JP4066732B2 - バッテリ残容量推定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バッテリ残容量推定方法に係り、特に、アイドルストップ・スタート機能を有する車両に搭載されたバッテリの残容量をエンジン始動時に算出されるバッテリの内部抵抗と、バッテリに流れる積算電流との組合せにより推定するバッテリ残容量推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両に搭載された鉛電池等のバッテリは、走行中、常にオルタネータによりフロート充電され、また負荷もランプ類などに限られていたため、深い放電はされず、ほぼ常時満充電状態付近に保持されていた。しかし、近年環境意識の高まりから、車両からの二酸化炭素ガスの排出を低減する必要が生じ、特に大型バス、トラックなどの車両側では信号待ちなどの停止時にエンジンを停止するアイドルストップ機能を有したシステム車が増加している。
【0003】
アイドルストップ機能を有したシステム車では、エンジン停止中のエアコン、カーステレオなどの負荷は、すべてバッテリからの電力で賄われる。このため、従来に比べバッテリの深い放電が増加し、バッテリの残容量が小さくなる場合の増加が予想される。バッテリの出力はバッテリの残容量に依存するため、エンジン停止中にバッテリの残容量が小さくなると、エンジンを始動する充分な出力が得られなくなり、エンジン停止後再始動(アイドルストップスタート、ISS)することができなくなるおそれがある。従って、ISS可能な状態を保つために、バッテリの残容量を推定してエンジン始動に必要な出力の有無を監視し、エンジン始動に必要な出力がある場合には、アイドルストップ可能、エンジン始動に必要な出力がない場合には、アイドルストップを止めバッテリを充電するなどの信号を車両側のコンピュータに送信する必要がある。
【0004】
一方、バッテリの残容量を推定する方法として、電池の初期の充電状態(SOC)に対して、充放電電流の積分値を加えていく方法が知られている。また、例えば、特開平第6−59003号及び特開平第9−96665号公報には、電気自動車などに搭載されたバッテリの電流、電圧波形から測定される電流−電圧特性と、予め電池特性を測定することによって作成されたバッテリの残容量及び電流−電圧特性テーブルの関係とを比較することでバッテリの残容量を推定する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報の技術では、充放電電気量の誤差を補正する処理がないため充放電電流の積分誤差が蓄積されると共に、電池の未使用状態での(駐車からエンジン始動までの)自己放電による電池の残容量の変化等もあり、電池の残容量を正確に推定することが難しい。また、電流−電圧特性テーブルを用いる方式においても、電池の履歴により、電圧が変化することで残容量を正確に推定することが困難であった。
【0006】
本発明は上記事案に鑑み、高精度にバッテリの残容量を推定可能なバッテリ残容量推定方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、アイドルストップ・スタート機能を有する車両に搭載されたバッテリの残容量をエンジン始動時に算出される前記バッテリの内部抵抗と、前記バッテリに流れる積算電流との組合せにより推定するバッテリ残容量推定方法であって、キーオン時の前記バッテリの開路電圧を測定して予め定められたバッテリの残容量と開路電圧との関係から前記バッテリの残容量QOCVを算出し、前記エンジン始動時の電流、電圧変化から前記バッテリの内部抵抗を算出して予め定められたバッテリの残容量と内部抵抗との関係から前記バッテリの残容量Qを算出し、前記残容量QOCV及び残容量Qの平均値から前記バッテリの残容量Qintを算出し、エンジン再始動時の電流、電圧変化から前記バッテリの内部抵抗を算出して前記バッテリの残容量と内部抵抗との関係から前記バッテリの残容量Qを算出し、前記エンジン再始動前に前記バッテリに流れた充放電電流を前記残容量Qint又は残容量Qに積算することで補正した補正残容量Qresを前記残容量Qに修正する、ステップを含む。
【0008】
発明では、キーオン時のバッテリの残容量QOCV及びエンジン始動時のバッテリの残容量Qの平均値からバッテリの残容量Qintが算出され、開路電圧及び内部抵抗のそれぞれの特性が残容量Qintに反映されるので、エンジン始動時に残容量Qintの精度を高めることができると共に、エンジン再始動時毎に補正残容量Qresが残容量Qに修正され、誤差の蓄積が防止されるので、高精度にバッテリの残容量を算出することができる。
【0010】
本発明において、予め定められたバッテリの温度と開路電圧との関係から、測定したバッテリの開路電圧を所定温度における開路電圧に補正すれば、バッテリの開路電圧の温度依存性を排除できるので、一層高精度にバッテリの残容量を算出することができる。また、エンジン始動時前に、残容量QOCVがバッテリのエンジン始動を許容する最小残容量Qminより大きいときにエンジン始動可能と判定するステップを更に含むようにしてもよい。
【0012】
また、本発明において、内部抵抗は、エンジン始動前又はエンジン再始動時前のバッテリの電圧とエンジン始動電流通電開始後又はエンジン再始動電流通電開始後所定時間経過時のバッテリの電圧との電圧差を、エンジン始動前又はエンジン再始動時前のバッテリの電流とエンジン始動電流通電開始後又はエンジン再始動電流通電開始後所定時間経過時のバッテリの電流との電流差でそれぞれ除して得ることが好ましい。また、所定時間がエンジン始動電流通電開始時又はエンジン再始動電流通電開始時から50msを超えると、バッテリに流れる電流及び電圧の誤差が大きくなるので、所定時間をエンジン始動電流通電開始時又はエンジン再始動電流通電開始時から50ms以内とすることが更に好ましい。更に、バッテリの温度を測定し予め定められたバッテリの温度と内部抵抗補正値との関係から、算出したバッテリの内部抵抗を所定温度における内部抵抗に補正すれば、バッテリの内部抵抗の温度依存性を排除できるので、より高精度にバッテリの残容量を算出することができる。また更に、エンジン再始動時前に、補正残容量Qresがバッテリのエンジン始動を許容する最小残容量Qminより大きいときにエンジン再始動可能と判定するステップを更に含むようにしてもよい。更に、最小残容量Qminは、エンジン始動用スタータの特性から決定される最低電圧値と要求電流値とから予め定められたバッテリのエンジン始動を許容する最大内部抵抗に対応してバッテリの残容量と内部抵抗との関係から設定されており、補正残容量Qresが最小残容量minよりも小さいときにエンジン再始動が不能と判定するようにしてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明を電池状態検知システムに適用した実施の形態について説明する。
【0014】
(構成)
図1に示すように、本実施形態の電池状態検知システム10は、鉛電池1の内部抵抗r、開回路電圧(OCV)、放電電圧等を測定乃至算出し鉛電池1の電池状態を検知してエンジン等の車両側の制御を行う車両制御システムの下位システムとして機能する。電池状態検知システム10は、中央演算処理装置として機能するCPU、電池状態検知システム10の基本制御プログラム及び後述するように種々の設定値等が格納されたROM、CPUのワークエリアとして働くとともにデータを一時的に記憶するRAM、A/Dコンバータ、車両制御システム11との通信を行うためのインタフェース、これらを接続するバス等を含んで構成されている。
【0015】
鉛電池1は容器となる角形の電槽を有しており、電槽の材質には成形性、電気的絶縁性、耐腐食性及び耐久性等の点で優れる、例えば、アクリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の高分子樹脂が用いられている。電槽の中央部の隔壁にはセンサ挿入孔が形成されている。センサ挿入孔にはサーミスタ等の温度センサ2が挿入されており、温度センサ2は接着剤でセンサ挿入孔内に固定されている。
【0016】
また、鉛電池1の電槽は、例えば、外周壁の内部を縦横に仕切る隔壁によって2行9列の合計18個のセル室に画定され、一体成形されたモノブロック電槽として構成されている。電槽内の各セル室には極板群(セル)がそれぞれ1組ずつ収容されており、電槽全体には合計18組の極板群が収容されている。各極板群は、未化成負極板6枚及び未化成正極板5枚がガラス繊維からなるリテーナ(セパレータ)を介して積層されており、化成(初充電)後の公称電圧(セル電圧)は2.0Vとされている。従って、鉛電池1の群電圧は36Vである。
【0017】
電槽の上部は、電槽の上部開口部を密閉するABS等の高分子樹脂製の上蓋に接着(又は溶着)されている。上蓋には、各セル室の中央に対応する位置に各セル室の内圧を所定値以下に制御するための制御弁が配設されていると共に、対角隅部に鉛電池1を電源として外部へ電力を供給するためのロッド状正極外部出力端子及び負極外部出力端子が立設されている。
【0018】
鉛電池1の正極外部出力端子は、イグニッションスイッチ(以下、IGNスイッチという。)5の中央端子に接続されている。IGNスイッチ5は、中央端子とは別に、OFF端子、ON/ACC端子及びSTART端子を有しており、中央端子とこれらOFF、ON/ACC及びSTART端子のいずれかとは、ロータリー式に切り替え接続が可能である。一方、鉛電池1の負極外部出力端子は、ホール素子等の電流センサ4を介してグランドに接続されている。電流センサ4は、ホール素子に流れる電流に応じて変化するホール電圧により電流を検出することが可能である。
【0019】
鉛電池1の正極、負極外部出力端子、温度センサ2の両端端子及び電流センサ4の出力端子は、それぞれ電池状態検知システム10内のA/Dコンバータに接続されている。このため、電池状態検知システム10のCPUは、鉛電池1の電圧、電流及び温度をデジタル値として取り込むことが可能である。
【0020】
IGNスイッチ5のON/ACC端子は、ランプ、ワイパー、ラジオ等の補機6の一端に接続されていると共に、レギュレータRG及び一方向への電流の流れを許容する整流素子Dを介してエンジン8の回転駆動力で発電する発電機(オルタネータ)7の一端に接続されている。なお、整流素子Dは、アノード側が発電機7の一端に、カソード側がレギュレータRGに接続されている。また、IGNスイッチ5のSTART端子は、エンジン始動用スタータ9の一端に接続されている。
【0021】
スタータ9の回転軸とエンジン8の回転軸との間にはスタータ9の回転力をエンジン8に伝達する図示を省略したギヤプーリや無端ベルトが介在しており、エンジン8の回転軸と発電機7の回転軸との間にはエンジン8の回転駆動力を発電機7に伝達する電動クラッチが介在している。このため、エンジン8が駆動しているときは、エンジン8及び発電機7間の電動クラッチを接続状態としてエンジン8の回転駆動力を発電機7に伝達する。なお、IGNスイッチ5がON/ACC位置にあり、発電機7が作動しているときは、鉛電池1は電池状態検知システム10で算出された鉛電池1の残容量Qres又は充電状態(SOC)に応じて充電される。
【0022】
車両制御システム11は、CPU、ROM、RAM、エンジン8を制御するエンジン制御部や電動クラッチを制御するクラッチ制御部、インターフェース等を有して構成されており、エンジン制御部はエンジン8に、クラッチ制御部は電動クラッチに接続されている。車両制御システム11は電池状態検知システム10と通信線で接続されており、両者は相互間で通信が可能である。また、補機6、発電機7、スタータ9の他端、電池状態検知システム10、車両制御システム11は、それぞれグランドに接続されている。なお、IGNスイッチ5のOFF端子はいずれにも接続されていない。
【0023】
(動作)
次に、フローチャートを参照して、本実施形態の電池状態検知システム10の動作について説明する。なお、電池状態検知システム10に電源が投入されると、初期設定処理において、ROMに格納された設定値等はRAMに展開され、図2に示す電池状態検知ルーチンが実行される。
【0024】
電池状態検知ルーチンでは、まず、ステップ102において電流センサ4に流れる電流値を取り込んで、鉛電池1に対して入出力する電気量(Ah)の積算(電流積算)を開始する。次にステップ104において、鉛電池1の初期残容量Qintを推定する初期残容量演算処理サブルーチンを実行する。
【0025】
図3に示すように、初期残容量演算処理サブルーチンでは、ステップ202で車両制御システム11からIGNスイッチ5がオン位置に位置した旨の通知があるまで待機し、通知があると、ステップ204において、鉛電池1の開回路電圧(OCV)及び温度(T)を取り込む。ステップ206では、ステップ204で取り込んだ開回路電圧を、温度25°Cにおける開回路電圧に温度補正し、温度補正後の開回路電圧から鉛電池1の残容量QOCVを推定する。すなわち、図6に示すように、RAMにはOCV−T補正値マップが展開されており、例えば、鉛電池1の温度が10°Cのときの開回路電圧補正値は、0°Cの開回路電圧補正値0.05(V)と25°Cの開回路電圧補正値0(V)とから比例計算により、(25−10)×0.05/25=0.03(V)として算出される。温度補正後の開回路電圧は、ステップ204で取り込んだ開回路電圧に補正値(0.03(V))を加えたものである。そして、ステップ208では、図7に示すように、OCV−Qresマップ上で温度補正後の開回路電圧に対応する鉛電池1の残容量QOCVを比例計算等を用いて取得する。
【0026】
次にステップ210において、ステップ208で取得した残容量QOCVよりスタータ9などの仕様(特性)から決定されるエンジン始動を許容する最小残存容量Qminが小さいか否かを判断することで、エンジン始動が可能か否かを判定する(図9参照)。
【0027】
このような最小残存容量Qminは、初期設定処理でRAMに展開されている。エンジン始動を許容する最低電圧値Vmin及び要求電流値Ireqはスタータ9などの仕様(特性)から決定されており、鉛電池1の開回路電圧OCV、最低電圧値Vmin、要求電流値Ireq及びエンジン始動を許容する鉛電池1の最大内部抵抗値rmaxの間には、最低電圧値Vmin=開回路電圧OCV−最大内部抵抗値rmax×要求電流値Ireqの関係がある。この関係を利用して設定された最大内部抵抗値rmaxは、鉛電池1がエンジン始動を許容する限界値の意味を有しており、鉛電池1の内部抵抗rが最大内部抵抗rmaxより大きいとエンジン始動が不能となる。また、鉛電池1の残容量Qresと内部抵抗rとの関係から最大内部抵抗値rmaxに対応する鉛電池1の最小残容量Qminも設定されている(図9参照)。
【0028】
ステップ210で肯定判断のときは、次のステップ212で車両制御システム11にエンジン始動が可能な旨を報知し、否定判断のときは、ステップ214で車両制御システム11にエンジン始動が不能な旨を報知してステップ202へ戻る。車両制御システム11のCPUは、電池状態検知システム10からエンジン始動が不能な旨の報知を受けたときは、例えば、鉛電池1の外部からの充電が必要なことを示すバッテリランプを点灯させる。
【0029】
次のステップ216では、鉛電池1に流れる電流値及び電圧値を取り込み、ステップ218では、ステップ208で推定した残容量QOCVに積算された電気量を加算して残容量QOCVを補正する。
【0030】
次にステップ220において、IGNスイッチ5がON位置からSTART位置に位置したか否かを、電流センサ4に流れる電流値が所定値(例えば、0.1A)を越えるか否かにより判断する。図4に示すように、エンジン始動時の鉛電池1の電流波形は、IGNスイッチ5がSTART位置に位置したエンジン始動電流通電開始時(時刻t)の後、スタータ9への急激な1段目のパルス放電が行われ、約50ms経過時(時刻t)に最初のピークが現われる。その後、減衰する数回のピークを経てエンジン始動が完了する。電流波形は、エンジン8の構造、エンジン8とスタータ9とを繋ぐベルトやギヤプーリの摩擦等に影響されるが、概ね図4に示すような波形となる。
【0031】
次のステップ222では、エンジン始動電流通電開始時(時刻t)の後、所定時間(例えば、50ms)が経過するまで待機する。ステップ224では、1段目のパルス放電時の電流(始動電流)、鉛電池1の電圧、温度を取り込む。次にステップ226において、ステップ224で実測した電圧、電流を用いて(実測)内部抵抗rを演算する。すなわち、ステップ216で取り込んで温度補正したエンジン始動前の鉛電池1の開回路電圧(OCV)とステップ224で取り込んで温度補正したエンジン始動時の電圧との電圧差ΔVを、ステップ216で取り込んだエンジン始動前の電流値とステップ224で取り込んだエンジン始動時の電流値との電流差ΔIで除した内部抵抗r(=電圧差ΔV/電流差ΔI)の絶対値を演算する。次いでステップ228では、ステップ226で演算した内部抵抗rを、温度25°Cにおける内部抵抗に温度補正し、ステップ230では温度補正後の内部抵抗rから鉛電池1の残容量Qを推定する。次のステップ232では、ステップ208で推定した残容量QOCVとステップ230で推定した残容量Qとの平均値から鉛電池1の初期残容量Qintを推定し(Qint=1/2(QOCV+Q))、初期残容量演算処理サブルーチンを終了して図2のステップ106へ進む。
【0032】
ステップ106では、鉛電池1に流れた充放電電流をステップ232で推定した残容量Qintに積算して残容量Qresを補正し、次のステップ108において、残容量Qresが最小残容量Qminより大きいか否かを判断することで、エンジン始動が可能か否か、すなわち、アイドルストップ(IS)可能か否かを判定する(図9参照)。肯定判断のときは、次のステップ110で車両制御システム11にアイドルストップが可能な旨を報知し、否定判断のときは、ステップ112で車両制御システム11にアイドルストップが不能な旨を報知してステップ106へ戻る。車両制御システム11のCPUは、アイドルストップが可能な旨の報知を受けている間に車速が0となったときは、エンジン制御部を介してエンジン8の駆動を停止させ、アイドルストップ状態となった旨を電池状態検知システム10に報知する。一方、車両制御システム11のCPUは、電池状態検知システム10からアイドルストップが不能な旨の報知を受けたときは、エンジン8をアイドルストップ後に再始動することができないので、車速が0となってもエンジン8の駆動を続行させる。
【0033】
次にステップ114において、車両制御システム11からアイドルストップ状態となった旨の報知を受けたか否かを判断し、否定判断のときはステップ106へ戻り、肯定判断のときは、次のステップ116において、積算した電気量をステップ106で補正した残容量Qresに加えることによって残容量Qresを再補正する。
【0034】
次いでステップ118において、ステップ116で推定した残容量Qresが最小残容量Qminより大きいか否かを判断することで、アイドルストップが継続可能か否か、すなわちエンジン始動が可能か否かを判定する(図9参照)。否定判断のときは、ステップ122で、車両制御システム11にエンジン8の始動が必要な旨を報知してステップ126へ進む。この報知を受けた車両制御システム11のCPUは、エンジン制御部及びクラッチ制御部を制御してエンジン8を始動させてその回転駆動力を発電機7に伝達する。これにより、鉛電池1は充電され、その結果として残容量Qresは最小残容量Qminより大きくなる。
【0035】
一方、ステップ118で肯定判断のときは、ステップ120で電流、及び電圧を取り込み、次のステップ124において、ステップ220と同様にIGNスタート5がSTART位置に位置したか否かを判断し、否定判断のときはステップ116へ戻り、肯定判断のときは、ステップ126〜ステップ134でステップ222〜ステップ230と同様に、鉛電池1の残容量Qを推定する。次のステップ136では、ステップ106又はステップ116で補正した残容量Qresをステップ134で推定した残容量Qで修正(リセット)して、ステップ106に戻る。
【0036】
以降、エンジン再始動時前に、鉛電池1に流れた充放電電流を残容量Qに積算して残容量Qresを補正し、エンジン始動時と同様に、ステップ118において、エンジン再始動が可能か否かを判定し、肯定判定のときに、エンジン始動時の鉛電池1の残容量Qを推定し、エンジン始動時毎に、ステップ106で補正した残容量Qresを残容量Qで修正(リセット)する(図5参照)。
【0037】
(作用等)
次に、本実施形態の電池状態検知システム10の作用等について説明する。
【0038】
本実施形態の電池状態検知システム10は、IGNスイッチ5オン時の鉛電池1の残容量QOCVを推定し(ステップ208等)、エンジン始動時の電流、電圧変化から鉛電池1の残容量Qを推定し(ステップ230等)、残容量QOC 及び残容量Qの平均値から鉛電池1の初期残容量Qintを算出する(ステップ232)。このため、鉛電池1の開回路電圧及び内部抵抗のそれぞれの特性(OCV−Qresマップ及びr−Qresマップ)が初期残容量Qintに反映されるので、エンジン始動時に初期残容量Qintの精度を高めることができる。
【0039】
また、本実施形態の電池状態検知システム10は、エンジン始動時毎に、補正した残容量Qres(ステップ106)を残容量Qに修正(リセット)するので(ステップ136)、電流センサ4の測定誤差の蓄積を防止することができるため、高精度に鉛電池1の残容量Qres算出することができる。従って、本実施形態の電池状態検知システム10によれば、鉛電池1の電池状態が高精度に検出されるので、アイドルストップ・スタート時にエンジン8を停止してもエンジン8の再始動が確保でき、また、エンジン8の停止前にアイドルストップが可能かを予め把握することができる。このため、車両制御システム11は、下位システムの電池状態検知システム10から報知を受けてエンジン8の停止・再始動(アイドルストップ・スタート)の制御が確保可能であり、車両停止中の排ガス削減に寄与することができる。
【0040】
更に、本実施形態の電池状態検知システム10では、エンジン始動時の電流(放電)波形に再現性があり、アイドルストップ・スタート機能を有する車両においては、エンジン再始動が繰り返されリセットの回数が多いので、エンジン始動時毎に高精度に残容量Qを推定することができる。
【0041】
また、本実施形態の電池状態検知システム10では、バッテリとして鉛電池1を用いることで、鉛電池1の開回路電圧OCV及び残容量Qres(図7参照)、内部抵抗値r及び残容量Qres(図9参照)間の高い相関関係が得られ、仮に粗いマップを用いても高精度に鉛電池1の残容量Qresの算出及びエンジン始動判定をすることができる。
【0042】
更にまた、本実施形態の電池状態検知システム10では、鉛電池1の温度Tを測定し、鉛電池1のOCV−T補正マップから鉛電池1の開回路電圧OCVの温度補正をしたので(図6参照)、温度に依存する鉛電池1の残容量Qresを温度依存性を排除して算出することができ、作成されるマップの数を少なくすることができる。
【0043】
また更に、本実施形態の電池状態検知システム10では、エンジン始動時前に、ステップ208で推定した残容量QOCVが鉛電池1のエンジン始動を許容する最小残容量Qminより大きいときにエンジン始動可能と判定したので、エンジン始動の可否を車両側制御システム11に報知することができる。
【0044】
また、本実施形態の電池状態検知システム10では、エンジン始動時又はエンジン再始動時の鉛電池1の内部抵抗rを算出するときに、エンジン始動前又はエンジン再始動時前とエンジン始動電流通電開始後又は又はエンジン再電流通電開始後50ms以内の1段目の電流値及び電圧値から内部抵抗rを算出したので、測定誤差の大きい電流波形の減衰部分を排除して鉛電池1の充電、放電分極の影響の有無に拘わらず鉛電池1の残容量Qresを推定することができる。
【0045】
更に、本実施形態の電池状態検知システム10では、鉛電池1の温度Tを測定し、鉛電池1のr−T補正値マップから鉛電池1の内部抵抗rの温度補正をしたので(図8参照)、温度依存性を排除して鉛電池1の残容量Qresを算出することができる。
【0046】
また更に、本実施形態の電池状態検知システム10では、エンジン再始動時前に、補正した残容量Qresが鉛電池1のエンジン始動を許容する最小残容量Qminより大きいときにエンジン再始動可能と判定したので、エンジン再始動の可否を車両側制御システム11に報知することができる。
【0047】
そして、本実施形態の電池状態検知システム10では、最低電圧値及び要求電流値はエンジン始動用スタータ9の特性から決定されており、最小残容量Qminは、最低電圧値及び要求電流値から予め定められた鉛電池1のエンジン始動を許容する最大内部抵抗に対応して鉛電池1の残容量と内部抵抗との関係から設定されており、補正した残容量Qresが最小残容量minよりも小さいときにエンジン再始動が不能と判定するので、エンジン再始動不能判定のときは、エンジン停止前に発電機7から鉛電池1を充電することで、エンジン8を停止しても次のエンジン始動を確保することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、IGNスイッチがON位置に位置したときに、エンジン始動前の開回路電圧OCVを取り込む例を示したが、車両が停止して長時間経過し鉛電池1が平衡状態になっているときに、開回路電圧OCVを取り込むようにしてもよい。このようにすれば、測定誤差の少ない鉛電池1の開回路電圧OCVからより高精度に鉛電池1の残容量Qresを算出(推定)することができる。
【0049】
また、本実施形態では、ISS機能を有する車両に搭載されたバッテリとして鉛電池1を例示したが、例えば、鉛電池1とリチウムイオン二次電池とを並列接続したり、鉛電池1とニッケル水素電池を並列接続したハイブリッド電池に適用してもよい。
【0050】
更に、本実施形態では、エンジン始動時毎に、鉛電池1の温度Tを測定する例を示したが、温度Tは短い時間では大きく変化しないので、所定時間(例えば、10分)毎に温度Tを測定するようにしてもよい。このようにすれば、電池状態検知システム10の演算負荷を小さくすることができる。
【0051】
また、本実施形態では、エンジン8を始動するスタータ9を例示したが、鉛電池1は36Vの群電圧を有するので(42V系システムを構成するので)、アイドルストップ後の車両始動にモータ駆動を利用することが可能となる。このため、図1のスタータ9及び発電機7に代えて、図10に示すように、モータ機能と発電機(ジェネレータ)機能とを有するモータジェネレータ12を用いるようにしてもよい。このような車両システムでは、IGNスイッチのSTART端子をモータジェネレータ12の一端に接続し、モータジェネレータ12を車両制御システム11内のモータジェネレータ制御部で制御するようにすればよい。この車両システムによれば、モータジェネレータ12のモータ機能により車両始動を行うことができるので、アイドルストップ・スタート時に生じる排ガスの発生を防止することができる。
【0052】
更に、本実施形態では、36Vの群電圧を有する鉛電池1を例示したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、現在車両に一般的に用いられている12Vの鉛電池の電池状態を検知する電池状態検知システムに適用するようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、鉛電池1にセル室間の距離が短くセル室間を直列接続する導電部材の抵抗の小さいモノブロック電槽を用いた例を示したが、導電部材の抵抗やその劣化を考慮することで、更に高精度に鉛電池1全体の電池状態を検知することが可能となる。
【0054】
また更に、本実施形態では、ステップ202で車両制御システム11からIGNスイッチがON位置となった旨を受信する例を示したが、車両制御システム11からの報知を受けることなく、電流センサ4で電流を検出し、その範囲が所定範囲(例えば、0.05A〜0.1A)にあるときに、IGNスイッチがオン位置に位置した、と電池状態検知システム10が独自に判断するようにしてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、IS可能なときは可能報知を、不能なときは不能報知をそれぞれ車両制御システム11に出力する例を示したが、IS不能なときにはエンジン停止不許可信号を出力して警報を出すようにしてもよい。
【0056】
(第2実施形態)
次に、本発明を電池状態検知システムに適用した第2の実施の形態について説明する。本実施形態の電池状態検知システムは、鉛電池1の初期残容量QintをIGNスイッチON時の残容量QOCVから得るものである。なお、本実施形態以降の実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素及びステップには同一の符号を付してその説明を省略し、異なる箇所のみ説明する。
【0057】
本実施形態では、図11に示すように、初期残容量演算処理サブルーチンにおいて、図3に示したステップ216〜ステップ232を欠いている。本実施形態の初期残容量演算処理サブルーチンでは、ステップ208でOCV−Qresマップから推定した残容量を初期残容量Qintとする。
【0058】
本実施形態の電池状態検知システムでは、OCV−Qresマップのみから初期残容量Qintを算出するが、鉛電池1では開回路電圧(OCV)と残容量Qresとの相関関係が高いので、残容量Qresを精度よく推定することができると共に、上述した第1実施形態と比較しステップ数を減らすことができる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明を電池状態検知システムに適用した第3の実施の形態について説明する。本実施形態の電池状態検知システムは、鉛電池1の初期残容量Qintをエンジン始動時の内部抵抗rから算出した残容量Qで得るものである。
【0060】
本実施形態では、図12に示すように、初期残容量演算処理サブルーチンにおいて、図3に示したステップ232を欠いている。本実施形態の初期残容量演算処理サブルーチンでは、ステップ230でエンジン始動時の電流、電圧変化から算出した内部抵抗rから推定した残容量を初期残容量Qintとする。
【0061】
本実施形態の電池状態検知システムでは、r−Qresマップのみから初期残容量Qintを算出すが、鉛電池1では内部抵抗rと残容量Qresとの相関関係が高いので、残容量Qresを精度よく推定することができると共に、第2実施形態と同様にステップ数を減らすことができる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、キーオン時のバッテリの残容量QOCV及びエンジン始動時のバッテリの残容量Qの平均値からバッテリの残容量Qintが算出され、開路電圧及び内部抵抗のそれぞれの特性が残容量Qintに反映されるので、エンジン始動時に残容量Qintの精度を高めることができると共に、エンジン再始動時毎に補正残容量Qresが残容量Qに修正され、誤差の蓄積が防止されるので、高精度にバッテリの残容量を算出することができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用可能な実施形態の電池状態検知システムを含む車両システムのブロック回路図である。
【図2】第1実施形態の電池状態検知システムの電池状態検知ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】電池状態検知ルーチンのステップ104の詳細を示す初期残容量演算処理サブルーチンのフローチャートである。
【図4】エンジン始動時の鉛電池の電流波形を示すグラフである。
【図5】鉛電池の充放電パターンを模式的に示すグラフである。
【図6】鉛電池の温度と開回路電圧補正値との関係を示すグラフである。
【図7】鉛電池の残容量と開回路電圧との関係を示すグラフである。
【図8】鉛電池の温度と内部抵抗補正値との関係を示すグラフである。
【図9】鉛電池の残容量と内部抵抗値との関係を示すグラフである。
【図10】本発明が適用可能な実施形態の電池状態検知システムを含む他の車両システムのブロック回路図である。
【図11】第2実施形態の電池状態検知ルーチンのステップ104の詳細を示す初期残容量演算処理サブルーチンの詳細を示すフローチャートである。
【図12】第3実施形態の電池状態検知ルーチンのステップ104の詳細を示す初期残容量演算処理サブルーチンの詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 鉛電池(バッテリ)
4 エンジン
5 イグニッションスイッチ(キー)
9 スタータ
10 電池状態検知システム
12 モータジェネレータ(エンジン始動用スタータ)

Claims (8)

  1. アイドルストップ・スタート機能を有する車両に搭載されたバッテリの残容量をエンジン始動時に算出される前記バッテリの内部抵抗と、前記バッテリに流れる積算電流との組合せにより推定するバッテリ残容量推定方法であって、
    キーオン時の前記バッテリの開路電圧を測定して予め定められたバッテリの残容量と開路電圧との関係から前記バッテリの残容量QOCVを算出し、
    前記エンジン始動時の電流、電圧変化から前記バッテリの内部抵抗を算出して予め定められたバッテリの残容量と内部抵抗との関係から前記バッテリの残容量Qを算出し、前記残容量QOCV及び残容量Qの平均値から前記バッテリの残容量Qintを算出し、
    エンジン再始動時の電流、電圧変化から前記バッテリの内部抵抗を算出して前記バッテリの残容量と内部抵抗との関係から前記バッテリの残容量Qを算出し、前記エンジン再始動前に前記バッテリに流れた充放電電流を前記残容量Qint又は残容量Qに積算することで補正した補正残容量Qresを前記残容量Qに修正する、
    ステップを含むバッテリ残容量推定方法。
  2. 前記バッテリの温度を測定し、予め定められたバッテリの温度と開路電圧との関係から前記測定したバッテリの開路電圧を所定温度における開路電圧に補正することを特徴とする請求項1に記載のバッテリ残容量推定方法。
  3. 前記内部抵抗は、エンジン始動前又はエンジン再始動時前のバッテリの電圧とエンジン始動電流通電開始後又はエンジン再始動電流通電開始後所定時間経過時のバッテリの電圧との電圧差を、前記エンジン始動前又はエンジン再始動時前のバッテリの電流と前記エンジン始動電流通電開始後又はエンジン再始動電流通電開始後所定時間経過時のバッテリの電流との電流差でそれぞれ除して得たことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバッテリ残容量推定方法。
  4. 前記所定時間は、前記エンジン始動電流通電開始時又はエンジン再始動電流通電開始時から50ms以内であることを特徴とする請求項に記載のバッテリ残容量推定方法。
  5. 前記バッテリの温度を測定し、予め定められたバッテリの温度と内部抵抗補正値との関係から前記算出したバッテリの内部抵抗を所定温度における内部抵抗に補正することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のバッテリ残容量推定方法。
  6. 前記エンジン始動時前に、前記残容量QOCVが前記バッテリのエンジン始動を許容する最小残容量Qminより大きいときにエンジン始動可能と判定するステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ残容量推定方法。
  7. 前記エンジン再始動時前に、前記補正残容量Qresが前記バッテリのエンジン始動を許容する最小残容量Qminより大きいときにエンジン再始動可能と判定するステップを更に含むことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のバッテリ残容量推定方法。
  8. 前記最小残容量Qminは、エンジン始動用スタータの特性から決定される最低電圧値と要求電流値とから予め定められた前記バッテリのエンジン始動を許容する最大内部抵抗に対応して前記バッテリの残容量と内部抵抗との関係から設定されており、前記補正残容量Qresが最小残容量Qminよりも小さいときに前記エンジン再始動が不能と判定することを特徴とする請求項又は請求項に記載のバッテリ残容量推定方法。
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