JP4062959B2 - 残響付与装置、残響付与方法、インパルス応答生成装置、インパルス応答生成方法、残響付与プログラム、インパルス応答生成プログラムおよび記録媒体 - Google Patents

残響付与装置、残響付与方法、インパルス応答生成装置、インパルス応答生成方法、残響付与プログラム、インパルス応答生成プログラムおよび記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンサートホールや劇場などの音響空間で行われた演奏などを、別の音響空間において再現するために、再生すべきオーディオ信号に対して残響効果を付加するための残響付与装置、残響付与方法、インパルス応答生成装置、インパルス応答生成方法、残響付与プログラム、インパルス応答生成プログラムおよび記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ユーザが家庭などの部屋(以下、「リスニングルーム」と称する)において音楽を聴く場合であっても、あたかもコンサートホールや劇場などで生演奏を聴いているかのような臨場感を味わえるようにするために、各種の技術が検討されている。コンサートホールなどの音響空間(以下、単に「音響空間」と称する)の音場をリスニングルームなどの別の音響空間に再現するといった音場再現技術もその1つである。
【0003】
音場再現技術について、以下に説明する。図11は、音響空間90において、楽器などの発音点Sから音が放射された際の反射音の様子を模式的に示す図である。図11に示すように、ステージ901上の発音点Sから放射された音は、天井や側壁などの音響空間90の境界面で反射され、観客席902に到達する。ここで、各反射音は、観客席902に同時に到達するのではなく、夫々の伝搬距離に応じた時間遅れをもって到達する。
【0004】
図11において、観客席902には、リスニングルームLが示されている。このリスニングルームLの天井や壁面などの境界面において、直接音や反射音(すなわち、残響音)の音響を再現できれば、観客席902のうち、このリスニングルームLで囲まれた場所の音場がリスニングルームL内に再現される。一般に、この音響の再現には、オーディオ信号に対して、音響空間のインパルス応答の畳み込み演算を行い出力する残響付与装置が用いられる。このインパルス応答には、無指向特性の発音点Sからインパルス音等の音響測定用信号が放射された際の、リスニングルームLにおいて採取される残響音を含んだ音響信号が用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の残響付与装置にあっては、必ずしも音響空間の音場が正確に再現される訳ではない。例えば、演奏者が金管楽器などの指向特性のある楽器を演奏したときの音場を再現することはできない。
【0006】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、音響空間の音場をより正確に再現することができる残響付与装置、残響付与方法、インパルス応答生成装置、インパルス応答生成方法、残響付与プログラム、インパルス応答生成プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、音響を再現すべき音響空間の空間形状と、この音響空間の境界面における音の反射特性とを取得する音響空間情報取得手段と、前記音響空間に配置される発音点と受音点の各々の配置位置及び向きを取得する配置位置取得手段と、前記空間形状と、前記反射特性と、前記発音点および受音点の配置位置とから、前記発音点から放射された音線が前記受音点に到達するまでに辿る複数の音線経路を特定する音線経路特定手段と、前記発音点に対する方向毎の発音強度を示す、当該発音点の発音の指向特性を取得する発音指向特性取得手段と、前記受音点に対する方向毎の受音感度を示す、当該受音点の受音の指向特性を取得する受音指向特性取得手段と、前記特定された音線経路毎に、前記受音点における音の強度を特定し、この特定された音の強度に対して、前記発音点の発音の指向特性と当該発音点の向き、および前記受音点の受音の指向特性と当該受音点の向きに応じた重み付けを行う重み付け手段と、前記音線経路毎の前記受音点に到達する方向と、重み付けされた音の強度とから、前記音響空間のインパルス応答を特定するインパルス応答特定手段と、特定された前記インパルス応答と音響効果を付与すべきオーディオ信号との畳み込み演を行う畳み込み演算手段とを具備することを特徴とする残響付与装置を提供する。
【0008】
この構成の下、重み付け手段により、前記音線経路特定手段により特定された音線経路毎に、前記受音点における音の強度が特定され、この特定された音の強度に対して、前記発音点の発音の指向特性と当該発音点の向き、および前記受音点の受音の指向特性と当該受音点の向きに応じた重み付けが行われる。また、インパルス応答特定手段により、前記音線経路毎の前記受音点に到達する方向と、重み付けされた音の強度とから、前記音響空間のインパルス応答が特定される。そして、畳み込み演算手段により、特定された前記インパルス応答と前記オーディオ信号との畳み込み演算が行われる。このように、本発明に係る残響付与装置によれば、発音点と受音点の指向特性及び向きに応じたインパルス応答が特定され、そして、このインパルス応答とオーディオ信号との畳み込み演算が行われるから、この畳み込み演算の結果として得られるオーディオ信号には、発音点および受音点の指向特性及び向きに応じた残響音が付与される。これにより、金管楽器などの指向特性のある楽器の楽音が再生される場合でも、その指向特性及び向きが反映された音場が再現され、音場がより正確に再現される。なお、上述した残響付与装置において、音響効果を付与すべきオーディオ信号を予め記憶する記憶手段を備えるようにしても良く、また、このオーディオ信号をインターネットなどのネットワークを介して外部装置から受信する受信手段を備えるようにしても良い。また、上述した残響付与装置において、発音の指向特性と受音の指向特性とのいずれか一方の指向特性を均一、すなわち、指向なしとし、指向のある方のみを重み付けに用いるようにしても良い。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明は、音響を再現すべき音響空間の空間形状と、この音響空間の境界面における音の反射特性とを取得する音響空間情報取得手段と、前記音響空間に配置される発音点と受音点の各々の配置位置及び向きを取得する配置位置取得手段と、前記空間形状と、前記反射特性と、前記発音点および受音点の配置位置とから、前記発音点から放射された音線が前記受音点に到達するまでに辿る複数の音線経路を特定する音線経路特定手段と、前記発音点に対する方向毎の発音強度を示す、当該発音点の発音の指向特性を取得する発音指向特性取得手段と、前記受音点に対する方向毎の受音感度を示す、当該受音点の受音の指向特性を取得する受音指向特性取得手段と、前記特定された音線経路毎に、前記受音点における音の強度を特定し、この特定された音の強度に対して、前記発音点の発音の指向特性と向き、および前記受音点の受音の指向特性と向きに応じた重み付けを行う重み付け手段と、前記音線経路毎の前記受音点に到達する方向と、重み付けされた音の強度とから、前記音響空間のインパルス応答を生成し出力するインパルス応答生成手段とを具備することを特徴とするインパルス応答生成装置を提供する。この構成の下、重み付け手段により、前記音線経路特定手段により特定された音線経路毎に、前記受音点における音の強度が特定され、この特定された音の強度に対して、前記発音点の発音の指向特性と向き、および前記受音点の受音の指向特性と向きに応じた重み付けが行われる。また、インパルス応答特定手段により、前記音線経路毎の前記受音点に到達する方向と、重み付けされた音の強度とから、前記音響空間のインパルス応答が生成され出力される。このように、本発明に係るインパルス応答生成装置によれば、発音点と受音点の各々の指向特性及び向きに応じたインパルス応答が生成され出力される。なお、このインパルス応答は、インパルス応答に従って残響を付与する残響付与装置などに用いられる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る残響付与装置10の使用の態様を示す図である。この残響付与装置10は、音響空間の音場を再現するために、この音響空間における受聴者Uに四方から到達する夫々の音を4つの再生チャネルにより再生する。すなわち、図1に示すように、残響付与装置10は、4つの再生チャネル端子Tch1〜Tch4を備えている。各再生チャネル端子Tch1〜Tch4には、互いに略同性能のスピーカ4が1つずつ接続されている。これら4つのスピーカ4の夫々は、受聴者Uから略等距離に配置されている。以下の説明において、スピーカ4の夫々を区別する場合に、スピーカ4−FR、4−FL、4−BR、4−BLと記す。
【0012】
再生チャネル端子Tch1には、スピーカ4−FRが接続され、このスピーカ4−FRは、受聴者Uの正面右側(図面手前左側)に配置されている。再生チャネル端子Tch2には、スピーカ4−FLが接続され、このスピーカ4−FLは、受聴者Uの正面左側(図面手前右側)に配置されている。これらスピーカ4−FR、4−FLからは、残響付与装置10により再現すべき音響空間における受聴者Uの前方から到達する音が再現されたものが放音される。
【0013】
また、再生チャネル端子Tch3には、スピーカ4−BRが接続され、このスピーカ4−BRは、受聴者Uの背面右側(図面奥左側)に配置されている。再生チャネル端子Tch4には、スピーカ4−BLが接続され、このスピーカ4−BLは、受聴者Uの背面左側(図面奥右側)に配置されている。これらスピーカ4−BR、4−BLからは、残響付与装置10により再現すべき音響空間における受聴者Uの後方から到達する音が再現されたものが放音される。
【0014】
図2は、残響付与装置10の電気的構成を示す図である。
同図において、CPU(Central Processing Unit)102は、データ・アドレスバス100を介して各部の動作を制御する。ROM(Read Only Memory)104は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)などの書き換え可能な不揮発性メモリであり、CPU102により実行される制御プログラムや後述する各種処理のためのプログラム、各種データを記憶している。RAM(Random Access Memory)106は、揮発性メモリであり、CPU102のワークエリアとして用いられ、各種演算結果やデータなどを一時的に記憶する。記憶装置108は、例えばハードディスクや、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスクなどの記憶媒体を備えており、次のデータを記憶している。すなわち、再現音響空間データ、発音点データ、受音点データである。
【0015】
再現音響空間データは、コンサートホールや教会、劇場などの音響空間毎に設けられ、1つの再現音響空間データには、空間形状情報と反射特性が含まれている。空間形状情報は、音響空間の空間形状を示す情報であり、壁や天井、床などの配置位置を示すXYZ直交座標系の座標情報により表されている。また、反射特性は、音響空間の壁や天井、床などの材質に応じた音の反射特性(吸音率や音の反射角など)を示すものである。
【0016】
発音点データは、ピアノやトランペット、クラリネットといった発音点Sとなり得るもの毎に設けられ、1つの発音点データには、発音点Sの指向特性が含まれている。この発音点Sの指向特性は、発音点Sに対する方向毎の発音点Sの発音強度を示すものである。また、受音点データは、例えば人間やマイクロホンといった受音点Rとなり得るもの毎に設けられ、1つの受音点データには、受音点Rの指向特性が含まれている。この受音点Rの指向特性は、受音点Rに対する方向毎の受音点Rの受音感度を示すものである。
【0017】
ユーザが音響空間や演奏される楽器などを幾つかの候補の中から選択できるように、記憶装置108には、再現音響空間データと、発音点データと、受音点データが夫々多数記憶されている。なお、記憶装置108は、残響付与装置10に内蔵されていなくても良く、例えば外付けの記憶装置であっても良い。また、残響付与装置10が記憶装置108を必ずしも備える必要はなく、ネットワーク上のサーバが記憶装置108を備え、残響付与装置10は、図示せぬ通信手段を有するように構成され、この通信手段を用いて、サーバからネットワークを介して記憶装置108に記憶されている各種データを取得しても良い。
【0018】
図2において、表示装置110は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどであり、CPU102の制御の下、各種情報を表示する。具体的には、表示装置110は、音響空間の候補や、発音点Sの候補、受音点Rの候補などを表示する。また、表示装置110は、ユーザにより選択された音響空間の空間形状を示す透視図を表示する。
【0019】
入力装置112は、例えばキーボードやマウス、ジョイスティックなどであり、ユーザにより入力された各種情報を、データ・アドレスバス100を介してCPU102に出力する。ユーザにより入力される情報には、ユーザが選択した音響空間や、発音点Sの種類などの他、この音響空間における発音点Sと受音点Rの夫々の配置位置(座標情報)や、発音点Sと受音点Rの向いている方向などがある。さらに説明すると、ユーザが幾つかの候補の中から音響空間を選択すべく入力装置112を操作すると、入力装置112は、係る操作を検知し、CPU102に選択された音響空間の選択情報を出力する。CPU102は、ユーザにより選択された音響空間の選択情報を受け取ると、この音響空間に対応する再現音響空間データを記憶装置108から読み出し、表示装置110にその音響空間の空間形状を示す透視図を表示させるようになっている。
【0020】
また、表示装置110に表示された透視図内において、ユーザが発音点Sと受音点Rの配置位置と向きを指定すべく入力装置112を操作すると、入力装置112は、かかる操作を検知して、発音点Sおよび受音点Rの配置位置と向きを示す夫々のXYZ直交座標系の座標情報をCPU102に出力する。
【0021】
CPU102は、再現音響空間データと、発音点Sと受音点Rの夫々の種類、位置および向きとから、この音響空間におけるインパルス応答を再生チャネル毎に算出する。なお、このインパルス応答の算出手順については、後に詳述する。
【0022】
A/D変換器114には、音響効果を付与する対象となるアナログのオーディオ信号が入力される。そして、A/D変換器114は、この入力されたアナログのオーディオ信号をデジタルのオーディオ信号に変換する。ここで、オーディオ信号は、再生されたときに余計な残響音が含まれることを防止するため、無響室などのデッドな空間において録音された楽音や音声のオーディオ信号(すなわち、ドライソース)であることが好ましい。
なお、音響効果を付与すべきオーディオ信号の波形データは、記憶装置108に予め記憶されていても良い。また、残響付与装置10がネットワークを介してデータを送受するための通信装置を更に備え、オーディオ信号の波形データを通信装置を介してネットワーク上に配置されたサーバ等の外部装置から受信し、この受信した波形データに音響効果を付与するようにしても良い。
【0023】
また、残響付与装置10は、再生チャネル毎に異なる残響効果をオーディオ信号に付与し、これらのオーディオ信号を再生するために、1つの再生チャネル毎に畳み込み演算装置116と、DSP118と、D/A変換器120とを夫々1つずつ備えている。
畳み込み演算装置116−1は、CPU102からの自装置に対応するインパルス応答と、A/D変換器114からのデジタル信号との実時間における畳み込み演算をリアルタイムに実行し、データ・アドレスバス100を介してDSP118−1に出力する。なお、畳み込み演算装置をハードウェアとして備える構成ではなく、プログラムによりCPU102に畳み込み演算装置と同等の機能を実現させるようにしても良い。
【0024】
DSP118−1は、畳み込み演算装置116−1から受け取ったデジタル信号に対して信号増幅や、時間遅延、周波数フィルタなどの各種信号処理を実行し、データ・アドレスバス100を介してD/A変換器120−1に出力する。
D/A変換器120−1は、DSP118−1から受け取ったデジタル信号をアナログに変換し、再生チャネル端子Tch1に接続されたスピーカ4−FRに出力する。他の再生チャネルに対応して設けられた畳み込み演算装置116−2〜116−4とDSP118−2〜118−4とD/A変換器120−2〜120−4についても同様である。なお、畳み込み演算装置とDSPは、再生チャネル毎に1つずつ設けられているが、これに限らず、1つの畳み込み演算装置および1つのDSPが各再生チャネル毎のオーディオ信号を処理するような構成であっても良い。
【0025】
さて、このような構成の下、残響付与装置10は、ユーザにより選択された音響空間の残響効果をオーディオ信号に付与し、このオーディオ信号を再生するための処理を、ROM104に記憶されているプログラムに従って実行する。このプログラムは、例えば光ディスクや、磁気ディスク、光磁気ディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されているプログラムがインストールされたものである。なお、残響付与装置10がプログラムをネットワークを介して受信するようにしても良い。
【0026】
図3は、残響付与装置10の処理動作手順を示すフローチャートである。
同図に示すように、CPU102は、ユーザにより選択された音響空間と、発音点Sの種類と、発音点Sの配置位置と、発音点Sの向きと、受音点Rの種類と、受音点Rの配置位置と、受音点Rの向きとの諸情報を入力装置112からデータ・アドレスバス100を介して取得する(ステップS1)そして、CPU102は、これらの諸情報が記録されたレシピファイルRF(図4参照)をRAM106内に生成する(ステップS2)。
【0027】
次いで、CPU102は、レシピファイルRFに記録された音響空間に対応する再現音響空間データを記憶装置108から読み出す(ステップS3)。そして、CPU102は、再現音響空間データにより示される空間形状と、レシピファイルRFに記録された発音点Sおよび受音点Rの配置位置とから、発音点Sから放射された音が辿る経路を追跡するといった、いわゆる音線法に従って、発音点Sから放射された音線が受音点Rに到達するまでに辿る音線経路を推定する(ステップS4)。さらに説明すると、CPU102は、発音点Sが無指向特性の放射特性を有するものとして音線経路を推定する。すなわち、発音点Sからは、四方に向けて同程度の数の音が放射され、この放射音のうち、音響空間の壁や天井などで反射されながら受音点Rに到達する音の経路が推定される(図5参照)。
【0028】
CPU102は、音線経路を推定すると、音線経路長が短い音線経路から順にレコードを生成し音線経路情報テーブルTBL1を生成する(ステップS5)。
図6は、音線経路情報テーブルTBL1の構成を示す概略図である。
同図に示すように、音線経路情報テーブルTBL1には、推定された音線経路毎にレコードが生成されており、1つのレコードには、音線経路長と、放射方向と、到達方向と、反射回数と、反射減衰率が含まれている。ここで、音線経路長は、音線経路の経路長である。
放射方向は、発音点Sからの音の放射方向であり、XYZ直交座標系のベクトルにて表されている。到達方向は、受音点Rへの音の到達方向であり、放射方向と同じくベクトルにて表されている。反射回数は、その音線経路上において、音が音響空間の壁や天井などで反射された回数である。また、反射減衰率は、反射回数により示される複数回の反射による音の減衰率である。
【0029】
次いで、CPU102は、インパルス応答を算出するための処理を実行する(ステップS6)。
図7は、CPU102により実行されるインパルス応答算出処理手順を示すフローチャートである。ここで、インパルス応答算出の際に用いられる発音点Sの指向特性などの各種パラメータは、周波数依存性を有する。そこで、CPU102は、インパルス応答の周波数帯域をパラメータ値が略一定となる帯域毎に分け、夫々の帯域についてインパルス応答を算出する処理を実行する。なお、本実施形態では、インパルス応答の周波数帯域は、M個の帯域に分割されているものとする。
【0030】
先ず、CPU102は、帯域を指定する変数mを「1」に初期化する(ステップU1)。次いで、CPU102は、音線経路毎に、その音線経路を辿って受音点Rに到達した音の音線強度Iを求めるべく、次の処理を実行する。すなわち、CPU102は、音線経路情報テーブルTBL1の先頭レコードを取り出し(ステップU2)、そのレコードに記録されている放射方向および反射減衰率と、発音点Sに対応する発音点データに示される指向特性とから、帯域fmにおける音線経路毎の音線強度Iを次の式から求める(ステップU3)。
【0031】
Figure 0004062959
ここで、rは基準距離、Lは音線経路長、α(fm)は反射減衰率、d(fm、X、Y、Z)は発音指向特性減衰係数、β(fm、L)は距離減衰係数である。基準距離rは、再現すべき音響空間の広さに応じて設定されるものである。具体的には、音線経路長が音響空間の広さに対して十分長い場合に、この音線経路を辿る音の減衰量が大きくなるように設定される。なお、上述した式の演算子「^」は、べき乗を表すものとする。
【0032】
反射減衰率α(fm)は、上述したように、音響空間の壁面などによる音の反射回数に応じた音の減衰率である。ここで、音の反射率は、反射する音の周波数に依存するため、反射減衰率も帯域ごとに設定される。
発音指向特性減衰係数d(fm、X、Y、Z)は、発音点Sの指向特性と発音点Sの向きに応じた減衰係数である。詳述すると、発音点Sは、方向毎に異なる強度で放音するといった、いわゆる指向特性を有している。また、この指向特性は、放音される音の帯域ごとに異なる。そこで、CPU102は、発音点Sの指向特性を発音点Sの向きにより補正し、発音指向特性減衰係数d(fm、X、Y、Z)を求める。そして、CPU102は、発音点Sからの方向に応じた発音指向特性減衰係数d(fm、X、Y、Z)の値を音線強度Iに重み付け、発音点Sの指向特性と向きに応じた音線経路毎の音線強度Iを求める。
距離減衰係数β(fm、L)は、音の伝搬距離(経路長)に応じた帯域毎の減衰を表すものである。
【0033】
次いで、CPU102は、ステップU3において処理したレコードが最後のレコードか否かを判断する(ステップU4)。この判断結果が「NO」であれば、CPU102は、音線経路情報テーブルTBL1から次のレコードを取り出し(ステップU5)、このレコードに記録された音線経路の音線強度Iを求めるべく、処理手順をステップU3に戻す。
【0034】
一方、ステップU4における判断結果が「YES」であれば、CPU102は、受音点Rに到達する時間(すなわち、残響遅延時間)が同一となる音線経路を抽出し、夫々の音線経路の到達方向ベクトルおよび音線強度Iから、受音点Rにおけるそれらの合成音線ベクトルを求める(ステップU6)。具体的には、音線経路同士の音線経路長が等しければ、音が夫々の音線経路を辿って受音点Rに到達する時間も等しくなる。そこで、CPU102は、音線経路情報テーブルTBL1から音線経路長が等しいレコードを抽出し、夫々のレコードに記録された到達方向と音線強度とから合成音線ベクトルを求める。
【0035】
次いで、CPU102は、ステップU6において求められた合成音線ベクトルから合成音線ベクトルテーブルTBL2を生成する(ステップU7)。
図8は、合成音線ベクトルテーブルTBL2の構成を示す概略図である。
同図に示すように、合成音線ベクトルテーブルTBL2には、ステップU6において求められた合成音線ベクトル毎にレコードが記録されている。この1つのレコードには、残響遅延時間と、合成音線強度Icと、合成到達方向とが含まれている。
残響遅延時間は、この合成音線ベクトルにて示される音が発音点Sから受音点Rに到達するまでの時間、すなわち、残響遅延時間である。合成音線強度Icは、合成音線ベクトルのベクトル強度である。また、合成到達方向は、この合成された音線が受音点Rに到達する際の方向を示し、合成音線ベクトルのベクトル方向により表される。
【0036】
次いで、CPU102は、ステップU6において求められた各合成音線ベクトルの合成音線強度Icに対して受音点Rの指向特性と向きによる重み付けを行うべく、次の処理を実行する。すなわち、CPU102は、合成音線ベクトルテーブルTBL2の先頭レコードを取り出す(ステップU8)。
そして、CPU102は、このレコードの合成音線強度に対して受音指向特性減衰係数g(fm、X、Y、Z)を乗じ(ステップU9)、その結果を対応する合成音線ベクトルテーブルTBL2の合成音線強度に上書きする。この受音指向特性減衰係数g(fm、X、Y、Z)は、受音点Rの指向特性と受音点Rの向きに応じた減衰係数である。
【0037】
詳述すると、受音点Rは、方向毎に異なる受音感度を有しており、また、この受音の指向特性は、受音される音の帯域毎に異なる。そこで、CPU102は、受音点Rの指向特性を受音点Rの向きにより補正し、受音指向特性減衰係数g(fm、X、Y、Z)を求める。そして、CPU102は、合成音線ベクトルの受音点Rへの到達方向に応じて受音指向特性減衰係数g(fm、X、Y、Z)を音線ベクトル強度に乗じて、受音点Rの指向特性と向きに応じた合成音線ベクトル強度を求める。
【0038】
次に、CPU102は、ステップU9において処理したレコードが合成音線ベクトルテーブルTBL2の最後のレコードであるかを判断する(ステップU10)。この判断結果が「NO」であれば、CPU102は、次のレコードを取り出し(ステップU11)、このレコードの合成音線強度Icに対して重み付けを行うべく処理手順をステップU9に戻す。
【0039】
一方、ステップU10における判断結果が、「YES」であれば、CPU102は、合成音線ベクトル毎に、その合成音線ベクトルに対応する音が4つのスピーカ4のうち、どのスピーカ4から出力されるべきかを判断して合成音線ベクトルを各スピーカ4に振り分けるための処理を行う。
【0040】
より具体的には、CPU102は、合成音線ベクトルテーブルTBL2の先頭レコードを取り出し(ステップU12)、このレコードに記録されている合成音線ベクトルに対応した音を、4つのスピーカ4のどれから出力すべきか、すなわち、4つの再生チャネルの内、どの再生チャネルに振り分けるかを合成到達方向から判断し、この判断結果を示す再生チャネル情報をレコードに追加する(ステップU13)。例えば、取り出したレコードの合成到達方向が受音点Rへの正面右方向からの到達を示している場合、CPU102は、この合成音線ベクトルに応じた音が受聴者Uの正面右側に配置されるスピーカ4−FRから出力されるようにするために、このスピーカ4−FRに対応する再生チャネルを示す再生チャネル情報を付加する(図9参照)。ここで、合成音線ベクトルの到達方向が例えば正面方向であるときは、再生チャネルとして、スピーカ4−FRと4−FLとから同じ音量で出力するような再生チャネル情報を付加すればよい。
【0041】
そして、CPU102は、取り出したレコードが合成音線ベクトルテーブルTBL2の最後のレコードかを判断する(ステップU14)。この判断結果が「NO」であれば、CPU102は、次のレコードを取り出し(ステップU15)、このレコードについて処理すべく、処理手順をステップU13に戻す。
【0042】
一方、ステップU14における判断結果が「YES」であれば、CPU102は、変数mを「1」だけインクリメントし(ステップU16)、この変数mが周波数帯域の分割数Mよりも大であるか否かを判断する(ステップU17)。この判断結果が「NO」であれば、CPU102は、次の帯域についてインパルス応答を求めるべく、処理手順をステップU2に戻す。一方、ステップU17における判断結果が「YES」であれば、CPU102は、帯域毎に求められた合成音線強度Icからインパルス応答を再生チャネル毎に求める(ステップU18)。
【0043】
より具体的に説明すると、CPU102は、ステップU13において付加された再生チャネル情報を参照し同一再生チャネルに割り当てられた合成音線ベクトルのレコードを各帯域毎に生成された合成音線ベクトルテーブルTBL2から抽出する。そして、CPU102は、抽出した各レコードの残響遅延時間と合成音線強度から、受音点Rにて採取されるインパルス音を時系列に求めインパルス応答を特定する。これにより再生チャネル毎のインパルス応答が特定される。
【0044】
さて、図3に示すように、CPU102は、インパルス応答処理算出処理(ステップS6)を終了すると、畳み込み演算装置116−1〜116−4の夫々にインパルス応答とオーディオ信号との畳み込み演算を行わせてオーディオ信号を再生するための処理を実行する(ステップS7)。すなわち、CPU102は、畳み込み演算装置116−1〜116−4の夫々に、対応する再生チャネルのインパルス応答を出力するとともに、インパルス応答とオーディオ信号との畳み込み演算を実行させる命令信号を出力する。
【0045】
畳み込み演算装置116−1〜116−4は、CPU102から命令信号を受け取ると、A/D変換器114からデジタルのオーディオ信号を受け取り、このオーディオ信号とCPU102から受け取ったインパルス応答との畳み込み演算を行う。図10は、畳み込み演算装置116−1〜116−4の畳み込み演算処理ブロックを示す概略図である。同図に示すように、畳み込み演算処理ブロックは、遅延回路1160と、乗算回路1162と、加算回路1164とを夫々多数備えている。遅延回路1160は、オーディオ信号に一定の時間遅延を与える。乗算回路1162は、オーディオ信号と、CPU102から受け取ったインパルス応答の各パルスに対応する係数との乗算を行う。加算回路1164は、各乗算回路1162から出力されるオーディオ信号同士の加算を行う。このような構成の下、1つのインパルス応答に対応する残響音成分は、オーディオ信号がその残響遅延時間に応じた数の遅延回路1160を通過し、かつ、そのインパルス応答に応じた乗算回路1162を通過することにより生成される。そして、畳み込み演算処理ブロックは、それらの残響音成分を加算することにより、オーディオ信号に残響効果を付与している。
【0046】
次いで、畳み込み演算装置116−1〜116−4の夫々は、この演算結果をDSP118−1〜118−4のうち、自装置に対応するものに出力する。DSP118−1〜118−4の夫々は、受け取ったデジタルのオーディオ信号に対して各種信号処理を行った後、D/A変換器120−1〜120−4のうち、自回路に対応するものに出力する。D/A変換器120−1〜120−4の夫々は、受け取ったデジタルのオーディオ信号をアナログのオーディオ信号に変換し、対応するスピーカ4に出力する。夫々のスピーカ4は、受け取ったオーディオ信号に応じた音を出力する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の残響付与装置10によれば、合成音線ベクトルの合成音線強度は、発音点Sの指向特性とその向き、および、受音点Rの指向特性とその向きの4要素に応じて求められ、この合成音線ベクトルから再生チャネル毎のインパルス応答が特定される。すなわち、特定されたインパルス応答には、4要素が反映される。そして、このインパルス応答がオーディオ信号に対して畳み込み演算され、この演算結果として得られるオーディオ信号が再生される。従って、残響付与装置10が楽音のオーディオ信号を再生する場合、ステージ上で演奏されている楽音を観客席にて聴いている状態が楽器の指向特性や演奏者の向きを含めて再現される。つまり、トランペットとバイオリン、フルートとピアノなど指向特性が異なる楽器の差が再生音場に現れる。また、演奏者が壁を向いたときには、そちらからの返りが強く、壁に背を向けたときは、返りが弱くなるといったように、演奏条件の違いが表現される。このように、本実施形態の残響付与装置10によれば、音場がより正確に再現される。
【0048】
また、本実施形態の残響付与装置10によれば、音響空間と、発音点Sおよび受音点Rの夫々の配置位置とが変更されなければ、ステップS4(図3参照)における音線経路推定の結果得られる音線経路は、常に等しくなる。従って、記憶装置108などに、この推定された音線経路が記憶されていれば、音響空間と発音点Sおよび受音点Rの各配置位置以外の情報が変更されたとしても、ステップS4における音線経路推定が再度実行される必要がなく、これにより、インパルス応答が特定されるまでの処理時間が短縮される。なお、本実施形態では、音響空間の音響を再現すべく、インパルス応答を生成し、このインパルス応答を用いて音を出力する構成の残響音付与装置について例示したが、インパルス応答生成装置がインパルス応答を生成し、残響付与装置がインパルス応答を用いた残響音の付与を行うといったように、インパルス応答の生成と、残響音の付与とを別々の装置で行う構成でも良い。また、本実施形態において、発音点Sの指向特性と受音点Rの指向特性とのいずれか一方の指向特性を均一、すなわち、指向性なしとして、指向性を有する指向特性のみが重み付けに用いられるようにしても良い。
【0049】
<変形例>
上述した実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変更および応用が可能である。そこで以下に、各種の変形例を説明する。
【0050】
(変形例1)
上述した実施形態において、残響付与装置10は、4チャネルの再生チャネルを備えていたが、再生チャネルを幾つ備えるかは、任意である。また、本実施形態において、各種座標情報の記述にXYZ直交座標系が用いられたが、この他に任意の座標系を用いても良い。
【0051】
(変形例2)
上述した実施形態において、残響付与装置10の記憶装置108は、コンサートホールなどの音響空間に対応した複数の再現音響空間データを予め記憶しており、ユーザは、これらの音響空間の中から再現したい音響空間を選択した。これに限らず、さらに、ユーザが任意の音響空間をデザインし、残響付与装置10がそのデザインされた音響空間の残響効果をオーディオ信号に付与するように、本実施形態を変形しても良い。また、発音点Sの指向特性や受音点Rの指向特性などをユーザが任意に調整できるように、本実施形態を変形しても良い。
【0052】
(変形例3)
上述した実施形態において、発音点Sが1つだけ設定されたが、これに限らず多数の発音点Sが設定されるように実施形態を変形しても良い。また、多数の受音点Rが設定されるように実施形態を変形しても良い。発音点Sおよび受音点Rが夫々多数設定される場合、CPU102は、図3に示すステップS4において、1つの発音点Sからのインパルス音が夫々の受音点Rに到達するまでに辿る音線経路を発音点Sごとに推定する。
【0053】
(変形例4)
上述した実施形態において、発音点Sは、設定された位置、向きに固定されているが、発音点Sの配置位置、向きが時々刻々と変わるに応じて残響付与装置10がインパルス応答を求めるように本実施形態を変形しても良い。本変形例によれば、例えば演奏者が楽器を演奏しながらステージ上を動くときの音場が再現される。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、音響空間の音場をより正確に再現することができる残響付与装置、残響付与方法、インパルス応答生成装置、インパルス応答生成方法、残響付与プログラム、インパルス応答生成プログラムおよび記録媒体が提供される。
【0055】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る残響付与装置の使用の態様を示す概略図である。
【図2】 同残響付与装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】 同CPUにより実行される処理手順を示すフローチャートである。
【図4】 同レシピファイルの構成を示す概略図である。
【図5】 同推定された音線経路を示す概略図である。
【図6】 同音線経路情報テーブルの構成を示す概略図である。
【図7】 同CPUにより実行されるインパルス応答算出処理手順を示すフローチャートである。
【図8】 同合成音線ベクトルテーブルの構成を示す概略図である。
【図9】 同再生チャネル情報を説明するための図である。
【図10】 同畳み込み演算処理ブロックを示す概略図である。
【図11】 従来の音場再現技術を説明するための図である。
【符号の説明】
RF…レシピファイル、L…リスニングルーム、R…受音点、S…発音点、TBL1…音線経路情報テーブル、TBL2…合成音線ベクトルテーブル、4、4−FR、4−FL、4−BR、4−BL…スピーカ、10…残響付与装置、102…CPU、108…記憶装置、112…入力装置、114…A/D変換器、116−1〜116−4…畳み込み演算装置、118−1〜118−4…DSP、120−1〜120−4…D/A変換器。

Claims (12)

  1. 音響を再現すべき音響空間の空間形状と、この音響空間の境界面における音の反射特性とを取得する音響空間情報取得手段と、
    前記音響空間に配置される発音点と受音点の各々の配置位置及び向きを取得する配置位置取得手段と、
    前記空間形状と、前記反射特性と、前記発音点および受音点の配置位置とから、前記発音点から放射された音線が前記受音点に到達するまでに辿る複数の音線経路を特定する音線経路特定手段と、
    前記発音点に対する方向毎の発音強度を示す、当該発音点の発音の指向特性を取得する発音指向特性取得手段と、
    前記受音点に対する方向毎の受音感度を示す、当該受音点の受音の指向特性を取得する受音指向特性取得手段と、
    前記特定された音線経路毎に、前記受音点における音の強度を特定し、この特定された音の強度に対して、前記発音点の発音の指向特性と当該発音点の向き、および前記受音点の受音の指向特性と当該受音点の向きに応じた重み付けを行う重み付け手段と、
    前記音線経路毎の前記受音点に到達する方向と、重み付けされた音の強度とから、前記音響空間のインパルス応答を特定するインパルス応答特定手段と、
    特定された前記インパルス応答と音響効果を付与すべきオーディオ信号との畳み込み演を行う畳み込み演算手段と
    を具備することを特徴とする残響付与装置。
  2. 前記配置位置取得手段は、前記発音点および受音点の夫々の配置位置及び向きを順次取得し、
    前記音線経路特定手段は、前記配置位置取得手段により順次取得される前記発音点および受音点の配置位置ごとに、前記発音点から放射された音線が受音点に到達するまでに辿る複数の音線経路を特定し、
    前記重み付け手段は、前記発音点および受音点の配置位置ごとに特定される音線経路毎に、前記受音点における音の強度を特定し、この特定された音の強度に対して、前記発音点の発音の指向特性と当該発音点の向き、および前記受音点の受音の指向特性と当該受音点の向きに応じた重み付けを行う
    ことを特徴とする請求項1に記載の残響付与装置。
  3. 前記配置位置取得手段は、複数の発音点および受音点の夫々の配置位置及び向きを取得し、
    前記音線経路特定手段は、前記複数の発音点の夫々から放射された音線が各受音点に到達するまでに辿る複数の音線経路を特定し、
    前記発音指向特性取得手段は、前記複数の発音点および受音点の夫々の指向特性を取得する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の残響付与装置。
  4. 前記畳み込み演算手段による演算結果に応じて放音する複数の放音手段を更に備え、
    前記インパルス応答特定手段は、前記放音手段の夫々の配置位置及び向きに応じて、前記放音手段ごとにインパルス応答を特定し、
    前記畳み込み演算手段は、前記放音手段毎に設けられ、対応する放音手段の配置位置及び向きに応じて特定されたインパルス応答と前記オーディオ信号の畳み込み演算を行う
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の残響付与装置。
  5. 前記重み付け手段が、前記受音点の受音の指向特性及び向きに応じた重み付けを行う場合には、
    前記発音点から放射された音線が前記受音点に到達するまでの残響遅延時間毎に、前記発音点から放射された音線が複数の前記音線経路を辿って前記受音点に到達するときの当該音線の方向とその音線強度とを合成した合成音声ベクトルを求め、
    求めた合成音声ベクトルの合成音線強度に対し、前記受音点の向きによって補正した当該受音点の指向特性に応じた重み付けを行う
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の残響付与装置。
  6. 音響を再現すべき音響空間の空間形状と、この音響空間の境界面における音の反射特性と、この音響空間に配置される発音点と受音点の各々の配置位置及び向きとを取得する第1の過程と、
    前記空間形状と、前記反射特性と、前記発音点および受音点の配置位置とから、前記発音点から放射された音線が前記受音点に到達するまでに辿る複数の音線経路を特定する第2の過程と、
    前記発音点に対する方向毎の発音強度を示す、当該発音点の指向特性と、前記受音点に対する方向毎の受音感度を示す、当該受音点の受音の指向特性とを取得する第3の過程と、
    前記特定された音線経路毎に、前記受音点における音の強度を特定し、この特定された音の強度に対して、前記発音点の発音の指向特性と当該発音点の向き、および前記受音点の受音の指向特性と当該受音点の向きに応じた重み付けを行う第4の過程と、
    前記音線経路毎の前記受音点に到達する方向と、重み付けされた音の強度とから、前記音響空間のインパルス応答を特定する第5の過程と、
    音響効果を付与すべきオーディオ信号に対して、特定された前記インパルス応答を畳み込む演算を行う第6の過程と
    を具備することを特徴とする残響付与方法。
  7. 音響を再現すべき音響空間の空間形状と、この音響空間の境界面における音の反射特性とを取得する音響空間情報取得手段と、
    前記音響空間に配置される発音点と受音点の各々の配置位置及び向きを取得する配置位置取得手段と、
    前記空間形状と、前記反射特性と、前記発音点および受音点の配置位置とから、前記発音点から放射された音線が前記受音点に到達するまでに辿る複数の音線経路を特定する音線経路特定手段と、
    前記発音点に対する方向毎の発音強度を示す、当該発音点の発音の指向特性を取得する発音指向特性取得手段と、
    前記受音点に対する方向毎の受音感度を示す、当該受音点の受音の指向特性を取得する受音指向特性取得手段と、
    前記特定された音線経路毎に、前記受音点における音の強度を特定し、この特定された音の強度に対して、前記発音点の発音の指向特性と向き、および前記受音点の受音の指向特性と向きに応じた重み付けを行う重み付け手段と、
    前記音線経路毎の前記受音点に到達する方向と、重み付けされた音の強度とから、前記音響空間のインパルス応答を生成し出力するインパルス応答生成手段と
    を具備することを特徴とするインパルス応答生成装置。
  8. 音響を再現すべき音響空間の空間形状と、この音響空間の境界面における音の反射特性と、この音響空間に配置される発音点と受音点の各々の配置位置及び向きとを取得する第1の過程と、
    前記空間形状と、前記反射特性と、前記発音点および受音点の配置位置とから、前記発音点から放射された音線が前記受音点に到達するまでに辿る複数の音線経路を特定する第2の過程と、
    前記発音点に対する方向毎の発音強度を示す、当該発音点の発音の指向特性と、前記受音点に対する方向毎の受音感度を示す、当該受音点の受音の指向特性とを取得する第3の過程と、
    前記特定された音線経路毎に、前記受音点における音の強度を特定し、この特定された音の強度に対して、前記発音点の発音の指向特性と向き、および前記受音点の受音の指向特性と向きに応じた重み付けを行う第4の過程と、
    前記音線経路毎の前記受音点に到達する方向と、重み付けされた音の強度とから、前記音響空間のインパルス応答を生成し出力する第5の過程と
    を具備することを特徴とするインパルス応答生成方法。
  9. コンピュータを、
    音響を再現すべき音響空間の空間形状と、この音響空間の境界面における音の反射特性とを取得する音響空間情報取得手段、
    前記音響空間に配置される発音点と受音点の各々の配置位置及び向きを取得する配置位置取得手段、
    前記空間形状と、前記反射特性と、前記発音点および受音点の配置位置とから、前記発音点から放射された音線が前記受音点に到達するまでに辿る複数の音線経路を特定する音線経路特定手段、
    前記発音点に対する方向毎の発音強度を示す、当該発音点の発音の指向特性を取得する発音指向特性取得手段、
    前記受音点に対する方向毎の受音感度を示す、当該受音点の受音の指向特性を取得する受音指向特性取得手段、
    前記特定された音線経路毎に、前記受音点における音の強度を特定し、この特定された音の強度に対して、前記発音点の発音の指向特性と向き、および前記受音点の受音の指向特性と向きに前記発音点の発音の指向特性および前記受音点の受音の指向特性に応じた重み付けを行う重み付け手段、
    前記音線経路毎の前記受音点に到達する方向と、重み付けされた音の強度とから、前記音響空間のインパルス応答を特定するインパルス応答特定手段、および、
    特定された前記インパルス応答と音響効果を付与すべきオーディオ信号との畳み込み演算を行う畳み込み演算手段
    として機能させるための残響付与プログラム。
  10. コンピュータを、
    音響を再現すべき音響空間の空間形状と、この音響空間の境界面における音の反射特性とを取得する音響空間情報取得手段、
    前記音響空間に配置される発音点と受音点の各々の配置位置及び向きを取得する配置位置取得手段、
    前記空間形状と、前記反射特性と、前記発音点および受音点の配置位置とから、前記発音点から放射された音線が前記受音点に到達するまでに辿る複数の音線経路を特定する音線経路特定手段、
    前記発音点に対する方向毎の発音強度を示す、当該発音点の発音の指向特性を取得する発音指向特性取得手段、
    前記受音点に対する方向毎の受音感度を示す、当該受音点の受音の指向特性を取得する受音指向特性取得手段、
    前記特定された音線経路毎に、前記受音点における音の強度を特定し、この特定された音の強度に対して、前記発音点の発音の指向特性と向き、および前記受音点の受音の指向特性と向きに応じた重み付けを行う重み付け手段、および、
    前記音線経路毎の前記受音点に到達する方向と、重み付けされた音の強度とから、前記音響空間のインパルス応答を生成し出力するインパルス応答生成手段
    として機能させるためのインパルス応答生成プログラム。
  11. コンピュータを、
    音響を再現すべき音響空間の空間形状と、この音響空間の境界面における音の反射特性とを取得する音響空間情報取得手段、
    前記音響空間に配置される発音点と受音点の各々の配置位置及び向きを取得する配置位置取得手段、
    前記空間形状と、前記反射特性と、前記発音点および受音点の配置位置とから、前記発音点から放射された音線が前記受音点に到達するまでに辿る複数の音線経路を特定する音線経路特定手段、
    前記発音点に対する方向毎の発音強度を示す、当該発音点の発音の指向特性を取得する発音指向特性取得手段、
    前記発音点に対する方向毎の発音強度を示す、当該受音点の受音の指向特性を取得する受音指向特性取得手段、
    前記特定された音線経路毎に、前記受音点における音の強度を特定し、この特定された音の強度に対して、前記発音点の発音の指向特性と向き、および前記受音点の受音の指向特性と向きに応じた重み付けを行う重み付け手段、
    前記音線経路毎の前記受音点に到達する方向と、重み付けされた音の強度とから、前記音響空間のインパルス応答を特定するインパルス応答特定手段、および、
    特定された前記インパルス応答と音響効果を付与すべきオーディオ信号との畳み込み演算を行う畳み込み演算手段
    として機能させるための残響付与プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  12. コンピュータを、
    音響を再現すべき音響空間の空間形状と、この音響空間の境界面における音の反射特性とを取得する音響空間情報取得手段、
    前記音響空間に配置される発音点と受音点の各々の配置位置及び向きを取得する配置位置取得手段、
    前記空間形状と、前記反射特性と、前記発音点および受音点の配置位置とから、前記発音点から放射された音線が前記受音点に到達するまでに辿る複数の音線経路を特定する音線経路特定手段、
    前記発音点に対する方向毎の発音強度を示す、当該発音点の発音の指向特性を取得する発音指向特性取得手段、
    前記受音点に対する方向毎の受音感度を示す、当該受音点の受音の指向特性を取得する受音指向特性取得手段、
    前記特定された音線経路毎に、前記受音点における音の強度を特定し、この特定された音の強度に対して、前記発音点の発音の指向特性と向き、および前記受音点の受音の指向特性と向きに応じた重み付けを行う重み付け手段、および、
    前記音線経路毎の前記受音点に到達する方向と、重み付けされた音の強度とから、前記音響空間のインパルス応答を生成し出力するインパルス応答生成手段
    として機能させるためのインパルス応答生成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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