JP4068782B2 - 二重結合含有含フッ素共重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、撥水撥油性、耐薬品性、耐候性に優れ、一液で光あるいは熱で硬化可能な二重結合含有含フッ素共重合体とその製法およびそれを主成分とするフッ素樹脂塗料、ワニスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶剤可溶型のフッ素樹脂塗料は、一般的にヒドロキシアルキルビニルエーテルとフルオロオレフィン、また必要に応じてアルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル等を共重合し得られる。かかる含有フッ素共重合体をベースとする塗料は、一般的な有機溶剤への溶解性を得るために、炭化水素モノマーを50%以上含んでいる。そのためフッ素樹脂中のフッ素含有量が低下し、含フッ素樹脂に求められる撥水撥油性、耐汚染性等の塗膜特性が充分に得られない。一方、該含フッ素共重合体に少量のシリコーンオイル等の有機珪素化合物を混合することにより、撥水撥油性が向上する。しかし、長期における撥水撥油特性を維持することは難しい。またさらに、用途によってはシリコーンオイルが塗膜表面よりブリードアウトしてしまうためシリコーンオイルが使用できないものもある。また、撥水撥油剤としてパーフルオロ基を有する含フッ素単量体とシリル基を含有する単量体との共重合体が検討されているが、共重合体の主骨格にフッ素原子を有していないため充分な耐候性が得られていない。
【0003】
また、ヒドロキシル基を含有するフッ素共重合体は、常温硬化が可能であるが、使用時直前に主剤と硬化剤の二液を混合しなければならない。これは、作業上簡便ではなく、可使時間にも注意を払う必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような問題点を解決する含フッ素共重合体を提供すること、つまり長期における撥水撥油性、繰り返しの汚染除去性に優れ、一液で光あるいは熱で硬化可能な新規な二重結合含有含フッ素共重合体とその製造方法を提供し、さらにそれらを主成分とするフッ素系塗料、ワニス等を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記のような問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、フルオロオレフィンと一般式(1)、(2)、(3)及び(4)の内から選択される一種以上の有機珪素化合物と一般式(5)で示されるヒドロキシル基含有不飽和エーテルとを必須の構成成分としたヒドロキシル基含有含フッ素共重合体〔A〕と、不飽和イソシアネート〔B〕との反応によって、含フッ素共重合体中に二重結合を導入することにより製造される新規二重結合含有含フッ素共重合体が、長期における撥水撥油性、繰り返しの汚染除去性に優れることを見出した。
【0006】
【化6】
【0007】
(ここで、R1、R2及びR3はそれぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、フェニル基、−CF3、−C2H4CF3、−C(CH3)3または−OSi(CH3)3の内のいずれかを示す。R1、R2及びR3はそれぞれ、同一または異なっていてもよい。)
【0008】
【化7】
【0009】
【化8】
【0010】
(ここで、R4は水素原子またはメチル基を示し、R5は−CO−O−、−O−、あるいは−CH=CH−CH2−O−CH2−CH=CH−のいずれかを示し、更に、R6は水素原子あるいは炭素数1〜6のアルキル基を示す。nは0〜10の整数を、mは0〜200の整数を示す。)
【0011】
【化9】
【0012】
(ここで、R7は水素原子またはメチル基を示し、R8、R9及びR10はそれぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、または−OSi(CH3)3の内のいずれかを示す。R8、R9及びR10はそれぞれ、同一または異なっていてもよい。pは0〜10の整数を示す。)
【0013】
【化10】
【0014】
(ここで、R11は炭素数1〜6のアルキレン基あるいはシクロヘキシル基を示す。rは0〜10の整数を示す。)
すなわち、本発明は、重合単位として、フルオロオレフィンを15〜85モル%、一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で示される有機珪素化合物を0.001〜30モル%、一般式(5)で示されるヒドロキシル基含有不飽和エーテルを1〜50モル%とを必須の構成成分とし、必要に応じて任意の他の共重合性単量体との共重合により得られるヒドロキシル基含有含フッ素共重合体〔A〕と、不飽和イソシアネート〔B〕との反応により生成され、長期における撥水撥油性、繰り返しの汚染除去性、耐薬品性、耐候性に優れる新規な二重結合含有含フッ素共重合体に関するものである。
【0015】
また、本発明は、上記重合単位に加えてヒドロキシル基含有含フッ素共重合体〔A〕がアルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルの内から選択された一種以上の重合単位を含み構成される含フッ素共重合体と、不飽和イソシアネート〔B〕との反応により生成されることを特徴とする二重結合含有含フッ素共重合体に関するものである。
【0016】
本発明のヒドロキシル基含有含フッ素共重合体〔A〕において、フルオロオレフィンとしては、分子中に一つ以上のフッ素原子を有するオレフィンであって、例えばフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等が好適である。これらのフルオロオレフィンは、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合せてもよい。
【0017】
また、一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で示される有機珪素化合物の具体例としては、ビニルペンタメチルジシロキサン、ビニルフェニルジメチルシラン、ビニルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、ビニルトリエチルシラン、ビニル(トリフルオロメチル)ジメチルシラン、ビニル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメチルシラン、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ビニル−t−ブチルジメチルシラン、ビニルジエチルメチルシラン、(3−アクロキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリロキシメチルトリメチルシラン、片末端がメタクリル変性された反応性シリコーンオイル、片末端がアクリル変性された反応性シリコーンオイル等が好適である。これらの有機珪素化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合せてもよい。これらの有機珪素化合物の分子量は、100〜6000が好ましい。
【0018】
また、一般式(5)で示されるヒドロキシル基含有不飽和エーテルの具体例としては、ヒドロキシメチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、3−アリルオキシ−1,2プロパンジオール、グリセロールα−モノアリルエーテル等が好適である。これらのヒドロキシル基含有不飽和エーテルは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せてもよい。
【0019】
さらに、アルキルビニルエーテルの具体例としては、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0020】
また、アルキルアリルエーテルの具体例としては、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、n−プロピルアリルエーテル等が挙げられる。
【0021】
また、アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル等が挙げられる。
【0022】
また、メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
【0023】
本発明のヒドロキシル基含有含フッ素共重合体〔A〕は、長期における撥水撥油性、繰り返しの汚染除去性、耐薬品性、耐候性に優れた塗膜を形成することが出来るが、さらにこれらの単位に加えて、使用目的などに応じて20モル%を超えない範囲で他の共重合可能な単量体単位を含むこともできる。
【0024】
該共重合可能な単量体として、例えばエチレン、プロピレン等のオレフィン類や、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類や、さらに酢酸ビニル、n−酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類が挙げられる。
【0025】
当該ヒドロキシル基含有含フッ素共重合体〔A〕において重合単位フルオロオレフィンが15モル%より少ない場合には、塗料ベースとして使用した場合に、十分な耐汚染性が得られず好ましくない。また85モル%より多い場合には各種溶剤に対する溶解性が低下し好ましくない。好ましくは30〜80モル%である。
【0026】
また、一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で示される有機珪素化合物の割合が0.001モル%より少ない場合には、長期における十分な撥水撥油性が得られず好ましくない。また50モル%より多い場合には十分な耐薬品性、耐候性が得られず好ましくない。好ましくは、0.001〜30モル%、より好ましくは0.01〜30モル%である。
【0027】
また、一般式(5)で示されるヒドロキシル基含有不飽和エーテルが1モル%より少ない場合には、二重結合量が低下し充分な硬化が起こらず、硬化塗膜の耐薬品性、耐溶剤性が低下し好ましくない。また50モル%より多い場合には、含フッ素共重合体中のフッ素含有量が減少し、十分な耐薬品性、耐候性が得られず好ましくない。
【0028】
当該ヒドロキシル基含フッ素共重合体〔A〕は、所定割合の単量体混合物を重合開始剤を用いて共重合させることにより製造することができる。
【0029】
ヒドロキシル基含有含フッ素共重合体〔A〕を製造するための重合開始剤としては、重合形式や所望に応じて用いられる溶媒の種類に応じて、油溶性のものあるいは水溶性のものが適宜用いられる。
【0030】
油溶性開始剤としては、例えばt−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル型過酸化物、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート等のジアルキルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が用いられる。
【0031】
また、水溶性開始剤としては、例えば過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、あるいはこれらと亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤との組み合わせからなるレドックス開始剤、さらには、これらに少量の鉄、第一鉄塩、硝酸銀等を共存させた無機系開始剤やコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイド、モノコハク酸パーオキサイド等の二塩基酸塩の有機系開始剤等が用いられる。
【0032】
これらの重合開始剤の使用量は、その種類、共重合反応条件等に応じて適宜選ばれるが、通常使用する単量体全量に対して、0.005〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の範囲で選ばれる。
【0033】
また、ヒドロキシル基含有含フッ素共重合体〔A〕を製造するための重合方法については特に制限はなく、例えば塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等を用いることが出来るが、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、キシレン等の芳香族炭化水素類、t−ブタノール等のアルコール類、フッ素原子を一つ以上有するハロゲン化飽和炭化水素類等を溶媒とする溶液重合法や水性溶媒中での乳化重合法が好ましい。
【0034】
本発明のヒドロキシル基含有含フッ素共重合体〔A〕を溶液重合法により得るための溶媒として、特に好ましくは酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエン、メチルエチルケトンが挙げられる。水性溶媒中で共重合させる場合には、通常分散安定剤として懸濁剤や乳化剤を用い、かつ塩基性緩衝剤を添加して、重合中の反応液のpH値を4以上、好ましくは6以上にすることが望ましい。
【0035】
該それぞれの共重合反応における反応温度は、通常−30℃〜150℃での範囲内で重合開始剤や重合媒体の種類に応じて適宜選ばれる。例えば溶媒中で共重合を行う場合には、通常0℃〜100℃、好ましくは10℃〜90℃の範囲で選ばれる。また、反応圧力については特に制限はないが、通常0.1〜100kg/cm2、好ましくは1〜50kg/cm2の範囲で選ばれる。さらに、該共重合反応は、適当な連鎖移動剤を添加して行うことができる。
【0036】
ヒドロキシル基含有含フッ素共重合体〔A〕と不飽和イソシアネート〔B〕との反応は、特に限定されるものではないが、ヒドロキシル基含有フッ素共重合体〔A〕を溶媒に溶解した溶液に、不飽和イソシアネート〔B〕を滴下しながら加え、攪拌下で行うことが好ましい。
【0037】
ヒドロキシル基含有含フッ素共重合体〔A〕と不飽和イソシアネート〔B〕との反応割合は、イソシアネート基/ヒドロキシル基の比で、0.1〜1の範囲で選ばれる。
【0038】
また、イソシアネート基/ヒドロキシル基の比が0.1より小さい場合には、二重結合量が低下し充分な硬化が起こらず、硬化塗膜の耐薬品性、耐溶剤性が低下し好ましくない。またその比が1より大きい場合には、未反応の不飽和イソシアネートが残存し、塗膜特性を低下させるおそれが生じる。
【0039】
不飽和イソシアネートの具体例としては、2−イソシアネートエチルメタクリレート、2−イソシアネートエチルアクリレート、4−イソシアネートブチルメタクリレート、4−イソシアネートブチルアクリレート、不飽和モノアルコール1モルとジイソシアネート化合物1モルとの反応生成物、不飽和モノアルコール2モルとトリイソシアネート化合物1モルとの反応生成物等が挙げられる。
不飽和モノアルコールの具体例としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール等が挙げられる。
【0040】
また、ジイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。トリイソシアネート化合物の具体例としては、イソシアヌレート結合HDI、イソシアヌレート結合IPDI、TMP変性HDI、TMP変性IPDI等が挙げられる。
【0041】
この時の反応温度としては、10〜130℃、好ましくは25〜85℃の範囲で選ばれる。また、10℃より低い場合には反応が充分に進行せず、130℃より高い場合には反応時にゲル化が生じ易くなるので好ましくない。
【0042】
また、反応に使用する溶媒は、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、キシレン等の芳香族炭化水素類等が好ましい。不飽和イソシアネートを使用しているために、水やアルコール類のようなヒドロキシル基を有する溶媒を使用すると、ヒドロキシル基含有含フッ素共重合体と不飽和イソシアネートとの反応が進行しないため、これらのヒドロキシル基含有溶媒は好ましくない。
【0043】
また、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート等の有機錫化合物を使用することが好ましい。
【0044】
本発明の二重結合含有含フッ素共重合体は、光照射により硬化可能であるため短時間で硬化を完了させることが出来る。従って、あまり熱をかけられないプラスチック等の基材へのコーティングには非常に有用である。また、ヒドロキシル基含有フッ素共重合体を常温硬化させようとする場合には、使用時に硬化剤を混合しなければならず、作業上簡便ではない。それに比べ、本発明の二重結合含有含フッ素共重合体は一液であり、硬化剤を混合することなく使用できるため作業上非常に有用である。
【0045】
かかる方法により得られた二重結合含有含フッ素共重合体は、光照射あるいは熱によって硬化可能である。
【0046】
光硬化開始剤としては、ベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モンフォリノプロパン−1,2−ベンジル−2ジメチルアミノ−1−(4−モルフェリノフェニル)−ブタノン−1,2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等が用いられる。
【0047】
また熱硬化開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が用いられる。
【0048】
なお、本発明の二重結合含有含フッ素共重合体を主成分とする硬化性フッ素樹脂塗料を製造する場合には種々の溶媒が使用可能であり、例えばキシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、市販の各種シンナー類等が挙げられるが、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエンが特に好ましい。また、必要に応じて市販の光硬化性樹脂等を添加することが可能で、これら他樹脂に対して本発明の二重結合含有含フッ素共重合体を塗料中に5〜80重量%、特に20〜60重量%含むように調節して使用するのが好ましい。
【0049】
本発明の二重結合含有含フッ素共重合体と溶媒との混合は、ボールミル、ペイントシェーカー、サンドミル、三本ロールミル、ニーダー等の通常の塗料化に用いられる種々の機器を用いて行うことが出来る。この際、必要に応じて顔料、分散安定剤、粘度調節剤、レベリング剤等を添加することもできる。
【0050】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0051】
【実施例1】
内容積1Lのステンレス製攪拌機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、フッ化ビニリデン(以下VDFと略す)96g、テトラフルオロエチレン(以下TFEと略す)84g、エチルビニルエーテル(以下EVEと略す)10.8g、ヒドロキシブチルビニルエーテル(以下HBVEと略す)41.8g、ビニルジエチルメチルシラン19.2g、酢酸ブチル400g、およびt−ブチルパーオキシピバレート1.3gを入れ、攪拌しながら内温を60℃に昇温した。その後、攪拌しながら反応を続け、20時間攪拌を停止し、反応を終了した。得られた共重合体を減圧乾燥により単離した。共重合体収量は234g、共重合体収率は93%であった。得られたヒドロキシル基含有含フッ素共重合体(以下〔A−1〕とする)の無水酢酸によるアセチル化法によって測定した水酸基価は86mgKOH/g樹脂、燃焼法によるフッ素含有量は48wt%であった。
【0052】
次に暗所中で攪拌機、還流コンデンサー、滴下漏斗、塩化カルシウム塔をつけた1L丸底三つ口フラスコに、得られた〔A−1〕の30%酢酸ブチル溶液600gおよびハイドロキノンモノメチルエーテル0.18gを入れた。温度を40℃に保ち攪拌しながら、滴下漏斗にて2−イソシアネートエチルメタクリレート(以下〔B−1〕とする)42.8g、酢酸ブチル18.3gを入れた混合溶液を少しずつ滴下した。滴下終了後、2時間攪拌を続け、二重結合含有含フッ素共重合体を得た。
【0053】
上記反応溶液の赤外吸収スペクトルを測定した。その結果、2,260cm-1のイソシアネート基の吸収が完全に消失したことを確認した。これにより、〔A−1〕のヒドロキシル基と〔B−1〕のイソシアネート基の反応が進行したことが確認された。
【0054】
得られた二重結合含有含フッ素共重合体のGPCで測定した数平均分子量は2.0×104であった。
【0055】
またこの共重合体の硬化塗膜の塗膜特性を次の方法で調べた。結果を〔表1〕に示す。
〔基材との密着性〕 上記30%酢酸ブチル溶液67gとEbecry1810〔4官能ポリエステルアクリレート:ダイセル・ユーシービー(株)製品〕80gと2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モンフォリノプロパノン−1〔チバガイギー(株)製〕0.3gを加え、JISG−3141鋼板上にアプリケーターにより塗布し、80℃で3分間乾燥した後、空気中で250mJ/cm2 の紫外線を照射した。得られた厚さ25μmの試験片を、JIS−K5400 6.15(ゴバン目セロテープ(登録商標)試験)により測定した。
〔鉛筆硬度〕 JIS−K5400 6.14(鉛筆引っかき試験)による。
〔耐酸性〕 10%HCl溶液による24時間スポットテスト後の塗膜外観を目視観察する。
【0056】
◎:異常なし
○:ほとんど変化なし
△:やや侵される
×:侵される
〔耐アルカリ性〕 10%NaOH溶液による24時間スポットテスト後の塗膜外観を目視観察する。
【0057】
◎:異常なし
○:ほとんど変化なし
△:やや侵される
×:侵される
〔油性マジックはじき性〕 油性マジック(登録商標)(黒・赤・マジックインキ商品名)により塗膜表面を塗りつぶし、はじき性を評価する。さらにこの塗膜を室温で1時間放置後、乾拭きにより除去する。これを20回繰り返した後の、塗膜表面のはじき性を評価する。
【0058】
◎:良くはじく
○:はじく
△:ややはじく
×:全くはじかない
〔油性マジック繰り返し除去性〕 油性マジック(黒・赤・マジックインキ商品名)により塗膜表面を塗りつぶし、室温で1時間放置後乾拭きにより除去する。さらにこれを20回繰り返した後の、塗膜表面の除去性を評価する。
【0059】
◎:全く跡が付かない
○:ごくわずか跡が付く
△:かなり跡が付く
×:完全に跡が残る
〔撥水性〕 水の接触角(単位:度)で評価した。
【0060】
【実施例2】
内容積1Lのステンレス製攪拌機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、VDF96g、TFE84g、アクリル酸メチル(以下MAと略す)7.8g、EVE8.4g、HBVE52.2g、下記構造式で示されるメタクリル変性シリコーンオイル(分子量約3500)10.5g、トルエン400g、およびt−ブチルパーオキシピバレート1.3gを入れ、攪拌しながら内温を60℃に昇温した。
【0061】
【化11】
【0062】
その後、攪拌しながら反応を続け、20時間後攪拌を停止し、反応を終了した。
【0063】
得られた共重合体を減圧乾燥により単離した。共重合体収量は242g、共重合体収率は94%であった。得られたヒドロキシル基含有含フッ素共重合体(以下〔A−2〕とする)の無水酢酸によるアセチル化法によって測定した水酸基価は104mgKOH/g樹脂、燃焼法によるフッ素含有量は47wt%であった。
【0064】
次に暗所中で攪拌機、還流コンデンサー、滴下漏斗、塩化カルシウム塔をつけた1L丸底三つ口フラスコに、〔A−2〕の30%酢酸ブチル溶液600gおよびハイドロキノンモノメチルエーテル0.18gを入れた。温度を40℃に保ち攪拌しながら、滴下漏斗にて〔B−1〕51.8g、トルエン22.2gを入れた混合溶液を少しずつ滴下した。滴下終了後、2時間攪拌を続け、二重結合含有含フッ素共重合体を得た。
【0065】
上記反応溶液の赤外吸収スペクトルを測定し、〔A−2〕のヒドロキシル基と〔B−1〕のイソシアネート基の反応が進行したことを確認した。
【0066】
得られた二重結合含有含フッ素共重合体のGPCで測定した数平均分子量は1.9×104であった。
【0067】
またこの共重合体の硬化塗膜特性を実施例1と同様に調べた。結果を〔表1〕に示す。
【0068】
【実施例3〜7】
〔表1〕に示す単量体を用いて前記実施例の操作に準拠して共重合体を製造し、これらの特性を同様に調べた。結果を〔表1〕に示す。
【0069】
【比較例1】
内容積1Lのステンレス製攪拌機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、VDF96g、TFE84g、EVE15.1g、HBVE52.2g、酢酸ブチル400g、およびt−ブチルパーオキシピバレート1.2gを入れ、攪拌しながら内温を60℃に昇温した。その後、攪拌しながら反応を続け、20時間攪拌を停止し、反応を終了した。得られた共重合体を減圧乾燥により単離した。共重合体収量は230g、共重合体収率は93%であった。得られたヒドロキシル基含有含フッ素共重合体(以下〔A−8〕とする)の無水酢酸によるアセチル化法によって測定した水酸基価は110mgKOH/g樹脂、燃焼法によるフッ素含有量は49wt%であった。
【0070】
次に暗所中で攪拌機、還流コンデンサー、滴下漏斗、塩化カルシウム塔をつけた1L丸底三つ口フラスコに、〔A−8〕の30%酢酸ブチル溶液600gおよびハイドロキノンモノメチルエーテル0.18gを入れた。温度を40℃に保ち攪拌しながら、滴下漏斗にて〔B−1〕54.7g、酢酸ブチル23.4gを入れた混合溶液を少しずつ滴下した。滴下終了後、2時間攪拌を続け、二重結合含有含フッ素共重合体を得た。
【0071】
上記反応溶液の赤外吸収スペクトルを測定した。その結果、2,260cm-1のイソシアネート基の吸収が完全に消失したことを確認した。これにより、〔A−8〕のヒドロキシル基と〔B−1〕のイソシアネート基の反応が進行したことが確認された。
【0072】
得られた二重結合含有含フッ素共重合体のGPCで測定した数平均分子量は1.9×104であった。
【0073】
またこの共重合体の硬化塗膜の塗膜特性を実施例1と同様に調べた。結果を〔表1〕に示す。
【0074】
【比較例2】
比較例1で調合した塗料用組成物に、該組成物の固形分に対し5%のTSF410〔東芝シリコーン(株)製〕を加え、前記比較例と同様に試験片を作成し、これらの特性を調べた。結果を〔表1〕に示す。
【0075】
【表1】
Claims (2)
- フルオロオレフィンが15〜85モル%、下記の一般式(1)、(2)、(3)及び(4)の内から選択される一種以上の有機珪素化合物が0.001〜30モル%、及び一般式(5)で示されるヒドロキシル基含有不飽和エーテルが1〜50モル%を重合単位として含み構成されるヒドロキシル基含有含フッ素共重合体〔A〕と不飽和イソシアネート〔B〕とをイソシアネート基/ヒドロキシル基の比が0.1〜1の範囲で反応させることを特徴とする二重結合含有含フッ素共重合体の製造方法。
- ヒドロキシル基含有含フッ素共重合体〔A〕が、さらにアルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルの内から選択された一種以上の重合単位を、残部として含み構成されることを特徴とする請求項1記載の二重結合含有含フッ素共重合体の製造方法。
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