JP4058995B2 - 避雷器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は避雷器に関し、避雷器を構成する素子ユニットの構造を改良したものである。
【0002】
【従来の技術】
避雷器は、積層した酸化亜鉛素子を絶縁部材により支持して一体化することにより素子ユニットを構成し、当該素子ユニットをポリマーからなる外被で被って構成されている。
【0003】
前記避雷器の構成としては、従来例1と従来例2とがある。従来例1としては、前記絶縁部材として絶縁筒を用いると共に当該絶縁筒の内部に酸化亜鉛素子を積層して一対の電極で挟持し、絶縁筒の内外を貫通する孔を形成して当該孔から放圧する構成のものと、孔を形成することなく内部圧力によって絶縁筒を破って放圧する構成のものがある。従来例2は、積層した酸化亜鉛素子の回りに3本以上の複数本の絶縁ロッドを等間隔で配置し、積層した酸化亜鉛素子を挟む一対の支持板に夫々の絶縁ロッドを貫通させ、絶縁ロッドの端部にナットを螺合し、絶縁ロッドどうしの間から放圧する構成のものである。
【0004】
従来例1の避雷器として、図13,図14のものがある。図13は、FRPパイプ1の内部に酸化亜鉛素子2を積層すると共にFRPパイプ1に一対の電極3a,3bをねじ込んで挟持し、FRPパイプ1の内外を貫通する図示しない孔を形成して素子ユニットを構成し、素子ユニットをポリマー外被7で被ったものである。4は電極板、5は皿バネ、6はねじ部に塗布した接着剤である。
【0005】
斯かる避雷器では、内部圧力が上昇した場合は、FRPパイプ1の図示しない孔から放圧が行なわれる。FRPパイプに代えてメッシュ状パイプを使用した場合は、メッシュから放圧が行なわれる。
【0006】
図14は、図13におけるFRPパイプ1に代えて、プリプレグシート8を所定の厚さに巻回して硬化させることで、素子ユニットを構成したものである。ここで、プリプレグシートとはガラス繊維等をシート状に編んだ素材に、硬化前の樹脂を含浸させたものである。酸化亜鉛素子と電極との結合を強固に行なうために、電極9には外周溝9aが形成され、外周溝9aにもプリプレグシート8が巻回されている。
【0007】
斯かる避雷器では、内部圧力が上昇した場合は、プリプレグシート8を破って放圧が行なわれる。プリプレグシートに代えてプリプレグテープを用いる場合もある。
【0008】
従来例2の避雷器として、図15のものがある。これは、積層した酸化亜鉛素子2の回りに3本のFRPロッド11を等間隔に配置し、積層した酸化亜鉛素子2を挟む一対の電極10に形成した支持板部10aに夫々のFRPロッド11を貫通させ、FRPロッド11の端部にナット12を螺合して素子ユニットを構成したものである。
【0009】
斯かる避雷器では、内部圧力が上昇した場合は、FRPロッド11どうしの間から放圧が行なわれる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、FRPパイプを用いる図13の避雷器では、強固に結合する目的で電極にねじ部を形成するために「コスト高」になり、接着工程があるために「工程が多く」なり「自動化が困難」であり、接着面積を大きくしようとすると全長が長くなって「避雷器が大型化」する。
【0011】
プリプレグシートを用いる図14の避雷器では、電極に外周溝を形成するために「コスト高」になり、プリプレグシートを巻回するのに「工数が多く」なりかつ「自動化が困難」であり、硬化を待つために「工程が多く」なり、接着面積を大きくしようとすると全長が長くなって「避雷器が大型化」する。
【0012】
FRPロッドを用いる図15の避雷器では、ねじ加工によりFRPロッドの強化繊維が分断されるため、ねじ部では本来のFRPのせん断強度が著しく低下し、そのためにネジ部のサイズアップやネジ部の長さを長くする必要があり、「避雷器が大型化」する。
【0013】
そこで本発明は、斯かる課題を解決した避雷器を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するための請求項1に係る避雷器の構成は、一対の電極間に酸化亜鉛素子を積層し、これらの電極と酸化亜鉛素子とを一体化して素子ユニットを構成し、当該素子ユニットを囲繞する碍管を設けて構成した避雷器において、一対の支持金具間に前記酸化亜鉛素子を積層し、該積層された酸化亜鉛素子の回りに略等間隔に複数の絶縁ロッドを配置し、該夫々の絶縁ロッドの両端に溝部を形成する一方、前記夫々の支持金具の外周面の近傍に円周方向へ略等間隔に複数の貫通孔を設け、該貫通孔に前記夫々の絶縁ロッドの両端を挿入し、前記夫々の支持金具に前記夫々の電極を結合することにより、該電極で前記絶縁ロッドの両端が半径方向での外側へ押圧され、前記溝部に前記支持金具の一部が入り込んで前記絶縁ロッドの両端に前記支持金具が結合され前記素子ユニットが構成されることを特徴とする。
【0015】
斯かる避雷器では、支持金具に形成された貫通孔に挿入された絶縁ロッドの両端を、電極が半径方向での外側へ押圧した状態、つまりは支持金具の一部が絶縁ロッドの両端に形成された溝部に嵌合された状態で、一対の電極と一対の支持金具と複数の絶縁ロッドとを一体に結合するので、従来のように接着する場合やプリプレグを巻回する場合や絶縁ロッドの両端をネジ結合する場合のような問題が生じない。
【0016】
請求項2に係る避雷器の構成は、一対の電極間に酸化亜鉛素子を積層し、これらの電極と酸化亜鉛素子とを一体化して素子ユニットを構成し、当該素子ユニットを囲繞する碍管を設けて構成した避雷器において、一対の支持金具間に前記酸化亜鉛素子を積層し、該積層された酸化亜鉛素子の回りに略等間隔に複数の絶縁ロッドを配置し、該夫々の絶縁ロッドの両端に溝部を形成する一方、前記夫々の支持金具の外周面の近傍に円周方向へ略等間隔に複数の貫通孔を設け、該貫通孔に前記夫々の絶縁ロッドの両端を挿入し、前記夫々の支持金具にリング部材を介して前記夫々の電極を結合することにより、該リング部材で前記絶縁ロッドの両端が半径方向での内側へ押圧され、前記絶縁ロッドの両端に形成された溝部に前記支持金具の一部が入り込んで前記絶縁ロッドの両端に前記支持金具が結合され前記素子ユニットが構成されることを特徴とする。
【0017】
斯かる避雷器では、絶縁ロッドの両端に形成された溝部に支持金具の一部が嵌合された状態となる点は請求項1と同じであるが、リング部材が絶縁ロッドを半径方向の内側へ押圧することになる点が請求項1とは異なる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による避雷器の実施の形態を説明する。
【0019】
(a)実施の形態1
まず、実施の形態1を図1に示す。実施の形態1では、避雷器における素子ユニットの構成が図2のようになっている。
【0020】
一対の支持金具14の間に複数の酸化亜鉛素子15が積層されており、一対の支持金具14どうしがFRPロッド(絶縁ロッド)16を介して結合されている。即ち、積層された酸化亜鉛素子15の回りに等間隔に4本のFRPロッド16が配置され、その両端が夫々の支持金具14に結合されている。
【0021】
夫々の結合部分は、以下のようになっている。まず、FRPロッド16の断面形状は図3に示すように矩形であり、その両端近傍には溝部16aが形成されている。溝部16aは外側にのみ形成されており、この溝部16aに支持金具14の一部が入り込んで、FRPロッド16の軸方向への移動が防止される。そのために、支持金具14を貫通する4つの貫通孔14aが形成されている。貫通孔14aの形状は、FRPロッド16の断面形状である図3(a)の形状に対し、半径方向へ溝16aの深さと対応する長さを加えた断面形状よりも僅かに大きくした矩形形状となっている。貫通孔14aに挿通した4本のFRPロッド16の端部を同時に半径方向の外側へ押圧するために、電極17が支持金具14に結合されている。電極17は小径部17aと大径部17bとで構成されており、4本のFRPロッド16の先端の内側に小径部17aを押し込んだ状態で、4本のボルト18を介して電極17が支持金具14に結合されている。以上のようにして、一対の電極17と一対の支持金具14と4本のFRPロッド16と複数の酸化亜鉛素子15とが一体化されている。なお、17cはタップ孔である。
【0022】
支持金具14と酸化亜鉛素子15との間には電極板20が挟持されており、電極板20を押圧してFRPロッド16に張力を与える加圧ボルト19が支持金具14の軸心位置にねじ込まれている。また、酸化亜鉛素子15どうしの間には図示しない皿バネが設けられている。このようにして素子ユニットが構成され、図1のように、斯かる素子ユニットを囲繞するようにしてポリマー製の外被(碍管)21がモールドされている。
【0023】
斯かる避雷器では、放圧時には、FRPロッド16どうしの間からガスの放出が行なわれる。
【0024】
(b)実施の形態2
次に、実施の形態2を図4に示す。
【0025】
この実施の形態は、図2と比較すればわかるように、電極17のみが異なる。電極17は図2のように大径部と小径部とに別れておらず、小径部のみとなっている。このため、電極17を支持金具14に結合するためのボルト18のピッチ円は図2のものに比べて小さく、ボルト18の数も4つから2つになって少なくなっている。
【0026】
電極17の外径寸法が図2に比べて小さいため、軸方向から見たときに、FRPロッド16の端面および支持金具14の外周面近傍の端面が見えることになる。
【0027】
その他の構成,作用は実施の形態1と同じなので、説明を省略する。
【0028】
(c)実施の形態3
次に、実施の形態3の要部を図5に示す。この実施の形態は、実施の形態1に対してFRPロッドの断面形状を変えただけなので、実施の形態1と異なる部分のみを説明する。
【0029】
図5(a)に示すように、FRPロッド16として、円形断面のものが用いられている。このFRPロッド16の形状を図6に示す。この場合の溝16aとしては、円周溝が形成されている。そして、貫通孔14aとしても、外径寸法がFRPロッド16の外径寸法よりも僅かに大きい内径寸法の円形の貫通孔が4つ形成されている。
【0030】
その他の構成,作用は実施の形態1と同じなので、説明を省略する。
【0031】
なお、図7のように片側のみに溝16aを形成した円形断面のFRPロッド16を用いる場合は、FRPロッド16の直径を一辺とする正方形よりも僅かに大きい正方形の貫通孔14aを形成することになる。
【0032】
(d)実施の形態4
次に、実施の形態4の要部を図8に示す。
【0033】
この実施の形態も、実施の形態2に対してFRPロッドを図5,図6で用いたFRPロッドと同じ形状のものに変えただけなので、図示するだけとして、構成,作用の説明を省略する。
【0034】
なお、この場合においても、前記のように図7のFRPロッド16を用いる構成に変更できる。
【0035】
(e)実施の形態5
次に、実施の形態5の要部を図9,図10に示す。この実施の形態は、図10に示すFRPロッド16の端部を、実施の形態1のように外側へ押し出して支持金具に固定する構成に代えて、内側へ押し出して固定するようにしたものである。
【0036】
4本のFRPロッド16の端部を内側へ押し出すために、リング部材22が設けられている。リング部材22は支持金具14の上に、FRPロッド16の端部を束ねるようにして設けられている。FRPロッド16の端部に形成された溝部16aは前記の実施の形態1〜4とは異なって、内側に配置されており、この溝部16aに支持金具14の一部が入り込んだ状態になっている。そして、電極17は、小径部17aがFRPロッド16に当接することなく、支持金具14に結合されている。
【0037】
その他の構成,作用は実施の形態1と同じなので説明を省略する。
【0038】
なお、実施の形態2のように、電極17を、段差がなくて大径部のない形状にすることもできる。
【0039】
(f)実施の形態6
最後に、実施の形態6を説明する。
【0040】
実施の形態6は、4本のFRPロッド16の端部を「内側へ押し出す」図9の避雷器において、矩形断面のFRPロッド16に代えて、図11の円形断面のFRPロッド16と、図5の円形の貫通孔14aを設けたものであり、図示省略する。
【0041】
なお、電極17を、段差がなくて大径部のない形状にすることもできる。
【0042】
このほか、実施の形態6である図9の一部に変更を加え、図12のように片側のみに溝部16aを設けた円形断面のFRPロッド16を用い、FRPロッド16の直径を一辺とする正方形よりも僅かに大きい正方形の貫通孔を設けるようにしてもよい。この場合においても、電極17を、段差がなくて大径部のない形状にしてもよい。
【0043】
なお、実施の形態1〜6において、絶縁ロッドの数は4本に限らず何本でもよく、曲げ強度の仕様により本数を増減すればよい。また、定格電圧,汚損仕様により避雷器の長さと更には素子ユニットの長さが増減するが、支持部材と略同じ形状の結束部材を一対の支持部材間に設けて貫通孔にFRPロッドを挿通させたり、あるいはFRPロッドを束ねるためのリング部材を必要に応じて設け、FRPロッドの撓みを防止してもよい。このほか、一体化した素子ユニットを複数直列に接続するようにしてもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明からわかるように、請求項1〜5に係る避雷器によれば、一対の支持金具間に積層された酸化亜鉛素子を複数の絶縁ロッドにより一体に結合し、支持金具と絶縁ロッドとの結合は、支持金具の外周面近傍に形成した貫通孔に挿入した絶縁ロッドを、支持金具に結合した電極あるいはリング部材により、半径方向へ押圧することにより、絶縁ロッドの溝に支持金具の一部を入り込ませることで結合するので、組立が簡単で、かつ製造コストが安い。そして、高定格電圧の避雷器でも素子ユニットを複数接続する構成にすれば、部品の共通化が図れる。
【0045】
このほか従来の避雷器に比べて、接着工程,巻回工程,硬化工程等が不要なので、組立時間の短縮が図れ、かつ組立の自動化が可能となる。また、従来のように接着強度を大きくする目的で電極を長くする必要がなく、絶縁ロッドの両端をネジ結合する構成の場合のようにネジサイズを大きくする必要もないので、避雷器の小型・軽量化が図れる。更に、未使用のプリプレグ材は使用期限があるために管理が煩雑になるが、このような管理が不要である。更に、ガス放出のための孔の加工が不要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による避雷器の実施の形態1に係り、(a)は正面断面図、(b)は平面図。
【図2】本発明による避雷器の実施の形態1の要部に係り、(a)は平面図、(b)は正面断面図。
【図3】本発明による避雷器の実施の形態1のFRPロッドに係り、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図4】本発明による避雷器の実施の形態2の要部に係り、(a)は平面図、(b)は正面断面図。
【図5】本発明による避雷器の実施の形態3の要部に係り、(a)は平面図、(b)は正面断面図。
【図6】本発明による避雷器の実施の形態3のFRPロッドに係り、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図7】本発明による避雷器の実施の形態3を一部改良したFRPロッドに係り、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図8】本発明による避雷器の実施の形態4の要部に係り、(a)は平面図、(b)は正面断面図。
【図9】本発明による避雷器の実施の形態5の要部に係り、(a)は平面図、(b)は正面断面図。
【図10】本発明による避雷器の実施の形態5のFRPロッドに係り、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図11】本発明による避雷器の実施の形態6のFRPロッドに係り、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図12】本発明による避雷器の実施の形態6を一部改良したFRPロッドに係り、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図13】従来例1に係る避雷器の断面図。
【図14】従来例1に係る避雷器の断面図。
【図15】従来例2に係る避雷器の断面図。
【符号の説明】
14…支持金具
14a…貫通孔
15…酸化亜鉛素子
16…FRPロッド
16a…溝部
17…電極
18…ボルト
21…外被
22…リング部材
Claims (5)
- 一対の電極間に酸化亜鉛素子を積層し、これらの電極と酸化亜鉛素子とを一体化して素子ユニットを構成し、当該素子ユニットを囲繞する碍管を設けて構成した避雷器において、
一対の支持金具間に前記酸化亜鉛素子を積層し、該積層された酸化亜鉛素子の回りに略等間隔に複数の絶縁ロッドを配置し、該夫々の絶縁ロッドの両端に溝部を形成する一方、前記夫々の支持金具の外周面の近傍に円周方向へ略等間隔に複数の貫通孔を設け、該貫通孔に前記夫々の絶縁ロッドの両端を挿入し、前記夫々の支持金具に前記夫々の電極を結合することにより、該電極で前記絶縁ロッドの両端が半径方向での外側へ押圧され、前記溝部に前記支持金具の一部が入り込んで前記絶縁ロッドの両端に前記支持金具が結合され前記素子ユニットが構成されることを特徴とする避雷器。 - 一対の電極間に酸化亜鉛素子を積層し、これらの電極と酸化亜鉛素子とを一体化して素子ユニットを構成し、当該素子ユニットを囲繞する碍管を設けて構成した避雷器において、
一対の支持金具間に前記酸化亜鉛素子を積層し、該積層された酸化亜鉛素子の回りに略等間隔に複数の絶縁ロッドを配置し、該夫々の絶縁ロッドの両端に溝部を形成する一方、前記夫々の支持金具の外周面の近傍に円周方向へ略等間隔に複数の貫通孔を設け、該貫通孔に前記夫々の絶縁ロッドの両端を挿入し、前記夫々の支持金具にリング部材を介して前記夫々の電極を結合することにより、該リング部材で前記絶縁ロッドの両端が半径方向での内側へ押圧され、前記溝部に前記支持金具の一部が入り込んで前記絶縁ロッドの両端に前記支持金具が結合され前記素子ユニットが構成されることを特徴とする避雷器。 - 前記電極の軸方向での一部の外径寸法を、前記支持金具の外径寸法と略同じに設定したことを特徴とする請求項1または2に記載の避雷器。
- 前記絶縁ロッドの断面形状を矩形にしたことを特徴とする請求項1または2に記載の避雷器。
- 前記絶縁ロッドの断面形状を円形にするとともに前記溝を円周に亘って形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の避雷器。
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