JP4073589B2 - 高周波大電流用可撓性導体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波大電流を供給するための渡り配線として使用するのに好適な可撓性導体に関し、特に、冷却機能を備えた可撓性導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
高周波誘導加熱を行う際には、誘導子に対して数百〜数千Aの高周波大電流を供給する必要があり、従来は高周波電流を供給するトランスと誘導子との間の渡り配線としてブスバーが使用されていた。このブスバーは、断面が細長い矩形状の銅板を2枚、絶縁材を挟んで配置し、その2枚の銅板で電流の往復路を形成したものであり、銅板の断面の縦横比を大きくとることで表面積を大きくして表皮電流の流路断面積と放熱性を確保し、且つ往復路を近接配置したことで、発生する電界を互いに打ち消してリアクタンスを小さくし、これによって電圧降下を抑え、強制冷却することなく放冷で使用できるという利点を有していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ブスバーには可撓性がほとんどなく、従って、トランスを定位置に配置し、誘導子のみを移動させるという使用形態をとることができなかった。また、2枚の銅板を近接配置したことによる近接効果により、高周波電流は銅板の断面を均等には流れず、他の銅板に近接した薄層部分に集中して流れており、このため、銅板の断面全体が有効には利用されておらず、断面積が大きい割には通電損失が小さくないという問題もあった。一方、可撓性に優れた導体としては、絶縁被覆を施した素線を多数綯って構成したリッツ線が知られており、これを高周波電流の渡り配線に利用することが考えられる。リッツ線では各素線が他の素線から絶縁されているため、多数の素線をほぼ均一に電流が流れ、このため断面積相応に通電損失を小さく抑えて高周波の大電流を流すことができる。しかしながら、リッツ線を用いて高周波大電流を流した場合、リッツ線の断面が円形であるため表面積(放熱面積)が小さく、このためリッツ線が発熱して高温になってしまうという問題が生じる。
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、高周波大電流を流すのに適し、且つ大電流による大きな発熱を満足に抑えうる冷却機能を備えた、可撓性導体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべくなされた本発明の可撓性導体は、高周波大電流を流すことの可能なリッツ線の複数条を編み合わせてリッツ線編組を形成し、そのリッツ線編組を可撓性の且つ絶縁性のホース内に収納し、そのホースに通水してリッツ線編組を水冷する構成としたものである。リッツ線編組は、高周波大電流を流しても大きな損失が生じないように構成できると共に優れた可撓性を有しており、更に表面積(放熱面積)が大きいので、これをホース内に収容して水冷することで効率良く冷却することができ、従って、本発明の可撓性導体は、高周波大電流を流すのに適していると共に優れた可撓性、冷却機能を発揮することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の一つの実施形態による可撓性導体は、絶縁被覆を施した素線を綯って形成したリッツ線の複数条を編み合わせて形成したリッツ線編組の両端に、一括して導通がとれるように金属製の端じまい端子を取り付けてなる電路アッセンブリを、可撓性の且つ絶縁性のホースの両端に金属製のホース継手を取り付けて成るホースアッセンブリの中空部内に納め、両端の端じまい端子を両端のホース継手にろう接して該ホース継手を通電端とする可撓性の電路を形成すると共に、前記ホースアッセンブリの内部に残された隙間を以て前記ホース継手を通水端とする可撓性の冷却水路を構成し、更に、前記端じまい端子として、その先端部を前記ホース継手内に納まる寸法に形成し、根元部の外径を先端部より小さく形成した筒状体を用い、前記根元部の外周面に、複数のリッツ線から解きほぐした素線群を周方向に振り分けてろう接して取り付け、前記先端部においてホース継手とのろう接を行ったものである。この構成により、両端のホース継手を高周波電流の供給源及び誘導子にそれぞれ接続した渡り配線として使用すると、複数条のリッツ線によって高周波大電流を誘導子に供給でき、その際のリッツ線における発熱は、一方のホース継手から供給され、ホース内を流れて他方のホース継手から排出される冷却水によって効率よく除去することができる。また、この可撓性導体は、可撓性の優れたリッツ線編組を可撓性のホース内に収納した構成であるので良好な可撓性を備えており、このため、高周波電流の供給源を動かすことなく、誘導子を必要に応じて移動させることができる。また、前記端じまい端子においては、リッツ線編組を構成する素線群の各素線が筒状体の外周面に、概ね至近距離に位置した状態でろう接されるところとなって、端じまい端子から各素線への導通を実質的に電気抵抗の無視できるレベルに確保できる。
【0007】
ここで、前記リッツ線編組に用いるリッツ線としては、直径が10mm以下のものを用いることが好ましく、この構成により、前記リッツ線編組の放熱面積を高位に確保できる。
【0009】
更に、前記したホースとして、絶縁材繊維を斜め格子状に編んで筒状化した編組により強化したゴムホース又は樹脂ホースを用いることが好ましい。この構成のホースでは、このホースをホース継手に差し込んだ状態で引っ張ると、筒状化した編組の径が縮小し、自動的にホース継手を強く締め付けることとなり、不都合な誘導発熱の防止策を要する締め付け金具を用いなくても、ホース継手からの抜け落ちを防止できる。
【0010】
【実施例】
以下、図面に示す本発明の好適な実施例を説明する。図1は本発明の一実施例による高周波大電流用可撓性導体の部分断面概略平面図、図2はその可撓性導体を分解して示す概略平面図、図3はその可撓性導体の端部の概略断面図、図4はその可撓性導体の中間部分の概略断面図である。全体を参照符号1で示す可撓性導体は、電路アッセンブリ2とそれを収容する中空のホースアッセンブリ3を有している。
【0011】
電路アッセンブリ2は、複数条のリッツ線5を編み合わせて形成した放熱面積の大きいリッツ線編組4の両端に、一括して導通がとれるように金属製の端じまい端子6を取り付けてなるものである。ここで使用するリッツ線5は、エナメル等の絶縁被覆を施した素線を多数本を綯って形成したものであり、多数の素線が互いに絶縁されていることから各素線を高周波電流が均等に流れ、高周波通電損失を小さくできる特性を備えており、また、多数の細い素線を縄状に綯った構成のため、優れた可撓性も備えている。このリッツ線5は、多数の素線を単に撚り合わせたものでもよいし、複数の素線を撚り合わせた撚り線の複数条を撚り合わせて縄状に構成したものでもよいし、更にはこのようにして形成した縄状の撚り線の複数条を更に撚り合わせて縄状に構成したもの等でもよい。リッツ線5を構成する素線の本数が多い場合には、複数の素線を撚り合わせた撚り線の複数条を更に撚り合わせる構成が、ばらけにくく好ましい。使用する素線の径としては、通常、可撓性を損なうことがないように、0.03〜1.0mm程度に設定される。リッツ線を構成する素線数は10〜3000本の広範囲に選定され、素線数が40本を越えるような場合には、複数組に分けてそれぞれを撚り線とし、それを撚り合わせる構成とするとか、複数条の撚り線を撚り合わせて形成した撚り線を更に複数条撚り合わせる構成等とすることが好ましい。
【0012】
リッツ線編組4は、複数条のリッツ線5を編み合わせて形成したものであり、その形態としては、紐状(組紐)、帯状、筒状等任意である。複数条のリッツ線5からなる編組4は、同数のリッツ線5を密に撚り合わせて形成した大径のリッツ線に比べて優れた柔軟性を備えると共に大きい表面積(放熱面積)を有しており、このため、この編組4で構成した可撓性導体1は優れた可撓性を備え且つその編組4を水冷することで良好に冷却可能である。ここで、リッツ線編組4を構成する各リッツ線5の直径及びリッツ線5の条数は、リッツ線編組4に通すべき高周波電流に応じて通電断面積が確保されるように定めるものであるが、放熱面積が高位に確保できる10mm以下の直径のリッツ線を用いて、編組の可撓性が確保しやすい3〜10本の条数で構成できるようなリッツ線直径−条数の組み合わせとすることが望ましい。
【0013】
リッツ線編組4の端部に配される金属製の端じまい端子6は、リッツ線編組4に導通が取れるように接続され、且つ後述するホース継手12に導通を取って固定されると共に冷却水を通過させ得る構成のものであれば任意であり、ここでは、中空筒状体が使用されている。この端じまい端子6は、その先端部6a(リッツ線編組4を連結する側とは反対側の端部)を、ホース継手12内に容易に納まる寸法の大径部を有する形状とし、根元部6bを外径がその大径部より小さい小径部としたものであり、この根元部6bの先端領域には横孔6cが設けられていて、根元部6bの外側にも冷却水流が行き亘るようになっている。又、根元部6bの外周面に、複数のリッツ線5から解きほぐし且つ絶縁材を除去した素線群5aを周方向に振り分け、符号Aで示す領域に亘ってろう接し、ろう接部7を形成することにより取り付けている。この構成により素線群5aの各素線が根元部6bの外周面に、概ね至近距離に位置した状態でろう接されるところとなって、端じまい端子6から各素線への導通を実質的に電気抵抗の無視できるレベルに確保できる。なお、必要に応じ、端じまい端子6の根元部6bの外周面に振り分けた素線群5aを、その外側から適当な締め付けバンドによって根元部6bに締め付けて固定した状態で端じまい端子6にろう接してろう接部を堅牢にしてもよい。
【0014】
電路アッセンブリ2を収容する中空のホースアッセンブリ3は、ゴムホース又は樹脂ホース等の可撓性の且つ絶縁性のホース11の両端に金属製のホース継手12を取り付けて成るものである。ここで使用するホース継手12は、端じまい端子6と導通を取ることができるものであれば任意であり、公知のホース継手を使用できる。本実施例では、ホース継手12として、ホース11に挿入、固定される継手本体12aと、その継手本体12aの先端に保持され、他の継手に接続するためのユニオンナット12bを備えたものを用いている。前記した端じまい端子6はこの継手本体12a内に挿入され、その先端部6aを継手本体12aの内面にろう接し、ろう接部13を形成することで、固定されている。かくして、ホース継手12は端じまい端子6を介してリッツ線編組4に電気的に導通されることとなり、ホース継手12、端じまい端子6及びリッツ線編組4は、ホース継手12を通電端とする可撓性の電路を形成する。また、一方のホース継手12から冷却水を供給すると、その冷却水は端じまい端子6を通り抜けてホース11内に入り、ホース11の内部に残された隙間を流れて反対端のホース継手12から流出することができ、ホース11内を通過する際にリッツ線編組4の広い外表面(放熱面)に接触して効率良く冷却できる。従って、ホース継手12及びホース11は、ホース継手12を通水端とする可撓性の冷却水路を構成する。
【0015】
ホース11としては、可撓性と絶縁性を有するゴムホース、樹脂ホース等が使用可能であるが、なかでも、絶縁材繊維を斜め格子状に編んで筒状化した編組14により強化したホース11を用いることが好ましい。この構成のホース11を用いると、強度が大きいのみならず、そのホース11がホース継手12から抜けにくいという利点が得られる。すなわち、この強化ホース11をホース継手12に差し込んだ状態で引っ張ると、筒状化した編組の径が縮小し、自動的にホース継手を強く締め付けることとなり、締め付け金具を用いなくても、ホース継手からの抜け落ちを防止できて締め付け金具の誘導発熱問題が苦もなく回避される。
【0016】
次に、この構成の可撓性導体1の使用例を説明する。図5は可撓性導体1の使用例を示す概略平面図であり、15は被加熱材である棒材、16はその棒材15を誘導加熱するための環状の誘導子であり、内部に冷却水を通すことができるよう中空構造に作られている。16a、16bは誘導子16の接続端であり、この接続端16a、16bにそれぞれ、可撓性導体1の一端のホース継手12が接続されている。18は誘導子16に高周波電流を供給するためのトランス、18a、18bはトランス18の接続端であり、高周波電流を供給する構成となっている。この接続端18a、18bは、中空となっていてホース継手12に接続可能な構成であり、且つその先端部分に枝管18c、18dが設けられ、冷却水を供給、排出するようになっている。接続端18a、18bには可撓性導体1の他端のホース継手12が接続され、且つ枝管18c、18dには冷却水の供給管、排出管がそれぞれ接続されている。
【0017】
この構成により、トランス18が可撓性導体1、1を介して誘導子16に高周波大電流を供給し、誘導子16が棒材15を加熱する。この加熱動作の間、枝管18cから供給された冷却水が一方の可撓性導体1のホース11内を流れてリッツ線編組4を冷却し、次いで誘導子16を流れてその誘導子16を冷却し、更に他方の可撓性導体1のホース11内を流れてリッツ線編組4を冷却し、その後、枝管18dから排出される。かくして、可撓性導体1による高周波大電流供給にもかかわらず、可撓性導体1内のリッツ線編組4が良好に冷却され、過熱するということがない。また、誘導子16を移動させる必要がある時には、可撓性導体1、1が容易に変形できるので、トランス18を移動させることなく誘導子16のみを移動させることができる。かくして、誘導子16をトランス18と共に移動させる場合に比べて、簡単な機構で且つ容易に誘導子16のみを移動させることができる。
【0018】
【発明の効果】
以上のように、本発明の可撓性導体は、高周波大電流を流すのに適したリッツ線の複数条を編み合わせてリッツ線編組を形成し、そのリッツ線編組を可撓性のホース内に収容し、そのホースに通水してリッツ線編組を水冷する構成としたことにより、高周波大電流を流すことができると共に優れた可撓性、冷却機能を発揮することができ、誘導子等の高周波大電流を供給する対象を移動させる必要のある用途に好適に使用できるという効果を有している。また、リッツ線編組の両端に取り付ける端じまい端子として、その先端部をホース両端に取り付けたホース継手内に納まる寸法に形成し、根元部の外径を先端部より小さく形成した筒状体を用い、前記根元部の外周面に、複数のリッツ線から解きほぐした素線群を周方向に振り分けてろう接して取り付け、前記先端部においてホース継手とのろう接を行う構成としたことにより、リッツ線編組を構成する素線群の各素線が筒状体の外周面に、概ね至近距離に位置した状態でろう接されるところとなって、端じまい端子から各素線への導通を実質的に電気抵抗の無視できるレベルに確保できるという効果も有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による高周波大電流用可撓性導体の部分断面概略平面図
【図2】図1に示す可撓性導体を分解して示す概略平面又は断面図
【図3】図1に示す可撓性導体の端部の概略断面図
【図4】図1に示す可撓性導体の中間部分の概略断面図
【図5】図1に示す可撓性導体の使用例を示す概略平面図
【符号の説明】
1 可撓性導体
2 電路アッセンブリ
3 ホースアッセンブリ
4 リッツ線編組
5 リッツ線
5a 素線群
6 端じまい端子
6a 先端部
6b 根元部
7 ろう接部
11 ホース
12 ホース継手
12a 継手本体
12b ユニオンナット
13 ろう接部
15 棒材(被加熱材)
16 誘導子
18 トランス
Claims (3)
- 絶縁被覆を施した素線を綯って形成したリッツ線の複数条を編み合わせて形成したリッツ線編組の両端に、一括して導通がとれるように金属製の端じまい端子を取り付けてなる電路アッセンブリを、可撓性の且つ絶縁性のホースの両端に金属製のホース継手を取り付けて成るホースアッセンブリの中空部内に納め、両端の端じまい端子を両端のホース継手にろう接して該ホース継手を通電端とする可撓性の電路を形成すると共に、前記ホースアッセンブリの内部に残された隙間を以て前記ホース継手を通水端とする可撓性の冷却水路を構成し、更に、前記端じまい端子として、その先端部を前記ホース継手内に納まる寸法に形成し、根元部の外径を先端部より小さく形成した筒状体を用い、前記根元部の外周面に、複数のリッツ線から解きほぐした素線群を周方向に振り分けてろう接して取り付け、前記先端部においてホース継手とのろう接を行っていることを特徴とする高周波大電流用可撓性導体。
- 前記リッツ線として直径が10mm以下のものを用いた、請求項1記載の高周波大電流用可撓性導体。
- 前記ホースとして、絶縁材繊維を斜め格子状に編んで筒状化した編組により強化したゴムホース又は樹脂ホースを用いて、ホース継手からの抜け落ちが締め付け金具によらずに防止されるようにした、請求項1又は2に記載の高周波大電流用可撓性導体。
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