JP4067239B2 - 建設車両用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不整地走行用の建設車両用空気入りラジアルタイヤに関し、更に詳しくは偏平率85%以下のローダ用タイヤ(JATMA:建設車両用タイヤ第3種分類)における最大幅ベルト層の幅方向端部に生じるエッジセパレーション故障を抑制することを可能にした建設車両用空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の建設車両用空気入りラジアルタイヤは、図2に示すように、左右一対のビード部1、1間にカーカス層2を装架し、トレッド部3におけるカーカス層2の外周側に2層以上の互いに交差するスチールコード層からなるベルト層4を設けた構造になっている。図2中、CLはタイヤ赤道線を表わす。このような建設車両用空気入りラジアルタイヤは、低速高負荷荷重の条件において使用されるために、特に偏平率が85%以下である場合に、最大幅ベルト層4aの幅方向端部にエッジセパレーション故障を生じやすい。
【0003】
建設車両用タイヤの最大幅ベルト層4aの幅方向端部に生じるエッジセパレーション故障は、高速走行用タイヤに見られるような内圧力による層間剪断歪みに起因する交差プライ層間のセパレーションとは異なるものである。即ち、建設車両用タイヤでは、図4に示すように、不整地走行時に路面から受ける大きな接地反力Pcと内圧力Piとが両面から挟むようにトレッド内部に作用するため、トレッドゴムはショルダー部では外側へ張り出すような挙動Mをとり、最大幅ベルト層4aの端末付近を境にトレッド部3が剪断変形を起こす。その結果、図5に示すように、最大幅ベルト層4aのコード端末にはトレッドショルダー外側への引っ張り応力Tがかかり、接着処理されていないコード切断面と周辺ゴムとの非接着面から亀裂が成長し、これがエッジセパレーション故障へと進展するのである。
【0004】
そこで、従来からエッジセパレーション故障を抑制するためにベルト層の両端部を覆うように緩衝ゴム層を配置することが行われているが、このような緩衝ゴム層では応力緩和作用が不十分であり、しかも発熱の点で不利であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、最大幅ベルト層の幅方向端部に生じるエッジセパレーション故障を抑制し、耐久性の向上を可能にした建設車両用空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも2層の互いに交差するスチールコード層からなるベルト層を備えた扁平率85%以下の建設車両用空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層のうちで最大幅ベルト層のタイヤ周方向に対するコード角度を、該最大幅ベルト層に隣接するベルト層との交差領域全域で18°〜24°にすると共に、隣接するベルト層に交差していない該最大幅ベルト層のタイヤ幅方向端末までの自由端領域全域で28°〜37°にし、最大幅ベルト層のスチールコードが交差領域から自由端領域まで連続して延在することを特徴とする。
【0007】
このように最大幅ベルト層のタイヤ周方向に対するコード角度を定めたため、最大幅ベルト層の幅方向端部に生じるエッジセパレーション故障を抑制することが可能となる。
【0008】
ここで、交差領域とは、互いに隣接する2つのベルト層において一方のベルト層のコードと他方のベルト層のコードとが交差する領域をいい、換言すれば、両ベルト層が互いに接する領域をいう。また、自由端領域とは、最大幅ベルト層において隣接するベルト層に交差していない領域であってタイヤ幅方向端末までの領域をいい、隣接するベルト層が1層の場合にはその交差領域の幅方向端から最大幅ベルト層の近い方のタイヤ幅方向端末までの領域であり(最大幅ベルト層には、タイヤ幅方向端末が左右両側にそれぞれ1つづつ全部で2つあるので、そのうち交差領域の幅方向端から近い方のタイヤ幅方向端末までの領域、以下同じ)、一方、隣接するベルト層が最大幅ベルト層を挟んで両側に1層づつ2層ある場合にはこれら2層のベルト層のうち幅広の方のベルト層の交差領域の幅方向端から最大幅ベルト層の近い方のタイヤ幅方向端末までの領域である。
【0009】
図4では、隣接するベルト層が最大幅ベルト層4aを挟んで両側に1層づつ2層あり、カーカス層2側の幅広の方のベルト層の交差領域Rの幅方向端から最大幅ベルト層4aの近い方のタイヤ幅方向端末までが自由端領域Sとなっている。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の扁平率85%以下の建設車両用空気入りラジアルタイヤは、左右のビード部間にタイヤ径方向に延在するスチールコードを配列したカーカス層を延設し、カーカス層の外周側に少なくとも2層のベルト層を配置している。図1に示すように、スチールコード層からなるベルト層のうちで、カーカス層2に隣接する1層目のベルト層である最大幅ベルト層4aのタイヤ周方向EE’に対するコード角度を、最大幅ベルト層4aに隣接するベルト層との交差領域Rでは18°〜24°(β)にすると共に、隣接するベルト層に交差していない領域、すなわち交差領域Rの幅方向端から最大幅ベルト層4aの近い方のタイヤ幅方向端末までの自由端領域Sでは28°〜37°(α)にしている。最大幅ベルト4aのスチールコードは交差領域Rから自由端領域Sまで連続して延在している。
【0011】
空気入りラジアルタイヤでは、一般に、タイヤ周方向に対するコード角度がほぼ90°のカーカス層を一方のビードから他方のビードに亘って装架してタイヤ骨格を形成し、このカーカス層の外周側に、タイヤ1周に亘ってベルト層を配置してカーカス層にいわばタガを嵌め、カーカス層がバラバラになるのを防止している(いわゆるタガ効果)。このタガ効果をうまく発揮させるために、カーカス層の外周側にはプライ間でコードが互いに交差した少なくとも2層のベルト層が配置される。
【0012】
そこで、本発明では、交差領域Rでの面内せん断剛性を確保しタガ効果の向上を考慮して、交差領域R全域において、最大幅ベルト層4aのタイヤ周方向EE’に対するコード角度βを18°〜24°にしている(最大幅ベルト層4aに隣接するベルト層のタイヤ周方向EE’に対するコード角度は、同じく18°〜24°)。βが18°未満では、周剛性が高くなり、タガ効果が確保されるものの周方向断面曲げ剛性が高くなりすぎ、不整地走行で突起等にトレッドが乗り上げた時の衝撃をトレッドゴムが強く受け、トレッドゴムがカットを受け易い(エンベロープ性能の低下)。一方、24°を超えるとタガ効果が低下し、タイヤ外周成長によるベルト廻りの歪み増加によりベルト層間剥離故障に繋がることになる。
【0013】
一方、前述したように、最大幅ベルト層4aのコード端末には、図5に示すようにトレッドショルダー外側への引っ張り応力Tがかかる。また、最大幅ベルト層4aのコード端末では、不整地走行に際してタイヤが地面の突起に乗り上げて曲げ変形を受ける。そこで、本発明では、このような引っ張り応力Tおよび曲げ変形力を緩和するために、交差領域Rの幅方向端から最大幅ベルト層4aの近い方のタイヤ幅方向端末までの自由端領域S全域において、最大幅ベルト層4aのタイヤ周方向EE’に対するコード角度αを28°〜37°にしている。
【0014】
すなわち、最大幅ベルト層4aのタイヤ幅方向端末が引っ張り応力Tおよび曲げ変形力の影響をできるだけ避けるためには、最大幅ベルト層4aのタイヤ幅方向端末におけるコード方向がなるべくタイヤ周方向EE’に対して90°の方向に近づくのがよい。このように90°の方向に近づくと、引っ張り応力Tおよび曲げ変形力による最大幅ベルト層4aのタイヤ幅方向端末のせん断変形に、そのタイヤ幅方向端末が追随し易くなるからである。しかし、不整地走行に伴う岩石等へのタイヤトレッド部分の乗り上げは、ベルト層のコードに対しても強制的なタイヤ断面方向曲げ変形を強いるため、αが37°を超えて大きくなると、最大幅ベルト層4aの端末に応力集中がより多く掛かりエッジセパレーション故障が発生し易い。一方、αが28°未満では、トレッド内部に作用する接地反力Pcと内圧力Piとによりトレッドゴムがトレッドショルダー外側へ張り出そうとする挙動Mによる最大幅ベルト層4aの端末近傍での引っ張り応力Tによるベルトコード端末部と周辺ゴムとの相対的動きによる歪み(非接着端が開こうとする動き)の抑制効果がなくなってしまう。このため、本発明では、αを28°〜37°にしたのである。
【0015】
交差領域Rの幅は、トレッド展開幅の50〜75%であるとよい。ここで、トレッド展開幅とは、1998年のJATMA YEAR BOOKに示される最大荷重空気圧とそれに対応する荷重条件下でのタイヤ接地幅をいう。
【0016】
ところで、スチールコード層からなるベルト層は、スチールコードを並列に並べた状態で両面からコートゴム(ゴムシート)で挟んで圧延してなるシート材料を、所定の角度・幅に切断して形成されるため、製造工程上、一つのベルト層は全体に亘って一つのコード角度から構成されるのが一般的である。これに対し、本発明における最大幅ベルト層のように同一ベルト層内で異なるコード角度配置構造を有するベルト層は、前もって所定の角度・幅に切断されたシート材料の幅方向端部を型付けするか、又は前もって所定の長さ・形状に型付けしたスチールコードを並べた後にその両面からゴムシートで挟み込む等により製造することができる。
【0017】
つぎに、図3に従来における最大幅ベルト層を示す。図3から判るように、最大幅ベルト層4aにおいて、交差領域Rにおけるタイヤ周方向EE’に対するコード角度βと自由端領域Sにおけるタイヤ周方向EE’に対するコード角度αとは同じである。
【0018】
【実施例】
以下の構成のタイヤについて、室内回転ドラム試験を実施し、耐久性の評価を行った。
【0019】
評価タイヤ共通項
第1層(カーカス側最内層)については、下記の表1に諸元を示す。
【0020】
【表1】
【0021】
耐久性評価条件
リム:25×17.0(2.0)
空気圧:400kPa(1998年JATMA最大空気圧の80%)
荷重:111.8kN(1998年JATMA最大負荷能力の120%の荷重)
速度:7km/h
試験条件:クリート(突起)付き回転ドラム試験機にてトレッドショルダー部に対して不整地走行と同じように強制変形と衝撃を与えてタイヤが破壊するまで走行させ、その走行距離を測定した。
【0022】
上記耐久性評価の結果を表2に示した。評価結果は従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐久性が優れている。
【0023】
内部発熱性評価条件
リム:25×17.0(2.0)
空気圧:500kPa(1998年JATMA最大空気圧の100%)
荷重:92.2kN(1998年JATMA最大負荷荷重の100%)
速度:5、7、9km/hとステップアップ
試験条件:速度ステップアップによるタイヤ内部発熱最大温度を測定することにより、タイヤ内部限界温度(90℃)に達する時の速度を測定、比較評価した。
【0024】
この結果を従来例1を100とする指数で示す。指数値の大きい方が内部温度の上昇が小さく、内部発熱性に優れている。
【0025】
【表2】
【0026】
表2から明らかなように、実施例1は従来例1〜3に比べて内部発熱性を損なうことなく耐久性が向上している。なお、従来例3は、耐久性が向上しているものの内部発熱性がわるい。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも2層の互いに交差するスチールコード層からなるベルト層を備えた建設車両用空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層のうちで最大幅ベルト層のタイヤ周方向に対するコード角度を、該最大幅ベルト層に隣接するベルト層との交差領域では18°〜24°にすると共に、隣接するベルト層に交差していない該最大幅ベルト層のタイヤ幅方向端末までの自由端領域では28°〜37°にしたことにより、不整地走行時に最大幅ベルト層のコード端末に生じるトレッドショルダー外側への引っ張り応力および不整地走行に際してタイヤが地面の突起に乗り上げて受ける曲げ変形力を緩和することが可能になるので、低速高負荷荷重の使用条件で最大幅ベルト層に生じるエッジセパレーション故障を効果的に抑制し、耐久性を向上させることができる。したがって、本発明は、トレッド部の耐カット性が特に要求される、非常にゴムモジュラスの高いトレッドゴムを用いたローダ用タイヤに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の建設車両用空気入りラジアルタイヤにおける最大幅ベルト層の一例を示す平面視説明図である。
【図2】 従来の建設車両用空気入りラジアルタイヤの一例を示す子午線方向断面図である。
【図3】 従来の建設車両用空気入りラジアルタイヤにおける最大幅ベルト層の一例を示す平面視説明図である。
【図4】 従来の建設車両用空気入りラジアルタイヤの一例の不整地走行状態を示す子午線方向断面図である。
【図5】 図4の状態における最大幅ベルト層のコード端末に対する引っ張り応力の分布図である。
【符号の説明】
1 ビード部
2 カーカス層
3 トレッド部
4 ベルト層
4a 最大幅ベルト層
S 自由端領域
R 交差領域
Claims (3)
- 少なくとも2層の互いに交差するスチールコード層からなるベルト層を備えた扁平率85%以下の建設車両用空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層のうちで最大幅ベルト層のタイヤ周方向に対するコード角度を、該最大幅ベルト層に隣接するベルト層との交差領域全域で18°〜24°にすると共に、隣接するベルト層に交差していない該最大幅ベルト層のタイヤ幅方向端末までの自由端領域全域で28°〜37°にし、最大幅ベルト層のスチールコードが交差領域から自由端領域まで連続して延在する建設車両用空気入りラジアルタイヤ。
- 前記交差領域の幅は、トレッド展開幅の50〜75%である請求項1記載の建設車両用空気入りラジアルタイヤ。
- 左右のビード部間にタイヤ径方向に延在するスチールコードを配列したカーカス層を延設し、該カーカス層の外周側に前記少なくとも2層のベルト層を配置し、最大幅ベルト層がカーカス層に隣接する1層目のベルト層である請求項1または2記載の建設車両用空気入りラジアルタイヤ。
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