JP4063676B2 - エレクトロスプレーを使用する高電界非対称イオン移動度分光分析装置 - Google Patents

エレクトロスプレーを使用する高電界非対称イオン移動度分光分析装置 Download PDF

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    • G01N27/624Differential mobility spectrometry [DMS]; Field asymmetric-waveform ion mobility spectrometry [FAIMS]

Description

本発明は、エレクトロスプレーによる試料噴射を行い、内部または外部検出器を使用する電界非対称波形イオン移動度分光計におけるガスおよび液体試料の調製、濾過ならびに検出のためのイオン移動度分光分析に関する。
エレクトロスプレー質量分析法は、生体分子の構造分析(すなわち、プロテイン、ペプチドおよびDNA)に広く適用されてきた強力な分析ツールである。これについては、Electrospray Ionization Mass Spectrometry Fundamentals, Instruments, and Applications, Richard B. Cole, John Wiley and Sons, 1997を参照のこと。この方法は、大部分の医薬品の開発における中心的役割を果たしており、また人体の発がん物質に対する暴露量を定量測定するのに使用されている。医薬品市場の規模および可能な収益の理由から、エレクトロスプレー質量分析法に基づく測定法および技術的強化方法の開発に関心が集まっている。
近年の一般的傾向は分析に必要な試料量を最小にすることにあり、マイクロ・エレクトロスプレー・イオン化(マイクロ−ESI、マイクロ−ES)およびナノスプレーがこれら方法の2つを表わしている。この2つの方法は、一般にロットを共有し、互換可能のものとして使用される。マイクロ−ESは、“従来の” エレクトロスプレーと同一のシステム・コンポーネントを用いてエレクロトスプレー発生源を小型化している。これらコンポーネントには、分析用試料を含みポンプで送られる液体流の発生源と、ポンプで送られる液体が内部を通る細い直径のとがった中空のニードルと、スプレーを発生する高圧電源とが挙げられる。ナノスプレーは、ニードル内の液体の、吸引部の対極方向への静電引力に依存して、ポンプと異なる流れを発生させる。この特性により、ナノスプレーは、試料の浪費を最小にする手段として大きい引力を発生する。エレクロトスプレー、マイクロ−ES、ナノスプレーは、すべてエレクロトスプレーと呼ばれる一般クラスの種類であり、本特許においては区別せずにエレクロトスプレーと称する。
エレクロトスプレー・イオン化プロセスの特質は、試料調製を重要な考慮事項とする。試料に加えて溶媒および緩衝塩の存在は、スペクトルの複雑性を大幅に増加させて、検出限界を低下させる。エレクロトスプレー・イオン化プロセスは、質量スペクトルの大きいバップグラウンドを生じる多量の溶媒イオンを生成し、その結果、溶液中の追跡レベルにおける複数の化合物の識別を大幅に制限する。対処しなければならない溶媒イオンが存在しない場合でも、多くの用途では、質量分析に先立ち、ある程度の調製を必要とする複合混合物を用いて作業しなければならない。これについては、J. Lee, J. F. Kelly, I. Chernushevich, D. J. Harrison, and P. Thigalut “Separation and Identification of Combined Capillary Electrophoresis/Nanoelectrospray Mass Spectrometry,” Anal. Chem. 2000, 72,599-609を参照のこと。したがって、望ましくない溶媒を除去し、バックグラウンドからの試料・イオンを分離する優れた方法が必要とされる。
エレクロトスプレー質量分析法(ES−MS)は、ペプチド、プロテインの構造決定のための強力なツールを提供する。この分光分析は、プロテインの機能を広い範囲の構造で定義するときに重要である。プロテインに関する構造情報は、一般に、アミノ酸配列から決定される。この配列を識別するために、プロテインは、通常、酵素により消化され、ペプチド断片はタンデム質量分析法により配列される。この配列が得られる別の方法は、プロテインを消化して、ペプチド断片の分子重量を測定することである。これらは、理論的には、データ・ベース内に見出される、すべてのプロテインを消化するコンピュータ・プログラムグの入力データであり、理論的なフラグメントは測定された分子重量と比較される。
最近になって、イオン移動度分光分析が、エレクロトスプレー/質量分析法の測定に対して有効な情報を提供できることが確認された。イオン移動度分光分析は、通常は、分子の形状と大きさに敏感な大気圧方法である。IMSと質量分析計の組み合わせによるプロテイン識別により、プロテイン消化の必要をなくし、試料調製を簡単にすることができる。
市販のIMSシステムは飛行時間(移動時間、TOF)を基本とし、イオンがシャッター・ゲートから不活性雰囲気(1〜760 Torr)を通って検出器に移動するのに要する時間を測定する。ドリフト時間は、イオンの移動度(すなわち、イオンの大きさ、質量および電荷)に依存し、また検出されるイオン種の特性を示す。TOF−IMSは、麻酔薬、爆薬、化学兵器薬剤を含む多くの化合物を検出するのに有効な手法である。これらについては、PCT出願PCT/CA99/00715および米国特許5,420,424を参照のこと(特許文献1および特許文献2)。イオン移動度分光分析では、気相イオン移動度は、一定の低電界強度をもつドリフト・チューブを使用して測定される。イオンは、ドリフト・チューブ内に注入され、その後、それらのドリフト速度の差に基づいて分離される。これらの条件の下でイオンのドリフト速度は、電界強度およびイオン移動度に比例する。このイオン移動度は、実験により測定され、印加される電界とは無関係である。現在の分光計は、イオンを識別するのに、従来通りに機械加工されたドリフト・チューブ(最小サイズは約40cm)を使用する。
従来の飛行時間イオン移動度分光計(TOF−IMS)では、イオン識別は低電界強度(1000V/cm未満)中でなされ、この電界中では、各イオンの移動度係数は、本質的に電界強度に無関係である[.W. McDaniel and Edward A. Mason, The mobility and diffusion of ions in gases, John Wiley & Sons, 1973 ]。
高電界では、イオン移動度は印加された電界強度に依存するようになり、イオンのドリフト速度は電界強度との比例関係を維持しなくなる。この原理は、本明細書の主題に利用されている。
電界非対称波形イオン移動度分光計(FAIMSまたはRF−IMSとして公知)は、このような高電界を利用して、高電界および低電界でのイオン移動度の差に基づきイオン種を識別する。
FAIMS分光計は、紫外線光イオン化ランプのようなイオン化源(イオン発生源)を使用して、ガス・試料を、各イオン種類がガス・試料中の特定の化学物質に相当するイオン種の混合物に変換する。次に、イオン種はイオン・フィルタを通り、このフィルタ部分で特定の電界が電極間に印加され、フィルタを通過できるイオン種類を選択する。フィルタを通過したイオン種類は、検出器電極に衝突し、電気信号を発生する。試料中のイオン種の混合物を検出するために、フィルタ電極間に印加される電界は、発生するレンジおよびスペクトルにわたって走査される。イオン濾過作用は、イオン電極間に発生する2つの電界、すなわち、非対称・周期的・高周波(RF)電界とDC補償電界との組み合わせにより得られる。非対称RF電界は、ピーク正電界強度と負電界強度との間に大きな差を有する。非対称RF電界は、イオンを散乱させ、イオンをイオン・フィルタ電極方向に偏向させ、そこでイオンを中性化(neutralize)する。一方、補償電界は、特定イオンの散乱を防止して、この特定イオンが検出器に到達できるようにする。イオンは、低電界と高電界とにおけるイオン移動度の差に基づき、測定器内で濾過される。すなわち、イオンは、低電界でのイオン移動度に対する高電界でのイオン移動度の、化合物依存挙動を基にして、分離される。
FAIMS方法は、印加された電界強度によりイオン移動度が影響を受けることを見出した、MasonおよびMcDanielの[.W. McDaniel and Edward A. Mason, The mobility and diffusion of ions in gases, John Wiley & Sons, 1973 ]の実測を基にしている。40Td(大気圧において、E>10,700V/cm)のガス密度対電界比(E/N)よりも上では、移動度係数K(E)は電界に対して非直線関係になる。この関係は、各イオン種について特有であると考えられている。以下は、MasonおよびMcDanielの[.W. McDaniel and Edward A. Mason, The mobility and diffusion of ions in gases, John Wiley & Sons, 1973 ]からのいくつかの例である。クラスタ・イオンCOCOの移動度は、電界強度の増加とともに大きくなる(参考資料[.W. McDaniel and Edward A. Mason, The mobility and diffusion of ions in gases, John Wiley & Sons, 1973 ]の図7−1−K−1)。分子および原子イオンによっては、移動度係数はさらに複雑な様相で変化する。例えば、原子イオン(atomic ions)Kについては、一酸化炭素ガス中の移動度係数は電界の増加とともに20%まで増加し、E/N〜200Tdよりも上では、移動度係数は減少し始める(参考資料[.W. McDaniel and Edward A. Mason, The mobility and diffusion of ions in gases, John Wiley & Sons, 1973 ]の図7−1−K−3)。特定の他のイオン、例えばN,N ,N では、移動度はわずかしか変化しない(参考資料[.W. McDaniel and Edward A. Mason, The mobility and diffusion of ions in gases, John Wiley & Sons, 1973 ]の図7−1−H−1/2)。図1Aは、電界に対する3つの起こりうるイオン移動度依存特性を簡略化して示す。簡単化のために、発明者らは、低電界(Eが約10〜10V/cm)における低電界移動度係数値K(Emin)は3つのイオン種類すべてにおいて同一である、と仮定する。ただし、Emaxでは、移動度係数値K(Emax)はイオン種類のそれぞれで異なる。
移動度係数値K(E)の電界依存性は、E/Nの偶数べき指数の級数展開式で表わすことができる[18]。
Figure 0004063676
ここでK(0)は低電界におけるイオンの移動度係数であり、α、αは展開式の係数である。この式は、式12に示す実効α(E)を用いて簡単化できる[T. W. Carr, Plasma Chromatography, Plenum Press, New York and London, 1984]。
Figure 0004063676
この式によれば、α(E)>0のときは、移動度係数K(E)は電界強度とともに増加し、α(E)〜0のときは、移動度係数K(E)は変化しない。また、α(E)<0のときは、K(E)は電界強度の増加につれて減少する。電界依存移動度係数の式は、運動量およびエネルギー平衡を考慮に入れて導き出すこともできる。イオンのエネルギーε=3/2kTeffは、有効温度の関数として表わすことができる。
Figure 0004063676
イオン中性断面Ω(Teff)の値が剛球相互作用に対して大幅に変化せず、さらに、減少質量μは一定である仮定する場合、α(E)<0の事例は式13で表わされるモデルに基づいて説明できる[T. W. Carr, Plasma Chromatography, Plenum Press, New York and London, 1984、 E. A. Mason and E. W. McDaniel, Transport Properties of Ions in Gasses, Wiley, New York, 1988]。これらの条件の下では、イオンの有効温度またはエネルギーが増加する場合、移動度K(E)は減少することが判明している。物理的には、この効果は簡単に説明される。電界強度が増加すると、イオンは中性ガスを通してさらに強力に駆動される。これによりイオン中性衝突数が増加し、その結果、平均イオン速度は低下し、イオン移動度係数も減少する。
しかし、剛球モデルは、特定のイオンでは、移動度が電界(α(E)>0)とともに増加することを示す実験結果を説明できない。増加したE/Nの値において移動度が増加することに対する説明の1つは、高電界においてイオン・クラスタの分解が発生するからと考えられる。低電界中の周辺条件にあるイオンは、一般に、自由状態では存在しない。イオンは、通常、結合した水のようなn極分子をもつクラスタ形状(例えば、MH(HO))である。電界強度が増加するにつれ、衝突の間に付与されるエネルギーによって、運動エネルギーおよびその結果としてイオンの有効温度(Teff)が増加する。これにより、イオンのクラスタ形成量が減少(nの減少)し、その結果、イオン断面Ω(Teff)が減少し、質量μが減少する。次に、式13によれば、イオン・クラスタの分解が起こり、断面および減少した質量が大幅に減少して、(Teff)の上昇を相殺する場合、(α(E)>0)の事例は説明可能である。
α(E)〜0である第3の事例は、イオンの有効温度の上昇により相殺されるクラスタの分解に起因するイオン断面の減少によって説明できる。これは、イオンの移動度係数の変化を引き起こさない。
イオン濾過に対するFAIMSの動作メカニズムを、以下に述べる。図1Bに示す2つの電極間の狭い空隙内の同一場所において、中性分子の局部的イオン化に起因して形成される、電界に関して異なるイオン移動度係数依存性をもつ3種類のイオン(すなわち、α(E)>0、α(E)<0、α(E)〜0)を考える。キャリヤ・ガスの流れが、これらのイオンを、空隙間で長軸方向にドリフト・チューブの下流に移送する。この時、非対称RF電界が電極に印加されると、RF電界に応答して、イオンはキャリヤ・ガス流れの垂直方向に振動し、同時に、キャリヤ・ガスによってドリフト・チューブの下流に移動する。本明細書では、最大電界強度|Emax|>10,000V/cmおよび最小電界強度|Emin|<<|Emax|をもつ簡略化した非対称RF電界波形(図1C)を使用して、RF−IMSの動作原理を示す。非対称RF波形は、時間平均電界がゼロになり、さらに以下の式が成立するように設計される。
Figure 0004063676
ここで、tは高電界が印加されている期間の部分であり、tは低電界が印加されている時間である。βは一定であり、周期内の高電界および低電界部分の曲線下の面積に相当する。y方向のイオン速度は以下の式で与えられる。
Figure 0004063676
ここで、Kはイオン種に対するイオン移動度係数であり、Eは電界強度である(この場合は、すべてy方向)。正極性RF電圧パルス(期間t)の振幅が、10,000V/cmよりも大きい電界強度を発生する場合、上側電極方向への速度は以下のようになる。
Figure 0004063676
この式で示される速度は、図1Aに示すように、高電界条件における各イオンの移動度係数Kupが異なるために、イオン種ごとに異なる(図1B)。移動度係数α(E)>0を有するイオンは高速で移動し、α(E)<0を有するイオンは最小速度を有する。したがって、各イオンの軌道の傾斜も異なる。次の部分の期間(t)で、RF電界の極性が切り換わると、3種類のイオンすべてが、以下の式に示す同一速度で、下側プレートに向かい下方に移動を開始する。
Figure 0004063676
この低電界条件(図1A参照)では、3種類のイオンすべてが同一移動度係数Kdownを有する。したがって、3種類のイオンの軌道は、すべて、周期のこの部分では同一傾斜を有する(図1B)。
イオンの初期位置からのy方向への変位は、y方向のイオン速度Vに、電界が印加される時間長さΔtを乗算した値である。
Figure 0004063676
印加されたRF電界の1周期内では、イオンはyの正および負の両方向に移動する。式2を式5に代入すると、RF電界の1周期におけるイオンの平均変位は以下の式で表わされる。
Figure 0004063676
式1を使用して、この式は以下のように表わされる。
Figure 0004063676
βが印加されたRF電界により決まる定数であるため、RF電界の周期T=t+tあたりのイオンのy方向変位は、高電界と低電界条件との間のイオン移動度の変化に依存する。キャリヤ・ガスだけがイオンをz方向に移送すると仮定する。イオン・フィルタ・プレート間でのイオン滞在時間tresの間における、イオンの初期位置からの全体イオン変位Y(電界による)は、以下の式になる。
Figure 0004063676
イオン・フィルタ領域内の平均イオン滞在時間は、式9で与えられる。Aはフィルタ領域の断面積であり、Lはイオン・フィルタ電極の長さ、Vはイオン・フィルタ領域の容積V=AL、Qはキャリヤ・ガスの容積流量である。
Figure 0004063676
式9を式8に代入し、式1からのβ=|Emax|tを用い、RFパルスのデューティ・サイクルをD=t/Tと定義すると、イオン種に対する変位の式8は以下のように書き直される。
Figure 0004063676
ここで、Yは、イオン・フィルタ領域内の平均イオン滞在時間に基づくy方向の全体イオン変位である。式10から、空隙内のイオンの垂直方向変位は、低電界と高電界条件の間の移動度係数の差に比例することは明らかである。異なるΔK値を有する異なるイオン種は、所定のtresに対して異なるYの値で変位する。最大電界の値、イオン・フィルタ領域の容積、デューティ・サイクル、流量を含む他のすべてのパラメータは、1次的には、すべてのイオン種に対して基本的に同一である。
RF電界に加えて低強度DC電界(|E|<|Emin|<<|Emax|)が、イオンのRFにより引き起こされた平均移動(y方向に移動)と逆方向に印加されたとき、特定のイオン種の軌道は直線になる(図1D1、1D2、1D3を参照)。これにより、特定のイオン種はイオン・フィルタ電極間を妨害されずに通過し、一方で、他のすべてのイオン種はフィルタ電極方向に偏向される。フィルタを調整し、かつRFにより引き起こされた移動を補償する電界を生成するDC電圧は、イオン種の特性を示し、補償電圧と呼ばれる。ガス・試料の完全なスペクトルは、フィルタに印加されるDC補償電圧を、増加していくか掃引すること(ramping or sweeping)により得ることができる。掃引電圧値に対するイオン電流の関係は、RF−IMSスペクトルを形成する。イオン・フィルタ電極の一方に印加する電圧を掃引する代わりに、固定のDC電圧(補償電圧)を印加する場合、分光計は連続イオン・フィルタとして作用して、1種類のイオンだけを通過させる。
PCT出願No.PCT/CA99/00715(前記特許文献1)では、エレクトロスプレー・イオン化チャンバまたはエレクトロスプレー発生源を使用してイオンを生成し、このイオンは、最終的に分析領域に移送され、そこで、高周波電圧非対称波形およびDCオフセット電圧の両方を印加される。
国際公開第00/08455パンフレット 米国特許5420424号明細書
したがって、本発明の目的は、電界非対称波形イオン移動度を利用して精度よく化合物を検出する装置を提供することである。
本発明の目的は、電界非対称波形イオン移動度分光計と、新規改良、詳細には3つの領域、すなわち1)試料調製および導入、2)イオン濾過、3)出力および信号収集の新規改良との具体化において達成される。
さまざまな構成の本発明の特徴部分を組み合わせた実施形態は、1)イオンを濾過するFAIMSイオン・フィルタを使用して、イオンの濾過の制御が、高電界非対称波形高周波信号および可変DC補償信号を制御することにより達成されるか、またはFAIMSフィルタを使用して、イオンの濾過の制御が、波長、周波数、振幅、周期、デューティ・サイクルなどを変化させることにより達成されること、2)絶縁基板を利用する平板状FAIMSフィルタを使用して、イオン・フィルタ電極間の空隙を高精度で制御することにより、イオン・フィルタ電極が確実に平行になるようにし、これにより、再現性の高い電界を形成して、結果として高分解能の分光計が得られること、3)絶縁スペーサがフィルタ電極の縁端部の上に重なる平板状FAIMSフィルタを使用することにより、すべての試料がイオン・フィルタ間を通過するように強制され、どのイオンもフィルタ電極をバイパスして検出器電極に到達できないために、化合物の高精度の識別性能を有する高分解能FAIRMが得られること、を含む。
エレクトロスプレーのようなスプレー発生源を使用するにあたり、イオンの脱溶媒が信頼性、再現可能なスペクトルを得るために重要である場合には、脱溶媒が達成される。脱溶媒電極を備えて脱溶媒を支援することができ、その場合には、対称RF信号を脱溶媒電極に供給して、脱溶媒を促進することができる。RF信号はイオンにエネルギーを提供し、その結果、イオンは有効温度に上昇し、また脱溶媒プロセスを促進させる役割を果たす。
また脱溶媒電極を使用して、エレクトロスプレーまたはエレクトロスプレー以外の他の発生からのガス・試料中のイオン・クラスタ形成量を制御できる。イオン・クラスタ形成を制御することにより、再現性の高い測定が可能になり、また検出されるイオンに関する追加情報を提供できる。
本発明の新規な実施形態は、試料調製セクションに関する。この実施形態は、エレクトロスプレー・ヘッドの使用と、イオン・フィルタ電極から分離している吸引電極の使用とを含む。吸引電極をイオン・フィルタ電極から分離する利点は、これにより、イオン・フィルタ電極とは異なる電圧を吸引電極に自由に供給できることであり、またこれにより、エレクトロスプレー条件およびFAIMS内へのイオン導入条件を最適化できる。イオン・フィルタ電極と吸引電極のこの分離は、円筒状FAIMS構成においても実現できる。
さらに、案内電極を設けて、イオン・フィルタ内へのイオン注入を最適化することもできる。本発明の別の実施形態では、エレクトロスプレー・アセンブリをFAIMSの基板の1つに取り付けでき、また、案内電極を使用してイオン領域にイオンを導くことができる。案内電極は、FAIMSの基板の1つに取り付けられる、もしくは接続される、または基板の1つの近傍にある、自立構造にできる。このアセンブリは、脱溶媒を促進するための逆方向のガス流を有することができる。
また、本発明は、エレクトロスプレーを使用して飛行時間測定をFAIMS手法と組み合わせることにより、飛行時間測定から提供される追加情報に基づいてイオン種の高精度の識別を実現できる。イオンがFAIMSの開口部から検出器に移動するのに要する時間は、測定可能である。これは、吸引電極および案内電極の電圧を個々に制御することにより達成できる。例えば、最初に吸引電極の電圧を調整して、イオンがドリフト領域に入らないようにするが、さらに案内電極で収集されるようにする。そして、吸引電極にパスル電圧を供給して、特定のイオンをイオン化領域およびイオン・フィルタ内に導入できる。この時、イオンがイオン化領域から検出器に移動するのに要する時間を測定でき、それにより、イオン密度に関する追加の識別情報を提供する。
本発明の新規な構成は、絶縁基板がハウジングを形成できる場合の、絶縁体からなる基板または絶縁された基板上の電極の配列の概念を含む。この方法により、デバイス構造を簡単化する大きな利点が得られる。これにより、コストが低減し、ミクロ機械加工およびマルチチップ・モジュールなどに適用される大量生産可能な工程を可能にし、その結果、低コストで小型のセンサを実現できる。
出力セクションでは、提案されるFAIMSの実施形態は、第1に、正および負に帯電しているイオンのような、複数のイオン種を同時に検出できる出力セクションを有することである。
一般に、FAIMSの簡単な分析が気相中で実行されるため、液体試料は液体から気相に変換する必要がある。好ましい実施形態では、エレクトロスプレー法(発明者らは、“従来の”マイクロおよび/またはナノスプレーを包含すると定義する)を使用して、液体試料を気相イオンに変換する。好ましくは、エレクトロスプレー先端から流出するイオンは、平板状のFAIMSデバイスに送られる。本発明の好ましい実施形態においては、試料調製、イオン化、濾過、検出のすべての機能は単一“チップ”上で実行される。
別の実施形態では、エレクトロスプレー−FAIMSは、質量分析計のフィルタとして利用される。質量分析計に結合されたFAIMSは、高精度の分解能、検出限界の向上、分析される分子の形状および構造を抽出するための能力を提供し、分子はプロテインおよびペプチドなどの生体分子を含むことができる。FRIMS手法はイオン移動度を基本としており、イオン濾過および識別は、イオンの大きさおよび形状に大きく依存する。この情報は、遺伝学および蛋白質学の研究(すなわち、製薬産業)における大きな関心事項である。なぜなら、プロテインの形状は、プロテインの機能性の大部分を決定し、したがって、FAIMS濾過は、低コスト大容積のプロテイン特性決定に利用できるからである。特定の実施形態は、質量分析計の受入口に取り付けられるキャリヤに差し込む、使い捨て式FAIMSフィルタ・チップを含む。また、FAIMS−エレクトロスプレー・デバイスは、分析される分子に関する構造(形状)情報と、エレクトロスプレー−質量分析計を使用するだけでは得ることができない配列情報を提供できる。さらに、FAIMSは、エレクトロスプレー−質量分析計を単独で使用するだけでは識別できない、異性体(同一質量であるが、異なる形状をもつ分子)間の識別を可能にする。
特定の実施形態では、エレクトロスプレー−FAIMSは、単一ハウジング内にフィルタおよび検出システムを形成する。本発明のエレクトロスプレー−FAIMS構成は、液体試料分析用の独立した検出器として使用するか、または質量分析計の前置部分として使用できる。本発明は、液体クロマトグラフィ、高圧液体クロマトグラフィ、毛管電気泳動などの他の液体分離手法にも応用できる。本発明の好ましい実施形態は、平板状FAIMSデバイスを含み、1つの実施形態では、このデバイスは、共通のハウジングまたは基板上でエレクトロスプレー・イオン化源と一体化され、質量分析計に結合される。本発明の別の実施形態は、円筒形または同軸形のFAIMSデバイスを含むことができる。
本発明の実施形態では、分子が、発生源から(例えば、エレクトロスプレー先端または毛管電気泳動装置のアウトレットから)排出され、またFAIMSフィルタにより濾過する前にイオン化され、また内部検出器によるか質量分析計もしくは他の検出器により検出された後に、分子の濾過ができる。本発明の1つの実施形態では、ミクロ機械加工(MEMS)により、エレクトロスプレー先端をFAIMSとともに簡単にデバイス内に一体化でき、それにより、正確な、高い再現性の液体試料評価に対応する、高精度で小型の分析システムを実現できる。本発明の別の実施形態では、一体化されたエレクトロスプレー−FAIMSチップを使用して、生物剤検出用で携帯型の、小型で低コストの生物センサが実現できる。好ましくは、これらはミクロ機械加工製作技術を使用して作製される。1つの実施形態では、大気圧化学物質イオン化(APCI)デバイスは、FAIMSフィルタを質量分析計のプレフィルタとして用いることにより達成される。
本発明の以前には、従来の機械加工は、個々のFAIMSデバイスについて、高コストの製作および不十分な再現性を招いていた。さらに、従来技術の円筒形状のFAIMSは、質量分析計に接続すると収集効率が下がるか、または試料中性分子および試料・イオンの両方が質量分析計に入って複雑なスペクトルを発生する。本発明の実施形態における利点は、イオン濾過が試料のイオン化後に実行され、したがって、エレクトロスプレー・プロセスで常に生成される緩衝塩および溶媒イオンが、分析対象の生体分子から分離される。これにより、きわめて単純な質量スペクトルを生成し、生体分子の検出限界および識別性能を向上させる。
エレクトロスプレーを新規のFAIMSフィルタ・デバイスと組み合わせることにより、きわめて高感度で高分解能を有する分析デバイスが実現可能になる。特定の実施形態では、この能力は、FAIMSを利用せずには識別できない化合物を分析するのに提供される。エレクトロスプレーを従来のFAIMSフィルタ・デバイスと組み合わせることは、このデバイスを用いて大量で低コストの試料分析のために低濃度試料を処理するときに、試料汚染の問題を引き起こす。しかし、前記問題は、本発明の実施形態においては克服される。
本発明の新規のFAIMSは、イオン移動度の差を基本とした低コスト、大量生産可能、かつ小型の分光計である。本発明は、詳細には、セラミック・パッケージング、PDボード製造技術、プラスチック処理を含むMEMS製造技術などの大量生産技術を使用して構成され、従来のデバイスより優れたいくつかの追加利点を提供する。大量生産技術により、使い捨て式にできる低コストのデバイスを実現でき、それにより、試料相互間の汚染問題を回避できる。これらのチップは、生体分子識別のための質量分析計をFAIMSインタフェース・フィルタとして使用する、すべての実験室で入手できる。このようなフィルタは、収容しているインタフェース取付具に差し込みできるFAIMSインタフェース・チップと、フィルタ電子回路とを含む。エレクトロスプレー先端または電気泳動チップは、FAIMSチップと一体化(その一部として組み込む)できる。MEMS方法は必要ではないが、好ましいものであり、大量生産されるFAIMSチップの高信頼性および再現性を実現する。MEMS方法は、チップのコストを低減し、使い捨てデバイスを実現可能にする。この使い捨て方式は、個々の試料相互間の汚染を回避する。したがって、この使い捨て方式は、EPAおよびFDAのような規制機関への準拠のため、それら機関に対しておよび/またはそれら機関により実行される、汚染が問題となる試験にとっては、極めて重要である。
本発明の1つの実施形態では、平板状MEMS FAIMSチップは、チップ内でイオンが質量分析計に集中し、収集効率が100%に近くなるように製造した。この実施形態では、FAIMSイオン・フィルタ領域内へのイオン注入は必要ない。これによりオンボード・ヒータとの一体化が容易になり、イオン・クラスタ形成を最小にできる。この実施形態では、ミクロ機械加工されるか、従来のエレクトロスプレー先端および/またはミクロ機械加工される電気泳動チップを容易に一体化できる。これにより、製造に必要な条件の少ない簡単な設計ができ、単一ガス流路だけを使用して構成できる。
ミクロ機械加工は、フィルタの製造および性能の優れた再現性を提供する。これは、試験結果が個々のデバイス相互間および実験室相互間で一致するために重要である。ミクロ機械加工により、他の方法では形成できないFAIMSフィルタ・チップの新規構成が可能になる。これらの新規構成は、質量分析計へのイオン送出および望ましくないイオンの濾過を簡単にし、効率を向上させる。
MEMS FAIMSドリフト・チューブは満足できる性能で製造され、特性を備えていた。従来のTOF−IMSでは分離できない化学物質を分析する、高感度で高性能な分光計が実証されてきた。MEMS FAIMSにより、小型、低コスト、高感度、高信頼性の化学物質検出器を実現できる。本発明のFAIMS分光計は、質量分析計のプレフィルタとしても実証されてきた。新規のFAIMS/MSの組み合わせは、複合混合物のすぐれた分解能を実現する。
この技術および可能な量産により実現されるサイズ低減およびコスト節減の理由から、ミクロ機械加工のような微細製造方法を利用して、一体化されたエレクトロスプレー−FAIMSチップを使用する、生物剤検出用で携帯型の、小型で低コストの生物センサが実現できる。これらの測定器は、現場で使用可能な高性能な生物分析を含む多くの用途を有する。例えば、生物剤(bio-agent)に曝される可能性のある人は、1滴の血液をこの測定器に供給する。この血液は緩衝液と混合され、処理され、エレクトロスプレー・ノズルからFAIMS内に導入され、そこでイオンが分析される。特定の生体分子が検出されると、アラームが発生する。さらに、ミクロ機械加工により、他の方法では得られないFAIMSフィルタ・チップの新規な構成が可能になる。例えば、本発明では平板状のFAIMSを開示する。これらの新規構成により、質量分析計へのイオン送出および望ましくないイオンの濾過を簡単にし、効率を向上させる。好ましい実施形態では、エレクトロスプレーおよびFAIMSは、単一ハウジング内に大気圧化学物質イオン化(APCI)プレフィルタと、分析物フィルタと、検出システムとを形成する。新規のFAIMS−APCIは、高性能で低コストの、大量生産可能な、小型のイオン移動度分光計を実現する。
本発明の1つの実施形態における画期的な進歩は、構成部品の配置を簡単にし、その結果の組立てを簡単にする、多用途ハウジング/基板/パッケージングを実現する成果によるものである。追加の主要点としては、基板を物理的プラットフォームとして利用して、その上にフィルタを形成し、デバイス全体の構造体を提供することができ、また、基板を絶縁されたプラットフォームまたは筐体として利用して、そのデバイスを通る流路を形成することができ、および/または基板を利用して絶縁構造を形成して、性能を向上させることができることが挙げられる。スペーサをデバイスに組み込むことにより、構造形成およびバイアス制御のための1対のシリコン電極の形成の両方を実現できる。複数の電極配列および機能的スペーサ配置を利用して、性能および能力を向上できる。濾過は、制御コンポーネントと組み合わせてフィルタに供給されるFAIMS非対称周期電圧を使用し、この制御コンポーネントはバイアス信号または電圧であってもよく、同一非対称信号のデューティ・サイクルの制御のような別の方法を供給してもよく、これによりDC補償回路の必要をなくする。この小型配置により、イオンを除去するためのヒータを組み込むことができ、さらに、フィルタ電極および検出器電極のような現存の電極を使用して、加熱/温度制御することができる。
本発明の実施形態は電界非対称イオン移動度分光分析装置を含み、また、特定の好ましい実施形態は試料調製および導入セクション、イオン濾過セクション、出力セクションならびに制御セクションを含み、さらに、フィルタはイオンを濾過するFAIMSイオン・フィルタで構成される。本発明の実施形態は、異なったフィルタ、すなわち、a)絶縁基板を使用してフィルタ電極間の空隙を精度よく制御して、イオン・フィルタ電極が平行になるように保証し、これにより、再現性の高い電界を形成して、結果として高分解能分光計を得ることができる平板状FAIMSフィルタと、b)絶縁スペーサがフィルタ電極の縁端部の上に重なる平板状FAIMSフィルタとを備えることができる。これにより、1)すべての試料がイオン・フィルタ間を通過するように強制され、どのイオンもフィルタ電極をバイパスして検出器電極に到達できないために、化合物の高精度の識別性能を有する高分解能FAIRMを得ることができ、2)エレクトロスプレー・ヘッドおよび脱溶媒電極によりイオンの脱溶媒を実現し、3)対称RF信号を脱溶媒電極に印加することにより、脱溶媒の促進が達成され、4)RF信号がイオンにエネルギーを提供し、その結果、イオンが有効温度に上昇し、また脱溶媒プロセスを促進させる役割を果たし、5)脱溶媒電極が、ガス・試料内でのイオン・クラスタ形成量を制御し、再現性の優れた測定を可能にし、また検出されるイオンに関する追加情報を提供する、ことが本発明の実施形態において実現される。
本発明の新規な構成には、1)絶縁基板がハウジングを形成できる場合の、絶縁体である基板または絶縁された基板上の電極の配列の概念を含み、低コストの、ミクロ機械加工、マルチチップ・モジュールの製造などに使用される大量生産可能な工程を用いてデバイス構造を簡単化する大きな利点を提供し、その結果、FAIMS構造を使用して低コストで小型のセンサを実現でき、2)出力セクション内で、正および負に帯電しているイオンのような、複数のイオン種を同時に検出する能力を有し、3)エレクトロスプレー・ヘッドの使用とイオン・フィルタ電極から分離している吸引電極の使用とを組み合わせて、イオン・フィルタ電極とは異なる電圧を吸引電極に供給可能にし、これにより、エレクトロスプレー条件およびFAIMS内へのイオン導入条件を最適化できる、ことを含むことができる。FAIMSデバイスは円筒形、平面形、またはその他の形状にできる。さらに案内電極により、イオン・フィルタ内へのイオン注入を最適化できる。
また、本発明の新規な構成は、
エレクトロスプレーを使用してFAIMSデバイスと組み合わせた飛行時間測定デバイスを形成して、飛行時間測定から提供される追加情報によりイオン種の高精度の識別を実現し、
イオンがFAIMSの開口部から検出器に移動するのに要する時間を測定可能で、それが吸引電極および案内電極の電圧を個々に制御することにより達成でき、
エレクトロスプレー・アセンブリをFAIMSの基板の1つに取り付けでき、案内電極を使用してイオンをイオン領域に導入し、
逆方向ガス流が脱溶媒を促進し、
案内電極を、FAIMSの基板の1つに取り付けられる、もしくは接続される、または基板の1つの近傍にある、自立構造にでき、
イオンの濾過の制御を、高電界非対称波形高周波信号および可変DC補償信号を制御することで達成するか、または、特に、高電界非対称波形高周波信号のデューティ・サイクル、振幅、周波数などの電界の特性を変化させることにより達成する、ことが可能である。
さらに、
試料調製、イオン化、濾過および検出のすべての機能は、本発明の単一チップまたはワークピース上で実行され、
エレクトロスプレー−FAIMSが質量分析計のフィルタとして利用され、
チップ・キャリヤおよびそのキャリヤに差し込まれる使い捨てFAIMSフィルタ・チップを含み、このキャリヤが質量分析計の受入口に取り付け可能であり、
エレクトロスプレー−FAIMSが、単一ハウジング内にフィルタおよび検出システムを形成し、
本発明のエレクトロスプレー−FAIMS構成を、液体試料分析用の独立した検出器として使用するか、または質量分析計の前置部分として使用でき、
本発明は、液体クロマトグラフィ、高圧液体クロマトグラフィ、毛管電気泳動などの他の液体分離手法にも応用でき、
本発明の好ましい実施形態は、FAIMSデバイスを含み、1つの実施形態では、FAIMSデバイスは、共通のハウジングまたは基板上でエレクトロスプレー・イオン化源と一体化され、質量分析計に結合されており、
本発明の実施形態では、分子が、発生源から(例えば、エレクトロスプレー先端または毛管電気泳動装置のアウトレットから)排出され、FAIMSフィルタにより濾過される前にイオン化され、内部検出器によるか質量分析計もしくは他の検出器により検出された後に、分子の濾過ができ、
本発明の1つの実施形態では、ミクロ機械加工(MEMS)により、エレクトロスプレー先端を、平坦な電界非対称波形イオン移動度分光計フィルタとともにシンプルなユニット/デバイス内に一体化でき、それにより、正確な、高い再現性の液体試料評価に対応する、高精度で小型の分析システムを実現でき、
また、本発明の別の実施形態では、一体化されたエレクトロスプレー−FAIMSチップ(ミクロ機械加工製作技術を使用して作製できる)を使用する、生物剤検出用で携帯型の、小型で低コストの生物センサを実現でき、
FAIMS部分が平板状であり、質量分析計に対する大気圧化学物質イオン化(APCI)プレフィルタを形成し、
イオン濾過が試料のイオン化後に実行され、エレクトロスプレー・プロセスで常に生成される緩衝塩および溶媒イオンが分析対象の生体分子から分離され、これにより、きわめて単純な質量スペクトルを生成して、生体分子の検出限界および識別性能を向上させ、
エレクトロスプレーをFAIMSフィルタ・デバイスと組み合わせることにより、きわめて高感度の、高分解能を有する分析デバイスを可能にし、さらに、事例によっては、この能力は、FAIMSを利用せずには識別できない化合物を分析するのに提供され、さらに、エレクトロスプレーを従来のFAIMSフィルタ・デバイスと組み合わせることは、このデバイスを用いて大量で低コストの試料分析のために低濃度試料を処理するときに、試料汚染の問題を引き起こすが、この問題は、本発明の実施形態において克服される。
質量分析計は、ドリフト・チューブの末端の排出口に直接接続され、本発明の実施形態では、バッフルを置くことにより、ドリフト・ガス流の速度を基準として排出ガス流の速度を調整できる。各種の試料調製セクションを使用でき、単に周囲の空気に試料を吸入する口、エレクトロスプレー、ガスクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ、またはその他であってもよい。分岐したガス流を使用して、クラスタ形成を防止し、イオン種の識別精度を向上できる。
所定のイオン種に対するモノマー量とクラスタ・イオンの間の関係は、試料濃度と、特定の実験条件(例えば、湿度、温度、流量、RF電界強度)とに依存する。本発明の実施形態では、モノマー状態およびクラスタ状態の両方を検出して、化学物質の識別に有効な情報を提供する。1つの例では、平板状の2つのチャンネルをもつFAIMSを使用して、この結果を得る。この場合、カーテン・ガス(curtain gas)を試料の中性分子に供給し、それら中性分子が第2チャンネル“II”に流入するのを防止し、モノマー状態のイオンを分析できる。別の実施形態では、カーテン・ガスは同一方向に流れて開口部から流出するか、または両方向に流れ、一方で、案内電極を設けてイオンを第2チャンネル“II”内に導き、吸引電極を利用してイオンを第2チャンネル“II”内に吸引し、それにより、カーテン・ガスを止めたときに、試料中性分子および試料・イオンを、ポンプを使用して第2チャンネル“II”内に吸入できるため、クラスタ状態のイオンを検出できる。出力セクションは質量分析計に接続できる。
本発明の方法は、FAIMSデバイスを質量分析計に接続して、分解能を高め、検出限界を向上し、分析される分子の形状および構造を抽出するための能力を提供することを含む。分子は、プロテイン、ペプチドなどの生体分子を含むことができる。FRIMS手法はイオン移動度を基本としており、イオン濾過および識別はイオンの大きさおよび形状に大きく依存する。FAIMS−エレクトロスプレー・デバイスは、分析される分子に関する構造(形状)情報およびエレクトロスプレー−質量分析計を使用するだけでは得ることができない配列情報を提供でき、さらに、エレクトロスプレー−質量分析計を単独で使用するだけでは識別できない、異性体(同一質量であるが、異なる形状をもつ分子)間の識別を可能にする。
本発明の実施形態は、FAIMS基板の多機能用途を特徴とする。基板は、コンポーネント部品またはデバイスのセクションを正確に範囲限定および位置決定するためのプラットフォーム(または物理的支持構造)である。基板は、ハウジングを形成し、フィルタと、場合によっては検出器や他のコンポーネントとともに流路を囲む。この多機能構成により、部品数を減少させると同時に、コンポーネント部品の位置決定を正確にし、その結果、大量生産における高品質および均一性を達成する。デバイスを小型にすると予想外の性能改善をもたらすが、この理由は、おそらく、ドリフト・チューブが小型になるためと、基板が電気的絶縁機能を発揮するためと推測される。絶縁するかまたは絶縁体(例えば、ガラス、セラミック、プラスチック)であることにより、基板は、電極のようなコンポーネントを配置するための、改良された性能特性を有する直接プラットフォームとして利用できる。
本発明の実施形態は、円筒形、平面形などにできる。開示される実施形態では、基板を支持体/ハウジングとして利用することは、別の“ハウジング”部品または別の構造体をデバイス周辺に形成するのを妨げない。例えば、デバイス上に湿気防壁を置くことが望ましいこともある。さらに、バッテリのような追加コンポーネントを、支持体/ハウジングの外側、例えば、バッテリ・ケース内に取り付けできる。しかし、特許請求の範囲に相当する本発明の実施形態では、基板の絶縁機能、支持機能、多用途ハウジング機能および他の機能を実現する。
本発明における絶縁体であるかまたは絶縁された基板/流路は、単純化した構造で優れた性能を達成する。FAIMSデバイス内で電気的に絶縁された流路を利用することにより、供給される非対称周期電圧を出力部分から(例えば、検出器の電極から)絶縁でき、この場所で検出が可能になる。この領域節減は、流路内のフィルタと検出器の間に絶縁された基板が絶縁された領域を提供することから達成され、この空間は、さらに、検出器からフィルタ電界を分離するのに有利である。ノイズの少ない検出環境は、高感度のFAIMSデバイスを実現する。
さらに、絶縁性基板上に電極を形成することにより、イオン・フィルタ電極および検出器電極を近接して配置でき、その結果、イオン収集効率を予想以上に高め、調整・加熱・制御する必要のあるデバイス容積量を低減する。これは、電力消費も低減する。さらに、小型電極を使用することにより静電容量が減少し、その結果、電力消費が減少する。さらに、間隔の狭い電極は、基板の絶縁表面がこのような電極を形成する理想的なプラットフォームであるために、大量生産工程に向いている。
特許請求の範囲に相当する本発明の実施形態により、高分解能・高速動作・高感度で、さらに部品数の少ない、大量生産において経済的な製造および組立てが可能な構成を有する、FAIMSデバイスが得られる。注目すべき点は、パッケージは、ppb(10億分率)またはppt(兆分率)の範囲の感度を有し、このような有効なFAIMSにしては非常に小型である。さらに、この小型デバイスの実際領域が減少することにより、イオンの検出とデバイス表面の加熱とのいずれの電力消費も減少し、小型バッテリの使用を可能にする。本発明によるシンプルな小型のFAIMS分光計の利点は、所定の試料の完全なスペクトルを生成するのに、一般には1秒(以下)しか必要としないことである。従来技術では、有益な結果を得ることができるFAIMSシステムは、これまで開示されたことがなかった。
本発明の前述およびその他の目的、特徴および利点は、添付図面に示す本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明で明らかになるであろう。図面では、同一参照符号は異なる図面においても同一部品を指す。図面は必ずしも縮尺通りでなく、本発明の原理を示すことに重点が置かれている。
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
本発明は、液体試料中の化合物を分析するための方法および装置を提供するものであり、好ましくは、高電界非対称波形イオン移動度分光計により可能になるものである。
図2に示す本発明の実施形態の図では、化学センサ・システム10は、試料調製セクション10A、フィルタ・セクション10Bおよび出力セクション10Cを備える。実際には、液体試料Sは試料調製セクション10A内でイオン化され、生成されたイオンはフィルタ・セクション10Bにまで達して濾過され、次に、フィルタ・セクションを通過したイオンは出力セクション10Cに送られて検出される。液体試料調製セクション10A、フィルタ・セクション10Bおよび出力セクション10Cは、コントローラ・セクション10Dからの制御および命令によって作動する。好ましくは、コントローラ・セクション10Dはシステム10の動作と、検出データの評価および記録との両方を制御する。
本発明の好ましい実施形態では、液体試料調製セクション10Aはエレクトロスプレー・ヘッドを備え、このヘッドは、試料Sを受け取り、調製し、イオン化する。この試料は、セクション10B内の好ましくは平板状の高電界非対称イオン移動度分光計(PFAIMS)フィルタに移送される。このフィルタは送られてきたイオンを濾過し、対象となるイオン種を出力セクション10Cに通す。本発明のいくつかの実施形態では、出力セクション10Cの機能は、イオン種の即時の検出を含むか、または、検出されたイオン種を示すデータDを出力する読出しを有してイオン種をそこで検出する質量分析計(MS)のような別のコンポーネントへのイオンの移送を含むことができる。
当業者には理解されるように、本発明の実施形態では平板状表面を有するFAIMSフィルタが望ましいが、本発明の実施形態は、フィルタ、検出器、流路、電極などを含むさまざまな非平板状の部分および表面を用いても実現される。ここでのPFAIMSの記述は、説明を目的とするものであり、これに限定されない。
図3A,3Bの実施形態では、液体試料調製セクション10Aは、液体試料Sを収容するチャンバ14を有するエレクトロスプレー・試料・イオン化源またはヘッドを備える。本発明の実施形態では、液体試料Sは溶媒中の生物化合物、例えば化合物AおよびBを含んでいてもよい。本発明は、液体試料中の1つまたはそれ以上の化合物を識別することに関する。
セクション10Aのエレクトロスプレー・デバイスの実施形態においては、コントローラ10Dにより、エレクトロスプレー・ヘッド12のチャンバ14内の液体試料Sに高電圧18が印加される。エレクトロスプレー先端20の液体試料Sと吸引電極22との間の電圧差が、コントローラ10Dにより駆動され、領域23内で試料中の溶媒X中の化合物A,Bをイオン化する。これにより、化合物AおよびBを表わすイオン24および26と、溶媒Xを生成する。好ましい実施形態では、イオンおよび溶媒は流路30に沿って、PFAIMSイオン・フィルタ40の並行フィルタ電極44の間のフィルタ・セクション10B内に駆動または導入される。
PFAIMSフィルタ・デバイス40での濾過作用は、特にイオンの大きさと形状により影響されるイオン移動度の差を基にしている。これにより、イオン特性に基づくイオン種の分離が可能になる。本発明の1つの実施形態では、高電界非対称波形高周波(RF)信号48およびDC補償信号50が、コントローラ10D内のRF/DC発生器回路によりフィルタ電極44、46に印加される。非対称電界は、高電界と低電界強度状態の間を交番し、その電界に従ってイオンを移動度に応じて移動させる。一般に、高電界中の移動度は低電界中の移動度と異なる。この移動度の差は、イオンがフィルタ電極間のフィルタを通過して長軸方向に移動するときに、イオンの横方向の実質的変位を発生させる。補償バイアス信号が存在しない場合は、これらのイオンはフィルタ電極の一方に衝突して、中性化される。選択された補償バイアス信号(または別の補償)が存在する場合は、特定のイオン種は流路の中心方向に戻り、フィルタを通過する。したがって、補償された非対称RF信号48が存在する場合は、イオン種に応じてイオンを相互に分離可能になる。選択外のイオン種は電極に衝突して中性化され、対象とするイオン種はフィルタを通過する。データおよびシステム・コントローラ10Dは、イオン電極に印加する信号48,50を調整して、フィルタを通過するイオン種を選択する。
PFAIMSフィルタ40により識別するとき、化合物AおよびBの一方または両方の正確な識別を可能にするには、イオン24と26を隔離するのが望ましいことは明らかである。PFAIMSフィルタ40は、イオン移動度に基づいてイオンAとBを識別し、原理的には、一方または他方のイオンだけを出力セクション10Cに送り、コントローラ10Dにより供給される補償信号に応じて検出する。例えば、図3A、3Bでは、フィルタ40を通過したイオン24はイオン24’で示される。
図3A、3Bを再度参照すると、出力セクション10Cは、検出器電極70、72を有する検出器69を含む。コントローラ10Dは、フィルタ40を通過するイオンの指標として、電極70,72の電流を測定する。これら電極は、コントローラ10Dからのバイアス信号71,73により電位を維持される。フィルタ40を通過したイオン24’は、コントローラ10Dの制御によって、電極の極性および検出器電極の制御信号71,73に応じて、電荷を検出器電極70,72上に堆積する。さらに、補償信号(すなわち、バイアス電圧)を掃引することにより、試料S中のイオン種の完全なスペクトルを検出できる。
コントローラ10Dのインテリジェント制御により、異なる作動方式を選択することも可能であり、結果として、対象とするイオン種の濾過を目的とすることもできる。本発明の1つの実施形態では、非対称電気信号48が補償バイアス電圧50とともに印加され、その結果、フィルタは、コントローラ10Dの制御により、所望のイオン種を通過させる。さらに、バイアス電圧50を所定の電圧範囲にわたり掃引することにより、試料S中のイオン種の完全なスプクトルを得ることができる。
別の実施形態では、非対称電気信号が所望のイオン種の通過を可能にしており、この場合、補償信号の波形は、コントローラにより供給される制御信号の命令に従って、補償バイアス電圧を必要とせずに、非対称電気信号のデューティ・サイクルを変更する波形である。これらの特徴により、本装置はまた最適調整が可能で、すなわち、イオン種の濾過を最適化して、所望の選択イオン種だけを検出器に通過させることができる。
本発明の別の利点は、フィルタが、同等の移動度であるが異なる極性を有する複数のイオン種を通過可能にし、これらを同時に検出できることである。各検出器電極70,72が異なる極性に維持されている場合、フィルタを通過する複数のイオン種(同等の移動度であるが異なる極性を有する)を同時に検出できる。検出されるイオンは、印加された制御信号48,50およびバイアス電圧信号71,73と相関関係をもち、図2のデータDで示される検出されたイオン(複数もあり)のイオン種を決定する。
この多機能性は、図3Aのような出力セクション10Cを参照することにより、詳しく理解できる。図3Aでは、上側電極70は、フィルタ40を通過する分析対象のイオンと同一極性の所定の電圧に維持され、一方で、下側電極72は、別の電位、多くの場合グラウンドに維持される。電極70は、検出のために、イオン24’を電極72の方向つまり下方に偏向する。ただし、どちらか電極も、イオンの電荷および極性ならびに電極に印加された信号に応じてイオンを検出できる。したがって、第1の検出器として上側電極70を利用し、第2の検出器として下側電極72を利用し、かつコントローラ10D内のそれぞれの検出器回路を使用することにより、2つの異なる発生出力を有する状態で、同等の移動度であるが異なる極性を有してフィルタを通過する複数のイオン種を同時に検出できる。このようにして、検出器は、PFAIMSフィルタ40を通過する、炭化水素ガスのバックグラウンド中の硫黄を含むガス・試料のような、複数の種を同時に検出できる。
電子コントローラ10Dは、制御電子信号をシステム10に供給する。PFAIMSデバイスが、図4Aに示すように、制御回路10Dに接続されるリード線および接触パッドを少なくとももつ制御部分を有する場合、制御回路はオン・ボードまたはオフ・ボードにできる。コントローラからの信号は、このような接続を介してフィルタ電極に供給される。
図4Aの実施形態では、PFAIMSシステム10は、間隔を空けた絶縁基板52、54(例えば、Pyrex(商標名)ガラス、セラミック、プラスチックなど)を有する分光計チップ100を含み、この絶縁基板上にはフィルタ電極(金などの材料)が形成されている。基板52,54は、両者の間にドリフト・チューブおよび流路30を形成し、したがってハウジング機能を果たす。好ましくは、基板は、電極を取り付けるために、絶縁体であるかまたは絶縁された表面60、62を有する。電極44、46は、流路30を挟んで対向してこれらの絶縁表面60,62上に取り付けられるフィルタ電極を有するイオン・フィルタ40を形成する。
図4A、4B、4Cに示すように、基板52,54はスペーサ53,55により分離されており、これらスペーサは絶縁体であり、セラミック・プラスチック・テフロン(登録商標)などで形成するか、シリコン・ウェーハをエッチングまたはダイシング(dicing)するか、あるいは、例えば、基板52、54の延長部を設けることにより、形成できる。スペーサの厚さは、電極44,46を保持する基板52,54の表面間の距離“D”を決定する。図4Aの1つの実施形態では、シリコン・スペーサを電極53’,55’として使用し、コントローラ10Dによりこのシリコン・スペーサ電極に限定電圧を供給して、濾過されたイオン流を流路の中心範囲内に限定する。この範囲限定により、多くのイオンが検出器に衝突するようになり、結果的に検出効率が良くなる。
図4Bはさらに別の実施形態を示しており、別の構造の電極44Xが、基板52,54上に置かれ、絶縁スペーサ53,55に取り付けられ、かつスペーサにより分離され、内部に流路30を形成している。流路の一端では、試料調製セクションがイオンをフィルタ・セクション10Bに供給し、他端では、濾過されたイオンが出力セクション10C内に流入する。基板が構造機能を果たし、ハウジングを形成するのと同様に、構造電極44x、46xもハウジング機能を果たし、また電極にもなる。基板を用いるのと同様に、これら電極の外面は平板状であっても、またはなくてもよく、絶縁表面でカバーされていてもよい。
側面断面を示す図4Cの実施形態では、絶縁スペーサ53,55がフィルタ電極44,46の縁端部44f,46fと重なり合っている。これにより、流路(すなわち、ドリフト・チューブ)29内のイオン流が、不均一な周縁電界“f”が存在する電極縁端部44f,46fから離れた、フィルタ電極44,,46間の均一な横断電界の領域内に限定される。別の利点は、すべてのイオンがフィルタ電極間を通過するように強制されて、均一電界を受けることである。
図3Aに戻ると、動作状態では、イオン24,26はフィルタ40に流入する。特定のイオンは、フィルタ電極44,46に衝突したときに中性化する。これらの中性化したイオンは、通常、キャリヤ・ガスによりパージされる。また、パージングは、例えば、電流を適切に構成されたフィルタ電極(例えば、図3Dに示す蛇行電極44’,46’)または抵抗性スペーサ電極に供給するなどして、供給流路30を加熱することによりなされる。図4Aのスペーサ電極53,55は抵抗材料で形成でき、したがって、加熱電極53r,55rとして利用できる。
イオン24は、図3Aの出力セクション10Cまで達する。排出口42を設けて、通過したイオン24から分子28を排出する。イオン24のこの分離は、検出作用を容易にし、高精度の化学分析を可能にする。しかし、この方式を用いても、溶媒分子によっては分析対象のイオンに付着して残ることがある。したがって、好ましい実施形態では、分析装置は、濾過の前に、24および26のようなイオンを脱溶媒する機能を備える。脱溶媒は加熱により達成できる。例えば、電極44,46,53r,55rのどれかが、コントローラ10Dにより供給される加熱信号を有することができる。別の実施形態では、図3Bに示すように、流入ガス流をヒータ素子89により加熱できる。
当業者には、エレクトロスプレーで噴射されるイオンの脱溶媒または“乾燥”がエレクトロスプレー方式の重要部分であることは理解されるであろう。イオンがエレクトロスプレー先端から最初に噴射されるとき、イオンをコーティングする多量の溶媒を含む液滴の形状をしている。イオンが対極の方向に空気を通り移動するにつれ、溶媒は最後には蒸発して、脱溶媒されたイオンが残り、次に、このイオンを分析できる。分析前の不完全な脱溶媒は、分析の正確さを損なう可能性がある。さらに、イオンの移動距離が長いことは、何かの他の支援を得ずに、イオンを十分脱溶媒することを必要とする。したがって、この脱溶媒は本発明の実施形態では有益である。
別の実施形態では、対称RF電界を使用して、分析前にエレクトロスプレー内で生成されるイオンの脱溶媒を促進する。図5A、5Bに示すように、キャリヤ・ガス流に垂直に加えられる対称高周波電界は、エレクトロスプレー噴射で発生するイオンを対称的に振動させる。イオンを加熱することにより、イオンがドリフト・チューブ方向の下方に移動するときに、イオンがこの信号により実質的に偏向されることなく脱溶媒される。
詳細には、イオンと中性分子の間の相互作用はそれらの有効温度を上昇させ、脱溶媒を促進する。それらが振動する間に、イオンは中性の空気分子と衝突し、内部温度が上昇する。イオンの内部温度の上昇は、溶媒の蒸発を促進し、脱溶媒された帯電イオンを生成する時間を短縮する。この作用により、比較的短いドリフト・チューブにより脱溶媒を実現できる。脱溶媒により高精度の検出データが得られ、かつ、前述の方法は本発明のPFAIMSフィルタと容易に一体化される。
脱溶媒電界は、相互に平行に配置され、その間に空隙を設けた2つの電極間に電圧を印加することにより発生できる。例えば、電極44,46および53,55のどれかを、コントローラ10Dの制御によって、この機能のために利用できる。好ましくは、図3Bに示す分離した脱溶媒電極77,79を、この機能のために利用する。
本発明の別の実施形態では、図3および3B1に示すように、ミクロ機械加工されたエレクトロスプレー・ヘッド80が基板52に取り付けられる。電極82,84,86,88は基板の両側上に形成され、エレクトロスプレー・イオン24,26をドリフト・チューブ29内の流路のイオン領域に導く。吸引電極22は電圧を印加され、イオン24,26をイオン領域23内に吸引する。キャリヤ・ガス流90は所望の流量に設定され、イオン24,26を捕獲し、それらイオンをフィルタ40に移送し、そこで前述の濾過作用を行う。排気ガス91はキャリヤ・ガス90を含み、イオン化されない成分および中性化されたイオンを排出する。
電極22,82,84,86,88および脱溶媒電極77,79に印加される電圧は、相互に独立に、かつフィルタ電極44,46とは独立に設定し、制御できる。例えば、これは、有利なことに、吸引電極22を、近接のフィルタ電極のような他のどの電極とも異なる信号で駆動可能にする。これは、特に基板に絶縁表面を備えることにより容易になり、電極絶縁により、フィルタ駆動必要条件とは無関係にイオン導入を最適化できる。
また、この構成により、案内電極82,84,86,88および吸引電極22を、個々にパルス・モード(例えば、on,off切換え)で作動できる。このモードでは、イオンの選択量をイオン領域23に導入できる。これらイオンの移動時間、例えば開口部から検出器72までの移動時間を、“飛行時間”(“TOF”)FAIMS動作モードで利用できる。このモードでは、飛行時間はイオン種に関係し、したがって、イオン種識別の追加情報を提供する。この結果、円筒形FAIMSデバイスの改良が達成される。
IMSの当業者には認識されるように、このTOFはIMSデバイスで実行される飛行時間と類似であるが、ここでは、FAIMS構造内で実行されている。したがって、この新規で革新的な手法は、1つの作動デバイスでIMSおよびFAIMS検出データの両方を提供し、FAIMSおよびIMSデータの組み合わせにより、高精度の検出結果が得られる。
図3A、3B、4A、4Bに示すような、好ましい実施形態では、ハウジング64は、基板52,54により形成され、入力部分10Aからイオン・フィルタ10Bを通り、出力部分10Cに延びる内部流路30を形成している。詳細には、基板52,54は、電極配置に適する作用表面60,62を備える。これら表面60,62は、曲面または平面のどちらでもよく、好ましくは、例えばガラスまたはセラミック基板を使用して形成されるように、絶縁体である(または絶縁されている)。これは、マイクロ電気機械システム(MEMS)、マルチチップ・モジュール(MCM)、他の方式などの大量生産方式に適し、超小型パッケージおよび電極サイズを実現する。したがって、好ましくは、イオン・フィルタは、これら絶縁表面上に形成され、フィルタ電極44,46を対向させてその間に流路30を形成し、さらに、基板の絶縁表面がフィルタ電極の制御信号48,50を検出器電極70,72から絶縁することにより、ノイズ低減および性能向上が得られる。これは、参照により本明細書に引用したものとする米国特許5,420,424(特許文献2)のような、従来技術のFAIMSの外側円筒の高導電性面とは異なる。
形状的および物理的に考察すると、従来技術の円筒形構成におけるイオンは、ドリフト・チューブの断面中に分散し、したがって、一部のイオンだけが質量分析計の受入口96の近傍領域R内で有効であるにすぎない。図6に示す円筒形FAIMSの従来技術の構成(参照により本明細書に引用したものとするPCT/CA99/00715、特許文献1を参照)では、質量分析計受入口96に追加のイオンを供給することにより、この制限を克服する試みがなされている。しかし、試料・イオン24と溶媒分離のような中性分子とが分離していないために、中性の試料分子も質量分析計受入口96に流入する。これにより、質量分析計のスペクトルが著しく複雑になり、分解能が低下する。
本発明は、例えば、図3Bの構成におけるこれら欠点を克服する。本発明の実施形態では、検出領域69に入るほぼすべてのイオン24が、質量分析計受入口96に集中する。この結果、特に、イオンがMS受入口だけでなく流路周辺全体に分散する円筒形FAIMSデバイスに比較すると、大幅な検出効率の向上とシステム感度の増加が得られる。
さらに、図7Aに示す本発明の円筒形構成を参照すると、エレクトロスプレー先端20が外側電極44Cの開口31’を通して、吸引電極22’の吸引作用により試料をチャンネル30’内に注入し、この試料はガスG流によりフィルタ・セクション10B’に移送される。吸引電極は内側電極46Cの近くに形成されるが、絶縁体ストリップIn1,In2で電気的に絶縁されている。したがって、吸引電極は、隣接の電極、例えば46Cから分離して、別個にバイアスを印加できる。また、この実施形態は、部品数を減少する一方で、例えば、絶縁層In1,In2の結合機能によって内部の各円筒形コンポーネントを一体に結合できる場合のように、機能コンポーネントと構造コンポーネントを一体にする。
図7Bに示す別の実施形態では、吸引電極22’’は外側リング電極4C’の近くに、このリング電極から絶縁体リングIn3により絶縁された状態で、形成される。エレクトロスプレー先端20は、側面からリング46C’’(このリングは独立した電極か、または内側電極46’の延長部であってもよい)の内部に試料Sを導入する。このとき、試料は、吸引電極22’’の吸引作用を受け、フィルタ・セクション10B”のチャンネル30”中をガスGにより移送される。電極22”は絶縁体In3により電極44C’から絶縁されており、したがって、これらの電極は独立に駆動できる。
図8に示す本発明の別の実施形態では、基板52に取り付けられたエレクトロスプレー・アセンブリ80”は、エレクトロスプレー・ヘッド12を備える。イオンは、案内電極“F”(この実施形態では3つ)により開口31方向に移送され、82,84および/または86,88のような吸引電極22および案内電極によりイオン領域23内に吸引される。
好ましくは、独立したDCバイアス“DC”を案内電極に印加し、電位勾配を生成して、イオンをイオン領域23に案内する。また、対称RF信号“DS”を印加することにより、案内電極を別の機能に利用し、前述のように、脱溶媒を促進できる。
浄化ガスGを入口P1から導入し、脱溶媒をさらに促進する。このガスは、チャンバ93内を誘導されるイオンと逆方向に流れ、出口P2,P3から排出される。好ましくは、これは開口31両側に圧力勾配を発生させずに作用する。
スプレー状態を改良するために、本発明の実施形態では、スプレー先端20と先端案内電極F1の間の間隔20Sを調整できる。1つの実施形態では、ハウジング12aの位置をベースBに対して調整し、間隔20Sを調整できる。別の実施形態では、ヘッド12の高さを電極F1に対して調整できる。
図9A、9Bに示す別の実施形態では、間隔を空けた案内電極F(図9A)またはF1,F2,F3(図9B)がカーテン・ガス流CG中に置かれる。このガス流はハウジングH1の内部を流れても、または外部を流れてもよい。エレクトロスプレー・ヘッド12は、取付台M1に調整可能に取り付けられ、基板52の表面に対するスプレーの噴射角度を調整できる。さらに、基板に対するスプレーの高さを調整できる。
再度図4を参照すると、試料収容部92は液体試料Sを収容し、この試料は、前述のように、その後イオン化され、濾過される。この実施形態では、単一分光計チップ100は、微小流体エレクトロスプレー・モジュール80’のようなイオン化源と、平板状の電界非対称波形イオン移動度フィルタ40の両方を組み込んでいる。また、内部に検出器を含むか、イオンを外部検出器に送り出すこともできる。さまざまなミクロ機械加工された微小流体コンポーネントはイオン発生源として利用するか、または、エレクトロスプレー、ナノ・エレクトロスプレー、液体クロマトグラフィ、電気泳動分離を含む、微小流体コンポーネントの組み合わせとして利用できる。
別の実施形態では、図4Aのエレクトロスプレー・ヘッド80’は、基板に取り付けることができる(好ましくは、陽極接合またはロウ付による)。案内電極82および84はこの実施形態では必要としない。
図4Dの実施形態では、微小流体エレクトロスプレー・モジュール80’は試料収容部92を含み、この収容部から、長く延びて蛇行した分離チャンネル92aが分岐して、スプレーの開口20’および先端20に通じている。流路92aは液体クロマトグラフィまたは電気泳動セパレータなどにでき、それを利用して、先端20でイオン化する前に試料成分の調整または分離をする。
微小流体モジュールを有するこのようなチップ100を提供する目的は、試料調製および分析の変動性をなくすることであり、これは、人的介入を減らし、かつすべての主要コンポーネントを単一構造内に組み込んだデバイスを提供することにより達成される。これらのチップ100は低コスト製造に適し、結果的に使い捨てにできる。試料の分析ごとに新しいチップを使用することにより、試料間の汚染をなくすことができる。さらに、人的介入を減らすことにより、試料調製時間が短縮される。従来の装置では、エレクトロスプレー先端または微小流体コンポーネントの位置は、どのフィルタまたは質量分析計受入口に対しても、そのたびに再調製する必要がある。これは時間とコストを増加させる。本発明の一体化した微小流体チップ/PFAIMSデバイスを使用すれば、微小流体コンポーネントとPFAIMS受入口の相対位置を固定できる。分析が完了すると、チップ全体を廃棄し、新しいチップに分析する試料を供給するだけでよい。このチップは質量分析計に取り付けできる。この結果、高速の分析時間と高速処理能力が実現する。
図10Aに示す実施形態では、コントローラ10Dはいくつかのサブスシステムを含み、このサブシステムは、エレクトロスプレー・コントローラ10D1と、高電圧RF波形およびDC発生器10D3と協働して、RF非対称駆動信号およびDC制御バイアス電圧をフィルタ電極44、46および検出電子回路10D4に供給して検出器電極でイオンを検出する波形発生器(シンセサイザ)10D2とを備える。コンピュータ10D5は、データを収集し、またシステムを制御する。1つの実施形態では、RF電界は、発生器10D3内で、フライバック・トランスを組み込んで高速の高電圧パルスを発生するソフト−スイッチ式半共振回路により生成される。この回路は、周波数約100KHz〜4MHz、デューティ・サイクル10〜70%の、ピーク・ツー・ピーク値で最低限1400ボルトを供給する。フィルタ電極を駆動するためのRF波形の例を図10Bに示すが、本発明の実施形態では、これらは波形の変形形状も使用される。
好ましくは、チップ100はチップ収納アセンブリ220に収納される。アセンブリ220は、チップを受け入れるソケット222を含む。このソケットはコントローラ10Dと電気的に接続されている。チップ収納アセンブリ220の好ましい実施形態は、図11Bに示すように、化学センサ・システム10を質量分析計MS98に接続する別の機能を果たす。チップ収納アセンブリ220は、システム10のアウトレット開口99が開口99xを介して、MS開口受入口96と一直線上に整列するように、質量分析計の前面224に固定され、それにより、イオン24’がMS内に導入されて、検出、分析される。
フィルタ40を通過するイオンの検出は、図3Aの検出器電極70,72によって上に説明したのと同様にしてなされる。図3Bは別の実施形態を示し、この実施形態では、電極70を偏向電極として利用し、イオン24’を質量分析計98の取入口96の方向に偏向する。イオンは、集束電極72a,72bにより案内または集束され、基板54’の開口99を通過し、また、取付けアダプタを経由してプレナム・ガス・チャンバ101を通過する。小流量のプレナム・ガスをチャンバに供給することにより、中性化された試料・イオンまたは溶媒分子が質量分析計取入口96に流入するのを防止する。質量分析計の取入口96内に集束されたイオンは、次に、標準の質量分析計手順に従って検出される。図11Bにはプレナム・チャンバ101を示していないが、この実施形態では有利に使用できる。
本発明のアセンブリは、例えば図3B、11B、12A、12Bに示すように、質量分析計取入口96に対して直角に容易に取り付けできる(プレナム・チャンバの有無に関係なく)。検出器電極(図3B、または12A、12Bでは側面に取り付け)は、ほぼ100%のイオンを偏向させて、質量分析計内に流入させることができる。
この高効率性能は、質量分析計の受入口96に取り付けられた、図12C、12Dの従来の円筒形構成とは対照的である。従来構成では、ドリフト・チューブ内の全イオンのごく一部が、イオンを受入口96内に送る電界の影響を受けるだけであり、結果的に、従来技術では有効なイオンの一部だけが検出される。
本発明の実施形態では、化学分析はいくつかのイオン電極のどれかを使用して実行できる。図3Aおよび4Aの実施形態では、検出器はすべてアセンブリ10内部にある。図3Bでは、アセンブリ10は、アダプタ102により、検出器としての質量分析計98に緊密に接合される。図3Bの実施形態では、集束電極72a,72bの電流が観測される場合、追加の検出器情報を利用して質量分析計98の検出情報を処理する。集束電極72a,72bがない場合でも、本発明のFAIMSスペクトルは、質量分析計内の全体イオン電流を観測することにより再構成できる。
図13A、13Bに示す、本発明の別の実施形態では、エレクトロスプレー先端20は、上側基板52’(図13A)の開口31を通過して上方から、または側面(図13B)からのどちらかからイオン領域23内に挿入される。吸引電極104,106は、イオンがガス流90中をフィルタ電極44,46方向に移動するとき、イオンを流路30内に吸引し、誘導する。図13Aでは、エレクトロスプレー先端20からの液滴は収容部54a内に集められる。この収容部には排液穴54bを設けることもできる。
イオンがイオン・フィルタを通過後、出力セクション10Cに入る前に、イオンを集中させることが望ましい。これにより、検出器の信号対ノイズ比を向上し、感度を上げることができる。イオン・トラップまたはイオン・ウエルは、この方法でイオンを集めることができ、イオンを収集し、その後、収集したイオンを即時に出力セクションに送り出す。中性分子は、イオン・トラップで収集されず、イオン・トラップTからのガス流により連続的に除去される。
イオン・トラップは、例えば図3A、B、Cのような本発明の複数の実施形態に利用できる。図13Aに示した実施形態では、イオン・トラップTは複数の適正なバイアス電圧を印加した電極対を用いて形成される。一例では、陽イオンに対し、電極へのバイアス電圧の印加は、電位の最低点が電極対76bの領域内に形成され、かつ、電極対76aおよび76cの電位が高くなるように、印加される。イオンはトラップに蓄積され、所望のイオン量を収集した所望の時間後に、電極76a,76b,76cに印加された電圧を調整して、トラップを解放できる。トラップが解放されると、捕獲されていたイオン24’は出力セクション10Cに流れ込む。
前述の実施形態では、イオン・フィルタ40は間隔を空けた電極44、46を備え、これら電極は、イオンがドリフト・チューブ29中のガス流90により移送されるとき、RF&DC発生器10D3により駆動される。図14A、14Bの本発明の長軸方向電界駆動方式の実施形態では、ドリフト・チューブ中のイオンを移送する新規な方法を示す。
図14A、14Bの実施形態では、イオンは、電極110および112により発生する長軸方向電界を利用して出力セクション10C方向に移送される。これらの実施形態は、小型構成の単純なガス流構造を特徴とし、ガス流も随意である。
1つの実施形態では、イオンは、実際にガス流122と逆の方向に移動し、電界ベクトル120により移送される。イオン移動方向と逆のこのガス流は、試料・イオンの脱溶媒を促進し、また、中性の試料分子の存在しない清浄なイオン・フィルタ40を維持する。これは結果的に、イオン・クラスタ形成量を減少させ、イオン種の高精度検出を実現する。さらに、逆方向ガス流はイオン化領域23内の前の試料残留物を除去し、低減する。この実施形態は、図示するように、取り付けされる上方または側面からイオン領域23内に挿入される一体化されたエレクトロスプレー先端20を含む。
図14A、14Bの長軸方向電界駆動方式の実施形態では、イオン24,26はガス流122で移送されるのではなく、長軸方向RF&DC発生器10D3’に加えて、数組の協働電極110,112により生成される長軸方向電界の作用により移送される。特定の電極バイアス方法におけるPFAIMSの動作例としては、電極対110a−h,112a−hのいくつかまたはすべてが同一RF電圧を印加され、一方で、DC電圧は階段状であって、長軸方向電位勾配がイオンを検出器方向に駆動するように形成される。この実施形態は、ガス流が無い状態で動作できるが、中性分子および溶媒分子を排出口124から排出する排出ガス流122を含んでもよい。
1つの実施形態では、電極110,112aはDC10ボルトを印加され、電極110h,112hはDC100ボルトを印加される。領域10A内の陰イオンは、電極対110a−112aに吸引され、さらに電極対110h−112hに吸引され、イオンがフィルタを通過すると、それらのイオンの運動量が検出器領域内にイオンを移送する。
RFおよび補償信号はそれぞれの電極110a−h,112a−hに印加され、前述のように動作する。
図14Aの別の実施形態では、エレクトロスプレー先端はイオン化領域の外部の、開口31の上方にあってもよく(図示無し)、この場合は、電極112jは吸引電極の役割を果たす。図14Bの長軸方向電界駆動方式の実施形態では、イオン・フィルタは、絶縁媒体、例えば低温酸化物材料により電極134、136から絶縁された、間隔を空けた抵抗層144,146を含む。好ましくは、基板は絶縁体である。好ましくは、抵抗層144,146は絶縁層140,142上に置かれたセラミック材料の層である。末端の電極対150,152,154,,156は抵抗層と接触して各抵抗層両端に電圧降下を発生し、この電圧降下により長軸方向電界ベクトル120を生成する。電極150および154は用途に応じてバイアスをかけられる。例えば、電極150および154に1000ボルトを印加し、一方、電極152および156はゼロ(0)ボルトにできる。
図14Bの実施形態が円筒形構成で実現される場合、電極150および154はリング状電極を形成し、また電極152および156もリング状電極を形成し、抵抗層144,146は円筒を形成する。
また、本発明は、飛行時間イオン移動度分光分析機能を実行できる。例えば、図14Aの実施形態では、電極104,106はパルス駆動され、イオン化される試料をエレクトロスプレー先端20から導入し、時間サイクルを開始する。電極110a−h,112a−hは、それらの隣接電極に対してバイアスをかけられ、その結果、発生した長軸方向電界勾配により、イオンが出力セクション10Cの方向に駆動される。逆方向ガス流122を供給して、試料の中性分子を排除できる。これら電極の組み合わせを利用して、前述のイオン・トラップTを形成できる(図13A)。
図15Aの分岐ガス流の実施形態では、エレクトロスプレー・ニードル12は、基板52を貫通してイオン領域23に挿入されているが、図3Aのように、ドリフト・チューブの外部に取り付けることも可能である。この構成のイオン流発生器は、流路30の両側に複数の分割電極160,162を備えることにより、長軸方向電界Eを生成できる。好ましい実施形態では、1つまたは複数の分離電極160’,162’がガス・受入口170の下流に配置され、ガスの分岐流を越えて電界Eを延長する。この結果、イオンは、ドリフト・ガス流の流れにより移送されるとき、フィルタ40内に流れ込む。
図15Bの実施形態では、質量分析計98がドリフト・チューブ30の末端に直接結合される。この構成の利点は、分岐ガス流の効果により、イオン・フィルタ40(内)に試料中性分子が存在しないことである。これにより、中性試料のイオンとのクラスタ形成を防止し、その結果、高精度の検出が可能になる。中性分子Nを排出するための排気デバイス103は、中性分子をMS取入口の外側に逃がす。
図のように、バッフル174を設けて、ドリフト・ガス流172の速度に対する排出ガス流176の速度を調整する。一般に、ドリフト・ガス流172の速度は排出ガス流176の速度に比べて速い。ただし、ドリフト・ガス流の速度と異なる速度の排出ガス流の速度を得る別の手段も、本発明の範囲内にある。
図15A、15Bの実施形態では、各種の試料調製セクションを使用でき、単に周囲の空気に試料を吸入する口、エレクトロスプレー、ガスクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ、またはその他であってもよい。何を使用するのかには関係なく、図示した分岐ガス流の実施形態は、クラスタ形成を防止し、イオン種の識別精度を向上できる。
一般に、試料・イオンは、モノマーまたはクラスタ状態で存在する傾向がある。所定のイオン種のモノマー・イオン量およびクラスタ・イオン量の関係は、試料濃度および特定の実験条件(例えば、湿度、温度、流量、RF電界強度)に依存する。モノマー状態およびクラスタ状態の両方を検出して、化学物質の識別に有効な情報を提供する。同一試料を、クラスタ形成を促進する条件およびモノマー・イオンだけを生成する環境において別々に分析することは有効である。これを達成するには、図16に示すような、平板状の2チャンネルの実施形態を使用する。
図16の2チャンネルの実施形態では、第1チャンネル“I”は、イオン領域194のドリフト・ガス流190内に、イオン24および分子を受け入れるように示されている。また、第1チャンネルは、PFAIMSフィルタ電極44,46および検出器電極70,72を含む。
モノマー状態の試料・イオンを分析するために、イオンを流路から抜き出し(電極198と200の間の電界の作用により)、そのイオンを上側チャンバ“II”に流す。中性分子28、一般には溶媒はチャンネル“I”を流れ続け、ドリフト・ガス排出口192から出る。エレクトロスプレー先端20と吸引電極191の間の電位差により、イオンが基板56の開口196を通りイオン領域194内に加速される。第2ガス流202は、試料中性分子がチャンバ“II”に入るのを防ぎ、イオン24をPFAIMSフィルタ40(チャンバII内の電極44,46)に移送する。この通過したイオンは、次に、検出器電極70,72を用いるか、または図3Bの質量分析計を用いて検出される。第2ガス流202は排出流204となって排出される。偏向電極および吸引電極198,200に電圧を印加していないとき、試料・イオンは、局部検出器電極72および70により、チャンバ“I”内で、クラスタ状態で観測できる。電極198および200を電圧印加状態または印加しない状態に切り換えることにより、化学試料を高精度で識別するための多くの情報を得ることができる。
図17は、本発明の1つの実施形態で得られた、ブタノンからデカノンまでの、ケトンの同族列試料を示す。図から、同一化学種に対しては、クラスタ・イオン(上側プロット)はモノマー・イオン(下側プロット)に比べて大幅に異なる補償信号を必要とする。モノマー・ピークとクラスタ・ピークのピーク位置の差を観測することにより、化合物の識別レベルを大幅に向上できる。例えば、ブタノンでは、モノマー状態のピーク位置は−9ボルト付近で発生するが、クラスタ・ピークはゼロ付近である。例えば、デカノンでは、モノマー・ピークはゼロ付近であるが、クラスタ・ピークは約+4ボルトである。
図18に示す実施形態の意図は、図16の実施形態と同一である。このシステムでは、モノマー状態とクラスタ状態の動作条件の切換えは、カーテン・ガス流190aおよび192aを制御することによりなされる。カーテン・ガスを供給することにより、試料中性分子28はチャンネル“II”に流入するのを阻止され、モノマー状態のイオンを分析できる。例えば、カーテン・ガス190aおよび192aを同一方向に流し、開口196から排出することもできる。チャンネル“II”内のガス流が図16のシステムと同一構成である場合、案内電極206および208を設けて、イオンをチャンネル“II”内に案内する。また、吸引電極を使用して、イオンをチャンネル“II”内に吸引する。カーテン・ガスを止めたときは、試料中性分子および試料・イオンを、ポンプ204aを使用して第2チャンネル“II”内に吸入できるため、クラスタ状態のイオンを検出できる。ガス流202および204も使用できる。出力セクションは質量分析計に接続できる。
本発明の用途では、高電界非対称イオン移動度濾過方式は、高周波高電圧波形を利用する。電界は、平板状構成が望ましいイオン移送路方向に直角に印加される。この好ましい平板状構成により、ドリフト・チューブを小型で低コストに、好ましくはミクロ機械加工により製造できる。また、電子回路を最小化でき、また全体予測電力を、現場測定に適する4ワット(非加熱)以下にできる。
発明者らは、エレクトロスプレーと濾過コンポーネントを組み合わせた新規な装置について説明してきたが、さらに、ミクロ機械加工されたPFAIMS−エレクトロスプレー・インタフェース・チップを開示する。PFAIMS−エレクトロスプレー・インタフェース・チップは、エレクトロスプレー質量分析計用のすべての従来の分子−濾過方法に比較して、特有の利点を備える。同時に、この方法は、毛管電気泳動のような液体内調製手法と組み合わせて使用できる。
本発明の実施形態では、トリブチルアミンをPFAIMSフィルタおよび検出器中にエレクトロスプレーから噴射した。図19には、溶媒中のアミンおよび溶媒溶離剤そのものに対して得られたスペクトルを示す。溶離剤そのものに対する応答は実質的に無く、アミンに対する応答は大きい。これは本発明の実際の価値および機能を示している。
本発明は、小型で低コストのパッケージで、改良された化学分析を実現する。本発明は、小型で現場使用可能なパッケージ内で、イオン移動度に基づいて化学種を識別する新規な方法および装置により、従来技術のTOF−IMSおよびFAIMSデバイスのコスト、サイズ、性能限界を克服する。結果的に、新規な平板状の高電界非対称イオン移動度分光計デバイスは、エレクトロスプレー先端と緊密に結合して、新しい種類の化学センサ(独立したデバイス、またはMSと接続するデバイスのどちらも可能)を実現する。現場使用可能で一体化されたPFAIMS化学センサを実現でき、このセンサは、現場で、広範囲の化合物を識別するための、高精度のリアルタイムまたはほぼリアルタイムの直交データ(orthogonal data)を高速で生成できる。これらのセンサは、広範囲の化学種の同時検出を可能にする別の能力を有し、試料中の陽イオンおよび陰イオンの両方を同時検出する能力を備える。さらに別の利点は、このセンサは、現場で、低消費電力で作動できる経済的・小型・大量生産可能なパッケージで実現でき、さらに、各種の検出された化学種を完全に識別できる直交データを生成できる。
従来技術の円筒形構成と比べたPFAIMS構成の別の利点は、PFAIMSが、電界強度に対して異なるα依存度を有する(αに関する詳細は、バックグラウンド・セクションを参照)全種類のイオンを濾過し、それらに作用する能力を有することである。この事実により、未知の複合試料混合物の測定を実行する際の複雑性を大幅に低減できる。
当業者には、図12C−Dの従来技術の円筒形構成では、放射状電界分布が不均一であることは理解されるであろう。一方、図3A、Bに示すPFAIMSのような本発明の実施形態では、PFAIMS構成のイオン・フィルタ電極間の電界分布(周縁部電界は無視)は均一であり、また電界も均一である。
平板状FAIMS構成のイオン分離に要する時間は、イオン集中状態に達していると、従来技術の円筒形FAIMS構成に比べて大幅に短い(約10分の1)。
本発明の実施形態は、円筒形、平板型および別の形状を使用する方法ならびに装置においても実現できるが、これらも、本発明の精神および範囲内に含まれるものとする。本発明の用途例には、生物センサ、化学センサなどでの使用が含まれる。前述の特定の実施形態のさまざまな変更も、本発明の精神および範囲内に含まれるものとする。本明細書に開示する例は説明目的で示すものであり、これに限定するものではない。これらや他の実施形態の範囲は、特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
本発明を好ましい実施形態により図示し、説明してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の精神と範囲から逸脱することなく、形態または細部に各種の変更を加えるのが可能であることは理解されるであろう。
3つの異なるイオン種についての移動度の電界依存性を示す。 キャリヤ・ガス流および非対称高周波電界波形の影響を同時に受けたときの、イオン・フィルタの上下平行板電極間の空隙内のイオン軌道を示す。 イオン・フィルタに使用される非対称RF電界波形の簡略図である。 RF電界で発生する変位を打ち消すために印加する補償電圧を示す。 RF電界だけを印加したときの初期位置からのイオン軌道と、補償電界だけを印加したときのイオン軌道とを示す。 RF電界および補償電界の両方を印加したときのイオン軌道を示す。 本発明の実施形態における化学センサ・システムの概略図である。 本発明の実施形態におけるエレクトロスプレーを含む、液体試料調製セクションを有する化学センサを示す。 本発明の実施形態におけるエレクトロスプレーを含む、液体試料調製セクションを有する化学センサを示す。 本発明の実施形態における機械加工されたエレクトロスプレー・ヘッドを示す。 本発明の実施形態における蛇行電極を示す。 本発明の実施形態におけるハウジングを形成する基板を示す。 本発明の実施形態における間隔を空けた絶縁基板を有するFAIMS分光計を示す。 本発明の実施形態における別の構造電極の例を示す。 本発明の実施形態における、電極縁端部の上に重なる絶縁スペーサを有するフィルタの側面断面図を示す。 本発明の実施形態における、スプレー・チップに通じる分離チャンネルに試料を送る試料収容部を有するエレクトロスプレー・ヘッドを示す。 本発明の実施形態における、イオン脱溶媒のための対称AC高周波電界を示す。 本発明の実施形態における、FAIMSデバイスに一体化された脱溶媒領域を示す。 質量分析計に接続された従来技術の円筒形FAIMSを示す。 本発明の実施形態における、改良された円筒形FAIMSデバイスを示す。 本発明の実施形態における、改良された円筒形FAIMSデバイスを示す。 本発明の実施形態におけるエレクトロスプレー取付けタワーを示す。 本発明の実施形態における案内電極を組み合わせたエレクトロスプレー・ヘッドを示す。 本発明の実施形態における案内電極を組み合わせたエレクトロスプレー・ヘッドを示す。 本発明の実施形態における制御システムを示す。 本発明の実施形態における制御信号を示す。 本発明の実施形態におけるチップ・レセプタクルを示す。 本発明の実施形態における、質量分析計と接合するチップ・レセプタクルを示す。 本発明の実施形態における平板状FAIMSを示す。 本発明の実施形態における平板状FAIMSを示す。 従来技術の円筒形FAIMSデバイスを示す。 従来技術の円筒形FAIMSデバイスを示す。 本発明の実施形態における、上側基板の開口を通過して上方からイオン領域内に挿入されたエレクトロスプレーを示す。 本発明の実施形態における、側面からイオン領域内に挿入されたエレクトロスプレーを示す。 本発明の実施形態における長軸方向電界駆動の例を示す。 本発明の実施形態における長軸方向電界駆動の例を示す。 本発明の実施形態における分岐ガス流の例を示す。 本発明の実施形態における分岐ガス流の例を示す。 本発明の実施形態における2チャンネルの例を示す。 本発明の実施形態における、異なるイオン化源についての補償電圧に対するケトンの依存性を示す。 本発明の実施形態における2チャンネルの例を示す。 本発明の実施形態における検出スペクトルを示す。

Claims (14)

  1. 液体試料からイオンを送り出すためのヘッドを含む、試料調製および導入セクションと、
    イオン・フィルタ・セクションと、
    出力部分と、
    電子回路部分とを備え、
    前記イオン・フィルタ・セクションが、流路を形成する絶縁表面と、前記流路を挟んで対向するイオン・フィルタ電極とをフィルタとして有し、前記液体試料から送り出されたイオンが前記流路に沿って前記イオン・フィルタ電極間を流れ、
    前記電子回路部分が、前記イオン・フィルタ電極に制御信号を印加するように構成され、前記イオン・フィルタ電極に非対称周期信号を印加することにより、交番する高電界および低電界状態を生成してその交番する電界状態に応じて前記流路内のイオンの流れを濾過し、
    前記フィルタの電界が補償されることにより、所望のイオン種が前記フィルタを通過して前記流路に沿って前記出力部分まで流れる電界非対称イオン移動度分光分析装置であって、
    前記試料調製および導入セクションがエレクトロスプレー・アセンブリを含み、
    そのエレクトロスプレー・アセンブリが基板に取り付けられてエレクトロスプレー・ヘッドを含み、
    イオンが、案内電極により開口へ移送され、吸引電極および案内電極により前記流路におけるイオン領域内に吸引され、
    個別のDCバイアスを各案内電極に印加して電位勾配を生成し、その電位勾配により前記イオンをイオン領域へ案内し、
    前記案内電極に対称RF信号を印加することにより、脱溶媒を促進するために利用し、
    脱溶媒をさらに促進するために前記案内されるイオンと逆方向に流れるガスを導入して、排出口から排出し、
    前記開口に圧力勾配を発生させずに作動する電界非対称イオン移動度分光分析装置。
  2. 請求項1において、
    イオン噴射状態を改良するために、エレクトロスプレー先端と上側案内電極の間の距離を、ベース/基板に対するハウジングの位置を変更することにより調整できるか、または、前記エレクトロスプレー・ヘッドの高さを前記上側案内電極に対して直接に調整できる電界非対称イオン移動度分光分析装置。
  3. 請求項1において、
    前記試料調製および導入セクションが、液体試料を収容する試料収容部を有するマイクロチップを含み、
    前記試料調製および導入セクションが、各種のミクロ機械加工された微小流体コンポーネントを含み、その微小流体コンポーネントを、イオン発生源として使用するか、または、エレクトロスプレー、ナノ・エレクトロスプレー、液体クロマトグラフィおよび電気泳動分離を含む微小流体コンポーネントの組み合わせとして使用する電界非対称イオン移動度分光分析装置。
  4. 請求項1において、
    前記試料調製および導入セクションが、液体試料を収容する試料収容部を有するマイクロチップを含み、
    エレクトロスプレー・ヘッドが、その先端であるエレクトロスプレー先端に通じている分離チャンネルへ供給する試料収容部を備え、
    前記分離チャンネルが、前記エレクトロスプレー先端でイオン化する前に試料成分の調製または分離をするための液体クロマトグラフィもしくは電気泳動セパレータである電界非対称イオン移動度分光分析装置。
  5. 請求項1において、
    間隔を空けた案内電極が、局部ハウジング内に限定されないかまたはその内部に含まれるカーテン・ガス流内に置かれ、
    エレクトロスプレー・ヘッドが取付け台に調製可能に取り付けられ、
    前記エレクトロスプレー・ヘッドの噴射角度を、基板の表面に対して調整でき、前記エレクトロスプレー・ヘッドの高さを前記基板に対して調整でき、
    チップ収納アセンブリを備え、
    前記マイクロチップを前記チップ収納アセンブリのソケットに挿入して収納し、前記ソケットがコントローラに電気的に接続されている電界非対称イオン移動度分光分析装置。
  6. 請求項1において、
    間隔を空けた案内電極が、局部ハウジング内に限定されないかまたはその内部に含まれるカーテン・ガス流内に置かれ、
    エレクトロスプレー・ヘッドが取付け台に調製可能に取り付けられ、
    前記エレクトロスプレー・ヘッドの噴射角度を、基板の表面に対して調整でき、前記エレクトロスプレー・ヘッドの高さを前記基板に対して調整でき、
    前記チップ収納アセンブリが分光計に接続するための接続部を備え、その接続部によって出力セクションからの出力開口がMS受入口に位置合わせされ、イオンが検出および分析のために前記MS受入口に導入される電界非対称イオン移動度分光分析装置。
  7. 請求項6において、
    検出器電極を偏向電極として使用して、イオンを質量分析計の受入口の方向に偏向させ、
    前記イオンを、集束電極により案内または集束し、基板の開口と取付けアダプタを経由してのプレナム・ガス・チャンバとを通過させる電界非対称イオン移動度分光分析装置。
  8. 請求項6において、
    小流量のプレナム・ガスをチャンバに供給することにより、中和された試料・イオンまたは溶媒分子が前記質量分析計の受入口に流入するのを防止し、
    前記質量分析計の受入口内に集束されたイオンを、標準の質量分析手順にしたがって検出する電界非対称イオン移動度分光分析装置。
  9. 請求項8において、
    検出器領域に入るイオンが前記質量分析計の受入口内に集束されることにより、システムの検出効率および感度を向上させている電界非対称イオン移動度分光分析装置。
  10. 請求項1において、
    前記電子回路部分が、複数のサブスシステムを含む電子コントローラを含み、
    前記サブシステムが、エレクトロスプレー・コントローラと、高電圧RF波形およびDC発生器と協働してRF非対称駆動信号および制御バイアス信号をフィルタ電極に供給する波形発生器またはシンセサイザと、検出器電極でイオンを検出するための検出電子回路とを含み、
    コンピュータが、データを収集し、システムを制御する電界非対称イオン移動度分光分析装置。
  11. 請求項10において、
    化学分析が、検出器としての質量分析計にアダプタを介して密接に接合されたアセンブリにより実行され、
    集束電極の電流を観測して、前記質量分析計の検出情報を処理するのに有効な追加の検出情報を得て、
    前記質量分析計の全体イオン電流を観測することにより、FAIMSスペクトルを再構成する電界非対称イオン移動度分光分析装置。
  12. 請求項1において、
    前記ヘッドが、エレクトロスプレー先端を含むエレクトロスプレー・ヘッドを有し、
    エレクトロスプレー先端が、上側基板の開口を通過してまたは側方から前記流路におけるイオン領域内に挿入され、
    前記イオンがガス流内を前記イオン・フィルタ電極に向かって移動するとき、吸引電極が前記イオンを前記流路内に吸引して案内し、
    前記エレクトロスプレー先端からの液滴が、排液孔が設けられる収容部内に集められる電界非対称イオン移動度分光分析装置。
  13. 請求項1において、
    イオンが前記フィルタを通過後、出力セクションに入る前に、イオンを収集するイオン・トラップを備えることにより、検出器信号のSN比を向上させている電界非対称イオン移動度分光分析装置。
  14. 請求項13において、
    中性分子が、前記イオン・トラップで収集されず、前記イオン・トラップからのガス流により連続して除去される電界非対称イオン移動度分光分析装置。
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