JP4073145B2 - シートのランバーサポート装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートバックのランバーの前後位置を調整可能とするシートのランバーサポート装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
シートのランバーサポート装置は、一般にはシートバック内のフレームに固定されたベースに、ランバープレートを支持したトーションアームが前後回動可能に支持されており、このトーションアームを操作レバーを操作して回動中心で前後に揺動させることによって、ランバープレートの前後位置を調整する調整機構を備えている。こうした調整機構としては、ラチェットホイールにトーションアームの一端を当接させる複数のカム面を設け、このラチェットホイールとラチェットを用いた間欠回動機構によってラチェットホイールを間欠回動してカム面を変えて、このカム面にトーションアームの一端を当接させてトーションアームを回動中心で前後に揺動させることによって、ランバープレートの前後位置を調整する構成になっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来のランバーサポート装置では、間欠回動機構として、ラチェットホイールとラチェットを用いる構造をとっているため、ラチェットホイールの外周にラチェットとかみ合う歯が形成され、さらにその外周の適所にラチェットが配置されるため、間欠回動機構の外形が径方向に大きくなって、ランバーサポート装置全体が大型になるという問題がある。しかも、ラチェットホイールとラチェットを用いる構造では、構造が複雑で部品点数が多いため、製造原価が高くなるという問題もある。
【0004】
本発明は、こうした従来技術の課題を解決するものであり、シートバックのランバーの前後位置を調整するための間欠回動機構を簡素な構成にでき、装置の小型化と部品点数の削減を図ることができるシートのランバーサポート装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のシートのランバーサポート装置は、シートバック内のフレームに固定されたベースに、ランバープレートを支持したトーションアームが前後回動可能に支持されて、上記ベースに操作軸が回動操作可能に支持され、この操作軸にラッチカムが軸方向に摺動可能かつ回転不自在に支持されると共にランバーカムが回動可能に支持されていて、上記ランバーカムとラッチカムの相対向する端面には、相互に噛み合うと共に操作軸によるラッチカムの双方向回りの間欠回動によって噛合位相を変えてランバーカムを一方向回りに間欠回動可能な放射状の鋸歯部がそれぞれ形成されると共に、上記ランバーカムには、一方向回りの間欠回動時にトーションアームに接する多段のカム面が形成されている。
【0006】
上記構成によれば、ランバーカムとラッチカムの相対向する端面に形成された放射状の鋸歯部を用いて、ランバーカムを一方向回りに間欠回動する構造をとっているため、軸方向に各部材が配置され径方向の寸法が抑えられるので、装置の小型化を図ると共に、簡素な構成にして部品点数の削減を図ることが可能となる。
【0007】
さらに、上記ラッチカムは、上記操作軸に固定されたラッチ部材と係合して回転不自在になっていると共に、鋸歯部とは反対の端面にコイルばねを収めるばね保持溝が設けられており、コイルばねが、ラッチカムのばね保持溝に収められた状態でラッチ部材で押し付けるように保持され、その一端がベースに固定され他端がラッチカムに固定されて、ラッチカムの回動を戻す方向に付勢すると共にラッチカムをランバーカムに噛合させる方向に付勢している。
【0008】
この構成によれば、ランバーカムを一方向回りに間欠回動する構造において、ラッチカムのばね保持溝にコイルばねを収めてラッチ部材で保持する簡素な構成にして、1つのコイルばねで、ラッチカムの回動を戻す方向に付勢すると共にラッチカムをランバーカムに噛合させる方向に付勢することが可能となり、装置の小型化と部品点数の削減を図ることが可能となる。
【0009】
また、上記ランバーカムの外周には複数の回り止め用係合部が形成されており、ベースに固定された弾性変形可能なストッパが、ランバーカムの回り止め用係合部と係合してランバーカムの回動を止めるようになっている構成にすると、ストッパによってランバーカムの回動を所定の位置で確実に止めて、ランバーカムの間欠回動を正確かつスムーズに行うことが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
【0011】
図1〜図5に、本発明のシートのランバーサポート装置1の構成例を示す。
【0012】
このランバーサポート装置1は、図1に示すように、シートバック21とシートクッション22からなるシート20において、シートバック21内のフレーム23に固定されたベース2に、ランバープレート12を支持したトーションアーム3が前後回動可能に支持されている。図2及び図3に示すように、ベース2に操作軸8が回動操作可能に支持され、この操作軸8にラッチカム6が軸方向に摺動可能かつ回転不自在に支持されると共にランバーカム5が回動可能に支持されている。上記ランバーカム5とラッチカム6の相対向する端面には、相互に噛み合うと共に操作軸8によるラッチカム6の双方向回りの間欠回動によって噛合位相を変えてランバーカム5を一方向回りに間欠回動可能な放射状の鋸歯部5c,6c(図6及び図7参照)がそれぞれ形成されている。また、ランバーカム5には、一方向回りの間欠回動時にトーションアーム3に接する多段のカム面5a(図6参照)が形成されている。
【0013】
調整機構11は、トーションアーム3を操作レバー13を操作して回動中心Sで前後に揺動させることによって、ランバープレート12の前後位置が調整できるようになっている。より詳しくは、この調整機構11は、操作レバー13を操作して、複数のカム面5aを形成したランバーカム5をラッチカム6を介して間欠回動してランバーカム5のカム面5aを変更する間欠回動機構10を有し、このランバーカム5のカム面5aにトーションアーム3の一端を当接させてトーションアーム3を回動中心Sで前後に揺動させることによって、ランバープレート12の前後位置が多段で調整可能になっている。
【0014】
具体的には、間欠回動機構10のランバーカム5は、図6に示すように、外周面に径の異なる複数のカム面5aを有すると共に他の外周面に回転軸に平行な複数の回り止め用溝5bを有しており、一方の端面にラッチカム6と噛合する複数の鋸歯5cが放射状に設けられている。ここでは、カム面5a、回り止め用溝5b及び鋸歯5cをそれぞれ6等分割して設ける例を示している。
【0015】
ラッチカム6は、図7に示すように、一方の端面にランバーカム5と噛合する複数の鋸歯6cが放射状に設けられ、他方の端面に操作軸8に固定されたラッチ部材9と係合して回転不自在とする係合部6a,6bが設けられている。ここでは、鋸歯6cを6等分割して設ける例を示している。
【0016】
図5に示すように、ベース2には、上下の回動支持部2b,2cの各々にガイド14が挿入固定されており、この部分でトーションアーム3の垂直部3bが支持される。このトーションアーム3には、その水平延出部3dの先端部3aにランバープレート12が取付部12aで結合部材15によって支持固定され、他端の垂直部3cはベース2の挿入穴2gから挿入されて、ランバーカム5のカム面5aに外表面が当接するようになっている。従って、トーションアーム3の垂直部3cをランバーカム5の径の異なるカム面5aに当接させることによって、図3に示すように回動中心Sでトーションアーム3を揺動させ、ランバープレート12の前後位置を多段で調整することができる。ここでは、ランバープレート12が前方位置にある状態を実線で、後方位置にある状態を想像線で示している。
【0017】
ラッチ部材9は、ラッチカム6の係合部6a,6bと係合して回転不自在とする係合突起9a,9bを有する。操作軸8は、ランバーカム5とラッチカム6が各鋸歯5c,6cが対向する状態で挿入されてベース2の軸支部2aに軸支されており、一端8bにラッチ部材9が固定され、他端8aに操作レバー13が取付部13aで固定されている。ストッパ4は、弾性材料からなり、ベース2の取付部2fに固定されて、ランバーカム5の回り止め用溝5bと係合してランバーカム5の回動を止めるようになっている。コイルばね7は、ラッチカム6のばね保持溝6dに収められた状態でラッチ部材9で押し付けるように保持され、その一端7aがベース2の取付部2fに固定され、他端7bがラッチカム6の係合部6bに固定されており、ラッチカム6の回動を戻す方向に付勢すると共にラッチカム6をランバーカム5に噛合させる方向に付勢する。
【0018】
図8は、上記した間欠回動機構10において、操作レバー13を操作して、複数のカム面5aを形成したランバーカム5をラッチカム6を介して間欠回動してランバーカム5のカム面5aを変更する原理を展開図で表したものである。
【0019】
図8(a)は、間欠回動機構10において、対向するランバーカム5の鋸歯5cとラッチカム6の鋸歯6cが噛合した初期状態を表す。この状態では、ラッチカム6とラッチ部材9との間に介在するコイルばね7によって、ランバーカム5の鋸歯5cにラッチカム6の鋸歯6cが噛合する方向に付勢されるため、ランバーカム5とラッチカム6が鋸歯5c,6cによって噛合した状態が維持される。この状態では、鋸歯5cのA1〜A4で示す各歯が、鋸歯6cのB1〜B4で示す各歯にそれぞれ噛合する。
【0020】
図8(b)は、ランバーカム5とラッチカム6が鋸歯5c,6cによって噛合した状態で、操作レバー13を操作して、ラッチカム6の回動を戻す方向に付勢するコイルばね7の弾性力に抗して、ランバーカム5を図示矢印方向に1歯分の単位回転角(ここでは、60度)を前進回転させた状態を表す。この図では、鋸歯5cのA2〜A5で示す各歯が、鋸歯6cのB2〜B5で示す各歯にそれぞれ噛合した状態を表す。尚、この状態ではストッパ4がランバーカム5の回り止め用溝5bと係合する。
【0021】
図8(c)は、1歯分だけ前進回転したランバーカム5の鋸歯5cとラッチカム6の鋸歯6cの噛合が解除されつつある状態を表す。この状態では、ストッパ4がランバーカム5の回り止め用溝5bと係合してランバーカム5の回動を止めるため、ラッチカム6の回動を戻す方向に付勢するコイルばね7によって、ラッチカム6のみが図示矢印方向に鋸歯5c,6cの傾斜に沿って滑りながら後退回転する。
【0022】
図8(d)は、ラッチカム6の回動を戻す方向に付勢するコイルばね7によって、図8(c)に示す状態から更にラッチカム6のみが図示矢印方向に後退回転し、ランバーカム5の鋸歯5cとラッチカム6の鋸歯6cの噛合がほとんど解除された状態を表す。
【0023】
図8(e)は、1歯分だけ前進回転したランバーカム5の鋸歯5cと、1歯分だけ後退回転したラッチカム6の鋸歯6cが噛合した状態を表す。この状態では、ラッチカム6とラッチ部材9との間に介在するコイルばね7によって、ランバーカム5の鋸歯5cにラッチカム6の鋸歯6cが噛合する方向に付勢されるため、鋸歯5cのA2〜A5で示す各歯が、鋸歯6cのB1〜B4で示す各歯にそれぞれ噛合した状態が維持される。
【0024】
尚、図4に示すように、ベース2のストッパ部2e,2hには緩衝部材16,17がそれぞれ取り付けられており、これらにラッチカム6の係合部6bの外表面及びラッチ部材9のストッパ部9cが当たることによって、間欠回動機構10におけるランバーカム5及びラッチカム6の間欠回動範囲が、単位回転角に相当する約60度に規制されている。ここでは、ランバーカム5及びラッチカム6が前進回転してベース2のストッパ部2hとラッチカム6の係合部6bの外表面が当たった状態を想像線で、ラッチカム6が後退回転してベース2のストッパ部2eとラッチ部材9のストッパ部9cが当たった状態を実線で表している。
【0025】
このように、間欠回動機構10の操作レバー13を操作して、図8(a)〜図8(e)に示す動作を繰り返すことによって、ランバーカム5をラッチカム6を介して単位回転角で間欠回動してランバーカム5のカム面5aを変更することができる。従って、ランバーカム5のカム面5aにトーションアーム3の一端を当接させてトーションアーム3を回動中心Sで前後に揺動させることによって、ランバープレート12の前後位置を多段で調整することができる。
【0026】
以上、本発明のシートのランバーサポート装置は、上記した実施形態の具体的構成に限定されるものではなく、必要に応じ適宜構成を変形、追加又は削除した構成としてもよいことは言うまでもない。
【0027】
例えば、上記では、ラッチ部材とラッチカムの係合部が、ラッチカムの係合穴にラッチ部材の係合突起が係合する構成とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ラッチカムの係合突起にラッチ部材の係合穴が係合する構成としてもよい。
【0028】
また、上記では、ランバーカムの外周に複数の回り止め用係合溝を形成し、ベースに固定された弾性変形可能なストッパを、ランバーカムの回り止め用係合溝と係合させてランバーカムの回動を止める構成とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ランバーカムの外周に回り止め用係合突起を設けストッパ側に係合穴(又は係合溝)を設ける構成としてもよい。
【0029】
更には、上記では、間欠回動する単位回転角が60度である例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、単位回転角を60度以外の他の角度としてもよいことは言うまでもない。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のシートのランバーサポート装置によれば、ランバーカムとラッチカムの相対向する端面に形成された放射状の鋸歯部を用いて、ランバーカムを一方向回りに間欠回動する構造をとっているため、軸方向に各部材が配置され径方向の寸法が抑えられるので、装置の小型化を図ると共に、簡素な構成にして部品点数の削減を図ることができ、製造原価も低減することができる。
【0031】
また、ランバーカムを一方向回りに間欠回動する構造において、ラッチカムのばね保持溝にコイルばねを収めてラッチ部材で押し付けるように保持する構成にすることによって、1つのコイルばねで、ラッチカムの回動を戻す方向に付勢すると共にラッチカムをランバーカムに噛合させる方向に付勢することができるため、より簡素な構成にでき一層の装置の小型化と部品点数の削減を図ることができる。
【0032】
また、上記ランバーカムの外周には複数の回り止め用係合部が形成されており、ベースに固定された弾性変形可能なストッパが、ランバーカムの回り止め用係合部と係合してランバーカムの回動を止めるようになっている構成(請求項2)にすると、ストッパによってランバーカムの回動を所定の位置で確実に止めて、ランバーカムの間欠回動を正確かつスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のシートのランバーサポート装置を取り付けたシートを表す斜視図である。
【図2】 本発明のシートのランバーサポート装置における調整機構及び間欠回動機構の構成例を示す正面図及び要部断面図である。
【図3】 本発明のシートのランバーサポート装置における調整機構及び間欠回動機構の構成例を示す下視図及び要部断面図である。
【図4】 図3のP−P断面を表す断面図である。
【図5】 本発明のシートのランバーサポート装置における調整機構及び間欠回動機構の構成例を示す分解斜視図である。
【図6】 本発明のシートのランバーサポート装置における間欠回動機構に用いるランバーカムの構成例を示す図であって、(a)は正面図を、(b)は側面図を、(c)は裏面図を表す。
【図7】 本発明のシートのランバーサポート装置における間欠回動機構に用いるラッチカムの構成例を示す図であって、(a)は正面図を、(b)は側面図を、(c)は裏面図を表す。
【図8】 本発明のシートのランバーサポート装置における間欠回動機構に用いて、複数のカム面を形成したランバーカムをラッチカムを介して間欠回動してランバーカムのカム面を変更する原理を説明するための平面展開図であって、(a)〜(e)は、ランバーカムの鋸歯とラッチカムの鋸歯の噛合位相が1歯分変わるまでの過程を段階的に表す。
【符号の説明】
1 ランバーサポート装置
2 ベース
3 トーションアーム
4 ストッパ
5 ランバーカム
5a カム面
5b 回り止め用溝(回り止め用係合部)
5c,6c 鋸歯
6 ラッチカム
6a,6b 係合部
6d ばね保持溝
7 コイルばね
8 操作軸
9 ラッチ部材
10 間欠回動機構
11 調整機構
12 ランバープレート
13 操作レバー
21 シートバック
Claims (2)
- シートバック内のフレームに固定されたベースに、ランバープレートを支持したトーションアームが前後回動可能に支持されて、上記ベースに操作軸が回動操作可能に支持され、この操作軸にラッチカムが軸方向に摺動可能かつ回転不自在に支持されると共にランバーカムが回動可能に支持されていて、上記ランバーカムとラッチカムの相対向する端面には、相互に噛み合うと共に操作軸によるラッチカムの双方向回りの間欠回動によって噛合位相を変えてランバーカムを一方向回りに間欠回動可能な放射状の鋸歯部がそれぞれ形成されると共に、上記ランバーカムには、一方向回りの間欠回動時にトーションアームに接する多段のカム面が形成されているシートのランバーサポート装置であって、
上記ラッチカムは、上記操作軸に固定されたラッチ部材と係合して回転不自在になっていると共に、鋸歯部とは反対の端面にコイルばねを収めるばね保持溝が設けられており、コイルばねが、ラッチカムのばね保持溝に収められた状態でラッチ部材で押し付けるように保持され、その一端がベースに固定され他端がラッチカムに固定されて、ラッチカムの回動を戻す方向に付勢すると共にラッチカムをランバーカムに噛合させる方向に付勢していることを特徴とするシートのランバーサポート装置。 - 上記ランバーカムの外周には複数の回り止め用係合部が形成されており、
ベースに固定された弾性変形可能なストッパが、ランバーカムの回り止め用係合部と係合してランバーカムの回動を止めるようになっている請求項1記載のシートのランバーサポート装置。
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