JP4062751B2 - 抗菌性熱収縮ポリエステルフィルム、熱収縮包装材および結束材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌特性および熱収縮特性を有するポリエステルフィルムおよびそれを用いてなる包装材および結束材に関する。さらに詳しくは、熱収縮ポリエステルフィルムが用いられる利用分野、すなわち工業用フィルム、包装用フィルムの全てにわたって適用でき、新たに抗菌特性を付与することができるため、特に滅菌を要する食品、医療器具、医療施設、医薬品分野での包装、結束に於いて好適に使用できるポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術・発明が解決しようとする課題】
熱可塑性樹脂、中でもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートは優れた物理的、化学的特性を有し、繊維、プラスチックス、フィルム、シート、接着剤等に使用されている。最近、これらに無機系または有機系の抗菌剤を含有または塗布した抗菌性を有する製品が考案されている。
【0003】
現在、主に検討または使用されている抗菌剤としては、キチン、キトサン、ワサビ抽出物、カラシ抽出物、ヒノキチオール、茶抽出抗菌剤等の天然品;光酸化触媒酸化チタン粒子、酸化亜鉛超微粒子、銀含有ゼオライト、銀含有リン酸ジルコニウム等の無機系化合物や、有機アンモニウム塩系、有機ホスホニウム塩系等の有機系化合物等の合成品が挙げられる。天然抗菌剤や銀に代表される無機系抗菌剤は毒性の面で安全で最近注目を浴び、以下の発明が既に開示されている。
【0004】
例えば、特開平3−83905号公報には銀イオン含有リン酸塩系の抗菌剤が、特開平3−161409号公報には特定のイオン交換容量を有するゼオライト中の一定容量を銀イオンで置換してなる抗菌剤がそれぞれ開示されている。
【0005】
しかし、これらの抗菌剤を含有または塗布したフィルム、シート、繊維等の黄色ブドウ球菌、大腸菌等に対する抗菌性とこれら成形体の透明性においては、透明性を維持しようと添加量を比較的少なくすると抗菌活性は不十分で、抗菌活性を改善しようと添加量を多くすると透明性を犠牲にしなければならず、実用的に改良の余地があった。
【0006】
これに対し、有機系抗菌剤は、かび類等に対する抗菌活性は天然抗菌剤や無機系抗菌剤よりも一般に優れている。しかし、フィルム等の基体にそれらの抗菌剤を含有または表面塗布する場合、低分子量の抗菌剤を単独で使用すると、フィルム等の基体表面から揮発、脱離、分離しやすく、抗菌活性の長期安定性の点、人体への安全性の点で好ましくない。このように、有機系抗菌剤をフィルム等に使用する場合には、抗菌剤が水や有機溶媒等に溶解せず、フィルム表面から遊離、脱離、剥離、脱落し難いことが、抗菌性能の長期安定性および人体への安全性の面から好ましい。
【0007】
このような状況の中、最近では、フィルム、繊維等の原料となるポリマー素材に有機系抗菌剤をイオン結合または共有結合した固定化抗菌剤が開発されている。例えば、特開昭54−86584号公報には、ポリマーのカルボキシル基やスルホン酸基等の酸性基と抗菌成分の4級アンモニウム塩基とがイオン結合した高分子物質を主体とした抗菌性材料が記載されている。また、特開昭61−245378号公報には、アミジン基等の塩基性基や4級アンモニウム塩基を有する抗菌剤成分を共重合成分としたポリエステル共重合体からなる繊維が記載されている。
【0008】
しかし、これらの抗菌性材料を含有または塗布した繊維、織物、フィルム、シート等について黄色ブドウ球菌、大腸菌等に対する抗菌性を評価したが、いずれも抗菌活性は不十分で、実用性に不十分であった。
【0009】
一方、ホスホニウム塩化合物は、細菌類に対して広い活性スペクトルを持った生物学的活性化学物質であることが開示され、この化合物を高分子物質に固定化し用途の拡大を試みた発明が開示されている(特開昭57−204286号公報、63−60903号公報、62−114903号公報、特開平1−93596号公報、2−240090号公報)。
【0010】
また、特開平4−266912号公報には、ホスホニウム塩系ビニル重合体の抗菌剤について、特表平4−814365号公報には、ビニルベンジルホスホニウム塩系ビニル重合体の抗菌剤について開示されている。さらに、特開平5−310820号公報には、ポリマーの酸性基と抗菌成分のホスホニウム塩基とがイオン結合した高分子物質を主体とした抗菌性材料が記載されている。その実施例中で、スルホイソフタル酸のホスホニウム塩を用いたポリエステルが開示されている。
【0011】
しかし、特開平4−266912号公報、特表平4−814365号公報、特開平5−310820号公報を鋭意検討し、その実施例に従いホスホニウム塩基含有ビニル重合体および共重合ポリエステルを合成し、繊維、フィルム、シート等を形成したり、またそれの抗菌ポリマーを繊維、フィルム、シート面上に塗布することにより積層体を形成し、その抗菌性を評価したが、抗菌活性は不十分であった。さらには、抗菌性を向上させようとトリノルマルブチルドデシルホスホニウム塩基を50モル%以上結合させたポリエステルを合成し、それからフィルム、シート等を作成したが、ポリマーの着色およびガラス転移点の低下による力学物性の低下のみならず抗菌性が不十分であった。
【0012】
また、特開平6−41408号公報には、写真用支持体、包装用、一般工業用、磁気テープ用等にスルホン酸ホスホニウム塩の共重合ポリエステルとポリアルキレングリコールとからなる改質ポリエステルおよびフィルムが開示されている。ここでのホスホニウム塩に結合したアルキル基は、前記特開平5−310820号公報とは異なり、ブチル基やフェニル基、ベンジル基と比較的炭素数の短いタイプであり、このようなフィルムは抗菌作用が不十分である。また熱収縮性についても言及しておらず、本発明のような具体的な技術検討は皆無である。
【0013】
さらに、前述の無機系抗菌剤および有機系抗菌剤を単独だけでなく2種以上を混合使用して、繊維、織物、フィルム、シート等を成形し、その黄色ブドウ球菌、大腸菌等に対する抗菌性を評価したが、いずれも抗菌活性は不十分で、実用性に不十分であった。
【0014】
本発明の目的は、上記の従来の問題点を解決したうえで、無機系抗菌剤および/または有機系抗菌剤量を増やすことなく、優れた抗菌活性を有する熱収縮ポリエステルフィルムを提供することにある。また、該フィルムを用いた包装材または結束材であって、これらで熱収縮包装または結束することにより被包装物または被結束物に容易に抗菌性を付与でき得るような包装材および結束材を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、無機系抗菌剤および有機系抗菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の抗菌剤と親水性物質とを共に含有する抗菌層を有することにより、得られる熱収縮ポリエステルフィルムの抗菌活性が非常に高くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルドデシルホスホニウム塩のいずれかであるジカルボン酸成分、およびポリエーテル鎖を有する親水性物質を重合成分として含有する共重合ポリエステル樹脂を含有する抗菌層を有してなり、かつ100℃で10秒加熱後の熱収縮率が30%以上であることを特徴とする抗菌性熱収縮ポリエステルフィルム。
【0017】
(2)スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルドデシルホスホニウム塩のいずれかであるジカルボン酸成分、およびポリエーテル鎖を有する親水性物質を重合成分として含有する共重合ポリエステル樹脂を含有する抗菌層を1層以上、および熱収縮性ポリエステル樹脂層を1層以上積層してなり、かつ少なくとも一方の最外層が抗菌層である、(1)に記載の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルム。
【0018】
(3)抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを構成する層のうち、最大の厚みを有する層が、グリコール成分の1つにネオペンチルグリコールを用いてなるポリエステル樹脂を含有する層である、(2)に記載の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルム。
【0019】
(4)(1)〜(3)のいずれか1に記載の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを含有してなる熱収縮包装材または結束材。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムは、無機系抗菌剤および有機系抗菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の抗菌剤と親水性物質とを含有する抗菌層を有してなるか、あるいは抗菌層のみからなる。
【0026】
本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムのポリエステル樹脂は、抗菌層および/または熱収縮性ポリエステル樹脂層に存在する。即ち、抗菌層にポリエステル樹脂が存在する場合は、それ自体で本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムとなり得るが、他の熱収縮性ポリエステル樹脂層との積層によっても良い。一方、抗菌層にポリエステル樹脂が実質的に存在しない場合は、他の熱収縮性ポリエステル樹脂層との積層によって本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムとなる。
【0027】
ここで、抗菌層にポリエステル樹脂を存在させる方法としては、抗菌剤および親水性物質以外の抗菌層を構成する成分としてポリエステル樹脂を混合する方法、抗菌性成分をポリエステル樹脂の重合成分とした共重合体を抗菌剤として用いる方法、親水性物質をポリエステル樹脂の重合成分とする方法、抗菌性成分および親水性物質をポリエステル樹脂の重合成分とする方法が挙げられる。
【0028】
本発明で使用される、抗菌層に混合されるポリエステル樹脂について、重合に使用される酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等が挙げられ、重合に使用されるジオール成分としてはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAまたはビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。当該樹脂をコーティングにより使用する場合には、基材との接着性を上げるために適当量のペンダントカルボキシル基、ペンダントスルホン酸基、ペンダントスルホン酸ナトリウム基を形成できる重合成分を使用する。
【0029】
抗菌成分を重合成分としたポリエステル樹脂、親水性物質を重合成分としたポリエステル樹脂、抗菌性成分および親水性物質をポリエステル樹脂の重合成分としたポリエステル樹脂は、上記のポリエステル樹脂のジカルボン酸成分および/またはグリコール成分の少なくとも一部として、それぞれ後述する抗菌成分、親水性物質を用いることにより得られる。
【0030】
本発明に用いられる抗菌層には、無機系抗菌剤および有機系抗菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の抗菌剤と親水性物質とが含有される。
【0031】
当該無機系抗菌剤とは、金属または金属イオンを含み、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の細菌に対する抗菌活性を示す無機化合物の総称で、その形態は気体、液体、固体を問わない。当該金属としては、例えば銀、亜鉛、銅、チタン、モリブデン等が挙げられる。無機系抗菌剤として具体的には、銀、亜鉛、銅等の金属微粒子または金属イオンを、シリカ等の金属酸化物、ゼオライト、合成ゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、セラミック、溶解性ガラス粉、アルミナシリコン、チタンゼオライト、アパタイト、炭酸カルシウム等の無機質に担持させた微粒子;酸化亜鉛、酸化チタン、酸化モリブデン等の光酸化触媒能を有する金属酸化物のゾル−ゲル体薄膜またはそれらの微粒子;当該ゾル−ゲル体薄膜や微粒子を、無機あるいは有機化合物試薬で表面処理したもの、ゾル−ゲル法等により無機化合物粒子の表面を他の無機酸化物、複合酸化物等により積層、被覆、包接・包埋した複合粒子が挙げられる。また金属ゾル−ゲル体形成時にその原料となる金属アルコラート体中に上記の無機系抗菌剤を添加させ複合系として利用することも可能である。さらに光触媒能を有するものを用い、任意の工程で近紫外光を当てることにより、更に強力な抗菌性を発揮することができる。
【0032】
このような無機系の抗菌剤の具体例として、ノバロン(東亞合成(株)製)、バクテキラー(カネボウ化成(株)製)、抗菌性真球状セラミックス微粒子S1、S2、S5((株)アドマテックス製)、ホロンキラー((株)日鉱製)、ゼオミック(品川燃料(株))、アメニトップ(松下電器産業(株))、イオンピュア(石塚硝子(株))等の銀系抗菌剤、Z−Nouve(三井金属鉱業(株))等の亜鉛系抗菌剤、P−25(日本アエロジル(株))、ST−135(石原産業(株)製)等の二酸化チタン微粒子およびゾル−ゲル体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、複合粒子の例として、二酸化チタンをシリカで被覆した微粒子、GYT(五洋紙工(株)製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0033】
上述の無機系抗菌剤は、抗菌層中、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.3〜5重量%含有される。この含有量が0.1重量%未満の場合、抗菌層の抗菌活性が不充分となるおそれがあり、逆に10重量%を超える場合、抗菌層の機械的性質および耐熱性、耐候性が低下するおそれがある。
【0034】
本発明に用いられる有機系抗菌剤とは、抗菌性能を有する、天然抽出物、低分子有機化合物、高分子化合物の総称で、窒素、硫黄、リン等の元素を含むのが一般的である。
【0035】
天然の有機系抗菌剤としては、例えばキチン、キトサン、ワサビ抽出物、カラシ抽出物、ヒノキチオール、茶抽出物等が挙げられる。
【0036】
低分子の有機系抗菌剤としては、例えばイソチオシアン酸アリル、ポリオキシアルキレントリアルキルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ヘキサメチレンビグアニド塩酸塩、有機シリコン第4級アンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、フェニルアミド系化合物、ビグアニド系化合物、スルホイソフタル酸テトラアルキルホスホニウム塩またはそのジエステル他が挙げられる。
【0037】
上述の天然または低分子の有機抗菌剤は、抗菌層中、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.3〜5重量%含有される。この含有量が0.1重量%未満の場合、抗菌層の抗菌活性が不充分となるおそれがあり、逆に10重量%を超える場合、抗菌層の機械的性質および耐熱性、耐候性が低下するおそれがある。
【0038】
高分子の有機系抗菌剤としては、例えばアンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、スルホニウム塩基等のオニウム塩、フェニルアミド基、ビグアニド基等の抗菌活性基を主鎖または側鎖に有する高分子化合物が挙げられる。中でも、親水性物質による抗菌性の向上の観点から、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、スルホニウム塩基を有する高分子抗菌剤が好ましく、特にホスホニウム塩基を有する高分子抗菌剤が好ましい。以下にその例を示すが、これらに限定されるものではない。
A)下記一般式で示されるホスホニウム塩系ビニル重合体
【0039】
【化1】
【0040】
(式中、R1 、R2 およびR3 は同一または異なって、炭素原子数1〜18個の直鎖または分岐状アルキル基;アリール基;アラルキル基;またはヒドロキシル基若しくはアルコキシル基で置換されたアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基を示し、X- はアニオンを示し、nは2以上の整数を示す)
【0041】
上記R1 、R2 、R3 の具体例としては、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシル等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル等が挙げられる。ヒドロキシル基で置換されたアルキル基としては、例えば、2−ヒドロキシエチルが挙げられ、ヒドロキシル基で置換されたアリール基としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルが挙げられ、ヒドロキシル基で置換されたアラルキル基としては、例えば、p−ヒドロキシベンジルが挙げられ、アルコキシル基で置換されたアルキル基としては、例えば、2−ブトキシエチルが挙げられ、アルコキシル基で置換されたアリール基としては、例えば、p−ブトキシフェニルが挙げられ、アルコキシル基で置換されたアラルキル基としては、例えば、p−ブトキシベンジルが挙げられる。中でも、アルキル基、アリール基が好ましい。
【0042】
上記X- はアニオンであり、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素等のハロゲンイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン等が挙げられ、中でもハロゲンイオンが好ましい。nの上限は特に限定しないが、好ましくは2〜500、より好ましくは10〜300である。
【0043】
b)ホスホニウム塩基を有する共重合ポリエステル
抗菌成分であるスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸のホスホニウム塩を、ジカルボン酸成分として含有してなる共重合ポリエステルである。
【0044】
スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸のホスホニウム塩としては、例えば、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルオクタデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルドデシルホスホニウム塩、スルホテレフタル酸トリ−n−ブチルデシルホスホニウム塩、スルホテレフタル酸トリ−n−ブチルオクタデシルホスホニウム塩、スルホテレフタル酸トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウム塩、スルホテレフタル酸トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウム塩、スルホテレフタル酸トリ−n−ブチルドデシルホスホニウム塩、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸トリ−n−ブチルデシルホスホニウム塩、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸トリ−n−ブチルオクタデシルホスホニウム塩、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウム塩、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウム塩、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸トリ−n−ブチルドデシルホスホニウム塩等が挙げられる。中でも、抗菌活性がより優れている点で、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルドデシルホスホニウム塩が特に好ましい。
【0045】
これらのスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸のホスホニウム塩の重合量は、共重合ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分中、好ましくは1〜50mol%である。この重合量が1mol%未満の場合、得られる共重合ポリエステルの抗菌活性が低下し易い傾向があり、逆に50mol%を超えると、得られる共重合ポリエステルのガラス転移点が低下して、耐熱性および強度が不充分となる傾向がある。
【0046】
上記のスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸ホスホニウム塩は、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸またはそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等に、トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイド、トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウムブロマイド、トリ−n−ブチルドデシルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩を反応させることにより得られる。このときの反応溶媒は特に限定しないが、水が最も好ましい。
【0047】
他のジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、複素環式ジカルボン酸等が挙げられる。具体的には、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジカルボキシフェニル、4,4−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタンおよびそれらの誘導体等が挙げられ、脂環式ジカルボン酸としては、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸およびその誘導体等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコ酸、ダイマー酸およびそれらの誘導体等が挙げられ、複素環式ジカルボン酸としては、ピリジンジカルボン酸およびその誘導体等が挙げられる。このようなジカルボン酸成分以外にp−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸類、トリメリット酸、ピロメリット酸およびその誘導体等の多官能酸を使用することも可能である。
【0048】
グリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。このほか少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有する化合物を含んでいてもよい。
【0049】
上記の共重合ポリエステルの製造法は特に限定しないが、ジカルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル体とグリコールとをエステル交換反応させたのち重縮合する、いわゆるエステル交換法等があげられ、任意の製造法を適用することができる。また、重合時に酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、チタン化合物等の重合触媒を用いてもよい。
【0050】
上記の共重合ポリエステルの製造は上記の方法に限定されるものではなく、他の合成方法としては、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸をジカルボン酸成分としてポリエステルを製造した後、これに、トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイド、トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウムブロマイド、トリ−n−ブチルドデシルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム化合物を反応させる方法も挙げられる。
【0051】
上記共重合ポリエステルの極限粘度は、好ましくは0.5〜1.0、より好ましくは0.6〜0.8である。極限粘度が0.5以下では本発明の抗菌層の力学的強度が不十分になり易い傾向がある。
【0052】
本発明において極限粘度は、ウベローデ粘度管を用い、フェノール/テトラクロロエタン=6/4の混合溶媒を使用し、30℃で測定される。また、この極限粘度は重合条件により調整することができる。
【0053】
上記共重合ポリエステルは、抗菌層にさらに含有され得る前記のポリエステル樹脂を兼ねることもある。この場合、後述する親水性物質は当該共重合ポリエステルに混合されるか、あるいは当該共重合ポリエステルの重合成分の1つとして含まれる。
【0054】
上記の共重合ポリエステルには、着色防止、ゲル発生防止等の耐熱性の改善の目的で、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のMg塩、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等のCa塩、酢酸マンガン、塩化マンガン等のMn塩、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等のZn塩、塩化コバルト、酢酸コバルト等のCo塩を各々金属イオンとして300ppm以下、リン酸またはリン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル等のリン酸エステル誘導体をPとして200ppm以下添加することも可能である。上記の範囲を超えて添加すると、かえって共重合ポリエステルの着色が顕著になるのみならず、共重合ポリエステルの耐熱性および耐加水分解性も著しく低下する。
【0055】
従って、着色防止、耐熱性、耐加水分解性等の低下を防止する点で、以下の式で表される総P量と総金属イオン量(Mg、Ca、Mn、ZnおよびCo)とのモル比が0.4〜1.0となるように添加することが好ましい。
添加物のモル比=総P量(モル原子)/総金属イオン量(モル原子)
上記のモル比が上記範囲外の場合には、共重合ポリエステルの着色が顕著になり、またその耐熱性および耐加水分解性も著しく低下し、さらに粗大粒子発生が顕著となり易い傾向がある。
【0056】
上記金属イオンおよびリン酸の添加時期は特に限定しないが、一般的には金属イオン類は原料仕込み時、すなわちエステル交換前またはエステル化前に、リン酸類の添加は重縮合反応前に添加するのが好ましい。
【0057】
上述の高分子抗菌剤は、抗菌層中、好ましくは1〜100重量%、より好ましくは10〜100重量%含有される。この含有量が1重量%未満の場合、抗菌層の抗菌活性が不充分となるおそれがある。この高分子抗菌剤の含有量の範囲は、後述するような親水性物質が高分子抗菌剤の重合成分として含有されている場合や、高分子抗菌剤が上述の共重合ポリエステルであって、これが抗菌層にさらに含有され得る前記のポリエステル樹脂を兼ねている場合も含まれている。
【0058】
抗菌層には抗菌剤以外に親水性物質が含有される。本発明で使用される親水性物質とは、当該物質をポリエチレンテレフタレートに混合あるいは1重合成分として共重合した場合に、もとのポリエチレンテレフタレートよりも親水性が高くなるような物質をいい、実質的には、このような範囲の親水性物質の中で、当該物質を含有させることにより、含有しない場合よりも抗菌層の親水性が高められるような物質を、適宜選択して使用する。
【0059】
具体的には、例えば水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基またはそのアルカリ金属塩、スルホン酸基またはそのアルカリ金属塩、第4級アンモニウム塩基、アミン塩基の少なくとも1種の基を有する化合物、あるいはポリエーテル鎖、ポリアミン鎖の少なくとも1種を有する化合物であり、前述のポリエステル樹脂、抗菌剤に用いられるものを除く。ここで、ポリエーテル鎖とはエーテル結合を主鎖に2個以上を含む鎖をいい、例えば、ポリオキシメチレン鎖、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖が代表的に挙げられる。ポリアミン鎖とは、主鎖の中に塩基性の2個以上の窒素原子を含む鎖であり、代表的なものにポリエチレンイミン鎖、ポリアルキレンポリアミン鎖(例えば、ポリエチレンポリアミン鎖)がある。
【0060】
具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N−ジメチルアミノメチルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、アクリル酸のホモポリマーまたは共重合体、メタクリル酸のホモポリマーまたは共重合体、無水マレイン酸のホモポリマーまたは共重合体(例えば、無水マレイン酸・スチレン共重合体)、ビニルスルホン酸のホモポリマーまたはその共重合体またはそれらのアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸のホモポリマーまたはその共重合体またはそれらのアルカリ金属塩、ポリスチレンの第4級アンモニウム塩誘導体、ポリビニルイミダゾリン塩、ポリアリルアミン塩、あるいはポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール(別名 ポリエチレンオキサイド)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)、グリセリン、ポリグリセリン等のポリオールまたはその重合体、さらには、ジカルボン酸成分としてスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を全ジカルボン酸成分中1〜10mol%共重合したポリエステル等が挙げられる。また、上記のポリアルキレングリコール、ポリグリセリンの末端がアルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、アミン類等で封鎖されたポリエーテル誘導体でもよく、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリグリセリンアルキレンオキサイド付加物、その脂肪酸エステルまたは脂肪族アルコールエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪族アルコールエーテル、ポリグリセリングリシジルエーテル、その反応物等の誘導体が挙げられる。
【0061】
上記の親水性物質の中でも、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリグリセリンおよびそれらの誘導体が、抗菌性の向上の点や、ポリエステル樹脂等の抗菌層に配合される樹脂への相溶性の点で好ましい。
【0062】
該親水性物質の分子量は特に限定しないが、例えばポリエチレングリコールの場合は、数平均分子量で200〜30000が好ましく、より好ましくは1000〜25000の範囲である。また、ポリグリセリンの場合は、数平均分子量で100〜2000が好ましく、より好ましくは200〜1000の範囲であり、ポリビニルアルコールの場合は、数平均分子量で300〜3000が好ましく、より好ましくは500〜2000の範囲である。
【0063】
上記親水性物質は、混合および/または共重合により抗菌層中に含有される。▲1▼混合の場合、親水性物質は、例えば他の抗菌層構成成分との混合によって抗菌層中に含有される。▲2▼共重合の場合、親水性物質は、a)前記高分子抗菌剤の重合成分の1つとして、b)抗菌層にさらに含有され得る前記ポリエステル樹脂の重合成分の1つとして、さらにはc)前記高分子抗菌剤が前述の共重合ポリエステルであって、これが抗菌層にさらに含有され得る前記ポリエステル樹脂を兼ねている場合に、当該共重合ポリエステルの重合成分の1つとして、それぞれ抗菌層に含有される。また、該親水性物質は、抗菌剤とイオン結合等の結合がなされていてもよい。
【0064】
▲1▼の方法において、当該親水性物質の含有量は特に限定されないが、例えば、ポリアルキレングリコールを混合により含有させる場合、抗菌層を構成する組成物全体に対して0.1〜20重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%の範囲である。0.1重量%未満の場合、抗菌活性増大効果が不十分となるおそれがあり、一方20重量%を超えると、抗菌層の機械的特性および耐熱性・耐候性が低下するおそれがある。
【0065】
この親水性物質を混合により抗菌層中に含有させる方法は、無機系および/または有機系抗菌剤と親水性物質を押し出し機等を用いて加熱溶融混合する方法、無機系および/または有機系抗菌剤と親水性物質を適当な溶媒中、例えば水、水/アルコール混合溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等の有機溶媒等に混合溶解または分散した後、該溶媒を乾固する方法等があるが何れであってもよい。
【0066】
▲2▼の方法において、a)前記高分子抗菌剤の重合成分の1つとする場合、当該高分子抗菌剤としては、上述したような、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、スルホニウム塩基等のオニウム塩、フェニルアミド基、ビグアニド基等の抗菌活性基を主鎖または側鎖に結合した高分子化合物であり、親水性物質による抗菌性の向上の観点から、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、スルホニウム塩基を有する高分子抗菌剤が好ましく、特にホスホニウム塩基を有する高分子抗菌剤が最も好ましい。具体的には、ホスホニウム塩系ビニル重合体や、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸のホスホニウム塩をジカルボン酸成分とした共重合ポリエステルが挙げられる。
【0067】
親水性物質は、これらの重合体の重合成分の一部に使用される。例えば、共重合ポリエステルの場合は、グリコール成分、ジカルボン酸成分のうちの少なくとも一方の少なくとも一部に、当該親水性物質が使用される。この場合、親水性物質としては、当該物質を共重合ポリエステルの重合成分として含有させることにより、含有しない場合よりも抗菌層の親水性が高められるような物質が選択される。
【0068】
この場合の親水性物質の具体例としては、例えば、ポリアルキレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン等のポリオール、スルホイソフタル酸またはそのアルカリ塩またはアンモニウム塩、ビニルピロリドン、アクリル酸またはそのアルカリ塩またはアンモニウム塩、スチレンスルホン酸またはそのアルカリ塩またはアンモニウム塩等のような共重合可能な親水性物質が挙げられる。
【0069】
このような、親水性物質を高分子抗菌剤の重合成分とした抗菌剤は、親水性物質の系外へのブリードアウト防止、即ち高抗菌活性を長期に維持できるので特に好ましい。
【0070】
上記の場合の親水性物質の含有量は種類により異なるが、例えばポリアルキレングリコールの場合、高分子抗菌剤中、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%の範囲である。0.1重量%未満の場合、抗菌活性増大効果が不十分となるおそれがあり、一方20重量%を超えると、抗菌層の機械的特性および耐熱性・耐候性が低下するおそれがある。
【0071】
この親水性物質の配合は、高分子抗菌剤の製造時、重合反応前、重合反応の途中もしくは終了後のいずれであってもよい。
【0072】
さらに、▲2▼の場合において、親水性物質は、b)前述したような抗菌層にさらに含有され得るポリエステル樹脂の1重合成分としてもよい。この場合においても、親水性物質として、当該物質をポリエステル樹脂の重合成分として含有させることにより、含有しない場合よりも抗菌層の親水性が高められるような物質が選択される。
【0073】
この場合の親水性物質の具体例としては、例えば、a)の場合と同様のものが挙げられるが、ポリアルキレングリコール、ポリグリセリン、グリセリンが特に好ましい。
【0074】
上記の場合の親水性物質の含有量は種類により異なるが、例えばポリアルキレングリコールの場合、ポリエステル樹脂のグリコール成分中、好ましくは0.1〜10モル%、より好ましくは0.1〜5.0モル%、特に好ましくは0.1〜2.0モル%の範囲である。0.1モル%未満の場合、親水性が不十分となるおそれがあり、逆に10モル%を超えると、得られるポリエステル樹脂の機械的特性および耐熱性・耐候性が低下するおそれがある。
【0075】
この親水性物質の配合は、ポリエステル樹脂の製造時、重合反応前、重合反応の途中もしくは終了後のいずれであってもよい。
【0076】
さらに、c)前記高分子抗菌剤が前述の共重合ポリエステルであって、これが前述したような抗菌層にさらに含有され得る前記ポリエステル樹脂を兼ねている場合に、当該共重合ポリエステルの重合成分の1つとしてもよい。この場合においても、親水性物質としては、当該物質をポリエステル樹脂の重合成分として含有させることにより、含有しない場合よりも抗菌層の親水性が高められるような物質が選択される。
【0077】
この場合の親水性物質の具体例としては、例えば、a)の場合と同様のものが挙げられる。
【0078】
上記の場合の親水性物質の含有量は種類により異なるが、例えばポリアルキレングリコールの場合、ポリエステル樹脂のグリコール成分中、好ましくは0.1〜10モル%、より好ましくは0.1〜5.0モル%、特に好ましくは0.1〜2.0モル%の範囲である。0.1モル%未満の場合、親水性が不十分となるおそれがあり、逆に10モル%を超えると、得られるポリエステル樹脂の機械的特性および耐熱性・耐候性が低下するおそれがある。
【0079】
この親水性物質の配合は、a)、b)の場合と同様にポリエステル樹脂の製造時、重合反応前、重合反応の途中もしくは終了後のいずれであってもよい。
【0080】
また、滑り性、耐磨耗性、耐ブロッキング性、隠蔽性等の物理的特性の向上を目的として、抗菌層は、炭酸カルシウム(CaCO3 )、リン酸カルシウム、アパタイト、硫酸バリウム(BaSO4 )、フッ化カルシウム(CaF2 )、タルク、カオリン、酸化珪素(SiO2 )、アルミナ(Al2 O3 )、二酸化チタン、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化鉄(Fe2 O3 )、アルミナ/シリカ複合酸化物等の無機粒子;ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、それらの共重合体、あるいはそれらの架橋体等の有機粒子等を含有してもよい。
【0081】
炭酸カルシウムとしては、その結晶構造により三方または六方晶系に分類されるカルサイト、斜方晶系に分類されるアラゴナイト、六方または擬六方晶系に分類されるバテライトの3つの結晶型に分類されるがいかなる結晶型でもよく、その形状も、連球状、立方体状、紡錘状、柱状、針状、球形、卵形等任意に選択できる。カオリンとしては、天然カオリン、合成カオリン、焼性、未焼性を問わずいかなるタイプでもよく、またその形状も、板状、柱状、球形、紡錘状、卵形等任意に選択できる。アルミナとしては、ジブサイト、バイヤライト、ノルトストランダイト、ベーマイト、ダイアスボア、トーダイト等の結晶性アルミナ水和物;無定型ゲル、ベーマイトゲル、バイヤライトゲル等の非晶性アルミナ水和物;およびρ,η,γ,χ,κ,δ,θ型等の中間活性アルミナまたはα型アルミナが挙げられる。
【0082】
上記粒子の平均粒径は目的に応じて適宜選択されるので、特に限定しないが、平均一次粒子径が好ましくは0.01〜5μmであり、その添加量は好ましくは抗菌層中5重量%以下である。粒子の添加量が5重量%を超えると、組成物中での上記粒子の粗大粒子が顕著になり、抗菌層表面に粗大突起が目立ち、粒子の脱落が起こりやすくなり、当該抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムの品質の低下を招くおそれがある。
【0083】
上記粒子の配合方法は特に限定しないが、有機系抗菌剤を所定の溶媒に分散あるいは溶解させ、その系に上記粒子を分散させる方法、また高分子抗菌剤の合成重合反応系中に該粒子を添加し分散させる方法と、特に高分子抗菌剤が熱可塑性ポリマーの場合にはそのポリマー中に該粒子を添加し溶融混練する方法、親水性物質がポリマーである場合には、その重合反応中に添加する方法等もある。
【0084】
高分子抗菌剤が共重合ポリエステルの場合には、粒子は、通常、エチレングリコール等のグリコール成分に加えて、スラリーとしてポリエステルの重合反応系中ヘ添加される。その添加時期は、使用する微粒子の種類、粒子径、塩素イオン濃度、さらにスラリー濃度、スラリーの温度等に依存するが、通常、ポリエステル重合反応開始前またはオリゴマー生成段階が好ましい。スラリーの反応系への添加時、スラリーをエチレングリコールの沸点まで加熱することが、粒子の分散性向上の点で好ましい。また予め微粒子を添加した所定の熱可塑性樹脂を無機系および/または有機系抗菌剤と混合することも可能である。
【0085】
無機系抗菌剤および有機系抗菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の抗菌剤と上記親水性物質とを含有することによって抗菌層が構成されるが、必要に応じて抗菌剤および親水性物質以外の抗菌層を構成する成分として前記のようなポリエステル樹脂を配合しても良い。前述したように、親水性物質を当該ポリエステル樹脂の重合成分の1つとして含ませることも可能である。
【0086】
抗菌層は、さらに適当な熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含有してもよい。このような樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のビニルポリマー;ポリ塩化ビニリデン等のビニリデンポリマー;6−ナイロン、6,6−ナイロン、11ナイロン、12ナイロン等のポリアミド;脂肪族ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル(但し、親水性のポリエステルを除く)や、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキド樹脂、アクリルシリコン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0087】
また、抗菌層は、さらに、水不溶性アルカリシリケート、オルガノアルコキシシラン、テトラシランジルコニウムアルコキシド等の無機化合物、またアルカリシリケートアルカリエマルジョン、オルガノアルコキシシランメラミン樹脂、テトラシランジルコニウムアルコキシドポリウレタン樹脂等のハイブリッド系を含有してもよい。また、抗菌層にさらに架橋性物質を含有させて3次元架橋構造をもたせ、表面強度を向上させることも可能である。
【0088】
無機系抗菌剤および有機系抗菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の抗菌剤と上記親水性物質とを含有し、必要に応じて他の構成成分を含有する、本発明に用いられる抗菌層は、自体既知の方法により製造される。
【0089】
本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムが上記抗菌層一層のみからなる場合は、例えば抗菌剤、親水性物質、ポリエステル樹脂からなる組成物を溶融または溶液押出しし、その後一軸または二軸延伸することにより製造される。この場合、熱収縮性能向上の点から、ポリエステル樹脂のグリコール成分の一部としてネオペンチルグリコールを用いることが好ましい。
【0090】
また、本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムが上記抗菌層を1層以上、およびポリエステル樹脂を含有する熱収縮性ポリエステル樹脂層を1層以上積層してなる場合は、例えば、共押出法により抗菌層と熱収縮性ポリエステル樹脂層を溶融押出しし、その後一軸または二軸延伸することにより製造される。この場合、抗菌発現の観点から、少なくとも一方の最外層を抗菌層とする必要がある。
【0091】
当該熱収縮性ポリエステル樹脂層を構成するポリエステル樹脂としては、前述のようなポリエステル樹脂が挙げられる。
【0092】
このように本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムが積層体である場合、熱収縮性能向上の点から、当該フィルムを構成する層のうち、最大の厚みを有する層が、グリコール成分の1つにネオペンチルグリコールを用いてなるポリエステル樹脂であることが好ましい。ネオペンチルグリコールの配合量は、グリコール成分中6〜20重量%が好ましく、より好ましくは7〜15重量%の範囲である。本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムが抗菌層一層のみからなる場合は、当該抗菌層に含有されるポリエステル樹脂のグリコール成分の一部としてネオペンチルグリコールが用いられる。
【0093】
また、熱収縮特性を良好とするため、従来からある熱収縮フィルム(例えば、既成の熱収縮ポリエステルフィルム、熱収縮ナイロンフィルム、熱収縮ポリオレフィンフィルム、熱収縮ポリスチレンフィルム、熱収縮エバールフィルム、熱収縮ポリ塩化ビニルフィルム等表面に上記抗菌層をコーティングにより設けたり、このような熱収縮フィルムの製造工程中で、インラインコート法、共押出法等の方法により抗菌層を積層することが好ましい。また、本発明の抗菌組成物を印刷インキに配合し、収縮フィルムに適用しても良い。
【0094】
かくして得られた本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムは、後述する熱収縮性テストにおいて、30%以上の熱収縮率を有する。当該熱収縮率が30%未満であると、熱収縮率が小さすぎて一般的な収縮フィルム用途に不適当である。好ましくは30〜75%、より好ましくは40〜75%の範囲である。
【0095】
本発明において熱収縮率とは、一定温度の熱風中に一定時間放置した後の主収縮方向における、もとの長さに対する収縮量の百分率をいう。当該熱収縮率は、樹脂組成、延伸条件(例えば延伸倍率を2〜6倍、延伸温度を60〜150℃、熱固定条件20〜150℃、リラックス率を0〜20%とする等)を適宜選択することにより調整することができる。
【0096】
当該熱収縮率を有するポリエステルフィルムは、ロール延伸装置、ブロー延伸装置、ステンター型延伸装置等を用いた一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸において一般のフィルム製造条件よりも熱固定条件を緩めることにより製造される。
【0097】
本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムの厚みは、抗菌層一層からなる場合は、5〜200μmが好ましく、より好ましくは10〜100μmである。また、当該抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムが積層体である場合は、各抗菌層の厚みは0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜5μmであり、各熱収縮性ポリエステル樹脂層の厚みは5〜200μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜100μmである。その他の層が積層される場合は、該層の厚みは0.01〜100μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.02〜10μmである。
【0098】
本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムは、優れた抗菌活性を有するものであり、後述する抗菌性テストにおいて、24時間経過後、1×104 以下、好ましくは5×103 以下の菌数に抑えるという性能を有するものである。
【0099】
本発明の熱収縮包装材または結束材は、上記抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを有してなる。包装材または結束材として使用するために、本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムには、表面または裏面に意匠用または表示用の印刷のための印刷層を有してもよい。また抗菌層が印刷層を兼ねてもよい。包装材または結束材として物品に装着するために、熱収縮接着、超音波シール、カッティング、溶断シール等の工程を経ることで製袋、チュービング加工等が行われる。
【0100】
このようにして得られた包装材または結束材は、食品、工業製品等の包装、医薬品、薬剤、医療器具、医療廃棄物等の包装または結束等に好適に使用される。その他、その収縮性を利用して、住宅、病院、その他の施設の建材の表装等にも使用可能である。
【0101】
【実施例】
次に実施例および比較例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。
以下に各物性の測定方法を示す。
【0102】
〔抗菌性テスト〕
1/50ブロースで希釈した S. aureus(黄色ブドウ球菌)の菌液0.1mlを、予め高圧蒸気殺菌した5cm×6cmの大きさの被験フィルム上に滴下し、そのフィルム上に高圧蒸気滅菌したサランラップ(登録商標、旭化成工業製)フィルムを密着させた。その試験片を滅菌シャーレに移し、37℃で、24時間培養した。その後、被験フィルム上の菌のSCDLP培地10mlで洗い出し、10倍希釈し、普通寒天平板にまいた。24時間後の菌数を計測した。
【0103】
〔熱収縮性テスト〕
熱収縮フィルムの収縮する方向を長辺として、1cm×10cmの短冊型のサンプルを切り出した。これを100℃の熱風オーブン中で10秒間加熱した後、オーブンより取り出し、長辺の長さをキャリパーにて測定した。その時の長さをL(cm)とし、熱収縮率を次式より算出した。
熱収縮率(%)=(10(cm)−L(cm))/10(cm)×100
【0104】
〔極限粘度〕
ウベローデ粘度管を用い、フェノール/テトラクロロエタン=6/4の混合溶媒を使用し、30℃で測定する。
【0105】
実施例1
テレフタル酸ジメチルエステル9モル、5−スルホイソフタル酸ジメチルエステルのトリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウム塩1モル、エチレングリコール22モル、共重合ポリエステル理論生成量に対して酢酸亜鉛を亜鉛(Zn)として200ppm加え、140℃から220℃まで昇温して生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応を行った。
エステル交換反応終了後、250℃にて、分子量10000(ナカライ(株))のポリエチレングリコールを0.12モル、さらに生成共重合ポリエステル理論量に対して酸化アンチモンをアンチモン(Sb)として250ppmおよびトリメチルホスフェートをP量として80ppm加え〔P量/Zn+Sb量(モル比):0.505〕、15分攪拌し、続いて平均粒径0.9μmの球状シリカを2000ppm添加した。260℃、真空下で60分間重縮合反応を行い、極限粘度η=0.50の共重合ポリエステル樹脂を得た。
上記ポリマーを2軸押し出し機を用いて250℃で溶融押し出しし、30℃の冷却ロールで冷却して、厚さ約180μmの未延伸フィルムを得た。
この未延伸フィルムを、テンターにより110℃で予熱し、70℃で横方向に4.5倍延伸した後、80℃で熱固定し、厚さ40.0μmの本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表1に示した。
【0106】
実施例2〜8
実施例1において、ポリエチレングリコールの種類および量を表1に示すようにした以外は実施例1と同様にして本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表1に示した。
【0107】
実施例9〜10
実施例1において、ホスホニウム塩の種類および量、並びにポリエチレングリコールの種類および量を表1に示すようにした以外は実施例1と同様にして本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表1に示した。
【0108】
比較例1〜3
実施例1、9、10において、ポリエチレングリコール無添加の条件以外は実施例1、9、10と全く同様にして、それぞれ比較例1、2、3のポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表1に示した。
【0109】
【表1】
【0110】
実施例11
(A)ポリエステル樹脂層の調製
平均粒径0.5μmの炭酸カルシウム微粒子が4000ppmの濃度で分散され、ネオペンチルグリコールを全グリコール成分に対して20モル%共重合したコポリエチレンテレフタレートを290℃で溶融押し出しし、30℃の冷却ロールで冷却して、厚さ約180μmの未延伸フィルムを得た。
(B)抗菌層溶液の調製
実施例1において、テレフタル酸ジメチルエステル9モルの代わりにテレフタル酸ジメチルエステル5モルおよびイソフタル酸ジメチルエステル4モルの混合物を用い、さらに分子量が1000のポリエチレングリコールを1.2モル用いたこと以外は実施例1と同様にして抗菌層組成物を得た。該抗菌層組成物を市販特級試薬メチルエチルケトンに溶解し3重量%の抗菌層溶液とした。
(C)積層ポリエステルフィルムの調製
上記(B)で得た抗菌層溶液を孔径1.0μmのフィルターに通した後、上記(A)で得た基材フィルムの表面にバーコーター法によって塗布し、70℃で熱風乾燥した。次いでテンターにより100℃で予熱し、70℃で横方向に4.5倍延伸した後、80℃で熱固定し、厚さ40.0μmの積層構造を有する本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを得た。該フィルムにおける最終的な被覆剤(抗菌層組成物)の付着量は約0.2g/m2 であった。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表2に示した。
【0111】
比較例5
実施例11において、得られた抗菌層溶液を75μm厚の2軸延伸透明PETフィルム(E5100、非収縮性、東洋紡績(株)製)に固形分厚0.3μmになるように塗布した以外は実施例11と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表2に示した。
【0112】
実施例12
実施例11において、得られた抗菌層溶液を75μm厚の白色PET合成紙クリスパー(東洋紡績(株)製,熱収縮タイプ)面上に固形分厚0.3μmになるように塗布した以外は実施例11と同様にして、本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表2に示した。
【0113】
実施例13〜15
実施例11において、ホスホニウム塩の種類、並びにポリエチレングリコールの種類および量を表2に示すようにした以外は実施例11と同様にして本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表2に示した。
【0114】
比較例4、6、7
実施例11において、ポリエチレングリコールを無添加とした以外は実施例11と全く同様にして共重合体の合成を行い、実施例11、比較例5、実施例12と同様のポリエステル樹脂層にそれぞれコートし、比較例4、6、7のポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表2に示した。
【0115】
【表2】
【0116】
参考例1
平均粒径0.5μmの炭酸カルシウム微粒子が4000ppmの濃度で分散されたテレフタル酸//エチレングリコール/ポリエチレングリコール(分子量1000)(100//95/5モル比)共重合体100重量部に、1重量部の銀/リン酸ジルコニウム系抗菌フィラー(ノバロン,東亞合成(株)製)を添加混合した後、280℃で溶融押し出しし、30℃の冷却ロールで冷却して、厚さ約180μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、テンターにより110℃で予熱し、70℃で横方向に4.5倍延伸した後、80℃で熱固定し、厚さ40.0μmの本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表3に示した。
【0117】
参考例2〜3
参考例1において、銀/リン酸ジルコニウム系抗菌フィラー(ノバロン,東亞合成(株)製)の代わりに表3に示した無機抗菌剤を所定量用いた以外は参考例1と同様にして本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表3に示した。なお、P−25含有系の抗菌性評価はブラックライトを40cmの距離で照らしながら行った。
【0118】
参考比較例1〜3
参考例1において、テレフタル酸//エチレングリコール/ポリエチレングリコール共重合体の代わりにポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた以外は参考例1、2、3と全く同様にして、それぞれ参考比較例1、2、3のポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表3に示した。
【0119】
【表3】
【0120】
参考例4
(A)スルホン酸基含有ポリエステルおよびその水分散液の調製
まずスルホン酸基含有ポリエステルを次の方法により調製した。ジカルボン酸成分としてジメチルイソフタレート95モル%および5−スルホイソフタル酸ナトリウム5モル%を使用し、グリコール成分としてジエチレングリコール100モル%を用いて、常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行った。得られたスルホン酸基含有ポリエステル(PES−SO3 Na)のガラス転移温度は69℃であった。
このスルホン酸基含有ポリエステル300部とn−ブチルセロソルブ150部とを加熱攪拌して粘稠な溶液とし、更に攪拌しつつ水550部を徐々に加えて、固形分30重量%の均一な淡白色の水分散液を得た。この分散液をさらに水とイソプロパノールの等量混合液中に加え、固形分が5重量%のスルホン酸基含有ポリエステル水分散液を調製した。
(B)抗菌層溶液の調製
銀/リン酸ジルコニウム系抗菌フィラー(ノバロン,東亞合成(株)製)1.0重量部を上記(A)スルホン酸基含有ポリエステル水分散液100重量部に添加混合、微分散させ、抗菌層溶液とした。
(C)フィルムの調製
上記で得られた抗菌層溶液を使用すること以外は実施例11と同様にして本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを得た。該フィルムの最終的な被覆剤(抗菌層組成物)の付着量は約0.5g/m2 であった。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表4に示した。
【0121】
参考例5〜6
参考例4において、銀/リン酸ジルコニウム系抗菌フィラー(ノバロン,東亞合成(株)製)の代わりに表4に示した無機抗菌剤を所定量用いた以外は参考例4と同様にして本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表4に示した。なお、P−25含有系の抗菌性評価はブラックライトを40cmの距離で照らしながら行った。
【0122】
【表4】
【0123】
参考例7
平均粒径0.5μmの炭酸カルシウム微粒子が4000ppmの濃度で分散されたPET(分子量20000)95重量部にポリエチレングリコール(分子量20000)5重量部、銀/リン酸ジルコニウム系抗菌フィラー(ノバロン,東亞合成(株)製)2重量部を添加した後、280℃で溶融押し出しし、30℃の冷却ロールで冷却して、厚さ約180μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、テンターにより110℃で予熱し、70℃で横方向に4.5倍延伸した後、80℃で熱固定し、厚さ40.0μmの本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表5に示した。
【0124】
参考例8〜9
参考例7において、銀/リン酸ジルコニウム系抗菌フィラー(ノバロン,東亞合成(株)製)の代わりに表5に示した無機抗菌剤を所定量用いた以外は参考例7と同様にして本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表5に示した。なお、P−25含有系の抗菌性評価はブラックライトを40cmの距離で照らしながら行った。
【0125】
参考比較例4〜6
参考例7、8、9において、ポリエチレングリコールを使用しなかったこと以外は、それぞれ参考例7、8、9と全く同様にして、比較例11、12、13のポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表5に示した。
【0126】
【表5】
【0127】
参考例10〜21
参考例7、8、9において、ポリエチレングリコールの代わりに表6に示したポリグリセリン3種〔ポリグリセリン#310)、ポリグリセリン#500、ポリグリセリン#750(坂本薬品工業株式会社)〕またはポリビニルアルコール(PVA)を使用した以外は参考例7、8、9と同様にして、それぞれ参考例10〜13、参考例14〜17、参考例18〜21の本発明の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの抗菌性評価結果を表6に示した。
【0128】
【表6】
【0129】
参考例22
実施例1〜15および参考例1〜21で得られた抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを熱収縮ラベル用に常法に従いチューブ状に加工し、内容積2リットルの角型PETボトルにかぶせ、室温〜160℃まで昇温する収縮ラベル用トンネルを通して収縮装着した。結果はいずれも収縮斑なく綺麗な仕上がりとなった。
【0130】
参考比較例7
参考比較例1〜3で得られたポリエステルフィルムを参考例22と同様に評価した。結果、PETボトルの首部での収縮不足および全体的に収縮斑が顕著であった。
【0131】
参考例23
実施例1〜15および参考例1〜21で得られた抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを用い袋状(7cm×20cm)とし、薬品用アンプルを入れ、熱収縮包装した。その後開口部をヒートシールして完全密封することができた。
【0132】
参考例24
参考例23と同様に、袋状とした大型の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルム袋(25cm×25cm)に、薬品用アンプルを複数本束ねて入れ、熱収縮包装した。その後開口部をヒートシールして完全密封することができた。
【0133】
以上のように本発明による抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを用いることで本来抗菌性を有さない物品に抗菌性を持たせることができるとともに、本発明による特異な抗菌特性を有する様々な物品を提供できることとなる。従って、滅菌を必要とする分野に於いては、その効果を維持する等の付加価値を与えた物品を製造することができる。
【0134】
【発明の効果】
本発明によれば、無機系抗菌剤、有機系抗菌剤等の抗菌剤量を増やすことなく、優れた抗菌活性を有する熱収縮ポリエステルフィルムを提供できる。従って、本発明の抗菌性熱収縮フィルムを用いることにより、抗菌性を有さない物品に高度な抗菌性を後付けの形で付与することができる。加えて光触媒機能の付加により、任意の工程で近紫外光を当てることにより、更に強力な抗菌性を発揮する熱収縮フィルムおよびこれを用いてなる熱収縮包装材および結束材が提供できる。
Claims (4)
- スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルドデシルホスホニウム塩のいずれかであるジカルボン酸成分、およびポリエーテル鎖を有する親水性物質を重合成分として含有する共重合ポリエステル樹脂を含有する抗菌層を有してなり、かつ100℃で10秒加熱後の熱収縮率が30%以上であることを特徴とする抗菌性熱収縮ポリエステルフィルム。
- スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルドデシルホスホニウム塩のいずれかであるジカルボン酸成分、およびポリエーテル鎖を有する親水性物質を重合成分として含有する共重合ポリエステル樹脂を含有する抗菌層を1層以上、および熱収縮性ポリエステル樹脂層を1層以上積層してなり、かつ少なくとも一方の最外層が抗菌層である、請求項1に記載の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルム。
- 抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを構成する層のうち、最大の厚みを有する層が、グリコール成分の1つにネオペンチルグリコールを用いてなるポリエステル樹脂を含有する層である、請求項2に記載の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルム。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗菌性熱収縮ポリエステルフィルムを含有してなる熱収縮包装材または結束材。
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