JP4073667B2 - ゲル状食品の製造方法およびゲル状食品 - Google Patents

ゲル状食品の製造方法およびゲル状食品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリンに代表されるような、カスタード風味を有するゲル状食品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
いわゆるカスタード風味とは、卵と砂糖と乳成分を含む混合物が加熱により変成して生じる風味であり、カスタード風味を有するゲル状食品の代表的なものはプリンである。工業的に製造されるカスタード風味のゲル状食品は、大別して二通りのタイプがある。一つは、ゲル化の主体が卵成分であり、蒸しおよび/または焼きにより卵成分を加熱凝固させることによってゲル化させたタイプのものである。もう一つは、ゲル化の主体が、冷却によってゲル化するハイドロコロイドであり、原料液を加熱殺菌後に容器に充填した後、静置冷却してゲル化させたタイプのものである。
【0003】
例えば、前者のタイプのプリンは、一般的に、卵成分を生卵換算で10〜25質量%程度と比較的多く含有しており、良好なカスタード風味が得られる。
ところで、前者のタイプにあっても、商品として流通させるために加熱殺菌を施す必要があるが、殺菌と卵成分のゲル化とが同じ加熱条件で起こるため、殺菌のための加熱条件と卵成分をゲル化させるための加熱条件とを互いに独立して設定することができないという不都合があった。例えば、細菌的に良好な保存性が得られる加熱条件に設定すると、好ましい食感が得られる卵成分のゲル化条件から逸脱する場合があり、問題であった。
【0004】
一方、後者のタイプのプリンは、原料液を加熱殺菌した後に冷却によってゲル化させるので、殺菌条件とゲル化条件をそれぞれ好ましい条件に設定することができるが、後述の理由により卵成分の添加量を0〜5質量%程度に抑える必要があるので、前者に比べてカスタード風味が劣るという欠点があった。すなわち、後者のタイプでは、加熱殺菌工程で卵成分の熱変成が生じるために、卵成分の添加量が多いほど、加熱によって増粘・ゲル化が進み、流動性が悪くなる。そして流動性が悪くなると、加熱殺菌工程において熱交換機の伝熱面に付着して焦げ付き易くなり、その結果、できあがりの食感に滑らかさがなくなり、粉っぽさが生じてしまう。このため卵成分の添加量を多くすることができなかった。
したがって、ハイドロコロイドを用い、冷却によってゲル化させるタイプのプリンに、蒸しおよび/または焼きにより卵成分を加熱凝固させたタイプのプリンと同程度のカスタード風味を付与できるようにすることが要望されていた。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、ハイドロコロイドを用い、冷却によってゲル化させるタイプのゲル状食品であって、滑らかな食感を有するとともに、良好なカスタード風味を有するゲル状食品を製造する方法および該方法によって得られるゲル状食品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、卵黄と、砂糖と、乳たんぱく質と、グリセリン脂肪酸エステルと、クエン酸塩および/またはリン酸塩と、増粘多糖類を含む第1の原料液を、加熱してゲル化させた後、破砕して破砕物を得、該破砕物に、冷却によりゲル化するハイドロコロイドを添加して第2の原料液を得、この第2の原料液を冷却してゲル化させることを特徴とするゲル状食品の製造方法を提供する。
前記第2の原料液における、前記破砕物に含まれる卵黄の含有量が5〜20質量%であることが好ましい。
前記第1の原料液における卵黄の含有量が5〜20質量%、砂糖の含有量が10〜30質量%、乳たんぱく質の含有量が1〜4質量%、グリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.1〜0.3質量%、クエン酸塩および/またはリン酸塩の含有量が0.1〜0.3質量%、増粘多糖類の含有量が0.1〜0.3質量%であることが好ましい。
前記第1の原料液に含まれる前記グリセリン脂肪酸エステルが、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびモノグリセリン有機酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記第1の原料液に含まれる前記クエン酸塩および/またはリン酸塩が、クエン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、およびピロリン酸ナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記第1の原料液に含まれる前記増粘多糖類が、ペクチン、大豆多糖類、およびキサンタンガムよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記第1の原料液を加熱してゲル化させる際に、静置下で、80〜100℃の温度に30〜60分間保持することが好ましい。
本発明はまた、本発明の製造方法により得られるゲル状食品を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の製造方法によりゲル状食品を製造するには、まず、卵黄と、砂糖と、乳たんぱく質と、グリセリン脂肪酸エステルと、クエン酸塩および/またはリン酸塩と、増粘多糖類を含む第1の原料液を調製する。好ましくは、水にこれらの原料を添加し、必要であれば加温し、混合して固形物を溶解させる。混合は、例えば、ミキサー、プロペラ攪拌機、エジェクター、シェアポンプなどを用いて行うことができる。水は必要に応じて使用し、その使用量は得られる第1の原料液全体の0〜83.7質量%の範囲内とする。
またその他の成分として、砂糖以外の甘味料、色素、調味料、香料等を前記第1の原料液に含有させてもよい。
【0008】
前記第1の原料液における卵黄の含有量は、少なすぎるとカスタード風味が不足し、多すぎると食感が粉っぽくなるので、5〜20質量%の範囲内とすることが好ましい。
また、前記第1の原料液における砂糖の含有量は、少なすぎるとカスタード風味が不足し、食感も粉っぽくなるので、10質量%以上とすることが好ましい。また砂糖の含有量は、多すぎると最終製品の風味が甘くなり過ぎるので、10〜30質量%の範囲内とすることがより好ましい。
【0009】
本発明において用いられる乳たんぱく質とは乳製品由来のたんぱく質であり、具体的には、牛乳、脱脂粉乳、クリームチーズ、クリーム、バターなど、たんぱく質を含有する乳製品が使用される。これらの乳製品は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記第1の原料液における乳たんぱく質の含有量は、少なすぎると十分なカスタード風味が得られず、多すぎると粉っぽい食感になるので、1〜4質量%であることが好ましい。
乳たんぱく質として使用される乳製品のうち、特にバターやクリームなどたんぱく質の含有率が比較的低いものは、他の乳製品と組み合わせて使用することが好ましく、特に脱脂粉乳などたんぱく質の含有率が比較的高い乳製品と組み合わせて使用することが好ましい。
【0010】
本発明においては、前記第1の原料液に、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステルを含有させる。具体的には、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびモノグリセリン有機酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上が好ましく用いられる。
ここで、一般的に、乳化剤として用いられるグリセリン脂肪酸エステルは、大きく分類して、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびモノグリセリン有機酸エステルの3種類がある。ここでの脂肪酸としては、主にステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、リシノレイン酸等が用いられ、これらの脂肪酸とグリセリンとのエステルをモノグリセリン脂肪酸エステルと言い、これらの脂肪酸と、重合したグリセリンとのエステルをポリグリセリン脂肪酸エステルと言う。また、有機酸としては、主に、酢酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸等が用いられ、これらの有機酸とモノグリセリン脂肪酸エステルとのエステルをモノグリセリン有機酸エステルと言う。
本発明において、好ましく用いられるモノグリセリン脂肪酸エステルの例としては、モノグリセリンオレイン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸エステル、モノグリセリンパルミチン酸エステル等が挙げられ、好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルの例としては、ヘキサグリセリンオレイン酸エステル、オクタグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンラウリン酸エステル等が挙げられ、好ましいモノグリセリン有機酸エステルの具体例としては、モノグリセリンコハク酸ステアリン酸エステル、モノグリセリンクエン酸ステアリン酸エステル、モノグリセリン乳酸ステアリン酸エステル等が挙げられる。
前記第1の原料液におけるグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、少なすぎると食感に粉っぽさが生じるので0.1質量%以上であることが好ましい。またグリセリン脂肪酸エステルの含有量が多すぎると苦みが生じるので、0.1〜0.3質量%の範囲内とすることがより好ましい。
【0011】
本発明においては、前記第1の原料液にクエン酸塩および/またはリン酸塩を含有させる。ここで用いるクエン酸塩および/またはリン酸塩は、好ましくはナトリウム塩であり、具体的にはクエン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、およびピロリン酸ナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上が好ましく用いられる。
前記第1の原料液におけるクエン酸塩および/またはリン酸塩の含有量は、少なすぎると食感に粉っぽさが生じるので0.1質量%以上であることが好ましい。またクエン酸塩および/またはリン酸塩の含有量が多すぎると塩味が生じるので、0.1〜0.3質量%の範囲内とすることがより好ましい。
【0012】
本発明において用いられる増粘多糖類は、ペクチン、大豆多糖類、およびキサンタンガムよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記第1の原料液における増粘多糖類の含有量は、少なすぎると食感に粉っぽさが生じるので0.1質量%以上であることが好ましい。また増粘多糖類の含有量が多すぎると食感に糊感が生じるので、0.1〜0.3質量%の範囲内とすることがより好ましい。
【0013】
次に、前記第1の原料液を加熱してゲル化させる。具体的には前記第1の原料液を加熱して所定の加熱温度(ゲル化温度)に達した後、この加熱温度(ゲル化温度)を保ちながら静置状態で所定の時間保持することが好ましい。加熱温度(ゲル化温度)は、低すぎるとカスタード風味が不足するとともに、例えば殺菌工程などの後工程で再び加熱された際に増粘したりゲル化するおそれがあり、高すぎると食感が粉っぽくなるので、80〜100℃の範囲内とすることが好ましい。またゲル化温度に達した後、静置状態で保持する保持時間は、短すぎるとカスタード風味が不足し、長すぎると食感が粉っぽくなるので、30〜60分の範囲内とすることが好ましい。
ここでの加熱は、例えば、ステンレスなど比較的熱伝導率が高い材料からなる容器内に前記第1の原料液を入れ、蒸煮器を用い、常圧下で容器ごと蒸気加熱する方法や、缶詰にしてレトルト釜や熱水槽に浸漬させて加熱する方法等により行うことができる。
【0014】
次に、前記第1の原料液をゲル化させたものを破砕して破砕物を得る。破砕は、例えばホモミキサー(特殊機化工業社製)、シェアーポンプ(ヤスダファインテ社製)等を用いて行うことができ、粒子径が0.1mm以下となる程度に破砕することが好ましい。
また、破砕後の破砕物は、腐敗を避けるために−20〜10℃程度となるように冷却することが好ましい。
【0015】
次いで、得られた破砕物にハイドロコロイドを添加して第2の原料液を得る。本発明においてゲル化剤として用いられるハイドロコロイドは、食品に適用可能な親水コロイドで、冷却によってゲル化するものである。例えばゼラチン、寒天、ペクチン、カラギナン、ファセルラン、キサンタンガムとローカストビンガムの混合物、アルギン酸ナトリウム等が好適であり、これらはいずれか1種を単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
具体的には、前記で得られた破砕物と、ハイドロコロイドと、必要に応じて水を加えて混合する。このときハイドロコロイドを完全に溶解させることが好ましいので、必要であれば加温して混合時の溶液温度を20〜90℃の範囲内とする。混合は、例えばミキサー(ヤスダファインテ社製)、アジテーター(ヤスダファインテ社製)などを用いて行うことができる。
またその他の成分として、甘味料、乳製品、色素、香料等を前記第2の原料液に含有させてもよい。
【0016】
ここで、前記第2の原料液を調製する際に使用する前記破砕物の量は、少なすぎるとカスタード風味が不足してしまうので、使用する破砕物に含まれる卵黄の含有量が、第2の原料液全体に対して5質量%以上となるように設定する。
また第2の原料液に含有させるハイドロコロイドは、得ようとする食感に応じて種類を選択し、その種類のハイドロコロイドを用いて適切な食感が得られるように添加量を適宜設定する。各種ハイドロコロイドの好ましい添加量の範囲を具体的に挙げると、ゼラチンは0.5〜2.0質量%、寒天は0.1〜0.5質量%、ペクチンは0.2〜1.0質量%、カラギナンは0.1〜0.4質量%、ファセルランは0.2〜1.0質量%、キサンタンガムとローカストビンガムの混合ゲル化剤は0.1〜0.4質量%、アルギン酸ナトリウムは0.2〜1.0質量%である。
【0017】
前記破砕物にハイドロコロイドを添加して得られる第2の原料液は、これを均質化することが好ましい。例えば均質機を用い、加温および加圧をしながら均質化するのが好ましい。均質化する時の第2の原料液の温度は、高すぎると均質化後に再凝集が起こり、低すぎると均質化が不十分になるので、配合成分の種類に応じてこれらの不都合が生じないように設定する。例えば60〜90℃程度とされる。
また均質化時の圧力は、高すぎると均質化後の再凝集が起こり、低すぎると充分に均質化されないので、配合成分の種類に応じてこれらの不都合が生じないように設定する。例えば5〜15MPa程度とされる。
【0018】
そして、第2の原料液を加熱殺菌する。この加熱殺菌工程は、第2の原料液を調製した後、後述の冷却によるゲル化の前に行えばよく、前記均質化の前に行ってもよいし均質化の後に行ってもよい。均質化後に殺菌を行う場合は、均質機のサニタリー性に完全性を要求されないという利点があり、殺菌後に均質化する場合は、均質化後の状態が熱によって変化しないという利点が得られる。殺菌時の操作条件は、加熱温度が低すぎたり加熱時間が短すぎたりすると殺菌が十分に行われず、加熱温度が高すぎたり加熱時間が長すぎたりすると風味の損失や栄養成分の破壊が生じるおそれがあるので、配合成分の種類に応じてこれらの不都合が生じないように設定する。例えば、90〜145℃程度に加温して2秒間〜10分間程度に保持することによって好適に殺菌を行うことできる。
ここで、本発明では、前記第1の原料液を一旦ゲル化させた後、破砕して得られる破砕物を用いて第2の原料液を調製するので、第2の原料液を加熱殺菌する際の増粘やゲル化が抑えられ、流動性の悪化が抑えられる。したがって、第2の原料液の加熱殺菌には、プレート式殺菌機、チューブラ式殺菌機、スチームインジェクション式殺菌機、スチームインフュージョン式殺菌機等の加熱殺菌装置を適用することが可能である。特にプレート式殺菌機が好適であり、プレート式殺菌機を用いれば、殺菌工程を連続的に効率良く行うことができるとともに、細菌数を効果的に減少させることができる。
【0019】
次いで、加熱殺菌工程を終えた第2の原料液を冷却した後、カップ等の適宜の容器に充填し、静置状態で冷却してゲル化させることによって、カスタード風味を有するゲル状食品が得られる。
容器へ充填する際の第2の原料液の温度は、高すぎるとその後の冷却工程での熱負荷が大きくなり、低すぎると充填前に一部ゲル化が進行してゲル化不良になるので、例えば50〜60℃程度とされる。
ゲル化させるときの冷却温度は、ゲル化剤として配合したハイドロコロイドがゲル化を生じる温度であればよいが、概ね5〜10℃程度の冷蔵庫内に静置させることによって好適にゲル化させることができる。
なお、容器は、殺菌済みのものを用いるのが望ましい。また、従来の蒸しおよび/または焼きにより加熱凝固させるタイプのゲル状食品では耐熱性の容器を用いる必要があったが、本発明では、耐熱性の容器でなくてもよい。
【0020】
本発明によれば、前記第1の原料液を一旦ゲル化させた後、破砕して得られる破砕物を用いて第2の原料液を調製するので、第2の原料液を加熱殺菌する際に増粘やゲル化生じるのが防止される。したがって、従来のハイドロコロイドを用いてゲル化させるタイプのゲル状食品よりも、卵成分の添加量を増加させることができ、蒸/焼きタイプのゲル状食品と同程度の良好なカスタード風味を有するゲル状食品を製造することができる。また、プレート式殺菌機で殺菌可能であるので、オーブン、蒸煮器、レトルト釜等の連続製造し難い機器を使用せずに効率良く製造することができるうえ、プレート式殺菌機で殺菌すれば、蒸/焼きタイプのゲル状食品より、細菌数が少なく保存性の良いゲル状食品が得られる。また第1の原料液をゲル化させる温度条件、第2の原料液をゲル化させる温度条件、および加熱殺菌のための温度条件は、それぞれ独立して設定することができるので、好ましい条件でゲル化させて好ましい食感のゲル状食品を得ることができる。
したがって、本発明のゲル状食品は、前記第1の原料液を加熱により一旦ゲル化させた後に破砕し、得られる破砕物にハイドロコロイドを添加して冷却によってゲル化させたものであり、滑らかな食感を有するとともに、良好なカスタード風味を有する。
なお、本発明におけるゲル状食品はカスタード風味を有するもので、好ましくはプリンであるが、卵黄と、砂糖と、乳たんぱく質を主成分として含み、ハイドロコロイドでゲル化させてなるものであれば、プリン以外であってもよい。例えば、ムース、ババロア、カスタードクリーム、エッグタルト、フルーツクラフィティー、クレームカラメル等にも本発明は適用可能である。
【0021】
【実施例】
以下、具体的な実施例を示して本発明の効果を明らかにする。以下の試験および実施例における配合割合は全て質量基準で表している。
〔試験1〕
(目的)
この試験は、本発明における第2の原料液を構成するのに用いられる破砕物について、再加温したときにゲル化する特性(再加温ゲル化性)が無く、粉っぽい食感(粉感)が少なく、カスタード感があるという3つの条件を満たすための原料の組合せを検索する目的で実施した。
(試料の調製)
まず、表1の各配合で原料を混合して第1の原料液を得た。なお混合後、卵黄をゲル化させない温度範囲で混合・溶解の状態を良くするために、60℃に加温した。次に、60℃に加温された第1の原料液をステンレス容器に入れ、容器ごと蒸煮器で加熱し、混合物の温度が80℃に達してから40分間、静置下で保持してゲル化させた。これを、ホモミキサー(特殊機化工業社製)で破砕して破砕物を得た後、高温保持による風味、食感の劣化を防ぐために10℃に冷却して、10種類の試料(テストNo.1−1〜10)を得た。なお、以下の試験において、グリセリン脂肪酸エステルとしては、特に断りのない限りモノグリセリンステアリン酸エステルを使用した。
【0022】
【表1】
Figure 0004073667
【0023】
(評価方法)
▲1▼冷却した試料(破砕物)を水で希釈して10質量%溶液とし、85℃に加温して溶解した後、ホモミキサー(特殊機化工業社製)で2分間攪拌し、25℃に冷却した水溶液から30mlを採取し、遠心分離器(日立社製)を用い2000rpmで10分間遠心分離したときの沈殿量を測定した。ここでの遠心分離における沈殿量(遠沈量)と粉感は相関性があり、この遠沈量が少ないほど粉感が少ないことを示す。以下の試験では、遠沈量が0.5ml以下であるときに「粉感無し」と評価した。
▲2▼冷却した試料(破砕物)を10℃で官能試験に供し、カスタード感を官能評価した。
▲3▼冷却した試料(破砕物)を85℃に加温し、再び10℃に冷却した後、官能試験に供し、粉感を官能評価した。
▲4▼冷却した試料(破砕物)が10℃である状態(再加温前)、およびこれを85℃に再加温した状態(再加温後)で、それぞれの粘度をB型粘度計(トキメック社製)で測定し、再加温後の粘度が再加温前の粘度より上昇したものを、再加温ゲル化性有り、そうでなかったものを再加温ゲル化性無しと評価した。
【0024】
(試験結果)
テストNo.1−1〜10についての評価結果を下記表2に示す。なお表2において、カスタード感の官能評価は、「カスタード感有り」を○、「カスタード感無し」を×で示した(以下、同様)。粉感の官能評価は、「粉感無し」を○、「僅かに粉感がある」を△、「粉感がある」を×で示した(以下、同様)。再加温ゲル化性の評価は、「再加温前の10℃での粘度≧再加温後の85℃での粘度」であるものを無、「再加温前の10℃での粘度<再加温後の85℃での粘度」であるものを有と示した(以下、同様)。
【0025】
【表2】
Figure 0004073667
【0026】
表2の結果より、次のことが分かった。
・カスタード感があるのは、テストNo.1−3〜10であり、これらは卵黄、砂糖、および脱脂粉乳を含有する配合であった。
・官能評価で粉感が無く、遠沈量が最も少ないのは、テストNo.1−10であり、これはグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸ナトリウム、およびキサンタンガムを含有する配合であった。
・再加温後の粘度が上昇した試料はなく、本試験例で得られた試料(破砕物)はいずれも再加温ゲル化性が無かった。
【0027】
〔試験2〕
(目的)
この試験は、試験1で良好な結果が得られたテストNo.1−10の試料(破砕物)を使用して第2の原料液を調製し、これをゲル化させてゲル状食品を製造する際の、前記破砕物の適切な使用量を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
表3の各配合割合でそれぞれ原料を混合し、ハイドロコロイドを溶解させるため、および均質化効率を良くするために80℃に加熱し、均質機(三丸機械工業社製)を使用して10MPaの圧力で均質化した後、殺菌するために90℃に加熱し10分間保持した後、60℃に冷却して容器に充填し、冷蔵庫で10℃に冷却してゲル化させ、8種類の試料(テストNo.2−1〜8)を得た。
(評価方法)
得られた試料(ゲル状食品)について、カスタード感と遠沈量を、試験1と同一の方法で評価した。
その結果を下記表4に示す。
【0028】
【表3】
Figure 0004073667
【0029】
【表4】
Figure 0004073667
【0030】
(試験結果)
表4の結果より、次のことが分かった。
・テストNo.2−1〜8のすべての試料において遠沈量は0.5ml以下であった。
・カスタード感があるのは、テストNo.2−3〜8であった。
すなわち、テストNo.1−10の破砕物の使用量が40質量%以上のものが、カスタード感があり、かつ遠沈量が0.5ml以下であった。なお、ここで使用したテストNo.1−10の破砕物の使用量が40質量%以上のものは、第2の原料液における、破砕物由来の卵黄分が5質量%以上に相当する。
【0031】
〔試験3〕
(目的)
この試験は、試験1において、第1の原料液を加熱してゲル化させる際の、適切な加熱時間を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
試験1のテストNo.1−10の配合割合で、試験1と同様にして破砕物を調製した。ただし、第1の原料液の温度が80℃に達してからの保持時間を、20分、30分、40分、50分、60分、70分の6種類とし、これにより6種類の試料(テストNo.3−1〜6)を得た。
(評価方法)
得られた試料(破砕物)について、試験1と同一の方法で、カスタード感、遠沈量、および再加温ゲル化性を評価した。
その結果を下記表5に示す。
【0032】
【表5】
Figure 0004073667
【0033】
(試験結果)
表5の結果より、次のことが分かった。
・カスタード感があるのは、テストNo.3−2〜6であった。
・遠沈量が0.5ml以下であるのは、テストNo.3−1〜5であった。
・再加温ゲル化性は、テストNo.3−1〜6のすべてにおいて無かった。
すなわち、カスタード感があり、遠沈量が0.5ml以下で、かつ再加温ゲル化性が無いのは、保持時間が30〜60分の範囲であることが分かった。また、保持時間が20分ではカスタード感が不足し、70分では食感が粉っぽくなることが認められた。
【0034】
〔試験4〕
(目的)
この試験は、試験1において、第1の原料液を加熱してゲル化させる際の、適切な加熱温度を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
試験1のテストNo.1−10の配合割合で、試験1と同様にして破砕物を調製した。ただし、第1の原料液を加熱保持する温度を60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃の6種類とし、それぞれの温度に達してから40分間保持して6種類の試料(テストNo.4−1〜6)を得た。
(評価方法)
得られた試料(破砕物)について、試験1と同一の方法で、カスタード感、遠沈量、および再加温ゲル化性を評価した。
その結果を下記表6に示す。
【0035】
【表6】
Figure 0004073667
【0036】
(試験結果)
表6の結果より、次のことが分かった。
・カスタード感があるのは、テストNo.4−3〜6であった。
・遠沈量が0.5ml以下であるのは、テストNo.4−1〜5であった。
・再加温ゲル化性が無いのは、テストNo.4−2〜6であった。
すなわち、カスタード感があり、遠沈量が0.5ml以下で、かつ再加温ゲル化性が無いのは、加熱温度が80〜100℃の範囲であることが分かった。また、加熱温度が70℃ではカスタード感が不足し、60℃ではカスタード感の不足に加えて再加温ゲル化性が有り、加熱温度が110℃では遠沈量が多く食感が粉っぽくなることが認められた。
【0037】
〔試験5〕
(目的)
この試験は、試験1において、破砕物を調製する際の卵黄の適切な配合量を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
表7の配合割合で、試験1と同一の方法で破砕物を調製した。これにより、7種類の試料(テストNo.5−1〜7)を得た。
(評価方法)
得られた試料(破砕物)について、試験1と同一の方法で、カスタード感、遠沈量、および再加温ゲル化性を評価した。
その結果を下記表8に示す。
【0038】
【表7】
Figure 0004073667
【0039】
【表8】
Figure 0004073667
【0040】
(試験結果)
表8の結果より、次のことが分かった。
・カスタード感があるのは、テストNo.5−2〜7であった。
・遠沈量が0.5ml以下であるのは、テストNo.5−1〜6であった。
・再加温ゲル化性は、テストNo.5−1〜7のすべてにおいて無かった。
すなわち、カスタード感があり、遠沈量が0.5ml以下で、かつ再加温ゲル化性が無いのは、第1の原料液における卵黄の含有量が5〜20質量%の範囲であることが分かった。また、卵黄の含有量が3質量%ではカスタード感が不足し、25質量%では食感が粉っぽくなることが認められた。
【0041】
〔試験6〕
(目的)
この試験は、試験1において、破砕物を調製する際の砂糖の適切な配合量を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
表9の配合割合で、試験1と同一の方法で破砕物を調製した。これにより、7種類の試料(テストNo.6−1〜7)を得た。
(評価方法)
得られた試料(破砕物)について、試験1と同一の方法で、カスタード感、遠沈量、および再加温ゲル化性を評価した。
その結果を下記表10に示す。
【0042】
【表9】
Figure 0004073667
【0043】
【表10】
Figure 0004073667
【0044】
(試験結果)
表10の結果より、次のことが分かった。
・カスタード感があるのは、テストNo.6−2〜7であった。
・遠沈量が0.5ml以下であるのは、No.6−2〜7であった。
・再加温ゲル化性は、テストNo.6−1〜7のすべてにおいて無かった。
すなわち、カスタード感があり、遠沈量が0.5ml以下で、かつ再加温ゲル化性が無いのは、第1の原料液における砂糖の含有量が10質量%以上であることが分かった。また、砂糖の含有量が7質量%ではカスタード感が不足するとともに食感が粉っぽくなることが認められた。
【0045】
〔試験7〕
(目的)
この試験は、試験1において、破砕物を構成する乳たんぱく質の原料として適切な乳製品を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
表11の配合割合で、試験1と同一の方法で破砕物を調製した。これにより、7種類の試料(テストNo.7−1〜7)を得た。
(評価方法)
得られた試料(破砕物)について、試験1と同一の方法で、カスタード感、遠沈量、および再加温ゲル化性を評価した。
その結果を下記表12に示す。
【0046】
【表11】
Figure 0004073667
【0047】
【表12】
Figure 0004073667
【0048】
(試験結果)
表12の結果より、次のことが分かった。
・カスタード感があるのは、テストNo.7−3〜7であった。
・遠沈量は、テストNo.7−1〜7のすべてにおいて0.5ml以下であった。
・再加温ゲル化性は、テストNo.7−1〜7のすべてにおいて無かった。
すなわち、カスタード感があり、遠沈量が0.5ml以下で、かつ再加温ゲル化性が無いのは、乳製品として脱脂粉乳、牛乳、またはクリームチーズを用いた場合、脱脂粉乳とバターを組み合わせた場合、および脱脂粉乳とクリームとを組み合わせた場合であった。このことから、第1の原料液における乳たんぱく質の含有量が少ないとカスタード感が得られないと予測される。
【0049】
〔試験8〕
(目的)
この試験は、試験1において、第1の原料液における乳たんぱく質の適切な含有量を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
表13の配合割合で、試験1と同一の方法で破砕物を調製した。これにより、7種類の試料(テストNo.8−1〜7)を得た。
(評価方法)
得られた試料(破砕物)について、試験1と同一の方法で、カスタード感、遠沈量、および再加温ゲル化性を評価した。
その結果を下記表14に示す。
なお、本試験で使用した脱脂粉乳における乳たんぱく質の含有率は34質量%であり、これに基づいて算出した、第1の原料液における乳たんぱく質の含有量を表14に合わせて示す。
【0050】
【表13】
Figure 0004073667
【0051】
【表14】
Figure 0004073667
【0052】
(試験結果)
表14の結果より、次のことが分かった。
・カスタード感があるのは、テストNo.8−2〜7であった。
・遠沈量が0.5ml以下であるのは、No.8−1〜6であった。
・再加温ゲル化性は、テストNo.8−1〜7のすべてにおいて無かった。
すなわち、カスタード感があり、遠沈量が0.5ml以下で、かつ再加温ゲル化性が無いのは、第1の原料液における乳たんぱく質の含有量が1.0〜4.0質量%の範囲であることが分かった。また、乳たんぱく質の含有量が0.7質量%ではカスタード感が不足し、4.1質量%では食感が粉っぽくなることが認められた。
【0053】
〔試験9〕
(目的)
この試験は、試験1において、破砕物を構成する塩の適切な種類を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
表15の配合割合で、試験1と同一の方法で破砕物を調製した。これにより、10種類の試料(テストNo.9−1〜10)を得た。
なお本試験では、塩としてクエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムの10種類をそれぞれ用いた。
(評価方法)
得られた試料(破砕物)について、試験1と同一の方法で、カスタード感、遠沈量、および再加温ゲル化性を評価した。
その結果を下記表16に示す。
【0054】
【表15】
Figure 0004073667
【0055】
【表16】
Figure 0004073667
【0056】
(試験結果)
表16の結果より、次のことが分かった。
・カスタード感があるのは、No.9−2〜10であった。
・遠沈量が0.5ml以下であるのは、No.9−3〜7であった。
・再加温ゲル化性は、No.9−1〜10のすべてにおいて無かった。
すなわち、カスタード感があり、遠沈量が0.5ml以下で、かつ再加温ゲル化性が無いのは、ナトリウム塩を用いた場合で、その酸根がクエン酸、リン酸、ポリリン酸、メタリン酸、およびピロリン酸といったクエン酸またはリン酸に分類されるものであった。
【0057】
〔試験10〕
(目的)
この試験は、試験1において、破砕物を調製する際の塩の適切な配合量を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
表17の配合割合で、試験1と同一の方法で破砕物を調製した。これにより、12種類の試料(テストNo.10−1〜12)を得た。
なお本試験では、塩としてクエン酸ナトリウムおよび/またはリン酸三ナトリウムを用いた。
(評価方法)
得られた試料(破砕物)について、試験1と同一の方法で、カスタード感、遠沈量、および再加温ゲル化性を評価した。
その結果を下記表18に示す。
【0058】
【表17】
Figure 0004073667
【0059】
【表18】
Figure 0004073667
【0060】
(試験結果)
表18の結果より、次のことが分かった。
・カスタード感はNo.10−1〜12のすべてにおいて得られた。
・遠沈量が0.5ml以下であるのは、No.10−2〜4、10−6〜8、および10−10〜12であった。
・再加温ゲル化性は、No.10−1〜12のすべてにおいて無かった。
すなわち、カスタード感があり、遠沈量が0.5ml以下で、かつ再加温ゲル化性が無いのは、第1の原料液において、クエン酸ナトリウムおよび/またはリン酸三ナトリウムの含有量の合計が0.1質量%以上である場合であった。またクエン酸ナトリウムおよび/またはリン酸三ナトリウムの含有量が0.05質量%または0.04質量%では食感が粉っぽくなることが認められた。
【0061】
〔試験11〕
(目的)
この試験は、試験1において、破砕物を構成する乳化剤の適切な種類を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
表19の配合割合で、試験1と同一の方法で破砕物を調製した。これにより、7種類の試料(テストNo.11−1〜7)を得た。
なお本試験では、乳化剤としてレシチン、蔗糖脂肪酸エステルである蔗糖ステアリン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルであるソルビタンステアリン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルであるプロピレングリコールステアリン酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステルであるモノグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるポリグリセリンステアリン酸エステル、およびモノグリセリン有機酸エステルであるモノグリセリンコハク酸ステアリン酸エステルの7種類をそれぞれ用いた。
(評価方法)
得られた試料(破砕物)について、試験1と同一の方法で、カスタード感、遠沈量、および再加温ゲル化性を評価した。
その結果を下記表20に示す。
【0062】
【表19】
Figure 0004073667
【0063】
【表20】
Figure 0004073667
【0064】
(試験結果)
表20の結果より、次のことが分かった。
・カスタード感は、No.11−1〜7のすべてにおいて得られた。
・遠沈量が0.5ml以下であるのは、No.11−5〜7であった。
・再加温ゲル化性は、No.11−1〜7のすべてにおいて無かった。
すなわち、カスタード感があり、遠沈量が0.5ml以下で、かつ再加温ゲル化性が無いのは、モノグリセリン脂肪酸エステルであるモノグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるポリグリセリンステアリン酸エステル、またはモノグリセリン有機酸エステルであるモノグリセリンコハク酸ステアリン酸エステルを用いた場合で、これらは一般的にグリセリン脂肪酸エステルと総称される。
【0065】
〔試験12〕
(目的)
この試験は、試験1において、破砕物を調製する際の乳化剤であるグリセリン脂肪酸エステルの適切な配合量を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
表21の配合割合で、試験1と同一の方法で破砕物を調製した。これにより、9種類の試料(テストNo.12−1〜9)を得た。
なお本試験では、乳化剤であるグリセリン脂肪酸エステルとしてモノグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、またはモノグリセリンコハク酸ステアリン酸エステルを用いた。
(評価方法)
得られた試料(破砕物)について、試験1と同一の方法で、カスタード感、遠沈量、および再加温ゲル化性を評価した。
その結果を下記表22に示す。
【0066】
【表21】
Figure 0004073667
【0067】
【表22】
Figure 0004073667
【0068】
(試験結果)
表22の結果より、次のことが分かった。
・カスタード感はNo.12−1〜9のすべてにおいて得られた。
・遠沈量が0.5ml以下であるのは、No.12−4〜9であった。
・再加温ゲル化性は、No.12−1〜9のすべてにおいて無かった。
すなわち、カスタード感があり、遠沈量が0.5ml以下で、かつ再加温ゲル化性が無いのは、第1の原料液において、モノグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、またはモノグリセリンコハク酸ステアリン酸エステル、すなわちグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.1質量%以上である場合であった。また、グリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.05質量%では食感が粉っぽくなることが認められた。
【0069】
〔試験13〕
(目的)
この試験は、試験1において、破砕物を構成する増粘多糖類の適切な種類を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
表23の配合割合で、試験1と同一の方法で破砕物を調製した。これにより、9種類の試料(テストNo.13−1〜9)を得た。
なお本試験では、増粘多糖類としてローカストビーンガム、カラギナン、グアーガム、カルボキシメチルセルロース(表ではCMCと略記する)、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、大豆多糖類、およびキサンタンガムの9種類をそれぞれ用いた。
(評価方法)
得られた試料(破砕物)について、試験1と同一の方法で、カスタード感、遠沈量、および再加温ゲル化性を評価した。
その結果を下記表24に示す。
【0070】
【表23】
Figure 0004073667
【0071】
【表24】
Figure 0004073667
【0072】
(試験結果)
表24の結果より、次のことが分かった。
・カスタード感は、No.13−1〜9のすべてにおいて得られた。
・遠沈量が0.5ml以下であるのは、No.13−7〜9であった。
・再加温ゲル化性は、No.13−1〜9のすべてにおいて無かった。
すなわち、カスタード感があり、遠沈量が0.5ml以下で、かつ再加温ゲル化性が無いのは、増粘多糖類としてペクチン、大豆多糖類、またはキサンタンガムを用いた場合であった。
【0073】
〔試験14〕
(目的)
この試験は、試験1において、破砕物を調製する際の増粘多糖類の適切な配合量を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
表25の配合割合で、試験1と同一の方法で破砕物を調製した。これにより、9種類の試料(テストNo.14−1〜9)を得た。
なお本試験では、増粘多糖類としてペクチン、大豆多糖類、またはキサンタンガムを用いた。
(評価方法)
得られた試料(破砕物)について、試験1と同一の方法で、カスタード感、遠沈量、および再加温ゲル化性を評価した。
その結果を下記表26に示す。
【0074】
【表25】
Figure 0004073667
【0075】
【表26】
Figure 0004073667
【0076】
(試験結果)
表26の結果より、次のことが分かった。
・カスタード感はNo.14−1〜9のすべてにおいて得られた。
・遠沈量が0.5ml以下であるのは、No.14−4〜9であった。
・再加温ゲル化性は、No.14−1〜9のすべてにおいて無かった。
すなわち、カスタード感があり、遠沈量が0.5ml以下で、かつ再加温ゲル化性が無いのは、第1の原料液において、増粘多糖類の含有量が0.1質量%以上である場合であった。また、増粘多糖類の含有量が0.05質量%では食感が粉っぽくなることが認められた。
【0077】
〔実施例〕
まず、表27の配合例No.1〜10に示した各配合割合の原料を、それぞれスーパーミキサー(ヤスダファインテ社製)で混合して溶解させて第1の原料液を得た。この第1の原料液を18リットル缶に入れて密閉し、蒸煮器に入れ常圧下で蒸気加熱した。中心温度が80℃に達してから、40分間保持してゲル化させた後、18リットル缶より中身を取出し、シェアーポンプ(ヤスダファインテ社製)でゲルを破砕して破砕物を得た。得られた破砕物を多管式熱交換機(新光産業社製)で冷却して10℃にした。
このようにして配合例No.1〜10により、それぞれ得られた10種類の破砕物(破砕物No.1〜10)について、前記試験1と同一の方法で評価した結果、いずれも、粉感が無く、再加温ゲル化性が無く、良好なカスタード風味を有していた。
【0078】
【表27】
Figure 0004073667
【0079】
次ぎに、得られた10種類の破砕物(No.1〜10)をそれぞれ用いてゲル状食品を製造した。
すなわち、表28の配合例11〜20に示した各配合割合の原料を、それぞれをスーパーミキサーで混合して溶解させて第2の原料液を得た。ハイドロコロイドとしては、カラギナン、寒天、ペクチン、ファセルラン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、およびキサンタンガムとローカストビンガムの混合物(表ではキサンタンガム、ローカスト混合物と略記)をそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いた。
次いで、得られた第2の原料液を、プレート式殺菌機(森永エンジニアリング社製)を用いて、120℃、2秒間の条件で加熱殺菌を行なった後、85℃に冷却し、均質機(丸機械工業社製)を用い15MPaの圧力で均質化した。そして、60℃に冷却してから、充填機(トーワテクノ社製)でカップに充填し、その上から加熱殺菌したカスタード用プリンソース(池田糖化社製)を充填して二層に分離させ、蓋を熱圧シールした。これを、冷蔵庫で10℃に冷却してゲル化させることによって、10種類のプリン(カスタード風味を有するゲル状食品)を得た。
【0080】
【表28】
Figure 0004073667
【0081】
得られたプリンは、いずれも外観が良く、良好なカスタード風味を有し、粉感の無い良好な食感であった。また、これらのプリンは、10℃で2週間保存した後も、風味に異常は無く、標準寒天培地を用いた細菌培養試験(培養温度37℃、培養期間2日間)でも細菌数が100個/g以下であり、保存性にも優れていることが認められた。
また、途中で得られる破砕物を冷凍庫で1ヶ月間冷凍保管した後、解凍したものを用いて、表28の配合例11〜20に示した各配合割合で、同一の方法でプリンを製造しても、外観、風味、食感、および細菌的保存性において、冷凍・解凍しなかった破砕物を用いた場合と同一結果が得られた。このことから、本発明の製造方法において、途中で生産される破砕物は冷凍保存可能であることが分かった。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、卵黄と、砂糖と、乳たんぱく質と、グリセリン脂肪酸エステルと、クエン酸塩および/またはリン酸塩と、増粘多糖類を含む第1の原料液を、加熱してゲル化させた後、破砕して破砕物を得、該破砕物に、冷却によりゲル化するハイドロコロイドを添加して第2の原料液を得、この第2の原料液を冷却してゲル化させることによって、滑らかな食感を有するとともに、良好なカスタード風味を有するゲル状食品が得られる。

Claims (8)

  1. 卵黄と、砂糖と、乳たんぱく質と、グリセリン脂肪酸エステルと、クエン酸塩および/またはリン酸塩と、増粘多糖類を含む第1の原料液を、加熱してゲル化させた後、破砕して破砕物を得、該破砕物に、冷却によりゲル化するハイドロコロイドを添加して第2の原料液を得、この第2の原料液を冷却してゲル化させることを特徴とするゲル状食品の製造方法。
  2. 前記第2の原料液における、前記破砕物に含まれる卵黄の含有量が5〜20質量%であることを特徴とする請求項1記載のゲル状食品の製造方法。
  3. 前記第1の原料液における卵黄の含有量が5〜20質量%、砂糖の含有量が10〜30質量%、乳たんぱく質の含有量が1〜4質量%、グリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.1〜0.3質量%、クエン酸塩および/またはリン酸塩の含有量が0.1〜0.3質量%、増粘多糖類の含有量が0.1〜0.3質量%であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のゲル状食品の製造方法。
  4. 前記第1の原料液に含まれる前記グリセリン脂肪酸エステルが、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびモノグリセリン有機酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゲル状食品の製造方法。
  5. 前記第1の原料液に含まれる前記クエン酸塩および/またはリン酸塩が、クエン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、およびピロリン酸ナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゲル状食品の製造方法。
  6. 前記第1の原料液に含まれる前記増粘多糖類が、ペクチン、大豆多糖類、およびキサンタンガムよりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゲル状食品の製造方法。
  7. 前記第1の原料液を加熱してゲル化させる際に、静置下で、80〜100℃の温度に30〜60分間保持することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のゲル状食品の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかの製造方法により得られるゲル状食品。
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