JP4073731B2 - 抵抗素子を用いた力センサおよび加速度センサならびにその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抵抗素子を用いた力センサおよび加速度センサならびにその製造方法に関し、特に、小型民生用電子機器に利用される量産型の力センサおよび加速度センサならびにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話、デジタルカメラ、電子ゲーム機器、PDA機器など、マイクロプロセッサを内蔵した小型民生用の電子機器の普及はめざましく、最近では、これらの電子機器あるいはその入力装置に内蔵させるための力センサや加速度センサの需要も高まってきている。力センサを備えた電子機器では、オペレータの指による操作を外力として検出することができ、検出した外力の方向や大きさに基づいて、オペレータが与えた指示や操作量を認識することができる。また、加速度センサを備えた電子機器では、本体に加えられた衝撃や振動などの加速度成分をデジタルデータとしてマイクロプロセッサに取り込むことができるため、電子機器周囲の物理的環境を把握した適切な処理が可能になる。たとえば、デジタルカメラでは、シャッターボタンを押した瞬間に作用した加速度を検出することにより、手振れに対する補正を行うことができ、電子ゲーム機器用の入力装置などでは、オペレータの操作指示を加速度の形で入力することも可能になる。
【0003】
このような小型民生用電子機器に内蔵するための力センサや加速度センサとしては、小型で量産に適したものが望ましく、現在、半導体デバイスの製造プロセスを利用して量産が可能な半導体基板を用いたタイプのものが多く利用されている。この種のセンサでは、可撓性をもった半導体基板によって作用体を支持させ、この作用体に加えられた外力の作用により基板に撓みを生じさせ、この撓みの状態に基づいて、作用した外力を電気的に検出する手法が採られている。基板の撓みの検出には、ピエゾ抵抗素子、容量素子、圧電素子など、種々の検出素子が利用されている。ピエゾ抵抗素子は、機械的応力を加えることにより抵抗値が変化する性質を有する素子であり、シリコン基板などの半導体基板上の領域に不純物をドープすることにより形成することができるため、半導体基板を用いたタイプのセンサに広く利用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、小型で量産に適した力センサおよび加速度センサとして、シリコン基板などの半導体基板を利用したピエゾ抵抗式センサが提案されている。このようなセンサにおいて検出感度を高めるためには、基板の撓みが生じる部分を薄くし、可撓性を高める必要がある。ところが、一般に半導体基板は脆弱であり、薄い部分が存在すると、過度の外力や加速度が加わった場合に、当該薄い部分にクラックなどが発生し、物理的な損傷を受ける可能性が高くなる。そこで、通常は、外力が作用する作用体の変位を所定範囲内に制御するための物理的な制御構造を設ける必要がある。具体的には、作用体の上下方向の変位および横方向の変位を制御するために、制御基板や台座などの物理的な制御構造が設けられている。過度の外力が作用すると、作用体の一部が制御基板や台座などに接触することになり、作用体の変位は、所定の自由度の範囲内に抑制されることになる。したがって、基板の撓みを生じる部分に過度の応力が加わることを避けることができ、破損から免れることができる。
【0005】
しかしながら、このような制御構造は、作用体の形状や配置に合わせて、所定の形状をもち、所定の位置に配置されるようにする必要がある。このため、制御構造を備えた力センサや加速度センサを製造するためには、余分なエッチング工程や機械的切削工程が必要になり、製造プロセスが複雑にならざるを得ない。特に、量産品として製造される個々のロットごとに均一な性能を確保するためには、作用体と制御構造との距離を精密に設定する必要があるので、制御構造を形成するプロセスにおける技術的な負担が大きく、コスト低減の見地からも、大きな問題になっている。
【0006】
そこで本発明は、作用体の変位を制限するための精密な制御構造を容易に構成することが可能な力センサおよび加速度センサを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、上層部、中層部、下層部の少なくとも3層構造を有するセンサ本体と、検出値を電気信号として取り出すための検出回路と、によって力センサを構成するようにし、
上層部の上面の中心位置に原点Oをとり、上層部の上面において互いに直交する方向にそれぞれX軸およびY軸をとり、上層部の上面に対して垂直な方向にZ軸をとることにより、XYZ三次元直交座標系を定義したときに、
上層部が、原点Oの近傍に配置された島状部と、島状部からX軸正方向に伸びる第1の橋梁部と、島状部からY軸正方向に伸びる第2の橋梁部と、島状部からX軸負方向に伸びる第3の橋梁部と、島状部からY軸負方向に伸びる第4の橋梁部と、の5つの部分を有する十字形部材と、XY座標における第1象限に位置する第1の固定部と、XY座標における第2象限に位置する第2の固定部と、XY座標における第3象限に位置する第3の固定部と、XY座標における第4象限に位置する第4の固定部と、の4つの部分を有する固定部材と、によって構成されるようにし、十字形部材の周囲は固定部材によって取り囲まれ、各橋梁部の外側部分は固定部材に接続されるようにし、
下層部が、XY座標における第1象限に位置する第1の羽根部と、XY座標における第2象限に位置する第2の羽根部と、XY座標における第3象限に位置する第3の羽根部と、XY座標における第4象限に位置する第4の羽根部と、中央付近において第1の羽根部、第2の羽根部、第3の羽根部、第4の羽根部を互いに接続する羽根接合部と、を有する作用体と、この作用体に対して所定間隔をおきながら、その周囲を取り囲む台座と、によって構成されるようにし、
中層部が、島状部の下面と羽根接合部の上面とを接続する中央接続部と、台座の上面と固定部材の下面とを接続する周囲接続部と、によって構成されるようにし、
第1の羽根部の上面の外側の一部分が、第1の固定部の下面の内側の一部分に対向する制御面を構成し、第2の羽根部の上面の外側の一部分が、第2の固定部の下面の内側の一部分に対向する制御面を構成し、第3の羽根部の上面の外側の一部分が、第3の固定部の下面の内側の一部分に対向する制御面を構成し、第4の羽根部の上面の外側の一部分が、第4の固定部の下面の内側の一部分に対向する制御面を構成するようにし、
第1の橋梁部、第2の橋梁部、第3の橋梁部、第4の橋梁部は、作用体に外力が作用した場合に撓みを生じる性質を有し、この撓みにより作用体が台座に対して変位を生じるように構成され、
第1の橋梁部、第2の橋梁部、第3の橋梁部、第4の橋梁部の所定箇所にピエゾ抵抗素子を配置し、検出回路は、このピエゾ抵抗素子の抵抗値に基づいて、作用体に作用した外力を示す検出値を出力し、
所定の許容範囲を越える外力が作用した場合に、少なくともいずれか1つの羽根部の上面が、対向する固定部の下面に接触して変位が制御されるように、中層部の厚みを設定するようにしたものである。
【0008】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る力センサにおいて、
上層部のXY座標における第1象限、第2象限、第3象限、第4象限の所定位置にそれぞれ厚み方向に貫通する開口部を設け、これら開口部により、各橋梁部の側部が固定部材に対して物理的に分離されるようにしたものである。
【0009】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係る力センサにおいて、
上層部および下層部を構成する材料と中層部を構成する材料とが、互いにエッチング特性の異なる材料からなるようにしたものである。
【0010】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第3の態様に係る力センサにおいて、
上層部および下層部を、シリコン層によって構成し、中層部を酸化シリコン層によって構成するようにしたものである。
【0011】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第4の態様に係る力センサにおいて、
センサ本体が、シリコン層/酸化シリコン層/シリコン層なる3層構造を有するSOI基板によって構成されているようにしたものである。
【0012】
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第4または第5の態様に係る力センサにおいて、
ピエゾ抵抗素子が、シリコン層からなる上層部に形成された不純物ドープ領域によって構成されているようにしたものである。
【0013】
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第1〜第6の態様に係る力センサにおいて、
橋梁部の厚みが、固定部材の厚みよりも小さくなるように設定したものである。
【0014】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第7の態様に係る力センサにおいて、
各橋梁部の外側部分を、周囲接続部の上方部分まで伸ばすようにしたものである。
【0015】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第1〜第8の態様に係る力センサにおいて、
第1の橋梁部の内側部分、第1の橋梁部の外側部分、第3の橋梁部の内側部分、第3の橋梁部の外側部分の各位置に配置された合計4組のピエゾ抵抗素子によりX軸方向成分検出手段を構成し、
検出回路が、このX軸方向成分検出手段を構成する各ピエゾ抵抗素子の抵抗値に基づいて、作用体に作用した外力のX軸方向成分を示す検出値を出力するようにしたものである。
【0016】
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第9の態様に係る力センサにおいて、第2の橋梁部の内側部分、第2の橋梁部の外側部分、第4の橋梁部の内側部分、第4の橋梁部の外側部分の各位置に配置された合計4組のピエゾ抵抗素子によりY軸方向成分検出手段を構成し、
検出回路が、このY軸方向成分検出手段を構成する各ピエゾ抵抗素子の抵抗値に基づいて、作用体に作用した外力のY軸方向成分を示す検出値を出力するようにし、外力のXY二次元方向成分を独立して検出することができるようにしたものである。
【0017】
(11) 本発明の第11の態様は、上述の第10の態様に係る力センサにおいて、
第1の橋梁部の内側部分、第1の橋梁部の外側部分、第3の橋梁部の内側部分、第3の橋梁部の外側部分の各位置に配置された合計4組のピエゾ抵抗素子、または、第2の橋梁部の内側部分、第2の橋梁部の外側部分、第4の橋梁部の内側部分、第4の橋梁部の外側部分の各位置に配置された合計4組のピエゾ抵抗素子によりZ軸方向成分検出手段を構成し、
検出回路が、このZ軸方向成分検出手段を構成する各ピエゾ抵抗素子の抵抗値に基づいて、作用体に作用した外力のZ軸方向成分を示す検出値を出力するようにし、外力のXYZ三次元方向成分を独立して検出することができるようにしたものである。
【0018】
(12) 本発明の第12の態様は、上述の第9〜第11の態様に係る力センサにおいて、
橋梁部の内側部分のピエゾ抵抗素子の内側端が、中央接続部の外側輪郭線に揃うように配置され、橋梁部の外側部分のピエゾ抵抗素子の外側端が、周囲接続部の内側輪郭線に揃うように配置されているようにしたものである。
【0019】
(13) 本発明の第13の態様は、上述の第9〜第12の態様に係る力センサにおいて、
検出回路が、所定の座標軸方向成分を検出するための回路として、4組のピエゾ抵抗素子からなるブリッジ回路についてのブリッジ電圧を検出する回路を有するようにしたものである。
【0020】
(14) 本発明の第14の態様は、上述の第1〜第13の態様に係る力センサによって、作用体に作用した加速度に起因する力を検出することにより、検出回路から加速度の検出信号を出力させるようにし、加速度センサを構成するようにしたものである。
【0021】
(15) 本発明の第15の態様は、上述の第14の態様に係る加速度センサにおいて、
台座の底面に制御基板を接続するようにし、この台座の底面に対して作用体の底面が所定寸法だけ上方に位置し、作用体の底面と制御基板の上面との間に所定間隔が確保されるように、作用体の厚みを設定し、
作用した加速度の所定方向成分の大きさが所定の許容値を越えたときに、作用体の底面が制御基板の上面に接触して変位が制御されるようにしたものである。
【0022】
(16) 本発明の第16の態様は、上述の第1〜第15の態様に係る力センサもしくは加速度センサを製造する方法において、
上から順に、第1の層、第2の層、第3の層の3層を積層してなり、第1の層と第2の層とが互いにエッチング特性が異なり、第3の層と第2の層とが互いにエッチング特性が異なるような材料基板を用意する準備段階と、
第1の層に対しては浸食性を有し、第2の層に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、第1の層の所定領域に対して、第2の層の上面が露出するまで厚み方向へのエッチングを行い、第1の層に開口部を形成することにより、第1の層の一部からなる十字形部材と固定部材とを形成する上層部形成段階と、
第3の層に対しては浸食性を有し、第2の層に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、第3の層の所定領域に対して、第2の層の下面が露出するまで厚み方向へのエッチングを行い、第3の層を作用体と台座とに分離する下層部形成段階と、
第2の層に対しては浸食性を有し、第1の層および第3の層に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、第2の層に対して、その露出部分から厚み方向および層方向へのエッチングを行い、残存した部分により中央接続部および周囲接続部を形成する中層部形成段階と、
十字形部材の一部をなす各橋梁部の所定箇所に、ピエゾ抵抗素子を形成する抵抗素子形成段階と、
を行うようにしたものである。
【0023】
(17) 本発明の第17の態様は、上述の第16の態様に係る力センサもしくは加速度センサの製造方法において、
十字形部材の厚みが、固定部材の厚みよりも小さくなるように、上層部の十字形部材となるべき領域の上層部分をエッチング除去する厚み調整段階を更に行い、抵抗素子形成段階では、厚み調整がなされた十字形部材の所定箇所にピエゾ抵抗素子を形成するようにしたものである。
【0024】
(18) 本発明の第18の態様は、上述の第16または第17の態様に係る加速度センサの製造方法において、
台座部分の厚みに比べて作用体部分の厚みが小さくなるように、下層部の作用体となるべき領域の下層部分をエッチング除去する厚み調整段階と、
台座底面に制御基板を接合する制御基板接合段階と、
を更に行うようにしたものである。
【0025】
(19) 本発明の第19の態様は、上述の第16〜第18の態様に係るセンサの製造方法において、
上層部形成段階および下層部形成段階で、誘導結合型プラズマエッチング法を用いることにより、厚み方向へのエッチングを行うようにしたものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施形態に基いて説明する。
【0027】
<<< §1.センサ本体の基本構造 >>>
本発明は力センサおよび加速度センサに関するものであるが、その基本構造はいずれもほぼ同一であり、ここでは、力センサとしても、加速度センサとしても利用可能なセンサ本体の基本構造を述べる。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ本体の上面図である。このセンサ本体は、基本的に、上層部100、中層部200、下層部300の3層構造(図1には明記されていない)から構成されており、具体的には、この実施形態の場合、上層部100は、シリコン層から構成され、中層部200は酸化シリコン層から構成され、下層部300は、シリコン層から構成されている。このようなシリコン/酸化シリコン/シリコンなる3層構造をもった材料は、SOI(Silicon On Insulator)基板として市販されており、ここに示すセンサ本体は、このSOI基板を利用した製造プロセスによって製造することが可能である。
【0029】
ここに示す実施形態では、上層部100、中層部200、下層部300は、いずれも正方形状の板状部材である。上層部100には、厚み方向に貫通する開口部H1〜H4が形成されており、図1では、この開口部H1〜H4を通して、下層部300の一部が確認できる。図1はかなり繁雑な図になっているが、これは開口部H1〜H4を通して下層部の一部が見えており、かつ、上層部100の下に隠れている下層部300の構造を破線で示したためである。一方、図2は、図1に示すセンサ本体を、切断線2−2の位置で切断した側断面図であり、図3は、同じく図1に示すセンサ本体を、切断線3−3の位置で切断した側断面図である。これら側断面図には、このセンサ本体が、上層部100、中層部200、下層部300の3層構造からなることが明瞭に示されている。なお、ここでは説明の便宜上、上層部100の構成要素を100番台の符号で示し、中層部200の構成要素を200番台の符号で示し、下層部300の構成要素を300番台の符号で示すことにする。また、図4は、このセンサ本体の下面図であり、この下面図では、下層部300の陰に隠れている上層部100の構造の一部が破線で示されている。
【0030】
図1に示す上面図や図4に示す下面図は、各層相互の位置関係の確認を行う場合には便利であるが、単一の図に、複数の層構造が重ねて描かれているため、かなり繁雑になっており、個々の層の細かな構造の説明を行うのには必ずしも適当ではない。そこで、以下、個々の層をそれぞれ独立して描いた平面図を用い、図2および図3の側断面図を参照しながら、各層の構造を順に説明する。
【0031】
まず、図5を用いて、上層部100の構造を説明する。この図5は、上層部100を単体として示した上面図である。図示のとおり、上層部100は、正方形状の板状部材からなり、厚み方向に貫通する開口部H1〜H4が形成されている。この実施形態の場合、上層部100は、シリコンの基板層から構成されており、開口部H1〜H4は、後述するように、このシリコンの基板層に対してエッチング加工を施すことにより形成される。4つの開口部H1〜H4は、いずれも同一形状をしており、これら4つの開口部H1〜H4によって、上層部100は、図示のとおり、中央に位置する島状部110と、この島状部110を四方から支持する橋梁部120(121〜124)と、この橋梁部120を周囲から支持する固定部材130(後述するように、この固定部材は台座に固定される)とに分けられることになる。ここでは、島状部110と橋梁部120とによって構成される部材を十字形部材と呼ぶことにする。図示のとおり、橋梁部120には、合計12個のピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4が配置されている。これらのピエゾ抵抗素子は、シリコン基板層からなる上層部100の上面に形成された不純物ドープ領域によって構成されている。
【0032】
ここでは、説明の便宜上、図5に示されているように、上層部100の上面の中心位置に原点Oをとり、この上層部100の上面において互いに直交する方向にそれぞれX軸およびY軸をとる。すなわち、X軸は上層部100の輪郭となる正方形の横の辺に平行な方向を向き、図の右方向を正方向とする座標軸であり、Y軸は上層部100の輪郭となる正方形の縦の辺に平行な方向を向き、図の上方向を正方向とする座標軸である。結局、上層部100の上面を含む平面上に二次元XY座標系を定義することができる。ここで、原点Oを通り、上層部100の上面に対して垂直な方向にZ軸(図の紙面垂直上方を正方向とする)をとれば、XYZ三次元直交座標系を定義することができる。なお、本明細書では、原点Oに近い方を内側部分、遠い方を外側部分と呼ぶことにする。
【0033】
この図5の上面図に示されている上層部100の基本構造は、図2および図3の側断面図によっても明瞭に示されている。図2に示されている上層部100は、図5に示されている上層部100を切断線2−2に沿って切った側断面図に相当する。この図2には、上層部100の厚み方向に貫通する開口部H1,H2が示されており、固定部材130の一部をなす固定部131,132および橋梁部120の一部をなす橋梁部122が示されている。また、この橋梁部122の上面付近には、ピエゾ抵抗素子Ry2,Rz2が形成されている状態が示されている。一方、図3は、図5に示されている上層部100を切断線3−3に沿って切った側断面図に相当し、上層部100のうちの島状部110および橋梁部120の一部をなす橋梁部121,123が示されており、その上面付近には、ピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4が配置された状態が示されている。
【0034】
図6は、図3の側断面図において、上層部100を図の切断線6−6に沿って切断した横断面図であり、厚み方向に貫通する開口部H1〜H4の形状および配置が明瞭に示されている。すなわち、上層部100には、XY座標における第1象限、第2象限、第3象限、第4象限の所定位置にそれぞれ厚み方向に貫通する開口部H1〜H4が設けられており、これらの開口部により、各橋梁部121〜124の側部が固定部材130に対して物理的に分離されていることになる。
【0035】
図6における太い破線は、上層部100を構成する個々の部分の境界線を示している。4個の開口部H1〜H4は全く同形であり、かつ、シンメトリック(図6の平面図において左右対称および上下対称)に配置されている。図6に示すように、橋梁部120は、4つの橋梁部121〜124によって構成されており、前述したように、島状部110と4つの橋梁部121〜124とによって構成される部材を、ここでは、十字形部材と呼ぶことにする。一方、固定部材130は4つの固定部131〜134によって構成されている。4つの橋梁部121〜124はいずれも同一形状をなし、シンメトリックに配置され、4つの固定部131〜134もいずれも同一形状をなし、シンメトリックに配置されている。もっとも、図6に太い破線で境界を示した各部は、説明の便宜上、異なる部分として捉えているだけであり、物理的には、上層部100を構成する同一のシリコン基板層の一部分を構成する領域にすぎない。
【0036】
結局、図6に示す上層部100は、XYZ三次元座標系の原点Oの近傍に配置された島状部110と、島状部110からX軸正方向に伸びる第1の橋梁部121と、島状部110からY軸正方向に伸びる第2の橋梁部122と、島状部からX軸負方向に伸びる第3の橋梁部123と、島状部からY軸負方向に伸びる第4の橋梁部124と、の5つの部分を有する十字形部材(110,120)と、XY座標における第1象限に位置する第1の固定部131と、XY座標における第2象限に位置する第2の固定部132と、XY座標における第3象限に位置する第3の固定部133と、XY座標における第4象限に位置する第4の固定部134と、の4つの部分を有する固定部材130と、によって構成されており、十字形部材の周囲は固定部材130によって取り囲まれ、各橋梁部121〜124の外側部分は固定部材130(固定部131〜134)に接続されていることになる。
【0037】
このように、十字形部材の中央部分を構成する島状部110は、その四方を各橋梁部121〜124の内側部分によって支持された文字どおり島状の部分になっており、各橋梁部121〜124の外側部分は固定部材の内側部分に接続され、固定部材130の外側部分は、後述するように台座に固定されている。また、各橋梁部121〜124は可撓性を有しており、島状部110に対して外力が作用すると、各橋梁部121〜124が撓み、島状部110が変位を生じることになる。
【0038】
前述したように、この実施形態では、上層部100はシリコンの基板層によって構成されているので、この上層部100の厚みをある程度小さく設定すれば、各橋梁部121〜124に可撓性をもたせることができる。ただし、上層部100の厚みをあまり小さく設定すると破損しやすくなるので、実用上は、このセンサ本体の用途に応じて、どの程度の検出感度が必要になり、どの程度の堅牢性が必要になるか、などの条件を考慮して、最適な厚みを設定するのが好ましい。
【0039】
次に、図7を用いて、中層部200の構造を説明する。この図7は、中層部200を単体として示した横断面図であり、図3の側断面図において、中層部200を図の切断線7−7に沿って切断した横断面図に相当する。ここに示す実施形態の場合、中層部200は、後述するように、層面が正方形状をした酸化シリコン層に対してエッチング加工を施すことにより、形成されることになる。図示のとおり、中層部200は、中央部分に配置された中央接続部210と、周囲部分に配置され、全体的に方環状形状をもった周囲接続部230と、によって構成される。これら各接続部は、いずれも同一の厚みを有している。中央接続部210および周囲接続部230の根本的な機能は、後述するように、上層部100の所定部分と下層部300の所定部分とを接続することである。
【0040】
最後に、図8を用いて、下層部300の構造を説明する。この図8は、下層部300を単体として示した横断面図であり、図3の側断面図において、下層部300を図の切断線8−8に沿って切断した横断面図に相当する。ここに示す実施形態の場合、下層部300は、後述するように、層面が正方形状をしたシリコン層に対してエッチング加工を施すことにより、形成されることになる。図の溝部G1およびG2は、このエッチング加工によりシリコンが除去された部分である。図示のとおり、下層部300は、送風機のファン状形状をなす作用体310と、これを囲う位置に配置され、方環状形状をもった台座330と、によって構成される。ここで、作用体310は、第1の羽根部311、第2の羽根部312、第3の羽根部313、第4の羽根部314と、中央付近においてこれら4つの羽根部を互いに接続する羽根接合部315によって構成されている。また、台座330は、作用体310に対して所定間隔をおきながら、その周囲を取り囲むように配置されている。
【0041】
結局、この下層部300は、XY座標における第1象限に位置する第1の羽根部311と、第2象限に位置する第2の羽根部312と、第3象限に位置する第3の羽根部313と、第4象限に位置する第4の羽根部314と、中央付近においてこれら各羽根部311〜314を互いに接続する羽根接合部315と、を有する作用体310と、この作用体310に対して所定間隔をおきながら、その周囲を取り囲む台座330と、によって構成されている。
【0042】
図7に示したように、中層部200は、中央接続部210と周囲接続部230とによって構成されているが、図3の側断面図に示されているように、中央接続部210は、島状部110の下面と羽根接合部315の上面とを接続する機能を有し、周囲接続部230は、台座330の上面と固定部121〜124の下面の外側部分とを接続する機能を有する。
【0043】
以上、上層部100、中層部200、下層部300の構造をそれぞれ別個に説明したが、ここで述べる実施形態に係るセンサ本体は、図1の上面図、図2および図3の側断面図、図4の下面図に示されているとおり、これら3層を接合することにより得られる構造体である。図3の側断面図を見れば明らかなように、作用体310は、台座330によって周囲を囲まれた空間内に位置することになり、その上面中央部が中央接続部210を介して島状部110の下面に接続されている。また、この島状部110を四方から支持する各橋梁部121〜124は、その外側部分が周囲接続部230を介して台座330の上面に固定されているので、結局、作用体310は、台座330によって囲まれた空間内において、上方から宙吊りの状態となっている。前述したように、橋梁部121〜124は可撓性を有しているため、作用体310に外力が作用すると撓みを生じ、この撓みにより、作用体310が台座330に対して変位することになる。
【0044】
図9は、上層部100の各構成要素と下層部300の各構成要素との位置関係を示す上面図である。図示のとおり、下層部300を構成する作用体310の4つの羽根部311〜314(図9では破線で示す)の外側部分は、上層部100を構成する4つの固定部131〜134(図9では、太い破線で相互の境界を示す)の内側部分の一部の領域において、平面的に重なっている。図にハッチングを施した部分は、この平面的な重なり領域を示している(この図9におけるハッチングは、断面を示すものではない)。
【0045】
いま、図9において、下層部300の構成要素である羽根部311〜314が、紙面に対して垂直上方(Z軸正方向)に変位した場合を考えると、図にハッチングを施す領域において、上層部100と下層部300とが平面的な重なりを生じているので、羽根部311〜314の上面の外側部分(ハッチング部分)が、固定部131〜134の下面の内側部分(同じくハッチング部分)に接触した状態で、それ以上の変位は制限されることになる。ここで、各羽根部311〜314の上面のハッチング部分を制御面と呼ぶことにすれば、各羽根部は、その制御面が固定部の下面に接触した段階で、それ以上の変位が抑制されることになる。
【0046】
このような変位制御が行われることは、図2の側断面図を見ても明らかである。図2において、たとえば、第1の羽根部311が図の上方へと変位を生じたとすると、やがて上面の外側部分が、固定部131の下面の内側部分に衝突し、それ以上の変位は抑制される。同様に、第2の羽根部312が図の上方へと変位を生じたとすると、やがて上面の外側部分が、固定部132の下面の内側部分に衝突し、それ以上の変位は抑制される。図3の側断面図に示されているように、中層部200は、島状部110の下面と羽根接合部315の上面とを接続する中央接続部210と、台座330の上面と固定部121〜124の下面とを接続する周囲接続部230と、によって構成されているが、作用体310の上方への変位の自由度は、この中層部200の厚みによって定まることになる。
【0047】
要するに、本実施形態に係るセンサ本体では、図9に示されているとおり、第1の羽根部311の上面の外側の一部分が、第1の固定部131の下面の内側の一部分に対向する制御面を構成し、第2の羽根部312の上面の外側の一部分が、第2の固定部132の下面の内側の一部分に対向する制御面を構成し、第3の羽根部313の上面の外側の一部分が、第3の固定部133の下面の内側の一部分に対向する制御面を構成し、第4の羽根部314の上面の外側の一部分が、第4の固定部134の下面の内側の一部分に対向する制御面を構成するようになっている。そして、作用体310に対して、所定の許容範囲を越える外力が作用した場合に、少なくともいずれか1つの羽根部の上面が、対向する固定部の下面に接触して変位が制御されるように、中層部200の厚みが設定されている。これにより、過度の外力や加速度が加わった場合であっても、作用体310の変位が所定範囲内に抑制され、橋梁部121〜124などに過度の応力が加わることによる物理的損傷の発生を抑えることができる。
【0048】
<<< §2.力もしくは加速度センサとしての動作 >>>
続いて、これまで§1で述べたセンサ本体を利用した力もしくは加速度センサの動作を説明する。図3の側断面図に示されているように、このセンサ本体では、作用体310が、十字形部材の下面(島状部110の下面)に取り付けられており、台座330に囲われた空間内で宙吊りの状態になっている。しかも、十字形部材を構成する4本の橋梁部121〜124は可撓性を有しているため、台座330を固定した状態で、作用体310に対して外力を作用させると、この外力により4本の橋梁部121〜124に撓みが生じることになり、作用体310が台座330に対して相対的に変位する。
【0049】
たとえば、図10の側断面図(図3と同様に、図1に示すセンサ本体を切断線3−3で切った断面を示す)に示すように、作用体310に対して、図の矢印で示す方向(X軸正方向)に外力+Fxが作用したとすると、十字形部材の各部が図示のように撓み、作用体310は台座330に対して図のような相対位置変化を生じることになる。逆に、図11の側断面図(図3と同様に、図1に示すセンサ本体を切断線3−3で切った断面を示す)に示すように、作用体310に対して、図の矢印で示す方向(X軸負方向)に外力−Fxが作用したとすると、十字形部材の各部が図示のように撓み、作用体310は台座330に対して図のような相対位置変化を生じることになる。本発明に係るセンサは、このような相対位置変化を、抵抗素子を用いて電気信号の形で検出する機能を有している。
【0050】
このセンサ本体を、携帯電話、デジタルカメラ、電子ゲーム機器、PDA機器などの電子機器に内蔵した場合、オペレータの指による操作により、作用体310に対して直接的もしくは間接的にこのような外力を作用させることができる。そして、後述する検出回路を用いることにより、作用した外力の向きと大きさとを検出すれば、オペレータの操作入力を電気的に検出することが可能になる。あるいは、作用体310を重錐体として機能させれば、このセンサ本体を内蔵した電子機器に作用した加速度を、電気的に検出することも可能になる。
【0051】
なお、既に述べたように、作用体310に、所定の許容範囲を越える外力や加速度が作用した場合、作用体310の羽根部311〜314のいずれかの上面が、固定部131〜134のいずれかの下面に接触して変位が制御されるように、中層部200の厚みが設定されている。たとえば、作用体310に作用するX軸正方向の力+Fxの大きさが所定の許容範囲に達した場合、図9に示す第1の羽根部311および第4の羽根部314の制御面(ハッチング部分)が、第1の固定部131および第4の固定部134の下面に接触して、それ以上の変位が制限されることになる。このため、各橋梁部121〜124に過度の撓みが生じることを抑制することができ、各橋梁部が物理的に破損するのを防ぐことができる。
【0052】
もちろん、各橋梁部をこのような物理的な破損から保護するために、図8に示す溝部G1の寸法を所定値以下に設定することも有効である。この場合、過度の力や加速度が作用した場合、作用体310の側面が台座330の内面に接触して、変位の制御が行われることになる。
【0053】
続いて、この実施形態に係るセンサ本体において、作用体310に作用した外力あるいは加速度の向きと大きさとを検出する原理を説明する。図5の上面図に示すように、橋梁部120には、合計12個のピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4が形成されている。これら各ピエゾ抵抗素子は、シリコン基板層からなる上層部100の上面付近に形成されたP型もしくはN型の不純物ドープ領域によって構成されている。ここで、X軸方向に一直線に並ぶように配置された4組のピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4は、作用体310に作用した外力のX軸方向成分を検出するX軸方向成分検出手段として機能し、Y軸方向に一直線に並ぶように配置された4組のピエゾ抵抗素子Ry1〜Ry4は、作用体310に作用した外力のY軸方向成分を検出するY軸方向成分検出手段として機能する。また、同じくY軸方向に一直線に並ぶように配置された4組のピエゾ抵抗素子Rz1〜Rz4は、作用体310に作用した外力のZ軸方向成分を検出するZ軸方向成分検出手段として機能する。なお、4組のピエゾ抵抗素子Rz1〜Rz4は、必ずしもY軸方向に一直線に並ぶように配置する必要はなく、X軸方向に一直線に並ぶように配置してもかまわない。
【0054】
これら各ピエゾ抵抗素子の配置をより詳細に見ると、X軸方向成分検出手段は、第1の橋梁部121の外側部分に配置されたRx1、第1の橋梁部121の内側部分に配置されたRx2、第3の橋梁部123の内側部分に配置されたRx3、第3の橋梁部123の外側部分に配置されたRx4、なる4組のピエゾ抵抗素子によって構成されている。また、Y軸方向成分検出手段は、第2の橋梁部122の外側部分に配置されたRy1、第2の橋梁部122の内側部分に配置されたRy2、第4の橋梁部124の内側部分に配置されたRy3、第4の橋梁部124の外側部分に配置されたRy4、なる4組のピエゾ抵抗素子によって構成されている。更に、この実施形態では、Z軸方向成分検出手段は、第2の橋梁部122の外側部分に配置されたRz1、第2の橋梁部122の内側部分に配置されたRz2、第4の橋梁部124の内側部分に配置されたRz3、第4の橋梁部124の外側部分に配置されたRz4、なる4組のピエゾ抵抗素子によって構成されているが、その代わりに、第1の橋梁部121の外側部分に配置された素子、第1の橋梁部121の内側部分に配置された素子、第3の橋梁部123の内側部分に配置された素子、第3の橋梁部123の外側部分に配置された素子、なる4組のピエゾ抵抗素子によってZ軸方向成分検出手段を構成してもかまわない。
【0055】
さて、前述したとおり、作用体310にX軸正方向の外力+Fxが作用すると、上層部100には、図10の側断面図に示すような撓みが生じ、逆に、X軸負方向の外力−Fxが作用すると、上層部100には、図11の側断面図に示すような撓みが生じる。このとき、各ピエゾ抵抗素子についてのX軸方向に関する物理的な伸縮に着目すると、図10に示す状態では、抵抗素子Rx1,Rx3はX軸方向に関して縮み、抵抗素子Rx2,Rx4はX軸方向に関して伸びる現象が起き、図11に示す状態では、図10に示す状態に比べて伸縮の関係が全く逆の現象が起こる。図では、伸びる素子については「+」、縮む素子については「−」の符号を付して示してある。
【0056】
一方、作用体310にY軸正方向の外力+Fxが作用した場合や、Y軸負方向の外力−Fxが作用した場合には、上述したX軸に関して生じた現象と同様の現象がY軸に関して生じることになり、抵抗素子Ry1〜Ry4について、同じようにY軸方向に関する伸縮が生じることになる。
【0057】
また、作用体310にZ軸正方向の外力+Fzが作用すると、上層部100には、図12の側断面図(抵抗素子Rz1〜Rz4の位置で切断した断面を示す)に示すような撓みが生じ、逆に、Z軸負方向の外力−Fzが作用すると、上層部100には、図13の側断面図(図12と同じ位置で切断した断面を示す)に示すような撓みが生じる。このとき、各ピエゾ抵抗素子についてのY軸方向に関する物理的な伸縮に着目すると、図12に示す状態では、抵抗素子Rz2,Rz3はY軸方向に関して伸び、抵抗素子Rz1,Rz4はY軸方向に関して縮む。図13に示す状態では、これと伸縮関係が逆になる。
【0058】
ここで、各ピエゾ抵抗素子がP型不純物ドープ領域として形成されていた場合、その長手方向に関する抵抗値は、物理的に伸びる方向への応力が作用した場合には抵抗値が増加し、物理的に縮む方向への応力が作用した場合には抵抗値が減少する(N型不純物ドープ領域であった場合は、抵抗値の増減が逆になる)。したがって、図10〜図13に示す各状態では、「+」が付された抵抗素子の抵抗値は増加し、「−」が付された抵抗素子の抵抗値は減少することになる。
【0059】
このような現象を利用すれば、X軸方向成分検出手段を構成する各ピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4の抵抗値に基づいて、作用体に作用した外力のX軸方向成分を示す検出値を出力し、Y軸方向成分検出手段を構成する各ピエゾ抵抗素子Ry1〜Ry4の抵抗値に基づいて、作用体に作用した外力のY軸方向成分を示す検出値を出力し、Z軸方向成分検出手段を構成する各ピエゾ抵抗素子Rz1〜Rz4の抵抗値に基づいて、作用体に作用した外力のZ軸方向成分を示す検出値を出力する機能をもった検出回路を実現することができる。
【0060】
図14は、このような検出回路の構成例を示す回路図である。この検出回路では、所定の座標軸方向成分を検出するために、4組のピエゾ抵抗素子からなるブリッジ回路についてのブリッジ電圧を検出するようにしている。たとえば、図の上段に示すように、4組のピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4についてのブリッジ回路に対して、電源61から所定の電圧を印加し、このときのブリッジ電圧を電圧計64で測定することにより、X軸方向成分の検出が行われる。同様に、図の中段に示すように、4組のピエゾ抵抗素子Ry1〜Ry4についてのブリッジ回路に対して、電源62から所定の電圧を印加し、このときのブリッジ電圧を電圧計65で測定することにより、Y軸方向成分の検出が行われる。また、図の下段に示すように、4組のピエゾ抵抗素子Rz1〜Rz4についてのブリッジ回路に対して、電源63から所定の電圧を印加し、このときのブリッジ電圧を電圧計66で測定することにより、Z軸方向成分の検出が行われる。
【0061】
この図14に示す検出回路により、上述のような各軸方向成分の検出が可能になることは、図10〜図13に示す各抵抗素子の抵抗値の増減の関係に着目すれば、容易に理解できよう。また、このようなブリッジ回路による各軸方向成分の検出を行えば、1つの軸方向成分の検出値が、他の軸方向成分の検出値の干渉を受けることなく、個々の座標軸ごとにそれぞれ独立した検出値を得ることができる。
【0062】
なお、本願発明者が行った実験によると、図5に示すピエゾ抵抗素子の配置の代わりに、図15に示す配置(抵抗素子Ry3,Ry4の位置と抵抗素子Rz3,Rz4の位置とが入れ替わっている)を採った場合の方が精度の高い検出値を得ることができた。
【0063】
また、ピエゾ抵抗素子による検出感度をできるだけ高くするためには、橋梁部121〜124に撓みが生じたときに、最も大きな機械的応力が生じる箇所に、各ピエゾ抵抗素子を配置するようにするのが好ましい。本願発明者が行った実験によると、橋梁部の内側部分に配置されるピエゾ抵抗素子に関しては、その内側端が中央接続部210の外側輪郭線に揃うようにし、橋梁部の外側部分に配置されるピエゾ抵抗素子については、その外側端が周囲接続部230の内側輪郭線に揃うようにすると、良好な検出感度を得ることができた。具体的には、図3の側断面図に示すように、第1の橋梁部121の内側部分に配置される抵抗素子Rx2および第3の橋梁部123の内側部分に配置される抵抗素子Rx3については、その内側端が中央接続部210の外側輪郭線に揃う位置にきており、第1の橋梁部121の外側部分に配置される抵抗素子Rx1および第3の橋梁部123の外側部分に配置される抵抗素子Rx4については、その外側端が周囲接続部230の内側輪郭線に揃う位置にきている。
【0064】
<<< §3.センサ本体の製造方法 >>>
次に、これまで述べてきたセンサ本体の製造方法の実施形態を、図16〜図19に示す側断面図を参照しながら述べる。図1に示すセンサ本体は、以下に述べる方法により製造されたものである。なお、図16〜図19に示す側断面図は、いずれも、図1に示すセンサ本体を切断線2−2の位置で切断した断面に相当するものである。
【0065】
まず、図16に示すように、上から順に、第1の層10、第2の層20、第3の層30の3層を積層してなる材料基板を用意する。ここで、第1の層10は、上層部100を構成するための層であり、この実施形態の場合、シリコンからなる層である。また、第2の層20は、中層部200を構成するための層であり、この実施形態の場合、酸化シリコンからなる層である。更に、第3の層30は、下層部300を構成するための層であり、この実施形態の場合、シリコンからなる層である。このように、シリコン/酸化シリコン/シリコンという3層の積層構造をもった材料基板は、前述したように、SOI基板として市販されており、実用上は、この市販のSOI基板を用意すればよい。
【0066】
ここに示す製造方法を実施する上では、第1の層10と第2の層20とは、互いにエッチング特性の異なる材料から構成されている必要があり、また、第2の層20と第3の層30とは、やはり互いにエッチング特性の異なる材料から構成されている必要がある。これは、第1の層10に対して上面からエッチングを行う際に、第2の層20をエッチングのストッパ層として利用する必要があり、また、第3の層30に対して下面からエッチングを行う際に、第2の層20をエッチングのストッパ層として利用する必要があるためである。結果として、最終的に得られるセンサ本体では、島状部110、各橋梁部121〜124、各固定部131〜134、作用体310、台座330を構成する材料と、中央接続部210、周囲接続部230を構成する材料とが、互いにエッチング特性の異なる材料から構成されることになる。ここに示す実施形態の場合、第1の層10と第3の層30とを同一材料(シリコン)によって構成しているが、もちろん、第1の層10、第2の層20、第3の層30をすべて異なる材料によって構成してもかまわない。
【0067】
続いて、第1の層10に対しては浸食性を有し、第2の層20に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、第1の層10の所定領域に対して、第2の層20の上面が露出するまで厚み方向へのエッチングを行い、第1の層10に開口部H1〜H4を形成することにより、島状部110、各橋梁部121〜124、各固定部131〜134を形成する。
【0068】
結局、ここで行うエッチング工程は、第1の層10の上面に、図6のハッチング部分に相当するパターンをもったレジスト層を形成し、このレジスト層で覆われていない露出部分を垂直下方へと浸食させる工程になる。このエッチング工程では、第2の層20に対する浸食は行われないので、第1の層10の所定領域のみが除去されることになる。図17は、第1の層10に対して、上述のようなエッチングを行い、上層部100を形成した状態を示す。
【0069】
続いて、第3の層30に対しては浸食性を有し、第2の層20に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、第3の層30の所定領域に対して、第2の層20の下面が露出するまで厚み方向へのエッチングを行い、第3の層30を作用体310と台座330とに分離する。ここで行うエッチング工程は、第3の層30の下面に、図8のハッチング部分に相当するパターンをもったレジスト層を形成し、このレジスト層で覆われていない露出部分、すなわち、溝部G1,G2に相当する部分を垂直上方へと浸食させる工程になる。このエッチング工程では、第2の層20に対する浸食は行われないので、第3の層30の所定領域のみが除去されることになる。
【0070】
図18は、このようにして、第3の層30を、作用体310(311〜315)と台座330とからなる下層部300に変化させた状態を示す。溝部G1およびG2が形成され、この部分において、第2の層20の下面が露出した状態になっている。なお、上述した第1の層10に対するエッチング工程と、第3の層30に対するエッチング工程の順序は入れ替えることができ、いずれのエッチング工程を先に行ってもかまわないし、同時に行ってもかまわない。
【0071】
最後に、第2の層20に対しては浸食性を有し、第1の層10および第3の層30に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、第2の層20に対して、その露出部分から厚み方向および層方向へのエッチングを行い、残存した部分により中央接続部210および周囲接続部230を構成する。ここで行うエッチング工程は、別途、レジスト層を形成する必要はない。すなわち、図18に示すように、第1の層10の残存部分である上層部100と、第3の層30の残存部分である下層部300とが、それぞれ第2の層20に対するレジスト層として機能し、エッチングは、第2の層20の露出部分、すなわち、開口部H1〜H4および溝部G1,G2の形成領域に対して行われることになる。
【0072】
ここでは、第2の層20に対して、厚み方向だけではなく、層方向へも浸食が行われるようなエッチング法を用いるようにする。その結果、図19に示すように、第2の層20のうち、開口部H1〜H4の形成領域の近傍と、溝部G1,G2の形成領域の近傍がエッチング除去され、中央接続部210(図19には示されていない)と周囲接続部230が形成されることになる。この工程で、厚み方向だけではなく、層方向へも浸食が行われるようなエッチング法を用いる理由は、図9においてハッチングを施して示す領域に存在する第2の層20の部分をエッチングにより除去するためである。図19の側断面図に示すとおり、中層部200において、図9にハッチングを施した領域に相当する部分は空隙になっているが、これはこのような層方向への浸食が行われたためである。なお、このような層方向への浸食が行われるエッチングプロセスにより中層部200を形成すると、図19の構造体に示されているとおり、中層部200を構成する各部の端面がアールをもった面になるが、上層部100と下層部300とを接合するという機能には何ら支障は生じない。たとえば、図19に示す周囲接続部230の内側の端面は、溝部G1から侵入したエッチング液により浸食された部分であり、図示のとおり浸食面はアールをもった面になるが、上層部100と下層部300とを接続する機能には何ら支障は生じない。
【0073】
以上の製造プロセスにおいて、第1の層10に対する垂直下方へのエッチングを行い、上層部100を形成する工程(図17)と、第3の層30に対する垂直上方へのエッチングを行い、下層部300を形成する工程(図18)では、次の2つの条件を満たすエッチング法を行う必要がある。第1の条件は、各層の厚み方向への方向性をもった浸食が行われるエッチング法であること、第2の条件は、シリコン層に対しては浸食性を有するが、酸化シリコン層に対しては浸食性を有しないエッチング法であること、である。第1の条件は、所定寸法をもった開口部や溝を形成するために必要な条件であり、第2の条件は、酸化シリコンからなる第2の層20を、エッチングストッパ層として利用するために必要な条件である。
【0074】
第1の条件を満たすエッチングを行うには、誘導結合型プラズマエッチング法(ICPエッチング法:Induced Coupling Plasma Etching Method )を用いるのが好ましい。このエッチング法は、垂直方向に深い溝を掘る際に効果的な方法であり、一般に、DRIE(Deep Reactive Ion Etching )と呼ばれているエッチング方法の一種である。この方法の特徴は、材料層を厚み方向に浸食しながら掘り進むエッチング段階と、掘った穴の側面にポリマーの壁を形成するデポジション段階と、を交互に繰り返す点にある。掘り進んだ穴の側面は、順次ポリマーの壁が形成されて保護されるため、ほぼ厚み方向にのみ浸食を進ませることが可能になる。一方、第2の条件を満たすエッチングを行うには、酸化シリコンとシリコンとでエッチング選択性を有するエッチング材料を用いればよい。
【0075】
本願発明者は、この2つの条件を満足させるエッチングとして、実際に次のような条件で、エッチングを行ったところ、良好な結果が得られた。すなわち、上述した誘導結合型プラズマエッチング法を用い、次のような具体的条件によりエッチング段階とデポジション段階とを交互に繰り返すようにした。まず、エッチング対象となる材料を、低圧のチャンバ内に収容し、エッチング段階では、SF6ガスを100sccm、O2ガスを10sccmの割合でチャンバ内に供給し、デポジション段階では、C4F8ガスを100sccmの割合でチャンバ内に供給した。エッチング段階とデポジション段階をそれぞれ10秒程度の周期で繰り返し実行したところ、3μm/min程度のエッチングレートでエッチングが実行された。もちろん、本発明に係る製造方法は、上述のエッチング方法を用いる方法のみに限定されるものではない。
【0076】
一方、第2の層20に対するエッチング工程(図19)では、次の2つの条件を満たすエッチング法を行う必要がある。第1の条件は、厚み方向とともに層方向への方向性をもった浸食が行われるエッチング法であること、第2の条件は、酸化シリコン層に対しては浸食性を有するが、シリコン層に対しては浸食性を有しないエッチング法であること、である。第1の条件は、不要な部分に酸化シリコン層が残存して作用体310の変位自由度を妨げることがないようにするために必要な条件であり、第2の条件は、既に所定形状への加工が完了しているシリコンからなる上層部100や下層部300に浸食が及ばないようにするために必要な条件である。
【0077】
本願発明者は、この2つの条件を満足させるエッチングとして、実際に次のような条件で、エッチングを行ったところ、良好な結果が得られた。すなわち、バッファド弗酸(HF:NH4F=1:10の混合液)をエッチング液として用い、エッチング対象物をこのエッチング液に30分ほど浸漬することにより、エッチングを行った。あるいは、CF4ガスとO2ガスとの混合ガスを用いたRIE法によるドライエッチングを行っても、同様に良好な結果が得られた。もちろん、本発明に係る製造方法は、上述のエッチング方法を用いる方法のみに限定されるものではない。
【0078】
上述した製造方法のメリットは、エッチング時の温度、圧力、ガス濃度、エッチング時間などの条件が多少変動したとしても、上層部100と下層部300との間隔に変動が生じることがない点である。すなわち、両者の間隔は、作用体310の上方向への変位の自由度を設定する間隔ということになるが、この間隔は、常に中層部200の厚みによって規定され、エッチング条件に左右されることはない。このため、本発明に係る製造方法によりセンサ本体を量産すれば、少なくとも作用体310の上方向の変位自由度に関しては、個々のロットごとに変動のない正確な寸法設定が可能になる。
【0079】
<<< §4.いくつかの変形例 >>>
以上、本発明を図示する基本的な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、この他にも種々の態様で実施可能である。ここでは、本発明のいくつかの変形例を述べておく。
【0080】
はじめに、本発明に係るセンサ本体について、より検出感度を高めることのできる変形例を述べておく。これまで述べた実施形態に係るセンサ本体を用いて、非常に小さな力や加速度を検出可能にするためには、作用体310にわずかな外力が作用した場合にも、橋梁部121〜124に撓みが生じるようにする必要がある。そのためには、橋梁部121〜124を非常に撓みやすい構造にしておく必要がある。このような要求に応じるひとつの手段は、上層部100の厚みを小さくすることである。前述した§3の製造方法では、SOI基板を材料としてセンサ本体を製造することになるが、このとき、第1の層10であるシリコン層の厚みができるだけ小さいSOI基板を選択的に用いるようにすれば、薄い橋梁部をもったセンサ本体を得ることができ、検出感度を高めることができる。
【0081】
しかしながら、上層部100の厚み全体を薄くすると、実用上の弊害が生じる。すなわち、上層部100は、橋梁部121〜124を構成する層であるとともに、固定部131〜134を構成する層でもあるため、上層部100の厚み全体を薄くすると、固定部131〜134の厚みも薄くなり、固定部としての強度に問題が生じてしまう。既に述べたとおり、固定部131〜134における内側部分(図9のハッチング部分)は、作用体310の制御面に接触することにより、作用体310の過度の変位を制御する機能を有する。したがって、固定部131〜134は、作用体310の一部が衝突しても破損を生じないだけの十分な強度を確保しておく必要がある。
【0082】
このように、必要な部分の機械的強度を確保しつつ、検出感度を高くするためには、橋梁部の厚みを、固定部材の厚みよりも小さく設定すればよい。ここで述べる変形例では、橋梁部を含む十字状部材全体の厚みが、固定部材の厚みよりも小さくなるようにしている。図20は、この変形例に係るセンサ本体の上層部100Aの上面図であり、図にハッチングを施して示した部分が十字状部材に相当する(ハッチングは、十字状部材の全領域を示すためのものであり、断面を示すためのものではない)。なお、この図20では、ピエゾ抵抗素子の図示は省略されている。
【0083】
図20に示す上層部100Aでは、島状部110A、橋梁部121A〜124A、橋梁外側部121B〜124Bによって十字状部材が構成されており、固定部131A〜134Aによって固定部材130Aが構成されている(太い破線は、各領域の境界を示す)。図にハッチングを施して示す十字状部材の部分の厚みは、ハッチングが施されていない固定部材130Aの部分の厚みよりも小さく設定されている。これにより、橋梁部121A〜124Aの厚みが薄くなり、検出感度を高めることができ、しかも、固定部材130Aの部分には十分な強度をもった厚みが確保できる。
【0084】
図21は、図20に示す上層部100Aを用いた変形例に係るセンサ本体の側断面図(X軸に沿って切断した断面を示す)である。十字状部材を構成する島状部110A、橋梁部121A,123A、橋梁外側部121B,123Bの厚みが、固定部材の部分の厚みよりも小さく設定されていることが明瞭に示されている。図示のとおり、X軸に沿って配置されたピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4は、厚みが小さく設定された橋梁部121A,123Aの上面に形成されることになる。
【0085】
この変形例では、厚みが小さく設定された各橋梁部121A〜124Aの外側に、同じく厚みが小さく設定された橋梁外側部121B〜124Bが設けられている。図21の側断面図から明らかなように、橋梁外側部121B〜124Bは、周囲接続部230の上方に位置する。別言すれば、この変形例では、各橋梁部の外側部分が、周囲接続部230の上方部分まで伸びていることになる。このように、厚みが小さく設定された橋梁部の外側を、周囲接続部230の上方部分にかかるまで伸ばすと、その付近に配置されたピエゾ抵抗素子に対してより効率よく応力を伝達させることができる。たとえば、図21に示す例の場合、橋梁外側部121B,123Bを薄く設定することにより、それぞれピエゾ抵抗素子Rx1,Rx4に対して応力を効率よく伝達させることができるようになる。
【0086】
なお、図20に示すような上層部100Aを作成するには、§3で述べた製造プロセスにおいて、十字形部材の厚みが、固定部材の厚みよりも小さくなるように、上層部の十字形部材となるべき領域(図20にハッチングを施した領域)の上層部分をエッチング除去する厚み調整段階を更に付加するようにし、抵抗素子形成段階では、厚み調整がなされた十字形部材の所定箇所にピエゾ抵抗素子を形成するようにすればよい。
【0087】
最後に、前述した基本的な実施形態に係るセンサ本体を加速度センサに利用した変形例を述べておく。図22は、このような変形例に係る加速度センサの側断面図である(図1のセンサ本体を切断線3−3の位置で切断した断面を示す)。図示のとおり、台座330の底面には、制御基板400が接続されている。しかも、作用体310Aの底面は、台座330の底面より所定寸法dだけ上方に位置し、作用体310Aの底面と制御基板400の上面との間に寸法dだけの間隔が確保されている。このような構造にすれば、作用体310Aに作用した加速度の所定方向成分(図の下方へ向かう成分)の大きさが所定の許容値を越えたときに、作用体310Aの底面が制御基板400の上面に接触して、それ以上の変位が制御されることになる。これにより、十字状部材の破損を防ぐことができる。
【0088】
このように、作用体310Aの厚みが、台座330の厚みよりも小さくなるようにするには、§3で述べた製造プロセスにおいて、作用体となるべき領域の下層部分をエッチング除去する厚み調整段階を付加し、図22に示す構造を得るには、台座330の底面に制御基板400を接合する制御基板接合段階を付加すればよい。
【発明の効果】
以上のとおり、本発明に係る抵抗素子を用いた力センサおよび加速度センサならびにその製造方法によれば、作用体の変位を制限するための精密な制御構造を容易に構成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンサ本体の上面図である。
【図2】図1に示すセンサ本体を、切断線2−2の位置で切断した側断面図である。
【図3】図1に示すセンサ本体を、切断線3−3の位置で切断した側断面図である。
【図4】図1に示すセンサ本体の下面図である。
【図5】図2または図3の側断面図に示されている上層部100単体の上面図である。
【図6】図3の側断面図において、上層部100を図の切断線6−6に沿って切断することにより得られる上層部100単体の横断面図である。
【図7】図3の側断面図において、中層部200を図の切断線7−7に沿って切断することにより得られる中層部200単体の横断面図である。
【図8】図3の側断面図において、下層部300を図の切断線8−8に沿って切断することにより得られる下層部300単体の横断面図である。
【図9】図1に示すセンサ本体における上層部100の各構成要素と下層部300の各構成要素との位置関係を示す上面図である(ハッチングは平面的な領域を示すものであり、断面を示すものではない)。
【図10】図1に示すセンサ本体に、X軸正方向の外力+Fxが作用した状態を示す側断面図(図1の切断線3−3の位置で切断した断面を示す)である。
【図11】図1に示すセンサ本体に、X軸負方向の外力−Fxが作用した状態を示す側断面図(図1の切断線3−3の位置で切断した断面を示す)である。
【図12】図1に示すセンサ本体に、Z軸正方向の外力+Fzが作用した状態を示す側断面図(抵抗素子Rz1〜Rz4に沿った位置で切断した断面を示す)である。
【図13】図1に示すセンサ本体に、Z軸負方向の外力−Fzが作用した状態を示す側断面図(抵抗素子Rz1〜Rz4に沿った位置で切断した断面を示す)である。
【図14】図1に示すセンサ本体に適用するための検出回路の一例を示す回路図である。
【図15】図1に示すセンサ本体におけるピエゾ抵抗素子の別な配置例を示す上面図である。
【図16】図1に示すセンサ本体の製造方法の第1の工程を示す側断面図(図1の切断線2−2の位置で切断した断面を示す)である。
【図17】図1に示すセンサ本体の製造方法の第2の工程を示す側断面図(図1の切断線2−2の位置で切断した断面を示す)である。
【図18】図1に示すセンサ本体の製造方法の第3の工程を示す側断面図(図1の切断線2−2の位置で切断した断面を示す)である。
【図19】図1に示すセンサ本体の製造方法の第4の工程を示す側断面図(図1の切断線2−2の位置で切断した断面を示す)である。
【図20】図1に示すセンサ本体の変形例に係る上層部の上面図である(ハッチングは平面的な領域を示すものであり、断面を示すものではない)。
【図21】図20に示す変形例の側断面図である(X軸に沿った断面を示す)。
【図22】図1に示すセンサ本体を利用した加速度センサの一例を示す側断面図(図1の切断線3−3の位置で切断した断面を示す)である。
【符号の説明】
10:第1の層(シリコン層)
20:第2の層(酸化シリコン層)
30:第3の層(シリコン層)
61〜63:電源
64〜66:電圧計
100,100A:上層部(シリコン層)
110,110A:島状部(十字状部材の一部)
120,120A:橋梁部(十字状部材の一部)
121,121A:第1の橋梁部
122,122A:第2の橋梁部
123,123A:第3の橋梁部
124,124A:第4の橋梁部
121B〜124B:橋梁外側部
130,130A:固定部材
131,131A:第1の固定部
132,132A:第2の固定部
133,133A:第3の固定部
134,134A:第4の固定部
200:中層部(酸化シリコン層)
210:中央接続部
230:周囲接続部
300:下層部(シリコン層)
310,310A:作用体
311:第1の羽根部
312:第2の羽根部
313:第3の羽根部
314:第4の羽根部
315:羽根接合部
330:台座
400:制御基板
d:所定寸法
+Fx,−Fx:X軸方向への外力
+Fz,−Fz:Z軸方向への外力
G1,G2:溝部
H1〜H4:開口部
Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4:ピエゾ抵抗素子
X,Y,Z:座標軸
Claims (19)
- 上層部、中層部、下層部の少なくとも3層構造を有するセンサ本体と、検出値を電気信号として取り出すための検出回路と、を備え、
前記上層部の上面の中心位置に原点Oをとり、前記上層部の上面において互いに直交する方向にそれぞれX軸およびY軸をとり、前記上層部の上面に対して垂直な方向にZ軸をとることにより、XYZ三次元直交座標系を定義したときに、
前記上層部は、前記原点Oの近傍に配置された島状部と、前記島状部からX軸正方向に伸びる第1の橋梁部と、前記島状部からY軸正方向に伸びる第2の橋梁部と、前記島状部からX軸負方向に伸びる第3の橋梁部と、前記島状部からY軸負方向に伸びる第4の橋梁部と、の5つの部分を有する十字形部材と、XY座標における第1象限に位置する第1の固定部と、XY座標における第2象限に位置する第2の固定部と、XY座標における第3象限に位置する第3の固定部と、XY座標における第4象限に位置する第4の固定部と、の4つの部分を有する固定部材と、によって構成されており、前記十字形部材の周囲は前記固定部材によって取り囲まれ、前記各橋梁部の外側部分は前記固定部材に接続されており、
前記下層部は、XY座標における第1象限に位置する第1の羽根部と、XY座標における第2象限に位置する第2の羽根部と、XY座標における第3象限に位置する第3の羽根部と、XY座標における第4象限に位置する第4の羽根部と、中央付近において前記第1の羽根部、前記第2の羽根部、前記第3の羽根部、前記第4の羽根部を互いに接続する羽根接合部と、を有する作用体と、この作用体に対して所定間隔をおきながら、その周囲を取り囲む台座と、によって構成されており、
前記中層部は、前記島状部の下面と前記羽根接合部の上面とを接続する中央接続部と、前記台座の上面と前記固定部材の下面とを接続する周囲接続部と、によって構成されており、
前記第1の羽根部の上面の外側の一部分は、前記第1の固定部の下面の内側の一部分に対向する制御面を構成し、前記第2の羽根部の上面の外側の一部分は、前記第2の固定部の下面の内側の一部分に対向する制御面を構成し、前記第3の羽根部の上面の外側の一部分は、前記第3の固定部の下面の内側の一部分に対向する制御面を構成し、前記第4の羽根部の上面の外側の一部分は、前記第4の固定部の下面の内側の一部分に対向する制御面を構成し、
前記第1の橋梁部、前記第2の橋梁部、前記第3の橋梁部、前記第4の橋梁部は、前記作用体に外力が作用した場合に撓みを生じる性質を有し、前記撓みにより前記作用体が前記台座に対して変位を生じるように構成されており、
前記第1の橋梁部、前記第2の橋梁部、前記第3の橋梁部、前記第4の橋梁部の所定箇所には、ピエゾ抵抗素子が配置されており、前記検出回路は、前記ピエゾ抵抗素子の抵抗値に基づいて、前記作用体に作用した外力を示す検出値を出力し、
所定の許容範囲を越える外力が作用した場合に、少なくともいずれか1つの羽根部の上面が、対向する固定部の下面に接触して変位が制御されるように、前記中層部の厚みが設定されていることを特徴とする抵抗素子を用いた力センサ。 - 請求項1に記載の力センサにおいて、
上層部には、XY座標における第1象限、第2象限、第3象限、第4象限の所定位置にそれぞれ厚み方向に貫通する開口部が設けられており、これら開口部により、各橋梁部の側部が固定部材に対して物理的に分離されていることを特徴とする抵抗素子を用いた力センサ。 - 請求項1または2に記載の力センサにおいて、
上層部および下層部を構成する材料と中層部を構成する材料とが、互いにエッチング特性の異なる材料からなることを特徴とする抵抗素子を用いた力センサ。 - 請求項3に記載の力センサにおいて、
上層部および下層部を、シリコン層によって構成し、中層部を酸化シリコン層によって構成したことを特徴とする抵抗素子を用いた力センサ。 - 請求項4に記載の力センサにおいて、
センサ本体が、シリコン層/酸化シリコン層/シリコン層なる3層構造を有するSOI基板によって構成されていることを特徴とする抵抗素子を用いた力センサ。 - 請求項4または5に記載の力センサにおいて、
ピエゾ抵抗素子が、シリコン層からなる上層部に形成された不純物ドープ領域によって構成されていることを特徴とする抵抗素子を用いた力センサ。 - 請求項1〜6のいずれかに記載の力センサにおいて、
橋梁部の厚みが、固定部材の厚みよりも小さく設定されていることを特徴とする抵抗素子を用いた力センサ。 - 請求項7に記載の力センサにおいて、
各橋梁部の外側部分が、周囲接続部の上方部分まで伸びていることを特徴とする抵抗素子を用いた力センサ。 - 請求項1〜8のいずれかに記載の力センサにおいて、
第1の橋梁部の内側部分、第1の橋梁部の外側部分、第3の橋梁部の内側部分、第3の橋梁部の外側部分の各位置に配置された合計4組のピエゾ抵抗素子によりX軸方向成分検出手段が構成され、
検出回路が、前記X軸方向成分検出手段を構成する各ピエゾ抵抗素子の抵抗値に基づいて、作用体に作用した外力のX軸方向成分を示す検出値を出力することを特徴とする抵抗素子を用いた力センサ。 - 請求項9に記載の力センサにおいて、
第2の橋梁部の内側部分、第2の橋梁部の外側部分、第4の橋梁部の内側部分、第4の橋梁部の外側部分の各位置に配置された合計4組のピエゾ抵抗素子によりY軸方向成分検出手段が構成され、
検出回路が、前記Y軸方向成分検出手段を構成する各ピエゾ抵抗素子の抵抗値に基づいて、作用体に作用した外力のY軸方向成分を示す検出値を出力する機能を有し、外力のXY二次元方向成分を独立して検出することを特徴とする抵抗素子を用いた力センサ。 - 請求項10に記載の力センサにおいて、
第1の橋梁部の内側部分、第1の橋梁部の外側部分、第3の橋梁部の内側部分、第3の橋梁部の外側部分の各位置に配置された合計4組のピエゾ抵抗素子、または、第2の橋梁部の内側部分、第2の橋梁部の外側部分、第4の橋梁部の内側部分、第4の橋梁部の外側部分の各位置に配置された合計4組のピエゾ抵抗素子によりZ軸方向成分検出手段が構成され、
検出回路が、前記Z軸方向成分検出手段を構成する各ピエゾ抵抗素子の抵抗値に基づいて、作用体に作用した外力のZ軸方向成分を示す検出値を出力する機能を有し、外力のXYZ三次元方向成分を独立して検出することを特徴とする抵抗素子を用いた力センサ。 - 請求項9〜11のいずれかに記載の力センサにおいて、
橋梁部の内側部分のピエゾ抵抗素子の内側端が、中央接続部の外側輪郭線に揃うように配置され、橋梁部の外側部分のピエゾ抵抗素子の外側端が、周囲接続部の内側輪郭線に揃うように配置されていることを特徴とする抵抗素子を用いた力センサ。 - 請求項9〜12のいずれかに記載の力センサにおいて、
検出回路が、所定の座標軸方向成分を検出するための回路として、4組のピエゾ抵抗素子からなるブリッジ回路についてのブリッジ電圧を検出する回路を有することを特徴とする抵抗素子を用いた力センサ。 - 請求項1〜13のいずれかに記載の力センサを含み、作用体に作用した加速度に起因する力を検出することにより、検出回路から加速度の検出信号を出力させるようにしたことを特徴とする抵抗素子を用いた加速度センサ。
- 請求項14に記載の加速度センサにおいて、
台座の底面に制御基板が接続されており、この台座の底面に対して作用体の底面が所定寸法だけ上方に位置し、前記作用体の底面と前記制御基板の上面との間に所定間隔が確保されるように、前記作用体の厚みが設定されており、
作用した加速度の所定方向成分の大きさが所定の許容値を越えたときに、前記作用体の底面が前記制御基板の上面に接触して変位が制御されるように、前記所定間隔が設定されていることを特徴とする抵抗素子を用いた加速度センサ。 - 請求項1〜15のいずれかに記載の力センサもしくは加速度センサを製造する方法であって、
上から順に、第1の層、第2の層、第3の層の3層を積層してなり、前記第1の層と前記第2の層とが互いにエッチング特性が異なり、前記第3の層と前記第2の層とが互いにエッチング特性が異なるような材料基板を用意する準備段階と、
前記第1の層に対しては浸食性を有し、前記第2の層に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、前記第1の層の所定領域に対して、前記第2の層の上面が露出するまで厚み方向へのエッチングを行い、前記第1の層に開口部を形成することにより、前記第1の層の一部からなる十字形部材と固定部材とを形成する上層部形成段階と、
前記第3の層に対しては浸食性を有し、前記第2の層に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、前記第3の層の所定領域に対して、前記第2の層の下面が露出するまで厚み方向へのエッチングを行い、前記第3の層を作用体と台座とに分離する下層部形成段階と、
前記第2の層に対しては浸食性を有し、前記第1の層および前記第3の層に対しては浸食性を有しないエッチング方法により、前記第2の層に対して、その露出部分から厚み方向および層方向へのエッチングを行い、残存した部分により中央接続部および周囲接続部を形成する中層部形成段階と、
前記十字形部材の一部をなす各橋梁部の所定箇所に、ピエゾ抵抗素子を形成する抵抗素子形成段階と、
を有することを特徴とする力センサもしくは加速度センサの製造方法。 - 請求項16に記載のセンサの製造方法において、
十字形部材の厚みが、固定部材の厚みよりも小さくなるように、上層部の十字形部材となるべき領域の上層部分をエッチング除去する厚み調整段階を更に有し、抵抗素子形成段階では、厚み調整がなされた十字形部材の所定箇所にピエゾ抵抗素子を形成することを特徴とする力センサもしくは加速度センサの製造方法。 - 請求項16または17に記載の加速度センサの製造方法において、
台座部分の厚みに比べて作用体部分の厚みが小さくなるように、下層部の作用体となるべき領域の下層部分をエッチング除去する厚み調整段階と、
台座底面に制御基板を接合する制御基板接合段階と、
を更に有することを特徴とする加速度センサの製造方法。 - 請求項16〜18のいずれかに記載のセンサの製造方法において、
上層部形成段階および下層部形成段階で、誘導結合型プラズマエッチング法を用いることにより、厚み方向へのエッチングを行うことを特徴とする力センサもしくは加速度センサの製造方法。
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