JP4066298B2 - 緩衝材挿入型継手 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば上下水道などのシールドトンネルの構築のために用いられるセグメントの継手の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えばシールドトンネルとして用いられるセグメントは、トンネルの軸方向のみならず、トンネルの円周方向にも複数個に分割されたセグメントピースを、軸方向のみならず円周方向ににも締結しつつセグメントリングとして組立てる。この円周方向の締結に用いられる継手について、出願人は、既に特許出願を行っている(特願平7−187351号公報)。この出願に係る継手においては、一方のセグメントピースの継手面に設けられた雄継手が、他方のセグメントピースの継手面に設けられた雌継手へ嵌入されて締結が行われる。
【0003】
この継手の拡大図を図10に示す。すなわち、雄継手101は断面が概略T字状を成し、雌継手103は断面が概略T字状の溝105を有する。雄継手101のT字状を構成するウェブ部分111は嵌入が進む方向(図中下方向)にしたがって短くなっており、逆に、雌継手103の溝105のT字状のフランジ部分113を構成する顎部分115が、嵌入が進む方向にしたがって厚くなる。
【0004】
このような二つのテーパー形状のくさび効果により、嵌入の際に、雌継手103と顎部分115は互いに接触し、ウェブ部分111に張力が発生する。この張力により、2つのセグメントピースの継手面は、十分に大きな力で引きつけられ締結が行われるものである。
このような継手は、セグメントの組立作業が簡単になるなどの利点を有する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、雄金具ウェブ部に適正な張力を導入できるようにするためには、金型製作精度を非常に高くすることが必要であり、実際の製作上は難かった。
【0006】
また、嵌入の際に雄継手101の一部が塑性変形を起こして誤差を吸収するように工夫することも考えられるが、塑性変形した後は、もはや十分な反発力を有さず、よって十分な張力を発揮しないので不適当である。
この発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、継手の誤差を吸収し、かつ、十分な張力を締結部に導入できる継手構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、第一の発明は、継手面の一方に設けられ断面が概略T字状の雄継手と、継手面の他方に設けられ前記雄継手が嵌入する断面が概略T字状の溝を有する雌継手と、前記嵌入が進むに従って前記雄継手の概略T字状を構成するフランジ部分と前記雌継手の溝の概略T字状を構成するフランジ部分とが接近するよう形成されたテーパー形状と、前記両フランジ部分の少なくともいずれかに設けられ前記接近により接触を生じて前記雄継手に張力を発生する緩衝材と、この緩衝材を構成するため前記フランジ部分で前記嵌入方向に配置された金属管材と、を有することを特徴とする緩衝材挿入型継手である。
【0008】
第二の発明は、更に、前記金属管材は、鋼管で、ゴム材に埋め込まれた状態であることを特徴とする緩衝材挿入型継手である。
【0009】
第三の発明は、更に、前記テーパー形状は、雄継手の概略T字状を構成するウェブ部分が前記嵌入が進む方向に従って短くなることで、形成されたことを特徴とする緩衝材挿入型継手である。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を、図1乃至図4において説明する。
まず、図2は、この実施形態に係る継手が用いられるシールドセグメント1の全体斜視図である。円周方向に分割された5つのセグメントピースA1、A2、B1、B2、Kが、それぞれ、この実施形態に係る継手により締結され、リング体3が形成される。このリング体3は更に軸方向に締結される。なお、リング体3間の締結は別の継手によって行われる。
【0011】
図3に、図2のシールドセグメント1を構成するセグメントピースB1、K、B2を周方向に締結するための継手の構造を示す。これらのセグメントピースB1、K、B2は、鋼材とコンクリートからなる合成セグメントである。コンクリート躯体5の内部には、コンクリートとの食い付きをよくするための突起7が設けられた鋼板9が周方向に配置され、この鋼板9の両端部に継手11、13が溶接され、コンクリート面から露出される。
【0012】
図3、図1に示すように、継手には雄継手11と雌継手13とがあり、共に概略T字状の断面を成し、嵌入が行われるように設計される。雄継手11のT字状を構成するウェブ部分15は、嵌入が進む方向、すなわち図3中の略左方向にしたがって短くなっており、逆に、雌継手13の溝17のT字状のフランジ部分を構成する顎部分19が、嵌入が進む方向にしたがって厚くなる。これによって、雄継11および雌継手13がそれぞれテーパー形状を成し、これらのテーパー形状(15)(19)により、嵌入の際に楔効果が得られ、しっかりとした締結が図られる。
【0013】
また雄継手11のT字状のフランジ部分21のうちウェブ部分15に向いている面23には、緩衝材25が配置される。この緩衝材25は図5(C)に示すように、全体がゴム製で長方形の断面を有し、中央に鋼管27が配置され、周囲をゴム材29が取り囲む。長方形の一方の端面には鋼板31が取り付けられる。鋼板31により、フランジ部分21への取付が容易になり、力の伝達を均一にし、変形特性を安定したものにできる。
【0014】
このような緩衝材25を設けることにより、後述するように、ゴム材単体の場合より堅く、鋼材単体の場合より柔らかい状態で、弾性が保てる緩衝材とすることができる。これにより雄継手11や雌継手13の誤差、すなわち製造時の誤差や取付誤差などを吸収でき、かつ、十分な圧縮力を受けられ、反作用としてウェブ部分15に十分な張力を導入できる。
【0015】
図4はこのようなセグメントピースA1、A2、B1、B2、Kが締結される配置図を、シールドセグメント1の展開図として表したものである。各リング体3についてそれぞれ5種類のセグメントピースA1、A2、B1、B2、Kが設けられる。なお、図中のMは雄継手を表し、Fは雌継手を表す。
【0016】
これらのセグメントピースのうちA1型A2型は、共に展開図が長方形であり、雄継手Mと雌継手Fの配置のみが異なる。B1型とB2型は、共に台形であり、台形のうち2つの角は直角となって、この直角に挟まれたまっすぐな辺が前記A1型またはA2型のセグメントピースに接する継手面となる。B1型B2型の台形の斜辺は、共にK型のセグメントピースの斜辺に接する継手面となる。このKA型は2つの斜辺を有する台形であり、5つのセグメントピースのうち最後に圧入力が与えられて押し込まれ締結が行われ、リング体3が完成する。
【0017】
各リング体3は、円周方向に所定量だけずらされ、このずらしが千鳥状に行われる。この千鳥状のずらしにより、継手面が一列にならんでしまい全体の強度を弱めてしまうのを避ける。
【0018】
この実施形態に係る緩衝材25の性能を図5、図6、及び図7において説明する。図5の(C)がこの実施形態に係る緩衝材25であり、他の(A)(B)(D)は比較のために実験に用いた緩衝材である。このうち(A)は(C)と同じ断面を用いすべて鋼材としたものである。(B)は鋼管単体を緩衝材としたものである。(D)は(C)と同じ断面のすべてゴム材としたものである。
【0019】
これらの緩衝材をもとに圧縮試験をした結果を図6に示す。この試験結果からわかるように(A)の鋼材のみの場合には、大きな圧縮力を加えても変位が極めてわずかであり、更に大きな圧縮力を加えると降伏点をむかえて塑性変化を起こしてしまう。したがって、継手に大きな誤差、例えば1mm程度の製造誤差あるいは取付誤差がある場合に、とても吸収できるものではなかった。また(B)のゴム単体の場合には、小さな圧縮力で大きな変位を生じてしまい、十分な圧縮力をくわえることができなかった。十分な圧縮力に耐えるためには、力を受ける面積が大きくする必要があり、全体として継手が大きくなりすぎるものであった。
【0020】
これに対し(B)の鋼管の場合、および(C)(この実施形態に係る鋼管27とゴム材29からなる緩衝材)の場合には、共にゴム単体(D)より堅く、鋼材(A)よりも柔らかく、弾性が保てる緩衝材となった。すなわち、設計誤差や取付誤差を吸収するのに必要な所定の変位量に対する圧縮力が、ゴム材より大きくでき、継手をそれほど大きくせずに済む。また、そのような所定の変位量に対して、鋼材のように降伏せずに弾性を維持できる。
【0021】
(実施形態の作用効果)
以上のように、鋼管27は、弾性範囲内において、鋼材より柔らかくゴム材より堅い。このため継手の設計誤差を吸収し、かつ、十分な張力を発揮できる緩衝材挿入継手となる。
【0022】
また、鋼管単体の場合に比べ鋼管27がゴム材29に埋め込まれることにより、ゴム面が露出し金属などへの接着が比較的容易となって、フランジ部分21への取り付けが簡単になる。また、ゴム材29が介在することにより力の伝達が一様になることが期待される。更に、このゴム材29の働きで止水効果が発揮されることも期待される。また、高い圧縮力に絶えられる特殊なゴムも存在するが、コストが高くなってしまうことに比べ、安価な緩衝材25となり、継手全体のコストを低くできる。
【0023】
(実施例)
以上の実施形態を、直径3800mm、幅1000mm、厚さ150mmの下水道用トンネル向けシールドセグメント1の緩衝材25をもつ継手11、13に実施した。雄継手11として、厚さ6mm有効長さ400mmのものを用いることとした。
【0024】
設計計算を実施した結果、雄継手11のウェブ部15には900kgf/cm2の初期張力が導入されれば、設計土水圧による発生応力度は、これ以下であるので、高剛性の継手が実現できることがわかった。
【0025】
図5(C)の緩衝材25を用いるとし、
1)±1mm程度の寸法誤差を吸収する。
2)ゴム材の応力緩和を考慮し応力緩和終了後でもウェブ部には900kgf/cm2以上の応力度が生じているものとする。
4)嵌合直後のウェブ応力度は、降伏点の80%を超えない。
の諸条件を満足する緩衝材25を設計した。図6の実験結果を基に、図7の結果が得られ、設計圧縮量を4.5mmとすれば、目標仕様を満足することがわかった。
【0026】
すなわち、緩衝材25の設計圧縮量を4.5mmとすれば、寸法誤差などにより、1mmの増減があっても1400〜950kgf/cm2のウェブ張力が導入できる。これば、設計上必要な応力値900kgf/cm2以上であるし、また嵌入直後のウェブ部分15の最大引っ張り応力は2000kgf/cm2であり材料降伏点の80%を超えない。尚、図7の表の緩衝材圧縮応力度は、実験時の圧縮荷重を、緩衝材の断面積で割った値である。
【0027】
緩衝材25はセグメントピースの養生完了後に工場で雄継手11に取り付けた。B型−K型ピース間の継手11、13は、K型ピースの挿入角を考慮し、A型−A型ピース間、A型−B型ピース間とは別の形状のものを用いいるのが望ましいが、この2種類の継手で、継手部の楔角が変わってもよいとすれば、1種類の形状の継手11、13で兼用することもできる。
【0028】
また、リング体間の継手としては、別のワンタッチ式の金具を用いた(図示は省略)。セグメント組立ては、図4で示す、A1、A2、B1、B2、Kの順に行ったが、ピース間の嵌合に必要な押込み力は、継手1個所当たり10tf程度で小さく、セグメントにクラックなどを生じさせずに組立てることができた。
【0029】
(他の実施形態)
以上の実施形態においては、雄継手11に取り付けられる緩衝材25は、ゴム材29に鋼管27が埋め込まれた状態のものであった(図5(C))であるが、他の実施形態においては、鋼管のみの緩衝材(図5(B)参照)であっても良い。この場合に、雄継手11のフランジ部分21への取付は、例えば図8(A)に示すようにフランジ部分に半円筒状のくぼみ33を設け、そのくぼみ33へ鋼管35を嵌合し溶接や接着などで取り付けたり、あるいは同図(B)に示すように、鋼管35の一部をつぶして平にし、この平の面37をフランジ部分21へ溶接や接着などで取り付けることも可能である。また同図(C)に示すように、鋼管35の長手方の両端をつぶして偏平にし、この偏平部分39にボルト孔を開けボルト41による取り付けを行うことも可能である。
【0030】
また、以上の実施形態においては、緩衝材25は雄継手11のT字状を構成するフランジ部分21に取り付けられたが、他の実施形態においては、雌継手13の溝のT字状を構成する顎部分19へ取り付けても構わない。
【0031】
また、以上の実施形態においては、図5(C)に示すように断面の一方の端面に鋼板31がはりつけられるものであったが、他の実施形態においては、例えば図9(A)に示すように、断面の両端面に鋼板31、31がはりつけられるものとすることが可能である。両端面に鋼板31をはりつけることで、この鋼板31へ圧縮力を受けることで、鋼管27やゴム材29に対し均一に力を伝達することが可能となる。また、同図(B)に示すようにこのような鋼板をまったく設けないことも可能である。
【0032】
また、同図(C)に示すように、緩衝材25の断面において鋼管27を偏在させ、鋼管27の一部をゴム材29から露出させることが可能である。この露出位置は、相手方の継手の接触面に露出するようにする。
このような緩衝材25は、型を用いた加硫時に、鋼管27を型内に配置して、製造する。
【0033】
また、以上の実施形態においては、継手によって締結されるのはセグメントピースであったが、他の実施形態では、他の構造物や機械部分であっても良い。
また、以上の実施形態においては、金属管材として鋼管を用いたが、他の実施形態においては、例えばステンレス管などの他の金属管材であっても良い。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、この第1、2、または3の発明によれば、緩衝材として金属管材を用い、金属管材は鋼材より柔らかくゴム材より堅く、弾性が保てるものである。このため継手の設計誤差を吸収し、かつ、十分な張力を発揮できる緩衝材挿入継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る緩衝材挿入型継手の働きを示すもので、(A)は雄型が雌型へ嵌入される初期の状態を示す図(B)は嵌入が完了した状態を示す図である。
【図2】図1の継手により締結されたシールドセグメント全体の斜視図である。
【図3】図2のシールドセグメナントを構成するセグメントピースを示す斜視図である。
【図4】図2の展開図である。
【図5】(A)〜(D)はこの実施形態の効果を示す実験に用いられた緩衝材の試験材を示すものである。
【図6】図5の試験材を用いた圧縮試験の結果を示すグラフ図である。
【図7】図6の結果を整理するための表である。
【図8】(A)(B)(C)は他の実施形態の雄継手を示す図である。
【図9】(A)(B)(C)は他の実施形態における緩衝材を示す断面図である。
【図10】従来の継手を構成する雄継手と雌継手の斜視図である。
【符号の説明】
1 シールドセグメント
A1、A2、B1、B2、K セグメントピース
3 リング体
5 コンクリート躯体
7 突起
9 鋼板
11 雄継手
13 雌継手
15 ウェブ部分
17 溝
19 顎部分
21 フランジ部分
25 緩衝材
27 鋼管
29 ゴム材
31 鋼板
Claims (3)
- 継手面の一方に設けられ断面が概略T字状の雄継手と、継手面の他方に設けられ前記雄継手が嵌入する断面が概略T字状の溝を有する雌継手と、前記嵌入が進むに従って前記雄継手の概略T字状を構成するフランジ部分と前記雌継手の溝の概略T字状を構成するフランジ部分とが接近するよう形成されたテーパー形状と、前記両フランジ部分の少なくともいずれかに設けられ前記接近により接触を生じて前記雄継手に張力を発生する緩衝材と、この緩衝材を構成するため前記フランジ部分で前記嵌入方向に配置された金属管材と、を有することを特徴とする緩衝材挿入型継手。
- 前記金属管材は、鋼管で、ゴム材に埋め込まれた状態であることを特徴とする請求項1に記載の緩衝材挿入型継手。
- 前記テーパー形状は、雄継手の概略T字状を構成するウェブ部分が前記嵌入が進む方向に従って短くなることで、形成されたことを特徴とする請求項1、または2に記載の緩衝材挿入型継手。
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