JP4071332B2 - スクロール流体機械 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固定スクロール及び旋回スクロール、または、駆動スクロール及び従動スクロールによって構成されるスクロール流体機械、特に、スクロールのラップ先端と相手方鏡面との間を効率よく気密的に形成するスクロール流体機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、スクロール流体機械は、平板上に渦巻き状の羽根(ラップ)を持つ固定スクロールと、これと基本的に同一形状で偏心クランクにより駆動される旋回スクロールを180度位相をずらし嵌合させる旋回スクロールと、前記偏心クランクと、回転阻止機構とを含む構成とし、固定スクロールの渦巻き状ラップと旋回スクロールの渦巻き状ラップとの間に形成される三日月状の密閉空間(圧縮室)が前記固定及び旋回スクロールの相対運動により容積変化を起こすことを利用して、吐出側に圧縮流体を送出するスクロール流体機械はよく知られている。
【0003】
それらのスクロール流体機械において、流体の圧縮効率を上昇させるためには前記した、三日月状の密閉空間(圧縮室)を気密状態に保つ必要があり、渦巻状に形成したラップ先端に溝を削設し、該溝内に合成樹脂で形成したチップシールを嵌入させ、該チップシールの弾性力により前記密閉空間を気密保持している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記チップシールは弾性変形量が少なく、溝及びその他の寸法加工に高度な技術が要求される。
また、弾性変形量を多くするために大きいチップシール部材を用いると、装置が大型化し、コンパクト化の要請に反することになる。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、弾性変形量が多い弾性部材を用いても耐摩耗性が低下せず、よって加工に高度な技術が要求されないスクロール流体機械を提供することを目的としたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の第1発明は、固定スクロール及び旋回スクロール、または、駆動スクロール及び従動スクロールによって構成されるスクロール流体機械において、
少なくとも一方のスクロールの端板背面側に外部とは気密的に遮断されて形成されたリング状の凹部内にリング状の弾性部材を収容し、該弾性部材の弾性力によってラップ内周から外周の全面にわたって押圧して、該スクロールのラップ先端を相手方鏡面に接触させるとともに、スクロール流体機械が動作中において前記一方のスクロールと前記弾性部材とは、一体的に旋回もしくは停止しているように構成し、前記弾性部材は、少なくとも、ラップ内周部分に対応配置する内周弾性部材とラップ外周部分に対応配置する外周弾性部材とに分割して配置し、前記内周弾性部材を前記外周弾性部材よりも弾性力の高い部材を用いるとともに、耐熱性の高い部材を用いることを特徴とする。
【0007】
通常のスクロール機構は、固定スクロール及び旋回スクロールによって構成され、固定スクロールもしくは旋回スクロールのラップ先端が相手方スクロール端板の鏡面と接触して、ラップ壁面とスクロール鏡面とで密閉空間が形成されるスクロール流体機械と、また、駆動スクロール及び該駆動スクロールによって駆動される従動スクロールによって構成され、駆動スクロールもしくは旋回スクロールのラップ先端が相手方スクロール端板の鏡面と接触して、ラップ壁面とスクロール鏡面とで密閉空間が形成されるスクロール流体機械とが存在する。
【0008】
これらのスクロール流体機械において、少なくとも一方のスクロールを弾性部材によって押圧して、該スクロールのラップ先端を相手方鏡面に接触させるとともに、スクロール流体機械が動作中において前記一方のスクロールと前記弾性部材とは、たとえば、一方のスクロールが旋回スクロールであり、該旋回スクロールと前記弾性部材が一体的に駆動するように構成した場合は前記一方のスクロールと前記弾性部材との摺擦はない。
【0009】
また、例えば、前記一方のスクロールが固定スクロールであり、固定スクロールがハウジングに対して離間する方向すなわち、旋回スクロールの鏡面に固定スクロールのラップ先端が接触するように構成されている場合は、固定スクロールと前記弾性部材とは、旋回スクロールが駆動中であっても停止しているので前記弾性部材の摩耗はない。
【0010】
本発明は、このように構成されているので、弾性変形量が多い弾性部材を用いても弾性部材の摩耗はなく、加工精度をラフに行うことができ、コストを低減することができる。
【0011】
また、請求項2に記載するように、前記一方のスクロールを軸方向に移動可能に配置するとともに、該スクロールのラップ面とは反対側面に前記弾性部材を介在させて構成することも本第1発明の有効な手段である。
前記一方のスクロールを軸方向に移動可能に構成することで、スクロール鏡板の弾性変形限界内の調整を越えて大きい弾性部材による調整押圧が可能となる。
【0012】
また、請求項3に記載するように、固定スクロールのラップが植設されている互いに対面する一方及び他方の鏡面間に旋回スクロールを介在させ、ダブルラップスクロール流体機械を構成するとともに、前記旋回スクロールを前記一方の鏡面と対面する第1端板と、前記他方の鏡面と対面する第2端板とにより形成し、前記第1端板及び第2端板との間に前記弾性部材を介在するように構成することも本第1発明の有効な手段である。
【0013】
いわゆるダブルラップスクロール流体機械においては、旋回スクロールを、固定スクロールの一方の鏡面と対面する第1端板と、固定スクロールの他方の鏡面と対面する第2端板とに分割することができる。そして、前記第1端板及び第2端板との間に前記弾性部材を介在させて組み合わせることにより、前記弾性部材を介在させることができる。
よって、旋回駆動する旋回スクロールと前記弾性部材とは回転摺擦することはなく両者一体にて回動するので、弾性部材が摩耗することはない。
【0014】
また、請求項1に記載するように、前記弾性部材は、少なくとも、ラップ内周部分に対応配置する内周弾性部材とラップ外周部分に対応配置する外周弾性部材とに分割して配置することも本第1発明の有効な手段である。
スクロール機構は、スクロールラップの外周から取り込んだ流体を順次圧縮して内周部分に送り中央部分に配置された吐出口から吐出されるので、中央部分の密閉空間の圧縮流体の圧力が外周部分より高く、その部分が外周部分より高温となるが、内周弾性部材と外周弾性部材とに分割されている場合は、内周断線部材に耐熱性の高い弾性部材を配置することができ、高温による内周部分の弾性部材の劣化を防止することができる。
【0015】
また、金属で構成された固定または旋回スクロールと、合成樹脂で構成された旋回または固定スクロールとのように、両スクロールが異種材料で組み合わされた場合は、材質の各々の熱膨張率が異なるため、クリアランスに微妙な差を生じるが、これらの差も内周弾性部材と外周弾性部材により吸収され、異種材質の組み合わせでも両スクロールラップが形成する圧縮空間を気密性よく保つことができる。
【0016】
また、請求項1に記載するように、前記弾性部材のうち、前記内周弾性部材を前記外周弾性部材よりも弾性力の高い部材を用いることも本第1発明の有効な手段である。
【0017】
スクロール機構は、スクロールラップの外周から取り込んだ流体を順次圧縮して内周部分に送り中央部分に配置された吐出口から吐出されるので、中央部分の密閉空間の圧縮流体の圧力が外周部分より高く、その部分の弾性部材を前記外周弾性部材よりも弾性力の高い部材を用いることによって、高い内圧によって密閉空間のラップ先端と相手方鏡面との接触状態が弱くなることがない。
【0018】
(削除)
【0019】
(削除)
【0020】
第1固定スクロール4は、図2の状態で成形された後は、ドリルで38部分から左方へ切削することにより、吸気通路36が形成され、その後38部分は穴埋めされる。
【0021】
また、第2固定スクロール5においては、まず、開口部37をドリルにて切削して開設し、次に、ラップ6の中央部巻きはじめ端近傍に位置する吐出口5bを開設する。その後39部分を穴埋めし、排気口15から前記開口部37に向かって通路を開設する。
【0022】
尚、図3に示すように、3箇所に位置する回転阻止機構27のクランクピン27aが挿入される支持部35は排気口15とはずれた位置にあり干渉しない。
また、前記支持部35は第1固定スクロール4においては、使用されない。
【0023】
(削除)
【0024】
また、請求項4に記載するように、本第2発明は、固定スクロール及び旋回スクロール、または、駆動スクロール及び従動スクロールによって構成されるスクロール流体機械において、
少なくとも一方のスクロールの端板背面側に外部とは気密的に遮断されて形成されたリング状の凹部内にリング状の弾性部材を収容し、該弾性部材の弾性力によってラップ内周から外周の全面にわたって押圧して、該スクロールのラップ先端を相手方鏡面に接触させるとともに、スクロール流体機械が動作中において前記一方のスクロールと前記弾性部材とは、一体的に旋回もしくは停止しているように構成し、さらにスクロール端板に植設されたラップ面側であって、相手方ラップ端面に対面する鏡面に、弾性部材を介してシート部材を配置し、前記相手方ラップ端面と前記シート部材とを押圧接触させるように構成したことを特徴とする。
【0025】
本第2発明は、スクロール端板に植設されたラップ面側の、相手方ラップ端面に対面する鏡面に、弾性部材を介してシート部材を配置し、前記相手方ラップ端面と前記シート部材とを押圧接触させているので、従来のラップ先端部に配置したチップシール部材のように、小さいものではなく、大きいシート部材を用いることができ、弾性変形量を大きくとることができ、チップシール溝加工を不要となり、圧縮室の密閉度を向上した高効率のスクロール流体機械を提供することができる。
【0026】
また、請求項5に記載したように、少なくとも、動作中に旋回するスクロール合成樹脂により形成することも本第1及び第2発明の有効な手段である。
エンジニアリングプラスティック等の合成樹脂により成形することにより、重量が軽減され、駆動源が小型化され、コストを削減することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示した実施の形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施の形態に記載される構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載が無い限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0028】
図1は、本発明の第1実施の形態に係るダブルラップスクロール流体機械に関わる概略の構造を示す断面構成図で、図2は図1の分解図、図3は第2固定スクロールの平面図、図4は第1固定スクロールの平面図、図5〜図9は部分拡大図である。
【0029】
図1に示す本発明の第1実施の形態に係るダブルラップスクロール流体機械1Aは、図2の分解図に示すように、旋回スクロール対2と、該旋回スクロール2を両サイドから駆動可能に保持する第1固定スクロール4及び第2固定スクロール5とから構成され、これら第1固定スクロール4及び第2固定スクロール5は端面4c及び5cにおいて図示しない手段で結合される。
【0030】
(削除)
【0031】
第1固定スクロール4は略円盤状に形成され、内側の端面4cより外面4b側に下がった位置に旋回スクロール11のラップ先端が摺接する鏡面4dが形成され、該鏡面4dの中央部分には開口孔24が開設され、該開口孔24の近傍から外周に向かって渦巻状のラップ8が植設されている。
【0032】
外面4b側は、図4に示すように、外面4bと同じ高さで多数の冷却フィン32が鏡板の背面4eから起立し、第1固定スクロール4は、図2の状態で成形された後は、ドリルで38部分から左方へ切削することにより、吸気通路36が形成され、その後38部分は穴埋めされる。
【0033】
(削除)
【0034】
この状態で、第2固定スクロール5においては、まず、開口部37をドリルにて切削して開設し、次に、ラップ6の中央部巻きはじめ端近傍に位置する吐出口5bを開設する。その後39部分を穴埋めし、排気口15から前記開口部37に向かって通路を開設する。
【0035】
尚、図3に示すように、3箇所に位置する回転阻止機構27のクランクピン27aが挿入される支持部35は排気口15とはずれた位置にあり干渉しない。
また、前記支持部35は第1固定スクロール4においては、使用されない。
【0036】
また、吸気口14及び排気口15は外周面4aもしくは5dに開口を有して配置されているが、これは、外周面4aの代わりに外面4bもしくは5e側に開設してもよい。
【0037】
(削除)
【0038】
次に、旋回スクロール対2を、図5〜図9の拡大図を用いて説明する。
前記旋回スクロール対2は、基本的にはエンジニアリングプラスティック等による合成樹脂により形成された旋回スクロール10、旋回スクロール11とこの両者との間に介在する弾性部材12、及び13とで構成され、前記第1固定スクロール4と第2固定スクロール5とにより両側面から挟まれて保持されるとともに、図1に示すように、図示しない駆動源と連結する駆動軸18の偏芯部分18a及び回転阻止機構27により、固定スクロールの回りを公転可能に構成されている。
【0039】
旋回スクロール10は、鏡面10kに植設された渦巻状のラップ7、鏡面10kの背面に凹設されたリング状の凹部10d,10e、最終圧縮室と連通する吐出通路10f、及び中央部に設けた開口部10mを有し、旋回スクロール11は、鏡面11kに植設された渦巻状のラップ9、及び鏡面11kの背面に凹設されたリング状の凹部11d,11e、最終圧縮室と連通する吐出通路11f、及び中央部に設けた開口部10mを有している。
【0040】
前記リング状の凹部10d,11d、及び10e,11eには、ゴアテックス(登録商標)、テフロン(登録商標)等で形成された、通気性、防水性、耐薬品性、クッション性の優れたパッキンまたはシール効果を有する弾性部材12及び13が挿入され、該弾性部材12、13の弾性力により旋回スクロール10のラップ7先端と第2固定スクロール5の鏡面5aとの接触状態、また、旋回スクロール11のラップ9先端と第1固定スクロール4の鏡面4dとの接触状態を良好に保持することができる。
【0041】
また、前記弾性部材は、ラップ内周部分に対応する内周弾性部材13と外周弾性部材12とに分割し、前記内周弾性部材13を前記外周弾性部材12よりも弾性力の高い部材を用いている。
また、前記内周弾性部材13は前記外周弾性部材12よりも耐熱性の高い部材を用いている。
よって、スクロール機構は、スクロールラップの外周から取り込んだ流体を順次圧縮して内周部分に送り中央部分に配置された吐出口から吐出されるので、中央部分の密閉空間の圧縮流体の圧力が外周部分より高くなるが、その部分の弾性部材を前記外周弾性部材12よりも弾性力の高い部材を用いるので、高い内圧によって密閉空間のラップ先端と相手方鏡面との接触状態が弱くなることがない。 また、中央部分の密閉空間は外周部分より高熱となるが、耐熱性の高い部材を用いているので劣化することから防止される。
【0042】
前記旋回スクロール10及び11と駆動軸18の偏芯部分18a周面とのシール部分26の詳細は図2におけるA部拡大図である図5に示す。
シール部分26A〜26Dは、合成樹脂により弾圧力を付与して面または線接触により成形し、26CはさらにOリングによりさらに接触力を高めたものである。
【0043】
また、旋回スクロール10及び11の外周近傍には回転駆動軸用の開口部を挟んで対称の位置に、B部拡大図である図6に示すように位置決め手段が配置されている。この位置決め手段は、旋回スクロール10及び11の端板部分の鏡面とは反対側の面に凹設して、該凹設内にOリング17、17を介して位置決めピン16が配設されている。
この構成により、前記弾性部材13、及び12の弾性力に追従して旋回スクロール10及び11の端板同士の間が離間可能に構成されている。
【0044】
また、この位置決め手段から外れた位置であって、前記第2固定スクロール5に設けられた3個の回転阻止機構27のクランクピン27aを支持する支持部35に対応する位置に、D部拡大図である図8に示す回転阻止機構27が配置されている。
該回転阻止機構27はクランク板27cに植設されたクランクピン27aと、その反対側の前記クランクピン27aの軸芯とははずれた位置にクランクピン27bが植設されている。
【0045】
また、旋回スクロール10及び11の外周に凹設された凹部10j,11j内にはOリング29、29を介してニードルベアリング28が配置され、該ベアリング28内を前記クランクピン27bが軸芯方向及び回転方向に回動可能に挿入されている。
【0046】
また、旋回スクロールには、旋回スクロール10及び11の外周部分と弾性部材が位置する凹部と区画する壁面10a、及び11a、さらに、ラップ内周部分に対応する内周弾性部材13と外周弾性部材12との収納場所を区画する壁面10b,11bが配置されている。これは、E部の拡大図である図9に示すように、Oリング30によって各凹部は気密的に保持されている。
【0047】
そして、最終圧縮室と連通する吐出通路10f,11fが開設され、両通路の連結部分にはOリング21、21を介して吐出パイプ20が配置され、旋回スクロールの中央部分の開口凹部10h,11hにはベアリング19、19が配設され、両ベアリング19、19間には波型ワッシャ34が配置され、シール部分26、26を第1及び第2固定スクロールの鏡面に押圧付勢している。
【0048】
本実施の形態はこのように構成されているので、吸気口14から入来した流体は、旋回スクロール対2により、外側から密閉空間に取り込まれ順次圧縮され、吐出通路10f,吐出口5bから排気口15を経て外部に吐出される。
【0049】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
第1実施の形態との相違点は、第1実施の形態がダブルラップスクロール流体機構であるのに対して、第2実施の形態がシングルラップスクロール流体機械である点である。したがって、弾性部材は固定スクロールとハウジングとの間に配置され、駆動することはない。
【0050】
図10に示すように、スクロール流体機械1Bは、駆動軸51と対応する中央部分に吸気口46を有するハウジング40と、該ハウジング40と一体的に取り付けられ、内部に空所52を形成するハウジング41とにより円盤状に構成されている。
前記ハウジング41の中央部分には開口部53が開設され、該開口部53には図示しない駆動源と連結する駆動軸51が回転可能に嵌入され、後述する旋回スクロール43を駆動可能に構成されている。
【0051】
ハウジング41の開口部53の近傍には吐出口54が開設されている。ハウジング41の外周側の、開口部53に対して対称位置に、凹部41aが2箇所設けられ、該凹部41aにはOリング53を介して位置決めピン49が嵌入されている。
該位置決めピン49は固定スクロール43の外周側の、前記凹部41aと対応する位置に凹部43aにOリング53を介して嵌入されるとともに、Oリング52により気密的に配置される。
【0052】
固定スクロール43は、中央部分に開口部43bが開設され、該開口部43bが軸受部41bの外周に嵌合するとともに、Oリング50により気密的にハウジング41の内面に配置される。
固定スクロール43のハウジング41側には、凹部43dが設けられ、該凹部43dには、ゴアテックス(登録商標)、テフロン(登録商標)等の弾性力を有した弾性部材44が挿入されている。
前記凹部43dは、Oリング50、52によって外部とは気密的に遮断され、高圧気体が流入して凹部43d内の弾性力が変動することはない。
固定スクロール43の鏡面43cには、前記吐出口54に近接してラップ47の先端が起立し、ラップ47は渦巻状に外周に向かって植設されている。
【0053】
また、エンジニアリングプラスティック等の合成樹脂により成形された旋回スクロール42には、前記ラップ47とかみ合うようにラップ48が植設され、該旋回スクロール42の中央部には凹部42aが設けられ、該凹部42aはベアリング45を介して回転軸51の偏芯部分51aが回転可能に嵌合している。そして、旋回スクロール42は前記偏芯部分に嵌入されたベアリング45端部によりスラスト方向の移動は制限される。
【0054】
本第2実施の形態は、上述のように構成しているので、固定スクロール43は弾性部材44により、図10上左行するが、Oリング50、52、53により弾性部材44が嵌入されている凹部43d内には外気が流入することはない。
そして、弾性部材44の弾性力により、固定スクロール43のラップ47の先端及び旋回スクロール42のラップ48の先端と、それぞれ対面して摺接する相手方鏡面とがよく接触する。
【0055】
このように構成されたスクロール流体機械1Bは、吸気口46から流入した流体は、旋回スクロール42のラップ48の外周から流体を取り込み、該流体は旋回ラップ及び固定ラップにより形成される、徐々に縮小する密閉空間により圧縮されて中央部分に運ばれ、最終密閉空間が中央部に配置されている吐出口54と連通したときに吐出される。
【0056】
尚、本第2実施の形態においても、第1実施の形態において説明したように、弾性部材44を、ラップ内周部分に対応する内周弾性部材と外周弾性部材とに分割収納する凹部を分割して形成し、前記内周弾性部材を前記外周弾性部材よりも弾性力の高い部材を用いることにより、さらに中央部分の密閉空間の圧縮流体の高熱及び高圧に対応できることは勿論である。
【0057】
以上詳述したように、本実施の形態は、スクロールを弾性部材によって押圧して、該スクロールのラップ先端を相手方鏡面に接触させているので、弾性変形量が多い弾性部材を用いても弾性部材の摩耗はなく、加工精度をラフに行うことができコストを低減する。
また、スクロール流体機械が動作中において前記一方のスクロールと前記弾性部材とは、一体的に駆動もしくは停止しているので、弾性部材が相手方と摺擦することがなく、弾性部材の摩耗はなく、耐久性がよい。
【0058】
次に、第3実施の形態を説明する。図11に示すように第1実施の形態との相違点は、第3実施の形態が、固定スクロール及び旋回スクロールのラップ端面と、該ラップ端面と対面する相手方鏡面とを、弾性力を有する弾性部材及び耐摩耗性がよいシール部材を介して圧接させた点である。
【0059】
図11は、図1と同一部材は同一符号を用いているが、図1に示すスクロール流体機械1Aの固定スクロール鏡面5f及び4dに、弾力性を有する弾性部材60を配置するとともに、該弾性部材60の上に潤滑性及び耐摩耗性を有するテフロン(登録商標)またはベスペル(登録商標)等のポリイミド系の高分子材料で形成したシール部材61を配置している。
【0060】
また、旋回スクロール対102は、図1における弾性部材12、13、位置決めピン16、Oリング17、回転阻止機構27等は共通に用いているが、鏡面110a、111aに、弾力性を有する弾性部材60を配置するとともに、該弾性部材60の上に潤滑性及び耐摩耗性を有するテフロン(登録商標)またはベスペル(登録商標)等のポリイミド系の高分子材料で形成したシール部材61を配置している。
【0061】
本第3実施の形態は、このように構成されているので、旋回スクロール対102の弾性部材12、13が弾性力を発揮しない場合でも弾性部材60によりラップ先端面とシール部材61との接触状態を気密に保つことができ、シール部材61とラップ先端面が摩耗した場合でも、弾性部材12、13により気密状態を保つことができる。
【0062】
次に、第4実施の形態を説明する。図12に示すように第2実施の形態との相違点は、第4実施の形態が、固定スクロール及び旋回スクロールのラップ端面と、該ラップ端面と対面する相手方鏡面とを、弾性力を有する弾性部材及び耐摩耗性がよいシール部材を介して圧接させた点である。
【0063】
図12は、図10と同一部材は同一符号を用いているが、図10に示すスクロール流体機械1Bの固定スクロール鏡面43cに、弾力性を有する弾性部材62を配置するとともに、該弾性部材62の上に潤滑性及び耐摩耗性を有するテフロン(登録商標)またはベスペル(登録商標)等のポリイミド系の高分子材料で形成したシール部材63を配置している。
【0064】
また、旋回スクロール142は、鏡面142aに、弾力性を有する弾性部材62を配置するとともに、該弾性部材62の上に潤滑性及び耐摩耗性を有するテフロン(登録商標)またはベスペル(登録商標)等のポリイミド系の高分子材料で形成したシール部材63を配置している。
【0065】
本第4実施の形態は、このように構成されているので、固定スクロール43の弾性部材44が弾性力を発揮しない場合でも弾性部材62によりラップ先端面とシール部材63との接触状態を気密に保つことができ、シール部材63とラップ先端面が摩耗した場合でも、弾性部材44により気密状態を保つことができる。
【0066】
尚、第3実施の形態における弾性部材12、13、また第4実施の形態における弾性部材44を用いない形態においても効力を発揮することは勿論である。
【0067】
以上詳述したように、本第3及び第4実施の形態は、従来ようなチップシールを用いずスクロール端板の鏡面に弾性部材を介してシール部材を配置しているので、弾性変形量が大きくとれて、気密性が良く耐久性が優れたスクロール機構を提供することができる。
【0068】
そして、本実施の形態は、弾性変形量が大きくとれる弾性部材を用いてラップ先端面と相手方面とを追圧接触させるので、気密性が良く耐久性が優れたスクロール機械を提供できるとともに、動作中に駆動するスクロールをエンジニアリングプラスティック等の合成樹脂により形成することにより、重量が軽減され、駆動源が小型化され、コストを削減することができる。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、スクロールを弾性部材によって押圧して、該スクロールのラップ先端を相手方鏡面に接触させるとともに、スクロール流体機械が動作中において前記一方のスクロールと前記弾性部材とは、一体的に駆動もしくは停止しているように構成しているので、弾性変形量が多い弾性部材を用いても弾性部材の摩耗はなく、加工精度をラフに行うことができ、コストを低減することができる。
【0070】
また、請求項2に記載するように、前記一方のスクロールを軸方向に移動可能に配置するとともに、該スクロールのラップ面とは反対側面に前記弾性部材を介在させて構成しているので、スクロール鏡板の弾性変形限界内の調整を越えて大きい弾性部材による調整押圧が可能となる。
【0071】
また、請求項3に記載するように、ダブルラップスクロール流体機械の旋回スクロールを固定スクロールの一方の鏡面と対面する第1端板と、他方の鏡面と対面する第2端板とにより形成し、前記第1端板及び第2端板との間に前記弾性部材を気密介在するように構成しているので、旋回駆動する旋回スクロールと前記弾性部材とは回転摺擦することはなく両者一体にて回動するので、弾性部材が摩耗することはない。
【0072】
また、請求項1に記載するように、前記弾性部材は、少なくとも、ラップ内周部分に対応配置する内周弾性部材とラップ外周部分に対応配置する外周弾性部材とに分割して配置しているので、中央部分の密閉空間の圧縮流体の圧力が外周部分より高くなり、その部分が外周部分より高温となっても、内周断線部材に耐熱性の高い弾性部材を配置することができ、高温による内周部分の弾性部材の劣化を防止することができる。
【0073】
また、金属で構成された固定または旋回スクロールと、合成樹脂で構成された旋回または固定スクロールとのように、両スクロールが異種材料で組み合わされた場合は、材質の各々の熱膨張率が異なるため、クリアランスに微妙な差を生じるが、これらの差も内周弾性部材と外周弾性部材により吸収され、異種材質の組み合わせでも両スクロールラップが形成する圧縮空間を気密性よく保つことができる。
【0074】
また、請求項1に記載するように、前記弾性部材のうち、前記内周弾性部材を前記外周弾性部材よりも弾性力の高い部材を用いているので、中央部分の密閉空間の圧縮流体の圧力が外周部分より高く、その部分の弾性部材を前記外周弾性部材よりも弾性力の高い部材を用いることによって、高い内圧によって密閉空間のラップ先端と相手方鏡面との接触状態が弱くなることがない。
【0075】
(削除)
【0076】
また、請求項4に記載するように、本第2発明は、スクロール端板に植設されたラップ面側であって、相手方ラップ端面に対面する鏡面に、弾性部材を介してシート部材を配置し、前記相手方ラップ端面と前記シート部材とを押圧接触させるように構成したので、従来のラップ先端部に配置したチップシール部材のように、小さいものではなく、大きいシート部材を用いることができ、弾性変形量を大きくとることができ、チップシール溝加工が不要となり、圧縮室の密閉度を向上した高効率のスクロール流体機械を提供することができる。
【0077】
また、請求項5に記載したように、少なくとも、動作中に旋回するスクロール合成樹脂により形成しているので、重量が軽減され、駆動源が小型化され、コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施の形態に係るダブルラップスクロール流体機械に関わる概略の構造を示す断面構成図である。
【図2】 図1の分解図である。
【図3】 第2固定スクロールの平面図である。
【図4】 第1固定スクロールの平面図である。
【図5】 図2のA部拡大図である。
【図6】 図2のB部拡大図である。
【図7】 図2のC部拡大図である。
【図8】 図2のD部拡大図である。
【図9】 図2のE部拡大図である。
【図10】 本発明の第2実施の形態に係るシングルラップスクロール流体機械に関わる概略の構造を示す断面構成図である。
【図11】 本発明の第3実施の形態に係るダブルラップスクロール流体機械に関わる概略の構造を示す断面構成図である。
【図12】 本発明の第4実施の形態に係るシングルラップスクロール流体機械に関わる概略の構造を示す断面構成図である。
【符号の説明】
1 スクロール流体機械(1A,1B,1C,1D)
2、102 旋回スクロール対
4 第1固定スクロール
5 第2固定スクロール
10、11、110、111 旋回スクロール
12、13、60、62 弾性部材
61、63 シート部材
Claims (5)
- 固定スクロール及び旋回スクロール、または、駆動スクロール及び従動スクロールによって構成されるスクロール流体機械において、
少なくとも一方のスクロールの端板背面側に外部とは気密的に遮断されて形成されたリング状の凹部内にリング状の弾性部材を収容し、該弾性部材の弾性力によってラップ内周から外周の全面にわたって押圧して、該スクロールのラップ先端を相手方鏡面に接触させるとともに、スクロール流体機械が動作中において前記一方のスクロールと前記弾性部材とは、一体的に旋回もしくは停止しているように構成し、前記弾性部材は、少なくとも、ラップ内周部分に対応配置する内周弾性部材とラップ外周部分に対応配置する外周弾性部材とに分割して配置し、前記内周弾性部材を前記外周弾性部材よりも弾性力の高い部材を用いるとともに、耐熱性の高い部材を用いることを特徴とするスクロール流体機械。 - 前記一方のスクロールを軸方向に移動可能に配置するとともに、該スクロールのラップ面とは反対側面に前記弾性部材を介在させたことを特徴とする請求項1記載のスクロール流体機械。
- 固定スクロールのラップが植設されている互いに対面する一方及び他方の鏡面間に旋回スクロールを介在させ、ダブルラップスクロール流体機械を構成するとともに、前記旋回スクロールを前記一方の鏡面と対面する第1端板と、前記他方の鏡面と対面する第2端板とにより形成し、前記第1端板及び第2端板との間に前記弾性部材を介在したことを特徴とする請求項1記載のスクロール流体機械。
- 固定スクロール及び旋回スクロール、または、駆動スクロール及び従動スクロールによって構成されるスクロール流体機械において、
少なくとも一方のスクロールの端板背面側に外部とは気密的に遮断されて形成されたリング状の凹部内にリング状の弾性部材を収容し、該弾性部材の弾性力によってラップ内周から外周の全面にわたって押圧して、該スクロールのラップ先端を相手方鏡面に接触させるとともに、スクロール流体機械が動作中において前記一方のスクロールと前記弾性部材とは、一体的に旋回もしくは停止しているように構成し、さらにスクロール端板に植設されたラップ面側であって、相手方ラップ端面に対面する鏡面に、弾性部材を介してシート部材を配置し、前記相手方ラップ端面と前記シート部材とを押圧接触させるように構成したことを特徴とするスクロール流体機械。 - 少なくとも、動作中に旋回するスクロールは合成樹脂により形成したことを特徴とする請求項1〜4記載のスクロール流体機械。
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