JP4059118B2 - エッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法 - Google Patents

エッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高鮮明TVのシャドウマスク用材料として使用するために実施するエッチング穿孔の際孔形不良の発生しない、エッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高鮮明TVのシャドウマスク材としてのFe−Ni系合金冷延板には、エッチング穿孔時に孔形不良欠陥が発生しないことが要求される。
【0003】
この問題を解決する技術として、特許文献1に開示されたものが知られている。この技術は、30から45mass%の範囲内の量のNiを含有する、脱隣および脱炭したFe−Ni系溶融合金を調整し、20から40mass%の範囲内の量のCaOを含有するMgO−CaO系耐火物製の取鍋内において、このように調製した前記Fe−Ni系溶融合金にアルミニウムを添加し、下記からなるCaO−Al−MgO系スラグ:
CaOおよびAl:57mass%以上、
ただし、CaO/(CaO+Al)の比は0.45以上、
MgO:25mass%以下、
SiO:15mass%以下、および
シリコンよりも酸素親和力の弱い金属の酸化物の合計量:3mass%以下、と反応させて、Fe−Ni系溶融合金を脱酸し、鋳造〜圧延して、粒径が6μm以下で、かつ、酸素に換算して0.002mass%以下の合計量の非金属介在物を含有するFe−Ni系合金冷延板を製造するものである。
【0004】
しかしながら、この先行技術は次のような問題点を含んでいる。すなわち、そこに示されるスラグを用いてアルミニウムとともに脱酸しても、アルミニウム使用量が多いと脱酸時の発生Al量も多く、個別の非金属介在物粒径が6μm以下となっても、これらが凝集合体してクラスター化しやすくなる。その結果、エッチング孔面積率が65%を越えるような高輝度ブラウン管用シャドウマスク製造時にはクラスター化した非金属介在物がエッチング孔にかかってしまい、エッチング孔形不良となってしまう。
【0005】
Alを主体とするクラスターを解消するためには、Mg合金を添加することにより介在物をAl・MgOに改質することが有効であることが知られているが(特許文献2、特許文献3等)、Mgは高蒸気圧元素であり、極めて反応性に富んでいるので、介在物の組成制御に必要な比較的大量のMg合金を添加すると、溶融合金中の酸素とMgとの反応により溶融合金の飛散等をともない、安全上の問題がある。また、Mg合金は高価でありより安価であることが求められている。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−218644号公報
【特許文献2】
特開平4−333359号公報
【特許文献3】
特開平6−212236号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、エッチング穿孔時において欠陥が発生しない、高鮮明・高輝度TV用シャドウマスク材として使用可能なFe−Ni系合金冷延板用素材を有効に製造する方法はいまだ確立されているとはいえないのが現状である。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、高鮮明・高輝度TVのシャドウマスク材として使用可能なエッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した観点から、エッチング孔面積率が65%を越えるような高鮮明・高輝度TV用シャドウマスク材として使用することができる、エッチング穿孔時に孔形不良欠陥が発生しないエッチング穿孔性に優れたFe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、次の知見を得た。
【0010】
孔形不良部を電子顕微鏡で観察すると数μmの介在物が集合してクラスター化したものが圧延方向に展伸され、その一部がエッチング孔にかかって図1に示すように孔形不良が発生していることがわかった。つまり、冷延板段階で非金属介在物量が酸素に換算して0.002mass%まで低減されていても、残留介在物が集合してクラスター化してしまうと圧延加工時に展伸されてしまい、エッチング孔にかかって欠陥の原因となってしまうのである。
【0011】
そこで、従来技術に示されているような、30〜45mass%のNiを含有するFe−Ni系溶融合金を調整し、脱炭処理を実施した後、下記のCaO−Al−MgO系スラグ:
CaOおよびAl:57mass%以上、
ただし、CaO/(CaO+Al)の比は0.45以上、
MgO:25mass%以下、
SiO:15mass%以下、および
シリコンよりも酸素親和力の弱い金属の酸化物の合計量:3mass%以下、と溶融金属とを反応させつつアルミニウム脱酸を実施する際、脱酸時に添加するアルミニウム量とシャドウマスク製造時の冷延板エッチング穿孔時の孔形不良欠陥発生率の関係を調査したところ、これらの間に大きな相関関係があることが確認された。
【0012】
すなわち、図2に示すように脱酸時アルミニウム添加量が3.0kg/溶鋼−Tonを超えた材料はエッチング穿孔後の孔形検査において孔形不良欠陥発生比率が増加してくる。これは、脱酸時にアルミニウムを添加する際、溶鋼中の溶存酸素やスラグ中の低級酸化物とアルミニウムが反応して発生するアルミナ(Al)量が多すぎると脱酸中の介在物浮上分離過程で介在物の凝集・合体が進み、これらのうち除去しきれなかった一部のクラスター化した介在物が残留し、有害化するためと考えられる。アルミニウム添加量の低減により冷延板中に残留するクラスター化した介在物の量も低減し、アルミニウム添加量が3.0kg/溶鋼−Ton以下であれば、エッチング時の孔形不良発生比率が工業的に問題のない0.5%以下とすることができる。
【0013】
また、脱酸終了後の攪拌時間とシャドウマスク製造時の冷延板エッチング穿孔時の孔形不良欠陥発生率の関係を調査したところ大きな相関関係をもっていることがわかった。
【0014】
すなわち、図3に示すように、脱酸終了後に取鍋底吹きガス量1.0〜2.5Nl/min・Tonの強攪拌を所定時間実施し、その後鍋底吹きガス量0.5〜1.5Nl/min・Tonの弱攪拌を10分間実施するた場合、強攪拌時間が5分間以上でエッチング穿孔時の孔形不良欠陥発生率を0とすることができ、また図4に示すように、5分間の強攪拌に続き、同様の弱攪拌を10分間以上実施することでエッチング穿孔時の孔形不良欠陥発生率を0とすることができる。つまり、強攪拌を5分間以上実施した後、弱攪拌を10分間以上行うことにより、エッチング穿孔時の孔形不良欠陥発生率をほぼ0とすることができる。これは、強攪拌により介在物のスラグへの吸着が促進され、さらに弱攪拌を実施することで攪拌によりスラグに吸着しきれなかった分の介在物が浮上分離によりスラグに吸着され、製品中の介在物が低減するからである。
【0015】
さらに、図5に示すように、溶製終了後、鋳造開始までの静置時間とシャドウマスク製造時の冷延板エッチング穿孔時の孔形不良欠陥発生率の関係を調査したところ、これらも相関関係をもっていることがわかった。静置時間を確保することで介在物が浮上分離し、製品中の介在物が低減し、30分間以上の静置することによりエッチング時の孔形不良欠陥発生率をほぼ0とすることができる。
【0016】
さらにまた、Mg合金を用いずに介在物をAl・MgOに改質するためには、溶製中のスラグを特定組成のCaO−Al−MgO系スラグに制御し、溶融合金のSol.Al濃度を調整したうえでスラグと溶融合金を十分に攪拌することが有効であることが判明した。
【0017】
本発明は以上のような知見に基づいてなされたものであり、以下の(1)〜()を提供する。
【0018】
(1) Ni:30〜45mass%、
Mn:0.1〜1.0mass%、
Al:0.003〜0.030mass%、および残部のFeおよび不可避的不純物からなり、
前記不可避的不純物中の炭素は0.005mass%以下、酸素は0.002mass%以下であるシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材を、
母材溶解工程と、母材溶解により得られた溶融合金を取鍋精錬設備にて昇熱し、Ni粗調整を行う昇熱・Ni粗調整工程と、VOD設備を用いる真空脱炭工程と、脱酸工程と、成分最終調整工程と、これらを経てインゴットまたは連続鋳造機にて鋳造する鋳造工程とにより製造するシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法において
真空脱炭工程前にあらかじめ炭素、シリコン、アルミニウム等の脱酸剤で溶融合金溶存酸素量を100ppm以上、400ppm以下とするとともに、
前記脱酸工程は、Ni成分調整後の溶融合金と、下記からなるCaO−Al−MgO系スラグ:
CaOおよびAl:57mass%以上、
ただし、CaO/(CaO+Al)の比は0.45以上、
MgO:25mass%以下、
SiO:15mass%以下、および
シリコンよりも酸素親和力の弱い金属の酸化物の合計量:3mass%以下、とを反応させながらアルミニウム脱酸剤を脱酸後の溶融合金中に0.003〜0.03wt%のAlを残留するように3.0kg/溶鋼−Ton以下添加することを特徴とするエッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法。
【0019】
(2) Ni:30〜45mass%、
Mn:0.1〜1.0mass%、
Al:0.003〜0.030mass%および、
残部のFeおよび不可避的不純物からなり、
前記不可避的不純物中の炭素は0.005mass%以下、酸素は0.002mass%以下であるシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材を、
転炉にて酸素吹錬により脱炭した炭素鋼溶鋼に、予め溶解炉にて溶解したFe−Ni溶湯を取鍋にて合わせて目標Ni成分のFe−Ni溶融合金を粗調整する工程と、得られたFe−Ni溶融合金を取鍋精錬設備にて昇熱し、Ni調整を行う昇熱・Ni調整工程と、VOD設備を用いる真空脱炭工程と、脱酸工程と、成分最終調整工程と、これらを経てインゴットまたは連続鋳造機にて鋳造する鋳造工程とにより製造するシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法において
真空脱炭工程前にあらかじめ炭素、シリコン、アルミニウム等の脱酸剤で溶融合金溶存酸素量を100ppm以上、400ppm以下とするとともに、前記脱酸工程は、Ni成分調整後の溶融合金と、下記からなるCaO−Al−MgO系スラグ:
CaOおよびAl:57mass%以上、
ただし、CaO/(CaO+Al)の比は0.45以上、
MgO:25mass%以下、
SiO:15mass%以下、および
シリコンよりも酸素親和力の弱い金属の酸化物の合計量:3mass%以下、とを反応させながらアルミニウム脱酸剤を脱酸後の溶融合金中に0.003〜0.03wt%のAlを残留するように3.0kg/溶鋼−Ton以下添加することを特徴とするエッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法。
【0021】
)上記(1)または(2)において、前記Fe−Ni系合金冷延板用素材を製造するにあたり、アルミニウム脱酸剤添加後、取鍋底吹きガス量1.0〜2.5Nl/min・Tonで5分間以上の強攪拌と、続いて0.5〜1.5Nl/min・Ton以下で10分間以上弱攪拌とを実施し、非金属介在物の浮上分離促進を図ることを特徴とするエッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法。
【0022】
)上記(3)において、前記Fe−Ni系合金冷延板用素材を製造するにあたり、溶製後30分以上取鍋を静止させ、非金属介在物の浮上促進を図ることを特徴とするエッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法。
【0023】
上記(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記脱酸工程におけるスラグ組成をCaO:40〜60mass%、Al:10〜40mass%、MgO:10〜30mass%のCaO−Al−MgO系スラグに制御し、かつ、溶融合金中のSol.Alを0.005〜0.05mass%に調整し、スラグと溶融合金とを十分に攪拌して、素材中に含まれる酸化物系介在物組成をAl・MgOおよび/またはMgOに制御することを特徴とするエッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
本発明の第1の実施形態においては、Ni:30〜45mass%、Mn:0.1〜1.0mass%、Al:0.003〜0.030mass%、および残部のFeおよび不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物中の炭素は0.005mass%以下、酸素は0.002mass%以下であるシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材を、母材溶解工程と、母材溶解により得られた溶融合金を取鍋精錬設備にて昇熱し、Ni粗調整を行う昇熱・Ni粗調整工程と、VOD設備を用いる真空脱炭工程と、脱酸工程と、成分最終調整工程と、これらを経てインゴットまたは連続鋳造機により鋳造する鋳造工程とにより製造するにあたり、または、転炉にて酸素吹錬により脱炭した炭素鋼溶鋼に、予め溶解炉にて溶解したFe−Ni溶湯を取鍋にて合わせて目標Ni成分のFe−Ni溶融合金を粗調整する工程と、得られたFe−Ni溶融合金を取鍋精錬設備にて昇熱し、Ni調整を行う昇熱・Ni調整工程と、VOD設備を用いる真空脱炭工程と、脱酸工程と、成分最終調整工程と、これらを経てインゴットまたは連続鋳造機により鋳造する鋳造工程とにより製造するにあたり、真空脱炭工程前にあらかじめ炭素、シリコン、アルミニウム等の脱酸剤で溶融合金溶存酸素量を100ppm以上、400ppm以下とするとともに、脱酸工程において、Ni成分調整後の溶融合金と、下記からなるCaO−Al−MgO系スラグ:
CaOおよびAl:57mass%以上、
ただし、CaO/(CaO+Al)の比は0.45以上、
MgO:25mass%以下、
SiO:15mass%以下、およびシリコンよりも酸素親和力の弱い金属の酸化物の合計量:3mass%以下、とを反応させながらアルミニウム脱酸剤を脱酸後の溶融合金中に0.003〜0.03wt%のAlを残留するように3.0kg/溶鋼−Ton以下添加し、前記鋳造工程をインゴットまたは連続鋳造機にて行う。
【0025】
まず、素材の化学成分組成について説明する。
(1)Ni:
NiはFe−Ni系合金板の熱膨張率に大きな影響を及ぼす成分である。ニッケル含有量が、30から45mass%の範囲内では、合金板の熱膨張率が小さい。しかしながら、30mass%未満の場合には、合金板の熱膨張率が高くなる。一方、ニッケル含有量が、45mass%を超えても、合金の熱膨張率が高くなる。熱膨張率の高いFe−Ni系合金冷延板をシャドウマスク材として使用したときには、色ずれの原因となる。したがって、ニッケル含有量は、30から45mass%の範囲内とする。
【0026】
(2)Mn:
Mnは、Fe−Ni系合金板の熱間加工性を向上させる作用を有している。しかしながら、マンガン含有量が0.1mass%未満では、上述した作用に所望の効果が得られない。一方、マンガン含有量が1.0mass%を超えると、合金板の硬度が過度に高くなり、シャドウマスク材として適さない。したがって、マンガン含有量は、0.1から1.0mass%の範囲内とする。
【0027】
(3)Al:
Alは、Fe−Ni系合金板中の非金属介在物の量およびその粒径の大きさに影響を及ぼす成分である。アルミニウムの含有量が0.003から0.030mass%の範囲内では、粒径の小さい、そして微量の非金属介在物が合金板中に生成する。しかしながら、アルミニウムの含有量が0.003mass%未満では、粒径が大きく、そして融点が低く、かつ展伸性が高い非金属介在物が多量に生成して、冷延板中に線状の形で存在する。その結果、合金板中のエッチング穿孔時に欠陥を生じる。一方、アルミニウムの含有量が0.030mass%を超えると、合金板の黒化処理性が低下する。従って、アルミニウムの含有量は、0.003から0.030mass%の範囲内とする。
【0028】
以上の成分の残部はFeおよび以下に示す不可避的不純物である。
(4)C:
Cは、Fe−Ni系合金中に不可避的に混入する不純物の一つである。C含有量は、少ないほど好ましいが、炭素含有量を、工業的規模で大幅に低減させることは経済性の観点から困難である。しかしながら、炭素含有量が0.005mass%を超えると、Fe−Ni系合金板中に鉄炭化物が多量に生成して、合金板のエッチング穿孔性を阻害し、穿孔欠陥を生じる原因となるとともに、合金板のプレス成形性が低下する。したがって、炭素含有量は0.005mass%以下であることが望ましい。
【0029】
(5)O:
Oは、Fe−Ni系合金中に不可避的に混入する不純物の一つである。O含有量は、少ないほど好ましいが、O含有量を、工業的規模で大幅に低減させることは経済性の観点から困難である。しかしながら、O含有量が0.002mass%を超えると、合金中に酸化物系非金属介在物が多量に生成して、合金板のエッチング穿孔性を阻害し、穿孔欠陥を生じる原因となる。したがって、O含有量は0.002mass%以下であることが望ましい。
【0030】
(6)Si:
Siも不可避的不純物であるが、その含有量が0.05mass%を超えると、Fe−Ni系合金板にSiの酸化物が生成する結果、黒化膜の黒色度が劣化する。したがって、Siの含有量は0.05mass%以下であることが望ましい。
【0031】
(7)Cr:
Crは、Fe−Ni系合金の溶製時に不可避的に混入する不純物の一つである。Crの含有量が0.05mass%を超えると、Fe−Ni系合金板にクロムの酸化物が生成する結果、黒化膜の黒色度が劣化する。したがって、Crの含有量は0.05mass%以下であることが望ましい。
【0032】
(8)Ti:
Tiは、Fe−Ni系合金の溶製時に不可避的に混入する不純物の一つである。Tiの含有量が0.02mass%を超えると、Fe−Ni系合金板にTiの酸化物が生成する結果、黒化膜の黒色度が劣化する。したがって、Tiの含有量は0.02mass%以下であることが望ましい。
【0033】
(9)Al、Si、CrおよびTiの合計含有量:
上述した、Al、Si、CrおよびTiの各々の含有量が上述した範囲内であっても、これらの合計含有量が0.10mass%を越えると、黒化膜の黒色度および熱幅射率が劣化する。したがって、Al、Si、CrおよびTiの合計含有量は、0.10mass%以下であることが望ましい。
【0034】
(10)Mo、W、Nb、V、Cu、As、Sb:
Fe−Ni系合金冷延板の表面に形成される黒化膜の熱幅射率を向上させるためには、黒化膜の黒色度を高めることに加えて、黒化膜の成長を促進させ、所定時間内に、所定の厚さの黒化膜を形成することが必要である。Fe−Ni系合金の溶製時に、Mo、W、Nb、V、Cu、As、Sb等が不可避的に混入するが、これらの元素の含有量が所定値を超えると、黒化膜の成長速度が低下し、所定時間内に所定厚さの黒化膜を形成することができなくなる。
【0035】
このような観点からMoの含有量を0.05mass%以下、Wの含有量を0.02mass%以下、Nbの含有量を0.02mass%以下、Vの含有量を0.02mass%以下、Cuの含有量を0.02mass%以下、Asの含有量を0.005mass%以下、そして、Sbの含有量を0.01mass%以下とすることが望ましい。
【0036】
Mo、W、Nb、V、Cu、As、Sbの含有量が上記値を越えると、黒色膜の成長速度が阻害される原因については、必ずしも明らかではないが、次のように推定される。すなわち、上記各元素の含有量が上記範囲内を越えると、Fe−Ni系合金冷延板と黒化膜との界面に、上記各元素が濃厚に存在するようになる。その結果、黒色の酸化膜すなわち黒色膜が形成されにくくなり、その成長速度が阻害される。
【0037】
(11)B:
Bは、Fe−Ni系合金の溶製時に不可避的に混入する不純物元素の一つである。B含有量が0.0005mass%を超えると、黒化膜の密着性が劣化する。したがって、Bの含有量は0.0005mass%以下にするのが望ましい。
【0038】
(12)H:
Fe−34〜38mass%Niインバー合金を溶製する際の製錬工程においては、一般にCaO系のスラグが使用されている。CaO系スラグは、水分を吸収しやすいために合金中への水素の供給源となる。したがって、Fe−Ni系合金中には、その溶製時に不可避的に水素が混入する。その結果、Fe−Ni系合金冷延板の表面に黒化膜を形成する時に、合金板中から水素ガスが放出されて、黒化膜が多孔質となるために、黒化膜の剛性が小さくなり、その密着性が劣化する問題が生する。このような問題は、水素の含有量が1.0ppmを越えると顕著になる。したがって、水素の含有量は1.0ppm以下に限定することが好ましい。
【0039】
(13)希土類元素:
希土類元素は、本合金の溶製時に不可避的に混入する不純物の一つである。希土類元素の含有量が1種または、2種以上の合計で0.0002mass%を超えると、黒化膜の黒色度が劣化する。したがって、希土類元素の1種または2種以上の合計含有量が0.0002mass%以下に限定することが好ましい。
【0040】
次に、このような成分組成のFe−Ni系合金冷延板素材の製造方法について説明する。
第1の方法は、予め目標組成となるように調整した30から45mass%のニッケルを含有するFe−Ni系合金の母材を溶解し、得られたFe−Ni溶融合金を取鍋精錬設備にて昇熱しながらNi成分粗調整を実施し、真空脱炭にて炭素を0.005mass%以下まで除去した後、下記からなるCaO−Al−MgO系スラグ:
CaOおよびAl:57mass%以上、
ただし、CaO/(CaO+Al)の比は0.45以上、
MgO:25mass%以下、
SiO:15mass%以下、および
シリコンよりも酸素親和力の弱い金属の酸化物の合計量:3mass%以下、とFe−Ni系溶融合金を反応させながらアルミニウム脱酸剤を3.0kg/溶鋼−Ton以下添加して脱酸し、成分最終調整を経て、インゴットまたは連続鋳造機にて鋳造を行い、鋳片を製造する。
【0041】
第2の方法は、転炉にて酸素吹錬により脱炭した炭素鋼溶鋼に、予め溶解炉にて溶解したFe−Ni溶湯を取鍋にて合わせて目標Ni成分のFe−Ni溶融合金を粗調整し、得られたFe−Ni溶融合金を取鍋精錬設備にて昇熱しながらNi成分調整を実施し、同様にして真空脱炭、脱酸、成分最終調整を経て鋳造を行い、鋳片を製造する。
【0042】
次に、脱酸工程で、上記CaO−Al−MgO系スラグを使用する理由について以下に説明する。
【0043】
(1)CaOおよびAl:57mass%以上
CaOおよびAlが57mass%未満ではMgO:25mass%以下、SiO:15mass%以下、およびシリコンよりも酸素親和力の弱い金属の酸化物の合計量:3mass%以下を満たさないため、CaOおよびAlを57mass%以上とした。
【0044】
(2)CaO/(CaO+Al)の比が0.45以上
CaO/(CaO+Al)の比が0.45未満では、スラグ中のAlの活量が0.5を超える。スラグ中のAlの活量が0.5を超えると、アルミニウムの量を一定にした場合のアルミニウムの脱酸力が低下する。したがって、CaO/(CaO+Al)の比を0.45以上とした。
【0045】
(3)MgO:25mass%以下
スラグ中のMgO含有量が25mass%を超えると、スラグの融点が上昇して、スラグのFe−Ni系溶融合金との反応が低下する。したがって、MgOの含有量を25mass%以下とした。
【0046】
(4)SiO:15mass%以下
スラグ中のSiO含有量が15mass%を超えると、スラグ中のSiOの活量が上昇し、そして、Fe−Ni系溶融合金中の酸素量がSiOによって増加する。その結果、Fe−Ni系溶融合金中の酸素量が0.002mass%を超える。したがって、SiOの含有量を15mass%以下とした。
【0047】
(5)シリコンよりも酸素親和力の弱い金属の酸化物の合計量:3mass%以下
スラグ中における、Siよりも酸素親和力の弱い金属の酸化物の合計量が3mass%を超えると、Fe−Ni系合金冷延板中に存在する酸素含有量が0.002mass%を超える。したがって、シリコンよりも酸素親和力の弱い金属の酸化物の合計量を3mass%以下とした。
【0048】
このスラグとFe−Ni溶融合金とを反応させながら、アルミニウム脱酸剤にて脱酸する際、アルミニウム添加量が3.0kg/溶鋼−Ton以下とするのは、この値を超えると、上述の図2に示されるように冷延板エッチング穿孔時の穿孔不良が増加してくるからである。よって、アルミニウム脱酸剤添加量を3.0kg/溶鋼−Ton以下とした。
【0049】
また、真空脱炭前の鋼中溶存酸素量であるが、400ppm以上あると脱酸中のアルミニウム脱酸剤の添加量が3.0kg/溶鋼−Tonを超えてしまうので、真空脱炭前までにカーボン、アルミニウム等の脱酸剤で事前に脱酸しておくことで、エッチング穿孔時の不良発生がなくなる。ただし、事前脱酸を過度に実施し、鋼中溶存酸素量が100ppm未満となると電極加熱時のカーボンピックアップ、真空脱炭不良等の問題が発生するため、100ppm以上は確保し、さらに、以下に示すように、脱酸終了後の溶鋼の攪拌時間と処理終了から鋳込開始までの溶鋼の静置時間を確保することが好ましい。
【0050】
脱酸終了後、取鍋底吹きガス量1.0〜2.5Nl/min・Tonの強攪拌を5分以上と、これに続き、取鍋底吹きガス量0.5〜1.5Nl/min・Tonの弱攪拌10分以上を実施することで、上述した図4に示すように、孔形不良欠陥発生はなくなる。したがって、脱酸終了後上記条件にて溶鋼の攪拌を行って介在物の浮上分離を行うことが好ましい。ただし、この場合には、上述したように脱酸中のアルミニウム脱酸剤の添加量を3.0kg/溶鋼−Ton以下に抑えることに加えて、下記に示すとおり処理終了から鋳込開始までの溶鋼の静置時間を確保することが望ましい。
【0051】
溶製終了から鋳造開始までの溶鋼の静置時間を確保することで、上述した図5に示すように、シャドウマスク製造時の冷延板エッチング穿孔時の孔形不良欠陥の発生がなくなる。よって、溶製終了から鋳込開始までの溶鋼の静置時間を30分以上確保することが好ましい。
【0052】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本発明の第2の実施形態においては、Ni:30〜50mass%を含有するシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材を製造するにあたり、Fe−Ni合金を溶製する際のスラグ組成をCaO:40〜60mass%、Al:10〜40mass%、MgO:10〜30mass%のCaO−Al−MgO系スラグに制御し、かつ、溶融合金中のSol.Alを0.005〜0.05mass%に調整し、スラグと溶融合金とを十分に攪拌して、素材中に含まれる酸化物系介在物組成をAl・MgOおよび/またはMgOに制御する。
【0053】
CaO−Al−MgO系スラグとFe系溶融合金が接している場合、下記(1)式に示すように、スラグ中のMgOがAlと反応してMgが供給される。これにより、Mg合金を添加したのと同様の効果を、溶融合金の飛散等をともなわずに安全に、かつ安価に得ることができる。
3MgO+2Al → 3Mg+Al (1)
【0054】
しかも、溶融合金中にNiを含有しているので、図6に示すように、Mg濃度の増加を期待することができる。
【0055】
また、図7には、Fe−36mass%Niにおける溶融合金中のSol.Al濃度とMg濃度とが平衡する酸化物相を示すが、溶融合金中のMgとAlの濃度の制御によりAl・MgO、MgOの生成領域とすることが可能である。この場合に、Al濃度はその添加量により、またMg濃度はスラグ組成により制御することができ、これにより目標とする介在物領域へコントロールすることができるようになる。
【0056】
実操業においては、スラグ組成をCaO:40〜60mass%、Al:10〜40mass%の低融点組成となるように調整し、スラグの流動性を確保したうえで、スラグ中のMgOを10〜30mass%に制御し、かつ、脱酸後の溶融合金中のSol.Alを、0.005〜0.05mass%に調整し、溶融合金を攪拌することで、素材中に含まれる酸化物系介在物組成をAlから、Al・MgOおよび/またはMgOへと制御して介在物の凝集を防ぐことができる。
【0057】
さらに、素材を冷間圧延した製品について調査した結果、エッチング時に発生する穴形異常や線状欠陥と合金板中の酸化物系介在物の組成との間には極めて強い相関があり、酸化物系介在物の含有率が酸素換算で0.003mass%、MgO/Al質量比率を0.25以上、望ましくは0.4以上とすることで、エッチング穿孔時の欠陥発生をより有効に抑えることができることがわかった。
【0058】
【実施例】
次に、本発明の実施例を比較例と対比しながら説明する。
【0059】
(実施例1)
図8および図9に示す製造工程によってFe−Ni系合金冷延板素材を製造した。
まず、図8に示すように、50Ton電気炉にて表1に示す材料を溶解し、1650℃まで昇熱した後50Ton取鍋中に出鋼した。出鋼時の溶鋼化学成分は表2に示す通りであった。その後、取鍋中に溶鋼と共に流出した電気炉スラグを除滓した。その後、図9に示す条件で真空アーク加熱脱ガス設備(以下VADと記す)および真空送酸脱炭設備(以下VODと記す)にて処理を行った。まず、取鍋をVADに移し、下記条件下で3相電極加熱装置により1680℃まで昇熱しながらNi成分を36.0mass%に調整するため電解Niを添加した。
真空度:200〜600Torr、
底吹きアルゴン流量:0.5〜1.5Nl/min・Ton、
造滓材の投入時期:VAD精錬開始直後、
造滓材内容:焼石灰14kg/Ton、蛍石4kg/Ton、
VAD到着時に鋼中溶存酸素量を測酸プローブにて測定した。溶存酸素量が560ppmであったため、VAD昇熱中にアルミニウムを2.0kg/Ton添加した。その結果、VAD昇熱終了時の鋼中溶存酸素量が251ppmとなった。昇熱終了後の溶融合金の化学成分組成は表2に示すとおりであった。
【0060】
この後、VODに移し、下記条件下にて真空脱炭を実施した。
真空度:1Torr以下、
底吹きアルゴン流量:1.0〜2.5Nl/min・Ton
造滓材投入:なし
脱炭時間:15分間
この結果、炭素含有量は0.0011mass%となった。
【0061】
次いで、引き続きVODにおいてFe−Ni系溶融合金鋼中にアルミニウム脱酸剤を添加して下記条件下にて脱酸を実施した。
真空度:1Torr以下
底吹きアルゴン流量:0.5〜2.5Nl/min・Ton
アルミニウム投入量:1.5kg/Ton
【0062】
さらに、上記アルミニウム投入完了から20分後にアルミニウムおよび成分微調整用の合金鉄を追加投入した。
追加アルミニウム投入量:0.2kg/Ton
合金鉄投入量
電解マンガン:2.8kg/Ton
【0063】
その後、上記条件にて処理を継続し、1540℃にてVOD処理を終了した。この脱酸の際、溶融合金と反応させたスラグ組成は表3に示すとおりであった。また、VOD処理終了時点の溶融合金の化学成分組成は表2に示すとおりであった。
【0064】
次いで、上広型の7Tonまたは12Ton鋳型を使用して、下注ぎ造塊法によって、下記条件でFe−Ni系溶融合金鋼を鋳造した。
注入流温度:1490〜1525℃、
鋳込み速度:150〜190mm/min、
シール状況:取鍋ノズルと注入管との間を覆いで囲み、アルゴンガスを130Nm/Hrの割合で供給した。
注入流から採取した溶融合金の化学成分は表2に示す通りであった。
【0065】
こうして得られた鋼塊を分塊圧延、スラブ表面手入れ、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、冷間圧延、歪み取り熱処理からなる一連の製造工程により冷延板を製造し、シャドウマスク用エッチング処理を実施した。シャドウマスク板200枚を抜き取り、エッチング孔面積率70%の条件でエッチングを実施し、エッチング孔形不良発生の有無を確認したが、不良発生は0.5%以下であった。
【0066】
また、同様の製造方法で条件の異なる材料のエッチング孔形不良発生率を比較した。製造条件およびエッチング孔形不良発生率を表4に示す。また、これらも含め、脱酸処理中のアルミニウム投入量とエッチング孔形発生率との関係を示したものが図2である。表4および図2に示すように、脱酸処理中に添加されるアルミニウム投入量が3.0kg/Ton以下の場合、エッチング孔形状不良発生率は0.5%以下と工業的に問題ないレベルまで低減された。
【0067】
【表1】
Figure 0004059118
【0068】
【表2】
Figure 0004059118
【0069】
【表3】
Figure 0004059118
【0070】
【表4】
Figure 0004059118
【0071】
(実施例2)
図8および図10に示す製造工程によってFe−Ni系合金冷延板素材を製造した。
すなわち、図8に示す実施例1と同様の条件で電気炉操業を行った後、図10に示すように、VODにおける脱炭および溶融合金中のアルミニウム:0.010mass%以上になった時点までの脱酸を実施例1と同様の条件で行い、続いて、VODにおいて以下の処理を行った。
【0072】
すなわち、まず、
真空度:1Torr以下
底吹きアルゴン流量:1.0〜2.5Nl/min・Ton
攪拌時間:5min以上
の条件で強攪拌を実施し、
引き続き、
真空度:1Torr以下
底吹きアルゴン流量:0.5〜1.5Nl/min・Ton
攪拌時間:10min以上
の条件で弱攪拌を実施して、1545℃にてVOD処理を終了した。
【0073】
次いで、実施例1と同様の条件でFe−Ni系溶融合金鋼を鋳造し、得られた鋼塊を分塊圧延、スラブ表面手入れ、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、冷間圧延、歪み取り熱処理からなる一連の製造工程により冷延板を製造し、シャドウマスク用エッチング処理を実施した。シャドウマスク板200枚を抜き取り、エッチング孔面積率70%の条件でエッチングを実施し、エッチング孔形不良発生の有無を確認したが、不良発生はゼロであった。
【0074】
また、同様の製造方法で条件の異なる材料のエッチング孔形不良発生率を比較した。製造条件およびエッチング孔形不良発生率を表5に示す。また、これらも含め脱酸終了後の攪拌時間とエッチング孔形不良発生率の関係を示したものが上述の図3、図4である。
【0075】
これらに示されているとおり、脱酸処理中に添加されるアルミニウム投入量が3.0kg/Ton以下で、脱酸終了後の攪拌時間が強攪拌5分以上、弱攪拌10分以上の場合に、エッチング孔形不良発生率は皆無であった。
【0076】
【表5】
Figure 0004059118
【0077】
(実施例3)
実施例2と同様に脱酸処理中に添加されるアルミニウム投入量が3.0kg/Ton以下で、脱酸終了後の攪拌時間が強攪拌5分以上、弱攪拌10分以上としてFe−Ni系合金冷延板素材を製造し、鋳造開始まで所定時間溶鋼を静置させた後、実施例1と同様の条件でFe−Ni系溶融合金鋼を鋳造し、得られた鋼塊を分塊圧延、スラブ表面手入れ、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、冷間圧延、歪み取り熱処理からなる一連の製造工程により冷延板を製造し、シャドウマスク用エッチング処理を実施した。シャドウマスク板200枚を抜き取り、エッチング孔面積率70%の条件でエッチングを実施し、エッチング孔形不良発生の有無を確認した。その際の製造条件およびエッチング孔不良発生率を表6に示す。また、処理終了から鋳込み開始までの溶鋼の静置時間とエッチング孔形不良発生率を示したものが上述の図5である。
【0078】
これらに示されているとおり、鋳造開始までの溶鋼の静置時間が30分間以上でエッチング孔形不良の発生が皆無であった。
【0079】
【表6】
Figure 0004059118
【0080】
(実施例4)
この実施例は、第2の実施形態に対応するものであり、実施例1,2,3と同様、電気炉での原料溶解、VADでの昇熱・Ni調整、VODでの脱炭ならびにAl脱酸および攪拌、その後の造塊を行った。表7にVODにおいて用いたスラグ組成、ならびに溶融金属の脱炭前、Al脱酸後、および攪拌後のMg濃度を示す。なお、鋳造時の溶融金属中のSol.Alの濃度は0.02mass%であった。結果を表7に示す。表7に示すように、スラグ組成を本発明の範囲内とすることにより、溶融合金中に適量の金属[Mg]を存在させることができ、介在物を微細なAl・MgOおよび/またはMgOに組成制御することができた。
【0081】
【表7】
Figure 0004059118
【0082】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、高輝度・高鮮明TVのシャドウマスクとして使用することができる、エッチング孔形不良が発生しない、エッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法を提供することができ、工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エッチング孔形不良発生状況(シャドウマスク板を上から見た図)。
【図2】脱酸処理中Al投入量とシャドウマスクエッチング孔形不良発生比率の関係を示す図。
【図3】脱酸終了後の攪拌時間(強攪拌のみ)とシャドウマスクエッチング孔形不良発生比率の関係を示す図。
【図4】脱酸終了後の攪拌時間(強攪拌5分+弱攪拌)とシャドウマスクエッチング孔形不良発生比率の関係を示す図。
【図5】溶製後鋳込開始までの静置時間とシャドウマスクエッチング孔形不良発生比率の関係を示す図。
【図6】溶融合金中のNi濃度とMg濃度がMg蒸気圧に及ぼす影響を示すグラフ。
【図7】Fe−36mass%Niにおける溶融合金中のSol.Al濃度とMg濃度が平衡する酸化物相を示すグラフ。
【図8】実施例1における電気炉での製造条件を示す工程図。
【図9】実施例1におけるVADおよびVODでの製造条件を示す工程図。
【図10】実施例2におけるVADおよびVODでの製造条件を示す工程図。

Claims (5)

  1. Ni:30〜45mass%、
    Mn:0.1〜1.0mass%、
    Al:0.003〜0.030mass%、および残部のFeおよび不可避的不純物からなり、
    前記不可避的不純物中の炭素は0.005mass%以下、酸素は0.002mass%以下であるシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材を、
    母材溶解工程と、母材溶解により得られた溶融合金を取鍋精錬設備にて昇熱し、Ni粗調整を行う昇熱・Ni粗調整工程と、VOD設備を用いる真空脱炭工程と、脱酸工程と、成分最終調整工程と、これらを経てインゴットまたは連続鋳造機にて鋳造する鋳造工程とにより製造するシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法において
    真空脱炭工程前にあらかじめ炭素、シリコン、アルミニウム等の脱酸剤で溶融合金溶存酸素量を100ppm以上、400ppm以下とするとともに、
    前記脱酸工程は、Ni成分調整後の溶融合金と、下記からなるCaO−Al−MgO系スラグ:
    CaOおよびAl:57mass%以上、
    ただし、CaO/(CaO+Al)の比は0.45以上、
    MgO:25mass%以下、
    SiO:15mass%以下、および
    シリコンよりも酸素親和力の弱い金属の酸化物の合計量:3mass%以下、とを反応させながらアルミニウム脱酸剤を脱酸後の溶融合金中に0.003〜0.03wt%のAlを残留するように3.0kg/溶鋼−Ton以下添加することを特徴とするエッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法。
  2. Ni:30〜45mass%、
    Mn:0.1〜1.0mass%、
    Al:0.003〜0.030mass%および、
    残部のFeおよび不可避的不純物からなり、
    前記不可避的不純物中の炭素は0.005mass%以下、酸素は0.002mass%以下であるシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材を、
    転炉にて酸素吹錬により脱炭した炭素鋼溶鋼に、予め溶解炉にて溶解したFe−Ni溶湯を取鍋にて合わせて目標Ni成分のFe−Ni溶融合金を粗調整する工程と、得られたFe−Ni溶融合金を取鍋精錬設備にて昇熱し、Ni調整を行う昇熱・Ni調整工程と、VOD設備を用いる真空脱炭工程と、脱酸工程と、成分最終調整工程と、これらを経てインゴットまたは連続鋳造機にて鋳造する鋳造工程とにより製造するシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法において
    真空脱炭工程前にあらかじめ炭素、シリコン、アルミニウム等の脱酸剤で溶融合金溶存酸素量を100ppm以上、400ppm以下とするとともに、前記脱酸工程は、Ni成分調整後の溶融合金と、下記からなるCaO−Al−MgO系スラグ:
    CaOおよびAl:57mass%以上、
    ただし、CaO/(CaO+Al)の比は0.45以上、
    MgO:25mass%以下、
    SiO:15mass%以下、および
    シリコンよりも酸素親和力の弱い金属の酸化物の合計量:3mass%以下、とを反応させながらアルミニウム脱酸剤を脱酸後の溶融合金中に0.003〜0.03wt%のAlを残留するように3.0kg/溶鋼−Ton以下添加することを特徴とするエッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法。
  3. 前記Fe−Ni系合金冷延板用素材を製造するにあたり、アルミニウム脱酸剤添加後、取鍋底吹きガス量1.0〜2.5Nl/min・Tonで5分間以上の強攪拌と、続いて0.5〜1.5Nl/min・Ton以下で10分間以上弱攪拌とを実施し、非金属介在物の浮上分離促進を図ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法。
  4. 前記Fe−Ni系合金冷延板用素材を製造するにあたり、溶製後30分以上取鍋を静止させ、非金属介在物の浮上促進を図ることを特徴とする請求項に記載のエッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法。
  5. 前記脱酸工程におけるスラグ組成をCaO:40〜60mass%、Al:10〜40mass%、MgO:10〜30mass%のCaO−Al−MgO系スラグに制御し、かつ、溶融合金中のSol.Alを0.005〜0.05mass%に調整し、スラグと溶融合金とを十分に攪拌して、素材中に含まれる酸化物系介在物組成をAl・MgOおよび/またはMgOに制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエッチング穿孔性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金冷延板用素材の製造方法。
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