JP4064272B2 - オルガノシリルクロライドの製造法 - Google Patents

オルガノシリルクロライドの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オルガノシリルクロライドの製造法に関する。さらに詳しくは、オルガノシランと塩素とを反応させてオルガノシリルクロライドを製造する方法において、有毒な不純物を含まないオルガノシリルクロライドを効率よく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オルガノシリルクロライドは、従来、塩素系溶媒(例えば1,2‐ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルムなど)中において、通常の反応温度(30℃前後)でオルガノシランと塩素との反応により製造されていた。しかしながら、この製造法で使用される塩素系溶媒は毒性が強いため、環境汚染物質排出・移動登録(PRTR)など揮発成分を規制する動きのある近年の状況下では使用を控える必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、オルガノシランと塩素とを反応させてオルガノシリルクロライドを製造する方法における適切な反応溶媒を見出すべく検討をした。
【0004】
まず、塩素による塩素化反応の溶媒として一般に使用されているアルカンやシクロアルカンの使用を検討したが、これらをオルガノシランの塩素化反応に使用すると、溶媒が同時に塩素化されて塩素化アルカンや塩素化シクロアルカンが多量に副生し、しかもこれら塩素化アルカンや塩素化シクロアルカンは目的物であるオルガノシリルクロライドと沸点が近似している場合が多く、蒸留により精製しようとすると主留分に含有されるため、取り除くことが不可能であった。
【0005】
つぎに、芳香族系溶媒を検討したところ、この場合も溶媒が同時に塩素化されて塩素化芳香族系化合物を副生するが、その生成量はアルカンやシクロアルカンの場合に比較して少なくなった。しかしながら、副生した塩素化芳香族系化合物はやはり目的物であるオルガノシリルクロライドと沸点が近似している場合が多く、蒸留により精製しようとすると主留分に含有されるため、取り除くことが不可能であった。副生した塩素化芳香族系化合物は毒性が強いため、極力その含有量を少なくすることが望ましいが、蒸留によってはこの塩素化芳香族系化合物をほとんど含有しないオルガノシリルクロライドを得ることは困難であった。
【0006】
そこで、別の精製方法を検討した。オルガノクロライドをシリコンと高温で反応させてオルガノシリルクロライドを製造する際に塩素化炭化水素などが副生するが、これをオルガノシリルクロライドから分離する方法が検討されている。例えば、塩素化炭化水素をモレキュラーシーブまたは活性炭によって吸着させて分離する方法(特許文献1)が提案されているが、操作上の手間がかかることや、モレキュラーシーブ、活性炭が高価なために製造コストが高くなるという問題がある。また、酸化アルミニウムと水素含有シランを用いて塩素化炭化水素を相当するアルカンへ還元する方法(特許文献2)が提案されている。しかしながら、この方法は塩素化炭化水素をオルガノシランと反応させることにより塩素化炭化水素を除去するものであり、本発明のようなオルガノシランが反応物である製造過程に使用すると、目的物であるオルガノシリルクロライドの収率が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、前記の問題点に鑑みて、芳香族系溶媒中においてオルガノシランと塩素とを反応させてオルガノシリルクロライドを製造する方法において、毒性の強い塩素化芳香族系化合物を含有しないオルガノシリルクロライドを効率よく得る方法を提供することを課題とする。
【0008】
さらに、本発明は、芳香族系溶媒中においてオルガノシランと塩素とを反応させてオルガノシリルクロライドを製造する方法において、毒性の強い塩素化芳香族系化合物を含有せず、かつ高純度のオルガノシリルクロライドを効率よく得る方法を提供することを課題とする。
【0009】
【特許文献1】
米国特許第4127598号明細書
【特許文献2】
米国特許第5777145号明細書
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、芳香族系溶媒中でオルガノシランと塩素とを反応させることによりオルガノシリルクロライドを製造する方法において、精製助剤を用いることにより有毒な塩素化芳香族系化合物を含有しないオルガノシリルクロライドを効率よく製造できることを見出した。さらに、塩素化の反応条件の検討により有毒な塩素化芳香族化合物を含有せず、かつ高純度のオルガノシリルクロライドを効率よく製造できることを見出した。
【0011】
すなわち本発明は、つぎのオルガノシリルクロライドの製造法を提供する。
【0012】
(1)一般式(I):
【0013】
【化5】
Figure 0004064272
【0014】
(式中、R1、R2、R3は相互に同一または異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である。ただし、R1、R2、R3は同時に水素原子でない)で示されるオルガノシランと塩素とを芳香族系溶媒中で反応させて、一般式(II):
【0015】
【化6】
Figure 0004064272
【0016】
(式中、R4、R5、R6は相互に同一または異なって、それぞれ塩素原子、炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である。ただし、R4、R5、R6は同時に塩素原子でない)で示されるオルガノシリルクロライドを製造する方法において、反応終了後における反応混合物の精製工程において、精製助剤を使用して、前記反応で副生した塩素化芳香族系化合物を高沸点化合物に変換することを特徴とするオルガノシリルクロライドの製造法。
【0017】
(2)前記反応終了後の反応混合物を塩基性水性液で中和処理して得られた有機層を脱水後、前記精製助剤を添加して前記変換反応を行なう前記(1)項に記載のオルガノシリルクロライドの製造法。
【0018】
(3)前記オルガノシランが一般式(III):
【0019】
【化7】
Figure 0004064272
【0020】
(式中、R7、R8、R9は相互に同一または異なって、それぞれ炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である)で示されるトリオルガノシランであり、前記オルガノシリルクロライドが、一般式(IV):
【0021】
【化8】
Figure 0004064272
【0022】
(式中、R7、R8、R9は相互に同一または異なって、炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である)で示されるトリオルガノシリルクロライドである前記(1)または(2)項に記載のオルガノシリルクロライドの製造法。
【0023】
(4)前記芳香族系溶媒が、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、ベンゼンよりなる群から選択される少なくとも1種である前記(1)〜(3)項のいずれかに記載のオルガノシリルクロライドの製造法。
【0024】
(5)前記精製助剤が塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化亜鉛、塩化ジルコニウム、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化アンチモンよりなる群から選択される少なくとも1種である前記(1)〜(4)項のいずれかに記載のオルガノシリルクロライドの製造法。
【0025】
(6)一般式(I)で示されるオルガノシランと塩素との反応を5〜25℃の温度で行なう前記(1)〜(5)項のいずれかに記載のオルガノシリルクロライドの製造法。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明のオルガノシリルクロライドの製造法は、一般式(I)で示されるオルガノシランと塩素とを芳香族系溶媒中で反応させ、反応終了後における反応混合物の精製工程において、精製助剤を使用して、前記反応で副生した塩素化芳香族系化合物を高沸点化合物に変換することを特徴とするものであり、それにより、蒸留という簡便な精製操作によって有毒な塩素化芳香族系化合物をほとんど含まないオルガノシリルクロライドを効率よく得ることができる。
【0027】
より具体的には、芳香族系溶媒中におけるオルガノシランの塩素化反応の終了後、たとえば、反応混合物を塩基性水性液で中和処理し、分液して得られた有機層を脱水処理した後精製助剤を添加し、副生した塩素化芳香族系化合物を高沸点化合物に変換する。この変換反応においては、副生した塩素化芳香族系化合物が主に溶媒である芳香族系化合物と結合されることによって高沸点化合物になる。該変換工程後、有機層を常法にしたがって処理(たとえば、触媒を濾別し、濾液を濃縮後蒸留する)することにより、有毒な塩素化芳香族系化合物をほとんど含まないオルガノシリルクロライドを得ることができる。
【0028】
一般式(I)で示されるオルガノシランには、トリオルガノシラン(一般式(I)において、R1、R2、R3は相互に同一または異なって、それぞれ炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である化合物、すなわち一般式(III)で示される化合物)、ジオルガノシラン(一般式(I)において、R1は水素原子、R2、R3は相互に同一または異なって、それぞれ炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である)、モノオルガノシラン(一般式(I)において、R1、R2は水素原子であり、R3は炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である)が含まれる。
【0029】
また、一般式(II)で示されるオルガノシリルクロライドには、トリオルガノシリルクロライド(一般式(II)において、R4、R5、R6は相互に同一または異なって、それぞれ炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である化合物、すなわち一般式(IV)で示される化合物)、ジオルガノシリルジクロライド(一般式(II)において、R4は塩素原子、R5、R6は相互に同一または異なって、それぞれ炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である)、モノオルガノトリクロライド(一般式(II)において、R4、R5は塩素原子であり、R6は炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である)が含まれる。
【0030】
本発明の方法は、特に、一般式(I)で示されるオルガノシランがトリオルガノシランであり、一般式(II)で示されるオルガノシリルクロライドがトリオルガノシリルクロライドである場合に好適に適用されるものである。
【0031】
本発明において、一般式(I)〜(IV)において、R1〜R9で表される炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基としては、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシイソプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシイソブチル、ヒドロキシ−t−ブチル、クロロメチル、クロロエチル、クロロプロピル、クロロイソプロピル、クロロブチル、クロロイソブチル、クロロ−t−ブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシイソプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、フェノキシエチル、メチルチオエチル、エチルチオエチル、エチルチオプロピル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ジエチルアミノプロピルなどの未置換または置換アルキル基が挙げられる。また、R1〜R9で表されるシクロアルキル基としては、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、クロロシクロヘキシル、シクロペンチル、シクロドデシルなどの炭素数6〜12の未置換または置換シクロアルキル基が挙げられる。また、R1〜R9で表されるアリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、イソプロピルフェニル、メトキシフェニル、フェノキシフェニル、クロロフェニル、ナフチルなどの炭素数6〜12の未置換または置換アリール基が挙げられる。さらにR1〜R9で表されるアラルキル基としては、ベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、エトキシベンジル、フェノキシベンジル、フェニルエチル、フェニルブチル、クロロベンジルなどの炭素数7〜14の未置換または置換アラルキル基が挙げられる。
【0032】
本発明で使用される一般式(III)で示されるトリオルガノシランの具体例としては、たとえば、トリメチルシラン、トリエチルシラン、トリn−プロピルシラン、トリイソプロピルシラン、トリn−ブチルシラン、トリイソブチルシラン、トリsec−ブチルシラン、トリn−ヘキシルシラン、トリフェニルシラン、ジメチルt−ブチルシラン、ジメチルn−オクチルシラン、ジメチルドデシルシラン、ジメチルヘキサデシルシラン、ジメチルシクロヘキシルシラン、エチルジn−ブチルシラン、エチルジフェニルシラン、ブチルジフェニルシラン、ジエチルフェニルシラン、ジイソプロピルn−ブチルシラン、n−ブチルジフェニルシラン、t−ブチルジフェニルシランなどが挙げられる。産業的重要度の観点から好ましいものは、トリイソプロピルシラン、トリn−ブチルシラン、トリイソブチルシラン、トリsec−ブチルシラン、トリフェニルシラン、t−ブチルジフェニルシランなどである。
【0033】
本発明における、副生した塩素化芳香族系化合物を高沸点化合物に変換することによって、目的化合物との分離を容易にするという効果を好適に奏するオルガノシリルクロライドとしては、一般式(II)で示されるオルガノシリルクロライドであって、R4、R5、R6が相互に同一または異なって、それぞれ塩素原子、炭素数2〜6の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である(ただし、R4、R5、R6は同時に塩素原子でない)ものが好ましく、より好ましくは、一般式(IV)で示されるトリオルガノシリルクロライドであって、R7、R8、R9が相互に同一または異なって、炭素数2〜6の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基であるもの、特に好ましくは、一般式(IV)で示されるトリオルガノシリルクロライドであって、R7、R8、R9が相互に同一または異なって、炭素数2〜6の直鎖または分岐アルキル基であるものである。このようなトリオルガノシリルクロライドとしては、例えば、トリエチルシリルクロライド、トリプロピルシリルクロライド、トリイソプロピルシリルクロライド、トリブチルシリルクロライド、トリイソブチルシリルクロライド、トリsec−ブチルシリルクロライド、トリt−ブチルシリルクロライド、トリペンチルシリルクロライド、トリヘキシルシリルクロライド、ジエチルプロピルシリルクロライド、ジエチルイソプロピルシリルクロライド、ジエチルブチルシリルクロライド、ジイソプロピルブチルシリルクロライド、エチルジプロピルシリルクロライド、エチルジイソプロピルシリルクロライド、エチルジイソプロピルシリルクロライド、エチルジブチルシリルクロライド、イソプロピルジブチルなどが挙げられる。
【0034】
本発明における芳香族系溶媒におけるオルガノシランの塩素化反応は、オルガノシランを芳香族系溶媒に溶解し、それに塩素を吹き込むことにより行なうことができる。
【0035】
本発明で使用される芳香族系溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、n−アルキル(C3〜C10)ベンゼン、分岐アルキル(C3〜C36)ベンゼン、アルキル(C2〜C4)トルエン、シメン、ドデシルトルエン、ジアルキル(C10〜C13)ベンゼン、トリアルキル(C1〜C4)ベンゼン、テトラメチルベンゼンなどが挙げられる。沸点の面で目的化合物との分離が容易な点から、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼンが好ましく使用される。
【0036】
本発明においては、芳香族系溶媒中でオルガノシランを塩素化してオルガノシリルクロライドを製造する際に、芳香族系溶媒も同時に塩素化されて塩素化芳香族系化合物が副生する。この塩素化芳香族系化合物の生成量は、オルガノシリルクロライドの生成量に対して、反応温度が30〜50℃の範囲では1.5〜3.3重量%程度であり、反応温度が5〜25℃の範囲では0.4〜0.7重量%程度である。
【0037】
本発明においては、副生する塩素化芳香族系化合物およびその他の高沸点化合物(たとえば、出発物質がトリアルキルシランの場合は、ビス(クロロジアルキルシリル)エーテルなど)の生成量を少なくする観点から、オルガノシランと塩素とを反応させる反応温度は0〜50℃の範囲が好ましい。副生する塩素化芳香族系化合物およびその他の高沸点化合物の生成量を極力少なくし、塩素化芳香族系化合物をほとんど含有せず、かつより高純度なオルガノシリルクロライドを製造する点から、反応温度は5〜25℃の範囲がより好ましい。この場合、有毒な塩素化芳香族系化合物をほとんど含まず、かつ高純度(たとえば98.5〜99.6%)なオルガノシリルクロライドを得ることができる。
【0038】
本発明において、反応に使用されるオルガノシランと芳香族系溶媒との割合は、前者100重量部に対して、後者200〜1000重量部が好ましく、さらに好ましくは前者100重量部に対して、後者350〜800重量部が良い。芳香族系溶媒が少ないと副生する高沸点化合物の量が増加し、一方芳香族系溶媒の使用量が多くなると、容量の大きな装置が必要になる。
【0039】
本発明においては、芳香族系溶媒中におけるオルガノシランの塩素化反応の終了後反応混合物を精製工程に付す。精製工程においては、たとえば、反応混合物に塩基性水性液(たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、などのアルカリ水溶液)を加えて中和処理し、分液後有機層を蒸留に付し、蒸留開始後脱水が充分になされた後、精製助剤を加えて副生した塩素化芳香族系化合物を高沸点化合物に変換する。該変換反応後に濃縮して芳香族系溶剤を除去し、ついで蒸留して目的化合物であるオルガノシリルクロライドを得る。蒸留残渣に塩素化芳香族系化合物が芳香族系化合物(芳香族系溶剤)と結合された高沸点化合物およびその他の高沸点化合物が残留する。前記有機層の脱水は、五酸化リン、水素化カルシウム、水素化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどの脱水剤を使用することによっても行なうことができる。
【0040】
本発明の精製工程において使用される精製助剤としては、例えば、塩化アルミニウム、アルミニウムアマルガム、臭化アルミニウム、五フッ化アンチモン、塩化第二鉄、塩化コバルト、四塩化チタン、亜鉛末、塩化亜鉛、四塩化スズ、塩化ジルコニウム、塩化ベリリウム、塩化ビスマス、四塩化ウラン、五塩化タングステン、六塩化タングステン、五酸化リン、フッ化水素酸、フッ化ホウ素、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウムおよび五塩化モリブデンがあげられる。芳香族系溶媒に対する溶解性、取り扱い性を考慮すると、好ましくは、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化亜鉛、塩化ジルコニウム、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化アンチモンである。
【0041】
本発明における精製助剤の使用量は、副生する塩素化芳香族化合物の量、反応時間あるいは廃棄の問題を考えると、反応溶媒の重量に基づいて、好ましくは0.1〜10,000ppm(重量基準、以下同様)、より好ましくは0.5〜1,000ppm、さらに好ましくは1〜100ppmである。精製助剤の使用量が前記範囲未満では触媒効果が充分でなく変換反応に時間がかかり、一方前記範囲を超えると廃棄上の問題が生じる傾向がある。
【0042】
本発明における精製助剤による塩素化芳香族系化合物の高沸点化合物への変換反応(主に、塩素化芳香族系化合物と芳香族系溶剤である芳香族系化合物との反応)の反応温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは60〜100℃である。また、反応時間は精製助剤の量により決定されるもので一概には言えないが、1分から3時間の範囲である。
【0043】
【実施例】
以下に本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はそれによって限定されるものではない。
【0044】
実施例1
温度計、攪拌機を備えた四つ口フラスコにトルエン592.8gを入れ、その中にトリイソプロピルシラン158.4g(1モル)を加えた。次に15℃以下に冷却し、攪拌しながら、塩素70.9g(1モル)を3時間かけて吹き込んだ。この間に発生する塩化水素は3N水酸化ナトリウム水溶液によりトラップした。その後、48重量%水酸化ナトリウム水溶液25.6gを水72.6gで希釈したものを加えて中和し、有機層を分取した。有機層の蒸留を開始し、充分に脱水がなされた時点で、塩化第二鉄7.5mg(100ppm)を加え100℃で10分間攪拌した。変換反応後濃縮してトルエンを除去し、ついで蒸留して、トリイソプロピルシリルクロライド(120〜130℃/20〜30mmHgの留分)を得た。結果を表1に示す。
【0045】
実施例2〜13
実施例1と同じ装置に表1に示す配合量にしたがって、トリオルガノシラン、芳香族系溶媒を仕込み、表1に示す温度条件以外は実施例1と同じ条件で塩素(使用量はトリオルガノシラン1モルに対して1モル使用)と反応させ、ついで反応混合物に実施例1と同じ処理を施して脱水有機層を得、ついで表1に示す量の精製助剤を加えて表1に示す条件で変換反応を行ない、濃縮後蒸留して、トリオルガノシリルクロライドを得た。結果を表1に示す。
【0046】
比較例1〜4
実施例1と同じ装置に表2に示す配合量にしたがって、トリオルガノシラン、芳香族系溶媒(ただし、比較例1、2では、それぞれノルマルヘキサン、シクロヘキサンを使用)を仕込み、表2に示す温度条件以外は実施例1と同じ条件で塩素(使用量はトリオルガノシラン1モルに対して1モル使用)と反応させ、ついで反応混合物に実施例1と同じ中和処理を施して有機層を得、これを濃縮後蒸留して、トリオルガノシリルクロライドを得た。結果を表2に示す。
【0047】
比較例5
実施例1と同じ装置に表2に示す配合量にしたがって、トリオルガノシラン、芳香族系溶媒を仕込み、表2に示す温度条件以外は実施例1と同じ条件で塩素(使用量はトリオルガノシラン1モルに対して1モル使用)と反応させ、ついで反応混合物に実施例1と同じ処理を施して脱水有機層を得、つぎに表2に示す量の塩化カルシウムを加えて表2に示す条件で加熱を行ない、濃縮後蒸留して、トリオルガノシリルクロライドを得た。結果を表2に示す。なお、塩化カルシウムはは精製助剤ではない(塩素化芳香族系化合物を高沸点化合物に変換する作用を有さない)。
【0048】
なお、表1、2における用語は以下のように定義されるものである。
【0049】
(塩素化反応工程)
「生成率(%)」:塩素化反応におけるトリオルガノシリルクロライドの生成率である。
「塩素化炭化水素(%)」:塩素化反応で生成したトリオルガノシリルクロライドの量、塩素化炭化水素の量および高沸点物の量の合計量に対する塩素化炭化水素の含有量(重量%)である。
「高沸点物(%)」:塩素化反応で生成したトリオルガノシリルクロライドの量、塩素化炭化水素の量および高沸点物の量の合計量に対する高沸点物の含有量(重量%)である。
【0050】
(精製工程)
「純度(%)」:蒸留で得られたトリオルガノシリルクロライド留分中におけるトリオルガノシリルクロライドの純度である。
「塩素化炭化水素(%)」:蒸留で得られたトリオルガノシリルクロライド留分中における塩素化炭化水素の含有量(重量%)である。
「高沸点物(%)」:蒸留で得られたトリオルガノシリルクロライド留分中における高沸点物の含有量(重量%)である。
【0051】
前記トリオルガノシリルクロライドの生成率、純度や、塩素化炭化水素、高沸点物の含有量はガスクロマトグラフ法により測定した値である。ただし、ガスクロマトグラフィーの検出限界は0.003%であるため、それ以下のものをN.D.と表記した。
【0052】
表1、2における略記号はつぎの基を意味する。
iPr:イソプロピル基
Ph:フェニル基
iBu:イソブチル基
nBu:n−ブチル基
sBu:sec−ブチル基
tBu:t−ブチル基
【0053】
【表1】
Figure 0004064272
【0054】
【表2】
Figure 0004064272
【0055】
【発明の効果】
以上のように、本発明のオルガノシリルクロライドの製造法によれば、従来法のように毒性の強い塩素系溶媒を使用する必要がない。また、副生した塩素化芳香族系化合物を簡便な前処理と蒸留により除去することにができ、毒性の強い塩素化芳香族系化合物をほとんど含有しないオルガノシリルクロライドを効率よく得ることができる。さらに、反応条件を調整することにより、有毒な塩素化芳香族系化合物をほとんど含有せず、かつ高純度のオルガノシリルクロライドを効率よく得ることができる。

Claims (6)

  1. 一般式(I):
    Figure 0004064272
    (式中、R1、R2、R3は相互に同一または異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である。ただし、R1、R2、R3は同時に水素原子でない)で示されるオルガノシランと塩素とを芳香族系溶媒中で反応させて、一般式(II):
    Figure 0004064272
    (式中、R4、R5、R6は相互に同一または異なって、それぞれ塩素原子、炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である。ただし、R4、R5、R6は同時に塩素原子でない)で示されるオルガノシリルクロライドを製造する方法において、反応終了後における反応混合物の精製工程において、精製助剤を使用して、前記反応で副生した塩素化芳香族系化合物を高沸点化合物に変換することを特徴とするオルガノシリルクロライドの製造法。
  2. 前記反応終了後の反応混合物を塩基性水性液で中和処理して得られた有機層を脱水後、前記精製助剤を添加して前記変換反応を行なう請求項1に記載のオルガノシリルクロライドの製造法。
  3. 前記オルガノシランが一般式(III):
    Figure 0004064272
    (式中、R7、R8、R9は相互に同一または異なって、それぞれ炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である)で示されるトリオルガノシランであり、前記オルガノシリルクロライドが、一般式(IV):
    Figure 0004064272
    (式中、R7、R8、R9は相互に同一または異なって、炭素数1〜18の直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基よりなる群から選択される基である)で示されるトリオルガノシリルクロライドである請求項1または2に記載のオルガノシリルクロライドの製造法。
  4. 前記芳香族系溶媒が、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、ベンゼンよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のオルガノシリルクロライドの製造法。
  5. 前記精製助剤が塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化亜鉛、塩化ジルコニウム、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化アンチモンよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載のオルガノシリルクロライドの製造法。
  6. 一般式(I)で示されるオルガノシランと塩素との反応を5〜25℃の温度で行なう請求項1〜5のいずれかに記載のオルガノシリルクロライドの製造法。
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