JP4069762B2 - 回転電機の磁石式固定子に使用される極間磁石の組付方法及び組付装置 - Google Patents

回転電機の磁石式固定子に使用される極間磁石の組付方法及び組付装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転電機における磁石式固定子の組付方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術として、例えば特許文献1に記載された直流モータが公知である。
この直流モータは、ヨークの内周に複数の永久磁石を配置し、且つ周方向に隣合う磁石間に極間磁石を配置した磁石式固定子を備えている。永久磁石は、金属板を略コの字状に折り曲げて弾力を持たせた固定部材に押圧されてヨークの内周に固定され、極間磁石は、その固定部材の内部に組み付けられている。
【0003】
ここで、極間磁石を固定部材に組付ける方法を図7に基づいて説明する。
(a) 第1工程…極間磁石100 の一端側を固定部材110 の内部へ挿入し、磁石先端面が固定部材110 の磁石受け部120 に当接するまで軸方向に挿入する。
(b) 第2工程…固定部材110 の磁石抜け止め部130 を撓ませながら、極間磁石100 を図中矢印方向(ヨークの内径方向)へ平行移動させる。
(c) 第3工程…極間磁石100 を軸方向に所定量押し込んで、(d) 組み付けを完了する。
【0004】
【特許文献1】
特開2002-305846 号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の組付方法では、第2工程において、固定部材110 の磁石抜け止め部130 を撓ませながら、極間磁石100 を磁石受け部120 と干渉しない位置まで平行移動させるため、磁石抜け止め部130 の変形量が大きくなり、磁石抜け止め部130 が塑性変形する虞がある。この場合、磁石抜け止め部130 による極間磁石100 の抜け止め機能が損なわれるため、車両振動等を受けた時等に、極間磁石100 が固定部材110 から脱落する可能性がある。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、固定部材を変形させることなく、極間磁石を安定して固定部材に組み付けることができる極間磁石の組付方法及び組付装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の発明)
本発明は、固定部材の内部に極間磁石を組み付ける方法であって、
極間磁石の軸方向一端側をヨークの軸方向と略平行に固定部材の内部に挿入する第1工程と、極間磁石の軸方向一端側をヨークの内径側に傾けて、固定部材の磁石受け部に乗り上げさせる第2工程と、極間磁石の軸方向一端側が磁石受け部に乗り上げた状態を維持すると共に、極間磁石の姿勢を戻しながら極間磁石を固定部材の内部へ押し込む第3工程とを有することを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、固定部材の磁石受け部を基準として極間磁石をヨークの軸方向と略平行な状態まで戻すことができる。つまり、極間磁石の軸方向一端側が固定部材の磁石受け部に乗り上げた後、極間磁石の姿勢を戻しながら、極間磁石を固定部材の内部へ押し込むので、固定部材の磁石抜け止め部を過剰に撓ませることがなく、磁石抜け止め部の塑性変形を防止できる。
【0008】
(請求項2の発明)
請求項1に記載した極間磁石の組付方法を実行する組付装置であって、
極間磁石を固定部材の内部に押し込むためのプッシャと、このプッシャの動作を制御するカムとを備え、このカムには、プッシャに少なくとも第2工程から第3工程までの動作を行わせるカム形状が設けられていることを特徴とする。
この組付装置により、極間磁石の自動組み付けが可能となる。
【0009】
(請求項3の発明)
請求項2に記載した極間磁石の組付方法を実行する組付装置において、
複数の極間磁石に対応する複数のプッシャを有し、
カムには、複数のプッシャに少なくとも第2工程から第3工程までの動作を同時に行わせるカム形状が設けられていることを特徴とする。
この組付装置により、極間磁石の自動組み付けが可能となり、且つ複数の極間磁石を同時に組み付けることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図2は磁石式固定子の軸方向正面図である。
本実施形態の回転電機は、例えば内燃機関を始動するためのスタータに用いられる直流モータであり、界磁を形成する磁石式固定子(以下、固定子1と呼ぶ)を備える。
【0011】
その固定子1は、図2に示す様に、磁気回路を形成する円筒状のヨーク2と、このヨーク2の内周に主磁極として周方向等間隔に配置される複数個の磁石3と、周方向に隣合う磁石3同士の間に配置されて、個々の磁石3をヨーク2の内周に押圧固定する複数の固定部材4と、この固定部材4の内部に補極として組み付けられる複数の極間磁石5とを備える。
【0012】
固定部材4は、図3に示す様に、予め所定形状にプレス成形された金属板(例えばステンレス板)を略コの字状に折り曲げて背板部4aと一組の側板部4bとを設け、略コの字状の内側に極間磁石5を配置する補極スペースS(図1(a) 参照)を形成すると共に、一組の側板部4bに弾力を持たせて、隣接する磁石3を周方向及び径方向外側(ヨーク2側)へ押圧してヨーク2の内周面に固定している。
【0013】
固定部材4の背板部4aには、補極スペースSに配置される極間磁石5の外径側端面(ヨーク2側の端面)を支持する磁石受け部4cが設けられている。この磁石受け部4cは、背板部4aの長手方向両側にそれぞれ2カ所ずつ、合計4個設けられ、背板部4aの一部を内側(反ヨーク側)へ切り起こして形成されている。なお、磁石受け部4cには、極間磁石5を固定部材4の内部に挿入する際に、極間磁石5と接触する角部に面取り4d(図1参照)が設けられている。
【0014】
固定部材4の側板部4bには、補極スペースSに配置される極間磁石5の内径側端面を支持すると共に、極間磁石5の軸方向への移動を規制する磁石抜け止め部4eが設けられている。この磁石抜け止め部4eは、側板部4bの内径側端部を内側へ略直角に折り曲げて形成した折り曲げ片4fに設けられ、且つ側板部4bから切り離されて径方向に弾性変形可能に設けられている。
【0015】
次に、極間磁石5の組み付け方法について説明する。
(第1実施例)
図1は極間磁石5の組付手順を示す工程図である。
第1工程…図1(a) に示す様に、極間磁石5の軸方向一端側(先端側と呼ぶ)をヨーク2の軸方向と略平行に固定部材4の内部に挿入する。
第2工程…図1(b) に示す様に、極間磁石5の先端側をヨーク2の内径側に傾けて、固定部材4の磁石受け部4cに乗り上げさせる。
【0016】
第3工程…図1(c) に示す様に、極間磁石5の先端側が磁石受け部4cに乗り上げた状態を維持しながら、極間磁石5を固定部材4の内部へ押し込む。この時、極間磁石5は、自身の先端角部5aが固定部材4の折り曲げ片4fにガイドされながら押し込まれるので、その押し込み量が大きくなるにつれて、極間磁石5の姿勢が次第にヨーク2の軸方向と略平行な状態に戻っていく。
第4工程…図1(d) に示す様に、極間磁石5を固定部材4の補極スペースSまで挿入して、組み付けが完了する。
【0017】
(第1実施例の効果)
上記の組み付け方法によれば、極間磁石5の軸方向一端側が固定部材4の磁石受け部4cに乗り上げた後、極間磁石5の姿勢を戻しながら(ヨーク2の軸方向と略平行になる様に)、極間磁石5を固定部材4の内部へ押し込むので、固定部材4の磁石抜け止め部4eを過剰に撓ませることがなく、磁石抜け止め部4eの塑性変形を防止できる。その結果、極間磁石5を安定して、且つ確実に保持できる。
【0018】
また、固定部材4には、磁石抜け止め部4eの角部に面取り4dが設けられているので、上記の第2工程で極間磁石5の先端側を磁石受け部4cに乗り上げさせる時に、極間磁石5と磁石受け部4cとの接触抵抗が減少して、滑らかな極間磁石5の挿入が可能となる。その結果、極間磁石5を固定部材4に組み付ける時に、極間磁石5の割れ、欠け等を防止できる。
【0019】
(第2実施例)
図4及び図5は組付装置を使用した極間磁石5の組付手順を示す工程図である。本実施例は、固定部材4への極間磁石5の組み付けを以下に説明する組付装置により行う場合の一例である。
組付装置は、極間磁石5を固定部材4の内部に押し込むためのプッシャ6と、このプッシャ6の動作を制御するカム7、及びプッシャ6を軸方向に押圧する油圧シリンダ等の動力源(図示せず)等を備える。
【0020】
プッシャ6は、図示しない可動治具に自身の上端部が回動可能に支持され、且つその可動治具と共に図示上下方向に往復動可能に設けられている。プッシャ6の下端部には、極間磁石5をヨーク2の内径側へ傾けさせるための傾斜面6aと、極間磁石5を固定部材4の内部へ押し込むための押圧面6bとが設けられ、更に傾斜面6aと押圧面6bとの間に、固定部材4の角部との干渉を回避するための逃げ溝6cが形成されている。また、プッシャ6の側面には、回転自在に支持されたローラ8が設けられ、このローラ8がOリング9の反力を受けてカム7に押圧されている。
【0021】
カム7は、プッシャ6の動作を制御するためのカム形状が設けられている。具体的には、プッシャ6をヨーク2の軸方向に沿って下方向にスライドさせる第1カム面7a、プッシャ6に傾きを付与する第2カム面7b、傾きが与えられたプッシャ6を下方向にスライドさせる第3カム面7c、プッシャ6の傾きを戻すための第4カム面7d、及び第1カム面7aと同じくプッシャ6をヨーク2の軸方向に沿って下方向にスライドさせる第5カム面7eが設けられている。
【0022】
次に、組付装置を使用して極間磁石5を固定部材4へ組み付ける手順を図4及び図5に基づいて説明する。
第1工程…ヨーク2の内周面に取り付けられた固定部材4の入口に極間磁石5を挿入する(図4(a) 参照)。なお、固定部材4は、自身の背板部4aに形成された位置決め穴4g(図1参照)を、ヨーク2の内周面に突出する位置決め突起2aに嵌合して、ヨーク2に対し周方向および軸方向に位置決めされている。また、極間磁石5は、図示しない治具により保持されている。
【0023】
第2工程…極間磁石5の先端側をヨーク2の内径側に傾けて、固定部材4の磁石受け部4cに乗り上げさせる。この時、プッシャ6は、ローラ8が第1カム面7aを下降した後、第2カム面7bを移動する際に、自身の下端部が外径側へ傾くことにより、傾斜面6aが極間磁石5の後端角部に当接し(図4(b) 参照)、更にローラ8が第2カム面7bを移動することで、傾斜面6aが極間磁石5の後端角部を押圧する。これにより、極間磁石5の先端側がヨーク2の内径側に傾斜する。その後、プッシャ6のローラ8が第3カム面7cを移動する際に、プッシャ6の押圧面6bが極間磁石5の後端面に当接する(図4(c) 参照)。
【0024】
第3工程…極間磁石5の先端側が磁石受け部4cに乗り上げた状態で、極間磁石5を固定部材4の内部へ押し込む(図5(d) 参照)。この時、プッシャ6は、ローラ8が第4カム面7dを移動する際に、第2カム面7bで付与された傾きが修正されて、再びヨーク2の軸方向と略平行な姿勢に復帰し、更に第5カム面7eをローラ8が移動する際に、ヨーク2の軸方向に沿って下方向にスライドする。これにより、極間磁石5は、自身の先端側が固定部材4の磁石受け部4cに乗り上げた状態を維持しながら、自身の先端角部が固定部材4の折り曲げ片4fにガイドされて固定部材4の内部へ押し込まれるため、プッシャ6が下方へスライドするにつれて、極間磁石5の傾きが次第に修正される。
【0025】
第4工程…極間磁石5を固定部材4の補極スペースSまで挿入して、組み付けが完了する。ここでは、プッシャ6を予め設定された所定量だけスライドさせる(ローラ8が第5カム面7eを所定量だけ移動する)ことにより、図5(e) に示す様に、極間磁石5が固定部材4の所定位置(補極スペースS)に配置される。
(第2実施例の効果)
上記の組付装置によれば、極間磁石5に欠けや割れ等を生じることなく、固定部材4への自動組付けが可能となる。
【0026】
(第3実施例)
図6は組付装置による極間磁石5の組付方法を示す説明図である。
本実施例の組付装置は、第2実施例に記載したプッシャ6を複数(例えば使用される極間磁石5の数と同数)備え、この複数のプッシャ6に上記第2工程から第4工程までの動作を同時に行わせる場合の一例である。
【0027】
具体的には、図6に示す様に、周囲にカム面(第1カム面7a〜第5カム面7e)が設けられた円筒形状のカム7と、このカム7の周囲に配置される複数のプッシャ6とで構成される。各プッシャ6の動作は、カム7により全て同一に制御される。制御の内容は、第2実施例に記載した通りである。これにより、複数の極間磁極5を同時に固定部材4に組み付けることができるので、全ての極間磁石5を短時間に組み付けることができ、生産性を大幅に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】極間磁石の組付手順を示す工程図である(第1実施例)。
【図2】磁石式固定子の軸方向正面図である。
【図3】固定部材の斜視図である。
【図4】組付装置を使用した極間磁石の組付手順を示す工程図である(第2実施例)。
【図5】組付装置を使用した極間磁石の組付手順を示す工程図である(第2実施例)。
【図6】組付装置を使用した極間磁石の組付手順を示す工程図である(第3実施例)。
【図7】極間磁石の組付手順を示す工程図である(従来技術)。
【符号の説明】
1 磁石式固定子
2 ヨーク
3 磁石
4 固定部材
4c 磁石受け部
4e 磁石抜け止め部
5 極間磁石
6 プッシャ
7 カム
S 補極スペース

Claims (3)

  1. 磁気回路を形成する円筒形のヨークと、
    このヨークの内周に主磁極として周方向等間隔に配置される複数個の磁石と、
    周方向に隣合う前記磁石同士の間に配置され、周方向に隣接する前記磁石に弾力を付与して前記ヨークの内周に押圧固定する複数の固定部材と、
    この固定部材の内部に補極として配置される複数個の極間磁石とを備え、
    前記固定部材は、前記極間磁石を配置する補極スペースを形成すると共に、この補極スペースに配置された前記極間磁石の内径側端面を支持し、且つ軸方向への移動を規制する磁石抜け止め部と、前記補極スペースに配置された前記極間磁石の外径側端面を支持する磁石受け部とが設けられている回転電機の磁石式固定子において、
    前記固定部材の内部に前記極間磁石を組み付ける方法であって、
    前記極間磁石の軸方向一端側を前記ヨークの軸方向と略平行に前記固定部材の内部に挿入する第1工程と、
    前記極間磁石の軸方向一端側を前記ヨークの内径側に傾けて前記磁石受け部に乗り上げさせる第2工程と、
    前記極間磁石の軸方向一端側が前記磁石受け部に乗り上げた状態を維持すると共に、前記極間磁石の姿勢を戻しながら前記極間磁石を前記固定部材の内部へ押し込む第3工程とを有することを特徴とする回転電機の磁石式固定子に使用される極間磁石の組付方法。
  2. 請求項1に記載した極間磁石の組付方法を実行する組付装置であって、
    前記極間磁石を前記固定部材の内部に押し込むためのプッシャと、
    このプッシャの動作を制御するカムとを備え、
    このカムには、前記プッシャに少なくとも前記第2工程から第3工程までの動作を行わせるカム形状が設けられていることを特徴とする回転電機の磁石式固定子に使用される極間磁石の組付装置。
  3. 請求項2に記載した極間磁石の組付方法を実行する組付装置において、
    複数の前記極間磁石に対応する複数の前記プッシャを有し、
    前記カムには、前記複数のプッシャに少なくとも前記第2工程から第3工程までの動作を同時に行わせるカム形状が設けられていることを特徴とする回転電機の磁石式固定子に使用される極間磁石の組付装置。
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