JP4061802B2 - 蒸着槽 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、槽内に収納した電子部品等の被コーティング物に、原料物質を真空中で加熱蒸発させて蒸着し、重合させて有機被膜を形成する装置の蒸着槽に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置等の電子部品にあっては、絶縁性、耐熱性を良好とするため、ポリイミドの被膜等の有機被膜を形成したものが採用されている(例えば、特開平8−13136号公報等)。上記ポリイミドの被膜の形成方法は、図4に示すような装置を用い、2種類の原料物質11,12としてテトラカルボン酸二無水物及びジアミンをそれぞれ加熱蒸発させて電子部品等の被コーティング物1に真空中で蒸着し、重合させる。上記装置は、被コーティング物1を収容した網状の回転バレル2を、筒状の槽である蒸着槽20内に収納し、この蒸着槽20内を真空ポンプ15を稼動させて、所定の真空度にした後に、蒸発管4に投入された原料物質11,12をヒータで加熱し、導入管5を介して原料物質11,12の原料蒸気を蒸着槽20内に導入することができるものである。上記装置は、モータ16によって軸回転する回転バレル2内の被コーティング物1の表面に、上記原料蒸気を蒸着し、重合することでポリアミド酸被膜を形成するものである。その後、ポリアミド酸被膜を形成した被コーティング物1は、この装置から取出され、さらに、ポリアミド酸被膜を加熱処理することにより、上記被コーティング物の表面に、ポリイミドの有機被膜が形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記蒸着槽は、温度の均一性を確保するため、アルミニウム等の熱伝導性の良好な材料で形成されている。上記被コーティング物にポリアミド酸被膜を形成する真空蒸着は、200℃程度に加熱された状態で行われる。上記蒸着槽は、この真空蒸着が繰り返し行われると、槽内に析出した有機被膜が槽の内壁に付着する。そのため、上記蒸着槽は、槽内の温度分布が不均一となる恐れがあるので、付着した有機被膜を剥離することが必要である。しかし、この付着した有機被膜は蒸着と共に重合しているため、強固に密着しているので、この有機被膜を剥離するには刃物等で削りとらざるをえない。刃物等で削りとる剥離方法は、蒸着槽を傷付ける恐れがあり、これに注意をしながら行う有機被膜の除去作業は、多大の時間を要するものである。
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、槽内に収納した被コーティング物に、原料物質を真空中で加熱蒸発させて蒸着し、重合させて有機被膜を形成する装置であって、この真空蒸着で槽内に析出する有機被膜の除去が容易にできる蒸着槽を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の蒸着槽は、槽内に収納した被コーティング物に、原料物質を真空中で加熱蒸発させて蒸着し、重合させて有機被膜を形成する装置の蒸着槽において、上記蒸着槽は、内壁面をアルミニウムよりなる均熱層として形成した蒸着槽本体を外側に、該蒸着槽本体の内側に接するアルミニウムより硬質の材料からなる硬質層である防着板を蒸着槽本体に脱着自在に設けて構成するとともに、上記アルミニウムより硬質の材料をステンレスとしたことを特徴とする。上記によって、槽内に析出した有機被膜が付着する内側の壁面を、ステンレス等の硬質材料で形成しているので、この付着した有機被膜を、刃物等で削りとる際に傷付き難く、付着した有機被膜の除去作業が容易にできるものである。
【0006】
また、アルミニウムは熱伝導性の良好な材料であるため、上記均熱層を設けていると、加熱層から伝わる熱を槽の全体に均一に硬質層に伝えることができるので、付着した有機被膜の除去作業を容易にすると共に、槽内の温度の均一性をより良好にすることができるものである。
【0007】
また槽の内側に、脱着自在な、アルミニウムより硬質の材料からなる防着板を備えることを特徴とする。上記によって、内側の壁面を、ステンレス等の硬質材料で形成した防着板で覆うので、槽内に析出した有機被膜はこの防着板に付着させることができるものである。したがって、上記蒸着槽は、有機被膜が防着板に付着したところで、この防着板を交換すれば、この槽内に析出した有機被膜の除去を行うことができるものである。
【0008】
【0009】
請求項2記載の蒸着槽は、請求項1に記載の蒸着槽において、上記蒸着槽本体に、この槽の側面または前後面の全体を加熱するヒータを備えていることを特徴とする。上記によって、蒸着槽の温度の均一性を確保することができるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の対象となる蒸着槽を備える装置の一例を示す説明図である。上記蒸着槽3は、形状が円筒をしており、この蒸着槽3の槽内で、収納した被コーティング物1の表面に有機被膜を形成するため、真空蒸着がなされるものである。上記装置は、原料物質11,12としてテトラカルボン酸二無水物である粉末状の無水ピロメリット酸及びジアミンである粉末状のジアミノジフェニルエーテルをそれぞれ加熱蒸発させて、被コーティング物1に真空中で蒸着し、重合し、有機被膜であるポリイミドの被膜を形成するものである。上記装置は、蒸発管4に投入された原料物質11,12をヒータ6で加熱し、導入管5を介して原料物質11,12の原料蒸気を蒸着槽3内に導入している。上記導入管5は、上記蒸着槽3内に、複数個の導入口5aが管の長手方向にそれぞれ列設され、この導入口5aから原料蒸気を蒸着槽3内に導入している。上記装置は、被コーティング物1を収容した網状の回転バレル2を、蒸着槽3内に収納し、この回転バレル2は、モータ16によって軸回転する。上記装置は、蒸着槽3内を真空ポンプ15を稼動させて、所定の真空度にした後に、蒸発管4に投入された原料物質11,12をヒータで加熱し、導入管5を介して原料物質11,12の原料蒸気を蒸着槽3内に導入し、回転バレル2内の被コーティング物1の表面に、ポリアミド酸被膜を形成するものである。なお、ポリアミド酸被膜を形成した被コーティング物1は、この装置から取出された後に、さらに、ポリアミド酸被膜を加熱処理することにより、ポリイミドの有機被膜が形成されるものである。
【0011】
なお、本発明の蒸着槽を用いて形成さする有機被膜は、上記ポリイミドの被膜以外にも、例えば、ポリパラキシレン、ポリ尿素等の被膜を例示することができる。
【0012】
次に、本発明の蒸着槽について、説明する。上記蒸着槽3は、槽の内側が、アルミニウムより硬質の材料で形成されているものである。上記アルミニウムより硬質の材料としては、ステンレス等が挙げられる。上記蒸着槽3は、槽内に析出した有機被膜が付着する内側の壁面9を、ステンレス等の硬質材料で形成しているので、この付着した有機被膜を、刃物等で削りとっても傷付き難く、付着した有機被膜の除去作業が容易にできるものである。因みに、付着した有機被膜の除去作業は、従来のアルミニウムからなる槽の場合に4時間/人費やす作業が、上記ステンレスからなる槽の場合に1時間/人と、大幅に短縮することができる。また、蒸着槽が傷付きため毎年必要であった修理等もなくすことができる。
【0013】
また、ステンレス等の材料は、従来汎用されているアルミニウムに比較し、熱伝導性が低い材料であるので、蒸着槽3の温度の均一性を確保するため、上記蒸着槽3は、槽の側面7または前後面8の全体を加熱するヒータを備えていることが好ましい。槽の側面7全体を加熱するものとしてはマントルヒータが挙げられ、槽の前後面8の全体を加熱するものとしては面ヒータが挙げられる。
【0014】
上記蒸着槽の層構成としては、例えば、図2(b)に示すような、槽の壁構成が、内側がステンレス等の硬質の材料からなる硬質層9aと、この硬質層9aに外接して槽を加熱するヒータ等の加熱層14を有するものは除かれる。
【0015】
また、蒸着槽の壁構成としては、図2(a)に示すように、蒸着槽3の壁構成は、槽の内側がステンレス等の硬質の材料からなる硬質層9aと、この硬質層9aの外側にアルミニウムよりなる槽の温度を均一にする均熱層10と、この均熱層10の外側に槽を加熱するヒータ等の加熱層14を有するものが挙げられる。上記アルミニウムは熱伝導性の良好な材料であるため、上記均熱層10を設けていると、加熱層14から伝わる熱を槽の全体に均一に硬質層9aに伝えることができる。したがって、上記蒸着槽3は、付着した有機被膜の除去作業を容易にすると共に、槽内の温度の均一性をより良好にすることができる。
【0016】
次に、蒸着槽の構成について、説明する。図3に蒸着槽を摸式的に示した説明図を示す。上記蒸着槽3は、アルミニウム等で形成される槽本体3aの内側に接して、脱着自在な、アルミニウムより硬質の材料からなる防着板16a,16bを備えるものである。上記アルミニウムより硬質の材料としては、ステンレス等が挙げられる。上記蒸着槽3は、蒸着槽本体の内側の壁面を、ステンレス等の硬質材料で形成した防着板16a,16bで覆うので、槽内に析出した有機被膜はこの防着板16a,16bに付着することができる。したがって、槽内に析出する有機被膜の除去は、槽内に析出した有機被膜が防着板16a,16bに付着したところで、この防着板16a,16bを交換すればよく、上記蒸着槽3は、除去作業が容易である。また、防着板16a,16bに付着した有機被膜の除去は、装置の外ですればよく、この防着板16a,16bがステンレス等の硬質材料であるため、防着板16a,16bは付着物を刃物等で削りとっても傷付き難く、有機被膜の除去作業が容易にできるものである。
【0017】
【発明の効果】
請求項1記載の蒸着槽は、槽内に析出した有機被膜が付着する内側の壁面を、ステンレス等の硬質材料で形成しているので、付着した有機被膜を、刃物等で削りとる際に傷付き難く、付着した有機被膜の除去作業が容易にできる。
【0018】
さらに、アルミニウムは熱伝導性の良好な材料であるため、加熱層から伝わる熱を槽の全体に均一に硬質層に伝えることができるので、付着した有機被膜の除去作業を容易にすると共に、槽内の温度の均一性をより良好にすることができる。
【0019】
さらに内側の壁面を、ステンレス等の硬質材料で形成した防着板で覆うので、槽内に析出した有機被膜はこの防着板に付着させることができるので、有機被膜が防着板に付着したところで、この防着板を交換すれば槽内に析出した有機被膜の除去を行うことができる。
【0020】
さらにアルミニウムより硬質の材料としてステンレスが適しているので、真空蒸着で槽内に析出する有機被膜の除去が容易にできる。
【0021】
さらに、請求項2記載の蒸着槽は、特に、蒸着槽の温度の均一性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の対象となる蒸着槽を備える装置の一例を示す説明図である。
【図2】 (a)(b)は、蒸着槽の壁面を示す断面図である。
【図3】 本発明の蒸着槽を摸式的に示した説明図である。
【図4】 従来の蒸着槽を備える装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 被コーティング物
2 回転バレル
3 蒸着槽
4 蒸発管
5 導入管
9a 硬質層
10 均熱層
11,12 原料物質
16a,16b 防着板
Claims (2)
- 槽内に収納した被コーティング物に、原料物質を真空中で加熱蒸発させて蒸着し、重合させて有機被膜を形成する装置の蒸着槽において、
上記蒸着槽は、内壁面をアルミニウムよりなる均熱層として形成した蒸着槽本体を外側に、該蒸着槽本体の内側に接するアルミニウムより硬質の材料からなる硬質層である防着板を蒸着槽本体に脱着自在に設けて構成するとともに、上記アルミニウムより硬質の材料をステンレスとしたことを特徴とする蒸着槽。 - 上記蒸着槽本体に、この槽の側面または前後面の全体を加熱するヒータを備えていることを特徴とする請求項1記載の蒸着槽。
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