JP4062408B2 - 車両のシート装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両のシート装置に関し、特に、シートアレンジを改善したシート装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、全長が比較的短いコンパクトな車両では、車内のシートアレンジの制約を受けがちであるが、その改善要求は強く、より使い勝手のよいシートアレンジが求められている。
【0003】
こうした要請に対して、特開昭和58−15736号公報には、前部フロア上に前席シートを設けると共に、前部フロアよりも一段高くした後部フロア上に後席シートを設け、後席シートクッションをクッション前部とクッション後部とに分割し、クッション前部を、クッション後部の前側に隣接させた使用位置と、この使用位置から前方且つ下方に移動させた退避位置とに亙って位置切換え可能なシート装置が開示されている。
【0004】
このシート装置では、クッション後部はクッション前部と共に座部を構成する後部フロア上の使用位置に保持され、後席シートバックは起立姿勢に固定的に保持されている。クッション前部を使用位置から退避位置に切換えてから、前席シートバックを後方へ倒すと、その前席シートバックの上部が、使用位置のクッション前部が占めていた専有空間に入り込んで、前席シートバックとクッション後部とが略連続するリラックスモードになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭和58−15736号公報のシート装置では、前述のように、前席シートバックとクッション後部とが略連続するリラックスモードにすることができるものの、後席シートバックは起立姿勢に固定的に保持されて前方へ倒れるようになっていないため、荷室を拡大することができず、荷室の拡大要請に応えることはできない。
【0006】
後席シートバックを前方へ倒せたとしても、クッション後部は移動することなく座部を構成する後部フロア上の使用位置に保持されるため、そのクッション後部が邪魔になって、シートバックを後部フロア上において水平姿勢にすることができず、シートバックはクッション後部の上側で倒れることになるため、荷室の拡大要請に十分に応えることは難しい。
【0007】
また、前席シートバックを後方へ倒して、後席シートバックを前方へ倒せたとしても、後席シートバックを水平姿勢にして前席シートと略連続させることが難しく、結局、フルフラットモードにシートアレンジすることも難しい。
本発明の目的は、荷室拡大モードに簡単・確実にシートアレンジできるようにして、荷室の拡大要請に応え、更に、リラックスモード、フルフラットモードに簡単・確実にシートアレンジできるようにして、多彩なシートアレンジを実現可能にして使い勝手のよい車両のシート装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の車両のシート装置は、車両の前部フロアよりも一段高くした後部フロア上にシートクッションとシートバックとを備えたシートを設け、前記シートクッションがクッション前部とクッション後部とに分割された車両のシート装置において、前記クッション前部を、クッション後部の前側に隣接させた使用位置と、この使用位置から前方かつ下方に移動させて前部フロアの上側に退避させた退避位置とに亙って位置切換え可能な第1切換機構と、前記クッション後部を、使用位置にあるクッション前部の後側に隣接させた使用位置と、この使用位置から下方移動させて後部フロアに形成した凹部内に退避させた退避位置とに亙って位置切換え可能な第2切換機構とを備え、前記シートバックの下端部がクッション後部の後端部付近に回動可能に枢支され、第1,第2切換機構を介してクッション前部とクッション後部を夫々退避位置に切換えた状態で、前記シートバックをクッション後部の上側に折り重なるように前伏させた荷室拡大モードをとり得るように構成するとともに、前記シートバックの起立姿勢における上部に、そのシートバックの上部よりも前方突出状にヘッドレストを設け、前記荷室拡大モードにおいて、前伏したシートバックのヘッドレストが前記凹部内に退避したクッション後部に当接しないように構成したものである。
【0009】
ここで、前記前部フロア上に、前席シートクッションと下端部が回動可能に枢支された前席シートバックとを有する前席シートを設け、前記クッション前部を退避位置に切換え且つ前席シートバックを後方へ倒した状態で、その前席シートバックの上部が、使用位置のクッション前部が占めていた専有空間に位置するように構成することが好ましい(請求項2)。
【0010】
この場合、前記クッション前部を退避位置に切換え且つ前席シートバックを後方へ倒した状態で、前席シートバックとクッション後部とが略連続するリラックスモードをとり得るように構成することが好ましく(請求項3)、また、前記クッション前部とクッション後部を夫々退避位置に切換え且つ前記シートバックをクッション後部の上側に折り重ねるように前伏させ且つ前席シートバックを後方へ倒した状態で、前席シートバックとシートバックとが略連続するフルフラットモードをとり得るように構成することが好ましい(請求項4)。また、前記荷室拡大モードと、前記リラックスモードと、前記フルフラットモードの何れか1つのモードを選択可能に構成してもよい(請求項5)。
【0011】
前記リラックスモードをとった場合、前席シートバックの上面とクッション後部の上面とが略同一高さになるようにすることが望ましく(請求項6)、また、フルフラットモードをとる場合は、前席シートの前席シートクッションを前部リラックスモードをとる場合に比べて所定距離前方移動させた状態にすることが望ましく(請求項7)、また、前記フルフラットモードをとった場合、前席シートバックの上面とシートバックの上面とが略同一高さになるようにすることが望ましい(請求項8)。
【0012】
前記第1切換機構は、使用位置のクッション前部を反転させて退避位置に移動させる反転移動機構を備えてもよい(請求項9)。前記第2切換機構は、シートバックの前伏動作に連動して使用位置のクッション後部を退避位置に移動させる連動移動機構を備えてもよい(請求項10)。
【0013】
請求項11の車両のシート装置は、前記クッション後部を、使用位置にあるクッション前部の後側に隣接させた使用位置と、クッション後部の後端部付近を中心として車幅方向向き軸心回りに上方且つ後方へ略90度回動させた退避位置とに亙って位置切換え可能な第3切換機構を備え、前記第1,第3切換機構を介してクッション前部とクッション後部を夫々退避位置に切換えたリアスペース拡大モードをとり得るように構成したものであり、その他の構成は、請求項1の構成と同様である。ここで、前記第1切換機構は、使用位置のクッション前部を反転させて退避位置に移動させる反転移動機構を備えてもよい(請求項12)。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態は、前席シートと後席シートとを設け、後席シートの後側に荷室を設けた自動車に本発明を適用した場合の一例である。
【0015】
図1に示すように、車両のフロア1は、低床の前部フロア2と、前部フロア2よりも一段高くした高床の後部フロア3とを有し、前部フロア2上に前席シート6が設けられ、後部フロア3上に後席シート7が設けられている。前席シート6は左右に2組設けられ、後席シート7は車幅方向に長い所謂ベンチシートである。シート装置5は、これら前席シート6と後席シート7を含むものである。
【0016】
前席シート6は、前席シートクッション10と、前席シートクッション10の後端部に下端部が車幅方向向きの軸心回りに回動可能に枢支された前席シートバック11と、前席シートバック11の上端側に取外し可能に設けられたヘッドレスト12とを備え、前後にスライド可能な一般的な前席シートである。
【0017】
図1〜図4に示すように、後席シート7は、クッション前部21とクッション後部22とに分割されたシートクッション20と、クッション後部22の後端部付近において後部フロア3に下端部が車幅方向向きの軸心回りに回動可能に枢支されたシートバック23と、シートバック23の上端部分に設けられた左右1対のヘッドレスト24と、第1切換機構25と第2切換機構26とを備えている。
【0018】
シートクッション20のフレーム構造については、図5に示すように、クッション前部21のシートパン前部21aと、クッション後部22のシートパン後部22aとが設けられ、シートパン前部21aが第1切換機構25を介して後部フロア3の前端の縦壁4に連結され、シートパン後部22aが第2切換機構26を介してシートバック23の左右1対の板状フレーム23aに連結されている。
【0019】
シートパン後部22aには、門型パイプ状の支持フレーム27の両端部が車幅方向向きの軸心回りに回転自在にピン結合されている。ここで、図1の状態では、クッション前部21とクッション後部22は、前後に隣接して座部を構成する使用位置に夫々位置している。この使用位置のクッション後部22の下側及びその付近の後部フロア3には凹部8が形成されている。この凹部8に支持フレーム27が収容されると共に、その底部には支持フレーム27の後端の水平パイプ部分を後側から受け止める1対のストッパ28が取付けられている。
【0020】
シートバック23のフレーム構造については、左右1対の板状フレーム23aと、これら板状フレーム23aに固定されてシートバック23の本体形状に則した形状で環状のパイプフレーム23bが設けられている。1対の板状フレーム23aの下端部が、使用位置のクッション後部22の後端部付近において、後部フロア3に固定された1対のブラケット29に回動自在に連結されている。パイプフレーム23bには、シートバック23を起立姿勢に保持する姿勢保持機構35の左右1対のラッチ36と、シートバックの強度を確保するためにパイプフレーム23bで囲まれた空間を塞ぐと共に軽量化のために複数の穴を空けた板部材(図示略)と、1対のヘッドレスト24を取付ける為の取付金具(図示略)等が装着されている。
【0021】
図1〜図5に示すように、第1切換機構25は、クッション前部21を、クッション後部22の前側に隣接させた使用位置(図1参照)と、この使用位置から前方かつ下方に移動させて前部フロア2の上側に退避させた退避位置(図2、図3参照)とに亙って位置切換え可能な機構である。
【0022】
第1切換機構25は、使用位置のクッション前部21を車幅方向向き軸心回りに反転させて退避位置に移動させる反転移動機構としての左右1対のヒンジ30を備え、これらヒンジ30を介してクッション前部21が縦壁4に連結されている。図6に示すように、ヒンジ30の一端部分がシートパン前部21aの前端部下面に溶接され、他端部分が縦壁4に取付けたブラケット30aにボルトとナットで固定されている。
【0023】
使用位置のクッション前部21を退避位置に切換えると、クッション前部21(シートパン前部21a)の略フラットな裏面が上面となるが、その上面(裏面)が後部フロア3の前部上面と略同一高さになる。尚、クッション前部21を使用位置と退避位置に保持するために、クッション前部21を所定部位に当接させて移動規制して支持する構造としてある。例えば、クッション前部21は、使用位置のときにその下面が後部フロア3上に当接して使用位置に保持され、退避位置のときはその後面が縦壁4に当接して退避位置に保持される。
【0024】
図1〜図5に示すように、第2切換機構26は、クッション後部22を、使用位置にあるクッション前部21の後側に隣接させた使用位置(図1、図2参照)と、この使用位置から下方移動させて後部フロア3に形成した凹部8内に退避させた退避位置(図3参照)とに亙って位置切換え可能な機構である。
【0025】
第2切換機構26は、シートバック23の前伏動作に連動して使用位置のクッション後部22を退避位置に移動させる連動移動機構としての左右1対のリンク31を備え、これらリンク31を介してクッション後部22がシートバック23の下端部に連結されている。図5に示すように、リンク31はシートパン後部22aに一体的に設けられ、ブラケット29と干渉しない形状に湾曲して、その後端部がブラケット29の上側において板状フレーム23aに車幅方向向きの軸心回りに回動自在に連結されている。
【0026】
ここで、図5、図7に示すように、シートバック23を起立姿勢(図1、図2参照)に保持する起立位置保持機構35は、左右1対のラッチ36と、これらラッチ36が係脱可能な左右1対のストライカ37とを有する。ラッチ36は、シートバック23の内部のパイプフレーム23bに固定され、シートバック23に形成されたスリット38を介して外部に臨んでいる。一方、ストライカ37は、起立姿勢のシートバック23の上端部近傍において、車体側面から車幅方向内方へ突出するように設けられている。
【0027】
ストライカ37の先端部分は前方へ湾曲しており、前側へ倒したシートバック23を起立させることで、シートバック23のスリット38に後方から挿入されてラッチ36に係合可能であり、ストライカ37がラッチ36に係合した状態でシートバック23が起立姿勢に保持される。シートバック23が起立姿勢に保持されると、パイプ状支持フレーム27の後端の水平パイプ部分もストッパに受け止められて、クッション後部22が図1、図2に示す使用位置に保持される。
【0028】
シートバック23の上側へ突出する摘まみ39を操作して、ストライカ37をラッチ36から係合解除して、起立姿勢のシートバック23を前方へ倒すことができる。尚、ストライカ37の先端部分は上下方向へ揺動可能に構成され、そのストライカ37を上側又は下側へ揺動させて鉛直姿勢にして退避させると、シートバック23をストライカ37と干渉させずに後方へ倒すことも可能となる。
【0029】
このシート装置5においては、図1に示す通常モード、図9(a)(b)に示す荷室拡大モード、図10(a)(b)に示すリラックスモード、図11(a)(b)に示すフルフラットモード、の何れかに選択的にシートアレンジすることができる。
【0030】
図9の荷室拡大モードにする場合は、先ず、図8に示すように、第1切換機構25により使用位置のクッション前部21を、反転させながら前方かつ下方に移動さて、前部フロア2の上側の前席シート6と縦壁4との間の退避位置に切換える。すると、使用位置のクッション前部21が占めていた専有空間があき、後部フロア3の前部が露出する。後部フロア3の前部上面と退避位置に切換わったクッション前部21の上面(使用位置での裏面)が略同一高さになる。
【0031】
次に、後席シート7の姿勢保持機構35を解除して、図9に示すように、シートバック23を前伏させると、第2切換機構26により、シートバック23の前伏動作に連動してクッション後部22が下方移動する。シートバック23の上部がクッション前部21の前記専有空間に位置して後部フロア3の前部上面に当接すると、クッション後部22が退避位置に完全に切換わり、そのクッション後部22にシートバック23が折り重なって荷室拡大モードになる。
【0032】
図10のリラックスモードにする場合は、図8に示すように、第1切換機構25により使用位置のクッション前部21を退避位置に切換えた後、図10に示すように、前席シート6のヘッドレスト12を取外してから、前席シートバック11を後方へ倒すと、前席シートバック11の上部がクッション前部21の前記専有空間に位置して後部フロア3の前部上面に当接して、前席シートバック11とクッション後部22とが略連続するリラックスモードになる。
【0033】
図11のフルフラットモードにする場合は、先ず、図8に示すように、第1切換機構25により使用位置のクッション前部21を退避位置に切換えた後、図9に示すように、シートバック23を前伏させ、第2切換機構26により使用位置のクッション後部22を退避位置に切換える。
【0034】
また、図11に示すように、前席シート6の前席シートクッション10をリラックスモードをとる場合に比べて所定距離前方へスライド移動させた状態で、前席シートバック11を後方へ倒すと、前席シートバック11の上端部分がクッション前部21の前記専有空間に位置して後部フロア3の前端部上面に当接して、前席シートバック11と後席シート7のシートバック23とが略連続するフルフラットモードになる。
【0035】
以上のように、このシート装置5によれば、前部フロア2よりも一段高くした後部フロア3上に設けた後席シート7のシートクッション20を、クッション前部21とクッション後部22とに分割し、第1切換機構25により、クッション前部21を使用位置から前方かつ下方に移動させて前部フロア2の上側に退避させた退避位置に切換えると共に、第2切換機構26により、クッション後部22を、使用位置から下方移動させて後部フロア3に形成した凹部8内に退避させた退避位置に切換えることができる。
【0036】
これにより、後席シート7のシートバック23の下端部がクッション後部22の後端部付近に回動可能に枢支された構造で、シートバック23の起立姿勢における上部に、そのシートバック23の上部よりも前方突出状にヘッドレスト24を設け、シートバック23をクッション後部22の上側に折り重なるように前伏させ、シートクッション20(クッション前部21とクッション後部22)と干渉させることなく後部フロア上において水平姿勢にして、荷室拡大モードにすることができる。
【0037】
このように荷室拡大モードに簡単・確実にシートアレンジすることができ、この荷室拡大モードにおいて、前伏したシートバック23のヘッドレスト24が凹部8内に退避したクッション後部22に当接しないように構成し、シートバック23を後部フロア3上においてクッション後部22が使用位置で占めていた空間を利用して水平姿勢にすることができるから、荷室の拡大要請に十分に応えることができ、シートバック23の上面(起立姿勢での後面)を荷室のフラットな床面とし、通常の荷室床面と略同一高さにして略連続させることができるから、荷室の使い勝手も非常によくなる。
【0038】
クッション前部21を退避位置に切換え、且つ、前席シート6の前席シートバック11を後方へ倒した状態で、その前席シートバック11の上部が、使用位置のクッション前部21が占めていた専有空間に位置するように構成したので、前席シートバック11を後方へ倒して、その上部をクッション前部21に干渉させることなく後部フロアに当接させて、前席シートバック11を水平姿勢に切換えることができる。
【0039】
そして、クッション前部21を退避位置に切換え且つ前席シートバック11を後方へ倒した状態で、前席シートバック11とクッション後部21とが略連続するリラックスモードをとり得るように構成した。つまり、リラックスモードに簡単・確実にシートアレンジできるようになる。
【0040】
このリラックスモードでは、前席シート6と後席シート7とで、所謂ロングソファー化を図ることができ、乗員は、足を前方へ延ばした状態で、後席シート7のシートバック24にもたれるように着座し、リラックスすることができる。そして、前席シートバック11とクッション後部22が略連続し、これらの上面が略同一高さになるため、前席シートバック11とクッション後部22とに亙って着座する乗員の乗り心地(座り心地)も良いものとなる。
【0041】
また、クッション前部21とクッション後部22を夫々退避位置に切換え且つシートバック23をクッション後部22の上側に折り重ねるように前伏させ前席シートバック11を後方へ倒した状態で、前席シートバック11とシートバック23とが略連続するフルフラットモードをとり得るように構成した。つまり、フルフラットモードに簡単・確実にシートアレンジできるようになる。
【0042】
このフルフラットモードでは、乗員のベッド等として使用可能になる。前席シートバック11とシートバック23とが略連続し、これら上面が略同一高さになるため、前席シートバック11とシートバック23とに亙って着座又は横になる乗員の乗り心地を良くすることができる。
【0043】
このように、通常のモードを含めて、荷室拡大モード、リラックスモード、フルフラットモードの何れか1つのモードを容易に選択可能になり、多彩なシートアレンジを実現可能にして使い勝手のよいものになる。
【0044】
第1切換機構25は、使用位置のクッション前部21を反転させて退避位置に移動させる反転移動機構としてのヒンジ30を備えたので、クッション前部21を使用位置と退避位置とに亙って簡単に切換えることができ、荷室拡大モード、リラックスモード、フルフラットモードの各モード設定が容易になる。
【0045】
第2切換機構26は、シートバック23の前伏動作に連動して使用位置のクッション後部22を退避位置に移動させる連動移動機構としてのリンク31を備えたので、シートバック23を前伏させた場合に、その前伏動作に連動して同時に、使用位置のクッション後部22を退避位置に移動させて切換えることができる。これらシートバック23とクッション後部22の位置切換えを簡単に行うことができ、荷室拡大モード、フルフラットモードの各モード設定が容易になる。
【0046】
次に、変更形態について説明する。
変更形態のシート装置5Aは、前記シート装置5において、クッション後部22を、使用位置にあるクッション前部21の後側に隣接させた使用位置と、クッション後部22の後端部付近を中心として左右方向(車幅方向)向き軸心回りに上方且つ後方へ略90度回動させた第2の退避位置とに亙って位置切換え可能な第3切換機構40を備えたものである。
【0047】
前記実施形態では、リンク31とシートパン後部22aは一体的に構成されていたが、図12に示すように、このシート装置5Aでは、リンク31の前端部がシートパン後部22aに回動可能に連結され、これにより第3切換え機構40が構成されている。
【0048】
このシート装置5Aでは、前記荷室拡大モード、リラックスモード、フルフラットモードだけでなく、図13に示すように、第1,第3切換機構を介してクッション前部21とクッション後部22を夫々退避位置と第2の退避位置に切換えたリアスペース拡大モードにシートアレンジすることができる。但し、第2切換機構26を省略してもよく、この場合、荷室拡大モードとフルフラットモードにはシートアレンジできないが、リラックスモードとリアスペース拡大モードにはシートアレンジすることが可能となる。
【0049】
尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を付加して実施することが可能である。全長が比較的短いコンパクトな自動車に限らず、前席シートと後席シートを備えた種々の自動車、或いは自動車以外の車両、例えば、後席シートとして独立の左右2組の後席シートを設けた車両に本発明を適用可能である。
【0050】
【発明の効果】
請求項1のシート装置よれば、車両の前部フロアよりも一段高くした後部フロア上に設けたシートのシートクッションを、クッション前部とクッション後部とに分割し、第1切換機構により、クッション前部をクッション後部の前側に隣接させた使用位置から前方かつ下方に移動させて前部フロアの上側に退避させた退避位置に切換えると共に、第2切換機構により、クッション後部を、使用位置のクッション前部に隣接させた使用位置から下方移動させて後部フロアに形成した凹部内に退避させた退避位置に切換えることができる。
【0051】
これにより、シートバックの下端部がクッション後部の後端部付近に回動可能に枢支された構造で、シートバックの起立姿勢における上部に、そのシートバックの上部よりも前方突出状にヘッドレストを設け、シートバックをクッション後部の上側に折り重なるように前伏させ、シートクッション(クッション前部とクッション後部)と干渉させることなく後部フロア上において水平姿勢にして、荷室拡大モードにすることができる。このように荷室拡大モードに簡単・確実にシートアレンジすることができ、この荷室拡大モードにおいて、前伏したシートバックのヘッドレストが前記凹部内に退避したクッション後部に当接しないように構成し、シートバックを後部フロア上においてクッション後部が使用位置で占めていた空間を利用して水平姿勢にすることができるから、荷室の拡大要請に十分に応えることができ、シートバックの上面(起立姿勢での後面)を荷室のフラットな床面とし、通常の荷室床面と略同一高さにして略連続させることができるから、荷室の使い勝手も非常によくなる。
【0052】
請求項2の車両のシート装置によれば、クッション前部を退避位置に切換え、且つ、前部フロア上に設けた前席シートの前席シートバックを後方へ倒した状態で、その前席シートバックの上部が、使用位置のクッション前部が占めていた専有空間に位置するように構成したので、前席シートバックを後方へ倒して、その上部をクッション前部に干渉させることなく後部フロアに当接させて、前席シートバックを水平姿勢に切換えることができる。
【0053】
請求項3の車両のシート装置によれば、クッション前部を退避位置に切換え且つ前席シートバックを後方へ倒した状態で、前席シートバックとクッション後部とが略連続するリラックスモードをとり得るように構成したので、リラックスモードに簡単・確実にシートアレンジできるようになり、荷室拡大モードとリラックスモードを含む多彩なシートアレンジの実現が可能になる。
【0054】
請求項4の車両のシート装置によれば、クッション前部とクッション後部を夫々退避位置に切換え且つシートバックをクッション後部の上側に折り重ねるように前伏させ前席シートバックを後方へ倒した状態で、前席シートバックとシートバックとが略連続するフルフラットモードをとり得るように構成したので、フルフラットモードに簡単・確実にシートアレンジできるようになり、荷室拡大モードとフルフラットモードを含む多彩なシートアレンジの実現が可能になる。
【0055】
請求項5の車両のシート装置によれば、前記荷室拡大モードと、前記リラックスモードと、前記フルフラットモードの何れか1つのモードを選択可能に構成したので、これら3つのモードから要望に応じたモードにすることができる。
【0056】
請求項6の車両のシート装置によれば、リラックスモードをとった場合、前席シートバックの上面とクッション後部の上面とが略同一高さになるため、この前席シートバックとクッション後部とに亙って着座する乗員の乗り心地(座り心地)を良くすることができる。
【0057】
請求項7の車両のシート装置によれば、フルフラットモードをとる場合は、前記リラックスモードをとる場合に比べて前席シートの前席シートクッションを所定距離前方移動させた状態にしたので、クッション後部に比べて長さの長いシートバックを前伏させた場合でも、前席シートバックを後方に倒し、その上部を使用位置のクッション前部が占めていた専有空間に確実に位置させて、前席シートバックとシートバックとを略連続させることが可能になる。
【0058】
請求項8の車両のシート装置によれば、フルフラットモードをとった場合、前席シートバックの上面とシートバックの上面とが略同一高さになるようにしたので、前席シートバックとシートバックとに亙って着座又は横になる乗員の乗り心地を良くすることができる。
【0059】
請求項9の車両のシート装置によれば、第1切換機構は、使用位置のクッション前部を反転させて退避位置に移動させる反転移動機構を備えたので、クッション前部を使用位置と退避位置とに亙って簡単に切換えることができる。
【0060】
請求項10の車両のシート装置によれば、第2切換機構は、シートバックの前伏動作に連動して使用位置のクッション後部を退避位置に移動させる連動移動機構を備えたので、シートバックとクッション後部の位置切換えを別々に行うことなく、同時に簡単に行うことができる。
【0061】
請求項11の車両のシート装置によれば、第3切換機構により、クッション後部を、使用位置にあるクッション前部の後側に隣接させた使用位置と、クッション後部の後端部付近を中心として車幅方向向き軸心回りに上方且つ後方へ略90度回動させた退避位置とに切換えることができ、第1,第3切換機構を介してクッション前部とクッション後部を夫々退避位置と第2の退避位置に切換えたリアスペース拡大モードに簡単・確実にシートアレンジできるようになる。その他、請求項1と同様の効果を奏する。
【0062】
請求項12の車両のシート装置によれば、第1切換機構は、使用位置のクッション前部を反転させて退避位置に移動させる反転移動機構を備えたので、クッション前部を使用位置と退避位置とに亙って簡単に切換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るシート装置の側面図である。
【図2】クッション前部を退避位置に切換えたシート装置の側面図である。
【図3】クッション前部とクッション後部を夫々退避位置に切換えたシート装置の側面図である。
【図4】後席シートの斜視図である。
【図5】後席シートのフレーム構造を示す斜視図である。
【図6】クッション前部の要部と第2切換え機構の縦面図である。
【図7】姿勢保持機構の後方上側からの斜視図である。
【図8】クッション前部を退避位置に切換えたシート装置の(a)は側面図(b)は斜視図である。
【図9】荷室拡大モードにシートアレンジしたシート装置の(a)は側面図(b)は斜視図である。
【図10】リラックスモードにシートアレンジしたシート装置の(a)は側面図(b)は斜視図である。
【図11】フルフラットモードにシートアレンジしたシート装置の(a)は側面図(b)は斜視図である。
【図12】変更形態に係る後席シートのフレーム構造を示す斜視図である。
【図13】リアスペース拡大モードにシートアレンジしたシート装置の(a)は側面図(b)は斜視図である。
【符号の説明】
2 前部フロア
3 後部フロア
5,5A シート装置
6 前席シート
7 後席シート
8 凹部
10 前席シートクッション
11 前席シートバック
20 シートクッション
21 クッション前部
22 クッション後部
23 シートバック
25 第1切換機構
26 第2切換機構
30 ヒンジ
31 リンク
40 第3切換機構

Claims (12)

  1. 車両の前部フロアよりも一段高くした後部フロア上にシートクッションとシートバックとを備えたシートを設け、前記シートクッションがクッション前部とクッション後部とに分割された車両のシート装置において、
    前記クッション前部を、クッション後部の前側に隣接させた使用位置と、この使用位置から前方かつ下方に移動させて前部フロアの上側に退避させた退避位置とに亙って位置切換え可能な第1切換機構と、
    前記クッション後部を、使用位置にあるクッション前部の後側に隣接させた使用位置と、この使用位置から下方移動させて後部フロアに形成した凹部内に退避させた退避位置とに亙って位置切換え可能な第2切換機構とを備え、
    前記シートバックの下端部がクッション後部の後端部付近に回動可能に枢支され、第1,第2切換機構を介してクッション前部とクッション後部を夫々退避位置に切換えた状態で、前記シートバックをクッション後部の上側に折り重なるように前伏させた荷室拡大モードをとり得るように構成するとともに、
    前記シートバックの起立姿勢における上部に、そのシートバックの上部よりも前方突出状にヘッドレストを設け、前記荷室拡大モードにおいて、前伏したシートバックのヘッドレストが前記凹部内に退避したクッション後部に当接しないように構成したことを特徴とする車両のシート装置。
  2. 前記前部フロア上に、前席シートクッションと下端部が回動可能に枢支された前席シートバックとを有する前席シートを設け、
    前記クッション前部を退避位置に切換え且つ前席シートバックを後方へ倒した状態で、その前席シートバックの上部が、使用位置のクッション前部が占めていた専有空間に位置するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両のシート装置。
  3. 前記クッション前部を退避位置に切換え且つ前席シートバックを後方へ倒した状態で、前席シートバックとクッション後部とが略連続するリラックスモードをとり得るように構成したことを特徴とする請求項2に記載の車両のシート装置。
  4. 前記クッション前部とクッション後部を夫々退避位置に切換え且つ前記シートバックをクッション後部の上側に折り重ねるように前伏させ且つ前席シートバックを後方へ倒した状態で、前席シートバックとシートバックとが略連続するフルフラットモードをとり得るように構成したことを特徴とする請求項2に記載の車両のシート装置。
  5. 前記荷室拡大モードと、前記クッション前部を退避位置に切換え且つ前席シートバックを後方へ倒した状態で、前席シートバックとクッション後部とが略連続するリラックスモードと、前記クッション前部とクッション後部を夫々退避位置に切換え且つ前記シートバックをクッション後部の上側に折り重ねるように前伏させ且つ前席シートバックを後方へ倒した状態で、前席シートバックとシートバックとが略連続するフルフラットモードの何れか1つのモードを選択可能に構成したことを特徴とする請求項2に記載の車両のシート装置。
  6. 前記リラックスモードをとった場合、前席シートバックの上面とクッション後部の上面とが略同一高さになることを特徴とする請求項3又は5に記載の車両のシート装置。
  7. 前記フルフラットモードをとる場合は、前部リラックスモードをとる場合に比べて前席シートの前席シートクッションを所定距離前方移動させた状態にすることを特徴とする請求項5に記載の車両のシート装置。
  8. 前記フルフラットモードをとった場合、前席シートバックの上面とシートバックの上面とが略同一高さになることを特徴とする請求項4,5,7の何れかに記載の車両のシート装置。
  9. 前記第1切換機構は、使用位置のクッション前部を反転させて退避位置に移動させる反転移動機構を備えたことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の車両のシート装置。
  10. 前記第2切換機構は、シートバックの前伏動作に連動して使用位置のクッション後部を退避位置に移動させる連動移動機構を備えたことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の車両のシート装置。
  11. 車両の前部フロアよりも一段高くした後部フロア上にシートクッションとシートバックとを備えたシートを設け、前記シートクッションがクッション前部とクッション後部とに分割された車両のシート装置において、
    前記クッション前部を、クッション後部の前側に隣接させた使用位置と、この使用位置から前方且つ下方に移動させて前部フロアの上側に退避させた退避位置とに亙って位置切換え可能な第1切換機構と、
    前記クッション後部を、使用位置にあるクッション前部の後側に隣接させた使用位置と、この使用位置から下方移動させて後部フロアに形成した凹部内に退避させた退避位置とに亙って位置切換え可能な第2切換機構と、
    前記クッション後部を、使用位置にあるクッション前部の後側に隣接させた使用位置と、クッション後部の後端部付近を中心として車幅方向向き軸心回りに上方且つ後方へ略90度回動させた第2の退避位置とに亙って位置切換え可能な第3切換機構とを備え、
    前記シートバックの下端部がクッション後部の後端部付近に回動可能に枢支され、第1,第2切換機構を介してクッション前部とクッション後部を夫々退避位置に切換えた状態で、前記シートバックをクッション後部の上側に折り重なるように前伏させた荷室拡大モードをとり得るように構成するとともに、
    前記シートバックの起立姿勢における上部に、そのシートバックの上部よりも前方突出状にヘッドレストを設け、前記荷室拡大モードにおいて、前伏したシートバックのヘッドレストが前記凹部内に退避したクッション後部に当接しないように構成し、
    前記シートバックが起立姿勢の状態で、前記第1,第3切換機構を介してクッション前部とクッション後部を夫々退避位置と第2の退避位置に切換えたリアスペース拡大モードをとり得るように構成したことを特徴とする車両のシート装置。
  12. 前記第1切換機構は、使用位置のクッション前部を反転させて退避位置に移動させる反転移動機構を備えたことを特徴とする請求項11に記載の車両のシート装置。
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