の層の所定領域に対して、第2の層の下面が露出するまで厚み方向へのエッチングを行い、第3の層を作用体と台座とに分離する下層部形成段階と、
第2の層に対しては浸食性を有し、第1の層および第3の層に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、第2の層に対して、その露出部分から厚み方向および層方向へのエッチングを行い、残存した部分により中央接続部および周囲接続部を形成する中層部形成段階と、
を行うようにしたものである。
【0019】
(14) 本発明の第14の態様は、上述の第13の態様に係る容量素子を用いた力センサもしくは加速度センサの製造方法において、
中層部形成段階で行われるエッチングにより、作用体の各羽根部の上方に位置する第2の層からなる部分が除去できるように、上層部形成段階において、所定箇所に複数のエッチング用貫通孔を形成するようにしたものである。
【0020】
(15) 本発明の第15の態様は、上述の第13または第14の態様に係る加速度センサの製造方法において、
台座部分の厚みに比べて作用体部分の厚みが小さくなるように、下層部の作用体となるべき領域の下層部分をエッチング除去する厚み調整段階と、
台座底面に制御基板を接合する制御基板接合段階と、
を更に行うようにしたものである。
【0021】
(16) 本発明の第16の態様は、上述の第13〜第15の態様に係る容量素子を用いた力センサもしくは加速度センサの製造方法において、
上層部形成段階および下層部形成段階で、誘導結合型プラズマエッチング法を用いることにより、厚み方向へのエッチングを行うようにしたものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施形態に基いて説明する。
【0023】
<<< §1.センサ本体の基本構造 >>>
本発明は力センサおよび加速度センサに関するものであるが、その基本構造はいずれもほぼ同一であり、ここでは、力センサとしても、加速度センサとしても利用可能なセンサ本体の基本構造を述べる。
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ本体の上面図である。このセンサ本体は、基本的に、導電性をもった上層部100と、絶縁性をもった中層部200と、導電性をもった下層部300との3層構造から構成されている。具体的には、ここに示す実施形態の場合、上層部100は、P型もしくはN型の不純物をドープしたシリコン層から構成されており、中層部200は酸化シリコン層から構成されており、下層部300は、P型もしくはN型の不純物をドープしたシリコン層から構成されている。このようなシリコン/酸化シリコン/シリコンなる3層構造をもった材料は、SOI(Silicon On Insulator)基板として市販されており、ここに示すセンサ本体は、このSOI基板を利用した製造プロセスによって製造することが可能である。
【0024】
ここに示す実施形態では、上層部100、中層部200、下層部300は、いずれも正方形状の板状部材である。上層部100には、厚み方向に貫通するスリットS1〜S4が形成されており、図1では、このスリットS1〜S4を通して、下層部300の一部が確認できる。図1はかなり繁雑な図になっているが、これは上層部100の下に隠れている中層部200の構造を一点鎖線で示し、下層部300の構造を破線で示したためである。一方、図2は、図1に示すセンサ本体を、切断線2−2の位置で切断した側断面図であり、図3は、同じく図1に示すセンサ本体を、切断線3−3の位置で切断した側断面図である。これら側断面図には、このセンサ本体が、上層部100、中層部200、下層部300の3層構造からなることが明瞭に示されている。なお、ここでは説明の便宜上、上層部100の構成要素を100番台の符号で示し、中層部200の構成要素を200番台の符号で示し、下層部300の構成要素を300番台の符号で示すことにする。また、図4は、このセンサ本体の下面図であり、この下面図では、下層部300の陰に隠れている中層部200の構造は示されておらず、上層部100の構造の一部については破線で示されている。
【0025】
図1に示す上面図や図4に示す下面図は、各層相互の位置関係の確認を行う場合には便利であるが、単一の図に、複数の層構造が重ねて描かれているため、かなり繁雑になっており、個々の層の細かな構造の説明を行うのには必ずしも適当ではない。そこで、以下、個々の層をそれぞれ独立して描いた平面図を用い、図2および図3の側断面図を参照しながら、各層の構造を順に説明する。
【0026】
まず、図5を用いて、上層部100の構造を説明する。この図5は、上層部100を単体として示した上面図である。図示のとおり、上層部100は、正方形状の板状部材からなり、厚み方向に貫通する所定幅のスリットS1〜S4が形成されている。この実施形態の場合、上層部100は、不純物をドープすることにより導電性をもったシリコンの基板層から構成されており、スリットS1〜S4は、後述するように、このシリコンの基板層に対してエッチング加工を施すことにより形成される。スリットS1〜S4は、いずれもほぼL字状をしており、これら4本のスリットによって、上層部100は、図示のとおり、5つの部材120,121,122,123,124に分けられることになる。ここでは、この5つの部材のうち、部材120(図示のとおり、この部材は、更に5つの部分125〜129から構成されている)を十字形部材と呼び、部材121〜124を固定部材(後述するように、これらの部材は台座に固定される)と呼ぶことにする。
【0027】
ここでは、説明の便宜上、図5に示されているように、上層部100の上面の中心位置に原点Oをとり、この上層部100の上面において互いに直交する方向にそれぞれX軸およびY軸をとる。すなわち、X軸は上層部100の輪郭となる正方形の横の辺に平行な方向を向き、図の右方向を正方向とする座標軸であり、Y軸は上層部100の輪郭となる正方形の縦の辺に平行な方向を向き、図の上方向を正方向とする座標軸である。結局、上層部100の上面を含む平面上に二次元XY座標系を定義することができる。ここで、原点Oを通り、上層部100の上面に対して垂直な方向にZ軸(図5の紙面垂直上方を正方向とする)をとれば、XYZ三次元直交座標系を定義することができる。なお、本明細書では、原点Oに近い方を内側部分、遠い方を外側部分と呼ぶことにする。
【0028】
このような座標系を定義すると、図5に示すように、十字形部材120は、原点Oの近傍に配置された島状部125と、島状部125からX軸正方向に伸びる第1の橋梁部126と、島状部125からY軸正方向に伸びる第2の橋梁部127と、島状部125からX軸負方向に伸びる第3の橋梁部128と、島状部125からY軸負方向に伸びる第4の橋梁部129と、の5つの部分から構成されることになる。また、ほぼ正方形の板状をした第1の固定部材121は、XY座標における第1象限に位置することになり、ほぼ正方形の板状をした第2の固定部材122は、XY座標における第2象限に位置することになり、ほぼ正方形の板状をした第3の固定部材123は、XY座標における第3象限に位置することになり、ほぼ正方形の板状をした第4の固定部材124は、XY座標における第4象限に位置することになる。
【0029】
このように、上層部100は、十字形部材120、第1の固定部材121、第2の固定部材122、第3の固定部材123、第4の固定部材124なる5つの部材によって構成されており、これら5つの部材は、スリットS1〜S4によって、物理的に互いに非接触となるように配置されていることになる。このように、これら5つの部材はそれぞれバラバラの構成要素であるが、後述するように、いずれもその外側部分(原点Oから遠い部分)が下層部300の台座部分に固定されることになる。
【0030】
なお、各固定部材121〜124の内側部分(原点Oに近い部分)の所定箇所には、それぞれエッチング用貫通孔H1〜H4が形成されている。図示の例では、各エッチング用貫通孔H1〜H4は、それぞれ3×3のマトリックス状に配列された9個の貫通孔の集合によって構成されている。これらエッチング用貫通孔H1〜H4は、センサ本体の動作に必要なものではなく、後述する製造プロセスを実施する上で必要になる構成要素である(いわば、哺乳動物の臍の役割と同等であると考えれば、理解しやすいであろう)。したがって、センサ本体の構造および動作を説明する上では、このエッチング用貫通孔H1〜H4のない実施形態を示した方が適切かもしれないが、実用上、本発明を実施する際には、後述する製造プロセスによってセンサ本体を量産するのが望ましいので、ここでは、敢えて、このような製造プロセスを経て量産されたセンサ本体についての構造および動作を実施形態として説明することにする。
【0031】
この図5の上面図に示されている上層部100の基本構造は、図2および図3の側断面図によっても明瞭に示されている。図2に示されている上層部100は、図5に示されている上層部100を切断線2−2に沿って切った側断面図に相当する。この図2には、上層部100の厚み方向に貫通するスリットS1,S2と、エッチング用貫通孔H1,H2が示されており、また、第1の固定部材121,第2の固定部材122,第2の橋梁部127の断面が示されている。一方、図3は、図5に示されている上層部100を切断線3−3に沿って切った側断面図に相当し、上層部100のうちの十字形部材120だけが示されている。
【0032】
図6は、図3の側断面図において、上層部100を図の切断線6−6に沿って切断した横断面図であり、厚み方向に貫通するスリットS1〜S4およびエッチング用貫通孔H1〜H4の形状および配置が明瞭に示されている。4組のスリットS1〜S4は全く同形であり、かつ、シンメトリック(図6の平面図において左右対称および上下対称)に配置されている。
【0033】
十字形部材120の中央部分を構成する島状部125は、その四方を第1の橋梁部126、第2の橋梁部127、第3の橋梁部128、第4の橋梁部129によって支持された文字どおり島状の部分になっている。各橋梁部126〜129は、両側をスリットで挟まれた細長いビーム状の構造体をなし、後述するように、その外側部分は台座に固定されている。しかも、各橋梁部126〜129は、可撓性を有しており、島状部125に対して外力が作用すると、各橋梁部126〜129が撓みを生じるように構成されている。結局、島状部125に対して外力が作用すると、各橋梁部126〜129が撓み、島状部125が変位を生じることになる。
【0034】
前述したように、この実施形態では、上層部100はシリコンの基板層によって構成されているので、この上層部100の厚みをある程度小さく設定すれば、各橋梁部126〜129に可撓性をもたせることができる。ただし、上層部100の厚みをあまり小さく設定すると破損しやすくなるので、実用上は、このセンサ本体の用途に応じて、どの程度の検出感度が必要になり、どの程度の堅牢性が必要になるか、などの条件を考慮して、最適な厚みを設定するのが好ましい。
【0035】
次に、図7を用いて、中層部200の構造を説明する。この図7は、中層部200を単体として示した横断面図であり、図3の側断面図において、中層部200を図の切断線7−7に沿って切断した横断面図に相当する。ここに示す実施形態の場合、中層部200は、後述するように、層面が正方形状をした酸化シリコン層に対して、エッチング加工を施すことにより形成されることになる。図示のとおり、中層部200は、中央部分に配置された中央接続部210と、周囲部分に配置され、全体的に方環状形状をもった周囲接続部230と、によって構成される。これら各接続部は、いずれも同一の厚みを有している。なお、周囲接続部230は、溝部G0によって、部分接続部231〜238なる8個の細かな部分に分割されているが、これも、後述する製造プロセスを実施したために生じる付随的な特徴であり、本発明を実施する上で、周囲接続部230を、このような複数の部分接続部に分ける必要はない。中央接続部210および周囲接続部230の根本的な機能は、後述するように、上層部100の所定部分と下層部300の所定部分とを接続することである。
【0036】
最後に、図8を用いて、下層部300の構造を説明する。この図8は、下層部300を単体として示した横断面図であり、図3の側断面図において、下層部300を図の切断線8−8に沿って切断した横断面図に相当する。ここに示す実施形態の場合、下層部300は、後述するように、層面が正方形状をしたシリコン層に対してエッチング加工を施すことにより、形成されることになる。図の溝部G1およびG2は、このエッチング加工によりシリコンが除去された部分である。図示のとおり、下層部300は、送風機のファン状形状をなす作用体310と、これを囲う位置に配置され、方環状形状をもった台座330と、によって構成される。ここで、作用体310は、第1の羽根部311、第2の羽根部312、第3の羽根部313、第4の羽根部314と、中央付近においてこれら4つの羽根部を互いに接続する羽根接合部315によって構成されている。また、台座330は、作用体310に対して所定間隔をおきながら、その周囲を取り囲むように配置されている。
【0037】
図9は、上層部100の各構成要素と下層部300の各構成要素との位置関係を示す上面図である。図示のとおり、作用体310の4つの羽根部311〜314は、上層部100を構成する4つの固定部材121〜124の内側部分の一部の領域において、平面的に重なっている。図にハッチングを施した部分は、この平面的な重なり領域を示している(この図9におけるハッチングは、断面を示すものではない)。すなわち、第1の固定部材121の内側部分の一部の領域(ハッチング部分)の下方には、第1の羽根部311が対向するように配置されており、第2の固定部材122の内側部分の一部の領域(ハッチング部分)の下方には、第2の羽根部312が対向するように配置されており、第3の固定部材123の内側部分の一部の領域(ハッチング部分)の下方には、第3の羽根部313が対向するように配置されており、第4の固定部材124の内側部分の一部の領域(ハッチング部分)の下方には、第4の羽根部314が対向するように配置されている。
【0038】
図7に示す中層部200における中央接続部210は、図6に示す島状部125と図8に示す羽根接合部315との間に介挿され、両者を接続する機能を有し、図7に示す中層部200における周囲接続部230(231〜238)は、図6に示す各固定部材121〜124の外側部分および各橋梁部126〜129の外側部分と図8に示す台座330との間に介挿され、両者を接続する機能を有する。
【0039】
以上、上層部100、中層部200、下層部300の構造をそれぞれ別個に説明したが、ここで述べる実施形態に係るセンサ本体は、図1の上面図、図2および図3の側断面図、図4の下面図に示されているとおり、これら3層を接合することにより得られる構造体である。図3の側断面図を見れば明らかなように、作用体310は、台座330によって周囲を囲まれた空間内に位置することになり、その上面中央部が中央接続部210を介して十字形部材120の中央部分、すなわち、島状部125の下面に接続されている。また、十字形部材120は、その周囲部分が周囲接続部232,234,236,238を介して台座330の上面に固定されているので、結局、作用体310は、台座330によって囲まれた空間内において、上方から宙吊りの状態となっている。
【0040】
<<< §2.力もしくは加速度センサとしての動作 >>>
続いて、これまで§1で述べたセンサ本体を利用した力もしくは加速度センサの動作を説明する。図3の側断面図に示されているように、このセンサ本体では、作用体310が、十字形部材120の下面(島状部125の下面)に取り付けられており、台座330に囲われた空間内で宙吊りの状態になっている。しかも、十字形部材120を構成する4本の橋梁部126〜129は可撓性を有しているため、台座330を固定した状態で、作用体310に対して外力を作用させると、この外力により4本の橋梁部126〜129に撓みが生じることになり、作用体310が台座330に対して相対的に変位する。
【0041】
たとえば、図10の側断面図(図3と同様に、図1に示すセンサ本体を切断線3−3で切った断面を示す)に示すように、作用体310に対して、図の矢印で示す方向(X軸正方向)に外力+Fxが作用したとすると、十字形部材120の各部が図示のように撓み、作用体310は台座330に対して図のような相対位置変化を生じることになる。逆に、図11の側断面図(図3と同様に、図1に示すセンサ本体を切断線3−3で切った断面を示す)に示すように、作用体310に対して、図の矢印で示す方向(X軸負方向)に外力−Fxが作用したとすると、十字形部材120の各部が図示のように撓み、作用体310は台座330に対して図のような相対位置変化を生じることになる。本発明に係るセンサは、このような相対位置変化を、容量素子を用いて電気信号の形で検出する機能を有している。
【0042】
このセンサ本体を、携帯電話、デジタルカメラ、電子ゲーム機器、PDA機器などの電子機器に内蔵した場合、オペレータの指による操作により、作用体310に対して直接的もしくは間接的にこのような外力を作用させることができる。そして、後述する検出回路を用いることにより、作用した外力の向きと大きさとを検出することができれば、オペレータの操作入力を電気的に検出することが可能になる。あるいは、作用体310を重錐体として機能させれば、このセンサ本体を内蔵した電子機器に作用した加速度を、電気的に検出することも可能になる。
【0043】
なお、ここに示す実施形態の場合、作用体310に、所定の許容範囲を越える外力や加速度が作用した場合、作用体310の羽根部311〜314のいずれかの上面が、固定部材121〜124のいずれかの下面に接触して変位が制御されるように、中層部200の厚みが設定されている。たとえば、作用体310に作用するX軸正方向の力+Fxの大きさが所定の許容範囲に達した場合、図9に示す第1の羽根部311および第4の羽根部314の上面が、第1の固定部材121および第4の固定部材124の下面に接触して、それ以上の変位が制限されることになる。このため、各橋梁部126〜129に過度の撓みが生じることを抑制することができ、各橋梁部が物理的に破損するのを防ぐことができる。
【0044】
もちろん、各橋梁部をこのような物理的な破損から保護するために、図8に示す溝部G1の寸法を所定値以下に設定することも有効である。この場合、過度の力や加速度が作用した場合、作用体310の側面が台座330の内面に接触して、変位の制御が行われることになる。
【0045】
続いて、この実施形態に係るセンサ本体において、作用体310に作用した外力あるいは加速度の向きと大きさとを検出する原理を説明する。図9にハッチングを施して示したように、作用体310の4つの羽根部311〜314は、4つの固定部材121〜124の内側部分の一部の領域において、平面的に重なっている。別言すれば、図9にハッチングを施した4つの領域は、上方に固定部材の一部が配置され、下方に羽根部が配置された状態になっており、両者間には、力や加速度が作用していない状態において、中層部200の厚みに相当する間隔が保持されている。
【0046】
既に述べたように、上層部100および下層部300は、いずれも導電性材料から構成されているので、図9にハッチングを施して示した領域には、それぞれ容量素子が形成されることになる。すなわち、第1の固定部材121と第1の羽根部311とによって第1の容量素子C1が構成され、第2の固定部材122と第2の羽根部312とによって第2の容量素子C2が構成され、第3の固定部材123と第3の羽根部313とによって第3の容量素子C3が構成され、第4の固定部材124と第4の羽根部314とによって第4の容量素子C4が形成される。各固定部材121〜124には、エッチング用貫通孔H1〜H4が形成されているため、容量素子を形成するための電極有効面積は若干減少するものの、本質的には問題はない。ここで、各羽根部311〜314は、羽根接合部315によって接続されているため、電気的には同電位の共通電極として機能するが、各固定部材121〜124は、互いに電気的に絶縁された電極として機能するので、4組の独立した容量素子が形成されることになる。しかも、これら4組の容量素子の静電容量値は、作用体310に作用した力あるいは加速度の向きおよび大きさに基づいて変化することになる。
【0047】
たとえば、図10に示すように、作用体310にX軸正方向の力+Fxが加わった場合、作用体310は図示のとおり変位し、第1の容量素子C1および第4の容量素子C4の電極間隔は小さくなるため静電容量値は増加し、第2の容量素子C2および第3の容量素子C3の電極間隔は大きくなるため静電容量値は減少する。逆に、図11に示すように、作用体310にX軸負方向の力−Fxが加わった場合、作用体310は図示のとおり変位し、第1の容量素子C1および第4の容量素子C4の電極間隔は大きくなるため静電容量値は減少し、第2の容量素子C2および第3の容量素子C3の電極間隔は小さくなるため静電容量値は増加する。
【0048】
したがって、第1の容量素子C1の静電容量値と第4の容量素子C4の静電容量値との和と、第2の容量素子C2の静電容量値と第3の容量素子C3の静電容量値との和と、の差を検出すれば、この検出値は、作用体310に作用した外力や加速度のX軸方向成分を示す値になる。全く同様の原理により、第1の容量素子C1の静電容量値と第2の容量素子C2の静電容量値との和と、第3の容量素子C3の静電容量値と第4の容量素子C4の静電容量値との和と、の差を検出すれば、この検出値は、作用体310に作用した外力や加速度のY軸方向成分を示す値になる。
【0049】
また、作用体310に対して、Z軸正方向の力+Fzが加わった場合、4組の容量素子C1〜C4の電極間隔はいずれも小さくなり、静電容量値はいずれも増加する。逆に、作用体310に対して、Z軸負方向の力−Fzが加わった場合、4組の容量素子C1〜C4の電極間隔はいずれも大きくなり、静電容量値はいずれも減少する。したがって、第1の容量素子C1の静電容量値、第2の容量素子C2の静電容量値、第3の容量素子C3の静電容量値、第4の容量素子C4の静電容量値の総和を検出すれば、この検出値は、作用体310に作用した外力や加速度のZ軸方向成分を示す値になる。
【0050】
図12は、上述した検出原理に基づいて、作用体310に作用した外力あるいは加速度のX軸方向成分、Y軸方向成分、Z軸方向成分の検出値を電気信号として出力する機能をもった検出回路の一例を示す回路図である。この検出回路では、共通電極として機能する各羽根部311〜314は接地されている。各容量素子C1〜C4の静電容量値は、それぞれC/V変換回路410〜440によって電圧値V1〜V4に変換される。そして、加算器451,452によって、それぞれ(V1+V4)および(V2+V3)が演算された後、減算器453によってその差が演算され、(V1+V4)−(V2+V3)なる値が出力端子Txに出力される。この値は、作用した外力や加速度のX軸方向成分を示す値になる。同様に、加算器461,462によって、それぞれ(V1+V2)および(V3+V4)が演算された後、減算器463によってその差が演算され、(V1+V2)−(V3+V4)なる値が出力端子Tyに出力される。この値は、作用した外力や加速度のY軸方向成分を示す値になる。また、加算器471によって、(V1+V2+V3+V4)なる総和が演算され、出力端子Tzに出力される。この値は、作用した外力や加速度のZ軸方向成分を示す値になる。
【0051】
かくして、図12に示す検出回路を用いれば、作用した外力や加速度のX軸,Y軸,Z軸方向成分のすべてを検出することができる。しかも各軸方向成分の検出値には、他の軸方向成分が影響しないような演算が行われているため、個々の軸方向成分を独立した値として得ることができる。すなわち、検出対象となる外力や加速度に、X軸,Y軸,Z軸の3軸方向成分が含まれていたとしても、出力端子Txに得られる検出値はX軸方向成分のみとなり(Y軸,Z軸方向成分は減算器453による減算により相殺される)、出力端子Tyに得られる検出値はY軸方向成分のみとなり(X軸,Z軸方向成分は減算器463による減算により相殺される)、出力端子Tzに得られる検出値はZ軸方向成分のみとなる(X軸,Y軸方向成分は加算器471による加算により相殺される)。もちろん、Z軸方向成分の検出が不要な二次元センサとして利用するのであれば、加算器471は設ける必要はない。
【0052】
この図12に示す検出回路は、図9において、作用した外力や加速度のX軸,Y軸およびこれらに直交するZ軸の3軸方向成分を検出する三次元センサとして機能させるための検出回路であるが、図9に示すように、V軸およびW軸を定義し、V軸,W軸およびこれらに直交するZ軸の3軸方向成分を検出する三次元センサとして機能させるのであれば、図13に示すようなより単純な検出回路を用いれば十分である。
【0053】
図9に示すV軸は、上層部100の上面を含む面に定義されたXY座標において、第1象限が正方向、第3象限が負方向となり、XY両座標軸に対して45°をなす軸であり、同様にW軸は、このXY座標における第2象限が正方向、第4象限が負方向となり、XY両座標軸に対して45°をなす軸である。したがって、作用体310に対してV軸方向の外力や加速度が作用すると、V軸上に配置された第1の容量素子C1および第3の容量素子C3の静電容量値が増減し、作用体310に対してW軸方向の外力や加速度が作用すると、W軸上に配置された第2の容量素子C2および第4の容量素子C4の静電容量値が増減する。そこで、第1の容量素子C1の静電容量値と第3の容量素子C3の静電容量値との差に基づいて、作用した外力や加速度のV軸方向成分を示す電気信号を得ることができ、第2の容量素子C2の静電容量値と第4の容量素子C4の静電容量値との差に基づいて、作用した外力のW軸方向成分を示す電気信号を得ることができる。
【0054】
この図13に示す検出回路においても、共通電極として機能する各羽根部311〜314は接地され、各容量素子C1〜C4の静電容量値は、それぞれC/V変換回路410〜440によって電圧値V1〜V4に変換される点は、図12の検出回路と同じである。ただ、V軸方向成分は、減算器481によって(V1−V3)なる演算を行うことにより出力端子Tvに得ることができ、W軸方向成分は、減算器482によって(V2−V4)なる演算を行うことにより出力端子Twに得ることができるので、回路構成は非常に単純になる。Z軸方向成分については、4組の容量素子C1〜C4の静電容量値の総和を、加算器483によって求めることにより、出力端子Tzに得ることができる。もちろん、Z軸方向成分の検出が不要な二次元センサとして利用するのであれば、加算器483は設ける必要はない。
【0055】
ところで、図12および図13の検出回路にも示されているとおり、センサ本体と検出回路とを電気的に接続するためには、4組の容量素子C1〜C4の両電極として機能する固定部材121〜124と羽根部311〜314とに対して配線を施す必要がある。そこで、実用上は、このような配線の便宜を考慮して、図14の側断面図(図3と同様に、図1に示すセンサ本体を切断線3−3で切った断面を示す)に示すように、十字形部材120の中央に位置する島状部125の厚み方向に貫通孔を形成し、この貫通孔を通して、作用体310に接触する配線部130を設けておくのが好ましい。作用体310は導電性材料から構成されているため、羽根部311〜314はすべて配線部130に対して電気的に接続されることになる。したがって、検出回路は、この配線部130と、個々の固定部材121〜124との間の静電容量値に基づいて検出を行うことが可能になる。
【0056】
図15は、センサ本体に、上述した配線部130を設けるとともに、各固定部材121〜124の一隅および十字形部材120の一隅にボンディングパッド131〜135をそれぞれ形成した実施形態の上面図である。このような実施形態に係るセンサ本体を用いれば、検出回路との間の配線は、すべてセンサ本体の上面に対して行うだけですむ。たとえば、図12あるいは図13の検出回路を用いるのであれば、図15に示すボンディングパッド135を接地して共通電位とし、ボンディングパッド131〜134とC/V変換回路410〜440とを配線により接続すればよい。
【0057】
また、図12あるいは図13の検出回路自身を、上層部100上に形成することも可能である。センサ本体をSOI基板を用いて構成するのであれば、上層部100はシリコン層となるので、このシリコン層の一部分に回路構成用の領域を設け、この領域に加算器や減算器を含む集積回路を形成するようにすれば、センサ本体内に検出回路を埋め込んだ形の製品を実現することができる。
【0058】
<<< §3.センサ本体の製造方法 >>>
次に、これまで述べてきたセンサ本体の製造方法の実施形態を、図16〜図19に示す側断面図を参照しながら述べる。図1に示すセンサ本体は、以下に述べる方法により製造されたものである。なお、図16〜図19に示す側断面図は、いずれも、図1に示すセンサ本体を切断線2−2の位置で切断した断面に相当するものである。
【0059】
まず、図16に示すように、上から順に、第1の層10、第2の層20、第3の層30の3層を積層してなる材料基板を用意する。ここで、第1の層10は、上層部100を構成するための層であり、この実施形態の場合、導電性をもたせるために不純物をドープしたシリコンからなる層である。また、第2の層20は、中層部200を構成するための層であり、この実施形態の場合、酸化シリコンからなる層である。更に、第3の層30は、下層部300を構成するための層であり、この実施形態の場合、導電性をもたせるために不純物をドープしたシリコンからなる層である。このように、シリコン/酸化シリコン/シリコンという3層の積層構造をもった材料基板は、前述したように、SOI基板として市販されており、実用上は、この市販のSOI基板を用意すればよい。
【0060】
ここに示す製造方法を実施する上では、第1の層10と第2の層20とは、互いにエッチング特性の異なる材料から構成されている必要があり、また、第2の層20と第3の層30とは、やはり互いにエッチング特性の異なる材料から構成されている必要がある。これは、第1の層10に対して上面からエッチングを行う際に、第2の層20をエッチングのストッパ層として利用する必要があり、また、第3の層30に対して下面からエッチングを行う際に、第2の層20をエッチングのストッパ層として利用する必要があるためである。結果として、最終的に得られるセンサ本体では、十字形部材120、各固定部材121〜124、作用体310、台座330を構成する材料と、中央接続部210、周囲接続部230を構成する材料とが、互いにエッチング特性の異なる材料から構成されることになる。ここに示す実施形態の場合、第1の層10と第3の層30とを同一材料(シリコン)によって構成しているが、もちろん、第1の層10、第2の層20、第3の層30をすべて異なる材料によって構成してもかまわない。
【0061】
続いて、第1の層10に対しては浸食性を有し、第2の層20に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、第1の層10の所定領域に対して、第2の層20の上面が露出するまで厚み方向へのエッチングを行い、第1の層10にスリットS1〜S4を形成することによりこの第1の層10を、十字形部材120、第1の固定部材121、第2の固定部材122、第3の固定部材123、第4の固定部材124に分離する。このとき、これら各固定部材121〜124の内側部分の所定領域(図9にハッチングを施して示す領域)にエッチング用貫通孔H1〜H4を形成する処理も併せて行うようにする。
【0062】
結局、ここで行うエッチング工程は、第1の層10の上面に、図6のハッチング部分に相当するパターンをもったレジスト層を形成し、このレジスト層で覆われていない露出部分を垂直下方へと浸食させる工程になる。このエッチング工程では、第2の層20に対する浸食は行われないので、第1の層10の所定領域のみが除去されることになる。図17は、第1の層10に対して、上述のようなエッチングを行い、上層部100を形成した状態を示す。なお、ここで形成されたエッチング用貫通孔H1〜H4は、§1でも述べたとおり、センサの機能に必要なものではなく、後述するように、第2の層20に対するエッチング工程を行うために必要になる。
【0063】
続いて、第3の層30に対しては浸食性を有し、第2の層20に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、第3の層30の所定領域に対して、第2の層20の下面が露出するまで厚み方向へのエッチングを行い、第3の層30を作用体310と台座330とに分離する。ここで行うエッチング工程は、第3の層30の下面に、図8のハッチング部分に相当するパターンをもったレジスト層を形成し、このレジスト層で覆われていない露出部分、すなわち、溝部G1,G2に相当する部分を垂直上方へと浸食させる工程になる。このエッチング工程では、第2の層20に対する浸食は行われないので、第3の層30の所定領域のみが除去されることになる。
【0064】
図18は、このようにして、第3の層30を、作用体310と台座330とからなる下層部300に変化させた状態を示す。溝部G1およびG2が形成され、この部分において、第2の層20の下面が露出した状態になっている。なお、上述した第1の層10に対するエッチング工程と、第3の層30に対するエッチング工程の順序は入れ替えることができ、いずれのエッチング工程を先に行ってもかまわないし、同時に行ってもかまわない。
【0065】
最後に、第2の層20に対しては浸食性を有し、第1の層10および第3の層30に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、第2の層20に対して、その露出部分から厚み方向および層方向へのエッチングを行い、残存した部分により中央接続部210および周囲接続部230を構成する。ここで行うエッチング工程は、別途、レジスト層を形成する必要はない。すなわち、図18に示すように、第1の層10の残存部分である上層部100と、第3の層30の残存部分である下層部300とが、それぞれ第2の層20に対するレジスト層として機能し、エッチングは、第2の層20の露出部分、すなわち、スリットS1〜S4、エッチング用貫通孔H1〜H4、溝部G1,G2の形成領域に対して行われることになる。
【0066】
ここでは、第2の層20に対して、厚み方向だけではなく、層方向へも浸食が行われるようなエッチング法を用いるようにする。その結果、図19に示すように、第2の層20のうち、スリットS1〜S4およびエッチング用貫通孔H1〜H4の形成領域の近傍と、溝部G1,G2の形成領域の近傍がエッチング除去され、中央接続部210(図19には示されていない)と周囲接続部230(図19には、その一部分である部分接続部231,232,233が示されている)が形成されることになる。なお、図19に示す構造体では、エッチングプロセスにより中層部200が形成されたため、この中層部200を構成する各部の端面がアールをもった面になっているが、上層部100と下層部300とを接合するという機能には何ら支障は生じない。たとえば、図19に示す溝部G0は、スリットS1,S2から侵入したエッチング液により浸食された部分であり、図示のとおり浸食面はアールをもった面になる。
【0067】
図7の横断面図に明瞭に示されているように、中央接続部210は、島状部125の下面と羽根接合部315の上面とを接合するのに都合のよい大きさを有しており、周囲接続部230は、台座330の上面と上層部100の下面とを接合するのに都合のよい大きさを有している。そして、中央接続部210と周囲接続部230との間には、十分な空間が確保されている。この空間は、作用体310が変位を生じるために必要な空間であり、この空間内に第2の層20の一部が残ってしまうと、作用体310が変位したときに、各羽根部が接触してしまうことになり、正しい検出を行うことができなくなる。したがって、エッチング用貫通孔H1〜H4は、作用体310の変位を妨げる位置に第2の層20の一部が残存しないように、所定箇所に所定数だけ形成するようにする。別言すれば、中層部200を形成する段階で行われるエッチングにより、作用体310の各羽根部311〜314の上方に位置する第2の層10からなる部分が除去できるように、上層部100を形成する段階において、所定箇所に複数のエッチング用貫通孔H1〜H4を形成しておく必要がある。
【0068】
以上の製造プロセスにおいて、第1の層10に対する垂直下方へのエッチングを行い、上層部100を形成する工程(図17)と、第3の層30に対する垂直上方へのエッチングを行い、下層部300を形成する工程(図18)では、次の2つの条件を満たすエッチング法を行う必要がある。第1の条件は、各層の厚み方向への方向性をもった浸食が行われるエッチング法であること、第2の条件は、シリコン層に対しては浸食性を有するが、酸化シリコン層に対しては浸食性を有しないエッチング法であること、である。第1の条件は、所定寸法の幅をもったスリットや溝を形成するために必要な条件であり、第2の条件は、酸化シリコンからなる第2の層20を、エッチングストッパ層として利用するために必要な条件である。
【0069】
第1の条件を満たすエッチングを行うには、誘導結合型プラズマエッチング法(ICPエッチング法:Induced Coupling Plasma Etching Method )を用いるのが好ましい。このエッチング法は、垂直方向に深い溝を掘る際に効果的な方法であり、一般に、DRIE(Deep Reactive Ion Etching )と呼ばれているエッチング方法の一種である。この方法の特徴は、材料層を厚み方向に浸食しながら掘り進むエッチング段階と、掘った穴の側面にポリマーの壁を形成するデポジション段階と、を交互に繰り返す点にある。掘り進んだ穴の側面は、順次ポリマーの壁が形成されて保護されるため、ほぼ厚み方向にのみ浸食を進ませることが可能になる。一方、第2の条件を満たすエッチングを行うには、酸化シリコンとシリコンとでエッチング選択性を有するエッチング材料を用いればよい。
【0070】
本願発明者は、この2つの条件を満足させるエッチングとして、実際に次のような条件で、エッチングを行ったところ、良好な結果が得られた。すなわち、上述した誘導結合型プラズマエッチング法を用い、次のような具体的条件によりエッチング段階とデポジション段階とを交互に繰り返すようにした。まず、エッチング対象となる材料を、低圧のチャンバ内に収容し、エッチング段階では、SF6ガスを100sccm、O2ガスを10sccmの割合でチャンバ内に供給し、デポジション段階では、C4F8ガスを100sccmの割合でチャンバ内に供給した。エッチング段階とデポジション段階をそれぞれ10秒程度の周期で繰り返し実行したところ、3μm/min程度のエッチングレートでエッチングが実行された。もちろん、本発明に係る製造方法は、上述のエッチング方法を用いる方法のみに限定されるものではない。
【0071】
一方、第2の層20に対するエッチング工程(図19)では、次の2つの条件を満たすエッチング法を行う必要がある。第1の条件は、厚み方向とともに層方向への方向性をもった浸食が行われるエッチング法であること、第2の条件は、酸化シリコン層に対しては浸食性を有するが、シリコン層に対しては浸食性を有しないエッチング法であること、である。第1の条件は、不要な部分に酸化シリコン層が残存して作用体310の変位自由度を妨げることがないようにするために必要な条件であり、第2の条件は、既に所定形状への加工が完了しているシリコンからなる上層部100や下層部300に浸食が及ばないようにするために必要な条件である。
【0072】
本願発明者は、この2つの条件を満足させるエッチングとして、実際に次のような条件で、エッチングを行ったところ、良好な結果が得られた。すなわち、バッファド弗酸(HF:NH4F=1:10の混合液)をエッチング液として用い、エッチング対象物をこのエッチング液に30分ほど浸漬することにより、エッチングを行った。あるいは、CF4ガスとO2ガスとの混合ガスを用いたRIE法によるドライエッチングを行っても、同様に良好な結果が得られた。もちろん、本発明に係る製造方法は、上述のエッチング方法を用いる方法のみに限定されるものではない。
【0073】
上述した製造方法のメリットは、エッチング時の温度、圧力、ガス濃度、エッチング時間などの条件が多少変動したとしても、上層部100と下層部300との間隔に変動が生じることがない点である。すなわち、両者の間隔は、作用体310の上方向への変位の自由度を設定する間隔ということになるが、この間隔は、常に中層部200の厚みによって規定され、エッチング条件に左右されることはない。このため、本発明に係る製造方法によりセンサ本体を量産すれば、少なくとも作用体310の上方向の変位自由度に関しては、個々のロットごとに変動のない正確な寸法設定が可能になる。
【0074】
最後に、これまで述べてきたセンサ本体を加速度センサに利用した一実施形態を述べておく。図20は、このような加速度センサの側断面図である(図1のセンサ本体を切断線3−3の位置で切断した断面を示す)。図示のとおり、台座330の底面には、絶縁材料からなる制御基板400が接続されている。しかも、作用体310Aの底面は、台座330の底面より所定寸法dだけ上方に位置し、作用体310Aの底面と制御基板400の上面との間に寸法dだけの間隔が確保されている。このような構造にすれば、作用体310Aに作用した加速度の所定方向成分(図の下向へ向かう成分)の大きさが所定の許容値を越えたときに、作用体310Aの底面が制御基板400の上面に接触してそれ以上の変位が制御されることになる。これにより、十字形部材120の破損を防ぐことができる。
【0075】
このように、作用体310Aの厚みが、台座330の厚みよりも小さくなるようにするには、上述した製造プロセスに、作用体となるべき領域の下層部分をエッチング除去する厚み調整段階を付加し、台座330の底面に制御基板400を接合する制御基板接合段階を付加すればよい。
【0076】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明に係る容量素子を用いた力センサおよび加速度センサならびにその製造方法によれば、非常に単純な構造をもったセンサ本体を量産することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンサ本体の上面図である。
【図2】図1に示すセンサ本体を、切断線2−2の位置で切断した側断面図である。
【図3】図1に示すセンサ本体を、切断線3−3の位置で切断した側断面図である。
【図4】図1に示すセンサ本体の下面図である。
【図5】図2または図3の側断面図に示されている上層部100単体の上面図である。
【図6】図3の側断面図において、上層部100を図の切断線6−6に沿って切断することにより得られる上層部100単体の横断面図である。
【図7】図3の側断面図において、中層部200を図の切断線7−7に沿って切断することにより得られる中層部200単体の横断面図である。
【図8】図3の側断面図において、下層部300を図の切断線8−8に沿って切断することにより得られる下層部300単体の横断面図である。
【図9】図1に示すセンサ本体における上層部100の各構成要素と下層部300の各構成要素との位置関係を示す上面図である(ハッチングは平面的な領域を示すものであり、断面を示すものではない)。
【図10】図1に示すセンサ本体に、X軸正方向の外力+Fxが作用した状態を示す側断面図(図1の切断線3−3の位置で切断した断面を示す)である。
【図11】図1に示すセンサ本体に、X軸負方向の外力−Fxが作用した状態を示す側断面図(図1の切断線3−3の位置で切断した断面を示す)である。
【図12】図1に示すセンサ本体に適用するための検出回路の一例を示す回路図である。
【図13】図1に示すセンサ本体に適用するための検出回路の別な一例を示す回路図である。
【図14】図1に示すセンサ本体に、配線部130を付加した実施形態を示す側断面図(図1の切断線3−3の位置で切断した断面を示す)である。
【図15】図1に示すセンサ本体に、配線部130およびボンディングパッド131〜134を付加した実施形態を示す上面図である。
【図16】図1に示すセンサ本体の製造方法の第1の工程を示す側断面図(図1の切断線2−2の位置で切断した断面を示す)である。
【図17】図1に示すセンサ本体の製造方法の第2の工程を示す側断面図(図1の切断線2−2の位置で切断した断面を示す)である。
【図18】図1に示すセンサ本体の製造方法の第3の工程を示す側断面図(図1の切断線2−2の位置で切断した断面を示す)である。
【図19】図1に示すセンサ本体の製造方法の第4の工程を示す側断面図(図1の切断線2−2の位置で切断した断面を示す)である。
【図20】図1に示すセンサ本体を利用して作成した加速度センサの一実施形態を示す側断面図(図1の切断線3−3の位置で切断した断面を示す)である。
【符号の説明】
10:第1の層(不純物をドープしたシリコン層)
20:第2の層(酸化シリコン層)
30:第3の層(不純物をドープしたシリコン層)
100:上層部(不純物をドープしたシリコン層)
120:十字形部材
121:第1の固定部材
122:第2の固定部材
123:第3の固定部材
124:第4の固定部材
125:島状部
126:第1の橋梁部
127:第2の橋梁部
128:第3の橋梁部
129:第4の橋梁部
130:配線部
131〜135:ボンディングパッド
200:中層部(酸化シリコン層)
210:中央接続部
230:周囲接続部
231〜238:部分接続部
300:下層部(不純物をドープしたシリコン層)
310,310A:作用体
311:第1の羽根部
312:第2の羽根部
313:第3の羽根部
314:第4の羽根部
315:羽根接合部
330:台座
400:制御基板
410〜440:C/V変換回路
451,452:加算器
453:減算器
461,462:加算器
463:減算器
471:加算器
481,482:減算器
483:加算器
C1〜C4:容量素子
d:所定寸法
+Fx,−Fx:X軸方向への外力
G0,G1,G2:溝部
H1〜H4:エッチング用貫通孔
S1〜S4:スリット
Tv,Tw,Tx,Ty,Tz:出力端子
V1〜V4:電圧値
V,W,X,Y,Z:座標軸
Claims (16)
- 導電性をもった上層部と、絶縁性をもった中層部と、導電性をもった下層部と、の少なくとも3層構造を有するセンサ本体と、検出値を電気信号として取り出すための検出回路と、を備え、
前記上層部の上面の中心位置に原点Oをとり、前記上層部の上面において互いに直交する方向にそれぞれX軸およびY軸をとり、前記上層部の上面に対して垂直な方向にZ軸をとることにより、XYZ三次元直交座標系を定義したときに、
前記上層部は、前記原点Oの近傍に配置された島状部と、前記島状部からX軸正方向に伸びる第1の橋梁部と、前記島状部からY軸正方向に伸びる第2の橋梁部と、前記島状部からX軸負方向に伸びる第3の橋梁部と、前記島状部からY軸負方向に伸びる第4の橋梁部と、の5つの部分を有する十字形部材と、XY座標における第1象限に位置する第1の固定部材と、XY座標における第2象限に位置する第2の固定部材と、XY座標における第3象限に位置する第3の固定部材と、XY座標における第4象限に位置する第4の固定部材と、によって構成されており、前記十字形部材、前記第1の固定部材、前記第2の固定部材、前記第3の固定部材、前記第4の固定部材は、物理的に互いに非接触となるように配置されており、
前記下層部は、前記第1の固定部材の内側部分の一部の領域に対向する第1の羽根部と、前記第2の固定部材の内側部分の一部の領域に対向する第2の羽根部と、前記第3の固定部材の内側部分の一部の領域に対向する第3の羽根部と、前記第4の固定部材の内側部分の一部の領域に対向する第4の羽根部と、中央付近において前記第1の羽根部、前記第2の羽根部、前記第3の羽根部、前記第4の羽根部を互いに接続する羽根接合部と、を有する作用体と、この作用体に対して所定間隔をおきながら、その周囲を取り囲む台座と、によって構成されており、
前記中層部は、前記島状部の下面と、前記羽根接合部の上面と、を接続する中央接続部と、前記台座の上面と、前記第1の固定部材、前記第2の固定部材、前記第3の固定部材、前記第4の固定部材、前記第1の橋梁部、前記第2の橋梁部、前記第3の橋梁部、前記第4の橋梁部、のそれぞれ外側部分の下面と、を接続する周囲接続部と、によって構成されており、
前記第1の橋梁部、前記第2の橋梁部、前記第3の橋梁部、前記第4の橋梁部は、前記作用体に外力が作用した場合に撓みを生じる性質を有し、この撓みにより前記作用体が前記台座に対して変位を生じるように構成されており、
前記検出回路は、前記第1の固定部材と前記第1の羽根部とによって構成される第1の容量素子、前記第2の固定部材と前記第2の羽根部とによって構成される第2の容量素子、前記第3の固定部材と前記第3の羽根部とによって構成される第3の容量素子、前記第4の固定部材と前記第4の羽根部とによって構成される第4の容量素子、の各静電容量値に基づいて、前記作用体に作用した外力を示す電気信号を出力することを特徴とする容量素子を用いた力センサ。 - 請求項1に記載の力センサにおいて、
上層部を構成する十字形部材、第1の固定部材、第2の固定部材、第3の固定部材、第4の固定部材が、上層部を厚み方向に貫通する所定幅のスリットによって、互いに分離されていることを特徴とする容量素子を用いた力センサ。 - 請求項1または2に記載の力センサにおいて、
島状部の厚み方向に形成された貫通孔を通して、作用体に接触する配線部が設けられ、
検出回路が前記配線部と各固定部材との間の静電容量値に基づいて検出値を出力することを特徴とする容量素子を用いた力センサ。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の力センサにおいて、
所定の許容範囲を越える外力が作用した場合に、作用体のいずれかの羽根部の上面がいずれかの固定部材の下面に接触して変位が制御されるように、中層部の厚みが設定されていることを特徴とする容量素子を用いた力センサ。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の力センサにおいて、
検出回路が、第1の容量素子の静電容量値と第4の容量素子の静電容量値との和と、第2の容量素子の静電容量値と第3の容量素子の静電容量値との和と、の差に基づいて、作用体に作用した外力のX軸方向成分を示す検出値を出力し、第1の容量素子の静電容量値と第2の容量素子の静電容量値との和と、第3の容量素子の静電容量値と第4の容量素子の静電容量値との和と、の差に基づいて、作用体に作用した外力のY軸方向成分を示す検出値を出力することを特徴とする容量素子を用いた力センサ。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の力センサにおいて、
XY座標における第1象限が正方向、第3象限が負方向となり、XY両座標軸に対して45°をなすV軸を定義し、XY座標における第2象限が正方向、第4象限が負方向となり、XY両座標軸に対して45°をなすW軸を定義したときに、
検出回路が、第1の容量素子の静電容量値と第3の容量素子の静電容量値との差に基づいて、作用体に作用した外力のV軸方向成分を示す検出値を出力し、第2の容量素子の静電容量値と第4の容量素子の静電容量値との差に基づいて、作用体に作用した外力のW軸方向成分を示す検出値を出力することを特徴とする容量素子を用いた力センサ。 - 請求項5または6に記載の力センサにおいて、
検出回路が、更に、第1の容量素子の静電容量値、第2の容量素子の静電容量値、第3の容量素子の静電容量値、第4の容量素子の静電容量値の総和に基づいて、作用体に作用した外力のZ軸方向成分を示す検出値を出力することを特徴とする容量素子を用いた力センサ。 - 請求項1〜7のいずれかに記載の力センサにおいて、
上層部および下層部を構成する材料と中層部を構成する材料とが、互いにエッチング特性の異なる材料からなることを特徴とする容量素子を用いた力センサ。 - 請求項1〜8のいずれかに記載の力センサにおいて、
上層部および下層部を、不純物をドープしたシリコン層によって構成し、中層部を酸化シリコン層によって構成したことを特徴とする容量素子を用いた力センサ。 - 請求項9に記載の力センサにおいて、
センサ本体が、不純物をドープしたシリコン層/酸化シリコン層/不純物をドープしたシリコン層なる3層構造を有するSOI基板によって構成されていることを特徴とする容量素子を用いた力センサ。 - 請求項1〜10のいずれかに記載の力センサを含み、作用体に作用した加速度に起因する力を検出することにより、検出回路から加速度の検出信号を出力させるようにしたことを特徴とする容量素子を用いた加速度センサ。
- 請求項11に記載の加速度センサにおいて、
台座の底面に制御基板が接続されており、この台座の底面に対して作用体の底面が所定寸法だけ上方に位置し、前記作用体の底面と前記制御基板の上面との間に所定間隔が確保されるように、前記作用体の厚みが設定されており、
作用した加速度の所定方向成分の大きさが所定の許容値を越えたときに、前記作用体の底面が前記制御基板の上面に接触して変位が制御されるように、前記所定間隔が設定されていることを特徴とする容量素子を用いた加速度センサ。 - 請求項1〜12のいずれかに記載の力センサもしくは加速度センサを製造する方法であって、
上から順に、導電性をもった第1の層、絶縁性をもった第2の層、導電性をもった第3の層の3層を積層してなる材料基板を用意する準備段階と、
前記第1の層に対しては浸食性を有し、前記第2の層に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、前記第1の層の所定領域に対して、前記第2の層の上面が露出するまで厚み方向へのエッチングを行い、前記第1の層にスリットを形成することにより、前記第1の層を、十字形部材、第1の固定部材、第2の固定部材、第3の固定部材、第4の固定部材に分離するとともに、これら各固定部材の内側部分の所定領域にエッチング用貫通孔を形成する上層部形成段階と、
前記第3の層に対しては浸食性を有し、前記第2の層に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、前記第3の層の所定領域に対して、前記第2の層の下面が露出するまで厚み方向へのエッチングを行い、前記第3の層を作用体と台座とに分離する下層部形成段階と、
前記第2の層に対しては浸食性を有し、前記第1の層および前記第3の層に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、前記第2の層に対して、その露出部分から厚み方向および層方向へのエッチングを行い、残存した部分により中央接続部および周囲接続部を形成する中層部形成段階と、
を有することを特徴とする力センサもしくは加速度センサの製造方法。 - 請求項13に記載のセンサの製造方法において、
中層部形成段階で行われるエッチングにより、作用体の各羽根部の上方に位置する第2の層からなる部分が除去できるように、上層部形成段階において、所定箇所に複数のエッチング用貫通孔を形成することを特徴とする力センサもしくは加速度センサの製造方法。 - 請求項13または14に記載された加速度センサの製造方法において、
台座部分の厚みに比べて作用体部分の厚みが小さくなるように、作用体となるべき領域の下層部分をエッチング除去する厚み調整段階と、
台座底面に制御基板を接合する制御基板接合段階と、
を更に有することを特徴とする加速度センサの製造方法。 - 請求項13〜15のいずれかに記載のセンサの製造方法において、
上層部形成段階および下層部形成段階で、誘導結合型プラズマエッチング法を用いることにより、厚み方向へのエッチングを行うことを特徴とする力センサもしくは加速度センサの製造方法。
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