JP4060248B2 - 地中構造体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は地中に積み重ね状態で構築された下部構造体と上部構造体間を柔構造化している地中構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地中構造体は、地震発生時には地盤と一体的に変動、変形しようとするが、下部構造体と上部構造体とが剛直に一体化している地中構造体において、下部構造体が支持地盤上に支持されていると、上部構造体の方が地震により大きく変動しようとして水平方向の剪断応力が増大し、破壊する虞れが生じることになる。特に、地中構造体が図9に示すようにマンホール等の立坑Aであって、その上下部に排水管等の上部管路B1、B2と下部管路C1、C2をそれぞれ接続している地中構造体においては、立坑Aに管路B1、B2・C1、C2が接続されている部分は、一般的に立坑Aに比べて管路B1、B2・C1、C2の方が大きな変形が生じるため、これらの接続部に変形が集中して該接続部が破壊する要因となる。
【0003】
このため、立坑を複数分割された環状コンクリートブロックの積み重ねによって築造し、上下に隣接する環状コンクリートブロックの接合部に一定厚みを有するゴム材からなる断面H字形状の免震部材を配してその中央部の水平環状部分を上下環状コンクリートブロックの対向面間に介在させると共に、この水平環状部材の内外周面に一体に設けている内外垂直環状部材を上下環状コンクリートブロックの内外周面間に亘ってそれぞれ密着させたマンホール等の免震構造が開発され、この免震部材によって上下環状コンクリートブロック同士が剪断方向にずれるのを抑制すると共に、接合部の水密性を維持している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−317396号公報(第2〜3頁、第4図)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような免震構造によれば、免震部材全体がゴム材から形成されていてその上下面を上下環状コンクリートブロックの対向する接合面全面に圧着させているために、剪断方向に対する抵抗力が極めて大きくなって、上下環状コンクリートブロック自体が地盤の変位に対して抵抗し、破損が生じる虞れがある。特に、これらの上下環状コンクリートブロックがマンホールである場合には、それぞれの両側壁面に連結、連通している排水管がコンクリートブロックよりも剛性が低いために、より破損し易くなるという問題点がある。
【0006】
さらに、最下部の環状コンクリートブロックは、その底板部を支持地盤上に一体に設置した構造となっているため、支持地盤の地震動がコンクリートブロックに直接伝達して該コンクリートブロックを囲繞している地盤層との間の震動の位相差により、上下各コンクリートブロックの周壁面に地盤からの剪断力が作用して破損する虞れがある。
【0007】
また、長期の使用中に上記ゴム材からなる免震部材が劣化したり、一部が破損した場合には、コンクリートブロック内から下水等が地盤中に漏出し、地盤沈下が生じて大きな事故が発生する原因となるといった問題点があった。
【0008】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、地震時に地盤の変動を効果的に吸収して該地盤の変位に同調した変位を可能にし、特別な耐震壁を構成することなく簡素な構造で安価に耐震対策が行えると共に下水等が地盤中に漏出するのを防止することができる地中構造体を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の地中構造体は、請求1に記載したように、下部構造体と上部構造体とからなる地中構造体であって、これらの上下構造体の接合面に周方向に一定間隔毎に滑り支承を介在させ、この滑り支承を介して上下構造体を互いに水平方向に摺動自在に構成した構造としている。
【0010】
その上、このように構成した地中構造体において、上記上下構造体の接合部の外周面を可撓性を有する止水体によって全面的に囲繞していると共に、この止水体として、上下構造体の接合部である上下対向端部の外周面間を全周に亘って被着して滑り支承の厚みに相当する上下構造体の上下対向端面間の隙間を全面的に閉止している帯状のゴム板と、このゴム板の外周方の地盤中に設けられて該ゴム板を全面的に被覆しているアスファルト乳剤とセメントと高吸収性ポリマーとの混合材からなる所定厚みの可撓性を有する難透水性外周止水層とから構成していることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項に係る発明は、支持地盤と下部構造体との間に平滑面を有するシート部材が介在されていてこのシート部材上に下部構造体の外底面を摺動自在に設置していると共に、下部構造体の下端部周囲には、難透水性外周止水層と同一材料よりなる一定高さと一定厚みの緩衝材が全周に亘って設けられてあり、この緩衝材の下端面を上記シート部材上に固着していることを特徴とする
【0012】
また、上記請求項1に記載した地中構造体において、請求項に係る発明は、上記上部構造体と下部構造体との前後壁部にはそれぞれ開口端を対向させて前後排水管が接続されていると共に、下部構造体はその上端が開口されていて該開口上端面上に上部構造体の外底面を滑り支承を介して支持してあり、さらに、上部構造体の底部における一部に下部構造体内に連通する排水口を設けていることを特徴とする。
【0013】
【作用】
下部構造体が支持地盤上に設置され且つ上部構造体が比較的軟質な地盤中に埋設された状態にあっては、地震時に、上部構造体が下部構造体よりも大きく変動しようとしてこれらの上下構造体間の接合部に大きな剪断力が作用することになるが、下部構造体の上端面と上部構造体の下端面との間、即ち、上下構造体間の接合面に、周方向に一定間隔毎に滑り支承を介在させているので、これらの滑り支承が滑り変形して地震動を吸収し、上部構造体が下部構造体に対して地盤の変動に応じて変位して上部構造体に作用する土圧力を著しく減少させ、地震による構造体の破壊を防止する。
【0014】
また、地中構造体を構成している上下構造体の接合部における外周面に、全周に亘って帯状のゴム板を装着すると共に、このゴム板の外周方の地盤中に該ゴム板を全面的に被覆している所定厚みの可撓性を有する難透水性外周止水層を設けておくことによって、上記ゴム板により地中構造物内から下水等が地盤内に漏出するのを防止することができ、その上、このゴム板が劣化や地震動等により破損した場合には、難透水性外周止水層によって止水性を確保することができ、従って、二重の止水機能を奏して長期に亘り安定した止水性が得られる。
【0015】
さらに、上記地中構造体における下部構造体を支持地盤上に平滑なシート部材を介して水平方向に摺動自在に設置しておくことによって、この下部構造体も地盤に対して縁切りされた構造となって周囲の地盤と一体的に変動し、下部構造体自体の破壊も防止することができる。なお、下部構造体の下端部周囲に、緩衝材を全周に亘って設けておけば、支持地盤に対するこの下部構造体の摺動代を確保することができる。
【0016】
また、上記地中構造体は、上下構造体にそれぞれ水平方向に前後排水管を接続してなるマンホールである場合には、通常、上下構造体よりも排水管の剛性が低いので、これらの構造体における前後壁面を貫通して構造体内にその開口端を臨ませている上記前後排水管において、地震の発生時には一方の排水管の接続部側に圧縮応力が集中すると他方の排水管の接続部側に引張応力が集中してこれらの排水管の接続部の破壊要因となるが、上記のように上下構造体の接合面間に多数の滑り支承を介在させているので、これらの滑り支承によって地震動による構造体の変形が地盤の変形に近づき、排水管の接続部の変形が緩和されて破壊するのを防止することができる。
【0017】
さらにまた、上記下部構造体の上端が開口されていてその開口上端面上に上部構造体の外底面を上記滑り支承を介して支持させていると共に、上部構造体の底部における一側部に下部構造体内に連通する排水口を設けているので、集中豪雨等によって上側排水管内に流入した多量の排水が、該上側排水管内に充満した状態で流れて上部構造体内に排出された時に、一部がこの上部構造体内を通じて対向する下流側の上部排水管内に流入する一方、上部構造体内に溢れた排水が上部構造体内の底部に設けている排水口を通じて下部構造体内に流下し、この下部構造体に開口端を臨ませている下流側の下側排水管内に流入させて地上に溢水させることなく多量の排水が可能となるものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面について説明すると、図1は地中構造体の簡略縦断正面図、図2は簡略縦断側面図であって、この地中構造体は中空の下部構造体1と上部構造体2にそれぞれ前後排水管3a、3b・4a、4bを接続してなるマンホール(人孔)等の立坑であり、下部構造体1は、平面矩形状の底壁部11の四方縁辺に上方に向かって両側壁部12、13と前後壁部14、15とからなる一定高さの周壁10を一体に設けていると共に、両側壁部12、13間の中間部に、周壁10内の空間部を左右の室5a、5bに仕切っている仕切壁部16を底壁部11から上方に突設している。
【0019】
仕切壁部16は周壁10と同一高さを有していると共に、この仕切壁部16によって仕切られた左右の室5a、5bの上端は全面的に開口してあり、これらの開口端面、即ち、周壁10の上端面と仕切壁部16の上端面とによって滑り支承6を介して上部構造体2を水平方向に摺動自在に支持している。詳しくは、周壁10を形成している両側壁部12、13と前後壁部14、15の上端面には周方向に、仕切壁部16の上端面には平面方向にそれぞれ図3に示すように一定間隔毎に滑り支承6を設置してあり、これらの滑り支承6を介して上下構造体1、2は相互に水平方向に摺動自在に構成されているものである。
【0020】
滑り支承6は図4、図5に示すように、上下構造体1、2の対向端面にそれぞれ固着した一定厚みを有する平面矩形状の金属板よりなる上下沓6a、6b間に下面にAB樹脂コート6cを施している上沓下部体6dとフッ素樹脂層6eと、積層ゴム6fとを積層状態で介在させてなり、上沓下部体6dを上沓6aの下面にボルト等によって一体に固着していると共にそのAB樹脂コート6cとフッ素樹脂層6eとの接合面で滑り面を形成してあり、さらに、積層ゴム6fは圧縮されていて地震時に下部構造体1に対して上部構造体2が傾動した時でも上記滑り面を確保するために設けられている。
【0021】
上部構造体2は、下部構造体1の底壁部11と同一大きさ、同一形状の底壁部21の四方縁辺に、下部構造体1と同様に、上方に向かって両側壁部22、23と前後壁部24、25とからなる一定高さの周壁20を一体に設けていると共に、両側壁部22、23間の中間部に、周壁20内の空間部を左右の室7a、7bに仕切っている仕切壁部26を底壁部21から上方に突設してあり、さらに、これらの室7a、7bの上端開口部は天壁部27によって閉止した構造を有している。従って、下部構造体1の周壁10の四方外周面と、上部構造体2の周壁20の四方外周面とは滑り支承6を介して同一垂直面上で面一となっている。なお、図示していないが上部構造体2の上記天壁部27には蓋体によって開閉自在に閉止された点検口が設けられている。
【0022】
また、上部構造体2の周壁20における下端部外周面と下部構造体1の周壁10における上端部外周面とに亘って、即ち、滑り支承6を介して上下に積み重ねられているこれらの上下構造体1、2の接合部の外周面に、可撓性を有する止水体8が全周に亘って設けられている。
【0023】
この止水体8は、図1、図5に示すように、上下構造体1、2の接合部である上下対向端部の外周面間を全周に亘って被着して、滑り支承6の厚みに相当する上下構造体1、2の上下対向端面間の隙間を全面的に閉止している無端帯状のゴム板8aと、このゴム板8aの外周方の地盤中に打設して該ゴム板8aを全面的に被覆している可撓性を有する難透水性外周止水層8bとから形成されている。
【0024】
難透水性外周止水層8bはアスファルト乳剤とセメントと高吸収性ポリマーとの混合材からなる可撓性を有する止水層であって、上下構造体1、2間の接合部外周面に密着している上記ゴム板8aの外周方に型枠30を組み立てて、この型枠30と内型枠の役目を果しているゴム板8aとの間の空間部に上記混合材を打設し、一定期間の養生後、型枠30を撤去することによって形成される。なお、ゴム板8aはその上下端部を周方向に一定間隔毎にボルト31によって上下構造体1、2の接合部の外周面に固着されている。
【0025】
また、上記下部構造体1は図1、図2に示すように、支持地盤32上に上下面が平滑な面に形成されているシート部材9を介して水平方向に摺動自在に築造されている。詳しくは、支持地盤32上に均しコンクリートと栗石とからなる一定厚みの支持層33を形成し、この支持層33上に上記シート部材9を敷設し、このシート部材9上に下部構造体1の外底面を設置した状態で築造されている。さらに、下部構造体1の下端部周囲には、上記難透水性外周止水層8bと同一材料よりなる一定高さと一定厚みの緩衝材8cが全周に亘って設けられてあり、この緩衝材8cの下端面は上記シート部材9上に固着されている。
【0026】
そして、該緩衝材8cを設けたのち、下部構造体1の周囲に土砂を該下部構造体1の上端部近傍に達する高さまで埋め戻し、次いで、上下構造体1、2の接合部の周囲に上記無端帯状のゴム板8aと、可撓性を有する難透水性外周止水層8bとからなる止水体8を施工し、しかるのち、上部構造体2の上端まで構造体周囲の空間部に土砂を埋め戻して地中構造体の築造を完了するものである。
【0027】
この地中構造体がマンホールである場合には、上述したように、上下構造体1、2の前後壁部14、15・24、25にそれぞれ前後排水管3a、3b・4a、4bを接続していて、これらの前後排水管3a、3b・4a、4bの対向開口端部をそれぞれ上下構造体1、2内における仕切壁部16、26で仕切られた一方の室(図2においては、右側の室5a、7a)に臨ませてあり、前側の排水管3a、4aを上流側の管路とすると、これらの排水管3a、4aから上下構造体1、2の一方の室5a、7a内に排水が排出されたのち下流側の管路である後側の排水管3b、4bに流入するように構成している。
【0028】
さらに、上部構造体2の上記仕切壁部26には、上記一方の室7a内に前後排水管4a、4bの下半部以上の高さにまで排水が滞留した時に、他方の室7b内に流出させるための流出口28が設けられていると共に、この他方の室7bの底部には下方の下部構造体1の他方の室5b内に連通している排水口29が設けられている。
【0029】
一方、下部構造体1内においては、上記仕切壁部16の下端部に左右の室5a、5b間を連通させた流入口17が設けられてあり、上部構造体2の上記排水口29から他方の室(左側の室)5b内に流下した排水をこの流入口17を通じて一方の室5a内に流入させ、該室5a内に開口している下流側の排水管3bを通じて排水するように構成している。
【0030】
このように構成した地中構造体において、上下構造体1、2の対向する上下端面、即ち、接合面には多数の滑り支承6が一定間隔毎に介在しているので、地震が発生した時に、前後左右方向の地震動が小さい場合には図6(A)に示すように全ての滑り支承6における積層ゴム6fが変形してその地震動を吸収し、地震動が大きい場合には、図6(B)に示すように、その地震動を全ての滑り支承6のAB樹脂コート6cとフッ素樹脂層6eとの滑り面で吸収して、下部構造体1に対して上部構造体2の変位、変動を地盤の変位、変動量にできるだけ近づけ、上部構造体2に作用する地震時の土圧を低減して上部構造体2が土圧により破壊するのをできる限り防止することができる。
【0031】
同様に、下部構造体1は支持地盤32に対して上下面が平滑な面に形成されているシート部材9を介して水平方向に摺動自在に設置されていると共に、上記上部構造体2に対しては滑り支承6を介して縁切りされた構造となっているから、支持地盤32及び上部構造体2に対してシート部材9と滑り支承6を介して該下部構造体1を、その周囲の地盤の地震動による変位、変動量にできるだけ近づけることができ、従って、この下部構造体1に作用する地震時の土圧が低減されて該下部構造体1が破壊するのをできる限り防止することができる。
【0032】
さらに、地震動によって下部構造体1に対して上部構造体2が傾動した場合、各滑り支承6の積層ゴム6fが圧縮しながらその傾動を許容すると共にこの時にも滑り支承6におけるAB樹脂コート6cとフッ素樹脂層6eとの滑り面によって上下構造体1、2を相対的に移動させて、地震動を吸収することができる。このように、上下構造体1、2からなる地中構造体が柔構造化され、これらの上下構造体1、2の四方壁部12〜15、22〜25の厚みを薄くし且つ鉄筋を少なくしても充分な耐震対策が可能となる。
【0033】
また、上記上下構造体1、2の接合部における外周面には、帯状のゴム板8aが装着されていてこのゴム板8aによって上下構造体1、2の上下対向端面間の隙間を全面的に被覆しているので、下部構造体1内が下水等の排水で充満してもこの隙間に介在させている隣接する滑り支承6、6間を通じて地盤中に排水が漏出するのを防止することができると共に、このゴム板8aが長期の使用中に破損した場合には、該ゴム板8aの周囲に打設しているアスファルト乳剤とセメントと高吸収性ポリマーとの混合材からなる可撓性を有する難透水性外周止水層8bによって排水が地盤内に浸入するのを防止し、優れた止水性を確保することができる。
【0034】
さらに、上下構造体1、2からなる上記地中構造体が、上記のように上下構造体1、2の前後壁部14、15・24、25にそれぞれ前後排水管3a、3b・4a、4bを接続してなるマンホール構造を構成している場合、通常、上下構造体1、2よりも排水管3a、3b・4a、4bの方が剛性が低いので、地震時にはこれらの排水管3a、3b・4a、4bが上下構造体1、2よりも大きく変位、変動する。
【0035】
従って、上下構造体1'、2'が従来のマンホール構造のように一体化している場合には図9に示すように、例えば、管路の長さ方向の地震動が発生すると、上側構造体2'において、該上側構造体2'と一方の排水管B2との接続部に引張応力が集中した時には該上側構造体2'と他方の排水管B1との接続部に圧縮応力が集中することになり、この時、下側構造体1'においては、該下側構造体1'と一方の排水管C2との接続部に圧縮応力が集中すると共に他方の排水管C1との接続部に引張応力が集中することになって、各接続部に変形力が集中し破壊の要因となるが、本発明の実施の形態においては上記のように、上下構造体1、2の接合面に周方向に一定間隔毎に多数の滑り支承6を介在させているので、これらの滑り支承6によって図8に示すように、上記各接続部に集中する引張、圧縮変形を吸収し、接続部の破壊を防止することができる。
【0036】
次に、マンホールとしての上記地中構造体が地盤中に所定間隔毎に設けられていて隣接する地中構造体の下部構造体1、1間、及び上部構造体2、2間をそれぞれ前後排水管3a、3b・4a、4bによって順次、連結、連通させて下水管路等の排水管路を構成すると共に、各上部構造体2の排水管4a、4bに図7に示すように住宅等からの排水や路面等を流れる雨水を流入させるように構成した排水管路において、任意の地中構造体における上部構造体2の上流側に接続している排水管4a内に雨水等の排水が流入すると、通常はこの排水管4aから上部構造体2の一方の室7a内に排出され、該室7a内を通じて下流側の排水管4bを通じて下流側の地中構造体における上部構造体2内に流入し、これを繰り返しながら下流側の河川或いは排水処理場等に排水される。
【0037】
このような排水状態において、集中豪雨等により上部構造体2の上流側の排水管4aに多量の排水が流入すると、該排水管4a内に充満した状態で上部構造体2の一方の室7a内に排出された時に、全ての排水が下流側の排水管4bに流入することなく、室7a内で一定高さ以上の達した水が、図1、図2に示すように仕切壁部26に設けられている流出口28を通じて他方の室7b内に流入し、その他の排水が上記下流側の排水管4bを通じて次の地中構造体における上部構造体2内に流入する。
【0038】
上部構造体2における上記他方の室7b内に流入した排水は、該室7bの底壁部に設けている排水口29を通じて下部構造体1の他方の室5b内に流下し、さらに、この室5b内から該下部構造体1の仕切壁部16に設けている流入口17を通じて一方の室5a内に流入し、該室5a内に開口している下流側の排水管3bを通じて排水する。従って、上下排水管路を通じて多量の排水が可能となるものである。
【0039】
【発明の効果】
以上のように本発明の地中構造体は、請求項1に記載したように、下部構造体と上部構造体とからなる地中構造体であって、これらの上下構造体の接合面に周方向に一定間隔毎に滑り支承を介在させ、この滑り支承を介して上下構造体を互いに水平方向に摺動自在に構成しているので、地震発生時には、これらの滑り支承が滑り変形して地震動を円滑に吸収することができ、従って、上部構造体が下部構造体に対して地盤の変動に応じて変位して上部構造体に作用する土圧力が著しく減少し、地震による上下構造体の破壊を防止することができるものであり、その上、全体の構造が簡単で安価な耐震構造を提供することができる。
【0040】
さらに、上記上下構造体の接合部の外周面を可撓性を有する止水体によって全面的に囲繞しているので、上下構造体内から地盤への漏水を止水体によって阻止することができる。この場合、該止水体を、上下構造体の接合面の外周面を全周に亘って被着している帯状のゴム板と、このゴム板の外周方の地盤中に設けられて該ゴム板を全面的に被覆しているアスファルト乳剤とセメントと高吸収性ポリマーとの混合材からなる所定厚みの可撓性を有する難透水性外周止水層とから構成しているので、二重の止水機能を奏して長期に亘り安定した止水性が得られると共に、上下構造体の接合部に密着させている上記ゴム板による止水作用が該ゴム板の破損等により低下若しくはなくなった場合においても、難透水性外周止水層によって止水性を確保することができる。
【0041】
また、請求項2に係る発明によれば、上記下部構造体を支持地盤上に水平方向に摺動自在に築造しているので、上下構造体からなる地中構造体全体を地震動から縁切り状態にして破壊するのを防止することができるものであり、このような下部構造体の支持地盤に対する水平方向の摺動構造としては、支持地盤と下部構造体との間に平滑面を有するシート部材を介在していると共に、下部構造体の下端部周囲に上記難透水性外周止水層と同一材料よりなる一定高さと一定厚みの緩衝材を全周に亘って設け、この緩衝材の下端面を上記シート部材上に固着してなるものであるから、構造が簡単で施工が容易であるばかりでなく、上記シート部材によって下部構造体を支持地盤に対して周囲の地盤と一体的に変動させて下部構造体自体の破壊も防止することができ、その上、下部構造体の下端部周囲に設けている緩衝材によって、支持地盤に対するこの下部構造体の摺動代を確保することができる。
【0042】
請求項に係る発明のように、上記上部構造体と下部構造体との前後壁部に排水管を接続してなる構造によれば、通常、排水管の剛性は上下構造体よりも低くて地震発生時には上下構造体よりも大きく変形しようとするが、上記のように上下構造体の接合面間に多数の滑り支承を介在させているので、地震動による上下構造体の接続部の変形がこれらの滑り支承によって緩和されて排水管が破壊するのを防止することができる。
【0043】
さらに、上記下部構造体の上端が開口されていてその開口上端面上に上部構造体の外底面を上記滑り支承を介して支持させていると共に、上部構造体の底部における一側部に下部構造体内に連通する排水口を設けているので、集中豪雨等によって上側排水管内に流入した多量の排水が上部構造体内に充満した場合に、該上部構造体側の排水管を通じて排水することができない余剰の排水を上部構造体内の底部に設けている排水口を通じて下部構造体内に流下させてこの下部構造体に開口端を臨ませている下流側の下側排水管内に流入させることができ、従って、地上側に溢水させることなく多量の排水が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】地中構造体の簡略縦断正面図、
【図2】その簡略縦断側面図、
【図3】接合部の簡略横断面図、
【図4】滑り支承の分解図、
【図5】滑り支承と止水体部分の縦断正面図、
【図6】(A)は変位が小さい場合、(B)は変位が大きい場合の変形状態を示す滑り支承と止水体部分の縦断正面図、
【図7】排水管路の簡略斜視図、
【図8】地震時の上下構築体の変動状態を示す簡略側面図、
【図9】従来例を説明するための簡略側面図。
【符号の説明】
1 下部構造体
2 上部構造体
3a、3b、4a、4b 排水管
6 滑り支承
8 止水体
8a ゴム板
8b 難透水性外周止水層
9 シート部材
17 流入口
28 流出口
29 排水口

Claims (3)

  1. 下部構造体と上部構造体とからなる地中構造体であって、これらの上下構造体の接合面に周方向に一定間隔毎に滑り支承を介在させ、この滑り支承を介して上下構造体を互いに水平方向に摺動自在に構成していると共に上下構造体の接合部の外周面を可撓性を有する止水体によって全面的に囲繞している地中構造体において、上記止水体は上下構造体の接合部である上下対向端部の外周面間を全周に亘って被着して滑り支承の厚みに相当する上下構造体の上下対向端面間の隙間を全面的に閉止している帯状のゴム板と、このゴム板の外周方の地盤中に設けられて該ゴム板を全面的に被覆しているアスファルト乳剤とセメントと高吸収性ポリマーとの混合材からなる所定厚みの可撓性を有する難透水性外周止水層とから構成されていることを特徴とする地中構造体。
  2. 支持地盤と下部構造体との間に平滑面を有するシート部材が介在されていてこのシート部材上に下部構造体の外底面を摺動自在に設置していると共に、下部構造体の下端部周囲には、難透水性外周止水層と同一材料よりなる一定高さと一定厚みの緩衝材が全周に亘って設けられてあり、この緩衝材の下端面を上記シート部材上に固着していることを特徴とする請求項に記載の地中構造体。
  3. 上部構造体と下部構造体との前後壁部にはそれぞれ開口端を対向させて前後排水管が接続されていると共に、下部構造体はその上端が開口されていて該開口上端面上に上部構造体の外底面を滑り支承を介して支持してあり、さらに、上部構造体の底部における一部に下部構造体内に連通する排水口を設けていることを特徴とする請求項1に記載の地中構造体。
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