JP4062434B2 - ツーピースソリッドゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた飛び性能と耐擦過傷性を有し、かつ軟らかな打感を与えるゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
ツーピースソリッドゴルフボールは、コアとこれを被覆するカバーとから構成されており、ツーピースソリッドゴルフボールは飛距離及び耐久性等に優れていることから多くのゴルファーに使用されているが、その反面、糸巻きゴルフボールに比べて打撃時の打感が硬く、また、球離れの速さからフィーリング及びコントロール性に劣るという欠点がある。
【0003】
従来、ツーピースソリッドゴルフボールにおいて、糸巻きゴルフボールに近いフィーリングを実現すべく、軟らかなコアを用いたツーピースソリッドゴルフボールが提案されている。
【0004】
例えば、特開平8−276033号公報には、コアに初期荷重10kgfをかけた状態から終荷重130kgfをかけたときまでの圧縮変形量をPとし、ボールに初期荷重10kgfをかけた状態から終荷重130kgfをかけたときまでの圧縮変形量をQとするとき、上記圧縮変形量Pと圧縮変形量Qとの差(P−Q)を1.0〜3.5mmの範囲とすることによって、打感が良好で、かつ飛距離が大きいソリッドゴルフボールを得る技術が提案されている。
また、特開平8−294549号公報には、ソリッドコアとしてコア硬度が100kgf荷重時の変形量で3.5mm以上という軟らかいコアを使用すると共に、カバーとしてショアD硬度が50〜63度で300%モジュラスが15〜35MPaという軟らかなアイオノマー樹脂を主材としたカバーを使用することにより、ソリッドゴルフボールの諸特性を維持しつつ、しかも軟らかな打感を有するソリッドゴルフボールを得る技術が提案されている。
さらに、特開2000−245870号公報には、コアにカバーが被覆され、ボール表面に多数のディンプルが形成されたゴルフボールにおいて、上記コアに100kgf荷重をかけたときの撓み量、上記コアの表面硬度、該コア表面とコア中心との硬度差、及び上記ゴルフボールをドライバーによりヘッドスピード50m/秒で打撃する際のクラブフェース面におけるボールの実効接触面積をR、ボールの仮想接触面積をSとしたときのR/S値を適正化することにより、ソフトなフィーリングとスピン性能に優れ、アプローチコントロール性に優れたソリッドゴルフボールを得る技術が提案されている。
【0005】
しかしながら、ユーザーからは、少しでもより遠くへボールを飛ばしたいという要望が寄せられ、より一層高反発性能で軟らかな打感を有するゴルフボールの出現が望まれている。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−276033号公報
【特許文献2】
特開平8−294549号公報
【特許文献3】
特開2000−245870号公報
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、優れた飛び性能と耐擦過傷性を有し、しかも軟らかな打感を与えるゴルフボールを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ソリッドコアとカバーとを具備してなるツーピースソリッドゴルフボールにおいて、特定のゴム組成物から形成され、かつ特定の柔軟性及び直径を有するソリッドコアと、特定の樹脂組成物から形成され、かつ特定の厚み及び硬度を有するカバーとを組合わせたツーピースソリッドゴルフボールとし、しかも該ツーピースソリッドゴルフボール全体の柔軟性を特定の範囲とすることにより、従来のゴルフボールに比して非常に優れた飛び性能、高い耐擦過傷性、軟らかな打感を有するツーピースソリッドゴルフボールが得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記のツーピースソリッドゴルフボールを提供するものである。
請求項1:
ソリッドコアとカバーとを具備してなるツーピースソリッドゴルフボールにおいて、上記ソリッドコアが、(A)シス−1,4−結合を60%以上含有し、希土類元素系触媒を用いて合成されたポリブタジエンを60〜100重量%含むゴム基材100重量部に対して、(B)有機過酸化物を0.1〜0.8重量部、(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(D)有機硫黄化合物、(E)無機充填剤を含むゴム組成物から形成され、該ソリッドコアの980N(100kgf)荷重負荷時の変形量が3.0〜5.5mmであり、かつ該ソリッドコアの直径が37〜42mmであると共に、
上記カバーが、(M)末端にアミノ基を有するブロックポリマーと(N)アイオノマー樹脂とを(M)/(N)=3/97〜60/40(重量比)の割合で含む混合物を主成分として形成され、該カバーの厚みが0.5〜2.5mmであり、かつ該カバーのショアD硬度が50〜70であって、
しかも、上記ソリッドコアと上記カバーとを具備してなるツーピースソリッドゴルフボールの980N(100kgf)荷重負荷時の変形量が3.0〜5.0mmであることを特徴とするツーピースソリッドゴルフボール、
請求項2:
上記ポリブタジエンが、希土類元素系触媒としてNd系触媒を用いて合成され、引き続き末端変性剤を反応させて得られた変性ポリブタジエンである請求項1記載のツーピースソリッドゴルフボール、
請求項3:
上記ゴム組成物が、上記(A)シス−1,4−結合を60%以上含有し、希土類元素系触媒を用いて合成されたポリブタジエンを60〜100重量%含むゴム基材100重量部に対して、上記(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩を10〜60重量部、(D)有機硫黄化合物を0.1〜5重量部、(E)無機充填剤を5〜80重量部含んでなり、しかも2種以上の(B)有機過酸化物を含んでなる請求項1又は2記載のツーピースソリッドゴルフボール、
請求項4:
上記カバーが表面に多数のディンプルを具備し、当該カバー表面にディンプルがないと仮定した仮想球の体積に対する各ディンプルの縁部によって囲まれる平面下のディンプル空間体積の総和が占める割合(ディンプル体積占有率)VRが0.70〜1.00%であり、かつ上記仮想球の表面積に対する各ディンプルの縁部によって囲まれる仮想球面の総面積が占める割合(ディンプル表面占有率)SRが70〜85%である請求項1,2又は3記載のツーピースソリッドゴルフボール。
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明におけるソリッドコアは下記の各成分、
(A)シス−1,4−結合を60%以上含有し、希土類元素系触媒を用いて合成されたポリブタジエン60〜100重量%含むゴム基材、
(B)有機過酸化物、
(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(D)有機硫黄化合物、
(E)無機充填剤
を含むゴム組成物から形成されるものである。
【0011】
本発明における上記(A)シス−1,4−結合を60%以上含有し、希土類元素系触媒を用いて合成されたポリブタジエン60〜100重量%含むゴム基材において、上記ポリブタジエンに含まれるシス−1,4−結合の含量としては60%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。上記ポリブタジエンに含まれるシス−1,4−結合の含量が60%未満であると、好適な反発性が得られない。
【0012】
本発明における上記ポリブタジエンは、希土類元素系触媒で合成されたものである。希土類元素系触媒としては、公知のものを使用することができるが、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルモキサン、ハロゲン含有化合物、更に、必要に応じルイス塩基の組み合わせよりなる触媒を挙げることができる。
【0013】
上記ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の金属ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等を挙げることができる。
【0014】
上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、AlR1R2R3(ここで、R1、R2及びR3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素数1〜8の炭化水素残基を表す)で示されるものを用いることができる。
【0015】
上記アルモキサンは、下記式(I)又は下記式(II)で示される構造を有する化合物を好適に挙げることができる。この場合、ファインケミカル,23,(9),5(1994)、J.Am.Chem.Soc.,115,4971(1993)、J.Am.Chem.Soc.,117,6465(1995)で示されるアルモキサンの会合体でもよい。
【0016】
【化1】
(式中、R4は、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、nは2以上の整数である。)
【0017】
ハロゲン含有化合物としては、AlXnR3-n(ここで、Xはハロゲンを示し、Rは、炭素数が1〜20の炭化水素残基であり、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基であり、nは、1、1.5、2又は3を示す)で示されるアルミニウムハライド、Me3SrCl、Me2SrCl2、MeSrHCl2、MeSrCl3などのストロンチウムハライド、その他、四塩化ケイ素、四塩化スズ、四塩化チタンなどの金属ハライド等が用いられる。
【0018】
ルイス塩基は、ランタン系列希土類元素化合物を錯化するのに用いることができ、例えば、アセチルアセトン、ケトンアルコールなどを挙げることができる。
【0019】
本発明においては、特に、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジウム化合物を用いたネオジウム系触媒の使用が、1,4−シス結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましく、これらの希土類元素系触媒の具体例は、特開平11−35633号公報に記載されているものを好適に挙げることができる。
【0020】
また、ランタン系列希土類元素化合物を用いた希土類元素系触媒の存在下でブタジエンを重合させる場合、シス含量及びMw/Mnを上記範囲とするために、ブタジエン/ランタン系列希土類元素化合物は、モル比で1,000〜200万、特には5,000〜100万とすることが好ましく、また、AlR1R2R3/ランタン系列希土類元素化合物は、モル比で1〜1,000、特には3〜500とすることが好ましい。更に、ハロゲン化合物/ランタン系列希土類元素化合物は、モル比で0.1〜30、特に0.2〜15であることが好ましい。ルイス塩基/ランタン系列希土類元素化合物は、モル比で0〜30、特に1〜10とすることが好ましい。重合にあたっては、溶媒を使用しても、溶媒を使用せずにバルク重合或いは気相重合してもよい。重合温度は、通常、−30〜150℃、好ましくは10〜100℃である。
【0021】
希土類元素系触媒の存在下でブタジエンを重合させる場合、溶媒を使用しても、溶媒を使用せずにバルク重合あるいは気相重合してもよく、重合温度は通常−30〜150℃、好ましくは10〜100℃とすることができる。
【0022】
上記ポリブタジエンのムーニー粘度(ML1+4(100℃))としては、通常40以上、好ましくは50以上、更に好ましくは52以上、最も好ましくは54以上、上限として通常140以下、好ましくは120以下、更に好ましくは100以下、最も好ましくは80以下である。ムーニー粘度が上記範囲外であると、作業性が悪くなったり、反発性が低下する場合がある。
【0023】
なお、本発明でいうムーニー粘度とは、いずれも回転可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標(JIS−K6300)であり、単位記号としてML1+4(100℃)を用いる。また、Mはムーニー粘度、Lは大ロータ(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ロータの回転時間は4分間を示し、100℃の条件下にて測定したことを示す。
【0024】
本発明における上記ポリブタジエンは、上記の希土類元素系触媒による重合に引き続き、ポリマーの活性末端に末端変性剤を反応させることにより得られるものであってもよい。
【0025】
ここで、末端変性剤は、公知のものを使用でき、下記▲1▼〜▲7▼に記載した末端変性剤を使用することができる。
▲1▼まず、アルコキシシリル基を持つ化合物が挙げられる。アルコキシシリル基を持つ化合物としては、エポキシ基又はイソシアナート基を分子内に少なくとも1個有するアルコキシシラン化合物が好適に使用される。具体例としては、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの縮合物、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシランの縮合物などのエポキシ基含有アルコキシシラン;3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、(3−イソシアナートプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−イソシアナートプロピル)メチルジエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシランの縮合物、(3−イソシアナートプロピル)メチルジメトキシシランの縮合物などのイソシアナート基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0026】
また、上記アルコキシシリル基を持つ化合物を活性末端に反応させる際、反応を促進させるためにルイス酸を添加することもできる。ルイス酸が触媒としてカップリング反応を促進させ、変性ポリマーのコールドフローが改良され貯蔵安定性がよくなる。ルイス酸の具体例としては、ジアルキルスズジアルキルマレート、ジアルキルスズジカルボキシレート、アルミニウムトリアルコキシドなどが挙げられる。
【0027】
▲2▼R5 nM′X4-n、M′X4、M′X3、R5 nM′(−R6−COOR7)4-n又はR5 nM′(−R6−COR7)4-n(式中、R5及びR6は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、R7は炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基又はエステル基を含んでいてもよく、M′はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子又はリン原子、Xはハロゲン原子、nは0〜3の整数を示す)に対応するハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物又は有機金属化合物、
▲3▼分子中に、Y=C=Z結合(式中、Yは炭素原子、酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子、Zは酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子を示す)を含有するヘテロクムレン化合物、
▲4▼分子中に下記結合を含有するヘテロ3員環化合物、
【化2】
(式中、Yは、酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子を示す。)
▲5▼ハロゲン化イソシアノ化合物、
▲6▼R8−(COOH)m 、R9(COX)m 、R10−(COO−R11)m 、R12−OCOO−R13、R14−(COOCO−R15)m 、又は下記式で示されるカルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物又は酸無水物、
【化3】
(式中、R8〜R16は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜50の炭素原子を含む炭化水素基、Xはハロゲン原子、mは1〜5の整数を示す。)
▲7▼R17 l M″(OCOR18)4-l 、R19 lM″(OCO−R20−COOR21)4-l、又は下記式で示されるカルボン酸の金属塩
【化4】
(式中、R17〜R23は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、M″はスズ原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子、lは0〜3の整数を示す。)等を挙げることができる。
【0028】
以上に示される末端変性剤の具体例及び反応させる方法は、例えば、特開平11−35633号公報,特開平7−268132号公報,特開2002−293996号公報等に記載されているもの及び方法を挙げることができる。
なお、上述した触媒の中では、希土類元素系触媒、特にNd系触媒が好ましい。
【0029】
本発明において、上記ポリブタジエンとしては、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、2.0以上、好ましくは2.2以上、更に好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.6以上であり、上限としては8.0以下、好ましくは7.5以下、更に好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.4以下であることが好ましく、Mw/Mnが小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下する場合がある。
【0030】
本発明における上記(A)成分は、上記のようなポリブタジエンを主材としたゴム基材であるが、この主材のポリブタジエンの含量としては、ゴム基材中60重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは85重量%以上である。また、ゴム基材の100重量%が上記ポリブタジエンであってもよく、95重量%以下、場合によっては90重量%以下の含有量とし得る。ポリブタジエンの含量が60重量%未満であると、反発性が劣る。
【0031】
なお、上記(A)成分に含まれるポリブタジエン以外の成分としては、上記ポリブタジエン以外のポリブタジエン、例えばVIII族金属化合物触媒を用いて得られたポリブタジエン、その他のジエンゴム、例えばスチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等が挙げられる。
【0032】
この場合、上記ポリブタジエン以外のゴム成分のうちでは、VIII族の触媒を用いて合成され、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が50未満、その25℃における5重量%トルエン溶液の粘度ηが200mPa・s以上、400mPa・s以下である第2のポリブタジエンを使用することが、高い反発性、良好な作業性を得ることができる点から好ましい。
【0033】
上記VIII族触媒として、具体的には、下記のニッケル系触媒、コバルト系触媒を挙げることができる。
ここで、ニッケル系触媒としては、例えば、ニッケルケイソウ土のような1成分系、ラネーニッケル/四塩化チタンのような2成分系、ニッケル化合物/有機金属/三フッ化ホウ素エーテラートのような3成分系のもの等を挙げることができる。なお、ニッケル化合物としては、担体付還元ニッケル、ラネーニッケル、酸化ニッケル、カルボン酸ニッケル、有機ニッケル錯塩などが用いられる。また、有機金属としては、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、1,4−ジリチウムブタン等のアルキルリチウム、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛等のジアルキル亜鉛等を挙げることができる。
【0034】
また、コバルト系触媒としては、コバルト及びその化合物として、ラネーコバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、酸化コバルト、硫酸コバルト、炭酸コバルト、リン酸コバルト、フタル酸コバルト、コバルトカルボニル、コバルトアセチルアセトネート、コバルトジエチルジチオカルバメート、コバルトアニリニウムナイトライト、コバルトジニトロシルクロリド等を挙げることができ、特にこれらの化合物とジエチルアルミニウムモノクロリド、ジイソブチルアルミニウムモノクロリド等のジアルキルアルミニウムモノクロリド、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロリド等のアルミニウムアルキルセスキクロリド、塩化アルミニウム等との組み合わせを好適に挙げることができる。
【0035】
上記VIII族系触媒、特にニッケル系触媒又はコバルト系触媒を用いて重合する場合は、通常、溶剤、ブタジエンモノマーと併せて連続的に反応機にチャージさせ、例えば、反応温度を5〜60℃、反応圧力を大気圧から70数気圧の範囲で適宜選択して、上記ムーニー粘度のものが得られるように操作する方法を挙げることができる。
【0036】
上記第2のポリブタジエンのムーニー粘度は、50未満であり、好ましくは48以下、更に好ましくは45以下である。この場合、ムーニー粘度の下限としては、10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは25以上、最も好ましくは30以上であることが好ましい。
また、第2のポリブタジエンの25℃における5重量%トルエン溶液の粘度ηが200mPa・s以上、より好ましくは210mPa・s以上、更に好ましくは230mPa・s以上、特に好ましくは250mPa・s以上で、400mPa・s以下、より好ましくは370mPa・s以下、更に好ましくは340mPa・s以下、特に好ましくは300mPa・s以下であることが好ましい。
【0037】
なお、本発明でいう25℃における5%トルエン溶液の粘度η(mPa・s)とは、測定対象のポリブタジエン2.28gをトルエン50mlに溶解した後、標準液として粘度計構成用標準液(JIS Z8809)を用いて、所定の粘度計により25℃の条件下で測定した値のことをいうものとする。
【0038】
上記第2のポリブタジエンの配合量は、ゴム基材中、0%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上で、40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下とすることが好ましい。
【0039】
次に、本発明における(B)有機過酸化物としては、2種以上が併用されることが好ましく、この場合、155℃における半減期が一番短い有機過酸化物を(a)、155℃における半減期が一番長い有機過酸化物を(b)とし、(a)の半減期をat、(b)の半減期をbtとした場合、半減期の比bt/atとしては7以上、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上で、20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。2種以上の有機過酸化物を用いても、上記範囲を逸脱した場合、反発性、コンプレッション、耐久性に劣ってしまう場合がある。
【0040】
この場合、上記(a)の155℃における半減期atとしては、5秒以上、より好ましくは10秒以上、更に好ましくは15秒以上で、120秒以下、より好ましくは90秒以下、更に好ましくは60秒以下であることが好ましく、上記(b)の155℃における半減期btとしては、300秒以上、より好ましくは360秒以上、更に好ましくは420秒以上で、800秒以下、より好ましくは700秒以下、更に好ましくは600秒以下であることが好ましい。
【0041】
上記有機過酸化物として具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。これら有機過酸化物は市販品を用いることができ、例えば、パークミルD(日本油脂社製)、パーヘキサ3M(日本油脂社製)、Luperco 231XL(アトケム社製)等が挙げられる。この場合、上記(a)成分の有機過酸化物としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンが好ましく、(b)成分の有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0042】
また、上記(a),(b)成分を含む有機過酸化物の総配合量は、上記(A)成分100重量部(以下、重量部を「部」と略記する事がある)に対して0.1部以上、好ましくは0.2部以上、より好ましくは0.3部以上、更に好ましくは0.4部以上であり、上限として0.8部以下、好ましくは0.7部以下、より好ましくは0.6部以下、更に好ましくは0.5部以下である。配合量が少なすぎると、架橋に要する時間が長くなり、生産性の低下が大きく、コンプレッションも大きく低下してしまう。配合量が多すぎると、反発性、耐久性が低下してしまう。
本発明においては、コアに希土類元素系触媒、特に好ましくはNd系触媒を用いて合成されたポリブタジエンを使用し、かつ、有機過酸化物の添加量を上記範囲とすることで、本発明のゴルフボールの反発性が非常に良好となる。反発性が向上する分、ソリッドコア、またはゴルフボール全体をソフト化することが可能となり、ドライバー等のフルショットでの初期条件が低スピン・高打ち出しとなり、しかも飛距離が向上するものである。軟らかな打感も得ること可能となる。
【0043】
なお、(a)成分の添加量としては、(A)成分100部に対し、0.05部以上、より好ましくは0.08部以上、更に好ましくは0.1部以上で、0.5部以下、より好ましくは0.4部以下、更に好ましくは0.3部以下であることが好ましく、(b)成分の添加量としては0.05部以上、より好ましくは0.15部以上、更に好ましくは0.2部以上で、0.7部以下、より好ましくは0.6部以下、更に好ましくは0.5部以下であることが好ましい。
【0044】
次に、(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩において、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。不飽和カルボン酸の金属塩としては、亜鉛塩、マグネシウム塩等が挙げられ、中でもアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0045】
上記(C)成分の配合量としては、上記(A)成分100部に対し、通常10部以上、より好ましくは15部以上、更に好ましくは20部以上であり、上限として通常60部以下、より好ましくは50部以下、更に好ましくは45部以下、最も好ましくは40部以下である。(C)成分の配合量が上記範囲を外れると、反発性や打感が低下する(劣る)場合がある。
【0046】
本発明における上記(D)成分の有機硫黄化合物としては、例えば、チオフェノール、チオフトール、ハロゲン化チオフェノール又はそれらの金属塩が挙げられる。より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール又はそれらの亜鉛塩、硫黄数が2〜4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド、アルキルフェニルジスルフィド類、フラン環を有する硫黄化合物類、チオフェン環を有する硫黄化合物類が挙げられるが、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0047】
上記(D)成分の配合量としては、(A)成分100部に対し、0.1部以上、より好ましくは0.2部以上、更に好ましくは0.4部以上、最も好ましくは0.7部以上で、5部以下、より好ましくは4部以下、更に好ましくは3部以下、最も好ましくは2部以下、特に好ましくは1.5部以下である。その配合量が少なすぎると、反発性を向上させる効果がなくなる場合があり、多すぎると、硬度が軟らかくなりすぎ、十分な反発性が得られない場合がある。
【0048】
本発明における(E)成分の無機充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、その配合量としては(A)成分100部に対し、通常5部以上、より好ましくは7部以上、更に好ましくは10部以上、最も好ましくは13部以上、上限として通常80部以下、より好ましくは65部以下、更に好ましくは50部以下、最も好ましくは40部以下である。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正な重量及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0049】
また、上記(A)〜(E)成分を含んでなるゴム組成物には必要に応じ、更に老化防止剤を添加することもできる。老化防止剤の添加量としては、(A)成分100部に対し、0.05部以上、より好ましくは0.1部以上、更に好ましくは0.2部以上で、3部以下、より好ましくは2部以下、更に好ましくは1部以下、最も好ましくは0.5部以下を配合することができる。
老化防止剤としては市販品を用いることができ、例えば、ノクラックNS−6、同NS−30(大内新興化学工業(株)製、ヨシノックス425(吉富製薬(株)製)等が挙げられる。
【0050】
本発明における上記ソリッドコアは、上記(A)〜(E)成分を含むゴム組成物から形成されるものであるが、形成方法としては、該ゴム組成物を加硫・硬化する方法が好適である。加硫条件としては、例えば、加硫温度100〜200℃、加硫時間10〜40分にて実施することができる。
【0051】
上記のように形成される上記ソリッドコアの局部的な硬度としては適宜調整することができ、特に制限されるものではなく、局部的な硬度の分布としては、中心から成形物表面までが同等の硬度であっても、中心と成形物表面までに硬度差があってもいずれの場合であってもよい。
【0052】
上記ソリッドコアの直径としては、37mm以上、好ましくは38mm以上、より好ましくは38.5mm以上、上限として42mm以下、好ましくは41mm以下、更に好ましくは40mm以下である。ソリッドコアの直径が37mm未満であると、打感や反発が悪くなり、一方、42mmを超えると、割れ耐久性が悪くなる。
【0053】
上記ソリッドコアの980N(100kgf)荷重負荷時のたわみ量としては、3.0mm以上、好ましくは3.3mm以上、更に好ましくは3.5mm以上、最も好ましくは3.8mm以上、上限としては5.5mm以下、好ましくは5.2mm以下、更に好ましくは5.0mm以下、最も好ましくは4.8mm以下である。当該変形量が3.0mm未満であると、打感が悪くなると共に、特にドライバーなどのボールに大変形が生じるロングショット時にスピンが増えすぎて飛ばなくなり、一方、5.5mmを超えると、打感が鈍くなると共に、反発が十分でなくなり飛ばなくなる上、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる。
【0054】
上記ソリッドコアの比重(g/cm3)としては、通常0.9以上、好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.1以上、上限として1.4以下、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下であることが推奨される。
【0055】
本発明に用いられるカバーは、(M)末端にアミノ基を有するブロックポリマーと(N)アイオノマー樹脂とを(M)/(N)=3/97〜60/40(重量比)の割合で含む混合物を主成分として形成されるものである(以下、カバー材と略記することがある)。
【0056】
本発明における(M)末端にアミノ基を有するブロックポリマーとしては、好ましくはオレフィン結晶ブロックを有するブロックコポリマーの末端をアミノ基で変性したものが用いられる。
【0057】
上記オレフィン結晶ブロックを有するブロックコポリマーとしては、ハードセグメントとしてオレフィン結晶ブロック(Co)、又は、オレフィン結晶ブロック(Co)とスチレン結晶ブロック(Cs)を有し、かつソフトセグメントとしてエチレンとブチレンとの比較的ランダムな共重合構造(EB)からなるブロックを有するものが好ましく、分子構造としてハードセグメントが片末端又は両末端にあるCo−EB、Co−EB−Co、Cs−EB−Co系の構造を有するブロック共重合体であることが好ましい。オレフィン結晶ブロックとしては、結晶ポリエチレンブロック、結晶ポリプロピレンブロック等があげられ、特に結晶ポリエチレンブロックであることが好ましい。
【0058】
上記オレフィン結晶ブロックを有するブロックコポリマーは、ポリブタジエンやスチレン−ブタジエン共重合体を水素添加することにより得ることができる。ここで、水素添加に用いるポリブタジエンやスチレン−ブタジエン共重合体としては、そのブタジエン構造中の結合様式として特に1,4−結合が95重量%以上の1,4−重合部をブロック的に持ち、ブタジエン構造全量中の1,4−結合が50重量%以上、より好ましくは80重量%以上であるポリブタジエンが好適に用いられる。
特に、Co−EB−Co系の構造を有する上記ブロックコポリマーについては、分子鎖両末端部が1,4−結合リッチな1,4−重合物で、中間部が1,4−結合と1,2−結合が混在するポリブタジエンを水素添加して得られるものが好適である。
オレフィン結晶ブロックを有するブロックコポリマーの末端をアミノ基で変性する場合、スチレンブロック末端をアミノ基で変性することが好ましい。
【0059】
ポリブタジエンやスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物における水素添加量(ポリブタジエンやスチレン−ブタジエン共重合体中の二重結合の飽和結合への転化率)は60〜100%であることが好ましく、より好ましくは90〜100%である。水素添加量が少なすぎると、アイオノマー樹脂等とのブレンド工程でゲル化等の劣化が生じたり、ゴルフボールを形成した際に、カバーの耐候性、打撃耐久性に問題が生じたりする場合がある。
【0060】
上記オレフィン結晶ブロックを有するブロックコポリマーにおいて、上記ハードセグメントの含量としては10〜50重量%が好ましい。ハードセグメント量が多すぎると、柔軟性に欠けて本発明の目的を有効に達成し得ない場合があり、ハードセグメント量が少なすぎると、ブレンド物の成形性に問題が生じる場合がある。
更に、このオレフィン結晶ブロックを有するブロックコポリマーの数平均分子量は3万〜80万であることが好ましい。
【0061】
上記オレフィン結晶ブロックを有するブロックコポリマーの230℃におけるメルトインデックスは0.5〜15g/10min、より好ましくは1〜7g/10minであることが好ましい。上記範囲を外れると、射出成形時にウェルド、ひけ、ショート等の問題が生じるおそれがある。
【0062】
本発明における(N)アイオノマー樹脂としては、ゴルフボールのカバー材として従来から用いられているいずれのものも使用できるが、(N−1)オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の、金属イオン中和物と、(N−2)オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の、金属イオン中和物とを含む(N)アイオノマー樹脂であることが好ましい。
【0063】
(N−1)成分、又は(N−2)成分におけるオレフィンとしては、α−オレフィンが好適に用いられる。α−オレフィンの具体例としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテンなどが挙げられ、この中でも、特にエチレンが好ましい。また、これらオレフィンを複数種組み合わせて使用しても良い。
【0064】
(N−1)成分、又は(N−2)成分における不飽和カルボン酸としては、炭素原子数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸が好適に用いられる。炭素原子数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸の具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられ、この中でもアクリル酸、メタクリル酸が好ましく使用される。また、これら不飽和カルボン酸を複数種組み合わせて使用しても良い。
【0065】
(N−2)成分における不飽和カルボン酸エステルとしては、上述した不飽和カルボン酸の低級アルキルエステルが好適であり、例えば、上記不飽和カルボン酸にメタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級アルコールを反応させて得たものが挙げられる。特にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましい。
(N−2)成分における不飽和カルボン酸エステルとして、より具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等を挙げることができ、特にアクリル酸ブチル(n−アクリル酸ブチル、i−アクリル酸ブチル)が好適に用いられる。これら不飽和カルボン酸エステルは、複数種組み合わせて用いることもできる。
【0066】
上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体や、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体を製造する際には、更に任意のモノマーを、本発明の目的を損なわない範囲で共重合させても良い。
これら共重合体中の不飽和カルボン酸の含有量としては、上記(N−1)成分の場合には5〜20重量%、上記(N−2)成分の場合には1〜10重量%であることが好ましい。不飽和カルボン酸含有量が少なすぎると、剛性・反発性が小さくなり、ゴルフボールの飛び性能が低下する場合がある。不飽和カルボン酸含有量が多すぎると、柔軟性が不十分となる場合がある。
また、(N−2)成分中の不飽和カルボン酸エステルの含有量としては、12〜45重量%であることが好ましい。不飽和カルボン酸エステル含有量が少なすぎると、軟質化の効果が得られない場合があり、不飽和カルボン酸エステル含有量が多すぎると、反発性が低下する場合がある。
【0067】
上記(N−1)成分と、上記(N−2)成分とを配合して用いる場合、その配合量は重量比で(N−1)/(N−2)=100/0〜25/75であることが好ましく、100/0〜50/50であることがより好ましい。(N−2)成分の配合量が多すぎると、反発性が不十分となる場合がある。
【0068】
本発明における(N)アイオノマー樹脂は、上記の共重合体を1〜3価の金属イオンの少なくとも1種で中和して得られるものが好ましく用いられる。中和に適した1〜3価の金属イオンとしては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、第1鉄、第2鉄などのイオンを挙げることができる。
【0069】
このような金属イオンの導入は、例えば上記の共重合体と、上記1〜3価の金属の水酸化物、メトキシド、エトキシド、炭酸塩、硝酸塩、ギ酸塩、酢酸塩及び酸化物等とを反応させることによって達成される。
上記共重合体中に含まれるカルボン酸の中和量としては、共重合体中のカルボン酸基の少なくとも10モル%以上、特に30モル%以上で、100モル%以下、特に90モル%以下が金属イオンによって中和されていることが好ましい。中和量が少ないと、低反発性となる場合がある。
【0070】
反撥性を向上させる観点から、一価金属のアイオノマーと二価金属のアイオノマーとを混合して用いることも好適に行われる。この際の前者と後者との重量比は20/80〜80/20となるように混合して用いることが好ましい。
【0071】
また、1価、2価、又は3価の異なる金属イオン種を含むアイオノマー樹脂をそれぞれ適当量ブレンドすることにより、アイオノマー樹脂を主成分として形成される層の反発性と耐久性のバランスが取れることは公知であり、本発明においてもその様な配合にてブレンドすることが好ましい。
【0072】
本発明に使用する(N)アイオノマー樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、米国デュポン社製「サーリン(Surlyn)」や、三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミラン(HIMILAN)」等が挙げられる。
【0073】
本発明において、上記(M)末端にアミノ基を有するブロックポリマーと(N)アイオノマー樹脂とは、前者3〜60重量部、好ましくは10〜60重量部、より好ましくは20〜45重量部、後者97〜40重量部、好ましくは90〜40重量部、より好ましくは80〜55重量部の割合(合計100重量部)で配合される。(M)成分の配合量が少なすぎると、アイオノマー樹脂のソフト化が十分行なわれず、打球感、コントロール性の改良が十分になされない。一方、(M)成分の配合量が多すぎると、耐カット性が損なわれる。
【0074】
本発明における上記カバー材には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じ種々の添加剤、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、無機充填剤等を添加することもできる。
この様な添加剤としてより具体的には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0075】
上記添加剤の配合量は、上記(M)成分と(N)成分との混合物100重量部に対し、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、更に好ましくは1〜6重量部である。添加剤の配合量が大きすぎると、耐久性が低下する場合があり、添加剤の配合比が小さすぎると、添加剤の効果が得られない場合がある。
【0076】
本発明における上記カバー材の硬度(ショアD)は、50以上、好ましくは53以上、上限として70以下、好ましくは64以下である。ショアD硬度が低すぎると反撥性に劣ることとなり、ショアD硬度が高すぎると打感、コントロール性の改善が見られない。なお、本発明においてショアD硬度とは、ASTM D2240に準じ、D型デュロメータにより測定した硬度である。
【0077】
また、上記カバー材の比重としては、通常0.85〜1.2g/cm3、好ましくは0.9〜1.1g/cm3、更に好ましくは0.92〜1.0g/cm3である。
【0078】
本発明における上記カバー材の製法に特に制限はなく、例えば、加熱温度150〜250℃において、混練型二軸押出機、バンバリー、ニーダー等のインターナルミキサー等を混合機として用い、上記各成分を混練して得ることができる。
上記カバー材に、上記(M)成分及び(N)成分に加え、種々の添加剤等を配合する場合、その配合方法についても特に制限はなく、(M)成分及び(N)成分と共に配合して同時に加熱混合しても良いし、(M)成分及び(N)成分を予め加熱混合をした後、任意の添加剤等を加えて更に加熱混合してもよい。
【0079】
上記に示すカバー材は、非常に良好な反発性を示す。
上記の、軟らかなコアと上記カバーとを組合わせることにより、飛距離を犠牲にすることなくゴルフボール硬度を軟らかくすることが可能となって軟らかな打感が実現可能となり、しかも、硬度が軟らかなことから打撃時のクラブとゴルフボールとの接触面積が広がるため、打撃時の衝撃力が分散することとなり、より耐擦過傷性が向上することとなる。
【0080】
本発明のツーピースゴルフボールは、上記コアに、上記カバー材にて形成されたカバーを被覆してなるゴルフボールである。
カバーの形成方法としては公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、予め作製したコアを金型内に配備し、上記カバー材を加熱混合溶融し、射出成形する方法等を採用できる。この場合、ゴルフボールの製造は、優れた流動性、成形性が確保された状態で作業でき、得られたゴルフボールは、反発性が高くなるため好適である。
また、本発明のカバー材により予め一対の半球状のハーフカップを成形し、このハーフカップでコアを包んで120〜170℃、1〜5分間、加圧成形する方法を用いても良い。
【0081】
本発明における上記カバー材は、射出成形に特に適した流動性を確保し、成形性を改良するため、メルトフローレートを調整することが好ましく、この場合、JIS−K6760で試験温度190℃、試験荷重21.18N(2.16kgf)に従って測定したときのメルトフローレート(MFR)が、通常0.5dg/min以上、好ましくは1dg/min以上、より好ましくは1.5dg/min以上、更に好ましくは2dg/min以上であり、上限としては通常20dg/min以下、好ましくは10dg/min以下、より好ましくは5dg/min以下、更に好ましくは3dg/min以下に調整されることが推奨される。メルトフローレートが、大きすぎても小さすぎても加工性が著しく低下する場合がある。
【0082】
上記カバー材にて形成されるカバー厚みは、0.5mm以上、好ましくは0.9mm以上、より好ましくは1.1mm以上、上限として2.5mm以下、好ましくは2.0mm以下である。カバー厚みが大きすぎると、反発性が低下し、カバー厚みが小さすぎると、耐久性が低下する。
【0083】
本発明のツーピースゴルフボールにおいては、カバーの表面に多数のディンプルを形成し、更にカバー上に下地処理、スタンプ、塗装等種々の処理を行うことが好適である。ディンプルの配設に当たっては、ディンプルに交差しない大円線が1本もないようにディンプルを配設することが好適である。ディンプルと交差しない大円線が存在すると、飛びにバラツキが発生する場合がある。
【0084】
上記ディンプルとしては、更にディンプルの種類の数及び総数が適正化されたものであることが好ましく、ディンプルの種類の数及び総数の適正化による相乗効果で弾道がより安定し、飛距離性能に優れたゴルフボールを得ることができる。
【0085】
ここで、ディンプルの種類の数は、ディンプルの直径及び/又は深さが互いに異なるディンプルの種類の数をいい、通常、2種以上、好ましくは3種以上であることが推奨される。なお、上限として8種以下、特に6種以下であることが推奨される。
【0086】
また、ディンプルの総数は、通常300個以上、好ましくは320個以上、上限として480個以下、好ましくは455個以下にすることが推奨される。ディンプル総数が少なすぎても、ディンプル総数が多すぎても、最適な揚力が得られず、飛ばなくなる場合がある。
【0087】
上記ディンプルとしては、更にディンプル体積占有率VR(%)、ディンプル表面占有率SR(%)とがそれぞれ適正化されたものであることが推奨される。これらVRと併せたSRの適正化による相乗効果で、弾道が適正化され、飛距離の向上を図ることができ、更に適正な揚抗力のバランスを得ることができ、より優れた飛距離性能を付与することができる。
【0088】
ディンプルがないものと仮定した仮想ゴルフボール体積に対する、ゴルフボール表面ディンプルの容積が占める割合(体積占有率)をVR(単位は%)と定義する。本発明のツーピースゴルフボールのVR値(%)としては通常0.70以上、好ましくは0.75以上、上限としては通常1.00以下、好ましくは0.82以下、更に好ましくは0.79以下である。
また、上記各ディンプルの縁部によって囲まれる仮想球面の総面積が占める割合(ディンプル表面占有率)SR値(%)としては、通常70%以上、好ましくは72%以上、上限として通常85%以下、好ましくは83%以下である。
これらVR値及びSR値が上記範囲を外れると、適正な弾道が得られず、飛距離が低下する場合がある。
上記ソリッドコア及びカバーと、上記比較的高弾道のディンプルを組み合わせることにより、ドロップを防ぎ、より高く、フラットな弾道で飛距離を伸ばす事が可能となる。
【0089】
なお、上記ディンプルの体積占有率VR、ディンプル表面占有率SRの算出は、製品ゴルフボールのディンプルを測定した値であり、例えば、上記カバーを形成した後、ボール表面に対して仕上げ処理(塗装及びスタンプの仕上げ処理等)などが施された場合には、これら処理が全て完了した製品ボールのディンプルの形状をもとに算出するものとする。
【0090】
本発明のツーピースゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、直径42.67mm以上、重量45.93g以下、好ましくは45.0〜45.93gに形成することができる。
【0091】
本発明におけるツーピースゴルフボールは上記コアと上記カバーとを具備し、好ましくはカバー表面に多数のディンプルを具備したものであるが、ボール全体の980N(100kgf)荷重負荷時の撓み量としては、3.0mm以上、好ましくは3.2mm以上、更に好ましくは3.4mm以上、最も好ましくは3.6mm以上、上限としては5.0mm以下、好ましくは4.8mm以下、更に好ましくは4.6mm以下、最も好ましくは4.4mm以下である。当該変形量が3.0mm未満であると、打感が悪くなると共に、特にドライバーなどのボールに大変形が生じるロングショット時にスピンが増えすぎて飛ばなくなり、一方、5.0mmを超えると、打感が鈍くなると共に、反発が十分でなくなり飛ばなくなる上、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる。
【0092】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0093】
〔実施例1〜3,比較例1〜3〕
表1に示すゴム組成物を用い、155℃で17分間の加硫により、ソリッドコアを作成した。
表2に示す組成のカバー材を200℃で混練型二軸押出機にてミキシングし、ペレット状のカバー材を得た後、上記ソリッドコアを配備した金型内に射出し、ツーピースソリッドゴルフボールを製造した。カバー表面に配設したディンプル種を表3に示した。表3中に記載のディンプル種A〜Cの配設例を、図1,2に示した。
得られた各ゴルフボールの諸特性を表4に示した。
【0094】
【表1】
HCBN−13
JSR社製、Cis1,4量96%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))53、分子量分布Mw/Mn3.2、触媒Nd。
BR01
JSR社製、Cis1,4量96%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))44、分子量分布Mw/Mn4.2、触媒Ni、溶液の粘度150mPa・s。
BR11
JSR社製、Cis1,4量96%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))44、分子量分布Mw/Mn4.1、触媒Ni、溶液の粘度270mPa・s。
パーヘキサ3M−40
日本油脂社製。パーヘキサ3M−40は40%希釈品であり、添加量は1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの実質添加量で示した。
パークミルD
日本油脂社製、ジクミルパーオキサイド。
アクリル酸亜鉛
日本蒸留工業(株)社製。
ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩
東京化成工業(株)社製。
酸化亜鉛
堺化学工業(株)社製。
ノクラックNS−6
大内新興化学社製、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)
【0095】
【表2】
ハイミラン1605
三井・デュポンポリケミカル社製。エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマーのNaイオン中和物。
ハイミラン1706
三井・デュポンポリケミカル社製。エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマーのZnイオン中和物。
HSB1561
JSR(株)製末端にアミノ基を有するブロックポリマー。スチレンブロック末端をアミノ基により変性した水添トリブロックポリマー、Cs−EB−Co系。
ハイミラン1557
三井・デュポンポリケミカル社製。エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマーのZnイオン中和物。
ハイミラン1601
三井・デュポンポリケミカル社製。エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマーのNaイオン中和物。
サーリン7930
米国デュポン社製。アイオノマー樹脂。
サーリン6320
米国デュポン社製。アイオノマー樹脂。
ニュクレル9−1
米国デュポン社製 三元酸共重合体。
【0096】
【表3】
VR(%)
各ディンプルの縁部によって囲まれる平面下のディンプル空間体積の全ディンプルの総和の、ゴルフボール表面にディンプルがないと仮定した仮想球の全体積に対する割合(%)。
SR(%)
ゴルフボールをディンプルのない球状とみなした仮想球面とした際、個々のディンプルの縁部によって囲まれる仮想球面の表面積の合計が上記仮想球面の全面積を占める割合(%)。
【0097】
【表4】
コア外径(mm)
表面を5点測定した平均値。
コア硬度(mm)
980N(100kgf)荷重負荷時の変形量(mm)を計測した。
カバー厚み(mm)
(ボール外径−コア外径)÷2として算出した。
カバー硬度
ASTM D−2240に準じて測定したショアD硬度。
ボール外径(mm)
ディンプルのない部分を5点測定した平均値。
ボール硬度(mm)
得られたゴルフボールに対し、980N(100kgf)荷重負荷時の変形量(mm)を計測した。
飛び
打撃マシン((株)ミヤマエ社製)を用い、ドライバー(W#1)でヘッドスピード40m/sで打撃し、初速度、スピン量、キャリー飛距離、トータル飛距離をそれぞれ測定した。
打感
各ボールについて、アマチュア上級者5名によるドライバー(W#1)及びパター打撃したときの打感を下記基準で評価し、最も多かった評価をボールに対する評価とした
○:軟らかい
△:普通
×:硬い
耐擦過傷性
ボールを23℃に保温し、ピッチングウェッジをスイングロボットマシンに取り付け、ヘッドスピード33m/sにて打撃し、打撃傷を目視で判断した。次の評価基準で評価した。
○:傷がない、もしくは使用上、全く気にならない程度の傷。
×:表面が毛羽立つ、ディンプルが欠ける、などのひどい傷。
【発明の効果】
本発明によれば、従来のゴルフボールに比して非常に優れた飛び性能、高いカバーの耐久性及び耐擦過傷性、軟らかな打感を有するツーピースソリッドゴルフボールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表3におけるディンプル種AまたはCの配設例を説明する概略図である。
【図2】表3におけるディンプル種Bの配設例を説明する概略図である。
Claims (4)
- ソリッドコアとカバーとを具備してなるツーピースソリッドゴルフボールにおいて、上記ソリッドコアが、(A)シス−1,4−結合を60%以上含有し、希土類元素系触媒を用いて合成されたポリブタジエンを60〜100重量%含むゴム基材100重量部に対して、(B)有機過酸化物を0.1〜0.8重量部、(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(D)有機硫黄化合物、(E)無機充填剤を含むゴム組成物から形成され、該ソリッドコアの980N(100kgf)荷重負荷時の変形量が3.0〜5.5mmであり、かつ該ソリッドコアの直径が37〜42mmであると共に、
上記カバーが、(M)末端にアミノ基を有するブロックポリマーと(N)アイオノマー樹脂とを(M)/(N)=3/97〜60/40(重量比)の割合で含む混合物を主成分として形成され、該カバーの厚みが0.5〜2.5mmであり、かつ該カバーのショアD硬度が50〜70であって、
しかも、上記ソリッドコアと上記カバーとを具備してなるツーピースソリッドゴルフボールの980N(100kgf)荷重負荷時の変形量が3.0〜5.0mmであることを特徴とするツーピースソリッドゴルフボール。 - 上記ポリブタジエンが、希土類元素系触媒としてNd系触媒を用いて合成され、引き続き末端変性剤を反応させて得られた変性ポリブタジエンである請求項1記載のツーピースソリッドゴルフボール。
- 上記ゴム組成物が、上記(A)シス−1,4−結合を60%以上含有し、希土類元素系触媒を用いて合成されたポリブタジエンを60〜100重量%含むゴム基材100重量部に対して、上記(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩を10〜60重量部、(D)有機硫黄化合物を0.1〜5重量部、(E)無機充填剤を5〜80重量部含んでなり、しかも2種以上の(B)有機過酸化物を含んでなる請求項1又は2記載のツーピースソリッドゴルフボール。
- 上記カバーが表面に多数のディンプルを具備し、当該カバー表面にディンプルがないと仮定した仮想球の体積に対する各ディンプルの縁部によって囲まれる平面下のディンプル空間体積の総和が占める割合(ディンプル体積占有率)VRが0.70〜1.00%であり、かつ上記仮想球の表面積に対する各ディンプルの縁部によって囲まれる仮想球面の総面積が占める割合(ディンプル表面占有率)SRが70〜85%である請求項1,2又は3記載のツーピースソリッドゴルフボール。
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