JP4072612B2 - バイオマスを利用した石炭の加圧噴流床ガス化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バイオマスの分解を利用した石炭の加圧噴流床ガス化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石炭のガス化技術は、プロセスの環境への適合性や経済性の改善を目指して、加圧噴流床ガス化技術の開発が競われている。一般に、加圧噴流床ガス化では、微粉炭を酸素と共にガス化炉に吹き込み、灰の溶融温度を越える温度から1600℃迄の温度範囲において瞬間的にガス化させるものである。この方式によれば、容積の小さな反応器で99%以上の炭素転換率でガス化できるとともに、灰をガラス状のスラグとして排出できるため、高い熱効率とガス生産性、環境適合性及び低いプラントコストを実現できるという利点がある。
ところが、この方式は、灰の融点以上の高温でガス化するので、生成ガス中に溶融した灰の微粒子が混在することになり、生成ガスを処理することなくそのままサイクロンや高温ガスフィルターに供給すると、灰の融着や固化現象に伴う様々な障害を引き起こすという問題がある。このため、ガス化炉から出た1600℃迄の高温の生成ガスを、排熱回収ボイラーで900℃付近にまで冷却して灰の融着性を防止する処理を施した後、サイクロンや高温ガスフィルターに導入する必要がある。
【0003】
ところで、排熱回収ボイラーでは、内部に配設された水管群の表面にも灰微粒子の融着が起こり易く、また、一旦融着が始まると水管表面の伝熱係数が低下し、さらに融着し易い条件が整って加速度的に融着が進行して、ボイラーの性能を低下させることとなり、ガス化技術開発の大きな障害になっているものと推測される。
そこで、排熱回収ボイラーを設計するには、水管上への灰の堆積を減らすために生成ガスの線速度を大きくする方策が採られ、ガス化炉の直上に背の高い排熱回収ボイラーを設置せざるを得ない状況にあり、プラント建設や運転等に経費がかさむという欠点がある。
最近では、排熱回収ボイラーの規模を縮小する技術や灰の融着を生じない操業技術の確立を巡って、加圧噴流床ガス化プロセスの技術開発競争が繰り広げられている。例えば、灰の堆積・融着に伴う障害の発生を回避するため、運転の初期段階から水管表面をガスブローして水管群上の微粒子を除去したり、冷却した生成ガスを水管表面に沿って膜状に流すことにより、水管表面に飛来する灰粒子の温度を効果的に下げたり、灰粒子が付着し難い材料の探索や、排熱回収ボイラーの構造適正化等が行われてきた。
【0004】
加圧噴流床ガス化技術は、ガス化温度を高めることで石炭処理量を増やし、効率を高めてガス組成を単純にCOとH2に特化する方式で、ガスタービン−排熱ボイラー−スチームタービンから構成される複合発電方式や燃料電池−複合発電方式等の最新技術と組み合わせて、高効率で発電することでその特徴を発揮するものと考えられ、技術の確立に向けて研究開発が行われている。
このような高効率発電技術は、二酸化炭素の排出を最小化するための開発が急がれている。ガス生産性、経済性、環境適合性の優位性から、近年開発を競われている加圧噴流床ガス化方式では、上記したように、生成ガス中に溶融した灰の微粒子を含むため、ガス化炉に直結して排熱回収ボイラーを設け、灰が固化する温度までガスを冷却する。その際にボイラー水管上に溶融した灰の一部が堆積して、伝熱係数を低下させたり、ボイラーの閉塞を生じるため、ボイラー内のガス線速度を灰の堆積し難いレベルまで速くするため、排熱回収ボイラーは背高になりプラント建設費がかさむ原因となっている。現実には線速度の上昇のみでは対処しきれないため、冷された生成ガスの一部を排熱回収ボイラーに循環してガスを冷却する手段が採用されている。この場合、生成ガスからの顕熱回収を犠牲にすることになり、プロセス効率の低下は免れない。
【0005】
一方、バイオマスは大気中の二酸化炭素を固定した再生可能エネルギーと位置づけられ、この利用を促進することで大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑制できると考えられている。しかし、バイオマスの主成分であるセルロースを理論的に酸素でガス化すると反応は吸熱過程で進行する。そのため、高温ガス化するには生成ガスがガス化温度で持ち出す顕熱分だけ、生成ガス(CO+H2)を燃焼しなければ炉温を維持できないという矛盾を抱えている。従って、石炭ガス化技術のような単純な部分酸化の反応熱によりガス化温度を維持する方式では、燃料の特質を活用した高効率ガス化は実現できない点が問題であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記した実状に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、石炭のガス化により発生する高熱を効率的に低下させて石炭の噴流床ガス化炉の操業時における灰の堆積・融着に伴う障害の発生を軽減できる石炭の加圧噴流床ガス化方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、石炭の加圧噴流床ガス化炉から発生する熱をバイオマスの分解ガス化反応に用いることにより、石炭のガス化プロセスの熱効率を改善してバイオマス及び石炭を高効率でガス化できるバイオマス及び石炭の加圧噴流床ガス化方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、石炭のガス化により発生する熱量を回収する排熱回収ボイラーを小型化した石炭の加圧噴流床ガス化方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために石炭等を酸素でガス化するプロセスの熱効率を改善し得る化学原理の解明を目指して鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、バイオマス燃料及び石炭の加圧噴流床ガス化方法において、加圧噴流床ガス化炉に石炭粒子を導入して高温の石炭生成ガスを生成させ、その中にバイオマス燃料を導入して高温の石炭生成ガスと接触させ、バイオマス燃料を熱分解ガス化させることを特徴とする。そのバイオマス燃料の導入は、石炭生成ガスが1600℃付近の顕熱を有している加圧噴流床ガス化炉から流出する石炭生成ガス出口の直後であることが好ましい。
また、本発明は、加圧噴流床ガス化炉に石炭粒子及び酸素を導入して高温の石炭生成ガスを生成させ、得られた石炭生成ガスが流出するガス化炉の上部出口の直後にバイオマス燃料を導入し、バイオマス燃料と高温の石炭生成ガスとを接触させて、バイオマス燃料中の炭素の90%以上を揮発させ、生成した揮発性ガス及び未反応炭素と石炭生成ガス中の水蒸気及び二酸化炭素との反応により一酸化炭素及び水素を得るとともに、高温の石炭生成ガスをガス化工程内に灰の融着及び固化を回避できる温度にまで低下させることを特徴とするバイオマス燃料及び石炭の加圧噴流床ガス化方法である。
この高温状態でバイオマス燃料と高温の石炭生成ガスと接触させる際、バイオマス燃料中の炭素の90%以上を揮発させ、生成した揮発性ガスや未反応炭素と、石炭生成ガス中の水蒸気及び二酸化炭素とを反応させて一酸化炭素及び水素を得る複数の吸熱反応により、石炭生成ガスに含まれる溶融した灰粒子が固化する温度まで急速に冷却することが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、従来の石炭の加圧噴流床ガス化プロセスにおいて、石炭生成ガスとバイオマス燃料のガス化を組み合わせることで、排熱回収ボイラー等に灰が堆積・融着する障害の発生を防止し、石炭の噴流床ガス化炉の円滑な操業を行うと共に、石炭やバイオマス燃料を単身でガス化する場合より高効率で燃料ガスを得るガス化方法である。
【0009】
バイオマスの主成分であるセルロースと酸素から一酸化炭素と水素へ理想的にガス化する際、次式のような吸熱反応が進行する。
【化1】
C6H10O5 +0.5O2 → 6CO+5H2 −82.73kcal
バイオマスをガス化する炉としては、石炭ガス化法と同様に、移動床、流動床、噴流床等の各方式のガス化炉が検討されている。しかし、これらのガス化方式は、いずれもガス化の主反応が発熱過程で進行することを前提として確立された技術であるため、吸熱過程のバイオマスのガス化に単純に応用しても高い熱効率での転換は実現できない。
【0010】
例えば、900〜1600℃で操業される通常の石炭ガス化炉では、部分酸化反応で発生する反応熱により、生成した一酸化炭素や水素が900〜1600℃に加熱されてガス化炉から流出させることで、ガス化の反応熱と生成ガスの持ち出し顕熱が釣り合って、ガス化温度が維持されるものである。
【0011】
一方、セルロースでは、上記反応式に示すように、セルロースと酸素を反応させて一酸化炭素と水素に転換する反応は、吸熱過程で進行する。上記の反応が生じると反応熱により生成ガスは室温以下に冷却される結果となり、実用的な反応速度を維持できなくなる。そこで、セルロースのガス化温度を、例えばタールの副生が止まる900℃に実効的に維持するためには、生成した一酸化炭素と水素の一部を燃焼させて生成ガスを900℃まで加熱する必要がある。このため、ガス化の冷ガス効率は低下し、生成ガス中には多量の二酸化炭素が含まれることになる。
【0012】
バイオマスは、大気中の二酸化炭素を固定したものである点で他のエネルギー資源とは異なるものであり、その積極的な利用が模索されている現状を考慮すると、上記の反応式で示される化学量論量以上の酸素を用いてガス化し、二酸化炭素を発生させながら燃料ガスに転換する方法は、地球温暖化の防止や資源の有効利用を計るうえで好ましいとはいえない。また、吸熱過程で一酸化炭素と水素に転換できるバイオマス燃料の特質を有効に利用しているともいえない。このような観点から、酸素を用いる部分酸化過程以外の方法で、バイオマス燃料の特質を活用しながら一酸化炭素と水素に転換させることが有益であると考えられる。
【0013】
以上のような考察の結果、本発明では、噴流床石炭ガス化技術上の問題点をバイオマスの理想的な利用により解決するものであって、噴流床ガス化炉に石炭を導入して石炭生成ガスを発生させる通常の噴流床ガス化方法において、その噴流床ガス化炉の石炭生成ガスの出口直後にバイオマス燃料を導入するものである。
バイオマス燃料を熱分解すると、熱分解生成物の重合反応も同時に進行して、例えばタールや木炭状の炭素を生成する。しかし、加圧噴流床ガス化炉の出口付近の約1600℃の加圧生成ガスのようにエネルギー密度の高い雰囲気中にバイオマス粉体が良く分散した状態で吹き込まれると、熱分解反応は急速に進み、熱分解生成物も速やかに固体表面から離脱する結果、上記の重合反応は抑制され、バイオマス燃料の大部分は気体状の揮発分に転換する。そして、気体となった揮発分は、固体中にある時とは比較にならないほど頻繁にH2OやCO2分子との衝突を繰り返す間に分解して、CO、H2に転換するものと考えられる。
このように、加圧石炭ガス化系内にバイオマス燃料を吹き込んで、バイオマス燃料を高温・高圧の石炭生成ガスと十分に接触させることにより、バイオマス燃料を揮発させ、発生した揮発性ガスや未反応炭素と、石炭生成ガス中の高温・高圧の水蒸気や二酸化炭素と反応させて、バイオマスの主成分であるセルロースを、下記式(1)及び式(2)に示す吸熱反応で一酸化炭素と水素を生成させることにより、石炭生成ガス温度を低下させると共に、生成ガス中の燃焼成分量を増加させて、ガス化の熱効率を向上させる方法である。その際、加圧石炭ガス化系内に吹き込まれたバイオマス燃料は、高温・高圧とエネルギー密度が高い条件で石炭生成ガスと接触させ、その中の炭素の90%以上を揮発させ、さらに揮発分や炭素を高温の水蒸気と二酸化炭素で分解させることが望ましい。
【0014】
【化2】
C6H10O5+H2O → 6CO+6H2−151.06kcal/mol (1)
C6H10O5+CO2 → 7CO+5H2−150.30kcal/mol (2)
【0015】
本発明では、前記(0003)に述べた石炭の噴流床ガス化側における物理的或いは工学的な対策とは異なり、吸熱過程で進行するセルロースの熱分解・ガス化反応を利用して、約1600℃の石炭生成ガス温度をガス化プロセス内に灰の融着や固化を回避できる約900℃程度の温度にまで低下させるものである。このことは、石炭のガス化で発生する高温の石炭生成ガスの熱量を、直接にセルロースの吸熱を伴う熱分解・ガス化反応に用いるから、石炭ガス化の熱量を効率的に利用できるばかりでなく、排熱回収ボイラーを小型化するか又は省略することができる。
また、バイオマス側から見れば、石炭ガス化に負担をかけることなく、バイオマス中の炭素と水素原子を一酸化炭素と水素に転換し、同時に石炭生成ガスの顕熱の一部を一酸化炭素と水素の発熱量として多額的に固定化することで、123%の冷ガス効率でガス化できることになる。
バイオマスの利用を図るために、バイオマスの主成分であるセルロースを、ヘリウム中、800℃で急速熱分解したところ、表1に示すように反応時間10秒でガスへの炭素転換率が約90%に達する実験結果を得た。
【0016】
【表1】
【0017】
表1に見られるように、ヘリウム雰囲気下、800℃においてはセルロース中の炭素の約90%が気相に移行する。これは熱分解に際してセルロースが比較的小さな単位の生成物に分解され易い分子構造を持つ上に、急激な加熱により生成物が気相へ移行して、凝縮相内で炭素まで重合する機会が少ないことによるものと推定される。セルロースが熱分解反応のみで高い炭素転換率を達成できるのは、反応雰囲気が70気圧あるために、各セルロース粒子の周囲には大気圧の場合の70倍もの顕熱が存在するため、セルロース粒子が10秒間で90%の熱分解が生じる程の熱を気相から受け取った結果であると推測される。参考までに、表1と同じ温度・圧力条件で、試料量を2倍(試料/He=2.213g/g)にして実験すると、ガスへの炭素転換率は70.8%に低下した。
【0018】
表1の結果等から類推すると、石炭の加圧噴流床ガス化炉から発生する1600℃の石炭生成ガス中にセルロースを吹き込んだ場合、熱分解に関する理論的及び経験的見地から、化学反応は以下の傾向で進行するものと推測される。
▲1▼生成物の熱分解はさらに進行してガスへの炭素転換率は上昇する。
▲2▼表1に示すような未分解の炭化水素ガスの多くは、1600℃では分解されて、一酸化炭素、水素及びメタンを生成する。
▲3▼ガス化炉の出口付近の生成ガス中に共存する二酸化炭素や水蒸気と、未分解炭化水素やチャーが反応して、一酸化炭素、水素及びメタンに転換する。
【0019】
これらの考察から、本発明では、石炭のガス化により発生する約1600℃の高温の生成ガスを用いてバイオマス燃料の分解ガス化を効率的に進行させるには、石炭生成ガスとバイオマス燃料ガスとを十分に接触させることが好ましい。そのためには、セルロースを主として含むバイオマス燃料を、ガス化炉からの石炭生成ガスの出口直後の高温領域に吹き込むことにより、生成ガスをサイクロン等で除塵できる約900℃程度の温度にまで化学的に冷却すると共に、生成ガス中の一酸化炭素量と水素量を増加させて、プロセスの高効率化を達成するものである。その際、これらのバイオマス燃料は、その中に含まれるセルロース量を予め計測し、約1600℃の石炭生成ガスが約900℃になるような量を予測して吹き込むことが必要である。
【0020】
本発明に用いるバイオマス燃料としては、植物を起源とする再生可能なエネルギー資源であれば従来公知の如何なるものも使用可能であって、これらは水分を含んでいても良い。このようなバイオマス燃料としては、セルロースを含む天然物材料及び合成材料が含まれ、例えば、各種の木材、紙、植物及びこれらの廃棄物、産業及び日常生活から廃棄されるセルロースを含む有機廃棄物等が包含される。これらのバイオマス燃料は、通常、50〜200μm程度の切片又は粉末粒子状で用いることが好ましい。また、石炭については、一般に噴流床ガス化炉に供給される通常の石炭粒子200メッシュバスが使用される。
【0021】
次に、本発明を図面を参照して説明する。
図1は、本発明における石炭及びバイオマス燃料を用いて加圧噴流床ガス化炉でガス化させる方式(ガス冷却の50%をバイオマスの分解に依存する場合)のフローシートの1例を示す概念図である。
図1に示したフローシートに従って本発明を実施するには、原料石炭粒子及び酸素を加圧噴流床ガス化炉に導入し、約1600℃、30〜70気圧において部分燃焼ガス化される。このガス化炉の最下部から溶融した灰分を水冷して抜き出す。一方、発生した石炭生成ガスが上昇するガス化炉内出口直後の部位に、バイオマス燃料を吹き込んで約1600℃の高温の石炭生成ガスと接触させることにより、吸熱反応で進行するバイオマス燃料を分解ガス化させ、約900℃の混合生成ガスを生成させる。このようにして得られた混合生成ガスを、内部に冷却用水管を配設した排熱回収ボイラで冷却した後、サイクロンに送られる。このサイクロンの上部からは、水素と一酸化炭素を主成分とする燃料ガスが得られる。また、その下部から取り出されるチャーは、ガス化炉に戻される。
図2は、従来の石炭を用いて加圧噴流床ガス化炉でガス化させる方式のフローシートの1例を示す概念図である。図1と図2との対比から、本発明のガス化方式では、石炭生成ガスの一部の熱量がバイオマス燃料の分解に用いられるから、排熱回収ボイラの高さを低くし、小型化できることが理解できる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明をさらに具体的に説明する。
太平洋炭を噴流床でガス化する例について試みた。ここで使用する太平洋炭の性状は、以下の通りである。
太平洋炭の工業分析値, 灰分 11.35% 、水分 5.55 %、 発熱量6440kcal/kg
元素分析値, C:76.52%、H:6.35%、O:15.79%、N:1.24%、S:0 .09%
炭素原子1mol当たりの組成式 CH0.996O0.154 、分子量( 17.82g/mol-dry base)、発熱量114.8kcal/mol
この石炭微粒子を1600℃でガス化し、冷ガス効率は79.8%において、以下の組成の生成ガスを生産する。
0.9CO+0.45H2+0.10CO2+(0.05+0.054)H2O+0.22N2(生成ガス発熱量 2449kcal/‰)
1600℃における各ガス成分の熱容量(CO :7.90 、H2:7.38、CO2:12.75、H2O:10.02、N2:7.85 各cal/mol.deg)を用いると、1600℃における生成ガスの顕熱は22.80kcalと計算される。この値は原料石炭の発熱量の19.86%に相当する。また、噴流床ガス化炉は水冷壁構造からなり、この水冷壁からの熱損失は経験上から0.34%とする。この顕熱損失と水冷壁からの伝熱損失は、従来の噴流床ガス化法の実績と照合すると妥当な範囲にあるといえる。
【0023】
ガス化炉より流出する1600℃の生成ガスは、排熱回収ボイラーで900℃に冷却される。この900℃のガスの熱容量(CO:7.51、H2 :7.12、CO2:11.75、H2O:9.11、N2:7.48 各cal/mol.deg)を用いて、900℃の生成ガスの顕熱を計算すると12.01kcalとなり、石炭発熱量の10.47%に相当する。
そこで、1600℃の生成ガスを900℃に冷却するには、ボイラーの水管を通して10.79kcalの熱量を生成ガスから回収する必要があり、この熱量は石炭発熱量の9.39%に相当する。
一方、バイオマス燃料(セルロース量で計算)の吹き込みは、反応式(1)により6molのCOとH2が900℃において生成するに必要な熱は、吸熱過程の反応熱151.06kcalと6molのCOとH2が900℃で保有する顕熱76.81kcalとの和となり、セルロース1molあたり227.87kcal/molとなる。
同様の計算を反応式(2)について行うと、900℃の生成ガスを得るには、反応熱150.30kcalと900℃の生成ガスの顕熱は77.15kcalであるから合計227.45kcal/molと推定される。
【0024】
すでに計算した1600℃の石炭生成ガスを900℃に冷却する間に引き抜く10.79kcalを、セルロースのガス化の反応式(1)で吸収するのに必要なセルロース量は、 10.79÷227.87=0.0474mol となる。同じく、反応式(2)の反応熱で吸収するセルロース量も0.0474mol と計算される。このセルロース量を重量に換算すると0.0474(mol)×162(g/mol)÷17.82(g)=0.432 となり、石炭供給量の43.2重量%のセルロースを生成ガス中に吹き込む必要がある。
表1の結果を得た時のセルロース/He比:1.112g/gをHeの容量基準に換算すると、1g/5.03lとなる。ここでのセルロース吹き込み量と石炭生成ガス量の比を計算すると、(0.047×162)/(0.9+0.045+0.10+0.05+0.054+0.22)×22.4:1g/5.17lと求められ、温度が1600℃と高いことを考慮すると、セルロースは十分に熱分解すると推定される。その際、次式により、プロセスの冷ガス効率は 89.0%と計算され、9.2%の熱量効率の向上を達成できる。
【数1】
最終的な生成ガス組成は1.184CO+0.734H2+0.10CO2+0.104H2O+0.22N2となる。 仮に、1600℃の生成ガスを900℃まで冷却する際の抜熱量の50%をセルロースのガス化で吸収すると、必要なセルロース量は石炭重量の21.6%であり、プロセスの効率は85.0%となる。また、生成ガス組成は1.042CO+0.592H2+0.10CO2+0.102H2O+0.22N2となる。
【0025】
【発明の効果】
本発明は、石炭の噴流床ガス化とバイオマス燃料のガス化を巧みに組み合わせ、熱効率を向上させるプロセスで、従来よりも小型のガス化装置で高効率で燃料ガスが得られるので、ガスタービン−排熱ボイラー−スチームタービンから構成される複合発電方式や燃料電池−複合発電方式等の最新技術と組み合わせて、高効率で発電する技術の確立に有用である。
また、本発明によれば、石炭の加圧噴流床ガス化方式において生成する石炭生成ガスの顕熱をバイオマス燃料のガス化により生成する一酸化炭素と水素の発熱量に転換して、これを複合発電方式もしくは燃料電池−複合発電方式で効率よく電力に転換できるので、生成ガスの顕熱をスチームで回収してスチームタービンで発電する従来法に比較して、発電効率を大幅に改善できる。
本発明によれば、石炭の加圧噴流床ガス化方式において排熱回収ボイラーの高さを大幅に抑制するか、排熱回収ボイラーそのものを省略することができるため、プラント建設費の削減が可能となる。
【0026】
また、本発明では、バイオマス燃料のガス化に伴う吸熱を生成ガスの燃焼で補う必要がないため、炭酸ガスの発生を抑制し環境問題の解消に貢献できるとともに、セルロースの分子構造が有する高水素生産性、高効率転換性等の特性を発揮させることができることになる。また、バイオマスは生産、収穫、輸送上の制約から、将来も200t/d規模の利用が限界と試算されているものの、この量のエネルギーに最新鋭の発電技術を適用することは難しいが、本発明では、このような量的制約を石炭火力との組み合わせることにより解決できるという利点がある。
さらにまた、上述のように,バイオマスのガス化に限定すれば、本発明の冷ガス効率は123%となり、大気中の二酸化炭素から固定化した炭素のエネルギー転換技術としては極限の効率を実現できるため、その産業的意義は多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のバイオマスを利用する石炭の加圧噴流床ガス化方式のフローシートの1例を示す概略図である。
【図2】 従来の石炭の加圧噴流床ガス化方式のフローシートの1例を示す概略図である。
Claims (1)
- 加圧噴流床ガス化炉に石炭粒子及び酸素を導入して高温の石炭生成ガスを生成させ、得られた石炭生成ガスが流出するガス化炉の上部出口の直後にバイオマス燃料を導入し、バイオマス燃料と高温の石炭生成ガスとを接触させて、バイオマス燃料中の炭素の90%以上を揮発させ、生成した揮発性ガス及び未反応炭素と石炭生成ガス中の水蒸気及び二酸化炭素との反応により一酸化炭素および水素を得るとともに、高温の石炭生成ガスをガス化工程内に灰の融着及び固化を回避できる温度にまで低下させることを特徴とする、バイオマス燃料及び石炭の、加圧噴流床ガス化方法。
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