JP4064073B2 - ころがり軸受 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はころがり軸受に関し、特に低価格および高温度で使用できる潤滑グリースを用いた電子写真装置用ころがり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子写真装置を用いた複写機や印刷機(プリンター)などの定着部には、定着ローラなどを回転自在に支持するためにロール用ころがり軸受が多用されている。この定着部は、紙に帯電して付着したトナーを最高 250℃程度の高温で加圧することによって、紙に定着させる部位であり、定着部のロール支持ころがり軸受は高温で使用されることが多い。特に、ヒートロールは中空軸の内側にヒータを入れ、内側から熱するために、軸受も 200℃をこえる温度で使用されることがある。また、ヒートロール支持ころがり軸受は軸受部の温度を下げるため樹脂製の断熱スリーブを介して使用されることもあるが、それでも輻射熱で軸受端面の温度は 200℃近くになることがある。
従来、このような高温条件で使用されるころがり軸受の封入グリースには、高温での劣化が少なく、長い寿命が得られるフッ素系グリースが一般に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年電子写真装置の需要が増えるにつれ、そのコストダウンが緊急の課題となっているが、フッ素系グリースは高価であり、電子写真装置の定着ローラに使用されるころがり軸受のコストダウンの妨げになっているという問題がある。
【0004】
また、電子写真装置のコストダウンを図るために、成形性と耐熱性を兼ね備えたポリカーボネート樹脂など非結晶性の樹脂製部品が多用されるようになってきたが、これらの樹脂は封入グリースに用いられている油脂類により、いわゆるケミカルアタックと呼ばれる現象が生じやすい。このため、ころがり軸受に使用されるグリース類によりポリカーボネート樹脂が破損を起こしやすいという問題がある。
特にフッ素系グリースに次ぐ高温用グリースとして、かつフッ素系グリースよりも安価なグリースとして、高粘度エステル油を基油としたウレアグリースが使用されることもあるが、このウレアグリースはポリカーボネート樹脂に対してケミカルアタックを起こしやすいという問題がある。
また、コストダウンを目的に、フッ素系グリースに高粘度エステル油などを添加すると、滴点が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、優れた耐熱性を有し、フッ素系グリースよりも安価でケミカルアタック性のない潤滑グリースが封入された電子写真装置用ころがり軸受を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のころがり軸受は、同心に配置される内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、この転動体の周囲に封入される潤滑グリースとを備え、電子写真装置の軸受部に用いられるころがり軸受であって、上記潤滑グリースは基油を異にする複数のグリースが混合されていることを特徴とする。
また、上記電子写真装置の軸受部が定着ローラを支持する軸受部であることを特徴とする。
また、上記複数のグリースを構成する一つのグリースAがパーフルオロポリエーテル油を基油とし、フッ素樹脂粉を増ちょう剤とするグリースであることを特徴とする。
また、グリースAに、グリースBおよびグリースCからなる群から選ばれた少なくとも一つのグリースを混合してなり、グリースBは、ポリオレフィン油を基油とし、ウレア化合物、シリカ粉およびベントナイト粉からなる群から選ばれた少なくとも一つを増ちょう剤とするグリースであり、グリースCは、アルキルジフェニルエーテル油を基油とし、ウレア化合物、シリカ粉およびベントナイト粉からなる群から選ばれた少なくとも一つを増ちょう剤とするグリースであることを特徴とする。
また、グリースAが潤滑グリース全体に対して 30〜70 体積%混合されてなることを特徴とする。
【0007】
本発明のころがり軸受は、基油を異にする複数のグリースを混合することで、特にパーフルオロポリエーテル油を基油とし、フッ素樹脂粉を増ちょう剤とするグリースAを必須成分とすることで、ケミカルアタックを受けやすい樹脂製部品をころがり軸受と併用しても、その樹脂製部品が破損することがなくなり、電子写真装置等のコストダウンが図れる。
【0009】
本発明の電子写真装置用ころがり軸受に用いられる潤滑グリースは、支点間距離 100mmの位置に支持された厚さ 6.5mmのポリカーボネート樹脂板表面に潤滑グリースを塗布して、前記ポリカーボネート樹脂板の中心部に、垂直長さ3.5mmの撓み量を与えて雰囲気温度 75℃で 3 時間保持したときに、ポリカーボネート樹脂板表面に少なくとも微小亀裂が生じないことを特徴とする。ここで、微小亀裂とはポリカーボネート樹脂板表面層に生成して光の乱反射を生じるような微小筋をいい、いわゆるクレージングやヘヤークラックと称される。この微小筋が成長すると亀裂になり、最後にはポリカーボネート樹脂板の破損にいたる。合成樹脂板に塗布された潤滑グリースにより微小亀裂が生じる現象をケミカルアタックと称する。
【0010】
パーフルオロポリエーテル油を基油としフッ素樹脂粉を増ちょう剤とするグリースAを必須成分として、他の非フッ素系グリース類を混合することで、すなわちグリース同士の混合とすることで、(イ)目的とする特性に応じた潤滑グリースが混合のみで得られ製造工程が簡略となる、(ロ)グリースAにオレフィン油および/またはアルキルジフェニルエーテル油を混合する場合にみられる滴点の低下現象が抑えられる。その結果、ケミカルアタックを受けやすく、多くの異なった特性を併せて要求される電子写真装置等の事務機器に用いられる軸受部用グリースとして好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するグリースAは、パーフルオロポリエーテル油を基油としフッ素樹脂粉を増ちょう剤とするグリースである。
パーフルオロポリエーテル油は、脂肪族炭化水素ポリエーテルの水素原子をフッ素原子で置換した化合物であれば使用できる。そのようなパーフルオロポリエーテル油を例示すれば、以下の化1および化2で示される側鎖を有するパーフルオロポリエーテルと、化3から化5で示される直鎖状のパーフルオロポリエーテルとがある。これらは単独でもまた混合しても使用できる。n、mは整数である。
化1の市販品としてはフォンブリンY(モンテジソン社商品名)を、化2の市販品としてはクライトックス(デュポン社商品名)やバリエルタJオイル(クリーバー社商品名)を、化3の市販品としてはフォンブリンZ(モンテジソン社商品名)を、化4の市販品としてはフォンブリンM(モンテジソン社商品名)を、化5の市販品としてはデムナム(ダイキン社商品名)等をそれぞれ例示できる。
【0012】
【化1】
Figure 0004064073
【化2】
Figure 0004064073
【化3】
Figure 0004064073
【化4】
Figure 0004064073
【化5】
Figure 0004064073
【0013】
増ちょう剤であるフッ素樹脂粉は上記パーフルオロポリエーテル油と親和性が高く、高温安定性、耐薬品性を有する粉末が使用できる。
フッ素樹脂を例示すれば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのパーフルオロ系フッ素樹脂が好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が高温安定性、耐薬品性が優れているため好ましい。
【0014】
グリースAは、グリースA全体量に対して、パーフルオロポリエーテル油を 70 〜90 体積%、フッ素樹脂粉を 10〜30 体積%配合することが好ましい。この範囲の配合とすることにより、軸受封入グリースとして洩れが少なく、長時間トルクを下げられる好ましいちょう度に調整できる。
【0015】
ポリオレフィン油は、以下の化6、化7で示される液状のポリオレフィンが使用できる。
【化6】
Figure 0004064073
ここで、nは 4〜16 の整数、mは 1〜6 の整数である。
【化7】
Figure 0004064073
ここで、nは 1〜8 の整数、mは 1〜3 の整数、qは 1〜3 の整数、pはポリオレフィン油の粘度により異なる整数である。
【0016】
ポリオレフィン油は、室温で液状を示し、動粘度が100mm2/s (40℃)以上のものが好ましい。100mm2/s 未満の動粘度であると潤滑グリースとした場合に蒸発損失が大きく長時間での潤滑性が期待できない。
【0017】
アルキルジフェニルエーテル油は、以下の化8で示されるモノアルキルジフェニルエーテル油、および/または化9で示されるジアルキルジフェニルエーテル油が使用できる。
【化8】
Figure 0004064073
【化9】
Figure 0004064073
ここで、R1、R2、R3は、それぞれC8〜C20のアルキル側鎖であり、一つのフェニル環に結合しているか、あるいは二つのフェニル環にそれぞれ結合している。
これらの中で、耐熱性、蒸発特性を考慮するとアルキル側鎖R2およびR3を有するジアルキルジフェニルエーテル油が好ましい。
【0018】
上記ポリオレフィン油およびアルキルジフェニルエーテル油に配合される増ちょう剤について説明する。
ウレア化合物は尿素結合を分子内に 2 個有するジウレアが好ましく、以下の化10で示される。
【化10】
Figure 0004064073
ここで、R4、R5およびR6は、脂肪族基、脂環族基または芳香族基をそれぞれ表す。R4およびR5が脂環族基および/または芳香族基である脂環族ウレア、芳香族ウレアが優れた高温性を有するため好ましい。なお、ウレア化合物の製造方法の一例としては、ジイソシアナート化合物にイソシアナート基当量のアミン化合物を反応させて得られる。
【0019】
シリカ粉は、SiO2の粉末であり、本発明においては四塩化ケイ素の高温気相加水分解によって生成する煙状のSiO2を捕捉採集した微粉末状のシリカ粉が好ましい。
【0020】
ベントナイト粉は、含水アルミニウムケイ酸塩の一種でモンモリロナイトとも称される粘土を水を用いて分級し微粉のみとして、さらに有機アミン類で表面を処理して親油性にした微粉末が用いられる。
【0021】
グリースBは、グリースB全体量に対して、ポリオレフィン油を 70〜90 体積%、増ちょう剤を 10〜30 体積%配合することが好ましい。この範囲の配合とすることにより、軸受封入グリースとして好ましいちょう度に調整できる。
また、グリースCは、グリースC全体量に対して、アルキルジフェニルエーテル油を 70〜90 体積%、増ちょう剤を 10〜30 体積%配合することが好ましい。この範囲の配合とすることにより、軸受封入グリースとして好ましいちょう度に調整できる。
【0022】
グリースA、B、Cは公知の方法で作製できる。例えば、上記基油に上記増ちょう剤を加えて撹拌した後、ロールミル等を通して半固形状のグリースが得られる。
また上記グリースには、後に示すベンディング試験でポリカーボネートを損傷しないものであれば、必要に応じて公知の添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、アミン系、フェノール系、イオウ系、ジチオりん酸亜鉛などの酸化防止剤、塩素系、イオウ系、りん系、ジチオりん酸亜鉛、有機モリブデンなどの極圧剤、石油スルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、ソルビタンエステルなどの防錆剤、ベンゾトリアゾール、亜硝酸ソーダなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレンなどの粘度指数向上剤、摩耗抑制剤、清浄分散剤などが挙げられ、これらを単独または 2 種類以上組み合わせて添加できる。
【0023】
本発明で使用できる潤滑グリースは、グリースAにグリースBまたはグリースCを混合するか、あるいはグリースAにグリースBおよびグリースCを混合して得られる。好適な潤滑グリースは、グリースAにグリースBまたはグリースCを混合した潤滑グリースであり、より好適な潤滑グリースは、グリースAにグリースBを混合した潤滑グリースである。グリースAにグリースBを混合することにより、優れた耐熱性を維持してケミカルアタック性を抑えてコストダウンを図った潤滑グリースが得られる。
【0024】
グリースAの混合割合は、グリースBおよび/またはグリースCが混合される潤滑グリース全体に対して 30〜70 体積%である。グリースAの混合割合が 70 体積%をこえるとコストダウンの効果が低くなる。 30 体積%未満であると耐熱性の低下が大きくなる。
【0025】
本発明で使用できる潤滑グリースはケミカルアタック性に優れる。ケミカルアタック性は、潤滑グリースが表面に塗布されたポリカーボネート樹脂板に機械的応力を加えた後の樹脂板表面を観察するベンディング試験法により評価できる。ベンディング試験法について説明する。
(1)試験条件
曲げ試験片: 127mm(長さ)× 12.7mm(幅)× 6.5mm(板厚)
試験片支持点距離: 100mm
試験片撓み量(支持点間距離の中心部の撓み量): 3.5mm
試験温度: 75℃
保持時間: 3 時間
試験片材質:ユーピロン S2000R(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
(2)試験方法
三点曲げ試験による。 120℃で 2 時間アニール処理をした曲げ試験片の表面に潤滑グリースを塗布し、上記支持点距離で支持して塗布面の裏面より撓み量を与えて 75℃× 3 時間空気中にて保持する。保持後のクラック有無を目視で確認する。
【0026】
本発明のころがり軸受の一例を図1に示す。図1は電子写真装置の定着ローラを支持する小径ころがり軸受の断面図である。
ころがり軸受1は、外周面に内輪転走面を有する内輪2と内周面に外輪転走面を有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面と外輪転走面との間に介在される複数個の転動体4および図示を省略した保持器およびシール部材とにより構成される。少なくとも転動体4の周囲に潤滑グリース5が封入される。
潤滑グリース5は、基油を異にする複数のグリースを混合して得られる。特に上記グリースAを必須成分とする。また、電子写真装置の定着ローラを支持する軸受部に用いられる。
【0027】
本発明のころがり軸受は、グリースAにグリースBを混合した潤滑グリース、グリースAにグリースCを混合した潤滑グリース、グリースAにグリースBおよびグリースCを混合した潤滑グリースを封入することができる。その結果、ケミカルアタックを受けやすい樹脂製部品と併用しても該樹脂製部品を破損することがないので、樹脂製部品を多用することによりコストダウンを図ろうとする電子写真装置に配設される定着ローラ用ころがり軸受に好適である。
【0028】
上記定着ローラ用ころがり軸受の場合、定着部には用紙の通過による静電気が発生する。このため、ロールに設けたアース機構により静電気を逃がすようにしているが、一方でアースを軸受にて行なう場合がある。この用途においては、本発明の潤滑グリースに導電性カーボンを適量添加して導電性を付与することが好ましい。この導電性が付与された潤滑グリースを封入したころがり軸受を電子写真装置に配設される定着ローラに用いることで電子写真装置の部品点数を削減できる。なお、グリースA、B、Cにそれぞれ導電性カーボンを添加した後に混合しても、また、混合された潤滑グリースに導電性カーボンを添加してもよい。
【0029】
【実施例】
参考例1:グリース1の作製
グリース全体に対して、パーフルオロポリエーテル油(デュポン社製商品名、クライトックス240AC) 80 体積%に、フッ素樹脂粉(デュポン社製商品名、バイダックス) 20 体積%を加え撹拌した後、ロールミルに通しグリースAである半固形状のグリース1を得た。
【0030】
参考例2:グリース2の作製
グリース全体に対して、エチレンとα−オレフィンとの共重合オリゴマーであるポリオレフィン油(三井化学社製商品名、ルーカントHC−20、動粘度 155mm2/s(at40℃)) 85 体積%に、脂環族ウレア(化10において、R4およびR5がシクロヘキシル基、R6がジフェニルメタン基である脂環族ウレア) 15 体積%を加え撹拌した後、ロールミルに通しグリースBである半固形状のグリース2を得た。
参考例3:グリース3の作製
グリース全体に対して、参考例2と同一のポリオレフィン油 90 体積%に、シリカ粉(日本アエロジル社製商品名、R972) 10 体積%を加え撹拌した後、ロールミルに通しグリースBである半固形状のグリース3を得た。
【0031】
参考例4:グリース4の作製
グリース全体に対して、アルキルジフェニルエーテル油(松村石油社製商品名、モレスコLB100、動粘度 97mm2/s(at40℃)) 10 体積%に、芳香族ウレア(化10において、R4およびR5がフェニル基、R6がジフェニルメタン基である芳香族ウレア) 20 体積%を加え撹拌した後、ロールミルに通しグリースCである半固形状のグリース4を得た。
参考例5:グリース5の作製
グリース全体に対して、参考例5で用いたアルキルジフェニルエーテル油 90 体積%に、参考例3で用いたシリカ粉 10 体積%を加え撹拌した後、ロールミルに通しグリースCである半固形状のグリース5を得た。
参考例6:グリース6の作製
グリース全体に対して、高粘度エステル油(アクゾノーベル社製商品名、KL215、動粘度 120mm2/s(at40℃)) 85 体積%に、参考例2で用いた脂環族ウレア 15 体積%を加え撹拌した後、ロールミルに通し半固形状のグリース5を得た。
なお、グリース2〜グリース6のコストはグリース1のコストを 1.00 としたときそれぞれ 0.25 であり、グリース2〜グリース6の比重はグリース1の比重を 1.8 としたときそれぞれ 1.0 であった。
【0032】
実施例1〜実施例8
表1に示す割合でグリース1を必須成分として、グリース2〜グリース5をそれぞれ混合撹拌して潤滑グリースを得た。配合比率はグリース全体に対する体積%である。
得られた潤滑グリースの滴点、比重、ベンディング試験結果を表1に示す。ころがり軸受には空間容積を規定して一定量の潤滑グリースを封入するが、潤滑グリースの比重を低くするとコストダウンになる。このため、グリース1単独に対する比重比を同時に求め、表1に示した。
また、軸受6305ZZに静止空間容積の 25 %の上記潤滑グリースを封入してころがり軸受を作製した。得られたころがり軸受を寿命試験にて評価した。寿命試験は、ラジアル荷重 150kgf、回転数 100rpm、雰囲気温度 200℃にて軸受を回転させ、過負荷により駆動モータが停止するまでの時間を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
比較例1および比較例2
表1に示す割合でグリース1に、参考例2と同一のポリオレフィン油単独(比較例1)、参考例4と同一のアルキルジフェニルエーテル油単独(比較例2)をそれぞれ混合して潤滑グリースを得た。配合比率はグリース全体に対する体積%である。得られた潤滑グリースの評価を実施例と同一の方法で行なった。結果を表1に示す。
【0034】
比較例3および比較例4
表1に示す割合でグリース1に、グリース4をそれぞれ混合撹拌して潤滑グリースを得た。得られた潤滑グリースの評価を実施例と同一の方法で行なった。結果を表1に示す。
【0035】
比較例5
グリース6単独の評価を実施例と同一の方法で行なった。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
Figure 0004064073
【0037】
表1より、実施例1〜実施例8は、いずれも滴点の低下がなく、寿命、ケミカルアタック性に優れ、また比重で比較したコストダウン性に優れている。一方、比較例1および比較例2は滴点が低下した。このため、ころがり軸受の寿命試験は中止した。グリース1の混合比率が 70 体積%をこえる比較例3はコストダウンの効果が少なく、 30 体積%未満の比較例4は寿命が低下する。アルキルジフェニルエーテル油を基油とする比較例5はケミカルアタック性が低下した。
【0038】
【発明の効果】
本発明のころがり軸受は、転動体の周囲に封入される潤滑グリースが基油を異にする複数のグリースを混合してなるので、特にパーフルオロポリエーテル油を基油とし、フッ素樹脂粉を増ちょう剤とするグリースを必須成分とするので、ケミカルアタックを受けやすい樹脂製部品をころがり軸受と併用しても、その樹脂製部品が破損することがなくなり、電子写真装置等のコストダウンが図れる。
また、耐熱性に優れるので、電子写真装置の定着ローラを支持する軸受部に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】小径ころがり軸受の断面図である。
【符号の説明】
1 ころがり軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 潤滑グリース

Claims (3)

  1. 同心に配置される内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、この転動体の周囲に封入される潤滑グリースとを備え、電子写真装置の軸受部に用いられるころがり軸受であって、
    前記潤滑グリースが基油を異にする複数のグリースを混合してなり、
    前記複数のグリースを構成する一つのグリースAがパーフルオロポリエーテル油を基油とし、フッ素樹脂粉を増ちょう剤とするグリースであり、
    前記グリースAに、グリースBおよびグリースCからなる群から選ばれた少なくとも一つのグリースを混合してなり、
    前記グリースBは、ポリオレフィン油を基油とし、ウレア化合物、シリカ粉およびベントナイト粉からなる群から選ばれた少なくとも一つを増ちょう剤とするグリースであり、
    前記グリースCは、アルキルジフェニルエーテル油を基油とし、ウレア化合物、シリカ粉およびベントナイト粉からなる群から選ばれた少なくとも一つを増ちょう剤とするグリースであることを特徴とするころがり軸受。
  2. 前記グリースAが潤滑グリース全体に対して 30〜70 体積%混合されてなることを特徴とする請求項1記載のころがり軸受。
  3. 前記電子写真装置の軸受部が定着ローラを支持する軸受部であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のころがり軸受。
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