JP4060173B2 - 空気入りタイヤ、および空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、空気入りタイヤ、および空気入りタイヤの製造方法に関し、更に詳しくは、タイヤのユニフォーミティの向上に資するベルトカバーを有する空気入りタイヤ、および空気入りタイヤの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図17は、従来の空気入りタイヤを示す説明図である。ここでは、典型的なラジアルタイヤについて説明する。タイヤ101は、カーカス102に複数のスチール製のベルト103、104、がタイヤの半径方向に重ねられて構成される。また、タイヤは、高速特性を高めるためにベルト103、104とトレッド106の間にベルトカバー105が配置される。
【0003】
このベルトカバー105は、シート状のものを周上一カ所でつなぎ合わせると、その部分が不連続点となりユニフォーミティ(以下UFと略する。)、特にUF試験におけるRFV(Radial Force Variation半径方向力変動)、RRO(Radial Run Out半径方向振れ)に悪影響を及ぼすことが知られている。このため、ベルトカバー105は、有機繊維コードをゴムで覆った細い帯材(ストリップ材)を螺旋に巻き付けることにより形成されているのが一般的である(たとえば、特許文献1、2参照。)。
【0004】
図18は、従来のベルトカバーの例を示す外観図である。この図は、360度分のベルトカバーを平面に展開したものである。同図下部にはベルトカバーを半径方向で切ったときの断面図を示した。同図に示したように、従来のベルトカバーは、ベルトのエッジから所定寸法だけ内側に入った所を開始位置として帯材107を巻き始め、紙面右から左に巻いた後、折り返して左から右、さらに折り返して右から左と螺旋状に巻く。そして、上記開始位置とは反対側のベルトのエッジから所定寸法内側で巻き終わる。
【0005】
上記のように帯材107を巻くと、ベルトのエッジ部に帯材107が2重に巻かれることになり、ベルトのエッジ部を頑丈に補強できると共に、中心部も1重の帯材107で補強できる。なお、この巻き方はタイヤの制限速度規格(JISD4201、D4202)でいうところのV規格(最大240km/hまで)やW、Y規格(240km/h以上)で用いられることが多い。
【0006】
上記の他にも、H規格(最大210km/hまで)等では、ベルトのエッジ部分のみ帯材107を巻く2重エッジカバー形式や、エッジ部から中心部にかけて1重の帯材107で巻くフルカバー形式もある。これらのベルトカバーは、タイヤの高速性能を左右する因子の一つであるベルトの剛性を高めるために、適当な形式が選択・採用される。
【0007】
図19は、従来のベルトカバーの例を示す外観図である。同図は、図18と同様に、360度分のベルトカバーを平面に展開したものであり、下部にはベルトカバーを半径方向で切ったときの断面図を示した。図中、上に示したのが、2重フルカバー+エッジカバー形式で、図18のフルカバー+エッジカバー形式の下層に帯材を1重に巻いたものである。これらは、ベルト剛性のさらなる向上を目的として用いられる。
【0008】
具体的な巻き方は、左右どちらか一方からほぼ全面に対して帯材を1重に巻き、次に既述したフルカバー+エッジカバー形式のように、ベルトのエッジから所定寸法内側を開始位置として帯材を巻き始め、紙面右から左に巻いた後、折り返して左から右、さらに折り返して右から左と螺旋状に巻く。そして、上記開始位置とは反対側のベルトのエッジから所定寸法内側で巻き終わる。
【0009】
さらに、同図下に示したのがエッジ部を3重にすると共に中央部を1重に巻く形式で、2重のエッジカバー形式の上層にフルカバー形式の1重帯材を巻いたものである。具体的な巻き方は、まず左右のベルトエッジ部に対して内側から巻き始め、外側で折り返し、再び内側に戻し巻く。その上から、左右どちらか一方からほぼ全面に対して帯材を1重に巻く。
【0010】
【特許文献1】
特開平4−355121号公報(第2〜4頁、第2、4図)
【特許文献2】
実開昭62−178201号公報(第6頁、第4、5図)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術に係る空気入りタイヤのベルトカバーは、剛性及び高速特性という観点では向上し得るが、その一方で、タイヤの振動特性に影響するUFという観点から見た場合、帯材を螺旋に巻き、折り返すことから、ベルトカバー自体の周上の均一性を常に確保することは困難であるという問題点があった。具体的には、ベルトカバー自体の総幅、2重以上の重ね巻き部分の幅、タイヤ赤道線から重ね巻き部分までの距離の左右和、又、ベルトエッジのみをカバーする構造の場合に、タイヤ赤道線からカバー内側までの距離の左右和に周上バラツキが発生する。UFに欠けているタイヤは、特に高速回転したときの車輌の振動や騒音に悪影響を及ぼしてしまう。
【0012】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤのユニフォーミティの向上に資するベルトカバーを有する空気入りタイヤ、および空気入りタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1に係る空気入りタイヤは、カーカスの外側に設けられるベルトの半径方向外側であって、当該ベルトの少なくとも両エッジ部を覆う位置で帯材の巻き付けによる2重以上の部分が形成され、中央部には前記帯材の巻き付けによる1重部分が形成されるベルトカバーを有する空気入りタイヤにおいて、前記2重以上の部分は、前記帯材が一定ピッチで重ね巻かれ、前記1重部分では、前記帯材の幅と同一長さのピッチで前記帯材が巻かれ、かつ、前記2重以上の部分における前記帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置、および前記2重以上の部分と前記1重部分との境界でのピッチ変更位置がすべて周方向におけるタイヤ中心角30度以内に収まるように巻かれ、かつ、前記帯材が、前記ベルトの幅方向において一方向に巻かれるようにしたものである。ベルトカバーを形成する帯材の巻き付けピッチを一定にしてベルトエッジ部に重ね巻き部分、すなわち2重巻き以上の部分を形成すると、当該2重巻き以上の部分の幅が周上で均一になる。また、帯材の左右の巻き始め、巻き終わり位置、およびピッチ変更位置を全て周方向におけるタイヤ中心角30度以内に収め、かつ、ベルトの幅方向の一方向(左右どちらか一方から他方に向かう方向)に帯材を巻き付けると、エッジ部における帯材の最内側とタイヤ赤道面との距離及び2重巻き以上の部分の最内側と赤道面からの距離の左右和が周上で均一になる。
【0018】
また、請求項2に係る空気入りタイヤは、前記空気入りタイヤにおいて、前記一定ピッチは、前記帯材の幅の1/2が重ね合わさるピッチであるようにしたものである。
【0019】
また、請求項3に係る空気入りタイヤは、請求項1または2に係る空気入りタイヤの前記ベルトカバーの下層、または上層として、1重に巻かれた帯材が重ねられるものである。
【0020】
この発明では、請求項1または2に係る空気入りタイヤにフルカバー形式の1重の帯材を組み合わせたものである。したがって、全体としては、3重以上の部分と1重部分、または3重以上の部分と2重部分を有するベルトカバーが形成され、UFを向上させつつベルトを強固に補強する。
【0025】
また、請求項4に係る空気入りタイヤの製造方法は、カーカスの外側に設けられるベルトの半径方向外側であって、当該ベルトの少なくとも両エッジ部を覆う位置で帯材の巻き付けによる2重以上の部分を形成し、中央部には前記帯材の巻き付けによる1重部分を形成するベルトカバーを有する空気入りタイヤの製造方法において、前記2重以上の部分は、前記帯材を一定ピッチで重ね巻き、前記1重部分では、前記帯材の幅と同一長さのピッチで前記帯材を巻き、かつ、前記エッジ部の前記帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置、および前記一重部分と前記2重以上の部分との境界でのピッチ変更位置がすべて周方向におけるタイヤ中心角30度以内に収まるように巻き、かつ、前記帯材を、前記ベルトの幅方向において一方向に巻くようにしたものである。ベルトカバーを形成する帯材の巻き付けピッチを一定にしてベルトエッジ部に重ね巻き部分、すなわち2重巻き以上の部分を形成すると、当該2重巻き以上の部分の幅が周上で均一になる。また、帯材の左右の巻き始め、巻き終わり位置、およびピッチ変更位置をすべて周方向におけるタイヤ中心角30度以内に収め、かつ、ベルトの幅方向の一方向(左右どちらか一方から他方に向かう方向)に帯材を巻き付けると、エッジ部における帯材の最内側とタイヤ赤道面との距離及び2重巻き以上の部分の最内側と赤道面からの距離の左右和が周上で均一になる。
【0026】
また、請求項5に係る空気入りタイヤの製造方法は、前記空気入りタイヤの製造方法において、前記一定ピッチは、前記帯材の幅の1/2が重ね合わさるピッチとしたものである。
【0027】
また、請求項6に係る空気入りタイヤの製造方法は、空気入りタイヤを半径方向から見たときにタイヤ赤道面を境として左側に巻かれる帯材の幅合計と、右側に巻かれる帯材の幅合計との左右和の周上変動を0にすると共に、タイヤ赤道面を境として左側に帯材が2重以上に巻かれる幅合計と、右側に2重以上に巻かれる幅合計との左右和の周上変動を0にし、かつ、帯材が2重以上となる部分の最内側に対するタイヤ赤道面からの距離の左右和の周上変動を0にして、ベルトカバーを形成するようにしたものである。
【0028】
ベルトカバーは、帯材を螺旋状に巻いて形成するので、帯材が2重以上となる部分の最内側に対するタイヤ赤道面からの距離は、周上360度にわたって増減する。この発明では、そのように周上で増減する赤道面からの距離を左右相殺させることにより、帯材のアンバランスを解消させる。これにより、UFの向上に資する空気タイヤを製造することができる。
【0029】
また、請求項7に係る空気入りタイヤの製造方法は、請求項4乃至6に係る空気入りタイヤの製造方法に係る空気入りタイヤの前記ベルトカバーの下層、または上層として、1重に巻かれた帯材を重ねるようにしたものである。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものを含む。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に係る空気入りタイヤのベルトカバーを示した説明図である。この図の上図は、360度分のベルトカバーを平面に展開したものである。上図下部にはベルトカバーを半径方向で切ったときの断面図を示した。下図は、上図の角度に対応したタイヤ特性を示したグラフ図である。縦軸は、周上の角度、横軸は左からそれぞれ総幅、2重部分幅、タイヤ赤道面から2重部分内側までの距離の左右和(以下、2重部分内側アパートと称する)、および帯材成分RFV波形である。
【0032】
同図上に示すように、このベルトカバーは、ベルト(図示省略)の両側端であるエッジ部でそれを覆うように前記帯材が一定ピッチで重ね巻かれる。ここでは、当該一定ピッチを帯材の幅の1/2が重なるピッチにしている。中央部では、帯材の幅と同一長さのピッチで帯材が巻かれる。つまり、エッジ部には帯材の2重巻き部分、中央部には1重巻き部分が形成される。また、エッジ部の帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置、およびエッジ部と中央部との境界でのピッチ変更位置がすべて周方向における同一位置となるように帯材が巻かれる。そして、帯材は、さらにベルトの幅方向において一方向、ここでは左から右に巻かれる。
【0033】
上記のように帯材を巻いてベルトカバーを形成すると、同図下の総幅および2重部分幅に示した通り、総幅、および2重部分の幅における変動の左右和が周上一定になる。なお、当該グラフ図では、左右のエッジ部それぞれの総幅、2重部分幅を点線で示しており、実線がその左右の和である。また、帯材の巻き始め位置、巻き終わり位置、およびピッチ変更位置を周方向における同一位置に配置し、かつ、ベルトの幅方向の一方向(ここでは左から右)に帯材を巻き付けると、2重部分内側アパートの左右和が周上360度を通して一定になる。
【0034】
そして、最終的にUFのうち、RFV波形の帯材成分は、13Nと後述する他の形式のものに比べて低く抑えることができた。なお、帯材成分RFV波形は、所定の条件で製造した空気入りタイヤを複数用意して、それぞれRFVを測定し、帯材成分の影響のみを抽出したものである。このように、帯材の不連続点である帯材巻き始め位置と巻き終わり位置をすべて周方向における同一位置となるように帯材を巻くことは、RFV波形のピークを招くということでこれまで避けられてきたものである。
【0035】
この発明では、帯材の巻き方における他の条件と相まって、RFVを低く抑えることができた点に特徴がある。つぎに、発明者の創意と工夫によりこの発明に至るまでの経過を説明する。これにより、この発明の優れた着目点およびその効果が理解可能となる。
【0036】
図2は、帯材の幅と同一ピッチで重ね巻きしたときのベルトカバーを示す説明図である。この図の上図は、360度分のベルトカバーを平面に展開したものである。上図下部にはベルトカバーを半径方向で切ったときの断面図を示した。下図は、上図の角度に対応したタイヤ特性を示したグラフ図である。縦軸は、周上の角度、横軸は左からそれぞれ総幅、2重部分幅、2重部分内側アパート、および帯材成分RFV波形である。以後同様な図を用いて説明する。
【0037】
同図に示すように、このベルトカバーは、帯材をその幅と同一ピッチ(以後1/1ピッチと称する。)でエッジ部を重ね巻きする。また、帯材の巻き始め位置および巻き終わり位置も周上の異なる位置にし、巻き始めから左に巻き、折り返した後右に巻き、再度折り返して左に巻く。このようにすると、同図下のグラフ図に示したように、2重部分幅、2重部分内側アパートとも360度を通しての左右の和が大きく乱れたものになる。その結果、帯材成分RFV波形も大きくなり、最大26Nと大きな値になった。
【0038】
図3は、図2の帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置を周上同一位置にしたときベルトカバーを示す説明図である。なお、帯材の総巻き数を1/2巻き増やして整数巻きとしたので、ベルトカバーの右端の形状は帯材1/2巻き分だけ異なる。このように帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置を周上同一位置にすると、2重部分内側アパートの左右和こそ360度を通して一定になるものの、総幅、2重部分幅が大きく乱れる。その結果、帯材成分RFV波形も21Nと小さくすることができなかった。
【0039】
図4は、図1の2重部分を帯材の1/2ピッチの重ね巻きで実現したときのベルトカバーを示す説明図である。なお、帯材の総巻き数は非整数巻きとした。このように帯材を幅方向において一方向で、重ね巻いても、巻き始め位置と巻き終わり位置が周上同一位置でないので、総幅、2重部分幅、および2重部分内側アパートが大きく乱れる。その結果、帯材成分RFV波形も28Nと小さくすることができなかった。なお、帯材を整数巻きにしても同様な結果となる。
【0040】
図5は、図4のベルトカバーを帯材のセンター振り分けで実現したときのベルトカバーを示す説明図である。このように帯材をセンター振り分けにすると360度を通して総幅、2重部分幅、および2重部分内側アパートが大きく乱れる。その結果、帯材成分RFV波形も18Nと小さくすることができなかった。なお、このRFVを求めるUF試験では、タイヤサイズが異なったため、既述したベルトカバーと厳密には同列に論じることができないが、総幅等がいずれも大きく乱れていることから結果を推測できる。
【0041】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係る空気入りタイヤによれば、帯材を用いてベルトエッジ部に複数に重なったベルトカバーを形成するときに発生する複数の重ね巻き部分幅、複数の重ね巻き部分内側アパートの左右和の周上バラツキを常に一定にすることができる。その結果、ベルトカバーのUF、特にRFV、RROへの影響を極めて小さくすることが出来ることがわかった。これにより、タイヤの高速特性を向上させることができる。なお、この発明における帯材のエッジ部の巻き付けピッチは、生産性や厚みの不均一を考慮すれば、帯材の幅の1/2、1/3、1/4、1/5、1/6ピッチ程度が望ましい。
【0042】
また、この発明では、上記の様なベルトカバーの周上バラツキを0にする為に、巻き始め位置と巻き終わり位置、およびピッチ変更位置が周上同一位置であることが最も望ましいが、厳密に同一でなければ直ちに効果を失うものではない。つまり、巻き始め位置と巻き終わり位置は、所定範囲、具体的にはタイヤ中心角30度以内程度であればある程度の効果は得られる。理想的にはタイヤ中心角10度以内に収まることが望ましい。また、この発明は、ラジアルタイヤのみならず、ベルトを有するバイアスタイヤにも適用可能である。
【0043】
(実施の形態2)
図6は、この発明の実施の形態2に係る空気入りタイヤのベルトカバーを示した説明図である。なお、同図は、図1〜5と異なり、下部のグラフ図は後述する内側アパート、2重部分幅、2重部分内側アパートの順に示した。このベルトカバーは、ベルト(図示省略)の両側端であるエッジ部で帯材が一定ピッチで重ね巻かれると共に、双方の帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置がすべて周方向における同一位置となるように巻かれる。なお、ここでは、上記一定ピッチを1/2ピッチとした。また、双方の帯材が、ベルトの幅方向における同一方向、ここでは右から左に巻かれることをこの発明は特徴とする。
【0044】
ベルトカバーを形成する帯材の巻き付けピッチを一定にしてベルトエッジ部に重ね巻き部分、すなわち2重巻き以上の部分を形成すると、当該2重巻き以上の部分の幅における左右和が周上360度を通して一定になる。また、帯材の左右の巻き始め位置、巻き終わり位置を周方向における同一位置に配置し、かつ、ベルトの幅方向の一方向に帯材を巻き付けると、双方のエッジ部における帯材の最内側とタイヤ赤道面からの距離、すなわち内側アパート、及び2重部分内側アパートの左右和が周上360度を通して一定になる。これにより、UFに対して悪影響を及ぼす要因を無くすことができる。
【0045】
このように、この実施の形態2に係るベルトカバーは、両エッジ部の帯材の巻き始め位置および巻き終わり位置を同一位置となるように帯材を巻く。このことは、実施の形態1と同様にRFV波形のピークを招くということでこれまで避けられてきたものである。ここで、実施の形態1と同様に、発明者の創意と工夫によりこの発明に至るまでの経過を説明する。
【0046】
図7は、帯材を1/1ピッチで重ね巻きしたときのベルトカバーを示す説明図である。同図に示すように、このベルトカバーは、エッジ部において帯材を1/1ピッチで重ね巻きする。また、両帯材の巻き始め位置および巻き終わり位置も互いに周上の異なる位置にし、左の帯材では、巻き始めから左に巻き、折り返した後右に巻き、右の帯材はその逆とした。このようにすると、同図下のグラフ図に示したように、内側アパート、2重部分幅、2重部分内側アパートとも周上360度を通しての左右和が大きく偏ったものになる。これでは、UFが低下してしまう。
【0047】
図8は、図7のベルトカバーにおいて右の帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置を周上180度ずらしたときのベルトカバーを示す説明図である。このようにすると、同図下のグラフ図に示したように、内側アパート、2重部分幅、2重部分内側アパートとも周上360度を通しての左右和が一定になるものの、2重部分幅のばらつきが蛇行成分をもち、さらに内側アパートの蛇行成分が大きくなり、図6の場合に比べて劣ってしまう。
【0048】
図9は、図7の2重部分を帯材の1/2ピッチの重ね巻きで実現したときのベルトカバーを示す説明図である。両エッジ部での帯材の巻き方向はそれぞれ内側から外側へむかう方向とした。2重部分幅は周上360度を通して左右和が一定になるものの、内側アパート、および2重部分内側アパートが大きく乱れ、これがUFの低下につながってしまう。
【0049】
図10は、図9における右の帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置を180度ずらしたときのベルトカバーを示した説明図である。このようにすると、同図下のグラフ図に示したように、2重部分幅は、周上360度を通しての左右和が一定になるものの、内側アパート、および2重部分内側アパートが大きく乱れ、UFの低下につながる。
【0050】
以上のように、この発明の実施の形態2に係る空気入りタイヤによれば、帯材を用いてベルトエッジ部に複数重ね巻きのベルトカバーを形成するときに発生する複数重ね部分幅、複数重ね部分内側アパート、および内側アパートの周上バラツキの左右和を常に一定にすることができる。その結果、ベルトカバーのUF、特にRFV、RROへの影響を極めて小さくすることが出来ることがわかった。これにより、タイヤの高速特性を向上させることができる。なお、実施の形態1と同様に、この発明における帯材のエッジ部の巻き付けピッチは、生産性や厚みの不均一等を考慮すれば、帯材の幅の1/2、1/3、1/4、1/5、1/6ピッチ程度が望ましい。
【0051】
また、この発明も、上記ベルトカバーの周上バラツキを0にするために、巻き始め位置と巻き終わり位置、およびピッチ変更位置が周上同一位置であることが最も望ましいが、厳密に同一でなければ直ちに効果を失うものではない。つまり、巻き始め位置と巻き終わり位置は、所定範囲、具体的にはタイヤ中心角30度以内程度であればある程度の効果は得られる。理想的にはタイヤ中心角10度以内に収まることが望ましい。
【0052】
(実施の形態3)
図11は、この発明の実施の形態3に係る空気入りタイヤのベルトカバーを示した説明図である。なお、同図の下部のグラフ図は内側アパート、2重部分幅、2重部分内側アパートの順に示した。このベルトカバーは、実施の形態2のベルトカバーにおける双方の帯材の最内側に、さらに環状の帯材一巻きを加えたものである。この環状一巻きを加えることにより、内側アパートは、常に一定となる。
【0053】
そして、当該ベルトカバーは、実施の形態2で説明したベルトカバーの特徴を承継し、2重部分幅、2重部分内側アパートの周上360度の総計が0となる。つぎに、実施の形態1、2と同様に、発明者の創意と工夫によりこの発明に至るまでの経過を説明する。
【0054】
図12は、帯材を1/1ピッチで重ね巻きしたときのベルトカバーを示す説明図である。同図に示すように、このベルトカバーは、最初に、双方の帯材の最内側に、環状の帯材を一巻きし、その上に帯材を1/1ピッチで重ね巻きする。また、両帯材の巻き始め位置および巻き終わり位置も互いに周上の異なる位置にし、左の帯材では、巻き始めから左に巻き、折り返した後右に巻き、右の帯材はその逆とした。このようにすると、同図下のグラフ図に示したように、内側アパートは当然一定になるが、2重部分幅、2重部分内側アパートとも周上360度を通しての左右和が大きく乱れたものになる。帯材成分RFVを測定したところ、38Nと大きなものとなった。
【0055】
図13は、図12における右の帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置を周上180度ずらしたときのベルトカバーを示す説明図である。このようにすると、同図下のグラフ図に示したように、内側アパート、2重部分幅、2重部分内側アパートとも周上360度を通しての左右和が一定になるものの、2重部分内側アパートの蛇行成分が大きくなり、図11の場合に比べて劣ってしまう。
【0056】
図14は、図11の2重部分を帯材の1/2ピッチの重ね巻きで実現したときのベルトカバーを示す説明図である。両エッジ部での帯材の巻き方向はそれぞれ内側から外側へむかう方向とした。このようにすると、内側アパート、および2重部分幅は周上360度を通して左右和が一定になるものの、2重部分内側アパートが大きく乱れてしまった。このため、帯材成分RFVも30Nと大きなものとなった。
【0057】
図15は、図14における右の帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置を周上180度ずらしたときのベルトカバーを示す説明図である。このようにすると、同図下のグラフ図に示したように、内側アパート、および2重部分幅は、周上360度を通しての左右和が一定になるものの、2重部分内側アパートが大きく乱れ、UFの低下につながってしまう。
【0058】
以上のように、この発明の実施の形態3に係る空気入りタイヤによれば、帯材を用いてベルトエッジ部に2重のベルトカバーを形成するときに発生する2重部分幅、2重部分内側アパート、および内側アパートの周上バラツキの左右和を常に一定にすることができる。その結果、ベルトカバーのUF、特にRFV、RROへの影響を極めて小さくすることが出来ることがわかった。これにより、タイヤの高速特性を向上させることができる。なお、実施の形態1、2と同様に、この発明における帯材のエッジ部の巻き付けピッチは、生産性や厚みの不均一等を考慮すれば、帯材の幅の1/2、1/3、1/4、1/5、1/6ピッチ程度が望ましい。
【0059】
また、この発明も、巻き始め位置と巻き終わり位置、およびピッチ変更位置が周上同一位置であることが最も望ましいが、厳密に同一でなければ直ちに効果を失うものではない。つまり、巻き始め位置と巻き終わり位置は、所定範囲、具体的にはタイヤ中心角30度以内程度であればある程度の効果は得られる。理想的にはタイヤ中心角10度以内に収まることが望ましい。
【0060】
(変形例)
図16は、実施の形態1および2の変形例を示す説明図である。同図上部は、いわゆるフルカバー+エッジカバー形式とフルカバー形式とを組み合わせた形式で、実施の形態1で説明したベルトカバーの下層に帯材を1重に巻いたものである。このような形式にしても、実施の形態1で説明した発明の効果は承継され、UFを向上させると共に、ベルト剛性の向上させることができる。
【0061】
また、同図下部に示したのが2重のエッジカバーとフルカバーを組み合わせた形式で、実施の形態2で説明したベルトカバーの上層に帯材を1重に巻いたものである。このような形式にしても、実施の形態2で説明した発明の効果は承継され、UFを向上させると共に、ベルト剛性の向上させることができる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る空気入りタイヤによれば、帯材を用いてベルトエッジ部に2重以上のベルトカバーを形成するときに発生する2重巻き以上の部分の幅における周上バラツキを常に0にすることができる。その結果、ベルトカバーのUF、特にRFV、RROへの影響を極めて小さくすることが出来る。
【0064】
また、この発明に係る空気入りタイヤによれば、上記の効果に加え、両帯材の最内側に、さらに環状の帯材一巻きを加えたので、赤道面から帯材内側までの距離が周上常に一定となり、これもUFの向上に資する。これらの結果、タイヤが高速回転したときの振動特性が向上する。
【0065】
また、この発明に係る空気入りタイヤ(請求項1)によれば、帯材を用いてベルトエッジ部に2重以上のベルトカバーを形成するときに発生する2重巻き以上の部分の幅における周上バラツキを常に0にすることができる。その結果、ベルトカバーのUF(特にRFV、RRO)への影響を極めて小さくすることが出来る。したがって、タイヤの高速性能を向上させることができる。
【0066】
また、この発明に係る空気入りタイヤ(請求項2)によれば、上記の効果に加え、帯材の巻き付けピッチを帯材の幅の1/2としたので、2重部分でベルトを適度に補強できると共に、使用する帯材の量も適当に収めることができる。
【0067】
また、この発明に係る空気入りタイヤ(請求項3)によれば、請求項1または2に係る空気入りタイヤの効果を維持しつつ、ベルトカバーのベルト補強効果が向上する。
【0068】
また、この発明に係る空気入りタイヤの製造方法によれば、製造する空気入りタイヤにおいて、帯材を用いてベルトエッジ部に2重巻き以上のベルトカバーを形成するときに発生する2重巻き以上の部分の幅における周上バラツキを常に0にすることができる。その結果、ベルトカバーのUF、特にRFV、RROへの影響を極めて小さくすることが出来る。
【0070】
また、この発明に係る空気入りタイヤの製造方法によれば、空気入りタイヤにおいて、両帯材の最内側に、さらに環状の帯材一巻きを加えたので、赤道面から帯材内側までの距離が周上常に一定となり、これもUFの向上に資する。これらの結果、タイヤが高速回転したときの振動特性が向上する。
【0071】
また、この発明に係る空気入りタイヤの製造方法(請求項4)によれば、製造したタイヤにおいて、帯材を用いてベルトエッジ部に2重以上のベルトカバーを形成するときに発生する2重巻き以上の部分の幅における周上バラツキを常に0にすることができる。その結果、ベルトカバーのUF、特にRFV、RROへの影響を極めて小さくすることが出来る。したがって、タイヤの高速特性を向上させることができる。
【0072】
また、この発明に係る空気入りタイヤの製造方法(請求項5)によれば、上記の効果に加え、帯材の巻き付けピッチを帯材の幅の1/2としたので、2重部分でベルトを適度に補強できると共に、使用する帯材の量も適当に収めることができるタイヤを製造することができる。
【0073】
また、この発明に係る空気入りタイヤの製造方法(請求項6)によれば、帯材の総幅、2重以上の部分の総幅、および、帯材の2重以上部分の最内側に対する赤道面からの距離を左右相殺させることにより、帯材のアンバランスを解消させる。これにより、UFの向上に資する空気タイヤを製造することができる。
【0074】
また、この発明に係る空気入りタイヤの製造方法(請求項7)によれば、請求項4乃至6に係る空気入りタイヤの効果を維持しつつ、ベルトカバーのベルト補強効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に係る空気入りタイヤのベルトカバーを示した説明図である。
【図2】帯材の幅と同一ピッチで重ね巻きしたときのベルトカバーを示す説明図である。
【図3】図2の帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置を周上同一位置にしたときベルトカバーを示す説明図である。
【図4】図1の2重部分を帯材の1/2ピッチの重ね巻きで実現したときのベルトカバーを示す説明図である。
【図5】図4のベルトカバーを帯材のセンター振り分けで実現したときのベルトカバーを示す説明図である。
【図6】実施の形態2に係る空気入りタイヤのベルトカバーを示した説明図である。
【図7】帯材を1/1ピッチで重ね巻きしたときのベルトカバーを示す説明図である。
【図8】図7の帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置を周上同一位置にしたときのベルトカバーを示す説明図である。
【図9】図7の2重部分を帯材の1/2ピッチの重ね巻きで実現したときのベルトカバーを示す説明図である。
【図10】図9の帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置を周上180度ずらしたときのベルトカバーを示した説明図である。
【図11】実施の形態3に係る空気入りタイヤのベルトカバーを示した説明図である。
【図12】帯材を1/1ピッチで重ね巻きしたときのベルトカバーを示す説明図である。
【図13】図12の帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置を周上180度ずらしたときのベルトカバーを示す説明図である。
【図14】図11の2重部分を帯材の1/2ピッチの重ね巻きで実現したときのベルトカバーを示す説明図である。
【図15】図14の帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置を周上180度ずらしたときのベルトカバーを示す説明図である。
【図16】実施の形態1および2の変形例を示す説明図である。
【図17】従来の空気入りタイヤを示す説明図である。
【図18】従来のベルトカバーの例を示す外観図である。
【図19】従来のベルトカバーの例を示す外観図である。
【符号の説明】
101 タイヤ
102 カーカス
103 ベルト
105 ベルトカバー
106 トレッド
107 帯材
Claims (7)
- カーカスの外側に設けられるベルトの半径方向外側であって、当該ベルトの少なくとも両エッジ部を覆う位置で帯材の巻き付けによる2重以上の部分が形成され、中央部には前記帯材の巻き付けによる1重部分が形成されるベルトカバーを有する空気入りタイヤにおいて、
前記2重以上の部分は、前記帯材が一定ピッチで重ね巻かれ、前記1重部分では、前記帯材の幅と同一長さのピッチで前記帯材が巻かれ、かつ、前記2重以上の部分における前記帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置、および前記2重以上の部分と前記1重部分との境界でのピッチ変更位置がすべて周方向におけるタイヤ中心角30度以内に収まるように巻かれ、かつ、前記帯材が、前記ベルトの幅方向において一方向に巻かれることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記一定ピッチは、前記帯材の幅の1/2が重ね合わさるピッチであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 請求項1または2に係る空気入りタイヤの前記ベルトカバーの下層、または上層として、1重に巻かれた帯材が重ねられることを特徴とする空気入りタイヤ。
- カーカスの外側に設けられるベルトの半径方向外側であって、当該ベルトの少なくとも両エッジ部を覆う位置で帯材の巻き付けによる2重以上の部分を形成し、中央部には前記帯材の巻き付けによる1重部分を形成するベルトカバーを有する空気入りタイヤの製造方法において、
前記2重以上の部分は、前記帯材を一定ピッチで重ね巻き、前記1重部分では、前記帯材の幅と同一長さのピッチで前記帯材を巻き、かつ、前記エッジ部の前記帯材の巻き始め位置と巻き終わり位置、および前記一重部分と前記2重以上の部分との境界でのピッチ変更位置がすべて周方向におけるタイヤ中心角30度以内に収まるように巻き、かつ、前記帯材を、前記ベルトの幅方向において一方向に巻くことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。 - 前記一定ピッチは、前記帯材の幅の1/2が重ね合わさるピッチであることを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤの製造方法。
- 空気入りタイヤを半径方向から見たときにタイヤ赤道面を境として左側に巻かれる帯材の幅合計と、右側に巻かれる帯材の幅合計との左右和の周上変動を0にすると共に、タイヤ赤道面を境として左側に帯材が2重以上に巻かれる幅合計と、右側に2重以上に巻かれる幅合計との左右和の周上変動を0にし、かつ、帯材が2重以上となる部分の最内側に対するタイヤ赤道面からの距離の左右和の周上変動を0にして、ベルトカバーを形成することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
- 請求項4乃至6に係る空気入りタイヤの製造方法に係る空気入りタイヤの前記ベルトカバーの下層、または上層として、1重に巻かれた帯材を重ねることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
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