JP4073270B2 - 着色粉粒体 - Google Patents
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Description
本発明は、優れた耐紫外線性を有する着色粉粒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、コーティング分野においては、様々な着色材料が使用されている。このような着色材料は、その材料の化学的特性、物理的特性等に応じて、それぞれ特有の発色性能を有している。コーティング材においては、これら着色材料を適宜選択し、組合わせることによって種々の色彩を表出することが可能となる。
【0003】
着色材料として、サブミクロンオーダー乃至ミリオーダーの粒子径を有する着色粉粒体を使用すれば、一度の塗装で多彩な模様を表出することが可能なコーティング材を得ることができる。
例えば、特公平2−40702号公報では、着色粉粒体として粒径0.05〜8mmの着色粒子を含み、天然石模様が形成可能な被覆組成物が開示されている。このような公報に開示された被覆組成物では、着色粉粒体の色の種類及びその配合比率を調整することによって、一定の多彩模様を表出することが可能となる。
一方、特開昭57−126767号公報では、着色粉粒体の一種として、熱により色相が変化する熱可逆性発消色材料を使用した多彩模様塗料が開示されている。この熱可逆性発消色材料は、一定の温度範囲でサーモクロミズムを示す材料であり、特開昭57−126767号に記載の塗料を被塗面に塗付すれば、被塗面の温度やその分布を知ることができる。また、温度によって意匠性が変化するため、例えば、季節の移り変わりによって異なる意匠性を表出することも可能となる。
【0004】
上述のような各種の着色粉粒体を含むコーティング材によって被膜を形成すれば、その被膜形成初期段階においては、所望の色彩を表出することができる。しかし、太陽光が直射される屋外用等のコーティング材として使用した場合は、紫外線等による影響を大きく受けるため、それぞれの着色材料本来の色相が経時的に変化してしまうおそれがある。退色の程度は、着色材料の種類やその混合比率等にもよるが、どのような着色材料であっても、退色を完全に防止することは困難である。特に、着色材料として退色しやすいものを使用する場合は、その適用箇所が紫外線等の影響を受けないような部分に限定されてしまうこととなる。
【0005】
特開平4−46976号公報では、着色粉粒体の耐候性等を向上させる技術として、基体粒子の表面を、一液硬化型樹脂及び顔料を含む着色剤で被覆する方法が記載されている。しかしながら、該公報の方法では、退色しやすい顔料を使用した場合に、その経時的な変色を十分に抑制することができないという問題点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、紫外線によって劣化し難く、外部コーティング用として適用可能な諸性能を有する着色粉粒体を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するため、本発明者は鋭意検討の結果、基体粒子の表面を、平均一次粒子径が30nm未満である金属酸化物を含む着色層で被覆し、さらに、平均一次粒子径が30〜200nmである金属酸化物を含む紫外線遮蔽層で被覆することが有効であることを見出し、本発明の完成に到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.基体粒子の表面を、
(a)バインダー、(b)着色材料、(c)平均一次粒子径が30nm未満である金属酸化物、を含有する着色剤で被覆し、さらに、
(a)バインダー、(d)平均一次粒子径が30〜200nmである金属酸化物、を含有する紫外線遮蔽剤で被覆してなることを特徴とする着色粉粒体。
2.前記(b)着色材料が有機質着色材料であることを特徴とする1.記載の着色粉粒体。
3.前記(b)着色材料が有機質熱可逆性発消色材料であることを特徴とする1.記載の着色粉粒体。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態とともに詳細に説明する。
【0010】
本発明の着色粉粒体は、基体粒子の表面を着色剤で被覆し、さらに紫外線遮蔽剤で被覆してなるものである。
基体粒子は、コーティング材用の骨材として使用可能なものであれば、特に限定されない。具体的に、基体粒子としては、例えば、珪砂、砕石、寒水石、ガラスビーズ、樹脂ビーズ等が使用可能である。これら基体粒子の平均粒子径は、通常0.1〜10mmである。
【0011】
このような基体粒子の表面を被覆する着色剤は、(a)バインダー、(b)着色材料、(c)平均一次粒子径が30nm未満である金属酸化物、を含有するものである。
【0012】
(a)バインダー(以下「(a)成分」という)は、(b)着色材料(以下「(b)成分」という)の発色性能を著しく阻害しないものであれば、特に限定されず各種のものを使用することができる。このうち、(a)成分としては透明性を有する樹脂バインダーが好適である。樹脂バインダーとしては、例えば、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ふっ素樹脂等、あるいはこれらを複合したもの等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。(a)成分の形態は、特に限定されず、例えば、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、水可溶型樹脂、水分散型樹脂、無溶剤型樹脂等のいずれであってもよい。
【0013】
着色剤における(b)成分としては、何らかの色彩を付与できるものであれば、特に限定されず、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、モノアゾレッド、ファーストエロー、パーマネントイエロー、ジスアゾイエロー等のアゾ系顔料、ペリレンレッド等のペリレン系顔料、キナクリドンレッド等のキナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、メチン・アゾメチン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ジオキサジン系顔料等の有機質顔料;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等の金属酸化物(但し平均一次粒子径が200nmを超えるもの)、その他カーボンブラック、モリブデンレッド、コバルトブルー、マンガンバイオレット、紺青、群青等の無機質顔料;アルミニウム、ニッケル、ステンレス等の金属粉顔料;パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等の特殊顔料;塩基性染料、酸性染料、直接染料、建染染料、分散染料、反応染料、けい光染料等の各種染料;電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、有極性有機化合物を含むマイクロカプセル、あるいは液晶等の有機質熱可逆性発消色材料;
等を使用することができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0014】
本発明は、特に(b)成分が耐紫外線性に劣るものである場合に、大きな効果を発揮することができる。このような(b)成分としては、有機質顔料、染料、有機質熱可逆性発消色材料等の有機質着色材料が挙げられる。このうち、特に(b)成分が有機質熱可逆性発消色材料である場合に、本発明は最大の効果を発揮することができる。
【0015】
通常の顔料や染料は、温度が変化してもその発色性は変わらない。これに対し、発消色材料は、加熱によって顕著に変色する性質を有しており、温度が元に戻っても復色しない不可逆性タイプと、温度が元に戻ると復色する可逆性タイプの2種に分類される。
有機質熱可逆性発消色材料は、後者の可逆性タイプに属する発消色材料であり、変色の精度が高く、色種と変色温度を自由に選定することができる等の利点を有するものである。具体的に、有機質熱可逆性発消色材料としては、(p)電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、有極性有機化合物を含むマイクロカプセル(以下「(p)成分」という)、あるいは(q)液晶が好適である。
【0016】
(p)成分は、電子供与性呈色性有機化合物(色彩成分)と、それとの結合により別の色を出させる電子受容性化合物(発色剤)と、ある温度を境にして色彩成分と発色剤との結合を切って、いずれかの成分を溶解させる能力を有する有極性有機化合物(消色剤)の3成分が封じ込まれたものである。すなわち、低温下では、色彩成分と発色剤との結合による第1の色が表出され、高温下では、消色剤の活性によって色彩成分と発色剤との結合が切れ、第2の色が表出されるものである。
【0017】
具体的に、(p)成分に含まれる電子供与性呈色性有機化合物としては、例えば、ジアリールフタリド類、トリアリールメタンフタリド類、ロイコトリアリールメタン類、ロイコキサンテン類、ロイコフェノチアジン類、ロイコフェノキサジン類、ロイコオキサジン類、ロイコインジゴイド類、ロイコオーラミン類、アシルオーラミン類、アリールオーラミン類、ジアリールメタン類、ジアリールフタリド類、ポリアリールカルビノール類、インドリン類、インドリルフタリド類、アザフタリド類、フルオラン類、チオフルオラン類、スピロピラン類、ローダミンBラクタム類、クロメノピラゾール類、メチン類、キナゾリン類、ジアザキサンテン類、ビスラクトン類、フルオレン類等が挙げられる。
電子受容性化合物としては、例えば、1,2,3−トリアゾール類、フェノール類、チオ尿素誘導体、オキシ芳香族カルボン酸等が挙げられる。
有極性有機化合物としては、例えば、アルコール類、アルコール・アクリロニトリル付加物、アゾメチン類、エステル類等が挙げられる。
上述の成分の他、(p)成分には、必要に応じて界面活性剤、親水性保護コロイド物質等が含まれていてもよい。
【0018】
(p)成分のマイクロカプセル形成には、通常、熱可塑性樹脂が使用される。このような熱可塑性樹脂としては、従来公知のものを広く使用することができる。この熱可塑性樹脂膜中には、マトリックス状態で有機フォトクロミック化合物が含まれていてもよい。
【0019】
一方、(q)液晶としては、例えば、コレステリック液晶、テルフェニル液晶、ネマチック液晶等を使用することができる。これらをマイクロカプセルに封じ込めたものを使用することもできる。
【0020】
着色剤における(c)平均一次粒子径が30nm未満である金属酸化物(以下「(c)成分」という)は、上述の(b)成分が紫外線によって劣化するのを抑制する成分である。
このような(c)成分としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄等が挙げられる。また、これら金属酸化物の表面を、シリカ、アルミナ、シリコーン、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等で被覆したものも使用可能である。これらは1種または2種以上で使用することができる。
(c)成分の平均一次粒子径は30nm未満、好ましくは1〜25nm、より好ましくは5〜20nmである。平均一次粒子径がこの値より大きい場合は、(b)成分の退色を十分に抑制することが困難となる。
なお、本発明における平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いた観察によって算出される値である。
【0021】
着色剤における各成分の重量固形分比率は、特に限定されるものではないが、(a)成分100重量部に対し、(b)成分が通常1〜50重量部(好ましくは3〜30重量部)、(c)成分が通常1〜50重量部(好ましくは3〜30重量部)である。
(b)成分の比率が大きい場合は、基体粒子への固着性が低下するおそれがあり、(b)成分の比率が小さい場合は、着色性能が不十分となるおそれがある。
(c)成分の比率が大きい場合は、着色材料の発色性能が阻害されるおそれがあり、(c)成分の比率が小さい場合は、着色材料の劣化を抑制することが困難となる。
【0022】
着色剤は上述の成分を必須とするものであるが、必要に応じて、界面活性剤、触媒、消泡剤、分散剤、架橋剤、増粘剤、保湿剤、難燃剤、香料等の添加剤を含むこともできる。
【0023】
本発明では、基体粒子を着色剤で被覆した後、その表面をさらに紫外線遮蔽剤で被覆する。本発明では、このような積層構造を採用することによって着色材料の経時的な退色を十分に抑制することが可能となる。
【0024】
紫外線遮蔽剤は、(a)バインダー、(d)平均一次粒子径が30〜200nmである金属酸化物(以下「(d)成分」という)、を含有するものである。
(a)バインダーとしては、着色剤における(a)成分として例示したものと同様のものを使用することができる。紫外線遮蔽層におけるバインダーとしても、透明性を有するものが望ましく、樹脂バインダーが好適である。
【0025】
紫外線遮蔽剤における(d)成分としては、着色剤における(c)成分より平均一次粒子径が大きなものを使用する。具体的に、(d)成分の平均一次粒子径は30〜200nm、好ましくは30〜100nm、さらに好ましくは30〜60nmである。このような粒子径を有する金属酸化物を使用することにより、被膜の透明性を確保しつつ、十分な耐紫外線性を得ることができる。
(d)成分の平均一次粒子径がこの値より大きい場合は、紫外線遮蔽剤被膜が白濁し、着色材料の色彩を阻害するおそれがある。平均一次粒子径が小さい場合は、着色材料の劣化を抑制することが困難となる。
(d)成分としては、粒子径が異なる以外は着色剤における(c)成分と同種の金属酸化物を使用することができる。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄等、あるいはこれら金属酸化物の表面を、シリカ、アルミナ、シリコーン、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等で被覆したものが使用可能である。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0026】
紫外線遮蔽剤における各成分の重量固形分比率は、特に限定されるものではないが、(a)成分100重量部に対し、(d)成分が通常1〜50重量部(好ましくは3〜30重量部)である。
(d)成分の比率が大きい場合は、紫外線遮蔽剤被膜が白濁し、着色材料の色彩を阻害するおそれがある。(d)成分の比率が小さい場合は、紫外線遮蔽効果が低下し、着色材料の劣化を抑制することが困難となる。
【0027】
紫外線遮蔽剤は上述の成分を必須とするものであるが、必要に応じて、界面活性剤、触媒、消泡剤、分散剤、架橋剤、増粘剤、保湿剤、難燃剤、香料等の添加剤を含むこともできる。
【0028】
本発明の着色粉粒体は、基体粒子の表面を着色剤で被覆し、さらに紫外線遮蔽剤で被覆することによって製造することができる。このような積層被膜が基体粒子表面に形成可能であれば、製造方法は特に限定されないが、通常は、
(1)基体粒子に着色剤を混合する工程
(2)着色剤を乾燥硬化させる工程
(3)紫外線遮蔽剤を混合する工程
(4)紫外線遮蔽剤を乾燥硬化させる工程
を経て製造する。ここで、(1)工程と(2)工程は順に行ってもよいし、同時に行ってもよい。同様に、(3)工程と(4)工程は順に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0029】
基体粒子に着色剤を混合する方法としては、例えば、基体粒子に、直接着色剤を一括混合する方法や、着色剤をスプレーする方法等が挙げられる。紫外線遮蔽剤を混合する方法としても、同様の方法を採用することができる。
着色剤、紫外線遮蔽剤の混合量は、特に限定されないが、通常、基体粒子100重量部に対し、着色剤が1〜50重量部、紫外線遮蔽剤が1〜50重量部程度である。
【0030】
着色剤や紫外線遮蔽剤を乾燥硬化させる方法としては、熱風乾燥、真空乾燥、直接加熱乾燥、高周波加熱乾燥、遠赤外線加熱乾燥、除湿乾燥等が採用できる。乾燥硬化工程において乾燥容器を使用する場合、乾燥容器としては各種の形状のものが使用可能である。乾燥容器は、排気口、加熱装置、攪拌装置等を備えたものであってもよい。
乾燥硬化時の温度については、基体粒子、着色剤、及び紫外線遮蔽剤の耐熱温度以下の範囲内で適宜設定することができるが、通常は30〜200℃である。
着色剤による被覆厚みは、通常0.1〜10μm程度である。紫外線遮蔽剤による被覆厚みも、同様に0.1〜10μm程度である。
【0031】
本発明の着色粉粒体は、各種バインダー等と混合することにより、コーティング材として使用することができる。このとき使用するバインダーとしては、着色粉粒体が視認可能なものが好ましく、例えば、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ふっ素樹脂等、あるいはこれらを複合したもの等の透明性を有する樹脂バインダーが好適である。
コーティング材においては、上述のバインダー以外にも、例えば、顔料、骨材、繊維類、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、光安定剤、消泡剤等を混合することもできる。
【0032】
本発明の着色粉粒体を含むコーティング材は、耐紫外線性が要求される部位に対し適用することができ、特に建築・土木分野の壁面、床面、屋根、屋上等に対して適用することが望ましい。このような部位を構成する基材としては、例えば、コンクリート、無機成型板、タイル、プラスチック、金属等が挙げられる。これら基材は、既に何らかの被膜が形成されたもの等であってもよい。
コーティング材を塗装する場合には、例えば、刷毛、コテ、スプレー、ローラー、ロールコーター、フローコーター等を使用することができる。また、必要に応じて水、有機溶剤等で希釈して塗装することもできる。
【0033】
本発明では、基体粒子表面を、平均一次粒子径が30nm未満である金属酸化物を含む着色剤で被覆し、さらに平均一次粒子径が30〜200nmである金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤で被覆することにより、耐紫外線性に優れた着色粉粒体を得ることができる。この着色粉粒体では、経時的に紫外線遮蔽能が低下することがなく、長期にわたり初期の色相を維持することができる。その作用機構については明らかではないが、それぞれの被膜に含まれる金属酸化物の紫外線吸収能及び紫外線反射能が最大限に発揮されるためと推察される。
【0034】
【実施例】
以下に実施例及び比較例をあげて本発明をより明らかにする。
【0035】
なお、実施例、比較例における着色剤及び紫外線遮蔽剤は、以下の原料を使用することにより製造した。
・バインダー1:水溶性アクリルシリコン樹脂(固形分30重量%)
・バインダー2:酢酸ビニルエマルション(固形分50重量%)
・着色材料1:有機質熱可逆性発消色材料分散液(固形分50重量%、変色温度14〜23℃、低温域での色相:マゼンダ、高温域での色相:無色透明)
・着色材料2:有機質熱可逆性発消色材料分散液(固形分50重量%、変色温度14〜23℃、低温域での色相:オレンジ、高温域での色相:無色透明)
・金属酸化物1:ルチル型酸化チタン分散液(固形分30重量%、平均一次粒子径8〜10nm)
・金属酸化物2:ウルツ鉱型酸化亜鉛分散液(固形分30重量%、平均一次粒子径6〜10nm)
・金属酸化物3:ルチル型酸化チタン分散液(固形分50重量%、平均一次粒子径30〜50nm)
・金属酸化物4:ルチル型酸化チタン分散液(固形分50重量%、平均一次粒子径300nm)
【0036】
(着色剤の製造)
上述のバインダー1と着色材料1と金属酸化物1とを、その固形分重量比率が100:5:5となるように常法によって混合分散することにより、着色剤1を製造した。
続いて、表1に示す配合を使用した以外は、着色剤1と同様の方法で着色剤2〜5を製造した。
【0037】
【表1】
【0038】
(紫外線遮蔽剤の製造)
上述のバインダー1と金属酸化物3とを、その固形分重量比率が100:3となるように常法によって混合分散することにより、紫外線遮蔽剤Aを製造した。
続いて、表2に示す配合を使用した以外は、紫外線遮蔽剤Aと同様の方法で紫外線遮蔽剤B〜Cを製造した。
【0039】
【表2】
【0040】
(実施例1)
平均粒子径0.2mmの寒水石100重量部をモルタルミキサーに入れて攪拌を開始し、70℃に昇温した後、着色剤1を徐々に滴下した。着色剤1の滴下量は6.4重量部とした。次いで、紫外線遮蔽剤Aを6.4重量部徐々に滴下し、さらに20分攪拌した後、室温まで放冷することにより着色粉粒体1を製造した。
この着色粉粒体1を、バインダー3(アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%))100重量部に対し、280重量部混合して常法によって均一に分散させることによりコーティング材を製造した。
予め白色のアクリル樹脂塗料が塗装されたアルミニウム板(70×150mm)に対し、得られたコーティング材を、乾燥膜厚が1mmとなるようにコテ塗りし、温度50℃、相対湿度50%下で15時間乾燥させたところ、温度15℃ではマゼンダ色、温度25℃では無色透明となり、熱による発消色を示した。
この試験体について、下記の方法にて耐紫外線性試験を行ったところ、紫外線照射前後の色差は温度25℃で0.8、温度15℃で0.5であった。
【0041】
耐紫外線性試験
試験体の初期色相(L* 1、a* 1、b* 1)を25℃及び15℃下で測定した後、試験体をサンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)に取り付け、250時間暴露した。
次いで、暴露後の試験体の色相(L* 2、a* 2、b* 2)を25℃及び15℃下で測定し、それぞれの温度における暴露前後の色差(△E)を下記式に従って算出した。
<式> △E={(L* 2−L* 1)2+(a* 2−a* 1)2+(b* 2−b* 1)2}0.5
【0042】
(実施例2)
着色剤1に代えて着色剤2を使用した以外は、実施例1と同様にして着色粉粒体を製造し、試験体を作製した。得られた試験体は、温度15℃ではマゼンダ色、温度25℃では無色透明となり、熱による発消色を示した。
この試験体について実施例1と同様の耐紫外線性試験を行ったところ、紫外線照射前後の色差は温度25℃で0.9、温度15℃で0.8であった。
【0043】
(実施例3)
着色剤1に代えて着色剤3を使用した以外は、実施例1と同様にして着色粉粒体を製造し、試験体を作製した。得られた試験体は、温度15℃ではマゼンダ色を、温度25℃では無色透明となり、熱による発消色を示した。
この試験体について実施例1と同様の耐紫外線性試験を行ったところ、紫外線照射前後の色差は温度25℃で0.7、温度15℃で0.6であった。
【0044】
(実施例4)
着色剤1に代えて着色剤4を使用した以外は、実施例1と同様にして着色粉粒体を製造し、試験体を作製した。得られた試験体は、温度15℃ではオレンジ色を、温度25℃では無色透明となり、熱による発消色を示した。
この試験体について実施例1と同様の耐紫外線性試験を行ったところ、紫外線照射前後の色差は温度25℃で0.8、温度15℃で0.4であった。
【0045】
(比較例1)
紫外線遮蔽剤Aに代えて紫外線遮蔽剤Cを使用した以外は、実施例1と同様にして着色粉粒体を製造し、試験体を作製した。得られた試験体は、温度15℃ではマゼンダ色を、温度25℃では無色透明となり、熱による発消色を示した。
この試験体について実施例1と同様の耐紫外線性試験を行ったところ、紫外線照射前後の色差は温度25℃で7.2、温度15℃で5.1であった。
【0046】
(比較例2)
着色剤1に代えて着色剤5を使用した以外は、実施例1と同様にして着色粉粒体を製造し、試験体を作製した。得られた試験体は、温度15℃ではマゼンダ色を、温度25℃では無色透明となり、熱による発消色を示した。
この試験体について実施例1と同様の耐紫外線性試験を行ったところ、紫外線照射前後の色差は温度25℃で6.5、温度15℃で5.8であった。
【0047】
(比較例3)
着色剤1に代えて着色剤5を使用し、紫外線遮蔽剤Aに代えて紫外線遮蔽剤Bを使用した以外は、実施例1と同様にして着色粉粒体を製造し、試験体を作製した。得られた試験体は、温度15℃では白濁したマゼンダ色、温度25℃では白色となり、彩度に劣る外観となった。
この試験体について実施例1と同様の耐紫外線性試験を行ったところ、紫外線照射前後の色差は温度25℃で4.0、温度15℃で3.9であった。
【0048】
(比較例4)
着色剤1に代えて着色剤5を使用し、紫外線遮蔽剤Aに代えて紫外線遮蔽剤Cを使用した以外は、実施例1と同様にして着色粉粒体を製造し、試験体を作製した。得られた試験体は、温度15℃ではマゼンダ色を、温度25℃では無色透明となり、熱による発消色を示した。
この試験体について実施例1と同様の耐紫外線性試験を行ったところ、紫外線照射前後の色差は温度25℃で20.1、温度15℃で19.0であった。また、紫外線照射後においては、熱による発消色性が確認されなかった。
【0049】
【表3】
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、紫外線によって劣化し難く、屋外用コーティングとして適用可能な諸性能を有する着色粉粒体を得ることができる。
Claims (3)
- 基体粒子の表面を、
(a)バインダー、(b)着色材料、(c)平均一次粒子径が30nm未満である金属酸化物、を含有する着色剤で被覆し、さらに、
(a)バインダー、(d)平均一次粒子径が30〜200nmである金属酸化物、を含有する紫外線遮蔽剤で被覆してなることを特徴とする着色粉粒体。 - 前記(b)着色材料が有機質着色材料であることを特徴とする請求項1記載の着色粉粒体。
- 前記(b)着色材料が有機質熱可逆性発消色材料であることを特徴とする請求項1記載の着色粉粒体。
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